【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書において、衛星のペイロードの開発および/またはテストのための装置について記載する。装置は、ペイロードに接続するように動作可能なペイロードインタフェースと、装置をコンピュータと結合させるように動作可能な通信リンクとを備え、装置は、ペイロードがペイロードインタフェースと通信リンクとを介して装置に接続されたときのペイロードの挙動(behaviour)が、ペイロードが衛星内にあるときの挙動と同じであるように、衛星の1以上のサブシステムをエミュレートするように動作可能である。
【0014】
装置は、ゼロからのペイロードの開発とテスト、および/または衛星に統合するための既存のペイロードの構成を可能にする。装置は、ペイロードが装置に接続されたときのペイロードの挙動が、ペイロードが(実際の)衛星内にあるときの挙動と同じであるように、衛星のサブシステム(例えば、電源システム、オンボードデータ処理、姿勢の決定および制御、送受信機など)をエミュレートしてもよい。
【0015】
少なくとも1つの実施形態において、装置は、衛星のペイロードを開発/テストするとき、いくつかの要素(例えば、ペイロードインタフェース)が変更しないようにすることを可能にする。従来の衛星開発は、ペイロードを含む非常に多数の要素が開発される必要があり、比較的高コストの開発につながっている。いくつかの要素を衛星内でも同じにすることにより、一旦これらの要素が開発されテストされると、次の打上のためのテストプロセスが重複して行われる必要がなくなる(例えば、仮に行うとしても、同程度にまで行われる必要はない)。
【0016】
そのような要素が同じに保たれる場合、たった一回の開発と、必要とされるテストのほとんどとは、ペイロードバス(payload bus)(例えば、「ペイロードインタフェース」)に接続されたときのペイロードに関連するものになる。1回以上の(例えば、軌道)シミュレーション中のその反応は、装置を用いて、任意で、宇宙機シミュレータなどの衛星のペイロード開発および/またはテストのための装置に結合されたコンピュータ上で実行され得るシミュレータによる支援により、監視され、分析されることができる。
【0017】
衛星の大多数はペイロードを備え、ペイロードは衛星の意図する機能に応じて異なる(vary)場合がある。ペイロードは、サイズ、重量、要件において著しく異るため、衛星が開発される際に考慮されなければならない。
【0018】
任意で、装置は、さらに、データインタフェースモジュールを介してコンピュータとペイロードとの間でデータをすることができるように、ペイロードインタフェースを介してペイロードに接続されるように動作可能であるデータインタフェースモジュールを備える。
【0019】
任意で、装置は、電源に結合され、例えば、ペイロード電力インタフェースを介して、ペイロードに電力を供給するように構成される電力インタフェースモジュールを備える。任意で、電力インタフェースモジュールは、データインタフェースモジュールに電源を提供する。任意で、電力インタフェースモジュールは電源から電力を受信するように動作可能であり、電源は主電源(例えば、AC)と、発電機と、バッテリと、コンピュータと、の少なくとも1つを備えてもよい。任意で、ペイロードに供給される電力は、1ボルトから24ボルトまでの間の電位差、例えば、3.3ボルト、5ボルト、12ボルト、または24ボルト(言うまでもなく、これ以外の電圧が使用されてもよい)のうちの1つの電位差を含む。任意で、データインタフェースモジュールは、データと電力との両方をペイロードに供給するように動作可能である。
【0020】
任意で、装置は、さらに、ペイロードとのデータ通信と電力送信とを別々に行うように構成された複数のペイロードインタフェースを備えてもよい。任意で、複数(すなわち、2以上)のインタフェースは、ペイロードとデータ通信するように設けられてもよい。
【0021】
任意で、通信リンクは、例えば、コンピュータとのブルートゥース(登録商標)などの無線接続、またはUSBケーブルなどの有線接続を提供するように構成されてもよい。通信リンクは通信インタフェース(communication interface)を備えてもよく、通信インタフェースは物理インタフェース(physical interface)であってもよく、ソフトウェア実装インタフェースであってもよい。
【0022】
任意で、データインタフェースモジュールは容器内に取り付けられてもよい。容器は、1つの衛星回路基板と、任意で積層、中二階配置(a stack, a mezzanine arrangement)、またはバックプレーンシステム(back plane system)で構成される複数の衛星回路基板と、軌道中の衛星の保護に必要とされるような保護遮蔽体シールドと、のうち1以上を含んでもよい。
【0023】
任意で、衛星のペイロード開発および/またはテストのための装置は、さらに、ペイロードインタフェースおよび/または通信リンク用のハウジング、好ましくは、データインタフェースモジュールおよび/または電力インタフェースモジュール用のハウジングを備える。ハウジングは、ペイロードと共に用いられる衛星の1以上のサブシステムの寸法および/または容量と実質的に同じ寸法および/または容量を有するように構成されてもよい。
【0024】
ハウジングは、衛星のペイロード開発および/またはテストのための装置を別の構造、枠組および/またはパネルに固着させるための少なくとも1つの機械的インタフェースを備えてもよい。
【0025】
任意で、装置は、500kg未満の湿質量(wet mass)を有する衛星用のペイロードを開発および/またはテストするように構成される。好ましくは、装置は、1kgから25kgまでの間の湿質量、好ましくは1kgから10kgまでの間の湿質量を有する衛星用、例えば、キューブサットなどのナノ衛星用のペイロードを開発および/またはテストするように構成される。500kg未満の湿質量、または任意で1kgから25kgまでの間の湿質量を有する小型衛星は、単一のロケットにより多数を軌道上へと運ばれることができ、衛星毎のコストを削減できる。したがって、小型衛星は、より大型の衛星および/またはより重い衛星よりも多くの利点をもたらす。
【0026】
任意で、データインタフェースモジュールは、ペイロード、コンピュータ、電力インタフェースモジュール、または電源モジュールのうち1以上に結合される。ペイロード開発中に衛星のペイロード開発および/またはテストのための装置から有用なデータを可能な限り抽出するために、いくつかの実施形態において、データインタフェースモジュールは、多数の異なるモジュールのうち1以上に結合される。したがって、データインタフェースモジュールが結合された各モジュールからのデータは、記録され、分析されることができる。このようなデータは、衛星が打ち上げられるときの衛星の挙動に対する洞察を提供し、または、打上が実現可能になる前に対処する必要のある問題を提示し得る。
【0027】
任意で、装置は、ペイロードが衛星内で経験する可能性のある条件をシミュレートするようにコンピュータにより制御されるように動作可能であってもよい。これにより、例えば、コンピュータが宇宙機シミュレータとして機能するように制御される、ハードウェアインザループ形式(hardware-in-the-loop)のペイロードの開発とテストとが可能になる。
【0028】
任意で、コンピュータは、位置、姿勢および軌道の制御サブシステムパラメータ、電力サブシステムパラメータ、実行モード、展開可能物の状態、電子システム構成、オンボードコンピュータ(OBC)サブシステムパラメータ、ファームウェア管理およびファイル管理、リセット設定、熱サブシステムパラメータおよび制御、または冗長性設定、のうち1以上に関するデータを提供する宇宙機シミュレータとして機能するように動作可能である。
【0029】
任意で、データインタフェースモジュールおよび/または電力インタフェースモジュールは、例えば、衛星が軌道上にあるとき、ペイロードが衛星内で経験する可能性のある条件下のペイロードの挙動が監視され、および/またはペイロードが操作されるように、条件をシミュレートするようにコンピュータにより制御されるように動作可能である。
【0030】
いくつかの実施形態において、シミュレーション(例えば、宇宙機シミュレーション)は、1以上のミッション、例えば、太陽同期軌道ミッションにおけるペイロードのパフォーマンスを予測するために使用されることができる。ローカル電源は、バッテリおよび/またはソーラーパネルなどの衛星電源の代わりに、シミュレーション中に必要とされる電力をペイロードに供給することができる。電力インタフェースモジュールは、例えば、ソーラーパネルから供給される変動する(varying)電力、および/または経時的にバッテリから供給される電力の特徴を考慮するために、シミュレートされた電力供給に応じて、装置への電力供給の調整を可能にすることができる。
【0031】
フィードバック機構は、ペイロードの必要性と反応、および/またはシミュレートされた衛星の特徴に従って電力供給が変動されることができるように、採用されてもよい。いくつかの他のモジュール、例えば、通信リンクおよび/またはペイロードインタフェースを備えるモジュールも電力を必要とする場合があるため、電力インタフェースモジュールを介して電源に接続されることができる。
【0032】
任意で、ペイロードのパフォーマンス(または挙動)は、様々な(varying)環境条件下でテストされてもよい。任意で、環境条件は、気圧の低下、装置の震動、周囲温度の低下または上昇、または放射線レベルの変化、のうち1以上を含んでもよい。様々な環境条件下でペイロードの挙動をテストするために、適宜、ペイロードを内部に配置できるような、加圧(または他の環境シミュレーション)室や他の適切なテスト装置が採用されてもよい。
【0033】
衛星の予測される挙動のシミュレーションは、衛星とペイロードとの将来の実際の挙動を可能な限り忠実にモデル化することに有益になり得る。このモデル化により、発生するペイロードの問題は、実際の衛星の打上前に解決され得る。したがって、いくつかの実施形態において、開発および/またはテスト装置全体は、様々な環境条件下にさらされることができ、これにより、衛星が打上後に必然的に置かれる環境条件をより正確に再現し得る。
【0034】
大量のデータは、衛星の打上の成功と、衛星の継続使用と、に関係し得る。いくつかの実施形態において、開発および/またはテスト装置により提供されるシミュレーションデータは、打上後の衛星とペイロードとに関連する有益な情報、例えば、衛星の他の部分とのペイロード通信に関連するデータを提供してもよい。シミュレーションが、ペイロードが衛星の他の部分となんらかの不適合を有することを示す場合、この問題は、衛星の打上後に修理や修正を行うよりも、ペイロードの開発中に、より低いコストで解決されることができる。姿勢の決定および制御(Attitude Determination and Control:ADCS)、オンボードコンピュータ(on-board computer:OBC)、電源システム(Electrical Power System:EPS)などの重要な衛星システムも、予測どおりの衛星の機能の最大能力を保証するために、シミュレーションされることができる。
【0035】
任意で、コンピュータは、複数の衛星を同時にシミュレートするように、および/または衛星間通信をシミュレートするように動作可能である。複数の衛星は、グループ(group)、コンステレーション(constellation)、または「スウォーム(swarm)」として、互いに協調することができる。したがって、いくつかの実施形態において、複数の衛星がシミュレーションされることは、他の衛星と一緒の場合の衛星のパフォーマンスに関するデータを収集するために、有利である。
【0036】
任意で、例えば、ペイロードが取り付けられる(ペイロード取付用)枠組が設けられ、枠組は、ペイロード容量を画定する。ペイロードは、ペイロード容量内に配置されてもよく、任意で枠組に取り付けられ(あるいは固着および/または固定され)てもよい。
【0037】
本明細書では、衛星用ペイロードの開発および/またはテストのためのシステムについても記載される。衛星用ペイロードの開発および/またはテストのためのシステムはペイロードを所望の方向に支持するための枠組と、ペイロードに接続するように動作可能な装置と、を備え、装置は衛星の1以上のサブシステムをエミュレートするように動作可能である。
【0038】
前述のとおり、装置は、ペイロードが枠組に取り付けられ、装置に接続されたときのペイロードの挙動が、ペイロードが(実際の)衛星内に(統合および/または搭載されて)あるときの挙動と同じであるように、衛星の1以上のサブシステムをエミュレートするように動作可能であってもよい。
【0039】
コントローラは、装置と、装置に接続されるペイロードとを制御するように構成されてもよく、例えば、コントローラはコンピュータである。電源モジュールは、装置に電力を供給するように構成される。
【0040】
(装置および/またはシステムの)枠組は、モジュール式であってもよく、好ましくは、枠組のサイズは再構成可能であり、例えば、枠組は互いに連結された個別の2以上の枠モジュールを含んでもよい。隣接する2以上の枠モジュールは、連結部材により互いに固着されてもよい。枠組は、衛星の構造および/または寸法に対応するように構成されてもよく、例えば、衛星はキューブサットであってもよい。任意で、枠組は、1Uから12Uまでの間のサイズ(または構成)を有し、ここでUはキューブサットの標準によると、寸法10×10×10cmの単位容量である。枠組は、衛星のペイロード容量と実質的に同じ容量であるペイロード容量を画定するように構成されてもよい。
【0041】
(装置および/またはシステムの)枠組は、枠組を区切る1以上の仕切りを備えてもよく、例えば、仕切りは1以上のリブ部材により提供され(設けられ)てもよい。枠組は、枠組の少なくとも一部がペイロードまたはダミーペイロードで交換可能であるように構成されてもよく、例えば、これにより枠組の構造的整合性(structural integrity)を維持する。1以上のパネルは、少なくともその一部が枠組の少なくとも一区域または一部を囲うように構成されてもよい。
【0042】
ダミーモジュールは、衛星内の1以上のサブシステムの容量特性および/または質量特性をシミュレートするように枠組内に配置(arranged)され(または取り付けられ)てもよく、例えば、ダミーモジュールは、枠組内に収まるように構成され、例えば、ダミーモジュールは、枠組の構造の一部として統合されるように構成される。
【0043】
本明細書では、衛星用ペイロードの開発および/またはテストのためのシステムについても記載される。衛星用ペイロードの開発および/またはテストのためのシステムは、機械的インタフェース(構造)と電気的インタフェース(電力バスおよびデータバス)との少なくとも一方を含み、ペイロードをコンピュータに結合することが可能なハードウェアと、衛星ミッションシミュレーション(satellite mission simulation)および/またはハードウェアインザループ形式のペイロード操作を実行するように構成されるソフトウェアと、を備える。
【0044】
さらなる態様によると、3Dプリンタ(または任意のプリンタもしくは製造機器/システム)が枠組および/または連結部材を製造することを可能にするように構成される機械可読マップまたは機械可読命令が提供される。
【0045】
枠組および/または連結部材は、金属で、または、熱転写シールと共にポリウレタンなどの1種以上のプラスチックを含む射出成形加工を用いて、共通に製造されてもよい。
【0046】
本明細書では、衛星用ペイロードのテストの方法についても記載される。衛星用ペイロードのテストの方法は、ペイロードを、衛星用ペイロードの開発および/またはテストのための装置に接続する工程を有し、装置はコンピュータに結合するように動作可能であり、1回以上のシミュレーションはペイロードに対して実行可能である。
【0047】
本明細書では、衛星用ペイロードの開発および/またはテストの方法についても記載される。衛星用ペイロードの開発および/またはテストの方法は、衛星の1以上のサブシステムをエミュレートするように動作可能な装置を設ける工程と、ペイロードを装置に接続する工程と、軌道上のペイロードの見込みのある挙動を特定するために、ペイロード上で1回以上のシミュレーションを実行する工程と、を有する。前述のとおり、装置は、ペイロードが装置に接続されたときのペイロードの挙動が、ペイロードが(実際の)衛星内に(統合および/または搭載されて)あるときの挙動と同じであるように、衛星の1以上のサブシステムをエミュレートするように動作可能であってもよい。
【0048】
任意で、ペイロードは、衛星の構造に対応する枠組内に、所望の方向で取り付けられてもよい。1回以上のシミュレーションは、例えば、衛星内のペイロードの最適な方向および/または構成を特定するように、様々な方向のペイロード上で実行されてもよい。
【0049】
任意で、1回以上のシミュレーションは、データインタフェースモジュールおよび/または、装置を介して、ペイロードに結合されるコンピュータ上で実行される。
【0050】
任意で、ペイロードの挙動は、様々な環境条件下で特定(テスト)されてもよく、例えば、ペイロードと装置とは、適切なテスト室内に配置される。環境条件は、気圧の低下、装置の震動、周囲温度の低下もしくは上昇、または放射線レベルの変化、のうち1以上を含んでもよい。
【0051】
任意で、方法は、本明細書に記載される装置またはシステムの使用を含んでもよい。
【0052】
本明細書では、衛星用ペイロードの開発および/またはテストの方法についても記載される。方法は、宇宙ミッションの1以上の条件をコンピュータ上でシミュレートする工程と、シミュレートされた条件の1以上を経験させるようにペイロードを制御する工程と、1以上のシミュレートされた条件を経験中のペイロードの挙動を特定するために、ペイロードを監視する工程と、を有する。
【0053】
任意で、コンピュータは、位置、姿勢および軌道の制御サブシステムの特性、電力サブシステムパラメータ、実行モード、電力制御、展開可能物の状態、電子システム構成、ファームウェア管理、リセット設定、熱サブシステムのパラメータおよび制御、または冗長性設定、のうち1以上に関するデータを提供する宇宙機シミュレータとして機能するように動作可能であってもよい。
【0054】
任意で、シミュレーションは、例えば、以前のミッションから取得された実際の宇宙飛行データを用いて作成されてもよい。任意で、コンピュータは、さらに、複数の衛星を同時にシミュレートするように、および/または衛星間通信をシミュレートするように動作可能であってもよい。任意で、ペイロードは、前述のとおり、かつ本明細書に記載のとおりの装置に接続されてもよい。
【0055】
別の態様によると、前述のとおり、かつ本明細書に記載のとおりの方法を実行するように動作可能なコンピュータプログラム製品が提供される。コンピュータプログラム製品は、さらに、例えば、シミュレーションと実際の制御との両方に同じユーザインタフェースを用いることにより、衛星内の(ならびにテスト中および/または開発中の)ペイロードを制御するように構成され、および/または動作可能であってもよい。
【0056】
本明細書に記載される装置、システム、および/または方法において、ペイロードは、500kg未満の湿質量を有する衛星、好ましくは1kgから25kgまでの間の湿質量を有する衛星、より好ましくは1kgから10kgまでの間の湿質量を有するナノ衛星、例えば、キューブサット、のためのペイロードであってもよい。
【0057】
本明細書では、前述のとおり、かつ本明細書に記載のとおりの装置、システム、および/または方法を用いて開発および/またはテストされるペイロードと共に用いる衛星についても記載される。衛星は、好ましくは小型衛星であり、より好ましくはナノ衛星、例えば、キューブサットである。
【0058】
本発明は、本明細書に記載されるシステムまたは装置の1以上の態様を有する部品キットにも適用される。
【0059】
本発明は、実質的に、本明細書の記載、および/または添付の図面に図示のとおり、装置またはシステムにも適用される。
【0060】
本明細書において用いられる「コンピュータ」という用語は、スマートフォン、タブレット機器、類似機器などのモバイルコンピュータ機器や、ラップトップコンピュータやデスクトップコンピュータを含む。