(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916139
(24)【登録日】2021年7月19日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】車両の車体後側部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/02 20060101AFI20210729BHJP
B62D 25/04 20060101ALI20210729BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
B62D25/02 B
B62D25/04 B
B62D25/08 L
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-62746(P2018-62746)
(22)【出願日】2018年3月28日
(65)【公開番号】特開2019-172082(P2019-172082A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀
(72)【発明者】
【氏名】勝野 友介
【審査官】
川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−179176(JP,A)
【文献】
特開2012−91638(JP,A)
【文献】
特開2001−191948(JP,A)
【文献】
特開2018−52194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部の車幅方向両側において車両上下方向に延設されたDピラーより前方の車幅方向両側に設けられ、前記Dピラーと接合された側壁部を備えるとともに、前記側壁部に開口部を備える車両の車体後側部構造であって、
前記Dピラーは、車室内側のピラーインナパネルと当該ピラーインナパネルより車外側のピラーアウタパネルを組み合わせて形成され、
前記側壁部は、車室内側のインナパネルと当該インナパネルより車外側のアウタパネルを組み合わせて形成されており、
前記インナパネルは、
パネル本体と、
前記開口部に沿って設けられた開口部側フランジ部と、
前記開口部側フランジ部の一端から前記パネル本体に向けて立設された壁部と、
前記パネル本体における前記Dピラー側の後端部から前記ピラーインナパネルに向けて延設されたピラー側フランジ部と、
前記壁部と前記パネル本体の後端部とに架け渡された状態で前記パネル本体に設けられたビードと、を備えることを特徴とする車両の車体後側部構造。
【請求項2】
前記ビードは、前記壁部から前記パネル本体の後端部に向かうに従い徐々に高さが低くなっている請求項1に記載の車両の車体後側部構造。
【請求項3】
前記ビードを複数備える請求項1又は請求項2に記載の車両の車体後側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Dピラーと接合された側壁部を備えるとともに、側壁部に開口部を備える車両の車体後側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、バックドアを備えた自動車(車両)において、車両の車体後端には、バックドアに対応するバックドア用開口部が設けられており、バックドア用開口部を囲むように後壁部が設けられている。車幅方向両側において、後壁部より前方には側壁部が設けられている。側壁部の下方には、リアホイールハウスが設けられている。
【0003】
車両後部には、リアホイールの上部から上方に延びるDピラーが設けられ、Dピラーは、車幅方向両側で前後方向に延びるルーフサイドレールまで延びている。
Dピラーの前方にはCピラーが設けられている。また、側壁部には、クォーターウインドウ用開口部が設けられている場合がある。Cピラー及びDピラーは、ピラーインナパネルとピラーアウタパネルとを組付けて形成されている。また、側壁部は、インナパネルとアウタパネルを組み合わせて形成されている。そして、Dピラーのピラーインナパネルと、側壁部のインナパネルとは互いに接合されている。
【0004】
ところで、走行時の振動によって、車両後部に配置されるDピラーが弾性変形域内で車両前後方向に弾性変形すると、その弾性変形が側壁部に伝わり、側壁部が振動することで車内に異音が発生する。Dピラーの車両前後方向への振動を抑制する方法として、例えば、特許文献1のように側壁部の後部にDピラーを支えるための補強材を接合することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−193047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、車両後部において、Dピラーの車両前後方向への弾性変形を原因とした側壁部の振動を抑制するため、特許文献1のように補強材を追加すると車両の部品点数が増加し、車両重量の増加となり、好ましくない。
【0007】
本発明の目的は、部品追加せずにDピラーの振動を抑制できる車両の車体後側部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するための車両の車体後側部構造は、車両後部の車幅方向両側において車両上下方向に延設されたDピラーより前方の車幅方向両側に設けられ、前記Dピラーと接合された側壁部を備えるとともに、前記側壁部に開口部を備える車両の車体後側部構造であって、前記Dピラーは、車室内側のピラーインナパネルと当該ピラーインナパネルより車外側のピラーアウタパネルを組み合わせて形成され、前記側壁部は、車室内側のインナパネルと当該インナパネルより車外側のアウタパネルを組み合わせて形成されており、前記インナパネルは、パネル本体と、前記開口部に沿って設けられた開口部側フランジ部と、前記開口部側フランジ部の一端から前記パネル本体に向けて立設された壁部と、前記パネル本体における前記Dピラー側の後端部から前記ピラーインナパネルに向けて延設されたピラー側フランジ部と、前記壁部と前記パネル本体の後端部とに架け渡された状態で前記パネル本体に設けられたビードと、を備えることを要旨とする。
【0009】
これによれば、パネル本体の後端部から壁部にかけて延びるビードは、パネル本体の後端部から壁部まで一繋がりであり、途中で分断されることなくパネル本体に設けられている。このため、インナパネルに形成したビードによって車両走行時の車両前後方向へのDピラーの弾性変形を抑えることができる。
【0010】
また、車両の車体後側部構造について、前記ビードは、前記壁部から前記パネル本体の後端部に向かうに従い徐々に高さが低くなっていてもよい。
これによれば、インナパネルとして、ピラー側フランジ部をパネル本体と段違いで設けるためにパネル本体の後端部から立設された壁部を備えるタイプと、ピラー側フランジ部をパネル本体と段違いで設けず、パネル本体の後端部から直接延設するタイプとがある。ビードの高さを壁部からパネル本体の後端部に向かうに従い徐々に低くすることで、両タイプのインナパネルであっても、ビードを、壁部とパネル本体の後端部とに架け渡された状態で設けることができる。
【0011】
また、車両の車体後側部構造について、前記ビードを複数備えていてもよい。
これによれば、複数のビードにより、車両走行時の車両前後方向へのDピラーの弾性変形をより一層抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、部品追加せずにDピラーの振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】車両の車体後側部構造をインナパネルから示す図。
【
図2】車両の車体後側部構造のビードを拡大して示す部分斜視図。
【
図3】車両の車体後側部構造のビードを示す
図2の3−3線断面図。
【
図4】車両の車体後側部構造のビードを示す
図2の4−4線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、車両の車体後側部構造を具体化した一実施形態を
図1〜
図4にしたがって説明する。
図1に示すように、車両10の後端には、後壁部11が設けられている。後壁部11より前方には車両10の後側部を構成する側壁部12が設けられている。側壁部12の下方にはリアホイールハウス13が設けられている。
【0015】
車両10の後壁部11にはDピラー14が接合されている。Dピラー14は、車両10後部の車幅方向両側において車両上下方向に延設されている。車両上部において、車幅方向両側には、車両前後方向に延びるルーフサイドレール15が設けられ、Dピラー14はルーフサイドレール15まで延びている。車両10において、Dピラー14の前方にはリアドア用開口部19が設けられている。側壁部12において、車両前後方向におけるDピラー14とリアドア用開口部19の間には、クォーターウインドウ用開口部18が設けられている。
【0016】
図3に示すように、Dピラー14は、車室内側のピラーインナパネル17と当該ピラーインナパネル17より車外側のピラーアウタパネル16を組み合わせて形成されている。ピラーアウタパネル16は、ピラーアウタパネル16の長手方向に直交する断面がコ字状の本体部16aと、本体部16aから延設された一対の接合部16bとを有する。ピラーインナパネル17は、ピラーインナパネル17の長手方向に直交する断面がコ字状の本体部17aと、本体部17aから延設された一対の接合部17bとを有する。ピラーアウタパネル16とピラーインナパネル17は、接合部16b,17b同士を接合して組付けられ、閉断面構造を有する。
【0017】
図1に示すように、側壁部12の一部は、車室内側のインナパネル21と当該インナパネル21より車外側のアウタパネル31を組み合わせて形成されている。インナパネル21は、枠状のパネル本体22を有する。パネル本体22には、クォーターウインドウ用開口部18に対応する形状の開口部23が形成されている。
【0018】
図2に示すように、インナパネル21は、開口部23に沿って設けられた開口部側フランジ部25を有する。また、インナパネル21は、開口部側フランジ部25の一端からパネル本体22に向けて立設された枠状の壁部24を有する。
【0019】
インナパネル21は、車両前後方向に沿ったパネル本体22の後端部22aから延設されたピラー側フランジ部26を備える。ピラー側フランジ部26は、車両上下方向に沿って、パネル本体22の後端部22a全体から延設されている。ピラー側フランジ部26は、Dピラー14のピラーインナパネル17の接合部17bに接合される。この接合により、Dピラー14とインナパネル21とが接合されている。インナパネル21は、車両前後方向に沿ったパネル本体22の前端部22bから延設されたリアドア側フランジ部27を備える。リアドア側フランジ部27は、車両上下方向に沿って、パネル本体22の前端部22b全体から延設されている。
【0020】
図2又は
図4に示すように、インナパネル21は、車両前後方向に延びる四つのビード28を備える。ビード28は、壁部24とパネル本体22の後端部22aに架け渡された状態で設けられている。したがって、ビード28は、パネル本体22の後端部22aから壁部24にかけて延びる。そして、ビード28は、壁部24からパネル本体22の後端部22aまで一繋がりであり、途中で分断されることなくパネル本体22に設けられている。ビード28は、インナパネル21をプレスして形成されており、壁部24及びパネル本体22がアウタパネル31側に凹む状態に形成されている。すなわち、ビード28は、パネル本体22の内面22c及び外面22dそれぞれに対し、交差する面を形成することで形成されている。車両上下方向に隣り合うビード28同士は繋がっており、車両上下方向に沿った断面視がコ字状である。パネル本体22の内面22cは、車室内側を向く面であり、パネル本体22の外面22dは、車室外側を向き、アウタパネル31に対向する面である。複数のビード28は車両上下方向に並設されている。
【0021】
各ビード28は、パネル本体22の内面22c及び外面22dに対して交差する面を有するようにパネル本体22をプレスして形成された部分である。
図3に示すように、車両上下方向に沿ってビード28を見た場合、パネル本体22の外面22dからのビード28の突出寸法をビード28の高さHとする。ビード28の高さHは、壁部24に繋がった部分が最も高く、車両前後方向に沿って壁部24からパネル本体22の後端部22aに向かうに従い、徐々に低くなっている。そして、パネル本体22の後端部22aで、ビード28の高さHが最も低くなっている。
【0022】
次に、車両10の車体後側部構造の作用効果を記載する。
(1)走行時の振動によって、車両後部に配置されるDピラー14が弾性変形域内で車両前後方向に弾性変形しようとする。Dピラー14の接合部17bには、インナパネル21のピラー側フランジ部26が接合されており、Dピラー14はインナパネル21と一体化されている。そして、インナパネル21には、ピラー側フランジ部26に隣接したパネル本体22の後端部22aから壁部24にかけて延びるビード28が設けられている。よって、ビード28により、Dピラー14の弾性変形を抑えることができる。したがって、側壁部12を構成するインナパネル21にビード28を設け、そのビード28の配置を設定することで、Dピラー14を支えるための補強部材を追加したり、インナパネル21の板厚を増加したりせずに、Dピラー14の振動を抑制できる。その結果、Dピラー14の振動を原因とした異音が車内に発生することを抑制できる。
【0023】
(2)ビード28は、パネル本体22の後端部22aから壁部24にかけて延びる形状であり、ピラー側フランジ部26には設けられていない。このため、ピラー側フランジ部26にビード28を設けて凹凸状とすることによるDピラー14の強度低下がない。
【0024】
(3)ビード28は、壁部24からパネル本体22の後端部22aに向かうに従い徐々に高さHが低くなっている。このため、インナパネル21が、パネル本体22の後端部22aからピラー側フランジ部26が延設されたタイプであっても、ビード28を、壁部24とパネル本体22の後端部22aとに架け渡された状態で設けることができる。
【0025】
(4)ビード28を複数備えるため、車両10走行時の車両前後方向へのDピラー14の弾性変形をより一層抑えることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0026】
○ ビード28は、一つ、二つ、三つ、又は五つ以上でもよい。
○ インナパネル21として、ピラー側フランジ部26をパネル本体22と段違いで設けるためにパネル本体22の後端部22aから立設された壁部を備えるタイプとしてもよい。この場合、ビード28は、ピラー側フランジ部26に達しないように、後端部22aを含む壁部まで設けられていてもよいし、壁部に設けられていなくてもよい。
【0027】
○ ビード28は、壁部24からパネル本体22の後端部22aまで同じ高さHであってもよい。
○ 実施形態では、ビード28は、車両上下方向に隣り合うビード28同士が繋がり、車両上下方向に沿った断面視がコ字状であったが、これに限らない。車両上下方向に沿った断面視が山形状となるようにビード28を一つずつ形成してもよい。
【0028】
○ ビード28は、車室内側へ凸となるように設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10…車両、12…側壁部、14…Dピラー、16…ピラーアウタパネル、17…ピラーインナパネル、21…インナパネル、22…パネル本体、22a…後端部、23…開口部、24…壁部、25…開口部側フランジ部、26…ピラー側フランジ部、28…ビード、31…アウタパネル。