特許第6916213号(P6916213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916213
(24)【登録日】2021年7月19日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】調製済み平板培地製品
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/16 20060101AFI20210729BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   C12M1/16
   C12Q1/04
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-560725(P2018-560725)
(86)(22)【出願日】2017年2月7日
(65)【公表番号】特表2019-506184(P2019-506184A)
(43)【公表日】2019年3月7日
(86)【国際出願番号】US2017016810
(87)【国際公開番号】WO2017139259
(87)【国際公開日】20170817
【審査請求日】2020年2月4日
(31)【優先権主張番号】62/292,503
(32)【優先日】2016年2月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】クランドール,ライアン,デー.
【審査官】 小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−234576(JP,A)
【文献】 米国特許第06632653(US,B1)
【文献】 特開平03−030664(JP,A)
【文献】 特開平05−268932(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0072339(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0220610(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00−7/08
C12M 1/00−3/10
C12Q 1/00−3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留部及び該貯留部を取り囲むリップを備える複数のベースの第1の連続ストリップと、
複数の蓋の第2の連続ストリップであって、前記蓋はそれぞれ、前記ベースのリップ上に設置され、そこに付着されるように適合されている、複数の蓋の第2の連続ストリップと、
複数のカバーの第3の連続ストリップであって、前記カバーは、該カバーの少なくとも1つの辺縁部と、該カバーの少なくとも1つの辺縁部から離れた隆起部分との間に広がる周縁平坦面を備え、前記隆起部分はその周縁平坦面から隆起しており、こうして該隆起部分は、該周縁平坦面から上方に延びる少なくとも1つの壁部を備え、それぞれのカバーは、前記ベースのリップ上に設置され、前記ベースに直接的に付着されるように適合されている、複数の該カバーの第3の連続ストリップと、
を備える、培地の調製及び接種のための分配可能なプレートのシステム。
【請求項2】
前記ベース、前記蓋、及び前記カバーの材料は、熱可塑性プラスチックである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ベース、前記蓋、及び前記カバーは、自動化された注入及び接種のシステムを通じて能動的制御を受けて前進するように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ベース、前記蓋、及び前記カバーは、複数のタイミング機構を備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記隆起部分の少なくとも1つの壁部は、通気のための少なくとも1つの開口部を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記蓋及び前記ベースは、それぞれ4つの辺縁部を備え、かつ該蓋の2つの辺縁部は、該ベースの対応する2つの辺縁部よりも長い、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
平板培地を使用して試料を試験及び分析する方法であって、
能動的制御を与えるように適合された相互連結された複数のベースの複数を自動化されたシステム上に配置することと、
前記複数のベースの少なくとも1個に寒天を入れることにより前記相互連結された複数のベースの複数を処理することと、
前記少なくとも1個のベースを対応する蓋と集成させることと、
熱を加えて前記少なくとも1個のベース及び前記蓋を結合させることと、
前記相互連結された複数のベースの複数及び前記蓋を前進させ、反転させることと、
その反転された、前記蓋と組み合わされた少なくとも1個の前記ベースを、寒天を固化させるように選択された条件下で低下された温度に供することと、
その前記蓋を備えた少なくとも1個の前記ベースを、前記相互連結された複数のベースの複数から分離し、その前記蓋を少なくとも1個の前記ベースから剥がし、取り除き、そしてその少なくとも1個の前記ベース中の寒天に生物学的試料を接種することと、
前記少なくとも1個のベース上にカバーを固定することと、
前記生物学的試料をインキュベートすることと、
前記カバーを開けて、該生物学的試料を分析することと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記相互連結された複数のベースの複数をロールにすることと、
該ロールを巻き出して、前記相互連結された複数のベースの複数を自動化されたシステム上に配置する準備を整えることと、
その際、前記複数のベースのそれぞれのベースは、能動的制御の機構を備え;
前記相互連結された複数のベースの複数を前記自動化されたシステム上に配置したときに能動的制御を与えて、それらのベースを、該システムを通じて前進させることと、
を更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記寒天を、選択された温度で選択された時間にわたって反転させながら固化させることで、前記蓋と面一である前記寒天の表面が得られる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
熱を加えて前記少なくとも1個のベース及び前記蓋を結合させる工程が、少なくとも1個の該ベースと該蓋との間に気密シールを生成する温度及び期間にわたり行われる、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記固定する工程は、熱を加えて前記カバー及び前記少なくとも1個のベースを結合させることを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記生物学的試料の分析の後に、前記カバーを前記少なくとも1個のベースに再固定することを更に含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2016年2月8日に出願された米国仮特許出願第62/292,503号の出願日の利益を主張し、その開示内容は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【背景技術】
【0002】
微生物学的検体の培養及び分析のための手段を提供するために、培養培地、寒天培地、又はその他の適切な培地を利用することは良く知られている。試料増殖のためのシステムを使用する手動の手段及び自動化された手段の両方とも、当該技術分野において知られている。
【0003】
通常知られているように、試料増殖を行うための培養培地の使用は、一般に容器としてペトリ皿を使用することを含む。それらの容器は個別に準備及び使用される。このように、自動化された手段が使用されるか否かにかかわらず、それぞれの容器は、寒天が充填されるときには別々に取り扱われる。充填されたら、それらの容器は一般的に固化条件下で貯蔵され、接種準備が整うまで保持される。例えば、培養培地を加えた後に、その容器は冷却され、固化過程の期間にわたり蓋が被せられる。
【0004】
培養培地が接種のための条件にある場合に、容器に被せられた全ての蓋は取り除かれる。次いで、接種は、培養培地の表面に試料を塗布する画線法等の手段を用いて行われる。その後に、その試料はインキュベーター内に入れられる。インキュベートは、測定可能な微生物増殖が起こるのに十分であると思われる長さの時間にわたって行われる。この過程は、それぞれ個々の皿ごとに繰り返される。
【0005】
ペトリ皿は、大容量の自動化された方法で使用される場合に重大な問題を引き起こす。従来のペトリ皿に代わる1つの選択肢は、3M(商標)Petrifilm(商標)Salmonella Expressという製品である。3M(商標)プレートは、上部フィルム及び下部フィルムを含み、その際、上部フィルムは、該プレートの片側で下部フィルムに付着され、閉じた状態では下部フィルムと面一である。その片側での付着により、付着している側と反対側にある上部フィルムのリップを介して上部フィルムを開くことが可能となる。そのリップを引っ張ることで、上部フィルムは下部フィルムから剥がし易くなる。この種類のプレートが使用される場合に、培養培地は、上部フィルムを開いたままで下部フィルム上に置かれる。その後に、上部フィルムは下部フィルム面上に貼り戻される。次に、スプレッダーを該プレート上に押し当てることで、培養培地が調製される。培養培地の調製に十分な時間が経過したら、上部フィルムを開いて、培養培地に接種が行われる。上部フィルムをもう一度貼り戻し、上部フィルムに撫でるような動きを加えて、気泡を取り除く。次いで、そのプレートは、試料の分析準備が整うまでインキュベートされる。
【0006】
熱成形された培養皿の使用は製造及び費用の問題を軽減する。しかしながら、そのようなシステムは湿分の問題も、固化過程の間の寒天におけるムラも解決しない。これらの問題を受け、それらのプレートは、気密封止性を欠くため汚染されることになり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、自動化されたシステムで使用される場合の効率が改善され、試料汚染を防ぐこともできるプレートシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ベースプレートに寒天を注入することを容易にするとともに、ベースプレートに試料とも呼ばれる微生物学的検体を接種することを容易にする、自動化されたシステムにおいて使用しやすくするために適合されている複数のプレートの構成部品のロールストック(rollstock:巻取物)を含むシステムに関する。
【0009】
1つの態様においては、本発明は、培養培地の調製及び接種のために使用される複数の分配可能(dispensable)なプレートのシステムに関する。該システムは、複数のプレートの構成部品の連続ストリップ(strips:帯状体)を3つ含む。第1のストリップは、貯留部及び該貯留部を取り囲むリップを有する複数のベースの連続ストリップである。第2のストリップは、複数の蓋の連続ストリップであって、それぞれの蓋が上記ベースのリップ上に設置され、かつ該リップに付着されるように適合されているストリップである。そして第3のストリップは、複数のカバーの連続ストリップである。それぞれのカバーは、該カバーの少なくとも1つの辺縁部と、そのカバーの少なくとも1つの辺縁部から離れた隆起部との間に広がる周縁平坦面を備え、該隆起部はその周縁平坦面から隆起しており、こうしてその隆起部は、該周縁平坦面から上方に延びる少なくとも1つの壁部を備える。それぞれのカバーは、上記ベースのリップ上に設置され、かつ該ベースに直接的に付着されるように適合されている。
【0010】
上記ベース、蓋、及びカバーの材料は、熱可塑性プラスチックとすることができる。上記ベース、蓋、及びカバーはまた、自動化された注入及び接種のシステムを通じて能動的制御を受けて前進するように適合されていてもよい。能動的制御は、上記ベース、蓋、及びカバーに複数のタイミング機構を備えさせることにより獲得することができる。上記蓋及びベースは、その蓋及びベースの両方が4つの辺縁部を有し、その蓋の2つの辺縁部がそのベースの対応する2つの辺縁部よりも長いように形成され得る。上記カバーの隆起部分の少なくとも1つの壁部は、通気のための少なくとも1つの開口部を備え得る。
【0011】
もう1つの態様においては、上記システムは、複数の熱成形されたプレートのロール(roll:巻物)である。そのロールは、巻かれた形式で貯蔵されるのに十分に多数のベースを含む。一般的に、1つのロールは、少なくとも4個から何十個又は何百個までのベースで構成される。複数のベースの各々は、1つの共通辺縁部に沿って隣り合うベースに連結されているため、複数のベースは、それらのベースの線形ストリップを形成する。上記複数のベースは、複数のベースの合わせた長さが螺旋形状又はさもなければリール形式の形状で巻いて折り畳むのに十分である場合にそのように適合されている。
【0012】
ベース間の連結は、それらのベースを線引きする相互連結の線に沿ってより脆弱な部分を備え得る。より脆弱な部分は、ミシン目であり得る。一実施の形態において、それぞれのベースは、そのそれぞれのベースにヒートシールされているカバーを備える。
【0013】
更にもう1つの態様においては、本発明は、平板培地を使用して試料を試験及び分析する方法に関する。該方法は、自動化されたシステムに能動的制御を与えるように適合された相互連結された複数のベースの複数を配置することを含む。その工程は、少なくとも1個のベースのその中に寒天を入れることにより、相互連結された複数のベースの複数を処理することを含む。後続工程は、上記少なくとも1個のベースを、対応する蓋と付着させ、付着されたら両者を加熱することを含む。蓋が配置されたら、後続工程は、複数のベース及び蓋を前進及び反転させることを含む。これに続いて、反転されたベース及び蓋は、低下させた温度にかけられ、少なくとも1個のベース中の寒天の固化が促進される。固化の後に、接種されるベースは、その相互連結された複数のベースの複数から分離される。後続工程は、蓋を少なくとも1個のベースから剥がし、取り除くことを含む。蓋が取り除かれると、後続工程は、寒天に生物学的試料を接種し、その後に、少なくとも1個のベース上にカバーを固定することを含み、そのカバーは、接種された培地の内容物を収容する役割を果たす。その後に試料はインキュベートされる。インキュベートが完了したら、そのカバーを開いて、試料が分析される。
【0014】
また上記方法は、相互連結された複数のベースの複数を巻き出すことを含むこともでき、その際、それぞれのベースは、タイミング機構を含む。相互連結された複数のベースの複数を自動化されたシステムへと配置する場合に、そのタイミング機構は、上記ベース、カバー、及び蓋を、該システムを通じて前進させるための能動的制御を与える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】複数のベースの連続ストリップを表す。
図1B】相互連結された複数のベースの連続ストリップから構成されるロールストックを表す。
図2A】試験法の一段階での集成されたプレートを表す。
図2B】試験法の一段階での集成されたプレートを表す。
図2C】試験法の一段階での集成されたプレートを表す。
図3A】集成されたプレートのベースの等角図を表す。
図3B】集成されたプレートのベースの正面図を表す。
図3C】蓋の等角図を表す。
図3D】カバーの等角図を表す。
図4】1つの実施の形態における方法の製造工程の間の様子を示すプレート集成物へと作製される複数のベースの連続ストリップを表す。
図5】1つの実施形態における方法の試験及び分析の局面の間の様子を示す集成されたプレートの連続ストリップ及び単体化されたプレートを表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1Aに図解される本発明の1つの態様の第1の実施形態においては、複数のベース100は、それぞれのベースが線形の連続物として連結されるように連続ストリップ10で相互連結されている。図1Aは、連続ストリップ10を図解しているが、その実施形態は説明を目的とするものであり、該ストリップは、図1Aに示されるよりも多数の相互連結された複数のベース100を有し得る。例えば、図1Bに図解されるように、多数のベース100が、ロールストックとして線形に相互連結され得る。その他の連続ストリップは、相互連結された複数の蓋200又はカバー300を含み得る。本明細書で記載される場合に、特段の記載がない限り、ロールストック又は充填ライン(filling line)は、相互連結された複数のベースの連続ストリップ10を指すものと解釈される。図2A図2Cに関しては、図1Aで図解された複数のベースの連続物中の単一のベースが、そこに集成される追加の層と共に図解されている。以下で幾つかの場合に個々に構成部品と呼ばれるベース、蓋、及びカバーという用語は一般的に、単独で又は組み合わせて使用される場合に、本明細書に記載される試料の試験のための自動化されたシステムの一部分として使用され得る集成されたプレート20の個別の部分を指すものと解釈される。例えば、図2Bは、ベース100及び取り付けられたカバー300を含む集成されたプレート20を図解している。本明細書に記載される自動化されたシステムは、複数のベース100、蓋200、及びカバー300の個別のストリップ10を集成して、試験及び分析のための集成されたプレート20を作製する機械を備える自動化された装置(図示せず)を指す。また、そのような機器は、蓋200がベース100に設置される前に、培地はベース100中に入れられる。1つの例においては、上記自動化されたシステムは、集成されたプレート20を形成するための加熱機能及び冷却機能を果たす。それぞれのベース100は、蓋200又はカバー300を付加又は除去するシステムを通じて前進される。上記自動化されたシステムは、当業者に既知のあらゆる自動化されたシステムとすることができ、複数のベース又は集成されたプレート20の連続ストリップ10の能動的制御のためのタイミング機構を認識するように適合されたシステムも含み得る。
【0017】
連続ストリップ10の複数のベース100は、それぞれの隣り合うベース100の辺縁部に沿って脆弱な部分(図示せず)を介して相互連結されている。1つの例においては、脆弱な部分は、ベース100の間の線引きの地点にあるミシン目とすることができ、そのミシン目は、複数のベース100の相互連結された辺縁部に沿って線を形成する。
【0018】
上記自動化されたシステムにおいては、図2A図2Cに示されるように、集成過程の間の様々な時点で、その自動化されたシステムにおける連続ストリップ10は、相互連結された複数のベース100だけを備え得るか、又は該ストリップは、1個以上の集成されたプレート20、例えばベース100と一緒に蓋200(図2A)を、ベース100と一緒にカバー300(図2B)を、又はベース100と一緒に蓋200及びカバー300(図2C)を備え得る。集成されたプレートのそれらの構成部品は、その集成されたプレートが自動化されたシステムを通じて前進するときに、該プレートが製造中、試験中、又は分析中であるかどうかに左右される。
【0019】
本発明の集成されたプレート20は、微生物の培養のために使用される培養容器として使用され得る。微生物の例としては、ウイルス、細菌、真菌等が挙げられる。全体を通して使用される試料又は複数の試料という用語は、一般的に上述の例のような微生物を含む生物学的試料を指すものと解釈される。
【0020】
集成されたプレート20の個別の部分は、以下で更に記載されるようなプレート集成物20のその他の部分と適合可能であるように選択された材料で作られている。
【0021】
本明細書で記載され、かつ図3A図3Dで図解されるように、上記ベース100、蓋200、及びカバー300は、表面110、210、及び310を備える。これらの表面は、集成されたプレート20において互いに平行である。寒天注入又は試料接種の供給源に面したベース100の表面110と略垂直な方向は上方向と呼ばれ、又は集成されたプレートの物理的構成部品が参照される場合には、隆起部分と呼ばれる。同様にベースの表面110と略垂直な反対方向は相応して下方向と呼ばれ、試験のために使用される任意の材料を収容するための閉じた底面を有する。
【0022】
上記集成されたプレート20のベース100は、自動化されたシステムに配置し、そのシステムを通じて前進することが可能なサイズを有する。ベース100は、少なくとも1つの上面110と、ベース100の少なくとも1つの例えば113の外周縁部から離れた凹面により画成される貯留部120とを備える。貯留部120は、外壁130内に存在し、試験される試料による接種のための寒天又は培養培地を収容するのに十分な容量を有する。本明細書で使用される寒天及び培養培地という用語は両者とも、培養物増殖のために使用される培地を指す。またベース100は、能動的制御を与える物理的特質を備える。ベース100の物理的寸法は特段限定されるものではない。
【0023】
1つの例においては、上記ベース100は、図3A及び図3Bに示される。該ベースは、表面領域を画成する4つの辺縁部111、112、113、114を備える。その表面領域は、辺縁部111、112、113、114と、ベース100のそれらの辺縁部から離れた貯留部120とを隔てている上面110を備える。該辺縁部111、112、113、114は、正方形又は長方形の形状を画成する。上記ベース100の貯留部120は、図3Aに示されるように、側壁130及び底面131により画成される。その貯留部120の底面131の表面積は、辺縁部111、112、113、114により求められるベース100の境界線により定義される面積よりも小さい。少なくとも1つの側壁130と表面110との間の交差部分は、丸められていてもよく(132)、又は一定角度を持っていてもよい。少なくとも1つの側壁130と底面131との間の交差部分もまた、丸められていてもよく(133)、又は一定角度を持っていてもよい。貯留部120内の容量は、寒天の許容可能な容量に基づいて限定され得る。1つの例において、そうでなく従来のペトリ皿が使用される場合には、貯留部120のサイズは、3−1/2インチ直径×5/8インチ深さである(100mm×15mm)。貯留部120は、一般的にペトリ皿で使用される容量と同様の容量を提供するように構成され得る。タイミング孔140は、ストリップ10が上記システムを通じて前進する速度の能動的制御を与えるように表面110上に備えられ得る。図3Aに示されるように、該タイミング孔140は、2つの辺縁部111、112に隣接する表面110上に配置されており、かつタイミング孔140の線形の連続物が辺縁部111、112の各々と平行であるように線形の様式で等間隔に配置されている。タイミング孔140を備えることで、連続ストリップ10のために能動的な係合も提供される。
【0024】
もう1つの例においては、切欠又はその他のタイミング機構(例えば、窪み、マーク、プリント等)を、孔の代わりに使用して能動的制御を与えることができる。
【0025】
更にもう1つの例においては、上記ベース100の外周縁部は、円形又は多角形の形状を画成し得る。
【0026】
上記ベース100は、培養物/接種された培養物の汚染を妨げるバリア特性を有する材料で作られている。汚染は、重大な汚染を伴うことなく培地を貯蔵可能にし、かつ接種された培養物を試験可能にする時間的期間にわたり妨げられる。試験プログラムは、寒天のベースへの注入、固化、試料による接種、インキュベート、その後の試料の分析を一般的に含み得る。ベース100の材料特性は、該ベース100が、自動化されたシステムの作動温度で蓋200を受容するのに十分に硬質であるような特性であるべきである。したがって、作動温度で反ってしまうベースは適していないこととなる。ベース100を作るための材料は、成形品に一般的に使用される高められた温度で成形され得るのに十分に感熱性である。さらに、ベースのために使用される材料は、寒天及び試料が感光性でない場合にはほぼ透明又は半透明であり、さもなければ不透明である。上述の指針を考慮すれば、上記ベース100は当業者に既知のあらゆる適切な材料製とすることができる。
【0027】
上記ベース100のために使用され得る材料の例には、通例の熱可塑性材料が含まれる。適切な熱可塑性プラスチックの例には、限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリ塩化ビニル(PVC)が含まれる。ベース100の所望の形状は、熱可塑性材料を加熱し、成形し、次いで冷却させることにより形成される。好ましくは、上記ベース100、蓋200、及びカバー300は、同じ材料で作られている。寒天及び試料が感光性でない1つの例においては、上記ベース100、蓋200、及びカバー300は、半透明又は透明のいずれかである。寒天又は試料が感光性であるもう1つの例においては、上記ベース100、蓋200、及びカバー300は、不透明である。なおも更なる例においては、上記集成されたプレート20のための材料は、そのバリア特性については、試験において使用される寒天及び/又は試料の酸素感受性に基づいて選択され得る。
【0028】
個々のベース又は集成されたプレートに標識を付加することもできる。本明細書で記載される場合に、標識は一般的に、バーコード、ブルズアイコード、通常文字、ソフトウェアにより読み取り可能な文字、又は任意のその他の識別記号を指す。標識は、当業者に既知のあらゆる手段によりベース100へと適用することができる。ベースの底面に適用された標識の例示的な使用は、そのベースと対応する試料との関連付けを含む。これはインキュベートに後続する接合時の参照を容易にする。
【0029】
1つの実施形態における製造の間に、上記ベース100は蓋200と共に集成される。その蓋200は一般的に平坦であり、ベース100のリップ110を少なくとも実質的に覆うような寸法を有する。蓋200の平面は上面210を備える。該上面210の領域は、ベース100の一平面上で求められる境界線を超えて延び得る。これはベース100から蓋200を手動で剥がすことを可能にする。
【0030】
上記蓋200の1つの例は、図3Cに示されている。その例においては、蓋200は、長方形の境界線を形成する4つの辺縁部により画成される外側境界を有する平坦な平面の上面210を備える。2つの辺縁部211、212は、ベース100の辺縁部111、112と長さが等しいが、1つの有利な実施形態においては、その他の2つの辺縁部213、214はそれより長さが長い。この例においては、タイミング孔240は、蓋200がベース100に固定されるときに、ベース100のタイミング孔と一致するサイズを有し、かつ一致する位置にある。この例においては、蓋200の長さは、辺縁部213、214と平行な方向においてベース100の長さよりも長い。
【0031】
蓋200のための材料は、ベース100のために使用される材料と同じ種類の材料であり得る。しかしながら、蓋200のために使用される材料は、ベース100のために使用される材料と必ずしも同じである必要はない。むしろ、それはベース100に当てはまるのと同じ材料基準に由来する。
【0032】
1つの例においては、上記蓋200は熱可塑性プラスチックで形成されており、そして上記ベースに対して所望の位置で該ベースと接触せしめて位置決めし、該蓋200及び該ベース100を加熱して、それらを一緒に結合させることにより、上記蓋はベース100に固定される。次いで、その集成されたプレートを、上記システムにより冷却することで、蓋200はベース100にシールされる(以下で、「ヒートシール」とも呼ばれる)。その他の例においては、上記蓋200は、その他の方法を使用して、例えば機械的結合又は接着結合を使用することによりベース100に固定される。機械的結合は、ヒンジ式結合又は蓋200がベース100上の位置にスナップ嵌合するスナップオン結合であり得る。使用される接着剤は、当業者に既知のあらゆるものとすることができる。
【0033】
試験及び分析の過程の或る特定の時点で、図2Cに示されるように、集成されたプレート20は、カバー300を更に備える。カバー300は、上記蓋200と同様に、少なくとも貯留部120を完全に覆うようなサイズを有する。カバー300の表面積は、上記ベース100の外側境界線により画成される領域よりも面積が大きい場合もある。
【0034】
図3Dに示される第1の実施形態の1つの例においては、上記カバー300は、長方形の形状を有する領域を形成する4つの辺縁部を備え、その辺縁部の2つ313、314は、その他の2つの辺縁部311、312よりも長い。カバー300の辺縁部311、312、313、314により画成される領域は、図3Aに示されるベース100の辺縁部111、112、113、114により画成される領域よりも大きい。辺縁部312にまで延びるカバー300の側部は、ベース100の対応する側部よりも長く、カバー300をベース100から剥がすことを可能にするか、又はさもなければベース100から取り除くことを可能にする。上記カバー300は、表面310から張り出した表面320にまで延びる側壁330により画成される隆起部分を備え、その際、その張り出した表面320の外側範囲は、側壁330の頂部により画成される。接種された寒天がベース100の貯留部120中に位置し、かつカバー300がベース100に固定されている場合に、一定体積の空気は、カバー300の隆起部分内に存在する。寒天の接種の前に蓋は取り除かれる。寒天が接種され、上記カバーは、その接種された寒天を収容するベース上に載置される。集成物20はその後にインキュベートされる。インキュベートの間に、ベースとカバーとの間には蓋の層は存在しない。

【0035】
上記カバー300は、寒天の上部に空隙を与えるように構成されている。図3Dに示されるように(ベース100がタイミング孔140を備える実施形態において)、上記カバーもタイミング孔340を備え、それらのタイミング孔は、ベース100のタイミング孔140と対応するサイズ及び位置を有している。図3Dにも示されるように、カバー300は、1つ以上のベント350を備える。それぞれのベントは、少なくとも1つの側壁330中の開口部331を経由して延びており、カバー300の辺縁部311、312に向かって続いている。カバー表面310に沿ったそれぞれのベントの軌道は、非線形として図解されているが、線形であってもよい。非線形のベント350は、接種された寒天からの空気の流れを可能にし、汚染を最小限にする。通気は、ガス透過性の微生物バリア材料の付加により達成することもできる。ガス透過性の微生物バリアの1つの例は、DuPont社により製造されるTyvek(商標)パッチである。上記カバー300は、当業者に知られるその他のフィルターを使用することもできる。
【0036】
カバー300の材料は、ベース100のために使用される材料と同じ種類の材料であり得る。しかしながら、カバー300のために使用される材料は、ベース100のために使用される材料と必ずしも同じである必要はない。むしろ、それはベース100に当てはまるのと同じ材料基準に由来する。したがって、カバー300のために使用される材料は、ベース100のために使用される材料と異なり得る。
【0037】
1つの例においては、上記カバー300は、熱可塑性プラスチックで形成されており、そしてカバー300、ベース100、及び幾つかの場合には蓋200を加熱して、それらを一緒に結合させた後に、集成されたプレート20を冷却することで、該カバー300がベース100にヒートシールされ、そして幾つかの場合には、同様に蓋200にヒートシールされることにより、上記カバーはベース100又は蓋200に固定される。その他の例においては、上記カバー300は、その他の方法を使用して、例えば機械的結合又は接着結合を使用してベース100に固定される。機械的結合は、ヒンジ式結合又はカバー300がベース100上の位置にスナップ嵌合するスナップオン結合であり得る。使用される接着剤は、当業者に既知のあらゆるものとすることができる。
【0038】
上記自動化されたシステムと一緒にロールストックを使用して、本明細書に記載される集成されたプレート20を形成することで、数多くの利点を実現することができる。プレート集成物20の構成部品が熱成形され、ベース100と蓋200及びカバー300とを、ヒートシールにより固定することが可能となる場合の1つの利点は、プレート集成物の形成に必要とされる材料の量の減少である。また熱成形は、一般的に射出成形よりも少ないエネルギーしか使用しない。もう1つの利点は、プレート集成物をより小型にすることができることであり、結果として、該プレートを作る材料がより少量しか必要とされず、該プレートの運送及び貯蔵のための包装はより少量しか必要とされない。本明細書に記載されるプレートロールストックの効果は、標準的なペトリ皿と比べて減量されるため、運送料を更に減らす。また熱成形技術の使用は、集成されたプレート20の形状の確立において一層の自由度を可能にする。集成されたプレートの具体的な形状は、主として作業者による設計選択の問題となる。全体を通して使用される作業者という用語は、一般的に本明細書に記載されるシステム及び方法の設計及び作業を担う個人を指すものと解釈される。
【0039】
本発明の更にもう1つの利点は、蓋及びカバーが別々の構成部品であるため、試料間での相互汚染の危険性がより低いことである。接種のために蓋が取り除かれると、その蓋は廃棄され、接種された寒天上にはカバーが載置される。上記ベースと上記蓋とのシールは、寒天の貯蔵寿命も高め、実施する場合により高い充填速度を可能にする。
【0040】
本発明のその他の利点は、上記ロールストックが運送の間により損傷を受けにくいということである。先に示されるように、該ロールストックは、個々の複数のプレートの構成部品(すなわち、ベース、蓋、又はカバー)のロールストックであるか、又は図2Bに示される複数の集成されたプレート(複数のベース及び複数のカバーを備える)のロールストックであり得る。本明細書に記載されるプレート集成物の包装及び運送もロールストックの使用により従来の個々のペトリ皿システムと比べて簡素化される。
【0041】
本明細書に開示される集成されたプレート20のもう1つの利点は、射出成形されたプレートで通常使用される二次包装(例えば、収縮包装(shrink wrap)、箱等)の削減である。更にもう1つの利点は、図1Bに示されるように、自動化されたシステムにおける連続ストリップ10のロールストックの使用のしやすさである。ロールの構成が、従来技術のばらのプレートと比較して、自動化されたシステムへのより簡単な装填を可能にするため、使用しやすさも高められる。使用方法に関連するその他の利点は、以下で述べられる。
【0042】
もう1つの実施形態においては、集成されたプレート20は、ベース100及び蓋200、又はベース100及びカバー300を備え得る。しかしながら、この実施形態においては、その集成されたプレートはベース、蓋、及びカバーを同時に備えない。
【0043】
更にもう1つの実施形態においては、先に記載される複数のベース100又は複数の集積されたプレート20の連続ストリップ10は、自動化されたシステムに配置する前に、個々のベース100又は集積されたプレート20へと分離され、こうして各々は、個々に処理され得る。該連続ストリップ10は、複数のベース100又は複数の集成されたプレート20へと分離することもできる。
【0044】
もう1つの実施形態においては、自動化されたシステム中で使用するために製造された連続ストリップは、ベース及びカバーを備える相互連結された複数のプレート集成物を含む。この実施形態においては、蓋の別々の連続ストリップが提供され得る。
【0045】
本発明のもう1つの態様においては、連続ストリップ10又はロールストックは、試料の試験及び分析の方法で使用するために供給される。本明細書で記載される場合には、前進及び前方という用語は、ベース100又は集成されたプレート20が、製造、試験又は分析の間に動く様式を説明するために使用される。このように、前進及び前方という用語は、移動の特定の物理的方向についての意味に限定されない。
【0046】
第1の実施形態によれば、相互連結された複数のベース100の連続ストリップ10が供給される。ベース100は、製造においてそのベースを前進させるための能動的制御を備える。能動的制御は、タイミング機構の形であり得る。1つの例においては、上記ベース100は、タイミング孔140を備える。タイミング孔は、自動化されたシステムにより上記連続ストリップを整列させる。タイミング孔の間の間隔は、設計選択の問題であり、そして製造を通して上記ストリップを搬送するために使用される装置により主として駆動される。該タイミング孔は、上記システムを通じて一貫した制御可能な速度で上記ストリップを前進させることを可能にする。
【0047】
最初に、図1Bに示されるロールストック又はその一部分は、自動化されたシステムに配置するために巻き出される。このロールストックは、自動化のために設計されており、自動化されたシステムに配置するために非常に容易に適合されている。
【0048】
巻き出されたら、そのロールストックは装填され、そして自動化された装置によりベース100のタイミング孔を使用して、ベース100の連続ストリップ10が該自動化されたシステムの初期区分の長さに沿って延びるように、該ロールストックは整列される。この構成においては、上記連続ストリップ10のそれぞれのベース100の貯留部120の開放面は、上方を向いている。この向きにより、該ベース100が自動化されたシステムにより前進されるときに作業者が寒天を注入することが可能となり、又は寒天に試料を接種することが可能となる。図4の工程1を参照のこと。ベース100が前進するときに、1つ以上の個々のベース100は、図4の工程2に示されるように、本明細書では通常は寒天とも呼ばれる培養培地を受容する。一般的に、その寒天は、貯留部120中に注入される。
【0049】
寒天を受容した後に、ベース100は、自動化されたシステムを通じて前進し、そして蓋200が、寒天を収容しているベース上に設置される。その蓋は、個々の蓋であってもよく、又は複数の蓋の連続ストリップから供給し、そして複数の蓋へと単体化若しくはさもなければ分離せしめて該システムに配置してもよい。その後、蓋200は、先に記載され、かつ図4の工程3に示されるように、気密シールが得られるようにベース100へと固定される。1つの例としては、そのような気密シールは、熱可塑性材料を使用してベース100と蓋200との間にヒートシールされた結合を形成することにより達成され得る。蓋200が配置されたときに、自動化されたシステムは、ベース100及び蓋200の材料が一緒に結合することを保証するのに十分な熱を供給する。先に記載されるように、ベース100と、集成されたプレートのそれ以外の部分、例えば蓋又はカバーとの組合せ物は、本明細書では集成されたプレート20と呼ばれる。
【0050】
上記自動化されたシステムは、蓋200がベース100にシールされた後に、それぞれの集成されたプレート20が該システムを通じて前進し、その初期の向きに対して逆さまであるような反転位置へと回転するように配置されている。この段階で、上記自動化されたシステムは、前進している集成されたプレートを冷やし始め、図4の工程4に示されるように蓋200とベース100との間の間隔は無くなる。寒天はこの向きで固化し、こうしてベース100のリップ110と面一である寒天表面が生ずる。上記蓋は上記ベース上に気密的にシールされるので、寒天と貯留部の底面との間の間隙に空気は本質的に存在しない。本明細書に記載される材料及び工程を使用した方法を用いることにより、滑らかな表面を有する寒天が生成される。
【0051】
寒天が固化されると、集成されたプレート20はもう一度反転されて、蓋200の表面は上方向を向く。蓋200はその後に取り除かれ、そして廃棄され、その寒天は、何らかのムラのある表面又は何らかの過剰な湿分について検査される。図5の工程1〜2を参照のこと。寒天が何らかムラがあるように見えるか、リップ110と面一である表面を有さないか、又は許容することができない湿分を有する場合には、これは自動化されたシステムの作業者に、該集成されたプレートが不適切に貯蔵されたこと、又は加熱及び/又は冷却の過程に欠陥があったことを指摘する。集成されたプレート中の寒天が作業者に満足いくまで固化されている場合には、その集成されたプレートは、その過程においてその後に連続ストリップ10から分離される。これは集成されたプレートの「単体化」としても知られる。上記集積されたプレートが単体化されたら、そのプレートには分析されることが望まれる試料が、当業者に知られる方法を使用して、図5の工程3に示されるように接種される。その一方で、上記集成されたプレートは、接種直後に単体化され得る。
【0052】
上記寒天に試料を接種した後に、カバー300はベース100にシールされるため、接種された寒天は周囲に曝されない。図5の工程4を参照のこと。蓋の場合と同様に、カバーも単体化された要素として供給されてもよく、又は複数のカバーの連続ストリップの任意の部分から供給されてもよい。1つの例においては、カバー300は熱可塑性材料から形成され、そしてベース上に設置されたら、該ベース100にヒートシールされ得る。もう1つの例においては、該カバーは、機械的結合を介してベース100へと、該ベースが周囲に曝されないという条件で付着され得る。この段階では、その集成されたプレート20は、外に置くこともでき、又は該システム内に入れておいて、所望の時間的期間にわたりインキュベートすることもできる。図5の工程5を参照のこと。
【0053】
所望のインキュベート期間が終わったときに、カバー300は、図5の工程6に示されるようにベース100から持ち上げられて、試料の調査が可能となる。この工程は、更なるインキュベートが必要であると決定された場合には繰り返され得る。図5の工程7を参照のこと。
【0054】
調査及び分析が完了したら、廃棄のためにカバー300は、もう一度、使用済みのベース100上にシール又はさもなければ付着され得る。1つの変形形態においては、カバー300は、検査及び分析が完了した後に廃棄され、廃棄用カバーが、使用済みのベース100上に、カバー300の代わりに置き換えられ、付着される。廃棄用カバーはカバー300とは別の要素であるが、その他の点では本明細書に記載されるカバー300の特性を含む。
【0055】
数多くの利点は、本発明の方法により実現することができる。1つの利点は、特に集成されたプレート20の構成部品がタイミング機構を備える場合に、自動化されたシステムで使用するために適合されることである。熱成形法を使用することで、タイミング孔、切欠、窪み、マーク、プリント又はその他の能動的制御の形を備えることは、ばらのプレートシステムとは対照的に魅力のある選択肢となる。能動的制御の使用を通じて、自動化されたシステム内での連続ストリップ10の処理は、より高い予測可能性の水準で達成することができる。したがって、該システムは、試料が接種された寒天を有するプレート集成物のより迅速な製造を達成する。それというのも、不適切に固化した寒天又は不適切にインキュベートされた試料であるため廃棄せねばならない試料がより少ないからである。より広く見れば、能動的制御は、上記自動化されたシステムをより高速に作動させることを可能にする。能動的制御の更なる利点には、別々の成形、スケジューリング、貯蔵及び取り扱いの必要性を下げることが含まれ、こうして該方法を容易にするために必要となる労力が減少する。
【0056】
もう1つの利点は、蓋とベースとの間のシールが気密であるため、汚染を防ぐということである。さらに、寒天の固化の間の蓋200と寒天との間の間隙は最小限となり、該寒天と蓋との間に形成する凝縮は妨げられる。上記蓋200をベース100に固定し、そして寒天を中に有するそれぞれの集成されたプレート20を冷やした後に、集成されたプレート20を反転させることにより、その自動化されたシステムは、蓋200と寒天との間に間隙なく、それぞれの集成されたプレート内に収容された寒天を固化させることができる。同時に上記方法は、寒天が不適切に固化されたかどうかを決定する手段を提供する。例えば、上記寒天がムラのある表面、例えばでこぼこ又は起伏のある表面を有する場合に、寒天が過度の熱若しくは冷気に曝された可能性、又はさもなければ寒天が固化過程の間に不適切に貯蔵された可能性を作業者に知らせる。蓋200を取り除いた後に寒天が湿って見える場合に、これはまた欠陥のある寒天を知らせるものである。上記のことに加えて、この固化方法はまた、寒天が充填されたプレート集成物20の貯蔵寿命の増大をもたらす。
【0057】
更にもう1つの利点は、ロールストックがより小型であり、より少ない材料しか使用せず、そして従来の射出成形されたプレート及び/又はばらのプレートを使用するシステムよりも小さいスペースしか占めないことである。またロールストックは、ベース100が寒天で充填された場合でも貯蔵することが可能である。
【0058】
もう1つの利点は、先に記載されるようにカバー300を使用して、使用後のベース100と気密シールを形成した場合に、廃棄に際して環境への影響が緩和されることである。
【0059】
最後に、もう1つの利点は、本発明の方法の第1の実施形態により達成された試料の調製及び分析の自由度の増加である。上記ベース100又は集成されたプレート20は、連続ストリップ10として自動化されたシステムへと装填することができるが、個々のベース100又は集成されたプレート20として装填して、その他の点では先に記載したのと同様に処理することもできる。その一方で、該方法は、自動化されたシステムを用いずに手動で実施することができる。
【0060】
もう1つの実施形態においては、供給された連続ストリップ10は、先に記載したようにベース100及びカバー300をそれぞれ有する複数の集成されたプレート20を備える。1つの例においては、上記ベース100は、図3A及び図3Bに示される通りであり得て、かつカバー300は、図3Dに示される通りであり得る。更なる例においては、それぞれの構成部品は、熱可塑性材料から形成され、そしてプレート集成物のそれぞれの部分を加熱して結合させ、引き続き冷却してヒートシールを形成することにより、ベース100及びカバー300を互いに固定することが可能である。更に他の例においては、機械的結合が使用され得る。当然のことながら、上記プレート集成物の全ての部分は、自動化されたシステムのためのロールストックとして使用する前に製造される。連続ストリップ10とは別に、蓋200は自動化された過程の間に付加される。1つの例においては、上記蓋200は、図3Cに示される通りであり得る。先に記載されるように、それらの蓋は単体化された蓋から、又は複数の蓋の連続ストリップの任意の部分から供給され得る。
【0061】
一緒になって連続ストリップ10を形成する複数の集成されたプレート20は、自動化されたシステムにおいて使用される場合に、能動的制御のために適合されている。1つの例においては、ベース100、蓋200、及びカバー300の各々は、タイミング孔140、240、340を備える。タイミング孔の目的及び機能は先に記載されている。1つの例としては、タイミング孔は、連続ストリップの初期装填、寒天の注入、試料での接種、接種された寒天のインキュベートの工程の間に、及びその間の全ての時点で能動的制御を与えることができる。能動的制御を有することにより、該システムの作業者は、上記方法のそれぞれの工程が合理的に予想可能であり、かつ従来技術の平板培地システムよりも高速であると確信することができる。
【0062】
連続ストリップのロールストックは、巻き出され、自動化されたシステムを通じて前進する。上記集成されたプレートは、先に記載された方法の以前の実施形態に記載されるように、寒天の固化が完了するまで、該システムを通じて前進する。寒天の固化が完了したときに、上記蓋は廃棄される。
【0063】
寒天中の試料の接種の前に、上記連続ストリップの複数の集成されたプレート20は単体化される。その後に、試料がその寒天中に接種される。次いでベース100に取り付けられたカバー300は、その接種された寒天が先に記載されるように周囲に曝されないように閉じられる。上記方法の以前の実施形態の工程がこの実施形態と矛盾しない場合に、以前の方法の工程は、引用することにより本出願の一部をなす。
【0064】
上記の実施形態のいずれかにおいて、図5に示される工程6はカバー300を取り除くことなく行われ得る。1つの例においては、該カバーは、コロニー増殖を検査するために取り除かれない。それというのも、該試料は感受性があり、又は試料への何らかの曝露は危険を引き起こすからである。例えば、真菌性胞子は、危険を引き起こすためカバー300を取り除かずに検査される。
【0065】
もう1つの実施形態においては、上記連続ストリップは、寒天中に試料を接種した後であるが、試料のインキュベートの前に単体化される。
【0066】
上記の実施形態のいずれか1つにおいては、供給される連続ストリップは、自動化されたシステムで使用する前に複数の区分に分離され得る。該連続ストリップは、該当する場合に、複数のベース又は集成されたプレートを含み得る。例えば、ロールストックが100個のベースの連続ストリップを含む場合に、該ロールストックは、それぞれ50個のベースの2個の連続ストリップに分離され得る。次いで、これらのストリップのそれぞれは、寒天の注入等のために自動化されたシステム中に装填され得る。
【0067】
上記の実施形態のいずれか1つにおいては、試験及び分析の方法は、本明細書に記載される方法が自動化のために設計されているものの、手動で実施することができる。該方法を手動で実施するためには、線形に直列的に連結された複数のプレートを有する連続ストリップ10は、寒天を注入する前に、すなわち図4に示される方法の工程1の前に、個々のベース100又は集成されたプレート20へと分離される。この実施形態による方法においては、それらのプレート集成物の層は、能動的制御をせずに供給され得る。例えば、ベースは、タイミング機構なしで供給され得る。
【0068】
上記の実施形態のいずれか1つにおいては、ベース100、蓋200、及びカバー300は、能動的制御なしで供給され得る。例えば、手動の試験手順が採用される場合に、プレートの構成部品は、能動的制御なしで提供され得る。
【0069】
上記の実施形態のいずれかにおいては、標識は1個以上のベース及び/又は集成されたプレートへと適用することができる。標識は、ロールストックの流通前の初期製造と試料接種の時点との間の集成過程においても、又はその後でさえも、いつでもベースに適用され得る。標識は、接着剤を介して、直接的な印刷を介して、又はその他の既知の手段を介して適用され得る。標識がベース及び/又は集成されたプレートに適用され、かつコードの形の識別を含む場合に、該標識は、当該技術分野で既知の技術を使用してスキャンされ得る。1つの例においては、標識は、スキャナを使用してスキャンされるバーコードを含む。標識にある情報が、培養培地中に接種された相応の試料に関連する情報と関連付けられ得ることを保証するために、スキャン又は読取りは、該当する場合には、接種の時点で一般的に実施される。このシステムは、試料を、インキュベートを通じて追跡することができ、そして必要に応じて後続の分析及び貯蔵の段階においても追跡することができることを保証する。
【0070】
本明細書における発明について、特定の実施形態を参照して説明したが、これらの実施形態は、本発明の原理及び応用を単に例示するものであることが理解されるべきである。したがって、例示的な実施形態に対して多数の変更を行うことができ、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の構成を考案することができることが理解されるべきである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5