【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るL型同軸コネクタでは、ハウジングの構造、特にハウジングが含む背面部の構造についての改良が図られる。
【0011】
この発明に係るL型同軸コネクタの第1の形態は、中心導体と、外導体と、中心導体と外導体とを絶縁している絶縁膜とを有する同軸ケーブルに接続されている。L型同軸コネクタは、ハウジングと、ハウジングの内部に取り付けられるブッシングと、ブッシングによりハウジングと絶縁され、かつ中心導体と接続された状態で、ブッシングの内部に取り付けられているソケットとを備えている。
【0012】
ハウジングは、ハウジング本体と、背面部と、かしめ部とを有している。ハウジング本体は、一方開口と他方開口とを有し、かつ第1の切り欠き部が側面に形成されている。背面部は、ハウジング本体の他方開口を覆っている蓋部と、蓋部から延在し外導体が載置されている延在部とを有している。かしめ部は、延在部から延在しており、先端部が同軸ケーブルを挟んで延在部と対向するように折り曲げられている。
【0013】
そして、延在部には、第2の切り欠き部が形成されており、第2の切り欠き部内の少なくとも一部に、外導体と延在部とを接合している接合部材が存在している。
【0014】
上記のL型同軸コネクタでは、かしめ部による固定と、接合部材による外導体とハウジングの背面部(延在部)との接合とが併用されている。すなわち、かしめ部が強くかしめられていないため、接続時における同軸ケーブルの外導体および絶縁膜の変形が抑制されている。その結果、同軸ケーブルのインピーダンスのずれが抑制されている。また、L型同軸コネクタと同軸ケーブルとの間に、十分な接続強度が維持されている。
【0015】
この発明に係るL型同軸コネクタの第1の形態は、以下の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第2の切り欠き部は、延在部の外表面側に一方開口を有し、外導体が載置されている側に他方開口を有する貫通孔であり、かつ延在部内に貫通孔の一方開口および貫通孔の他方開口の外周が位置している。
【0016】
上記のL型同軸コネクタでは、第2の切り欠き部が延在部内に形成された貫通孔であるため、接合部材は貫通孔の一方開口および貫通孔の他方開口の外周全体に接触している。その結果、外導体と延在部との接合強度が高くなっている。
【0017】
この発明に係るL型同軸コネクタにおいて、第2の切り欠き部が上記のような貫通孔である場合は、さらに以下の特徴を備えることが好ましい。すなわち、貫通孔は、貫通孔の他方開口から貫通孔の一方開口に向かって断面積が広がるテーパー領域を有している。
【0018】
上記のL型同軸コネクタでは、テーパー領域により、貫通孔の内部に接合部材前駆体が保持されやすくなっている。その結果、外導体と延在部との接合強度がより高くなっている。また、接合部材の延在部の外側へのはみ出しが抑制されている。
【0019】
この発明に係るL型同軸コネクタの第2の形態は、第1の形態と同様に、中心導体と、外導体と、中心導体と外導体とを絶縁している絶縁膜とを有する同軸ケーブルに接続されている。L型同軸コネクタは、ハウジングと、ハウジングの内部に取り付けられるブッシングと、ブッシングによりハウジングと絶縁され、かつ中心導体と接続された状態で、ブッシングの内部に取り付けられているソケットとを備えている。
【0020】
ハウジングは、ハウジング本体と、背面部と、かしめ部とを有している。ハウジング本体は、一方開口と他方開口とを有し、かつ第1の切り欠き部が側面に形成されている。背面部は、ハウジング本体の他方開口を覆っている蓋部と、蓋部から延在し外導体が載置されている延在部とを有している。かしめ部は、延在部から延在しており、先端部が同軸ケーブルを挟んで延在部と対向するように折り曲げられている。
【0021】
そして、外導体と延在部との間の少なくとも一部には、外導体と延在部とを接合している接合部材が存在している。
【0022】
上記のL型同軸コネクタでも、第1の形態と同様に、かしめ部による固定と、接合部材による外導体とハウジングの背面部(延在部)との接合とが併用されている。すなわち、かしめ部が強くかしめられていないため、接続時における同軸ケーブルの外導体および絶縁膜の変形が抑制されている。その結果、同軸ケーブルのインピーダンスのずれが抑制されている。また、L型同軸コネクタと同軸ケーブルとの間に、十分な接続強度が維持されている。
【0023】
この発明に係るL型同軸コネクタの第1の形態およびその好ましい形態、ならびにL型同軸コネクタの第2の形態は、以下の特徴を備えることが好ましい。すなわち、接合部材は、Snを含む合金を用いて形成されている。
【0024】
上記のL型同軸コネクタでは、接合部材が例えばSnベースのPbフリーはんだのような強度が高い合金であるので、外導体と延在部との接続強度が高くなっている。
【0025】
この発明に係るL型同軸コネクタにおいて、接合部材がSnを含む合金を用いて形成されている場合は、以下の特徴を備えることが好ましい。すなわち、延在部の外導体が載置されている側には、Sn膜またはSnを含む合金膜が付与されている。
【0026】
上記のL型同軸コネクタでは、延在部の外導体が載置されている側のSn膜またはSnを含む合金膜とSnを含む合金である接合部材とが強固に接合するので、外導体と延在部との接続強度がさらに高くなっている。
【0027】
この発明に係るL型同軸コネクタの製造方法の第1の形態は、以下の第1ないし第7の工程を備えている。L型同軸コネクタは、中心導体と、外導体と、中心導体と外導体とを絶縁している絶縁膜とを有する同軸ケーブルに接続されている。
【0028】
第1の工程は、ハウジングと、ブッシングと、ソケットとを準備または作製する工程である。ハウジングは、ハウジング本体と、背面部と、かしめ部材とを有している。ハウジング本体は、一方開口と他方開口とを有し、かつ第1の切り欠き部が側面に形成されている。背面部は、ハウジング本体の他方開口を覆っている蓋部と蓋部から延在し第2の切り欠き部が形成されている延在部とを有している。かしめ部材は、延在部から延在している。
【0029】
第2の工程は、ソケットをブッシングの内部に取り付ける工程である。第3の工程は、ソケットがブッシングによりハウジングと絶縁されるようにして、内部にソケットが取り付けられたブッシングを、ハウジングの内部に取り付ける工程である。第4の工程は、第2の切り欠き部の少なくとも一部に、接合部材前駆体を付与する工程である。第5の工程は、中心導体とソケットとを接続し、かつ露出している外導体を延在部上に載置する工程である。
【0030】
第6の工程は、かしめ部材の先端部を、先端部が同軸ケーブルを挟んで延在部と対向するように折り曲げることにより、かしめ部を形成する工程である。そして、第7の工程は、接合部材前駆体を加熱し、外導体と延在部とを接合している接合部材とする工程である。
【0031】
上記のL型同軸コネクタの製造方法では、かしめ部を強くかしめることなく、同軸ケーブルと十分な接続強度で固定されたL型同軸コネクタを、効率よく製造することができる。
【0032】
この発明に係るL型同軸コネクタの製造方法の第2の形態は、以下の第1ないし第7の工程を備えている。L型同軸コネクタは、第1の形態と同様に、中心導体と、外導体と、中心導体と外導体とを絶縁している絶縁膜とを有する同軸ケーブルに接続されている。
【0033】
第1の工程は、ハウジングと、ブッシングと、ソケットとを準備または作製する工程である。ハウジングは、ハウジング本体と、背面部と、かしめ部材とを有している。ハウジング本体は、一方開口と他方開口とを有し、かつ第1の切り欠き部が側面に形成されている。背面部は、ハウジング本体の他方開口を覆っている蓋部と蓋部から延在している延在部とを有している。かしめ部材は、延在部から延在している。
【0034】
第2の工程は、ソケットをブッシングの内部に取り付ける工程である。第3の工程は、ソケットがブッシングによりハウジングと絶縁されるようにして、内部にソケットが取り付けられたブッシングを、ハウジングの内部に取り付ける工程である。第4の工程は、露出している外導体の外表面の少なくとも一部に、接合部材前駆体を付与する工程である。第5の工程は、中心導体とソケットとを接続し、かつ外導体と延在部との間の少なくとも一部に接合部材前駆体が存在するように、延在部上に前記外導体を載置する工程である。
【0035】
第6の工程は、かしめ部材の先端部を、先端部が同軸ケーブルを挟んで延在部と対向するように折り曲げることにより、かしめ部を形成する工程である。そして、第7の工程は、接合部材前駆体を加熱し、外導体と延在部とを接合している接合部材とする工程である。
【0036】
上記のL型同軸コネクタの製造方法でも、第1の形態と同様に、かしめ部を強くかしめることなく、同軸ケーブルと十分な接続強度で固定されたL型同軸コネクタを、効率よく製造することができる。