特許第6916191号(P6916191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6916191少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916191
(24)【登録日】2021年7月19日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/68 20060101AFI20210729BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20210729BHJP
   B01F 1/00 20060101ALI20210729BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20210729BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   C02F1/68 520C
   C02F1/68 510B
   C02F1/68 530A
   C02F1/68 540Z
   C02F1/68 540D
   C02F1/44 D
   B01F1/00 D
   B01D65/02 520
   B01D69/00
【請求項の数】23
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2018-540834(P2018-540834)
(86)(22)【出願日】2017年2月3日
(65)【公表番号】特表2019-503856(P2019-503856A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】EP2017052370
(87)【国際公開番号】WO2017134217
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2020年1月30日
(31)【優先権主張番号】16154567.8
(32)【優先日】2016年2月5日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】62/294,568
(32)【優先日】2016年2月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,ニコラ・シャルル
(72)【発明者】
【氏名】リープル,ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】クリューガー,ボルフガング
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02805923(EP,A1)
【文献】 特表2015−508703(JP,A)
【文献】 特表2014−525345(JP,A)
【文献】 特開昭60−058294(JP,A)
【文献】 特開平05−096286(JP,A)
【文献】 特開2008−049248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/68
B01D 61/00−71/82
B01F 1/00
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の調製方法であって、
a)水を供給するステップ、
b)少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料を供給するステップ、
c)CO又は5未満のpK値を有する酸を供給するステップ、
d)ステップa)の前記水をステップb)の前記少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料及びステップc)の前記CO又は酸と任意の順序で混合して、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性懸濁液S1を得るステップ、
e)少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2を得るために、ステップd)で得られた前記水性懸濁液S1を少なくとも1つの浸漬型膜モジュールに通過させることによって、前記水性懸濁液S1の少なくとも一部を濾過するステップ
を含み、
前記少なくとも1つの浸漬型膜モジュールがコンテナ内に位置している、方法。
【請求項2】
ステップd)が、
i1) ステップa)の水をステップc)のCO又は酸と混合するステップ、及びi2) i1)の混合物をステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料と混合するステップ;又は
ii1) ステップa)の水をステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料と混合するステップ、及びii2) ii1)の混合物をステップc)のCO又は酸と混合するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップd)及びe)が同じコンテナ内で実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記コンテナが反応槽である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの浸漬型膜モジュールが、1μm未満の細孔径を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの浸漬型膜モジュールが、0.1μm未満の細孔径を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
空気又は工程流体を前記少なくとも1つの浸漬型膜の表面の少なくとも一部にわたって再循環させる、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
空気又は工程流体を前記少なくとも1つの浸漬型膜の表面の少なくとも一部にわたって、前記少なくとも1つの浸漬型膜モジュール及び/又はコンテナの底部から上部方向に再循環させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記コンテナが密閉され、前記コンテナの上部の空気が供給材料として使用され、前記コンテナの底部に再導入される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの浸漬型膜モジュールを水で逆洗浄し、任意にCO又は5未満のpK値を有する酸が前記水に添加される、さらなるステップf)を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップb)の前記少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料が、沈降炭酸カルシウム、改質炭酸カルシウム、粉砕炭酸カルシウム及びそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップb)の前記少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料が、粉砕炭酸カルシウムである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料が、大理石、石灰石、チョーク及びそれらの混合物から成る群から選択される粉砕炭酸カルシウムである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップb)の前記少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料が、乾燥形態若しくは水性懸濁液の形態で供給され、及び/又は
ステップd)で得られた前記少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩が、炭酸水素カルシウムを含、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップd)で得られた前記少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩が、炭酸水素カルシウムから成る、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップc)で供給される前記酸が4未満のpK値を有し、並びに/又は前記酸が硫酸、塩酸、硝酸若しくはクエン酸及び/若しくはそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ステップe)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む前記水性溶液S2が、アルカリ土類金属炭酸水素塩として、20〜1000mg/lの範囲のアルカリ土類金属炭酸水素塩アルカリ土類金属濃度を有し、及び/又は6.1〜8.9の範囲のpH値を有する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ステップe)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む前記水性溶液S2が、アルカリ土類金属炭酸水素塩として、50〜600mg/lの範囲のアルカリ土類金属炭酸水素塩アルカリ土類金属濃度を有し、及び/又は6.5〜8.5の範囲のpH値を有する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
水のミネラル化及び/又は安定化方法であって、
(i)ミネラル化される水を供給するステップ、
(ii)請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法によって得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液を供給するステップ、
(iii)ステップ(i)のミネラル化される水と、ステップ(ii)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む前記水性溶液とを混合して、ミネラル化水を得るステップ
を含む方法。
【請求項20】
基をステップ(iii)の前記ミネラル化水に添加するさらなるステップ(iv)を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記塩基が、水酸化ナトリウム又は水酸化カルシウムである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
水のミネラル化及び/若しくは安定化のための、又はミネラル化水としての、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法によって得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む、水性溶液の使用。
【請求項23】
水が脱塩水又は天然軟水である、請求項22に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の調製方法、水のミネラル化及び/又は安定化方法、並びに水のミネラル化及び/又は安定化方法によって得られる少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料水が欠乏しつつある。水が豊富な国であっても、すべての供給源と貯水池が飲料水の生産に適しているわけではなく、今日の多くの供給源は水質の劇的な悪化に脅かされている。当初、飲用目的で使用された供給水は、主に地表水及び地下水であった。しかし、海水、塩水、汽水、廃水及び汚染廃水の処理は、環境及び経済的理由により、ますます重要になっている。
【0003】
飲用用途のために海水又は汽水から水を回収するには、乾燥地域、沿岸地域及び海洋島にとってかなり重要な幾つかの設備及び方法が知られており、このような設備及び方法は、通常、蒸留、電解及び浸透、又は逆浸透圧法を含む。このような方法によって得られる水は、非常に軟質であり、pH緩衝塩が不足しているためにpH値が低く、したがって反応性が高い傾向があり、処理しなければ従来のパイプラインでの配水中に重大な腐食問題を引き起こすおそれがある。さらに、未処理の脱塩水を飲料水源として直接使用することはできない。パイプラインシステム内での望ましくない物質の溶解を防止するために、パイプやバルブなどの水道設備の腐食を防ぎ、水の味を良くするために、水の鉱物(mineral)及びアルカリ度(alkalinity)含有量を上昇させる必要がある。
【0004】
主に水のミネラル化に使用される従来の方法及び対応する設備は、二酸化炭素による部分炭酸塩化を用いた石灰添加及び溶解、並びにカルサイト接触器とも呼ばれる石灰石床濾過である。これより一般的ではないミネラル化の他の方法は、例えば消石灰及び炭酸ナトリウムの添加、硫酸カルシウム及び炭酸水素ナトリウムの添加、又は塩化カルシウム及び炭酸水素ナトリウムの添加を含む。
【0005】
該石灰方法は、石灰溶液をCO酸性化水で処理することを含み、以下の反応が関与する:
Ca(OH)+2CO→Ca2++2HCO
【0006】
上記反応スキームから推測できるように、ミネラル化のために、1当量のCa(OH)をCa2+及び炭酸水素イオンに変換するには、2当量のCOが必要である。この方法は、アルカリ性水酸化物イオンを緩衝種HCOに変換するために、2当量のCOの添加に依存している。水をミネラル化するために、総重量に対して0.1重量%〜0.2重量%の、一般に石灰水と呼ばれる飽和水酸化カルシウム溶液を、石灰乳から調製する(通常は、最大で5重量%)。石灰水を製造するためにサチュレーターを使用する必要があり、目標レベルの鉱物及びアルカリ度含有量を達成するために、多量の石灰水が必要である。本方法のさらなる欠点は、消石灰が腐食性であり、適切な取り扱い及び特殊な装置が必要になることである。さらに、軟水への消石灰の添加の制御が不十分であると、石灰に緩衝特性がないために、望ましくないpH変化が引き起こされることがある。
【0007】
石灰石床濾過方法は、顆粒状の石灰石床に軟水を通過させ、水流に炭酸カルシウムを溶解させるステップを含む。石灰石とCO酸性化水とを接触させると、以下のように水がミネラル化される。
CaCO+CO+HO→Ca2++2HCO
【0008】
石灰方法とは異なり、ミネラル化及びアルカリ度添加のために、1当量のCaCOをCa2+及び炭酸水素イオンに変換するには、化学量論的に必要なのは、わずか1当量のCOである。さらに、石灰石は腐食性ではなく、CaCOの緩衝特性のために、大きなpH変化が抑制される。しかし、pHが上昇するにつれ、反応が低速化するため、十分なCaCOを確実に溶解させるために、追加のCOを適用する必要がある。次いで、未反応のCOを水酸化ナトリウムによる中和又はストリッピングによって除去する。
【0009】
石灰乳又は石灰スラリーを用いて水をミネラル化するための方法及びシステムは、US7,374,694及びEP0520826に記載されている。US5,914,046は、パルス化石灰石床を使用する排水放出物での酸性度を低下する方法を記載している。
【0010】
US7,771,599は、脱塩システムにおいて処理水をミネラル化する方法について記載している。該方法は、気体移動膜を介して、脱塩工程の海水又は濃縮物(塩水)から二酸化炭素ガスを隔離する。その後、隔離した二酸化炭素ガスを、可溶性炭酸水素カルシウム(Ca(HCO)の製造に使用する。WO2012/020056A1は、供給水を供給するステップと、ガス状二酸化炭素及びスラリーを供給水に注入するステップを含み、スラリーが微粉化炭酸カルシウムを含む、水のミネラル化方法に関する。WO2010/023742A2は、蒸留又は逆浸透による海水の脱塩によって得られた脱塩水を後加工(後処理)することによる、飲用水を製造する方法及び装置について記載している。該方法は、脱塩水に二酸化炭素を過剰に供給し、二酸化炭素を吸収させる二酸化炭素吸収方法、脱塩水を通過させ、石灰石が充填された石灰石フィルターによって二酸化炭素を吸収し、カルシウムイオン及び炭酸水素イオンを生成する、ミネラル化方法並びに該ミネラル化方法によって通過した脱塩水に空気を供給し、二酸化炭素を空気と共に排気させて飲用水を得る、二酸化炭素排気方法を含む。WO2012/113957A1は、最終濁度が制御される、流体の再ミネラル化方法に関する。該方法は、試薬の投入、再ミネラル化及び濾過を含むステップを含む。EP2565165A1は、水のミネラル化方法であって、供給水を供給するステップ、炭酸カルシウムの水性溶液を供給するステップであって、炭酸カルシウムの水性溶液が溶解炭酸カルシウム及びその反応種を含む、ステップ、並びに供給水と炭酸カルシウム水性溶液を配合するステップを含む方法に関する。EP2623466A1は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の調製方法及びこれの使用に関する。該方法は、撹拌機を備えた槽、少なくとも1つの濾過装置及び粉砕装置を含む反応装置システム内で行われ得る。EP2623467A1は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の調製方法及びこれの使用に関する。該方法は、撹拌機を備えた槽及び少なくとも1つの濾過装置を含む反応装置システム内で行われる。EP2623564A1は、鉱物、顔料及び/若しくはフィラーの精製並びに/又は沈降アルカリ土類金属炭酸塩の調製並びに/又は水のミネラル化のための設備に関し、並びに鉱物、顔料及び/若しくはフィラーの精製並びに/又は水のミネラル化並びに/又は沈降アルカリ土類金属炭酸塩の調製のためのこのような設備の使用に関する。WO2013/132399A1は、粉末形態の炭酸塩を高速工程で水に混合し、水中でCOを生成させることによって行う水のミネラル化を示しているが、水の濁度が増す。次いで、処理水は、粒状炭酸塩を含む反応装置を通って送達され、水中のCOは低速工程で追加の炭酸塩を溶解させる。反応装置は同時に、水にさらなる鉱物及びアルカリ度を加え、残留粉末を溶解させて、不溶性粒子を濾過することによって水から濁りを除去するように作用する。CN102826689A1は、脱塩海水の後処理方法であって、以下のステップ:(1)脱塩海水にCOを添加して十分に混合するステップ及び(2)ミネラル化プール中でCOを添加した脱塩海水をミネラル化して;ミネラル化プールに炭酸カルシウムフィルタ床を配置し;炭酸カルシウムフィルタ床にCOを添加した脱塩海水を通過させて、炭酸カルシウムと十分に接触及び反応させるステップ、を含む方法について記載している。WO2013/014026A1は、このような方法における水処理方法及び炭酸カルシウムの使用に関する。具体的には、WO2013/014026A1は、水の再ミネラル化方法であって、(a)少なくとも20mg/l、好ましくは25〜100mg/lの範囲及びより好ましくは30〜60mg/lの範囲の二酸化炭素濃度を有する供給水を供給するステップ、(b)微粉化炭酸カルシウムを含む水性スラリーを供給するステップ、及び(c)ステップ(a)の供給水とステップ(b)の水性スラリーを配合して、再ミネラル化水を得るステップを含む方法に関する。WO2014/187666A1は、炭酸水素カルシウムの溶液の調製のための多重バッチシステム及び炭酸水素カルシウムの溶液の調製のためのこのような二重バッチシステムの使用について記載している。WO2014/187613A1は、炭酸水素カルシウムの溶液の調製のための設備及び炭酸水素カルシウムの溶液の連続調製のためのこのような設備の使用並びに水の再ミネラル化のためのこのような設備の使用に関する。
【0011】
US2009/0101573A1は、鉱物混合槽が生物学的処理水、生物学的処理によって発生した汚泥及び沈降槽からのカルシウムなどを含む鉱物汚泥を収容する、廃水処理装置及び方法を言及する。鉱物ポンプは、汚泥及び処理水を鉱物混合槽から原水槽に戻す。エアリフトポンプは、半嫌気部を有する再曝気槽と脱窒槽との間で処理水を循環させる。半嫌気部は、再曝気槽と脱窒槽との間の処理水の循環中に、微生物の環境変化を改善し、これにより微生物の増殖を促進する環境を実現する。エアリフトポンプは、微生物をその高濃度まで培養しても、低エネルギー消費での撹拌が可能となる。WO2006/128730A1は、所与の工程条件下の逆浸透(RO)システムにおいて、溶解された潜在的なスケール形成成分を含む所与の組成の水性媒体の供給流を処理して、透過液流及び保持液流(濃縮物)であって、スケール抑制剤の非存在下で前記保持液と接触しているRO系の部分にスケールを形成させるのに十分高い濃度で潜在的なスケール形成成分を含む保持液流を得る方法であって、(a)保持液を連続的に監視して保持液中の潜在的なスケール形成成分の粒子の存在を検出し、このような粒子の存在に関連する保持液の1つ以上の物理的パラメータの読み取り値を連続的に記録する;(b)前記記録された読み取り値を、同じ工程条件下で同じ組成の水性媒体から得られた保持液の前記1つ以上のパラメータの測定値であって、経験的に予め決められた値と連続的に比較し及び(c)1つ以上のパラメータの記録された測定値が予め決められた測定値と異なったら、前記条件下でスケール形成を防止するために経験的に予め決められた量のスケール抑制剤を、膜の上流のROシステムに添加することを含む、方法について記載している。WO98/46533A1は、天然有機物、色、濁り、細菌、シスト及びオーシスト、ウイルス、ヒ素化合物及び不溶性不純物の少なくとも1つを除去するための、浄水システムについて記載している。このシステムは、精製する水塊を提供するステップと、水塊のpHを5〜8の範囲に制御するステップ及び水塊に凝固剤を添加してフロックを与えるステップを含む。フロックは、天然有機物、色、濁り及び細菌の少なくとも1つを吸着して処理水を与える目的で、1〜6の範囲の濃度で水塊に維持される。その後、処理水及びフロックの第1の部分が水塊から除去される。US6,027,649Aは、天然有機物、色、濁り、細菌、シスト及びオーシスト、ウイルス、ヒ素化合物及び不溶性不純物の少なくとも1つを除去するための浄水システムについて記載している。このシステムは、精製する水塊を提供するステップと、水塊のpHを5〜8の範囲に制御するステップ及び水塊に凝固剤を添加してフロックを与えるステップを含む。フロックは、天然有機物、色、濁り及び細菌の少なくとも1つを吸着して処理水を与える目的で、1〜6の範囲の濃度で水塊に維持される。その後、処理水及びフロックの第1の部分が水塊から除去される。処理水の第2の部分を除去するために、水塊中に浸漬型半透膜が設けられている。この膜は、0.02〜1μmの範囲の細孔径を有し、浄水から成る透過液を提供すると共に、フロックを含有する保持液を提供する。水塊を混合手段によって処理して、膜の汚れを最小限とし、水塊中でフロックを完全に混合する。US2010/0224541A1には、散気管が長い場合でも均質及び均一に微細気泡を発生させることができる微細気泡散気管、このような管を用いた微細気泡散気装置及び浸漬型膜分離装置が記載されている。US2013/0064741A1は、二酸化炭素を固定するためのシステムに関する。このシステムは、スラグからアルカリ金属成分を抽出する第1の反応装置及び抜き取ったアルカリ金属成分を二酸化炭素で炭酸塩化する第2の反応装置を含む。このシステムでは、二酸化炭素をより簡単で費用効率的に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第7374694号明細書
【特許文献2】欧州特許第0520826号明細書
【特許文献3】米国特許第5914046号明細書
【特許文献4】米国特許第7771599号明細書
【特許文献5】国際公開第2012/020056号
【特許文献6】国際公開第2010/023742号
【特許文献7】国際公開第2012/113957号
【特許文献8】欧州特許出願公開第2565165号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第2623466号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第2623467号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第2623564号明細書
【特許文献12】国際公開第2013/132399号
【特許文献13】中国特許出願公開第102826689号明細書
【特許文献14】国際公開第2013/014026号
【特許文献15】国際公開第2014/187666号
【特許文献16】国際公開第2014/187613号
【特許文献17】米国特許出願公開第2009/0101573号明細書
【特許文献18】国際公開第2006/128730号
【特許文献19】国際公開第98/46533号
【特許文献20】米国特許第6027649号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第2010/0224541号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2013/0064741号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、記載した方法は、水のミネラル化、とりわけ水のミネラル化に使用される少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の調製が、改善可能なCO効率及び/又は過剰なエネルギー消費を示すという欠点を有する。
【0014】
上記を考慮すると、水のミネラル化の改善は、依然として当業者の関心事となっている。より効率的、経済的及び生態学的な方法で調製できる、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液を調製するための代替的又は改良された方法であって、とりわけ該方法のためのCO消費の効率を上昇させることが可能であり、該方法及び対応する設備のための過剰なエネルギー消費を伴わない、方法を提供することがとりわけ望ましい。
【0015】
したがって、本発明の目的は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の調製方法を提供することである。別の目的は、該方法のCO消費効率を向上させる、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の調製方法を提供することにも見られ得る。さらなる目的は、該方法及び対応する設備のための全体的なエネルギー消費を低減することができる、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の調製方法を提供することに見られ得る。別の目的は、先行技術の典型的な石灰系と比較して汚泥の生成が低下する、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の調製方法を提供することに見られ得る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記及び他の課題の1つ以上は、独立請求項において本明細書に定義されたような主題によって解決される。本発明の好都合な実施形態は該当する従属請求項に定義されている。
【0017】
本発明の第1の態様は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の調製方法に関する。この方法は、
a)水を供給するステップ、
b)少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料を供給するステップ、
c)CO又は5未満のpK値を有する酸を供給するステップ、
d)ステップa)の水をステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料及びステップc)のCO又は酸と任意の順序で混合して、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性懸濁液S1を得るステップ、
e)少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2を得るために、ステップd)で得られた水性懸濁液S1を少なくとも1つの浸漬型膜モジュールに通過させることによって、水性懸濁液S1の少なくとも一部を濾過するアルカリ土類金属炭酸水素塩ステップ
を含み、
前記少なくとも1つの浸漬型膜モジュールはコンテナ内に位置している。
【0018】
本発明のさらなる態様によれば、水のミネラル化及び/又は安定化方法であって、
i)ミネラル化される水を供給するステップ、
ii)本明細書で定義された方法によって得られる少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液を供給するステップ、
iii)ステップ(i)のミネラル化される水と、ステップ(ii)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液とを混合して、ミネラル化水を得るステップ
を含む方法が提供される。
【0019】
本発明の水のミネラル化方法の一実施形態によれば、本方法は、塩基、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カルシウムをステップ(iii)のミネラル化水に添加するさらなるステップ(iv)を含む。
【0020】
本発明の別の態様によれば、水のミネラル化及び/若しくは安定化のための又はミネラル化水としての、本明細書に記載の方法によって得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の使用が提供される。本使用の一実施形態によれば、水は脱塩水又は天然軟水である。
【0021】
本方法の一実施形態によれば、ステップd)は、i1) ステップa)の水をステップc)のCO又は酸と混合するステップ、及びi2) i1)の混合物をステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料と混合するステップ;又はii1) ステップa)の水をステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料と混合するステップ、及びii2) ii1)の混合物をステップc)のCO又は酸と混合するステップを含む。
【0022】
本方法の別の実施形態によれば、ステップd)及びe)は同じコンテナ内で、好ましくは反応槽内で実施される。
【0023】
本方法のさらに別の実施形態によれば、少なくとも1つの浸漬型膜モジュールは、好ましくは1μm未満、より好ましくは0.1μm未満の細孔径を有する。
【0024】
本方法の一実施形態によれば、空気又は工程流体(process fluid)を、少なくとも1つの浸漬型膜モジュールの表面の少なくとも一部に、好ましくは少なくとも1つの浸漬型膜モジュール及び/又はコンテナの底部から上部方向に再循環させ、より好ましくは、ステップc)のCO又は酸を空気又は工程流体に添加する。
【0025】
本方法の別の実施形態によれば、コンテナは密閉され、コンテナの上部の空気は供給材料として使用され、コンテナの底部に再導入される。
【0026】
本方法のさらに別の実施形態によれば、本方法は、f)少なくとも1つの浸漬型膜モジュールを水で逆洗浄し、任意にCO又は5未満のpK値を有する酸を水に添加する、さらなるステップf)を含む。
【0027】
本方法の一実施形態によれば、ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、沈降炭酸カルシウム、改質炭酸カルシウム、粉砕炭酸カルシウム及びそれらの混合物から成る群から選択され、好ましくはステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、粉砕炭酸カルシウムである。
【0028】
本方法の別の実施形態によれば、ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、大理石、石灰石、チョーク及びそれらの混合物から成る群から選択される粉砕炭酸カルシウムである。
【0029】
本方法のさらに別の実施形態によれば、ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、乾燥形態若しくは水性懸濁液の形態で供給され、並びに/又はステップd)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩は、炭酸水素カルシウムを含み、好ましくは炭酸水素カルシウムから成る。
【0030】
本方法の一実施形態によれば、ステップc)で供給される酸は、4未満のpK値を有し、及び/又は酸は、硫酸、塩酸、硝酸若しくはクエン酸及び/又はそれらの混合物から成る群から選択される。
【0031】
本方法の別の実施形態によれば、ステップe)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2は、アルカリ土類金属炭酸水素塩として、20〜1000mg/l、より好ましくは50〜600mg/l及び最も好ましくは80〜400mg/lの範囲のアルカリ土類金属濃度を有し、並びに/又は6.1〜8.9の範囲の、好ましくは6.5〜8.5の範囲のpH値を有する。
【0032】
本発明の目的のために、以下の用語が以下の意味を有することを理解すべきである。
【0033】
「アルカリ土類金属炭酸塩含有材料」という用語は、アルカリ土類金属炭酸塩含有材料の総乾燥重量に対して、少なくとも50.0重量%のアルカリ土類金属炭酸塩を含む材料を示し得る。
【0034】
本発明の意味における「炭酸カルシウム含有材料」は、炭酸カルシウム源材料であり、好ましくは粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、表面反応炭酸カルシウム、ドロマイト及びそれらの混合物から選択される材料を指す。
【0035】
本発明で使用する「ミネラル化」という用語は、鉱物若しくはアルカリ度を全く含まない又は水の味が良好であるには不十分な量で含む水中において、必須鉱物イオン及びアルカリ度の両方を増加させることを指す。ミネラル化は、少なくとも特定のアルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸カルシウムを原料として処理される水のみに添加することによって達成できる。任意に、例えば幾つかの必須鉱物及び微量元素を確実に適切に摂取する健康上の利益のために、マグネシウム塩などのさらなる物質を、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩中に混合し又は一緒にし、次いで、ミネラル化方法の間に水に添加してもよい。ヒトの健康及び飲料水質に関する国内ガイドラインにしたがって、ミネラル化生成物は、カリウム又はナトリウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム又は必須微量元素を含有する他の鉱物及びそれらの混合物を含む群から選択される追加の鉱物を含むことができる。好ましくは、ミネラル化生成物は、硫酸マグネシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム及びそれらの混合物を含む群から選択される追加の鉱物を含む。
【0036】
本発明で使用する「安定化」という用語は、鉱物含有量及びアルカリ度の増加、残存する「攻撃的」二酸化炭素の中和若しくは除去、及び/又は安定したバランスのとれた最終水質を達成するためのpHの上昇を指す。安定化は、好ましくは攻撃的な二酸化炭素のストリッピング、本発明の設備によって得られたミネラル化水への塩基の添加、又は両方の組み合わせによって達成される。
【0037】
本発明の意味における「CO効率」という表現は、本方法におけるCO(mmol/lで測定)であって、最初にステップ(a)で供給される供給水中及びステップ(c)で供給される追加のCOの両方のCOの、アルカリ土類金属炭酸塩(ステップ(b)で供給されるもの)の量に対する比であって、当該アルカリ土類金属炭酸塩の量は、ステップ(a)で供給される供給水からステップ(e)で製造される水性溶液S2へのアルカリ土類金属炭酸塩の増加分として、アルカリ土類金属炭酸水素塩(mmol/lで測定)に換算された量を指す。
【0038】
本発明の意味において、「酸性化された」又は「酸」という表現はブレンステッド−ローリー理論を指し、したがってHイオン供給体を指す。さらに、酸に供給されるHイオンを受容するための好適な対応塩基が利用できる限り、酸のpH値は、7を超えて7.5までの範囲などの7より大であることができる。
【0039】
本出願の目的では、「pK値」は所与の酸中の所与のイオン化され得る水素に関連する酸解離定数を表し、所与の温度における水中で平衡状態でのこの酸からのこの水素の自然解離度を指す。このようなpK値は、Harris,D.C.「Quantitative Chemical Analysis:3rd Edition,1991,W.H.Freeman&Co.(USA),ISBN 0−7167−2170−8などの参考テキストに見出され得る。pK値は、当業者に周知である先行技術の方法にしたがって求められ得る。酸のpK値は、温度に依存するが、別途明記しない限り、本発明によるpK値は25℃の温度を指す。
【0040】
「含む(comprising)」という用語を本明細書及び特許請求の範囲において使用する場合、これは他の要素を排除しない。本発明の目的のために、「から成る(consisting of」という用語は、用語「から構成される(comprising of)」の好ましい実施形態であると見なされる。以下で群が少なくとも幾つかの実施形態を含むと定義される場合、これはまた、好ましくはこれらの実施形態のみから成る群を開示すると理解されるものとする。
【0041】
単数名詞を指すときに不定冠詞又は定冠詞、例えば「1つの(a)」、「1つの(an)」又は「この(the)」を使用する場合、何か他のことが特に示されない限り、これはこの名詞の複数を含む。
【0042】
「得られる(obtainable)」又は「定義できる」及び「得られた(obtained)」又は「定義された」などの用語は、互換的に使用される。このことは例えば、文脈が別途明確に示さない限り、用語「得られた」は、例えば実施形態を例えば、用語「得られた」の後の一連のステップによって得られなければならないことを意味するものではないが、このような限定された理解は好ましい実施形態として用語「得られた」又は「定義された」によって常に含められる。
【0043】
少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の調製のための本発明の方法の詳細及び好ましい実施形態を、以下でより詳細に説明する。これらの技術的詳細及び実施形態は、適用可能な限り、本発明の水のミネラル化及び/又は安定化方法並びに使用にも適用されることが理解されるものとする。
【0044】
本発明の方法は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の調製にも関する。特に、本発明の方法は、水のミネラル化及び/又は安定化に好適である少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の調製にも関する。
【0045】
「水性」溶液という用語は、水性溶媒が水を含む、好ましくは水から成る系を指す。しかし、前記用語は、水性溶媒がメタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン及びそれらの混合物を含む群から選択される、少なくとも1つの水混和性有機溶媒を微量含むことを除外しない。好ましくは、水性溶媒は、水性溶媒の総重量に対して、少なくとも80.0重量%、好ましくは少なくとも90.0重量%、より好ましくは少なくとも95.0重量%、さらにより好ましくは少なくとも99.0重量%の量の水を含む。例えば、水性溶媒は水から成る。
【0046】
本発明の意味における水性「溶液」という用語は、水性溶媒並びにアルカリ土類金属炭酸塩及び/又はアルカリ土類金属炭酸水素塩の粒子を含む系であって、アルカリ土類金属炭酸塩及び/又はアルカリ土類金属炭酸水素塩の粒子が水性溶媒に溶解している系を指す。本発明の意味における「溶解した」という用語は、水性溶媒中に離散した固体粒子が見られない系を指す。
【0047】
本発明の意味における「少なくとも1つの」アルカリ土類金属炭酸水素塩という用語は、アルカリ土類金属炭酸水素塩が、1つ以上のアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む、好ましくは1つ以上のアルカリ土類金属炭酸水素塩から成ることを意味する。
【0048】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩は、1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含み、好ましくは1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩から成る。又は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩は、2つ以上のアルカリ土類金属炭酸水素塩を含み、好ましくは2つ以上のアルカリ土類金属炭酸水素塩から成る。例えば、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩は、2つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含み、好ましくは2つのアルカリ土類金属炭酸水素塩から成る。
【0049】
好ましくは、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩は、1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含み、より好ましくは1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩から成る。
【0050】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩は、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム及びそれらの混合物から成る群から選択される。好ましくは、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩は、炭酸水素カルシウムを含み、好ましくは炭酸水素カルシウムから成る。
【0051】
<ステップa):水の供給>
本発明の方法のステップa)によれば、水が提供される。
【0052】
ステップa)で供給される水は、種々の供給源から得ることができ、蒸留水、水道水、工業用水、脱塩海水などの脱塩水、汽水、逆浸透による処理廃水又は地下水、地表水又は雨水などの自然軟水の中から選択できる。該水は10〜2000mg/lのNaClも含有できる。好ましくは、ステップa)で供給される水は、脱塩水、例えば脱塩工程から得られた透過液又は蒸留液である。
【0053】
本発明の方法の一実施形態において、ステップa)において供給される水は、ミネラル化される水である。即ち、ステップa)で供給される水は、鉱物若しくはアルカリ度を全く含まないか、又は不十分な量で含む水である。
【0054】
ステップa)で供給される水は前処理することができる。例えば水が地表水、地下水又は雨水から得られる場合には、前処理が必要となることがある。例えば、飲料水ガイドラインを達成するには、有機物や望ましくない鉱物などの汚染物質を除去するために、化学的又は物理的技法を使用して水を処理する必要がある。例えば、オゾン処理は、第1の前処理ステップとして使用され得、第2の処理ステップとして凝固、凝集又はデカンテーションが後続する。例えば、FeClSO若しくはFeClなどの鉄(III)塩又はAlCl、Al(SO若しくはポリアルミニウムなどのアルミニウム塩を凝集剤として使用することができる。凝集材料は、例えば砂フィルター又は多層フィルターによって水から除去できる。水の前処理に使用できるさらなる浄水方法は、例えば、EP1975310、EP1982759、EP1974807又はEP1974806に記載されている。
【0055】
ステップa)において海水又は汽水が供給される場合、海水又は汽水は、最初に海洋取水又は坑井などの海面下取水によって海から汲み出され、次いで篩過、沈降又は排砂処理などの物理的前処理に供される。要求される水質に応じて、膜上の潜在的な汚れを低減するために、凝固及び凝集などの追加の処理ステップが必要な場合がある。次いで、前処理された海水又は汽水は、例えば多段階フラッシュ、多重効用蒸留又はナノ濾過若しくは逆浸透などの膜濾過を用いて蒸留して、残存する微粒子及び溶解物質を除去することができる。
【0056】
ステップa)で供給される水は、好ましくは、主工程流(17)及び少なくとも1つの副流(15)にて供給されることに留意されたい。
【0057】
即ち、ステップa)で供給された水の一部が主工程流(17)を形成し、水の残りの部分が少なくとも1つの副流(15)となる。このため、主工程流(17)と少なくとも1つの副流(15)は相互に連結され、好ましくは、少なくとも1つの副流(15)がその入口及び出口によって主工程流(17)に連結される。
【0058】
一実施形態において、少なくとも1つの副流(15)は、副流の主分岐(15a)と副流の1つ以上の副分岐(15b)を含むことができる。
【0059】
例えば、少なくとも1つの副流(15)は、水性懸濁液S1を調製するための水を供給する副流の副分岐(15b)、副流の副分岐(15b)において調製した水性懸濁液S1を希釈するための水を供給する副流の主分岐(15a)に分岐することができる。換言すれば、副流の副分岐(15b)は水性懸濁液S1用の水を供給するのに対して、副流の主分岐(15a)はコンテナ、好ましくは反応槽(1)内に水を直接供給する。
【0060】
「少なくとも1つの」副流という用語は、本発明の方法において1つ以上の副工程流を供給できることを意味する。
【0061】
本発明の一実施形態において、本方法は、主工程流(17)及び1つの副流(15)を含み、好ましくは主工程流(17)及び1つの副流(15)から成る。代替的に、本方法は、主工程流(17)及び2つ以上の副流(15a)、(15b)などを含み、好ましくはこれらから成る。好ましくは、本方法は、主工程流(17)及び1つの副流(15)を含み、より好ましくはこれらから成る。
【0062】
代替的に、ステップa)で供給される水は、主工程流(17)にのみ供給される。即ち、この方法は少なくとも1つの副流を含まない。したがって、一実施形態において、方法は、主工程流(17)を含み、好ましくはこれから成る。
【0063】
一実施形態において、主工程流(17)は、主工程流の主分岐(17a)及び主工程流の1つ以上の副分岐(17b)を含むことができる。例えば、少なくとも1つの主工程流(17)は、懸濁液S1を調製するための水を供給する主工程流の副分岐(17b)及び主工程流の副分岐(17b)において調製した水性懸濁液S1を希釈するための水を供給する主工程流の主分岐(17a)に分岐することができる。換言すれば、主工程流の副分岐(17b)は水性懸濁液S1用の水を供給するのに対し、主工程流の主分岐(17a)はコンテナ、好ましくは反応槽(1)に直接水を供給する。
【0064】
水性懸濁液(S1)がコンテナ、好ましくは反応槽(1)に直接導入される前に、主工程流の主分岐(17a)及び1つ以上の副分岐が共に合流される場合、副分岐は主工程流の副分岐(17b)と見なされることに留意されたい。即ち、水性懸濁液S1は、主工程流の副分岐(17b)において調製され、次いで、例えば水性懸濁液S1を希釈するために、主工程流の主分岐(17a)に導入され、次いで希釈された水性懸濁液S1は、主工程流の主分岐(17a)を介してコンテナ、好ましくは反応槽(1)に導入される。
【0065】
少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2がコンテナ、好ましくは反応槽(1)から放出された後に、1つ以上の副流(15)及び主工程流(17)が合流する場合に、副流(15)は副流(15)と見なされる。
【0066】
<ステップb):少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料>
本発明の方法のステップb)によれば、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料が供給される。
【0067】
本発明の意味における「少なくとも1つの」アルカリ土類金属炭酸塩含有材料という用語は、アルカリ土類金属炭酸塩含有材料が、1つ以上のアルカリ土類金属炭酸塩含有材料を含み、好ましくは1つ以上のアルカリ土類金属炭酸塩含有材料から成ることを意味する。
【0068】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料を含み、好ましくは1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料から成る。又は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、2つ以上のアルカリ土類金属炭酸塩含有材料を含み、好ましくは2つ以上のアルカリ土類金属炭酸塩含有材料から成る。例えば、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、2つ又は3つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料を含み、好ましくは2つ又は3つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料から成り、より好ましくは2つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料から成る。
【0069】
好ましくは、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料を含み、より好ましくは1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料から成る。
【0070】
例えば、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、1つの炭酸カルシウム含有材料を含み、より好ましくは1つの炭酸カルシウム含有材料から成る。
【0071】
本発明の方法の一実施形態によれば、ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料は、沈降炭酸カルシウム、改質炭酸カルシウム、粉砕炭酸カルシウム及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0072】
好ましくは、ステップb)における少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料は、粉砕炭酸カルシウムである。
【0073】
本発明の意味における「粉砕炭酸カルシウム(GCC)」は、例えば大理石、チョーク又は石灰石を含む天然源から得られて、処理、例えば粉砕、篩過及び/又は分画などの湿式及び/又は乾式による処理により、例えばサイクロンによって加工された炭酸カルシウムである。
【0074】
本発明の意味における「沈降炭酸カルシウム(PCC)」は、水性環境における二酸化炭素と石灰との反応後の沈降によって、又は水中でのカルシウム及びカーボネート源の沈降によって、又はカルシウムイオンとカーボネートイオン、例えばCaClとNaCOとの溶液からの沈降によって一般に得られる合成材料である。沈降炭酸カルシウムは、カルサイト、アラゴナイト及びファーテライトの3種類の主な結晶形態として存在し、これらの結晶形態それぞれについて多くの異なる多形(晶癖)がある。カルサイトは、偏三角面体(S−PCC)、菱面体(R−PCC)、六方晶柱状、卓面体晶系、コロイド晶系(C−PCC)、立方晶系及び柱状(P−PCC)などの代表的晶癖を有する、三方晶系構造を有する。アラゴナイトは、六方晶柱状系双晶、並びに薄い細長柱状、湾曲ブレード状、鋭利な角錐状、チゼル形状結晶、分枝樹及びサンゴ又はワーム様形状の多様な組み合わせの代表的晶癖を有する斜方晶系構造である。
【0075】
本発明の意味における「改質炭酸カルシウム」は、天然炭酸カルシウムと、25℃で2.5以下のpKを有する1つ以上のHイオン供与体と、現場で生成された及び/又は外部供給源から得られたガス状COとを、任意に少なくとも1つのアルミニウムシリケート及び/若しくは少なくとも1つの合成シリカ及び/若しくは少なくとも1つのカルシウムシリケート並びに/又は少なくとも1つの1価塩のシリケート、例えばナトリウムシリケート及び/若しくはカリウムシリケート及び/若しくはリチウムシリケート並びに/又は少なくとも1つの水酸化アルミニウム並びに/又は少なくとも1つのナトリウム及び/若しくはカリウムシリケートの存在下で反応させる方法によって得られる、表面反応天然炭酸カルシウムである。表面反応天然炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細は、WO 00/39222、WO2004/083316及びUS2004/0020410A1に開示され、これらの参考文献の内容はここで本特許出願に含まれる。
【0076】
アルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料は、好ましくは粉砕炭酸カルシウム(GCC)である。
【0077】
例えば、ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料は、大理石、石灰石、チョーク、半焼成石灰、焼成石灰、ドロマイト質石灰石、石灰質ドロマイト、半焼成ドロマイト、焼成ドロマイト並びに沈降アルカリ土類金属炭酸塩、例えばCa(OH)の添加による水の軟化による、例えばカルサイト、アラゴナイト及び/又はバテライト鉱物結晶構造の沈降炭酸カルシウムなどを含む群から選択される。大理石、石灰石及び/又はチョークの使用が好ましいのは、これらが天然型鉱物であり、これらの天然型鉱物を用いて生成される少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む透明水性溶液を使用することにより、最終飲料水水質の濁度が保証されるためである。天然大理石の堆積物は、たいてい酸不溶性シリケート不純物を含有している。しかし、本発明の方法によって調製される生成物を使用した場合、このような酸不溶性の、場合により着色したシリケートは、濁度に関して最終水質に影響を及ぼさない。
【0078】
したがって、ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料は、大理石、石灰石、チョーク及びそれらの混合物から成る群から選択される粉砕炭酸カルシウム(GCC)である。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料の総乾燥重量に対して40.0重量%以上、好ましくは90.0重量%、より好ましくは95.0重量%以上及び最も好ましくは97.0重量%以上の量のアルカリ土類金属炭酸塩から成る粒子を含む、好ましくは該粒子から成る。
【0080】
例えば、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料は、少なくとも1つの炭酸カルシウム含有材料の総乾燥重量に対して40.0重量%以上、好ましくは90.0重量%、より好ましくは95.0重量%以上及び最も好ましくは97.0重量%以上の量の炭酸カルシウムから成る粒子を含む、好ましくは該粒子から成る。
【0081】
ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、微粉化アルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料であることがさらに好ましい。
【0082】
本発明の目的のために、「微粉化」という用語は、マイクロメートル範囲の粒径、例えば0.1〜50.0μmの粒径を指す。微粉化粒子は、摩擦及び/又は衝撃に基づく技術、例えば湿式又は乾式のどちらかの条件下での製粉又は粉砕によって得ることができる。しかし、他のいずれかの好適な方法、例えば沈降、超臨界溶液の急速膨張、スプレードライ、天然起源の砂又は泥の分級又は分画、水の濾過、ゾル−ゲル法、スプレー反応合成、火炎合成又は液体泡合成によって、微粉化粒子を生成することも可能である。
【0083】
例えば、ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料は、0.1〜50.0μm、好ましくは0.2〜25.0μm、より好ましくは0.3〜10.0μm及び最も好ましくは0.5〜5.0μmの重量中央粒径d50を有する。
【0084】
本文書を通じて、アルカリ土類金属炭酸塩含有材料及び他の材料の「粒径」は、これの粒径分布によって説明される。
【0085】
本明細書において、値dは、粒子のx重量%がd未満の直径を有する粒径を表す。このことは例えばd20値が、全粒子の20重量%がこの粒径よりも小さい粒径であることを意味する。d50値はこのため重量中央粒径であり、即ちすべての粒子の50重量%がこの粒径より大きく、残りの50重量%がこの粒径より小さい。本発明の目的のために、別途指摘しない限り、粒径は重量中央粒径d50として規定する。d98値は、全粒子の98重量%がこの粒径より小さい粒径である。粒径は、Micromeritics Instrument CorporationのSedigraph(商標)5100又は5120装置を用いて決定した。方法及び機器は当業者に知られており、フィラー及び顔料の粒径を決定するためによく使用されている。測定は0.1重量%Na水性溶液中で行った。高速撹拌機を使用してサンプルを分散させ、超音波処理した。
【0086】
本発明の一実施形態において、ステップb)のアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料は、BET等温線を使用して窒素ガス吸着によって測定した(ISO9277:2010)、0.01〜200.0m/g及び好ましくは1.0〜100.0m/gのBET比表面積を有する。
【0087】
追加的に又は代替的に、ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料は、ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料の総重量に対して、0.02〜50.0重量%、0.03〜25.0重量%又は0.05〜10.0重量%のHCl不溶解成分を含むことができる。好ましくは、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料のHCl不溶解成分は、炭酸カルシウムの総重量に対して1.0重量%を超えない。HCl不溶解成分は、例えば石英、シリケート又は雲母などの鉱物であることができる。
【0088】
ステップb)における少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料は、乾燥形態又は水性形態で供給される。
【0089】
ステップb)における少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料が乾燥形態で添加される場合、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料は、粉末形態又は粒状形態であることができる。
【0090】
少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料に関する「乾燥」という用語は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料の重量に対して0.3重量%未満の水を有する材料であると理解される。水の%は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料を220℃まで加熱して、蒸気として放出され、(100ml/分の)窒素ガス流を使用して単離した含水量を電量カールフィッシャー装置にて決定する、電量カールフィッシャー測定方法によって決定する。
【0091】
ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料が乾燥形態で供給される場合、乾燥アルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、スラリーメイクダウン(make−down)システムに投入され、ここで次にステップd)において水と混合される。代替的に、ステップd)において、乾燥アルカリ土類金属炭酸塩含有材料を水と混合する。例えば、アルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、コンテナ、好ましくは反応槽(1)中で水と混合されるか、又は乾燥アルカリ土類金属炭酸塩含有材料が水流中に投入される。
【0092】
ステップb)における少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材、好ましくは炭酸カルシウム含有材料を水性形態で添加する場合、ステップd)において添加される少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料は、水性懸濁液の形態であって、この懸濁液の総重量に対して0.01〜20.0重量%、より好ましくは1.0〜15.0重量%、最も好ましくは2.0〜10.0重量%の固体含有量を有する水性懸濁液の形態である。このスラリーは、好ましくは、例えば30.0〜60.0重量%の間の、例えば約40重量%の固体含有量を有し、いずれの分散剤も使用することなく高濃縮スラリーを使用して、又は固体形態の、例えば粉末状として又は粒状形態のアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料を使用して、現場で生成される。
【0093】
本発明の目的のために、「懸濁液」又は「スラリー」は、溶媒、即ち水性溶媒及びアルカリ土類金属炭酸塩含有材料及び/又はアルカリ土類金属炭酸水素塩の粒子を含む系を指し、アルカリ土類金属炭酸塩含有材料及び/又はアルカリ土類金属炭酸水素塩の粒子の少なくとも一部は、水性溶媒中に不溶性固体として存在する。前記用語は、アルカリ土類金属炭酸塩含有材料及び/又はアルカリ土類金属炭酸水素塩粒子の一部が水性溶媒に溶解していることを排除するものではない。
【0094】
少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料に加えて、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料を含む懸濁液は、さらなる微粉化鉱物を含むことができる。一実施形態によれば、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料を含む懸濁液は、微粉化炭酸カルシウムマグネシウム、例えばドロマイト石灰石、石灰質ドロマイト又は半焼成ドロマイト、焼成ドロマイトなどの酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム及び/又は必須微量元素を含む他の鉱物を含むことができる。
【0095】
例えば、ステップb)における少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料は、貯蔵槽(13)に供給され、貯蔵槽(13)は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料を含む懸濁液の調製に好適である容器(14)に連結されている。好ましくは、副流(15)又は副流の副分岐(15b)に供給された水が、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料を含む懸濁液の調製に使用されるように、容器(14)は副流(15)に連結され、又は副流が副分岐を含む場合、容器(14)は好ましくは副流の副分岐(15b)に連結される。次いで、ステップc)を実施するために、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料を含む懸濁液(16)をコンテナ、好ましくは反応槽(1)に移送する。副流(15)が副分岐を含む場合、副流の副分岐(15b)で調製された少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料を含む懸濁液は、副流の主分岐(15a)に最初に導入され、副流の主分岐(15a)において得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料を含む希釈懸濁液は、方法ステップc)を実施するためにコンテナ、好ましくは反応槽(1)に移送される。したがって、貯蔵槽(13)及び容器(14)は、副流(15)の一部であり得る。
【0096】
一実施形態において、アルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、コンテナ、好ましくは反応槽(1)内で水と混合され得る。即ち、ステップb)における少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料は、貯蔵槽(13)に供給されることができ、貯蔵槽(13)はコンテナ、好ましくは反応槽(1)に直接連結されている。
【0097】
少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、例えば炭酸カルシウム含有材料は、好ましくは、投入ユニット(25)を介して水流中に、又は直接、槽に投入される。投入ユニット(25)は、当業者に知られており、通例、アルカリ土類金属炭酸塩含有材料を投入するために使用される任意の種類の投入ユニットであり得る。
【0098】
別の実施形態において、ステップb)における少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料は、副流(15)に直接連結された貯蔵槽(13)に供給され、又は貯蔵槽(13)は、副流(15)若しくは副流が副分岐を含む場合、副流の副分岐(15b)に供給された水が少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料を含む懸濁液の調製に使用されるように、副流の分岐(15b)に直接連結されている。本実施形態において、ステップb)における少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料はこのため、例えば、ステップ(c)を実施するために、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料を含む懸濁液(16)をコンテナ、好ましくは反応槽(1)に移送する前に、副流(15)又は副流の副分岐(15b)に直接投入される。代替的に、副流(15)が副分岐を含む場合、副流の副分岐(15b)で調製された少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料を含む懸濁液は、副流の主分岐(15a)に最初に誘導され、副流の主分岐(15a)において得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料を含む希釈懸濁液は、方法ステップc)を実施するためにコンテナ、好ましくは反応槽(1)に移送される。
【0099】
本方法が主工程流(17)から成る場合、即ち少なくとも1つの副流(15)を含まない場合、例えば、ステップb)における少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料は、貯蔵槽(13)に供給され、貯蔵槽(13)は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料を含む懸濁液の調製に好適である容器(14)に好ましくは連結されている。好ましくは、容器(14)は、主工程流(17)に供給された水が、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料を含む懸濁液の調製に使用されるように、主工程流(17)に連結されている。ステップc)を実施するために、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料を含む懸濁液(16)は次いで、コンテナ、好ましくは反応槽(1)に移送される。
【0100】
一実施形態において、アルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、コンテナ、好ましくは反応槽(1)内で主工程流(17)の水と混合され得る。即ち、ステップb)における少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料は、貯蔵槽(13)に供給されることができ、貯蔵槽(13)はコンテナ、好ましくは反応槽(1)に直接連結されている。
【0101】
別の実施形態において、ステップb)における少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料は、主工程流(17)に供給された水が少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料を含む懸濁液の調製に使用されるように、主工程流(17)に直接連結された貯蔵槽(13)に供給される。よって、本実施形態において、ステップb)における少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料は、例えば、ステップc)を実施するために、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料、好ましくは炭酸カルシウム含有材料(16)を含む懸濁液をコンテナ、好ましくは反応槽(1)に移送する前に、主工程流(17)に直接投入される。
【0102】
主工程流(17)が1つ以上の副分岐を含む場合、炭酸カルシウム含有材料は、主工程流の副分岐(17b)に直接的に投入することができるか、又は容器(14)を主工程流の副分岐(17b)と連結することができる。
【0103】
<ステップc):CO又は酸の供給>
本発明の方法のステップc)によれば、CO又は5未満のpK値を有する酸が供給される。
【0104】
好ましくは、5未満のpK値は25℃で測定される。
【0105】
使用される二酸化炭素は、ガス状二酸化炭素、液体二酸化炭素、固体二酸化炭素並びに二酸化炭素と燃焼工程又はか焼工程などの工業工程から排出される煙道ガスを含有する二酸化炭素などの他のガスとのガス混合物から選択される。好ましくは、二酸化炭素はガス状二酸化炭素である。二酸化炭素と他のガスとの気体混合物が使用される場合、二酸化炭素は、ガス状混合物の総体積に対して90.0〜約99.0体積%の範囲、好ましくは95.0〜99.0体積%の範囲で存在する。例えば二酸化炭素は、気体混合物の総体積に対して少なくとも97.0体積%の量で存在する。
【0106】
本発明の方法において使用される酸は、好ましくは、25℃で4未満のpK値を有する酸である。例えばステップc)の酸は、硫酸、塩酸、硝酸又はクエン酸及びそれらの混合物から成る群から選択される。一実施形態において、酸は25℃でゼロ以下のpK値を有する酸から選択され、より詳細には硫酸、塩酸又はそれらの混合物から選択される。又は、酸は、酸性pHを有する塩、例えばアルカリ金属水素塩、例えばNaHSO及び/又はKHSOであることができる。
【0107】
好ましくは、ステップc)においてCOが供給される。
【0108】
一実施形態において、CO又は5未満のpK値を有する酸がコンテナ(1)に投入される。好ましくは、コンテナ(1)は、再循環空気流(5)に連結されている。例えば、再循環空気流(5)は、空気流がコンテナ(1)の底部から上部方向に再循環されるように配置される。一実施形態において、ステップc)のCO又は5未満のpK値を有する酸が再循環空気流(5)に注入される。即ち、ステップc)のCO又は5未満のpK値を有する酸が、再循環空気流(5)の空気又は工程流体に添加される。
【0109】
<ステップd):水と少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料及びCO又は酸との混合>
本発明の方法のステップd)によれば、ステップa)の水は、ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料及びステップc)のCO又は酸と任意の順序で混合される。
【0110】
ステップd)による、ステップa)の水とステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料及びステップc)のCO又は酸との混合は、当業者に知られている任意の従来手段によって実施することができる。好ましくは、混合は、混合化及び/又は均質化条件下で行ってもよい。当業者は、混合速度及び温度などのこれらの混合化及び/又は均質化条件を自分の処理装置に適合させるであろう。
【0111】
例えば混合はコンテナ、好ましくは反応槽(1)内で行われ得る。このような槽は当業者に周知であり、広範囲の供給者から入手可能である。
【0112】
特に、ステップa)の水は、少なくとも1種のアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性懸濁液S1が得られるように、ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料及びステップc)のCO又は酸と任意の順序で混合される。
【0113】
ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、本方法が主工程流(17)から成る場合、主工程流(17)又は主工程流の副分岐(17b)で供給された水に添加できることが認識される。代替的に、ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料を、副流(15)又は副流の副分岐(15b)で供給された水に添加する。したがって、本方法が副流(15)を含む場合、ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、好ましくは、副流(15)で供給された水に添加される。副流(15)が副分岐を含む場合、ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、好ましくは、副流の副分岐(15b)で供給された水に添加される。主工程流(17)が副分岐を含む場合、ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、好ましくは、主工程流の副分岐(17b)で供給された水に添加される。
【0114】
好ましくは、ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩を含む水性懸濁液が得られるように、副流(15)、若しくは副流が副分岐を含む場合には副流の副分岐(15b)で供給された水に添加されるか、又は本方法が副流(15)を含まない場合、主工程流(17)又は主工程流の副分岐(17b)で供給された水に添加される。
【0115】
副流(15)、又は副流が副分岐を含む場合、副流の副分岐(15b)で得られた、又は本方法が副流(15)を含まない場合、主工程流(17)又は主工程流の副分岐(17b)で得られた、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料を含む水性懸濁液は、懸濁液の総重量に対して、好ましくは0.01〜20.0重量%の範囲、より好ましくは1.0〜15.0重量%の範囲及び最も好ましくは2.0〜10.0重量%の範囲の固体含有量を有する。
【0116】
二酸化炭素又は5未満のpK値(25℃にて)を有する酸は、副流(15)、若しくは副流が副分岐を含む場合には副流の副分岐(15b)において得られた、又は本方法が副流(15)を含まない場合には、主工程流(17)若しくは主工程流の副分岐(17b)において得られた、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料を含む水性懸濁液中に制御された速度で注入されて、流中に二酸化炭素の気泡の分散液を形成し、気泡を分散液中に溶解させることができる。例えば、最終目標pH値(過剰CO)及び最終目標カルシウム濃度(添加CaCO)に到達するために、二酸化炭素又は5未満のpK値(25℃において)を有する酸が、開始CO濃度に応じて、水中の二酸化炭素の濃度が10〜1500mg/l、好ましくは50〜500mg/lとなるように水中に注入される。
【0117】
したがって、本発明の方法の一実施形態によれば、方法ステップd)はこのため、
ii1) ステップa)の水をステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料と混合するステップ、及び
ii2) ii1)の混合物をステップc)のCO又は酸と混合するステップを含む。
【0118】
本実施形態において、副流(15)、若しくは副流が副分岐を含む場合、副流の副分岐(15b)で得られた、又は主工程流が副流(15)を含まない場合に、主工程流(17)若しくは主工程流の副分岐(17b)で得られた、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料を含む水性懸濁液は、好ましくはコンテナ、より好ましくは反応槽(1)に移送され(16)、反応槽(1)中に二酸化炭素又は5未満のpK値(25℃にて)を有する酸が注入される。より好ましくは、ステップc)のCO又は5未満のpK値を有する酸が、再循環空気流(5)を介してコンテナ(1)に注入される。したがって、ステップc)のCO又は5未満のpK値を有する酸は、好ましくは、再循環空気流(5)の空気又は工程流体に添加される。
【0119】
代替的に、二酸化炭素又は5未満のpK値(25℃にて)を有する酸は、2.5〜7.5の範囲でpH値が調整されるように、副流(15)、若しくは副流が副分岐を含む場合には副流の副分岐(15b)において供給された水に、又は本方法が副流(15)を含まない場合には、主工程流(17)又は主工程流の副分岐(17b)において供給された水に添加される。好ましくは、pH値は、3.0〜7.0の範囲、好ましくは4.0〜5.0の範囲に調整される。
【0120】
二酸化炭素又は5未満のpK値(25℃にて)を有する酸を、副流(15)、若しくは副流が副分岐を含む場合には副流の副分岐(15b)において供給された水に、又は本方法が副流(15)を含まない場合には、主工程流(17)又は主工程流の副分岐(17b)において供給された水に添加すると、このようにして酸性化水が得られる。
【0121】
二酸化炭素又は5未満のpK値(25℃にて)を有する酸は、副流(15)、若しくは副流が副分岐を含む場合には副流の副分岐(15b)において、又は本方法が副流(15)を含まない場合には、主工程流(17)若しくは主工程流の副分岐(17b)において供給された水に制御された速度で注入されて、流中に二酸化炭素の気泡の分散液を形成し、気泡を分散液中に溶解させることができる。例えば、最終目標pH値(過剰CO)及び最終目標カルシウム濃度(添加CaCO)に到達するために、二酸化炭素又は5未満のpK値(25℃において)を有する酸が、開始CO濃度に応じて、水中の二酸化炭素の濃度が10〜1500mg/l、好ましくは50〜500mg/lとなるように水中に注入される。
【0122】
副流(15)、若しくは副流が副分岐を含む場合には副流の副分岐(15b)において、又は本方法が副流(15)を含まない場合には、主工程流(17)若しくは主工程流の副分岐(17b)において供給された水に注入される、二酸化炭素又は5未満のpK値(25℃にて)を有する酸の量は、副流(15)若しくは副流の副分岐(15b)又は主工程流(17)若しくは主工程流の副分岐(17b)において供給された水中にすでに存在する二酸化炭素の量によって変わる。水中にすでに存在する二酸化炭素の量は、次いで例えば水の上流の処理によって変わる。例えば、フラッシュ蒸発によって脱塩された水は、逆浸透によって脱塩された水よりもさらなる量の二酸化炭素を含み、したがって別のpHとなる。例えば、逆浸透によって脱塩された水は、約5.3のpH及び約10mg/lのCOの量を有し得る。
【0123】
このようにして、乾燥形態又は水性懸濁液の形態のステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料が、酸性化水に注入される。
【0124】
したがって、本実施形態において、方法ステップd)は、
i1) ステップa)の水をステップc)のCO又は酸と混合するステップ、及び
i2) i1)の混合物をステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料と混合するステップを含む。
【0125】
本実施形態において、二酸化炭素又は5未満のpK値(25℃にて)を有する酸はしたがって、副流(15)、若しくは副流が副分岐を含む場合には副流の副分岐(15b)において供給された水に、又は本方法が副流(15)を含まない場合には、主工程流(17)又は主工程流の副分岐(17b)において供給された水に添加され、得られた酸性化水はコンテナ、好ましくは反応槽(1)に移送される。さらに、副流(15)、若しくは副流が副分岐を含む場合には副流の副分岐(15b)において、又は本方法が副流(15)を含まない場合には、主工程流(17)又は主工程流の副分岐(17b)において得られた、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料を含む水性懸濁液も、酸性化水が少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料を含む水性懸濁液と混合されるように、コンテナ、好ましくは反応槽(1)に移送される(16)。
【0126】
好ましくは、方法ステップd)は、
ii1) ステップa)の水をステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料と混合すること、及び
ii2) ii1)の混合物をステップc)のCO又は酸と混合すること、によって行われる。
【0127】
本発明の方法の一実施形態において、ステップd)は、好ましくは、ステップa)の水をステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料及びステップc)のCO又は酸と十分に混合することを確実にするために、5〜55℃、より好ましくは15〜30℃の範囲の温度で実施される。
【0128】
少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む溶液S1を得るための、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料を含む水性懸濁液の液相、即ち水中のアルカリ土類金属炭酸塩の溶解速度は、投入された二酸化炭素又は5未満のpK値を有する酸の量だけでなく、懸濁液中の温度、pH、圧力、初期アルカリ土類金属炭酸塩の濃度、並びに二酸化炭素又は5未満のpK値(25℃で)を有する酸が、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料を含む水性懸濁液に導入される投入速度によっても変わることが認識される。
【0129】
ステップd)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性懸濁液S1中の二酸化炭素濃度は、10〜1500mg/lの範囲、より好ましくは20〜1000mg/lの範囲、最も好ましくは50〜400mg/lであることが好ましい。
【0130】
追加的に又は代替的に、ステップd)で得られた水性懸濁液S1中の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩1molを製造するために使用されるCOの量は、1.0〜6.0molの範囲、好ましくは1.0〜3.0molの範囲及び最も好ましくは1.0〜2.0molの範囲である。
【0131】
ステップd)で得られた水性懸濁液中の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩の種類は、本発明の方法のステップb)で提供される少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料によって変わることに留意されたい。したがって、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料が炭酸カルシウム含有材料を含む場合、ステップd)で得られた水性懸濁液S1中の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩は、炭酸水素カルシウムを含む。又は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料が炭酸カルシウムから成る場合、ステップd)で得られた水性懸濁液S1中の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩は、炭酸水素カルシウムから成る。
【0132】
ステップd)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性懸濁液S1は、アルカリ土類金属炭酸水素塩として、20〜1000mg/lの範囲、好ましくは50〜600mg/lの範囲、及び最も好ましくは80〜400mg/lの範囲のアルカリ土類金属濃度を好ましくは有することが認識される。本発明の方法の一実施形態において、炭酸水素カルシウムである、ステップd)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性懸濁液S1は、炭酸水素カルシウムとして、20〜1000mg/lの範囲、好ましくは50〜600mg/lの範囲及び最も好ましくは80〜400mg/lのカルシウム金属濃度を有する。
【0133】
上記のように、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性懸濁液S1がステップd)で得られる。
【0134】
ステップd)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性懸濁液S1は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料の未溶解固体粒子をさらに含み、したがって少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性懸濁液S1を濾過ステップe)に供する。
【0135】
このことを考慮して、ステップd)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性懸濁液S1は、好ましくは10NTUを超える濁度値を有し、より好ましくは水性懸濁液S1は、可視固形分を含み、即ち不透明である。
【0136】
本発明の意味における「濁度」は、肉眼では一般に見えない個々の粒子(懸濁固体)によって引き起こされる流体の曇り又は濁りを説明する。濁度の測定は水質の主要な検査であり、比濁計で行うことができる。本発明で使用する較正比濁計による濁度の単位は、ネフェロメ濁度単位(NTU)として規定されている。
【0137】
本発明の一実施形態において、ステップd)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性懸濁液S1は、水性懸濁液S1の総重量に対して、好ましくは0.01〜10.0重量%の範囲、より好ましくは0.5〜10.0重量%及び最も好ましくは1.2〜8.0重量%の範囲の固体含有量を有する。
【0138】
<ステップe):水性懸濁液S1の少なくとも一部の濾過>
本発明の方法のステップe)によれば、ステップd)で得られた水性懸濁液S1の少なくとも一部は、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2を得るために、水性懸濁液S1を少なくとも1つの浸漬型膜モジュールに通過させることによって濾過される。
【0139】
濾過ステップe)は、好ましくはコンテナ、好ましくは反応槽(1)中で行われ得る。
【0140】
本発明の方法の一実施形態において、ステップe)は、好ましくは、ステップa)の水をステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料及びステップc)のCO又は酸と十分に混合することを確実にするために、5〜55℃、より好ましくは15〜45℃の範囲の温度で実施される。
【0141】
方法ステップd)及びe)は、別々に又は同時に、即ち異なるコンテナ又は同じコンテナ内で行われ得ることが認識される。したがって、方法ステップd)及びe)は、1個以上のコンテナ内で行うことができる。
【0142】
例えば、ステップd)及びe)を異なるコンテナ、即ち別々に行う場合、方法ステップd)及びe)を2個以上のコンテナ、好ましくは2個のコンテナで行う。本実施形態において、方法ステップe)が方法ステップd)の後に行われることが認識される。
【0143】
代替的に、方法ステップd)及びe)を同じコンテナ内で行う。本実施形態において、方法ステップd)及びe)が同時に行われることが認識される。
【0144】
全体的なエネルギー消費量の低減及びより高いコスト効率を考慮して、ステップd)及びe)を同じコンテナ、即ち同時に、好ましくは反応槽(1)内で行うことが好ましい。
【0145】
方法ステップd)及びe)を同時に行う場合、ステップd)及びe)を好ましくは5〜55℃、より好ましくは15〜45℃の範囲の温度にて行う。
【0146】
水性懸濁液S1の少なくとも一部を少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)によって濾過することは、本発明の方法の1つの特定の要件である。好ましくは、水性懸濁液S1の総量が、少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)によって濾過される。
【0147】
したがって、少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)は、コンテナ内、好ましくは反応槽(1)内に配置される。
【0148】
少なくとも1つの浸漬型膜モジュールは、当業者に知られており、汚泥並びに鉱物、顔料及び/又は充填剤を含む水性懸濁液の濾過に通例使用される任意の種類の浸漬型膜モジュールであり得る。例えば、東レ製の浸漬型膜モジュールが使用され得る。
【0149】
少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)、即ち膜は、好ましくは1μm未満、より好ましくは0.1μm未満、例えば約0.04〜0.9μm又、例えば約0.04〜0.08μmの細孔径を有する。少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)の膜は、セラミック、ポリマー、又は他の合成材料からなり得る。例えば、少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)は、焼結材料、多孔質磁器、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンスルホン、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)又はテフロン(登録商標)などの合成ポリマー及びそれらの混合物を含む群から選択される材料から作製された膜を含む。一実施形態において、少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)は、繊維又は不織布、例えばポリエチレン、ポリプロピレン及びそれらの混合物などの合成ポリマーを含む群から選択される材料から作製された繊維又は不織布をさらに含む。
【0150】
少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)の数は、方法の規模によって変わることが認識される。当業者は、使用される特定の方法の規模に、浸漬型膜モジュールのこの数を適合させることができる。
【0151】
少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)は、好ましくは、高い流束、即ち単位膜面積及び時間あたりの高い流量(流束=l/[m*h])を有する。例えば、少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)は、10l/(mh)以上、好ましくは20〜100l/(mh)の範囲、最も好ましくは40〜100l/(mh)の範囲の流束を有する。
【0152】
少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)は、空気又は工程流体が少なくとも1つの浸漬型膜モジュールの表面の少なくとも一部にわたって再循環(5)するように配置されることが好ましい。このように配置することは、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性懸濁液S1の生成効率を改善するために、コンテナ、好ましくは反応槽(1)にCOを効率的に導入できるという利点を有する。さらに、この配置は、少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)の汚れを低減し得るクロスフロー通気によって、少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)の洗浄をもたらし得る。さらに、この配置は、均質な懸濁液を維持し、未溶解粒子の沈降を防止するという利点を有する。
【0153】
一実施形態において、空気又は工程流体は、少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)の表面の少なくとも一部にわたって、少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)並びに/又はコンテナ、好ましくは反応槽(1)、好ましくは少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)及びコンテナ、好ましくは反応槽(1)の底部から上部方向に再循環する(5)。
【0154】
ステップc)(4)のCO又は酸は、好ましくは、少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)の表面の少なくとも一部にわたって再循環する(5)空気又は工程流体に添加されることが認識される。
【0155】
空気又は工程流体が少なくとも1つの浸漬型膜モジュールの表面の少なくとも一部にわたって再循環する場合、コンテナ、好ましくは反応槽(1)を密閉して、コンテナ、好ましくは反応槽(1)が供給材料として使用され、コンテナの底部、好ましくは反応槽(1)の底部にて再導入される(5)ことが好ましい。
【0156】
したがって、ステップd)及びe)は、好ましくは同じコンテナ、好ましくは反応槽(1)内で実施され、空気又は工程流体は、少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)の表面の少なくとも一部にわたって、少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)及びコンテナ、好ましくは反応槽(1)の底部から上部方向に再循環する(5)。より好ましくは、方法ステップd)及びe)を同じコンテナ、好ましくは反応槽(1)内で実施し、ステップc)のCO又は酸(4)を、少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)及びコンテナ、好ましくは反応槽(1)の表面の少なくとも一部にわたって再循環する(5)空気又は工程流体に添加する。
【0157】
再循環空気流(5)は、好ましくは副流(15)から、又は本方法が副流(15)を含まない場合には主工程流(17)から独立している、即ち、再循環空気流(5)の入口及び出口がコンテナ、好ましくは反応槽(1)に、副流(15)又は副流の主分岐(15a)又は副流の副分岐(15b)又は主工程流(17)又は主工程流の主分岐(17a)又は主工程流の副分岐(17b)の入口及び出口とは異なる位置に連結されていることが認識される。
【0158】
上記の洗浄に加えて、本方法は、少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)を洗浄するステップを含み得る。
【0159】
例えば、本発明の方法は、少なくとも1つの浸漬型膜モジュールを逆洗するさらなるステップf)を含む。
【0160】
本発明の意味における「逆洗」という用語は、少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)を洗浄するための、少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)の他方の側から、即ち少なくとも1つの浸漬型膜モジュール及び/又はコンテナの透過側から供給側への水及び/又は化学薬品の添加を指す。
【0161】
例えば、少なくとも1つの浸漬型膜モジュール(2)の逆洗は、水で行われ得る。本発明の方法が、少なくとも1つの浸漬型膜(2)を水で逆洗するさらなるステップf)を含む場合、逆洗は5〜60分ごと、例えば10分〜15分ごとに行われ得る。
【0162】
さらに、CO又は5未満のpK値(25℃において)を有する酸を水に添加することができる。この実施形態において、逆洗は週に1回又は2回行われ得る。
【0163】
本発明の方法は、バッチ法、半連続法又は連続法の形態で実施できることが認識される。
【0164】
本出願の意味において「半連続法」という用語は、連続形態で実施される少なくとも1つの方法ステップを指す。
【0165】
本発明の方法により得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2は、好ましくは0.001〜300mg/lの範囲、より好ましくは0.1〜150mg/lの範囲、最も好ましくは0.5〜50の範囲の二酸化炭素濃度を有する。
【0166】
ステップe)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2は、アルカリ土類金属炭酸水素塩として、20〜1000mg/lの範囲のアルカリ土類金属濃度を有することが認識される。好ましくは、ステップe)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2は、アルカリ土類金属炭酸水素塩として、50〜500mg/l及びより好ましくは80〜300mg/lの範囲のアルカリ土類金属濃度を有する。
【0167】
本発明の方法の一実施形態において、ステップe)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2は、炭酸水素カルシウムを含み、該水性溶液は、炭酸水素カルシウムとして、20〜1000mg/lの範囲、好ましくは50〜500mg/lの範囲及びより好ましくは80〜300mg/lのカルシウム金属濃度を有する。
【0168】
本発明の方法の別の実施形態において、ステップe)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2は、炭酸水素マグネシウムを含み、該水性溶液は、炭酸水素マグネシウムとして、20〜1000mg/lの範囲、好ましくは50〜400mg/l及びより好ましくは80〜300mg/lの範囲のマグネシウム金属濃度を有する。
【0169】
代替的に、ステップe)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2は、炭酸水素カルシウム及び炭酸水素マグネシウムを含み、該水性溶液は、炭酸水素カルシウム及び炭酸水素マグネシウムとして、20〜1000mg/lの範囲、好ましくは50〜500mg/l及びより好ましくは80〜300mg/lの範囲の総カルシウム及びマグネシウム金属濃度を有する。
【0170】
本発明の一実施形態において、ステップe)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2は、水性溶液の総重量に対して0.001〜2.0重量%の範囲、より好ましくは0.001〜0.05重量%の範囲及び最も好ましくは0.001〜0.03重量%の範囲の、少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩の溶解含有量を有する。
【0171】
追加的に又は代替的に、ステップe)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2は、好ましくは0.5NTU未満及びより好ましくは0.3NTU未満の濁度値を有する。例えば、ステップe)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2は、0.2NTU未満又は0.1NTU未満の濁度値を有する。
【0172】
ステップe)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2は、好ましくは6.1〜8.9の範囲及び好ましくは6.5〜8.5の範囲のpH値を有することが認識される。
【0173】
本発明の方法の一実施形態によれば、ステップe)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2は、1〜55°dH、好ましくは3〜30°dH及び最も好ましくは4.5〜17°dHのドイツ硬度を有する。
【0174】
本発明の目的のために、ドイツ硬度は「ドイツ硬度、°dH」で表される。この点について、ドイツ硬度とは、アルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液中のアルカリ土類イオンの総量を指す。
【0175】
本発明の方法によって得られる少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液は、ステップa)で供給される水のドイツ硬度よりも少なくとも3°dH、より好ましくは少なくとも5°dH高いドイツ硬度を有することが好ましい。
【0176】
一実施形態において、本発明の方法によって得られる少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2は、ミネラル化水として好適である。このことは好ましくは、本方法が少なくとも1つの副流(15)を含まない場合、又は少なくとも1つの副流(15)が副分岐を含まない場合に当てはまる。即ち、本発明の方法によって得られる少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2は、本方法が主工程流(17)から成る場合にはミネラル化水である。
【0177】
代替的に、本発明の方法によって得られる少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2は、水のミネラル化及び/又は安定化に好適である。例えば、本発明の方法によって得られる少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩の水性溶液S2は、脱塩水又は天然軟水のミネラル化及び/又は安定化に好適である。このことは好ましくは、方法が少なくとも1つの副流(15)を含む場合、又は少なくとも1つの副流(15)が副分岐を含む場合に当てはまる。
【0178】
例えば、ステップe)で得られた少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2は、水のミネラル化及び/又は安定化のために副流(15)から主工程流(17)に移送される(9)。
【0179】
本発明の方法によって得られる少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2を用いてミネラル化することができる水は、種々の供給源から得ることができ、蒸留水、工業用水、水道水、脱塩海水、汽水又は塩水などの脱塩水、処理廃水又は地下水、地表水又は雨水などの自然軟水の中から選択できる。好ましくは、本発明の方法によって得られる少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液S2を用いてミネラル化される水は、脱塩水、例えば脱塩工程から得られた透過液又は蒸留液である。
【0180】
得られた良好な結果を考慮して、本出願は、別の態様において、水のミネラル化及び/又は安定化方法であって、
i)ミネラル化される水を供給するステップ、
ii)本明細書で定義された方法によって得られる少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液を供給するステップ、
iii)ステップi)のミネラル化される水と、ステップii)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液とを混合して、ミネラル化水を得るステップ
を含む方法についてさらに言及する。
【0181】
ミネラル化及び/又は安定化される水の定義、本方法によって得られる少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液及びその好ましい実施形態に関して、本発明の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の調製方法の技術的詳細を論じた場合の、上で提供した説明を参照する。
【0182】
ステップii)で供給される少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液は、ステップi)で供給されたミネラル化される水のドイツ硬度より少なくとも3°dH、より好ましくは少なくとも5°dH高いドイツ硬度を有することが好ましい。
【0183】
残存する「攻撃的」二酸化炭素を中和し、及び/又はpHを上昇させて安定したバランスのとれた最終水質を達成するためには、攻撃的な二酸化炭素を除去すること、ステップiii)で得られたミネラル化水に塩基を添加すること、又はその両方の組み合わせが好ましい。
【0184】
したがって、水のミネラル化及び/又は安定化のための方法は、好ましくは、攻撃的なCOの除去、ステップ(iii)のミネラル化水への塩基の添加、除去及びミネラル化水への塩基の添加の両方のいずれかによる、pH調整のさらなるステップ(iv)を含む。
【0185】
一実施形態において、好ましくは水中で供給される塩基を主工程流(17)においてミネラル化水に添加して、ミネラル化水のpH値を7.0〜9.0の範囲に調整し、アルカリ土類金属炭酸水素塩としてのアルカリ土類金属濃度が10〜300mg/lの範囲のミネラル化水を生成する。
【0186】
このようにして、主工程流(17)に塩基、例えばCa(OH)(21)を添加することが好ましい。
【0187】
塩基は、好ましくはアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物である。より好ましくは、塩基は水酸化カルシウム及び/又は水酸化マグネシウム及び/又は水酸化ナトリウムから選択されるアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウム又は水酸化ナトリウムである。1つのアルカリ土類金属水酸化物である塩基は、好ましくは水酸化カルシウムから成る。
【0188】
本発明の方法の一実施形態によれば、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物である塩基は、好ましくは微粉化アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物である。
【0189】
例えば、アルカリ土類金属水酸化物である塩基は、0.1〜100.0μm、好ましくは0.2〜50.0μm、より好ましくは0.3〜25.0μm及び最も好ましくは0.5〜10.0μmの重量中央粒径d50を有する。
【0190】
本発明の一実施形態において、アルカリ土類金属水酸化物である塩基は、BET等温線を使用して窒素ガス吸着によって測定した(ISO9277:2010)、0.01〜200.0m/g及び好ましくは1.0〜100.0m/gのBET比表面積を有する。
【0191】
アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物である塩基は、好ましくは、ミネラル化水に添加されるアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物の濃度が0.1〜100mg/lの範囲及び好ましくは0.5〜10mg/lとなるように添加される。
【0192】
塩基は好ましくは水中で供給される。したがって、塩基は、好ましくは、溶液又は懸濁液の形態であることが認識される。
【0193】
アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物である塩基が溶液又は懸濁液の形態である場合、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物の含有量は、溶液又は懸濁液の総重量に対して、好ましくは0.5重量%〜50重量%、好ましくは約20重量%である。
【0194】
アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物溶液又は懸濁液は、現場で、又は本発明の方法とは独立して生成され得る。アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物溶液又は懸濁液が本発明の方法とは独立して調製される場合、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物溶液又は懸濁液は、好ましくはステップa)で供給される水から調製されない。代替的に、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物溶液又は懸濁液は、方法ステップa)で供給される水を用いて調製される。
【0195】
主工程流(17)において塩基、好ましくはアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物をミネラル化水に添加することにより、ミネラル化水のpH値を7.0〜9.0の範囲に調整する。好ましくは、ミネラル化水のpH値は、7.2〜8.9の範囲、好ましくは7.8〜8.4の範囲のpH値に調整される。pHの調整は、再ミネラル化のレベル及び目標最終水質によって変わることが認識される。
【0196】
一実施形態において、ステップa)で供給される水の一部が主工程流(17)を形成し、水の残りの部分が少なくとも1つの副流(15)を形成する。このため、好ましくは少なくとも1つの副流(15)が主工程流(17)に入口及び出口によって連結されるように、少なくとも1つの副流(15)が主工程流(17)に連結される。
【0197】
一実施形態において、少なくとも1つの副流(15)の出口は、好ましくは、主工程流(17)における少なくとも1つの副流(15)の入口の後に位置する。
【0198】
本発明の意味における「後」という用語は、設備の別のユニットの後の後続する位置を指す。
【0199】
本発明の方法が塩基、例えばCa(OH)(21)を主工程流(17)に添加することをさらに含む場合、塩基は好ましくは、ミネラル化水中に、即ち少なくとも1つの副流(15)の出口の後に注入される。アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物溶液又は懸濁液が方法ステップa)で供給される水で調製される場合、溶液又は懸濁液が副流(21)にて生成されることが好ましい。この副流は、好ましくは入口及び出口によって主工程流(17)に連結される。
【0200】
本発明のさらなる態様は、水のミネラル化及び/又は安定化のために、本明細書で定義された方法によって得られる少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水溶性液の使用を言及する。水は、好ましくは脱塩水又は天然軟水である。代替的に、本発明は、ミネラル化水として、本明細書で定義された方法によって得られる少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の使用を言及する。これは好ましくは、方法が少なくとも1つの副流(15)を含まない場合に当てはまる。即ち、ステップb)の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩含有材料が主工程流(17)に添加される。
【0201】
ミネラル化される水、本方法によって得られる少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液及びその好ましい実施形態の定義に関して、本発明の少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸水素塩を含む水性溶液の調製方法の技術的詳細を論じる場合の、上で提供した説明を参照する。
【0202】
以下の実施例は、追加的に本発明を説明し得るが、本発明を例示された実施形態に限定することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0203】
(1):反応槽
(2):浸漬型膜(モジュール)
(3):生成物貯蔵槽
(4):二酸化炭素の注入
(5):再循環空気
(6):再循環空気の圧力測定
(7):反応槽内の圧力測定
(8):水性溶液中での圧力測定
(9):水性溶液S2
(10):水性溶液の流量測定
(11):反応槽内の水位測定
(12):水性溶液中の濁度測定
(13):投入スクリュフィーダ付き炭酸カルシウム貯蔵サイロ
(14):炭酸カルシウムの懸濁液を調製するための容器
(15):工程への副流水供給
(16):微粉化炭酸カルシウムの懸濁液
(17):主工程流
(17a):主工程流の主分岐
(17b):主工程流の副分岐
(18):配合水流のpHの測定
(19):配合水流の導電率の測定
(20):Ca(OH)の貯蔵槽
(21):Ca(OH)投入工程流
(22):最終水流のpH測定
(23):最終水流の導電率測定
(24):最終処理水流
(25):炭酸カルシウム投入スクリュフィーダ
【図面の簡単な説明】
【0204】
図1】本発明による一般的な方法を実施するのに好適な設備を示す。
図2】本発明によるミネラル化方法を実施するのに好適な設備を示す。
図3】本発明による、pH調整方法を用いてミネラル化を実施するのに好適な設備を示す。
図4】主工程流(17)のみを含む方法であって、炭酸カルシウムが浸漬型膜モジュール(2)を含むコンテナ(1)中に投入される方法の概略図を示す。
図5】主工程流(17)のみを含む方法であって、炭酸カルシウムが主工程流(17)に直接投入される方法の概略図を示す。
図6】主工程流(17)のみを含む方法であって、炭酸カルシウムが炭酸カルシウムの懸濁液を調製するための容器(14)に直接投入される方法の概略図を示す。
図7】主流の主分岐(17a)及び主流の1つの副分岐(17b)を含む方法であって、炭酸カルシウムが主流の副分岐(17b)に位置する炭酸カルシウムの懸濁液を調製するための容器(14)に投入される方法の概略図を示す。
図8】主流の主分岐(17a)及び主流の1つの副分岐(17b)を含む方法であって、炭酸カルシウムが主流の副分岐(17b)に直接投入される方法の概略図を示す。
図9】主流(17)及び副流(15)を含む方法であって、炭酸カルシウムが、副流(15)内に位置する浸漬型膜モジュール(2)を含むコンテナ(1)中に投入される方法の概略図を示す。
図10】主流(17)及び副流(15)を含む方法であって、浸漬型膜モジュール(2)を含むコンテナ(1)が副流(15)内に位置し、炭酸カルシウムが副流(15)中に投入される方法の概略図を示す。
図11】主流(17)及び副流(15)を含む方法であって、浸漬型膜モジュール(2)を含むコンテナ(1)及び再循環空気(5)が副流(15)内に位置し、炭酸カルシウムが副流(15)内に位置する炭酸カルシウムの懸濁液を調製するための容器(14)中に投入される方法の概略図を示す。この概略図は、Ca(OH)投入工程流(21)をさらに示す。
図12】主流(17)、副流の主分岐(15a)及び副流の副分岐(15b)を含む方法であって、炭酸カルシウムは、副流の副分岐(15b)に位置する炭酸カルシウムの懸濁液を調製するための容器(14)に投入される方法の概略図を示す。この概略図は、副流の主分岐(15a)に位置する、浸漬型膜モジュール(2)及び再循環空気(5)を含むコンテナ(1)並びにCa(OH)投入工程流(21)をさらに示す。
図13】主流(17)、副流の主分岐(15a)及び副流の副分岐(15b)を含む方法であって、炭酸カルシウムが副流の副分岐(15b)に直接投入される方法の概略図を示す。この概略図は、副流の主分岐(15a)に位置する、浸漬型膜モジュール(2)及び再循環空気(5)を含むコンテナ(1)並びにCa(OH)投入工程流(21)をさらに示す。
図14】試験3−本発明による方法を使用する水酸化マグネシウムの溶解例で生成されたグラフ結果を示す。
【0205】
本発明の範囲及び重要性は、本発明のある実施形態を説明するためであり、非限定的である以下の実施例に基づいてより良好に理解される。
【実施例】
【0206】
1 測定方法
以下では、実施例で行った測定方法について説明する。
【0207】
<水性懸濁液又は溶液のpH>
内蔵温度補償及びWTWWTW SenTix 940 pHプローブを備えたWTW Multi 3420 pHメーターを使用して、懸濁液又は溶液のpHを測定した。pH電極の較正は、pH値4.01、7.00及び9.21の標準を使用して行った。報告したpH値は、機器によって検出した終点値である(終点は、測定した信号の平均からの差が前の6秒間にわたって0.1mV未満である場合である。)。
【0208】
<水性懸濁液の固体含有量>
水分析装置
固体含有量(「乾燥重量」としても知られている。)は、スイスのMettler−Toledo社製の水分分析装置HR73を以下の設定:温度120℃、自動スイッチオフ3、標準乾燥、生成物5から20gを使用して決定した。
【0209】
<粒状材料の粒径分布(粒径がX未満の粒子の質量%)及び重量中央径(d50)>
微粒子材料の重量粒径及び粒径質量分布は、沈降法、即ち重力場における沈降挙動の分析によって測定した。測定は、Micromeritics Instrument Corporation製のSedigraph(商標)5120又はSedigraph(商標)5100を用いて行った。
【0210】
当該方法及び機器は当業者に知られており、フィラー及び顔料の粒径を決定するためによく使用されている。測定は0.1重量%Na水性溶液中で行う。高速撹拌機及び超音波を使用してサンプルを分散させる。
【0211】
<溶液の水性懸濁液の濁度>
濁度は、ハックランゲ(Hach Lange)2100AN ISラボラトリ濁度計(Laboratory Turbidimeter)を使用して測定し、0.1未満、20、200、1000、4000及び7500NTUのStabCal濁度標準(ホルマジン標準)を使用して較正を行った。
【0212】
<水性溶液の硬度>
水の硬度に関与するイオン、即ちCa2+(aq)及びMg2+(aq)は、キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA−二ナトリウム塩0.01M)を用いた滴定によって求められてきた。pHを10にて一定に緩衝するために、NH−NHCl緩衝液を使用した。指示薬としてEriochrome Black Tを使用した滴定は、溶液がワインレッド色からスカイブルー色に変化するまでCa2+(aq)イオン及びMg2+(aq)イオンによる総硬度を求める。総硬度の量を以下の式によって算出した。
硬度=EDTAの体積(ml)×0.01×100.08×1000/(サンプルの体積(ml))
【0213】
マグネシウム硬度は、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの総濃度並びにカルシウムイオンの濃度を測定することによって算出した。カルシウムイオンの濃度は、50重量/体積%NaOH溶液を添加し、溶液を撹拌し、完全に沈殿するまで待つことにより、マグネシウムイオンをMg(OH)(s)として最初に完全に沈殿させることによって測定した。続いて、ヒドロキシナフトールブルーを添加し、溶液がスカイブルー色に変化するまで0.01M EDTAを用いてサンプルを滴定した。
【0214】
<導電率>
導電率は、対応するMettler Toledo導電率拡張ユニット及びMettler Toledo InLab(R)741導電率プローブを備えたMettler Toledo Seven Multi計測器を使用して25℃で測定した。
【0215】
該機器は、最初に、メトラートレドによる市販の導電率較正ソリューションを使用して、関連する導電率の範囲で較正した。導電率に対する温度の影響は、線形補正モードによって自動的に補正される。測定した導電率は、20℃の基準温度について報告した。報告した導電率値は、機器によって検出した終点値であった(終点は、測定した導電率の平均からの差が最後の6秒間にわたって0.4%未満であるときである。)。
【0216】
<温度>
温度は、Xylem Analyticsの手持ち式WTWプローブで測定した。
【0217】
<水性溶液のアルカリ度>
水性溶液のアルカリ度は、0.1M塩酸溶液による試料の滴定によって求めた。滴定の終点は、4.3の一定pHにて達成される。アルカリ度の量を以下の式によって算出した。
アルカリ度=酸の体積(ml)×0.1×100.08×1000/(2×サンプルの体積(ml))
【0218】
<水性溶液の酸性度>
水性溶液の酸性度は、0.01M水酸化ナトリウム溶液による遊離COの滴定によって求めた。滴定の終点は、8.3の一定pHで達成される。遊離COの量を以下の式によって算出した。
遊離CO=NaOHの体積(ml)×0.01×44.01×1000/試料の体積(ml)
【0219】
<ランゲリア飽和指数(Langelier Saturation Index(LSI))>
ランゲリア飽和指数(LSI)は、水性液体のスケール形成性又は腐食性の傾向を説明する指数であり、正のLSIはスケール形成傾向を示し、負のLSIは腐食性を示す。バランスのとれたランゲリア飽和指数、即ちLSI=0はしたがって、水性液体が化学平衡状態にあることを意味する。LSIは次のように算出する。
LSI=pH−pH
式中、pHは水性液体の実際のpH値であり、pHはCaCO飽和時の水性液体のpH値である。pHは以下のように概算できる:
pH=(9.3+A+B)−(C+D)、
式中、Aは、水性液体中に存在する総溶解固体(TDS)の数値指標であり、Bは、単位Kの水性液体の、温度の数値指標であり、Cは、単位がCaCOのmg/lの、水性液体のカルシウム濃度の数値指標であり、Dは、単位がCaCOのmg/lの、水性液体のアルカリ度の数値指標である。パラメータAからDは、以下の式を使用して求める。
A=(log10(TDS)−1)/10、
B=−13.12×log10(T+273)+34.55、
C=log10[Ca2+]−0.4、
D=log10(TAC)、
式中、TDSは、単位がmg/lの、総溶解固形分であり、Tは、単位が℃の温度であり、[Ca2+]は、単位がCaCOのmg/lの、水性液体のカルシウム濃度であり、TACは、単位がCaCOのmg/lの、水性液体のアルカリ度である。
【0220】
2 実施例
<本発明の設備−重炭酸カルシウムの水性溶液の調製>
本発明による1つの設備の一般的な工程流れ図を図1に示す。この設備は、内部の50mの浸漬型膜(2)を備えた反応槽(1)、投入スクリュフィーダを備えた炭酸カルシウム貯蔵サイロ(13)及び炭酸カルシウムの懸濁液を調製するための容器(14)を含む。
【0221】
炭酸水素カルシウム溶液(9)を透過液流中で生成し、この溶液を使用して別の流れの鉱物含有量及びアルカリ度を上昇させることができる。
【0222】
供給水を逆浸透システムから得て、以下の水仕様の水を生成した:
ナトリウム:1mg/l未満
塩化物:2mg/l未満
カルシウム:8mg/l
マグネシウム:1mg/l未満
アルカリ度:12mg/l(CaCOとして)
°dH:1.12
pH:6.9
導電率:24μS/cm
【0223】
炭酸水素カルシウム溶液は、以下の方法で上記装置を使用して製造することができる。反応槽(1)に最初に、5.0重量%の炭酸カルシウム懸濁液を、反応槽内での水位測定(11)によって求めた、浸漬型膜の表面を覆う規定の体積まで充填する。ブロワは、均質懸濁液が反応槽(1)内に保持され、浸漬型膜(2)の多少の洗浄効果が与えられるように、反応槽(1)の上部から浸漬型膜(2)の底部に位置する散気装置までの空気量(5)の再循環を開始する。空気量(5)は、1時間につき約200回の割合で再循環される。制御量の二酸化炭素が空気流中で(4)において添加される。二酸化炭素が載荷された再循環空気は、反応槽(1)の底部から上部まで浸漬型膜(2)を通過して乱流を生成し、二酸化炭素が空気流から炭酸カルシウム懸濁液へ渡り、懸濁液内の溶解二酸化炭素の量を増加させる。炭酸カルシウムと溶解二酸化炭素との間の反応により、反応槽(1)内にアルカリ性炭酸水素カルシウム溶液が形成される。同時に、炭酸カルシウム懸濁液を容器(14)内で調製するために、炭酸カルシウムを貯蔵サイロ(13)から容器(14)に添加する。添加した炭酸カルシウムの量を正確に測定するために、減量スクリュフィーダが使用される。水も槽に添加し、ミキサーを使用して固体含有量が既知の均質懸濁液を生成する。次いで、反応槽(1)内の未溶解炭酸カルシウムの総量が一定に維持されるように、微粉化炭酸カルシウムの懸濁液(16)を、二酸化炭素との反応によって溶解される炭酸カルシウムの量に等しい速度で反応槽(1)に移送する。濾過された透過液の水性溶液S2(9)は、浸漬型膜(2)を通じて反応槽(1)から抜き取られる。
【0224】
<始動パイロットユニット>
本発明の設備によるパイロットプラントでは、天然炭酸カルシウム粉末(フランス、オルゴンのオムヤインターナショナルAG製のMillicarb(R)、d50=3μm)を出発材料として使用した。水位制御(11)を用いて、調製済み5重量%炭酸カルシウム粉末懸濁液900lを反応装置(1)に充填した。乱流によって膜を再生するために、再循環空気流(5)ファンを10m/hで始動させた。空気流の過圧を(6)によって測定した。
【0225】
[実施例1]
高度載荷濃縮物(約250mg/lのアルカリ度)を生成するために、二酸化炭素99g(4)を1時間以内に再循環空気流に投入した。連続製造は、最初の1時間の再循環時間の終了時に開始した。連続製造中に、250mg/l炭酸カルシウム懸濁液(16)を反応装置(1)に添加して、反応層(1)内の炭酸カルシウムの連続溶解を裏付けた。同時に、双方向投入ポンプを使用して250mg/l重炭酸カルシウム(炭酸カルシウムとして測定)の濃度で、浸漬型膜(2)を通じて透明な水性溶液S2(9)を抜き取った。微粉化炭酸カルシウム(16)と水性溶液(9)の懸濁液の両方の割合は、反応槽(1)における水位測定(11)及び水性溶液S2(9)での流量計測定(10)によって制御した。割合の一次設定は達成可能な膜流束率によって変わり、膜間差圧(8)として測定した。水性溶液S2(9)の品質を濁度測定(12)及び滴定によって制御した。
【0226】
運転条件及び水質の結果を以下の表1及び表2に示す。
【0227】
【表1】
【0228】
【表2】
【0229】
特許出願EP2623467A1と比較して、本発明による設備を使用する上記方法は、はるかに良好なエネルギー効率を有する。EP2623467A1の表4によれば、管状膜モジュール(Microdyne−Module MD 063 TP 2N)からの4種類の異なる試験で、35l/hの透過液が生成された。これらの試験における懸濁液を、1.5バールの圧力下、3200l/hの速度で管状モジュールを通じて循環させ、この透過液流を生成させた。したがって、この透過液を生成するのに必要な水力エネルギーは以下の通りであった:
水力エネルギー(W)=V×ρ×p
式中:
V=流体の流量(m/s)
ρ=流体密度(kg/m
p=ポンプの出口静圧(kPa)
【0230】
特許出願EP2623467A1による例では、以下の入力値であった:
V=3200l/h=8.8e−04m/s
ρ=1000kg/m(その他の詳細物を含まない水の場合)
p=1.5バール=150kPa
→W=8.888e−04×1000×150=133W
【0231】
これにより、平均54l/hの透過液が生成されたため、生成された透過液1立方メートル当たりの電力消費量は、
電力/立方メートル=0.133kW÷0.035m/h=3.8kWh/m
と算出することができる。
【0232】
本発明による設備を使用し、図1に示すように、1250l/h=3.47e−04m/sの透過液を50kPaの圧力下で生成した。
【0233】
したがって、水力エネルギーは以下のように算出される:
水力エネルギー(W)=V×ρ×p=3.47e−04×1000×50=17.4W
【0234】
これにより、平均1250l/hの透過液が生成されたため、生成された透過液1立方メートル当たりの電力消費量は、
電力/立方メートル=0.0174kW÷1.25m/h=0.014kW.h/m
と算出することができる。
【0235】
したがって、具体的な電力消費量(生成された透過液1立方メートル当たりの電力)は、本発明では、特許出願EP2623467A1よりも270分の1より少ない。
【0236】
図1に示し、EP2623467A1号に記載される本発明の設備を用いた試験によるCO効率は、以下のように算出される:
(水中の遊離CO+CO投入量)/COの分子量:(最終アルカリ度−初期アルカリ度)/CaCOの分子量
=(2+110)/44.01g/mol:(220-12)/100.08g/mol=2.54:2.08=1.22:1
【0237】
特許出願EP2623467A1に記載の設備を用いて行った試験によるCO効率は、以下のように示された:
110/44.01g/mol:170/100.08g/mol=2.5:1.7=1.47:1
【0238】
<本発明の設備−脱塩水の鉱物及びアルカリ度含有量を上昇させる重炭酸カルシウムの水性溶液の調製及び投入>
本発明による1つの設備の一般的な工程流れ図を図2に示す。この設備は、内部の50mの浸漬型膜(2)を備えた反応槽(1)、生成物貯蔵サイロ(3)、投入スクリュフィーダを備えた炭酸カルシウム貯蔵サイロ(13)及び炭酸カルシウムの懸濁液を調製するための容器(14)を含む。
【0239】
炭酸水素カルシウム溶液を水性溶液S2(9)中で製造し、主工程流(17)に投入して主工程流の鉱物含有量及びアルカリ度を上昇させる。
【0240】
供給水を逆浸透システムから得て、以下の水仕様の水を生成した:
ナトリウム:1mg/l未満
塩化物:2mg/l未満
カルシウム:8mg/l
マグネシウム:1mg/l未満
アルカリ度:12mg/l(CaCOとして)
°dH:1.12
pH:6.9
導電率:24μS/cm
【0241】
炭酸水素カルシウム溶液は、以下の方法で上記装置を使用して副流中で製造することができる。反応槽(1)に最初に、5.0重量%の炭酸カルシウム懸濁液を、反応槽(1)内での水位測定(11)によって測定した、浸漬型膜(2)の表面を覆う規定の体積まで充填する。ブロワは、均質懸濁液が反応装置(1)内に保持され、膜の多少の洗浄効果が与えられるように、反応槽(1)の上部から浸漬型膜(2)の底部に位置する散気装置までの空気量(5)の再循環を開始する。空気量(5)は、1時間につき約200回の割合で再循環される。制御量の二酸化炭素が空気流中で例えば位置(4)にて添加される。二酸化炭素が載荷された再循環空気は、反応装置の底部から上部まで浸漬型膜(2)を通過して乱流を生成し、二酸化炭素が空気流から炭酸カルシウム懸濁液へ渡り、懸濁液内の溶解二酸化炭素の量を増加させる。炭酸カルシウムと溶解二酸化炭素との間の反応により、反応槽内に炭酸水素カルシウム溶液が形成される。同時に、炭酸カルシウム懸濁液を容器(14)内で調製するために、炭酸カルシウムを貯蔵サイロ(13)から容器(14)に添加する。添加した炭酸カルシウムの量を正確に測定するために、減量スクリュフィーダが使用される。水も容器(14)に添加し、ミキサーを使用して固体含有量が既知の均質懸濁液を生成する。次いで、反応槽(1)内の未溶解炭酸カルシウムの総量が一定に維持されるように、微粉化炭酸カルシウム(16)の懸濁液を、二酸化炭素との反応によって溶解される炭酸カルシウムの量に等しい速度で反応槽(1)に移送する。透明な濃縮炭酸水素カルシウム溶液として濾過した透過液の水性溶液S2(9)を使用して、カルシウム及び重炭酸塩を、双方向投入ポンプによって主工程流(17)に添加する。生成物貯蔵槽(3)は、10分ごとに逆洗シーケンスのための緩衝としても使用した。
【0242】
<始動パイロットユニット>
パイロットプラントでは、天然炭酸カルシウム粉末(フランス、オルゴンのオムヤインターナショナル製のMillicarb(R)、d50=3μm)を出発材料として使用した。反応槽(1)内の水位制御(11)を用いて、調製済み5重量%炭酸カルシウム粉末懸濁液900lを反応槽(1)に充填した。乱流によって膜を再生するために、再循環空気流(5)ファンを10m/hで始動させた。空気流の過圧を(6)によって測定した。
【0243】
[実施例2]
高度載荷濃縮物(約250mg/lのアルカリ度)を生成するために、二酸化炭素99g(4)を1時間以内に再循環空気流に投入した。連続製造は、最初の1時間の再循環時間の終了時に開始した。連続製造中に、250mg/l炭酸カルシウム懸濁液(16)を反応装置(1)に添加して、反応槽(1)内の炭酸カルシウムの連続溶解を裏付けた。同時に、250mg/l重炭酸カルシウム(炭酸カルシウムとして測定)の濃度で、浸漬型膜を通じて透明な水性溶液S2(9)を双方向投入ポンプによって、主流(17)における生成物貯蔵槽(3)を介して抜き取り及び排出した。微粉化炭酸カルシウム(16)と水性溶液S2(9)の懸濁液の両方の割合は、反応槽(1)における水位測定(11)及び流量測定(10)によって制御した。割合の一次設定は達成可能な膜流束率によって変わり、膜間差圧(8)として測定した。水性溶液S2(9)の品質を水性溶液(9)における濁度測定(12)及び滴定によって制御した。第1のブレンドの品質は、pH(18)、電気伝導度(19)及びブレンドされた水流の滴定によって測定した。
【0244】
運転条件及び品質の結果を以下の表3及び表4に示す。
【0245】
【表3】
【0246】
【表4】
【0247】
<本発明の設備−脱塩水の鉱物及びアルカリ度含有量並びに脱塩水の飽和指数に対して脱塩水の安定性を上昇させるための、重炭酸カルシウムの水性溶液の調製及び投入と後続のpH調整>
本発明による1つの設備の一般的な工程流れ図を図3に示す。この設備は、内部に50mの浸漬型膜(2)を備えた反応槽(1)、生成物貯蔵サイロ(3)、投入スクリュフィーダを備えた炭酸カルシウム貯蔵サイロ(13)及び炭酸カルシウムの懸濁液を調製するための容器(14)並びに水酸化カルシウム貯蔵槽(20)及び投入システムを含む。
【0248】
炭酸水素カルシウム溶液を水性溶液S2(9)中で製造し、主工程流(17)に投入して主工程流(17)の鉱物含有量及びアルカリ度を上昇させる。炭酸水素カルシウム溶液の投入後に、5.0重量%の高純度の水酸化カルシウム懸濁液を主工程流(17)に投入して(21)、最終処理水流(24)の所望の最終水質を生成する。
【0249】
供給水はすべての工程流で供給され、供給水は、以下の水仕様の水を生成する逆浸透システムから得られた。
ナトリウム:1mg/l未満
塩化物:2mg/l未満
カルシウム:8mg/l
マグネシウム:1mg/l未満
アルカリ度:12mg/l(CaCOとして)
°dH:1.12
pH:6.9
導電率24μS/cm
【0250】
炭酸水素カルシウム溶液は、以下の方法で上記装置を使用して副流中で製造することができる。反応槽(1)に最初に、5.0重量%の炭酸カルシウム懸濁液を、反応槽(1)内での水位測定(11)によって測定した、浸漬型膜(2)の表面を覆う規定の体積まで充填する。ブロワは、均質懸濁液が反応槽(1)内に保持され、浸漬型膜(2)の多少の洗浄効果が与えられるように、反応槽(1)の上部から浸漬型膜(2)の底部に位置する散気装置までの空気量の再循環(5)を開始する。空気量は1時間につき約200回の割合で再循環される。制御量の二酸化炭素が空気流中に、例えば位置(4)で添加される。二酸化炭素が載荷された再循環空気は、反応槽(1)の底部から上部まで浸漬型膜(2)を通過して乱流を生成し、二酸化炭素が空気流から炭酸カルシウム懸濁液へ渡り、懸濁液内の溶解二酸化炭素の量を増加させる。炭酸カルシウムと溶解二酸化炭素との間の反応により、反応槽(1)内に炭酸水素カルシウム溶液が形成される。同時に、炭酸カルシウム懸濁液を容器(14)内で調製するために、炭酸カルシウムを貯蔵サイロ(13)から容器(14)に添加する。添加した炭酸カルシウムの量を正確に測定するために、減量スクリュフィーダが使用される。水も槽に添加し、ミキサーを使用して固体含有量が既知の均質懸濁液を生成する。次いで、反応槽(1)内の未溶解炭酸カルシウムの総量が一定に維持されるように、微粉化炭酸カルシウム(16)の懸濁液を、二酸化炭素との反応によって溶解される炭酸カルシウムの量に等しい速度で反応槽(1)に移送する。透明な濃縮炭酸水素カルシウム溶液として濾過した透過液の水性溶液S2(9)を使用して、カルシウム及び重炭酸塩を、双方向投入ポンプによって主工程流(17)に添加する。生成物貯蔵槽(3)は、10分ごとに逆洗シーケンスのための緩衝としても使用した。第2投入ポンプを使用して水酸化カルシウム懸濁液を例えば、貯蔵槽(20)に貯蔵された位置(21)で主工程流(17)に添加する。
【0251】
<始動パイロットユニット>
天然の炭酸カルシウム粉末(フランス、オルゴンのオムヤインターナショナル製Millicarb(R)、d50=3μm)及び水酸化カルシウム懸濁液(Schaferkalk、Precal72、水中20重量%濃度)を出発材料としてパイロットプラントで使用した。Schaferkalk製品(Precal72)は、高反応性20重量%水酸化カルシウム懸濁液であり、効果的な圧送のため、これを5重量%に希釈して(21)、最終処理水流(24)に直接添加した。反応槽(1)内の水位制御(11)を用いて、調製済み5重量%炭酸カルシウム粉末懸濁液900lを反応槽(1)に充填した。乱流によって膜を再生するために、再循環空気流(5)ファンを10m/hで始動させた。空気流の過圧を(6)によって測定した。
【0252】
[実施例3]
高度載荷濃縮物(約250mg/lのアルカリ度)を生成するために、二酸化炭素99g(4)を1時間以内に再循環空気流に投入した。連続製造は、1時間の再循環時間の終了時に開始した。連続製造中に、250mg/l微粉化炭酸カルシウム懸濁液(16)を反応槽(1)に添加して、反応槽(1)内の炭酸カルシウムの連続溶解を裏付けた。同時に、250mg/l重炭酸カルシウム(炭酸カルシウムとして測定)の濃度で、浸漬型膜(2)を通じて透明な水性溶液(9)を双方向投入ポンプによって、主工程流(17)における生成物貯蔵槽(3)を介して抜き取り及び排出した。微粉化炭酸カルシウム(16)と水性溶液S2(9)の懸濁液の両方の割合は、反応槽(1)における水位測定(11)及び水性溶液S2(9)での流量計測定(10)によって制御した。割合の一次設定は達成可能な膜流束率によって変わり、膜間差圧(8)として測定した。水性溶液(9)の品質を濁度測定(12)及び滴定によって制御した。第1のブレンドの品質は、pH(18)、電気伝導度(19)及び滴定によって測定した。最終処理流(24)についてランゲリア飽和指数が0である所望の最終水質に到達するために、槽(20)からの水酸化カルシウム懸濁液(21)をまた最終処理水流(24)に投入した。
【0253】
運転条件及び水質の結果を以下の表5及び表6に示す。
【0254】
【表5】
【0255】
【表6】
【0256】
<本発明の実施例4:図1に示す方法の使用による水酸化マグネシウムの溶解>
4.1 装置
以下の装置を試験に使用した:
・以下から成る2150リットルの膜カルサイト反応装置(Membrane Calcite Reactor)(MCR):
○要求される連結部を有する容積2150lの円筒形ステンレス鋼製反応装置、
○反応装置内に設置したMicrodyn Bio−cel BC−50浸漬型膜ユニット、
○反応装置を密閉する蓋、
○水位制御及び圧力監視のための計測装
・以下から成るブロワ再循環ループを形成するように構成されたブロワシステム:
○可変速駆動装置により作動するブロワ、
○反応装置の上部から連結された、ブロワへの配管(蓋に連結)、
○浸漬型膜ユニットの底部の散気装置マニホールドに連結された排出配管
・流量を測定するための流量計を備えた、膜を通じて濃縮液を抜き取るための透過液ポンプ
・以下から成る二酸化炭素の投入システム:
○二酸化炭素ボトル
○ボトルの圧力を50バールから5バールまで低下させるための圧力調節器、
○二酸化炭素の投入量を調節及び測定するためのマスフローメータ及び制御弁
・ブロワ排出配管への投入連結部
・以下から成るスラリーメイクダウン(SMD)システム:
○電気ミキサー及び槽水位計装を備えたスラリーメイクダウン(SMD)槽、
○給水を槽に供給し、槽内の水位を維持するように制御された、タンクへの給水供給
○必要量の微粉化炭酸カルシウムをSMD槽に正確に添加するための減量投入フィードシステム、
○微粉化炭酸カルシウムを減量フィーダに供給するホッパー、
○2150l反応装置にSMD槽で製造された炭酸カルシウム懸濁液を投入するためのスラリーフィードポンプ、
○スラリーフィードポンプと2150l反応装置を連結する投入ホース
・以下から成る水酸化マグネシウム投入システム:
○25%水酸化マグネシウムの懸濁液を含有する貯蔵槽、
○Prominent Gamma L投入ポンプ、
○スラリーフィードポンプと2150l反応装置(SMDシステムの一部)の間の投入ホースに連結された投入ポンプからの排出ホース、
○水酸化マグネシウムが微粉化炭酸カルシウムの懸濁液に投入(16)されるように構成された、マグネシウム投入システム。
【0257】
4.2 手順:
次の手順を使用して試験を行った:
1.SMD槽に水を充填し、炭酸カルシウムを槽に注入して、4.3節で規定する設定にしたがって懸濁液S1を製造した。
2.SMD制御を自動モードとして、槽から懸濁液が抜き取られたときにSMD槽に絶えず水が補充され、炭酸カルシウムが継続的に投入されて、4.3節で規定する濃度の均一な懸濁液が供給されるようにした。
3.2150l反応装置に、5%の微粉化炭酸カルシウムS1を含有する懸濁液を充填した。微粉化炭酸カルシウムの技術的詳細事項は、4.3節に規定する。
4.反応装置の蓋を閉じ、確実に密閉した。
5.ブロワを通電して作動させ、微粉化炭酸カルシウムを懸濁液S1中に保持した。
6.4.3節で規定する設定にしたがって、二酸化炭素をブロワ再循環ループに投入した。
7.透過液ポンプを設定速度で運転して、必要な流量を供給し、4.3節に記載される設定にしたがって、反応槽から透明溶液S2を抜き取った。
8.スラリーフィードポンプを設定速度で運転して、反応槽内の水位が一定に維持されるようにした。
9.水酸化マグネシウム投入ポンプを、4.3節で規定される試験設定にしたがって、水酸化マグネシウムの必要量を工程に投入するための可変速度に設定した。
10.透過液ポンプによって抜き取った濃縮溶液S2のサンプルを、以下の水質について上記の方法によって分析した:
a.アルカリ度(mg/l)
b.総硬度(mg/l)
c.マグネシウム硬度(mg/l)
d.酸性度(mg/l COとして)
e.pH、導電率、温度及び濁度
【0258】
4.3試験設定
試験中に以下の試験設定を使用した:
【0259】
【表7】
【0260】
4.4 測定結果
【0261】
【表8】
【0262】
【表9】
【0263】
【表10】
【0264】
試験1で得られた結果(表8)は、水酸化マグネシウムを投入せずに、濃縮溶液S2のアルカリ度について非常に安定した値が生成できることを示す。総硬度及びマグネシウム濃度についても安定した値が生成される。
【0265】
試験2で得られた結果(表9)は、30mg/lの水酸化マグネシウムの投入によって、約10〜14mg/lのマグネシウムが供給されることを示す。水酸化マグネシウムが58.3g/molの分子量を有し、そのうちマグネシウムが24.3g/mol、即ちこの量の41.7%であるため、このことは予想通りである。
【0266】
試験3で得られた結果(表10)は、実験の過程にわたってすべての値、特にアルカリ度及びマグネシウム濃度について非常に安定した結果が達成されたことを示す。この試験のために、60mg/lの水酸化マグネシウムを投入した。これには、理想的には25mg/lのMg2+イオンを添加すべきである。このことは、反応装置から抜き取った濃縮流中において、平均25.8mg/lであり、23.6〜27.2mg/lの範囲のマグネシウムを示す結果と一致する。結果を図14にも示す。
【0267】
すべての場合において、濃縮流の濁度は0.01NTUと測定された。
【0268】
結論:これらの試験から、微粉化炭酸カルシウムの溶解のために開発された本発明の方法を用いて、マグネシウムを水酸化マグネシウムの形態でも効果的に溶解させることができると推測される。結果は非常に安定であり、工程も正確に制御できることが実証された。本方法は、望ましくないアニオンの非存在下で濁りのない濃縮流を生成するという利点を有する。
【0269】
要約すると、本方法は、現在の方法の代わりに費用効果的な代替法を提供することが示されている。さらに、所望の量のカルシウム及び必要に応じてマグネシウムを投入するために、この方法を効果的に制御することができる。
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