特許第6916217号(P6916217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916217
(24)【登録日】2021年7月19日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】羽根付きホイール用の整形リング
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/02 20060101AFI20210729BHJP
【FI】
   F01D5/02
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-567111(P2018-567111)
(86)(22)【出願日】2017年6月22日
(65)【公表番号】特表2019-522753(P2019-522753A)
(43)【公表日】2019年8月15日
(86)【国際出願番号】FR2017051662
(87)【国際公開番号】WO2017220940
(87)【国際公開日】20171228
【審査請求日】2020年6月9日
(31)【優先権主張番号】1655799
(32)【優先日】2016年6月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】315008740
【氏名又は名称】サフラン エアークラフト エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】トマ アラン ドゥ ガイヤール
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル ベルナール マリー ボワッソン
(72)【発明者】
【氏名】クレア マリー フィジュールー
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 仏国特許出願公開第02918409(FR,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0267545(US,A1)
【文献】 特表2016−511812(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0263595(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/00−11/24
F02C 1/00− 9/58
F23F 3/00− 7/00
F04D 1/00−13/16;17/00−19/02;21/00−25/16;29/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根付きホイール(80)用の整形リング(10)であって、前記整形リング(10)は、軸線方向に延びる環状壁(10A)を具備しており、前記環状壁(10A)が、軸線方向に延びる複数の切欠き(12)を提示しており、各切欠き(12)が、羽根(82)の前縁部(82A)又は後縁部(82)を受容するように構成されており、前記複数の切欠き(12)の間において延びる前記整形リング(10)の前記環状壁(10A)の部分は、複数の切欠き間部分(14)を形成している、整形リング(10)において、
前記切欠き間部分(14)は、複合材料により製作され、前記複合材料は、混和性ではない少なくとも2つの異なる材料のアセンブリである一方で、前記整形リング(10)の残りの部分は、金属材料により製作され、前記金属材料は、金属又は金属系の合金である、ことを特徴とする整形リング(10)。
【請求項2】
各切欠き(12)は、羽根(82)の前縁部(82A)又は後縁部の輪郭の形状を提示する、ことを特徴とする請求項1に記載の整形リング(10)。
【請求項3】
各切欠き間部分(14)が、40kN±30%以上の円周方向力を受けた時に、塑性的に変形するように構成される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の整形リング(10)。
【請求項4】
羽根(82)に面して配置されるように構成された、少なくとも1つの摩耗部分(12A)を具備する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の整形リング(10)。
【請求項5】
半径方向に延びていて且つ前記整形リングを前記羽根付きホイール(80)の円板(83)に設置するように構成された、環状壁(10B)を具備する、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の整形リング(10)。
【請求項6】
前記羽根付きホイール(80)の入口円錐体(50)又は出口円錐体が取り付けられるように構成される、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の整形リング(10)。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の整形リング(10)が取り付けられる、ことを特徴とする羽根付きホイール(80)。
【請求項8】
前記整形リング(10)の前記切欠き間部分(1)が、前記羽根(82)の軸線方向長さ(L)の15%以下にわたって延びる、ことを特徴とする請求項7に記載の羽根付きホイール(80)。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の羽根付きホイール(80)を具備することを特徴とするターボ機械(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根付きホイール(翼車輪)用の整形リングと、その様な整形リングが取り付けられた羽根付きホイールと、当該羽根付きホイールが取り付けられたターボ機械と、に関する。特には、羽根付きホイールは、ターボジェットファンであってもよいが、しかしターボジェットファンに限定されない。
【背景技術】
【0002】
羽根付きホイール内の羽根根元におけるガス用通路を耐漏洩性状態に画定するための構造は、一般的に、羽根間プラットフォームと、特に羽根の前縁部と後縁部とにおいて、各プラットフォームにより支持されていて且つ羽根と接触する、ガスケットと、を具備する。当該構造は、ある特許文献に記載されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
それにもかかわらず、幾何学的形状が特に複雑である羽根の前縁部及び/又は後縁部における封止は、依然として改善され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2987086号明細書
【発明の概要】
【0005】
従って、この意味において必要性が存在する。一実施の形態は、羽根付きホイール用の整形リング(輪)を提供しており、整形リングは、軸線方向に延びる環状壁を具備しており、前記壁は、軸線方向に延びる複数の切欠きを提示しており、各切欠きは、羽根の前縁部又は後縁部を受容するように構成される。
【0006】
用語「軸線方向に延びる」は、当然に、問題の要素が軸線方向に対して厳密に平行に、又は実際には軸線方向に対して45度未満の角度で延びることを意味するように使用される。従って、本開示の意味において、円錐台形の環状壁は「軸線方向に延びる」と言われる。
【0007】
リングが、軸線方向と、半径方向と、円周方向とに延びることが理解され得る。一般的な状態において、軸線方向は、羽根付きホイールの回転軸線の方向(又は整形リングの軸線方向)に対応しており、半径方向は、軸線方向に垂直な方向である。円周方向は、軸線方向の周りのリングを描く方向に対応する。軸線方向、半径方向及び円周方向はそれぞれ、円筒座標系の高さと、半径と、角度と、により定義される方向に対応する。
【0008】
軸線方向において考慮する場合に、全ての切欠きがリングの同じ側に配置されていることも理解できる。
【0009】
従って、各前縁部又は後縁部が切欠き内に受容された状態で、羽根付きホイールの羽根の前縁部又は後縁部の周りにリングを配置することにより、各羽根と整形リングとの間で漏れが生じることなく、ガス通路は、羽根付きホイールの入口又は出口のいずれかにおいて、確実に画定される。当然に、羽根の前縁部は、羽根付きホイールの(上流)入口側にある一方で、羽根の後縁部は、羽根付きホイールの(下流)出口側に配置される。
【0010】
幾つかの実施の形態において、各切欠きは、羽根の前縁部又は後縁部の輪郭の形状を提示する。
【0011】
当該形状の切欠きは、リングが羽根の形状にできるだけ密着して適合することを可能にし、それにより封止を改善する。
【0012】
幾つかの実施の形態において、切欠き間部分は、複合材料により製作される一方で、リングの残りの部分は、金属材料により製作される。
【0013】
複合材料は、混和性ではない少なくとも2つの異なる材料のアセンブリ(組立体)である一方で、金属材料は、金属又は金属系の合金であることが理解されるべきである。
【0014】
当然に、切欠き間部分は、2つの隣接する切欠きの間において伸張する、リングの部分である。例えば、切欠き間切欠きは、ポリウレタンフォーム(泡状物質)により、あるいはアルミニウム製又はポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)製(又は一般的な商品名Nomex(登録商標)で既知の)の気泡体を有していて且つ層(又は表皮)で覆われたハニカム(ハチの巣状)構造により、製作されており、層は、金属製(例えば、チタン製又はアルミニウム製)又は炭素繊維複合材料製である。例として、リングの残りの部分はチタン又はアルミニウム製である。
【0015】
羽根が、例えば固体要素(例えば鳥)を吸い込んだ結果として変形する場合に、固体要素は、切欠き間部分に接触してもよく、更に固体要素は、その切欠き間部分を、円周方向において変形させてもよい。この接触は、羽根に負荷をかけず更に羽根の任意の撓みを制限するように作用し、それにより羽根への潜在的な損傷を制限する。更に、重い鳥の吸い込み又は羽根を失うこと等の、より重大な事象の場合に、その接触は、もはや、羽根への損傷を制限することに十分ではない。その様な状況下において、切欠き間部分の塑性変形を可能にすることは、羽根から切欠き間部分へエネルギを散逸するように作用し、それにより羽根への損傷を制限する。切欠き間部分用の複合材料とリングの残りの部分用の金属材料とのその様な組み合わせは、設計者が、切欠き間部分が塑性的に変形する、応力閾値(即ち、可塑性閾値)を正確に調整することを可能にする。
【0016】
幾つかの実施の形態において、各切欠き間部分は、40kN±30%(40キロニュートンプラス又はマイナス30パーセント)以上の円周方向力を受けた時に、塑性変形するように構成される。
【0017】
これにより、当該円周方向の力を生成する、特定の事前決定された強制的運動を超えると、大きな振幅により自身が変形していて且つ羽根に隣接する、切欠き間部分が、塑性変形することが確保される。これにより、この切欠き間部分がエネルギ散逸機能を果たすことが可能になり、それにより、羽根の変形から生じるエネルギを散逸させ、更に羽根の変形の振幅を制限する。これにより、羽根内の変形の伝播を制限するように作用する。
【0018】
幾つかの実施の形態において、整形リングは、羽根に面して配置されるように構成された少なくとも1つの摩耗部分を具備する。
【0019】
磨耗部分は、磨耗部分と接触している別の部分、具体的には羽根のために磨耗するように構成される部分であることが理解可能である。当然に、磨耗部分は一般的に、磨耗部分の磨耗が過剰になる時に、磨耗部分が交換できるように、取り外し可能な状態で設置される。例えば、ガスケットが、摩耗部分を構成してもよい。
【0020】
一例として、切欠きを画定するリングの表面は、それぞれの摩耗部分を備える。当該摩耗部分により、整形リングを羽根の前縁部又は後縁部に接触させて設置することが可能であり、それにより、封止を最大化する一方で、摩耗部分は、使用中に摩耗することにより羽根の完全性を確保する。
【0021】
幾つかの実施の形態において、整形リングは、半径方向に伸張していて且つ羽根付きホイールの円板に前記整形リングを設置するように構成される、環状壁を具備する。
【0022】
当該半径方向の環状壁は、整形リングを羽根付きホイールに設置するために使用される全ての手段、例えば孔、タッピング(タップ加工)、フック等が、ガス通路を画定するために使用されない、リングの部分に対して偏倚することを可能にする。これにより、より良好な封止を確保することが可能になる。
【0023】
幾つかの実施の形態において、整形リングは、羽根付きホイールの入口円錐体又は出口円錐体が取り付けられるように構成される。
【0024】
羽根付きホイール用の当該入口円錐体又は出口円錐体は、ガス流及びホイールの入口又は出口を案内するように作用する。
【0025】
一実施の形態はまた、本開示に記載の実施の形態のいずれかによる少なくとも1つの整形リングが取り付けられた羽根付きホイールを提供する。
【0026】
例えば、羽根付きホイールは、複数の羽根間プラットフォームと共に、その周囲に設置された複数の羽根を有する円板を具備しており、羽根間プラットフォームは、羽根の前縁部及び/又は後縁部を拘束しないように構成される。従って、整形リングは、前縁部及び/又は後縁部に密着して適合する(羽根付きホイールは、ホイールの入口又は出口に配置された単一の整形リング、さもなければ一方がホイールの入口に配置されていて且つもう一方がホイールの出口に配置される、2つの整形リングを有してもよい)。従って、前縁部及び/又は後縁部が、リングの切欠き内に受容される一方で、リングの切欠き間部分の軸線方向端部は、羽根間プラットフォームの対応する軸線方向端部と協働する。
【0027】
幾つかの実施の形態において、整形リングの切欠き間部分は、羽根の軸線方向長さの15%以下にわたって延びる。
【0028】
羽根の長さは、軸線方向への投影において測定される。羽根が羽根の前縁部又は後縁部から羽根の長さの15%にわたって受容されるように切欠きを構成することにより、整形リングが、封止を提供することが最も困難である、最も複雑な形状を呈する羽根の部分を覆うことが確保される。従って、当該構成は、羽根と整形リングの間の封止を最適化するように作用する。
【0029】
一実施の形態はまた、本開示に記載された実施の形態のいずれかによる羽根付きホイールを装着したターボ機械を提供する。
【0030】
当該羽根付きホイールは、ターボ機械内での使用に特に適する。例えば、一実施の形態は、ターボジェットを提供しており、そして前記羽根付きホイールは、当該ターボジェットのファンを構成する。
【0031】
本発明及びその利点は、非限定的な例として与えられた本発明の様々な実施の形態の以下の詳細な説明を読むことで、より良好に理解できる。説明は添付の複数枚の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、ファンを有するターボジェットを示す。
図2図2は、図1のターボジェットのファンに取り付けられた整形リングを示す。
図3図3は、図2の整形リングを装着した図1のターボジェットのファンの部分斜視図である。
図4図4は、部分的に組み立てられた状態のファンの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、ターボ機械100を示しており、具体的には、羽根付きホイール80、具体的にはファン80を有する、ターボジェット100を示しており、羽根付きホイール80には、そこ(整形リング10)に設置された入口円錐体50を有する、整形リング(輪)10がその入口に取り付けられる。
【0034】
整形リング10は、軸線方向Xと、半径方向Rと、円周方向Cと、において伸張する。
リング10は、その中に形成された複数の切欠き12を有する軸線方向に伸張する環状壁10A(又は軸線方向壁10A)を提示する。リング10はまた、半径方向に延びる環状壁10B(又は半径方向壁10B)を提示する。当然のことながら、軸線方向壁10Aは、軸線方向Xに対して0度から45度の範囲の角度を形成してもよい一方で、半径方向壁10Bは、軸線方向Xに対して45度から90度の範囲の角度を形成してもよい。
【0035】
半径方向壁10Bは、リング10をファン80の円板に固定するための第1の一連の固定孔10B1を提示する。半径方向壁10Bは、円錐体50をリング10に固定するための第2の一連の固定孔10B2を提示する。最後に、半径方向壁10Bは、長円形の第3の一連の孔10B3を提示する。これらの孔10B3は、リング10を軽くするように設けられる。
【0036】
全ての切欠き12は、軸線方向Xにおいてリング10の同じ側に形成される。各切欠き12は、ファン80の羽根82の前縁部82Aの輪郭の形状を提示する。図3に示すように、各切欠き12は、羽根82の前縁部82Aを受容する。
【0037】
図4に示すように、整形リング10は、ファン80の円板83に設置されており、円板は、羽根82が羽根82の根元を受容するように構成された長穴83A内に挿入される状態で、その周囲に設置された、羽根82を有しており、羽根間プラットフォーム84がまた、円板の周囲に設置されており、これらの羽根間プラットフォーム84は、円板83の歯83Bに設置される。
【0038】
この例において、整形リング10は、羽根82の根元において、羽根82間において連続的状態でガス通路を画定するように、羽根間プラットフォーム84と軸線方向に接触して協働する。より特別にはこの例において、切欠き12の間において延びるリング10の壁10Aの部分は、切欠き間部分14を形成する一方で、切欠き間部分14の軸線方向端部は、羽根間プラットフォーム84の対面する軸線方向端部に接触する。
【0039】
この例における切欠き間部分14の軸線方向長さL1は、羽根82の軸線方向長さLの約8%である。従って、一般的には、切欠き間部分14は、最大で、羽根82の軸線方向長さLの15%にわたって延びる。
【0040】
更に、各切欠き12を画定する切欠き間部分14の表面は、羽根82と接触する摩耗部分12Aを提示しており、切欠き間部分14の表面は、羽根82、より特別には羽根82の前縁部82Aに面して配置される。
【0041】
一部を切断して示される、切欠き間部分14において示されるように、各切欠き間切欠き14は、この例においてチタンにより製作される金属カバーにより覆われる、ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)製のハニカム内部構造を提示する。リング10の残りの部分は、金属製、この例においてはチタン製である。
【0042】
本発明は、特定の実施の形態を参照して説明されたが、特許請求の範囲により定義される本発明の一般的な範囲を逸脱することなく、これらの実施例に修正及び変更が、実施されてもよいことは明らかである。特に、図示及び/又は示される様々な実施の形態の個々の特徴は、更なる実施の形態において組み合わされてもよい。従って、説明及び図面は、限定的であるよりもむしろ例示的であるという意味で考慮されるべきである。
図1
図2
図3
図4