特許第6916201号(P6916201)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6916201L型同軸コネクタおよびL型同軸コネクタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916201
(24)【登録日】2021年7月19日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】L型同軸コネクタおよびL型同軸コネクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/44 20110101AFI20210729BHJP
   H01R 43/048 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   H01R24/44
   H01R43/048 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-548590(P2018-548590)
(86)(22)【出願日】2017年10月2日
(86)【国際出願番号】JP2017035782
(87)【国際公開番号】WO2018083923
(87)【国際公開日】20180511
【審査請求日】2019年4月8日
【審判番号】不服2020-12954(P2020-12954/J1)
【審判請求日】2020年9月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-217283(P2016-217283)
(32)【優先日】2016年11月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】氷見 佳弘
(72)【発明者】
【氏名】幸西 克己
【合議体】
【審判長】 平田 信勝
【審判官】 内田 博之
【審判官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−93212(JP,A)
【文献】 特開昭57−212790(JP,A)
【文献】 実開昭55−168975(JP,U)
【文献】 実開昭49−146453(JP,U)
【文献】 特開2000−12184(JP,A)
【文献】 特開2011−40262(JP,A)
【文献】 特開平6−45035(JP,A)
【文献】 実開平6−82781(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 24/44 , H01R 43/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体と、外導体と、前記中心導体と前記外導体とを絶縁している絶縁膜とを有する同軸ケーブルに接続されているL型同軸コネクタであって、
ハウジングと、前記ハウジングの内部に取り付けられるブッシングと、前記ブッシングにより前記ハウジングと絶縁され、かつ前記中心導体と接続された状態で、前記ブッシングの内部に取り付けられているソケットとを備え、
前記ハウジングは、一方開口と他方開口とを有し、かつ第1の切り欠き部が側面に形成されているハウジング本体と、前記ハウジング本体の前記他方開口を覆っている蓋部と前記蓋部から延在し前記外導体が載置されている延在部とを有する背面部と、前記延在部から延在しており、かつ先端部が前記同軸ケーブルを挟んで前記延在部と対向するように折り曲げられているかしめ部とを有しており、
前記延在部には、第2の切り欠き部が形成されており、
前記第2の切り欠き部内の少なくとも一部に、前記外導体と前記延在部とを接合している接合部材が存在しており、
前記第2の切り欠き部は、前記延在部の外表面側に一方開口を有し、前記外導体が載置されている側に他方開口を有する貫通孔であり、
前記かしめ部の前記先端部は、前記同軸ケーブルを挟んで前記貫通孔と対向するように配置されていることを特徴とする、L型同軸コネクタ。
【請求項2】
記延在部内に前記貫通孔の前記一方開口および前記貫通孔の前記他方開口の外周が位置していることを特徴とする、請求項1に記載のL型同軸コネクタ。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記貫通孔の前記他方開口から前記貫通孔の前記一方開口に向かって断面積が広がるテーパー領域を有することを特徴とする、請求項2に記載のL型同軸コネクタ。
【請求項4】
中心導体と、外導体と、前記中心導体と前記外導体とを絶縁している絶縁膜とを有する同軸ケーブルに接続されているL型同軸コネクタの製造方法であって、
一方開口と他方開口とを有し、かつ第1の切り欠き部が側面に形成されているハウジング本体と、前記ハウジング本体の前記他方開口を覆っている蓋部と前記蓋部から延在し第2の切り欠き部が形成されている延在部とを有する背面部と、前記延在部から延在しているかしめ部材とを有するハウジングと、ブッシングと、ソケットとを準備または作製する第1の工程と、
前記ソケットを、前記ブッシングの内部に取り付ける第2の工程と、
前記ソケットが前記ブッシングにより前記ハウジングと絶縁されるようにして、内部に前記ソケットが取り付けられた前記ブッシングを、前記ハウジングの内部に取り付ける第3の工程と、
前記第2の切り欠き部の少なくとも一部に、接合部材前駆体を付与する第4の工程と、
前記中心導体と前記ソケットとを接続し、かつ露出している前記外導体を前記延在部上に載置する第5の工程と、
前記かしめ部材の先端部を、前記先端部が前記同軸ケーブルを挟んで前記延在部と対向するように折り曲げることにより、かしめ部を形成する第6の工程と、
前記接合部材前駆体を加熱し、前記外導体と前記延在部とを接合している接合部材とする第7の工程とを備え
前記第2の切り欠き部は、前記延在部の外表面側に一方開口を有し、前記外導体が載置されている側に他方開口を有する貫通孔であり、
前記かしめ部の前記先端部は、前記同軸ケーブルを挟んで前記貫通孔と対向するように配置されることを特徴とする、L型同軸コネクタの製造方法。
【請求項5】
中心導体と、外導体と、前記中心導体と前記外導体とを絶縁する絶縁膜とを有する同軸ケーブルに接続されるL型同軸コネクタであって、
前記外導体に電気的に接続されるハウジングと、
前記中心導体に電気的に接続されるソケットと、
前記ハウジングと前記ソケットとの間に配置される絶縁性のブッシングと、を備え、
前記ハウジングは、一方開口と他方開口とを有し、かつ第1の切り欠き部が側面に形成されているハウジング本体と、前記ハウジング本体の前記他方開口を覆っている蓋部と前記蓋部から延在し前記外導体が載置されている延在部とを有する背面部と、前記延在部から延在しており、かつ先端部が前記同軸ケーブルを挟んで前記延在部と対向するように折り曲げられ、第2の切り欠き部を有するかしめ部を含み、
前記同軸ケーブルが前記かしめ部にかしめられるとともに、前記同軸ケーブルの前記外導体が前記第2の切り欠き部に設けられた接合部材に接合されることにより、前記同軸ケーブルは前記ハウジングに固定され
前記第2の切り欠き部は、前記延在部の外表面側に一方開口を有し、前記外導体が載置されている側に他方開口を有する貫通孔であり、
前記かしめ部の前記先端部は、前記同軸ケーブルを挟んで前記貫通孔と対向するように配置される、L型同軸コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、中心導体および外導体を有する同軸ケーブルに接続されているL型同軸コネクタ、およびそのようなL型同軸コネクタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中心導体および外導体を有する同軸ケーブルに接続されているL型同軸コネクタの一例として、特開2010−67425号公報(特許文献1)に記載のL型同軸コネクタが挙げられる。図5は、特許文献1に記載のL型同軸コネクタ300の斜視図である。L型同軸コネクタ300は、中心導体351と、外導体352と、中心導体351と外導体352とを絶縁している絶縁膜353と、最外層の保護膜354を有する同軸ケーブル350に接続されている。
【0003】
L型同軸コネクタ300は、ハウジング310と、ブッシング320と、ソケット330とを備えている。ハウジング310は、ハウジング本体311と、背面部312と、支持部313と、かしめ部314とを備えている。ハウジング本体311は、円筒状であって一方開口315と他方開口316とを有し、切り欠き部317が側面に形成されている。背面部312は、他方開口316を覆っている蓋部312aと蓋部312aから延在し外導体352が載置されている延在部312bとを備えている。
【0004】
支持部313は、ハウジング本体311に設けられている。かしめ部314は、延在部312bから延在しており、先端部が同軸ケーブル350を挟んで延在部312bと対向するように折り曲げられている。L型同軸コネクタ300では、かしめ部314は、一方側かしめ部材314aと、他方側かしめ部材314bとが、上記のように折り曲げられて形成されている。一方側かしめ部材314aは、第1部材314a1、第2部材314a2および第3部材314a3を含んでいる。他方側かしめ部材314bは、第1部材314b1、第2部材314b2および第3部材314b3を含んでいる。
【0005】
ブッシング320は、ハウジング310の内部に取り付けられている。ソケット330は、ブッシング320によりハウジング310と絶縁され、かつ中心導体351と接続された状態で、ブッシング320の内部に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−67425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
L型同軸コネクタ300における同軸ケーブル350の固定は、露出している外導体352が延在部312b上に載置された状態で、前述のようにかしめ部314を形成することにより行なわれる。すなわち、一方側かしめ部材314aと他方側かしめ部材314bとを折り曲げ、強くかしめることにより、同軸ケーブル350を圧縮し、固定している。
【0008】
しかしながら、強くかしめることにより同軸ケーブル350に過度の圧力がかかると、外導体352および絶縁膜353が変形してしまう。その結果、同軸ケーブル350のインピーダンスが所望の値からずれてしまい、設計通りの電気特性が得られない虞がある。
【0009】
すなわち、この発明の目的は、接続時における同軸ケーブルのインピーダンスのずれが抑制され、かつ同軸ケーブルに対して十分な接続強度が維持されたL型同軸コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るL型同軸コネクタでは、ハウジングの構造、特にハウジングが含む背面部の構造についての改良が図られる。
【0011】
この発明に係るL型同軸コネクタの第1の形態は、中心導体と、外導体と、中心導体と外導体とを絶縁している絶縁膜とを有する同軸ケーブルに接続されている。L型同軸コネクタは、ハウジングと、ハウジングの内部に取り付けられるブッシングと、ブッシングによりハウジングと絶縁され、かつ中心導体と接続された状態で、ブッシングの内部に取り付けられているソケットとを備えている。
【0012】
ハウジングは、ハウジング本体と、背面部と、かしめ部とを有している。ハウジング本体は、一方開口と他方開口とを有し、かつ第1の切り欠き部が側面に形成されている。背面部は、ハウジング本体の他方開口を覆っている蓋部と、蓋部から延在し外導体が載置されている延在部とを有している。かしめ部は、延在部から延在しており、先端部が同軸ケーブルを挟んで延在部と対向するように折り曲げられている。
【0013】
そして、延在部には、第2の切り欠き部が形成されており、第2の切り欠き部内の少なくとも一部に、外導体と延在部とを接合している接合部材が存在している。
【0014】
上記のL型同軸コネクタでは、かしめ部による固定と、接合部材による外導体とハウジングの背面部(延在部)との接合とが併用されている。すなわち、かしめ部が強くかしめられていないため、接続時における同軸ケーブルの外導体および絶縁膜の変形が抑制されている。その結果、同軸ケーブルのインピーダンスのずれが抑制されている。また、L型同軸コネクタと同軸ケーブルとの間に、十分な接続強度が維持されている。
【0015】
この発明に係るL型同軸コネクタの第1の形態は、以下の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第2の切り欠き部は、延在部の外表面側に一方開口を有し、外導体が載置されている側に他方開口を有する貫通孔であり、かつ延在部内に貫通孔の一方開口および貫通孔の他方開口の外周が位置している。
【0016】
上記のL型同軸コネクタでは、第2の切り欠き部が延在部内に形成された貫通孔であるため、接合部材は貫通孔の一方開口および貫通孔の他方開口の外周全体に接触している。その結果、外導体と延在部との接合強度が高くなっている。
【0017】
この発明に係るL型同軸コネクタにおいて、第2の切り欠き部が上記のような貫通孔である場合は、さらに以下の特徴を備えることが好ましい。すなわち、貫通孔は、貫通孔の他方開口から貫通孔の一方開口に向かって断面積が広がるテーパー領域を有している。
【0018】
上記のL型同軸コネクタでは、テーパー領域により、貫通孔の内部に接合部材前駆体が保持されやすくなっている。その結果、外導体と延在部との接合強度がより高くなっている。また、接合部材の延在部の外側へのはみ出しが抑制されている。
【0019】
この発明に係るL型同軸コネクタの第2の形態は、第1の形態と同様に、中心導体と、外導体と、中心導体と外導体とを絶縁している絶縁膜とを有する同軸ケーブルに接続されている。L型同軸コネクタは、ハウジングと、ハウジングの内部に取り付けられるブッシングと、ブッシングによりハウジングと絶縁され、かつ中心導体と接続された状態で、ブッシングの内部に取り付けられているソケットとを備えている。
【0020】
ハウジングは、ハウジング本体と、背面部と、かしめ部とを有している。ハウジング本体は、一方開口と他方開口とを有し、かつ第1の切り欠き部が側面に形成されている。背面部は、ハウジング本体の他方開口を覆っている蓋部と、蓋部から延在し外導体が載置されている延在部とを有している。かしめ部は、延在部から延在しており、先端部が同軸ケーブルを挟んで延在部と対向するように折り曲げられている。
【0021】
そして、外導体と延在部との間の少なくとも一部には、外導体と延在部とを接合している接合部材が存在している。
【0022】
上記のL型同軸コネクタでも、第1の形態と同様に、かしめ部による固定と、接合部材による外導体とハウジングの背面部(延在部)との接合とが併用されている。すなわち、かしめ部が強くかしめられていないため、接続時における同軸ケーブルの外導体および絶縁膜の変形が抑制されている。その結果、同軸ケーブルのインピーダンスのずれが抑制されている。また、L型同軸コネクタと同軸ケーブルとの間に、十分な接続強度が維持されている。
【0023】
この発明に係るL型同軸コネクタの第1の形態およびその好ましい形態、ならびにL型同軸コネクタの第2の形態は、以下の特徴を備えることが好ましい。すなわち、接合部材は、Snを含む合金を用いて形成されている。
【0024】
上記のL型同軸コネクタでは、接合部材が例えばSnベースのPbフリーはんだのような強度が高い合金であるので、外導体と延在部との接続強度が高くなっている。
【0025】
この発明に係るL型同軸コネクタにおいて、接合部材がSnを含む合金を用いて形成されている場合は、以下の特徴を備えることが好ましい。すなわち、延在部の外導体が載置されている側には、Sn膜またはSnを含む合金膜が付与されている。
【0026】
上記のL型同軸コネクタでは、延在部の外導体が載置されている側のSn膜またはSnを含む合金膜とSnを含む合金である接合部材とが強固に接合するので、外導体と延在部との接続強度がさらに高くなっている。
【0027】
この発明に係るL型同軸コネクタの製造方法の第1の形態は、以下の第1ないし第7の工程を備えている。L型同軸コネクタは、中心導体と、外導体と、中心導体と外導体とを絶縁している絶縁膜とを有する同軸ケーブルに接続されている。
【0028】
第1の工程は、ハウジングと、ブッシングと、ソケットとを準備または作製する工程である。ハウジングは、ハウジング本体と、背面部と、かしめ部材とを有している。ハウジング本体は、一方開口と他方開口とを有し、かつ第1の切り欠き部が側面に形成されている。背面部は、ハウジング本体の他方開口を覆っている蓋部と蓋部から延在し第2の切り欠き部が形成されている延在部とを有している。かしめ部材は、延在部から延在している。
【0029】
第2の工程は、ソケットをブッシングの内部に取り付ける工程である。第3の工程は、ソケットがブッシングによりハウジングと絶縁されるようにして、内部にソケットが取り付けられたブッシングを、ハウジングの内部に取り付ける工程である。第4の工程は、第2の切り欠き部の少なくとも一部に、接合部材前駆体を付与する工程である。第5の工程は、中心導体とソケットとを接続し、かつ露出している外導体を延在部上に載置する工程である。
【0030】
第6の工程は、かしめ部材の先端部を、先端部が同軸ケーブルを挟んで延在部と対向するように折り曲げることにより、かしめ部を形成する工程である。そして、第7の工程は、接合部材前駆体を加熱し、外導体と延在部とを接合している接合部材とする工程である。
【0031】
上記のL型同軸コネクタの製造方法では、かしめ部を強くかしめることなく、同軸ケーブルと十分な接続強度で固定されたL型同軸コネクタを、効率よく製造することができる。
【0032】
この発明に係るL型同軸コネクタの製造方法の第2の形態は、以下の第1ないし第7の工程を備えている。L型同軸コネクタは、第1の形態と同様に、中心導体と、外導体と、中心導体と外導体とを絶縁している絶縁膜とを有する同軸ケーブルに接続されている。
【0033】
第1の工程は、ハウジングと、ブッシングと、ソケットとを準備または作製する工程である。ハウジングは、ハウジング本体と、背面部と、かしめ部材とを有している。ハウジング本体は、一方開口と他方開口とを有し、かつ第1の切り欠き部が側面に形成されている。背面部は、ハウジング本体の他方開口を覆っている蓋部と蓋部から延在している延在部とを有している。かしめ部材は、延在部から延在している。
【0034】
第2の工程は、ソケットをブッシングの内部に取り付ける工程である。第3の工程は、ソケットがブッシングによりハウジングと絶縁されるようにして、内部にソケットが取り付けられたブッシングを、ハウジングの内部に取り付ける工程である。第4の工程は、露出している外導体の外表面の少なくとも一部に、接合部材前駆体を付与する工程である。第5の工程は、中心導体とソケットとを接続し、かつ外導体と延在部との間の少なくとも一部に接合部材前駆体が存在するように、延在部上に前記外導体を載置する工程である。
【0035】
第6の工程は、かしめ部材の先端部を、先端部が同軸ケーブルを挟んで延在部と対向するように折り曲げることにより、かしめ部を形成する工程である。そして、第7の工程は、接合部材前駆体を加熱し、外導体と延在部とを接合している接合部材とする工程である。
【0036】
上記のL型同軸コネクタの製造方法でも、第1の形態と同様に、かしめ部を強くかしめることなく、同軸ケーブルと十分な接続強度で固定されたL型同軸コネクタを、効率よく製造することができる。
【発明の効果】
【0037】
この発明に係るL型同軸コネクタでは、かしめ部による固定と、接合部材による外導体とハウジングの背面部(延在部)との接合とが併用されている。すなわち、かしめ部が強くかしめられていないため、接続時における同軸ケーブルの外導体および絶縁膜の変形が抑制されている。その結果、同軸ケーブルのインピーダンスのずれが抑制されている。また、L型同軸コネクタと同軸ケーブルとの間に、十分な接続強度が維持されている。
【0038】
また、この発明に係るL型同軸コネクタの製造方法では、かしめ部を強くかしめることなく、同軸ケーブルと十分な接続強度で固定されたL型同軸コネクタを、効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】この発明に係るL型同軸コネクタの第1の実施形態であるL型同軸コネクタ100の斜視図である。
図2】L型同軸コネクタ100の組み立て前の各要素を示す斜視図である。
図3】(A)は、ハウジング10が備えている背面部12を拡大して示した斜視図、(B)は、延在部12bを第2の切り欠き部18を通るような面で切断した場合の断面図である。
図4】この発明に係るL型同軸コネクタの第2の実施形態であるL型同軸コネクタ100の組み立て前の各要素を示す斜視図である。
図5】背景技術のL型同軸コネクタ300の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下にこの発明の実施形態を示して、この発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。この発明は、例えば携帯電子機器の製品検査のための電気的特性測定に用いられるL型同軸コネクタに適用されるが、それ以外のL型同軸コネクタにも適用可能である。
【0041】
−L型同軸コネクタの第1の実施形態−
<L型同軸コネクタの構造>
この発明に係る測定プローブの第1の実施形態であるL型同軸コネクタ100の構造について、図1ないし図3を用いて説明する。
【0042】
なお、各図面は模式図であり、実際の製品の寸法は必ずしも反映されていない。また、製造工程上で発生する各構成要素の形状のばらつきなども、各図面に必ずしも反映されていない。すなわち、以後、この明細書中で説明のために用いられる図面は、たとえ実際の製品と異なる部分があったとしても、本質的な面で実際の製品を表すものと言うことができる。
【0043】
図1は、L型同軸コネクタ100の斜視図である。図2は、L型同軸コネクタ100の各構成要素の形状を理解しやすくした、L型同軸コネクタ100の組み立て前の各要素を示す斜視図である。すなわち、図2では、後述するかしめ部14は、折り曲げられていない状態で図示されている。図3(A)は、この発明の要部であり、後述するハウジング10が備えている背面部12を拡大して示した斜視図である。また、図3(B)は、延在部12bを第2の切り欠き部18を通るような面で切断した場合の断面図である。
【0044】
L型同軸コネクタ100は、中心導体51と、外導体52と、中心導体51と外導体52とを絶縁している絶縁膜53と、保護膜54とを有する同軸ケーブル50に接続されている。同軸ケーブル50は、既知の構造のものである。L型同軸コネクタ100は、ハウジング10と、ブッシング20と、ソケット30とを備えている。
【0045】
ハウジング10は、ハウジング本体11と、背面部12と、支持部13と、かしめ部14とを有している。ハウジング本体11は、円筒状であって、一方開口15と他方開口16とを有し、第1の切り欠き部17が側面に形成されている。背面部12は、ハウジング本体11の他方開口16を覆っている蓋部12aと、蓋部12aの第1の切り欠き部17に隣接した箇所から延在し、同軸ケーブル50の外導体52が載置されている延在部12bとを有している。延在部12bには、後述する第2の切り欠き部18が形成されている。ハウジング10は、例えばCu合金などのような金属材料を用いて形成される。
【0046】
L型同軸コネクタ100では、延在部12bの外導体52が載置されている側には、不図示のSn膜またはSnを含む合金膜が付与されている。ただし、このSn膜またはSnを含む合金膜は、延在部12b上に付与されなくてもよい。
【0047】
支持部13は、ハウジング本体11に接続されており、後述のブッシング引き出し部22を保持している。かしめ部14は、延在部12bから延在しており、先端部が同軸ケーブル50を挟んで延在部12bと対向するように折り曲げられている。
【0048】
L型同軸コネクタ100では、かしめ部14は、一方側かしめ部材14aと、他方側かしめ部材14bとが、上記のように折り曲げられて形成されている。一方側かしめ部材14aは、第1部材14a1、第2部材14a2および第3部材14a3を含んでいる。他方側かしめ部材14bは、第1部材14b1、第2部材14b2および第3部材14b3を含んでいる。すなわち、同軸ケーブル50は、延在部12bとかしめ部14の先端部との間に挟まれ、両者によって押圧されることにより、延在部12b上に固定されている。
【0049】
ブッシング20は、一方開口23を有し、切り欠き部24が側面に形成されているブッシング本体21と、切り欠き部24に隣接した箇所でブッシング本体21に接続されているブッシング引き出し部22とを有している。ブッシング20は、ブッシング引き出し部22がハウジング本体11の第1の切り欠き部17から突出するようにして、ハウジング10の内部に取り付けられている。ブッシング20は、例えばポリプロピレン、ナイロン、またはゴムなどのような絶縁性の樹脂材料を用いて形成される。
【0050】
ソケット30は、一方開口33を有するソケット本体31と、ソケット本体31に接続されているソケット引き出し部32とを有している。ソケット30は、ソケット引き出し部32がブッシング本体21の切り欠き部24から突出し、かつ同軸ケーブル50の中心導体51と接続された状態で、ブッシング20の内部に取り付けられている。ソケット30は、例えばCu合金などのような金属材料を用いて形成される。
【0051】
前述した第2の切り欠き部18は、図3(A)に示すように、延在部12bの外表面側に一方開口を有し、同軸ケーブル50の外導体52が載置されている側に他方開口を有する貫通孔である。第2の切り欠き部18である貫通孔は、延在部12b内に一方開口および他方開口の外周が位置している。また、第2の切り欠き部18である貫通孔は、図3(B)に示すように、貫通孔の他方開口から一方開口に向かって断面積が広がるテーパー領域18Tを有している。
【0052】
なお、第2の切り欠き部18は、例えば外周の一部が一方側かしめ部材14aと他方側かしめ部材14bの少なくとも一方にかかるように形成されてもよい。また、第2の切り欠き部18は、延在部12bの、一方側かしめ部材14aと他方側かしめ部材14bが設けられていない側部を、一部切り欠くようにして形成されてもよい。
【0053】
そして、第2の切り欠き部18内の少なくとも一部には、後述するように、同軸ケーブル50の外導体52と延在部12bとを接合している接合部材19が存在している。接合部材19は、例えばSnベースのPbフリーはんだのようなSnを含む合金を用いて形成されている。
【0054】
なお、接合部材19は、Snを含む合金以外の金属材料を用いて形成されてもよい。また、接合部材19は、例えば熱硬化型の導電性接着剤のような、樹脂成分を含むような材料を用いて形成されてもよい。
【0055】
L型同軸コネクタ100では、かしめ部14による固定と、接合部材19による外導体52と延在部12bとの接合とが併用されている。すなわち、かしめ部14が強くかしめられていないため、接続時における同軸ケーブル50の外導体52および絶縁膜53の変形が抑制されている。その結果、同軸ケーブル50のインピーダンスのずれが抑制されている。また、L型同軸コネクタ100と同軸ケーブル50との間に、十分な接続強度が維持されている。
【0056】
また、第2の切り欠き部18が延在部12b内に形成された貫通孔である場合、接合部材19が貫通孔の一方開口および他方開口の外周全体に接触しているため、外導体52と延在部12bとの接合強度が高くなっている。さらに、貫通孔が他方開口から一方開口に向かって断面積が広がるテーパー領域18Tを有している場合、貫通孔の内部に接合部材前駆体が保持されやすくなっているため、外導体52と延在部12bとの接合強度がより高くなっている。その上、接合部材19の延在部12bの外側へのはみ出しが抑制されている。
【0057】
<L型同軸コネクタの製造方法>
L型同軸コネクタ100は、例えば以下の第1ないし第7の工程を経ることにより製造される。各工程の説明は、図2を参照することにより十分理解され得るため、以下の説明では図示が省略されている。
【0058】
第1の工程は、構成部材の準備または作製工程である。第1の工程により、ハウジング10と、ブッシング20と、ソケット30とが準備または作製される。ハウジング10と、ブッシング20と、ソケット30とは、前述の構造を有している。
【0059】
第2の工程は、ソケット取り付け工程である。第2の工程により、ソケット引き出し部32がブッシング20の切り欠き部24から突出するようにして、ソケット30がブッシング20の内部に取り付けられる。
【0060】
第3の工程は、ブッシング取り付け工程である。第3の工程により、ブッシング引き出し部22がハウジング10の第1の切り欠き部17から突出するようにして、内部にソケット30が取り付けられたブッシング20がハウジング10の内部に取り付けられる。その際、ブッシング20は、ソケット30がブッシング20によりハウジング10と絶縁されるようにして、ハウジング10の内部に取り付けられる。
【0061】
第4の工程は、接合部材前駆体の付与工程である。第4の工程により、延在部12bに形成されている第2の切り欠き部18の少なくとも一部に、接合部材前駆体が付与される。接合部材前駆体としては、例えばPbフリーはんだペースト、糸状のPbフリーはんだなどの形態であるSn合金が用いられる。接合部材前駆体の付与は、例えば延在部12bの外表面側に第2の切り欠き部18の一方開口を塞ぐ当て板を置き、当て板と第2の切り欠き部18とで形成されたキャビティ内に、上記の接合部材前駆体を充填することにより行なうことができる。
【0062】
第5の工程は、外導体載置工程である。第5の工程により、同軸ケーブル50の中心導体51とソケット30とが接続され、かつ露出している外導体52が延在部12b上に載置される。同軸ケーブル50の中心導体51とソケット30との接続は、同軸ケーブル50の中心導体51とソケット30のソケット引き出し部とを接触させることにより行なわれる。
【0063】
第6の工程は、かしめ工程である。第6の工程により、一方側かしめ部材14a(第1部材14a1ないし第3部材14a3)および他方側かしめ部材14b(第1部材14b1ないし第3部材14b3)の先端部が、同軸ケーブル50を挟んで延在部12bと対向するように折り曲げられる。その結果、かしめ部14が形成される。
【0064】
第7の工程は、接合工程である。第7の工程により、接合部材前駆体が加熱され、同軸ケーブル50の外導体52と延在部12bとを接合している接合部材19とされる。
【0065】
以上で説明したL型同軸コネクタ100の製造方法により、かしめ部14を強くかしめることなく、同軸ケーブル50と十分な接続強度で固定されたL型同軸コネクタ100を、効率よく製造することができる。
【0066】
−L型同軸コネクタの第2の実施形態−
<L型同軸コネクタの構造>
この発明に係るL型同軸コネクタの第2の実施形態であるL型同軸コネクタ200の構造について、図4を用いて説明する。
【0067】
図4は、L型同軸コネクタ200の組み立て前の各要素を示す斜視図である。図2図4との比較から分かるように、L型同軸コネクタ200は、同軸ケーブル50の外導体52と延在部12bとの接合の仕方がL型同軸コネクタ100と異なっている。それ以外の構成要素については、L型同軸コネクタ100と同様であるため、ここではそれらについてのさらなる説明を省略する。
【0068】
L型同軸コネクタ200においては、同軸ケーブル50の外導体52と延在部12bとの間の、外導体52の露出している部分全体に、外導体52と延在部12bとを接合している接合部材55が存在している。ただし、外導体52と延在部12bとの間の一部に接合部材55が存在するようにしてもよい。接合部材55は、L型同軸コネクタ100の接合部材19と同様に、例えばSnベースのPbフリーはんだのようなSnを含む合金を用いて形成されている。
【0069】
なお、接合部材55は、Snを含む合金以外の金属材料を用いて形成されてもよい。また、接合部材55は、例えば熱硬化型の導電性接着剤のような、樹脂成分を含むような材料を用いて形成されてもよい。
【0070】
L型同軸コネクタ200でも、かしめ部14による固定と、接合部材55による外導体52と延在部12bとの接合とが併用されている。すなわち、L型同軸コネクタ100と同様に、かしめ部14が強くかしめられていないため、接続時における同軸ケーブル50の外導体52および絶縁膜53の変形が抑制されている。その結果、同軸ケーブル50のインピーダンスのずれが抑制されている。また、L型同軸コネクタ200と同軸ケーブル50との間に、十分な接続強度が維持されている。
【0071】
<L型同軸コネクタの製造方法>
L型同軸コネクタ200は、例えば以下の第1ないし第7の工程を経ることにより製造される。各工程の説明は、図4を参照することにより十分理解され得るため、以下の説明では図示が省略されている。
【0072】
また、第1ないし第3の工程、および第6の工程は、L型同軸コネクタ100の製造方法の対応する工程と同様であるため、ここではそれらについてのさらなる説明を省略する。
【0073】
第4の工程は、接合部材前駆体の付与工程である。第4の工程により、露出している外導体52の外表面の少なくとも一部に、接合部材前駆体が付与される。接合部材前駆体としては、例えばPbフリーはんだペーストまたはPbフリーはんだのプリコートなどの形態であるSn合金が用いられる。接合部材前駆体の付与は、外導体52の外表面に接合部材前駆体を既知の手段により付与することにより行なうことができる。
【0074】
第5の工程は、外導体載置工程である。第5の工程により、同軸ケーブル50の中心導体51とソケット30とが接続され、かつ外導体52と延在部12bとの間の少なくとも一部に接合部材前駆体が存在するように、延在部12b上に外導体52が載置される。同軸ケーブル50の中心導体51とソケット30との接続は、L型同軸コネクタ100の製造方法と同様である。
【0075】
第7の工程は、接合工程である。第7の工程により、接合部材前駆体が加熱され、同軸ケーブル50の外導体52と延在部12bとを接合している接合部材55とされる。
【0076】
以上で説明したL型同軸コネクタ200の製造方法により、かしめ部14を強くかしめることなく、同軸ケーブル50と十分な接続強度で固定されたL型同軸コネクタ200を、効率よく製造することができる。
【0077】
なお、この明細書に記載の実施形態は、例示的なものであって、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることができる。
【符号の説明】
【0078】
100、200 L型同軸コネクタ、10 ハウジング、11 ハウジング本体、12 背面部、12a 蓋部、12b 延在部、13 支持部、14 かしめ部、15 一方開口、16 他方開口、17 第1の切り欠き部、18 第2の切り欠き部、19 接合部材、20 ブッシング、30 ソケット、50 同軸ケーブル、51 中心導体、52 外導体、53 絶縁膜。
図1
図2
図3
図4
図5