(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916174
(24)【登録日】2021年7月19日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】プラスチック用の撥水剤配合物
(51)【国際特許分類】
C09D 191/06 20060101AFI20210729BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20210729BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20210729BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20210729BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
C09D191/06
C09D5/02
C09K3/18 101
B05D5/00 G
B05D7/24 301F
B05D7/24 301Q
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-518728(P2018-518728)
(86)(22)【出願日】2016年10月7日
(65)【公表番号】特表2018-536043(P2018-536043A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】US2016056034
(87)【国際公開番号】WO2017066097
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2019年10月7日
(31)【優先権主張番号】14/882,150
(32)【優先日】2015年10月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ツェー リ パン
(72)【発明者】
【氏名】エルゲスト バイラミ
【審査官】
松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−026257(JP,A)
【文献】
特開平10−292154(JP,A)
【文献】
特開2003−206478(JP,A)
【文献】
特開2001−011435(JP,A)
【文献】
特開2006−131767(JP,A)
【文献】
特開昭54−067584(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0163464(US,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2008−0086327(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
C09K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中エマルションと、
質量を基準として大部分が水であるキャリアであって、当該キャリア中に前記エマルションが小さな液滴として分散されるキャリアと、
水に混和性の有機キャリア溶媒と、
を含む、皮膜を形成する配合物であって、
前記エマルションの含油率は、前記エマルションの質量を基準として1質量%〜20質量%であり、前記エマルションは、水に分散した微粒子ワックス及びカチオン性界面活性剤を含み、
前記エマルションは、前記エマルションの質量を基準として15質量%〜40質量%のワックス含有率を有し、前記ワックスの質量を基準として5質量%〜25質量%のカチオン性界面活性剤含有率を有し、
前記カチオン性界面活性剤は4.0〜12.0のHLB値を有し、
前記ワックスは疎水性領域及び親水性領域の両方を有する分子であり、かつ、前記ワックスの融解温度が43.3℃〜60℃である、
皮膜を形成する配合物。
【請求項2】
水中エマルションと、
質量を基準として大部分が水であるキャリアであって、当該キャリア中に前記エマルションが小さな液滴として分散されるキャリアと、
水に混和性の有機キャリア溶媒と、
染料、可塑剤、殺生物剤、消泡剤、光安定剤、腐食防止剤及び増粘剤から選択された少なくとも1つの添加剤と、
から基本的になる、皮膜を形成する配合物であって、
前記エマルションの含油率は、前記エマルションの質量を基準として1質量%〜20質量%であり、前記エマルションは、水に分散した微粒子ワックス及びカチオン性界面活性剤を含み、
前記エマルションは、前記エマルションの質量を基準として15質量%〜40質量%のワックス含有率を有し、前記ワックスの質量を基準として5質量%〜25質量%のカチオン性界面活性剤含有率を有し、
前記カチオン性界面活性剤は4.0〜12.0のHLB値を有し、
前記ワックスは疎水性領域及び親水性領域の両方を有する分子であり、かつ、前記ワックスの融解温度が43.3℃〜60℃である、
皮膜を形成する配合物。
【請求項3】
プラスチック基材上に撥水性皮膜を形成する方法であって、
前記プラスチック基材に請求項1に記載の配合物を塗布すること、及び
その表面から過剰な前記配合物を除去して撥水性皮膜を形成すること、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、撥水性の皮膜及びコーティングに関し、より詳細には、プラスチック表面を疎水性にする配合物及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な可視物品上にある水は視界を悪くすることがある。プラスチックのバイザー、ゴーグル、シールド又はウィンドウ等の物品は日常的にその表面上で水分の凝縮を引き起こす。使用者が移動中にこのような物品を使用すると、視界が悪くなることにより、安全性が懸念される。物品を夜間に使用する場合、物品表面上の水が光を回折することで、これは更に複雑になる。また、物品表面上の水は、水が蒸発するときにできる汚れを引き寄せ、洗浄中にこの汚れによって摩耗されることにより、そのプラスチックの使用寿命が短くなる。
【0003】
通例、消費者は、ガラス表面を撥水性にするように配合された製品を使用してプラスチック表面を処理する。残念ながら、ガラスとプラスチックとの表面エネルギー及び化学的性質の違いから、ガラス表面用の撥水剤製品はプラスチック表面に望ましい撥水効果をもたらさず、逆にプラスチックを親水性にすることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、様々なプラスチック表面を処理するのに有効な撥水剤配合物に対する要求が存在している。また、従来のトリガースプレー塗布、エアロゾル噴射剤、又はワイプ塗布用のスポンジ若しくは布を用いたかかる配合物のフィールドへの塗布方法(process for field application)に対する要求も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
水中のカチオン性ワックスエマルションと、水混和性キャリア溶媒とを含み、乾燥させると、溶液が乾燥したときにプラスチック基材上に撥水性皮膜を形成する清澄(clear)かつ透明な(transparent)溶液を生成する組成物を提供する。これを塗布する方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、プラスチック基材表面上に塗布するための撥水剤配合物として有用であり、該撥水剤は、プラスチック基材の表面上に皮膜を形成して、下に位置する基材を疎水性にする。本発明の撥水剤配合物は、顕著かつ長期間持続する水のビーズ特性を多種多様なプラスチックにもたらす。本発明の配合物は、フィールド条件下における多種多様な基材への塗布に適するのに加えて、望ましい疎水性を処理した基材に付与することができる。
【0007】
本発明の撥水剤配合物は、古いプラスチック基材及び新しいプラスチック基材の両方に塗布することが可能である。本発明の撥水剤配合物で処理され得るプラスチック材料基材の非限定的かつ例示的な例としては、アクリル樹脂、アクリレート樹脂、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリプロピレン−ホモポリマー、ポリプロピレン−ランダムコポリマー、ポリスチレン、ポリエチレンフタレート、ポリスルホン、ポリ乳酸、ポリエチレンイミン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、スチレン−アクリロニトリル、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン、熱可塑性ポリウレタン、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン、熱可塑性ポリオレフィン、低密度ポリエチレンポリカーボネート、又はそれらの組合せを含む様々なプラスチックが挙げられる。本発明の撥水剤配合物を塗布し得る非限定的かつ例示的な例としては、自動二輪車のウィンドスクリーン、ゴーグル、バイザー、ヘルメット、ホッケーのリンクボード、及びボートのウィンドシールド等の製品が挙げられる。本発明の配合物は、透明プラスチック基材への塗布によく適している。本発明は、従来技術の系の特徴である複雑な堆積方法に頼ることなく皮膜を形成するワイプオン(wipe-on)塗布又はスプレー塗布される配合物としての用途に適する特質を有する。多種多様なプラスチックと適合性であることに加えて、本発明の配合物はまた、環境による風化からプラスチックを保護する。本発明の組成物によってプラスチックベースの基材に付与される疎水性皮膜の耐久性の結果として、プラスチック基材は、水をビーズ状にして、水を表面から転がり落とすことで、汚れを寄せ付ける水を表面上に少なく保つ傾向にあるため、プラスチックを洗浄する必要が減る。
【0008】
プラスチック基材への塗布に関して本発明を更に詳述するが、本発明の組成物は、多数の他の基材にも容易く塗布されて、疎水性皮膜をその基材上に付すものであることが理解される。本発明の配合物が容易く塗布される非プラスチック基材の例としては、金属、木材、塗装面及びガラスが挙げられる。本発明の組成物が様々な構成成分の総質量百分率に関して本明細書に記載される点において、これらの量は、配合物を含有する加圧エアロゾルパッケージに使用される噴射剤とは無関係に提示される。
【0009】
値の範囲が与えられる場合、範囲は、その範囲の終点の値のみならず、その範囲内に明示的に含まれる、その範囲の中間値も包含することが意図され、その範囲の最後の有効数字が変わると理解される。例として、1〜4の列挙された範囲は、1〜2、1〜3、2〜4、3〜4及び1〜4を含むことが意図される。
【0010】
本発明の配合物は、キャリア中に水性ワックスエマルション系を含む。キャリアの質量の大部分は水であり、少量が有機溶媒である。本発明の配合物は清澄な溶液又は懸濁液を形成する。プラスチック表面に塗布されると、配合物が乾燥して、清澄かつ透明な疎水性皮膜が生成する。本発明の幾つかの実施形態では、本発明の配合物を標的基材上に分散させる加圧エアロゾル容器を提供するために噴射剤が存在する。
【0011】
本発明の配合物は、カチオン性ワックスエマルションをベースとしており、該エマルションは、水に分散した微粒子ワックス及び界面活性剤で構成される。本明細書で有効なワックスは、パラフィンワックス、又はトリグリセリド若しくはオレフィンがワックスの質量の大部分を構成するヒマシ油、ヤシ又はダイズ等の天然源をベースとするワックスである。本発明のカチオン性ワックスエマルションに使用されるワックスの融点は110°F〜140°Fである。更に他の実施形態では、ワックスの融解温度は125°F〜130°Fであり、これによって精製パラフィンワックスエマルションと比べてエマルション安定性が助長される。エマルションのワックス固形分は、エマルションの総質量に対して固形分45%と高いと言える。ワックスエマルションは通常、約15%〜40%(質量基準)のワックスを含み、ワックスの質量に対して約5%〜25%の界面活性剤が添加される。ワックスをベースとしたエマルションはカチオン電荷を伴って本発明に従って配合され、プラスチック基材上で撥水性を促す。本明細書に詳述されるカチオン性ワックスエマルションの質量百分率は、水及び界面活性剤をパッケージとして含むことを意図するものである。
【0012】
乳化するワックスは多くの場合、ワックスポリマーに接続するカルボン酸基又はエステル基等の部位を含む。乳化プロセスでは、これらの部位が酸変性して、界面活性剤によってワックスの周りにミセルの形成を促す。これらのエマルションタイプを調製するために、氷酢酸等の有機酸、又は塩酸、硫酸若しくは類似の酸等の無機酸を官能基の変性に利用する。安定なエマルションを形成するために変性する必要がある官能基の量は、ワックスの特徴、例えばその分子量及び鎖の分岐量に応じて変わり得る。この値及び下記の酸価は、ワックスの遊離カルボン酸及びエステル含有率を示すものである。ASTM D1386は、ワックス1グラムを中和するのに必要なKOHの量(ミリグラム単位)である酸価を測定する方法を表しており、存在する遊離カルボン酸の量を示している。本発明によれば、ワックスエマルションは総質量の5%未満の含油率を有し、他の実施形態では、含油率は1%〜3%である。ワックスエマルションは通例、予め配合して、他の配合成分に添加される。
【0013】
本発明のワックスエマルション中のワックス組成物は、ヨウ素価(2.0〜5.0)、及び110°F〜140°Fの融点(例えばMettler Drop Pointによって測定した場合)を有する。本明細書で有効なカチオン性界面活性剤の例としては、イミダゾリン、ジエチルアミン又はエトキシ化アミン、例えば牛脂アミンが挙げられる。9.0〜11.0のHLB値を有する界面活性剤が本明細書では有効である一方、他の実施形態では、カチオン性界面活性剤のHLB値が4.0〜12.0であることが理解される。
【0014】
ワックスエマルションを分散させることができるキャリアの例としては、水(脱イオン水)及び短鎖アルコールが挙げられる。短鎖アルコールの例示的な例としては、イソプロパノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、及びそれらの組合せが挙げられる。有機溶媒はVOCを除いたものであることが好ましい。本明細書で使用される場合、「VOC」は、揮発性有機化合物の米国環境保護庁のマスターリスト(United States Environmental Protection Agency Master List of Volatile Organic Compounds)に挙げられる化合物として規定される。
【0015】
また幾つかの実施形態では、エアロゾル送達が望ましい場合、本発明の組成物が噴射剤を含有していてもよい。他の実施形態では、単純なトリガースプレーにより又は単にスポンジで拭うことにより消費者によって標的基材上に本発明の組成物が塗布される。本発明の組成物のエアロゾル送達システムが望ましい場合、本発明の組成物は任意に、不活性ガス、ハロカーボン、二酸化炭素又は炭化水素の噴射剤を含む。本明細書で有効なエアロゾル噴射剤の例としては、ジフルオロエタン、トリフルオロエタン;ブタン、ペンタン、イソブタン等のアルカン;プロパン;ジメチルエーテル及びジエチルエーテル等のエーテル;窒素;二酸化炭素;及びそれらの組合せが挙げられる。噴射剤を含む得られる組成物は従来の金属エアロゾルキャニスタ内に封入され、当該技術分野における従来どおりのスプレー塗布によって塗布される。
【0016】
本発明の組成物は、90度より大きい、典型的には95度〜110度の水滴接触角によって測定されるような疎水性皮膜をプラスチック基材上に形成することができる水性ワックスエマルションを含む。滑落角(sliding angle)は35度未満である。本発明の組成物は、分散相が10ミクロン〜100ミクロンのサイズ範囲の小さな液滴を有する貯蔵安定性の(熱力学的に安定な)分散液である水性ワックスエマルションを含む。本発明の或る特定の実施形態では、また配合し易くするために、水中に自己乳化するワックス化合物を選択する。
【0017】
自己乳化性ワックスは、油と水を同時に結合してエマルションを形成することができるという特質を有する。疎水性領域及び親水性領域を両方とも有する点で本発明の乳化性ワックスは、水及び疎水性物質の両方を同時に結合することを可能にする。特定の理論に縛られることを意図するものではないが、プラスチック基材、及び詳細には、本発明の配合物の特徴が水系及び親水性である以上、プラスチック基材は疎水性になると考えられる。配合物が乾燥すると、ワックス粒子が基材に付着して乾燥し、撥水性のワックス状皮膜となる。
【0018】
本発明の或る特定の実施形態では、例示的に貯蔵安定性、皮膜形成、皮膜耐久性及び洗浄特性を含む特性を改善するような様々な添加剤が本発明の配合物中に存在する。本発明の組成物の色を変えるような染料、微生物の生育を阻害するような殺生物剤、デナトニウム等の苦味剤、光安定剤、消泡剤、腐食防止剤、増粘剤、洗浄用溶剤、又はそれらの組合せといった添加剤が提供される。染料、殺生物剤、苦味剤、皮膜可塑剤、光安定剤、消泡剤、腐食防止剤及び増粘剤の各添加剤は独立してまた典型的に、0〜5の総質量パーセントの量で本発明の組成物中に存在するが、他の特定の実施形態では、各々0.01〜0.5の総質量パーセントで存在する。イソプロピルアルコール等の洗浄用溶剤は存在する場合、1パーセント〜10パーセントで存在する。
【0019】
本明細書で有効な殺生物剤の例としては、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、ヒドロキシメチルグリシンナトリウム、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0020】
或る特定の実施形態では、本発明の組成物からこうして生成された疎水性皮膜におけるブリスタの形成を防止するような量で消泡剤が存在する。本明細書で有効な消泡剤の例としては、当該技術分野において知られているような、シリコーン系消泡剤;鉱油系消泡剤、及び消泡ポリマーとポリ尿素等の疎水性固体との混合物が挙げられる。具体的かつ例示的なシリコーン系消泡剤の例としては、シリカ充填ポリジメチルシロキサン及びポリエーテル変性ポリシロキサンが挙げられる。
【0021】
本明細書で有効な光安定剤の例としては、液体ヒンダードアミン及びベンゾトリアゾールが挙げられる。光安定剤はまた、透明プラスチック基材を曇らせるか、そうでなければ劣化させるおそれのある環境光によるダメージからプラスチック基材を保護することが理解される。
【0022】
本明細書で有効な腐食防止剤の例としては、安息香酸ナトリウム、トリエタノールアミンジノニルナフタレン、ホウ酸−トリエタノールアミン塩、リン酸−トリエタノールアミン塩、アンモニア、トリエタノールアミン、カプリロアンフォプリオネート(capryloamphoprionate)、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0023】
本明細書で有効な増粘剤の例としては、ポリアクリル酸、アクリレートキサンタンガム、カーボポール、セルロースエーテル、アガロース、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0024】
本発明の組成物はガラス、金属、又はポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル又はポリエチレンテレフタレート等のプラスチックから作られるプラスチック容器、又はエアロゾル缶内に直ちに貯蔵される。
【0025】
本発明による典型的かつ好ましい組成物を表1に提示する。
【0027】
本発明の組成物は、ボトル又はエアロゾルキャニスタの形態のキットとして直ちに提供される。ボトルは任意にポンプトリガー又はスプレートリガーを備える。そのための指示書とともに過剰な組成物を除去する任意のワイプを準備することで、本発明のキットは使用可能となる。指示書は、基材の準備の方法、本発明の組成物を塗布する方法、基材から過剰分を除去する方法、並びに時間及びこうして塗布した皮膜の特性についての詳細を提供するものである。指示書はまた、塗布した皮膜が損耗した後に組成物を再度塗布する方法についての詳細も提供し得る。
【0028】
具体的な本発明の組成物の調製及び基材上の得られる皮膜に関する或る特定の特質を更に説明するために提示する以下の非限定的な実施例について、本発明を更に詳述する。
【実施例】
【0029】
実施例1
撥水特性を有するクリーナー:
撥水特性を有するプラスチック基材用クリーナー配合物のための組成物は、1総質量パーセントのワックスエマルション(25%のカチオン性変性パラフィンワックス及び15%の界面活性剤及び含油率3%、残りは水)を含有する。ワックスの融解温度は128°Fである。本発明の具体的な配合物を表2に提示する。
【0030】
【表2】
【0031】
水系組成物中では、イソプロピルアルコールを洗浄用溶剤として使用する。
【0032】
実施例2
撥水特性:
実施例1と同じ構成要素を使用し、また表3に詳述する、撥水特性を有する本発明の配合物を提供する。
【0033】
【表3】
【0034】
実施例3
接触角計器(Kruss Mobile Drop)を用いて、未処理の清澄なプラスチック表面又は処理済みの同様の清澄なプラスチック表面上の水の接触角を測定した。接触角の値が大きいほど、表面上の水滴のビーズ形成はより良好なもの(疎水性)となるため、撥水性もより良好となり、また吹きつける風又は重力等の外力を受けて表面から水を除去する条件もより良好となる。
【0035】
自社で構築した滑落角計器を用いて、プラスチック表面上の水滴の滑落角を測定した。水滴が(重力のために)プラスチック表面から滑落し始める角度を、滑落角として記録した。滑落角の値が小さいほど、水滴がプラスチック表面から転がり落ち易い。
【0036】
実施例2の配合物をアクリル基材及びポリカーボネート基材上で乾燥させると、両方とも撥水性が劇的に改善した(下記データを参照)。
【0037】
【表4】
【0038】
実施例4
実施例1の配合物を、噴射剤として窒素ガスとともに従来の金属エアロゾルキャニスタに封入する。キャニスタ内の混合物をスプレー塗布によって、実施例3で用いた同じ基材に塗布し、過剰な液体を基材表面から除去する。得られる皮膜被覆基材を試験すると、実施例1と同様の性能が示される。
【0039】
本明細書にて言及される特許及び刊行物は本発明が属する技術分野における当業者のレベルを示唆するものである。これらの特許及び刊行物は、個々の各特許又は刊行物を引用することにより明確に及び個々に本明細書の一部をなすものとした場合と同程度に、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0040】
上記の記載は本発明の特定の実施形態を説明するものであり、実施に際する限定を意味するものではない。全ての均等物を含む添付の特許請求の範囲は発明の範囲を規定するものと意図される。
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[態様1]
20質量%未満の含油率を有し、かつ融解温度が110°F〜140°F(43.3℃〜60℃)であるワックスを含むカチオン性ワックスエマルションと、
水と、
水に混和性のキャリア溶媒と、
を含む、疎水性皮膜を形成する配合物。
[態様2]
前記ワックスがパラフィンワックスである、態様1に記載の配合物。
[態様3]
前記ワックスが前記水中で自己乳化する、態様1に記載の配合物。
[態様4]
前記キャリア溶媒が、イソプロパノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、及びそれらの組合せである、態様1に記載の配合物。
[態様5]
前記カチオン性ワックスエマルションがさらに界面活性剤を含む、態様1〜4のいずれか一つに記載の配合物。
[態様6]
前記水が80〜98の総質量パーセントで存在する、態様1〜4のいずれか一つに記載の配合物。
[態様7]
前記エマルション及び前記有機溶媒が揮発性有機化合物(VOC)を含まない、態様1〜4のいずれか一つに記載の配合物。
[態様8]
さらに、染料、殺生物剤、消泡剤、光安定剤、腐食防止剤、クリーニング用溶剤又は増粘剤のうちの少なくとも1つの添加剤を含む、態様1〜4のいずれか一つに記載の配合物。
[態様9]
前記ワックスの融解温度が更に120°F〜130°F(48.8℃〜54.4℃)である、態様1〜4のいずれか一つに記載の配合物。
[態様10]
20質量%未満の含油率を有し、かつ融解温度が110°F〜140°F(43.3℃〜60℃)であるワックスと、界面活性剤とを含むカチオン性ワックスエマルションと、
水と、
水に混和性のキャリア溶媒と、
染料、可塑剤、殺生物剤、消泡剤、光安定剤、腐食防止剤又は増粘剤のうちの少なくとも1つの任意の添加剤と、
から基本的になる、疎水性皮膜を形成する配合物。
[態様11]
プラスチック基材上に撥水性皮膜を形成する方法であって、
前記プラスチック基材に態様1に記載の配合物を塗布すること、及び
その表面から過剰な前記配合物を除去して撥水性皮膜を形成すること、
を含む、方法。
[態様12]
塗布がスプレーポンプによるものである、態様11に記載の方法。
[態様13]
塗布がスポンジ又はタオルによるものである、態様11に記載の方法。
[態様14]
塗布が、エアロゾル缶内に前記配合物とともに入れられた噴射剤によるものである、態様11に記載の方法。