特許第6916338号(P6916338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6916338
(24)【登録日】2021年7月19日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】鋼管杭撤去装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 9/00 20060101AFI20210729BHJP
【FI】
   E02D9/00
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-64532(P2020-64532)
(22)【出願日】2020年3月31日
【審査請求日】2021年3月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000182030
【氏名又は名称】若築建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 伸大
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−020718(JP,A)
【文献】 特公昭58−051089(JP,B2)
【文献】 特開2018−204187(JP,A)
【文献】 特許第4431255(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0195247(US,A1)
【文献】 特開2020−172818(JP,A)
【文献】 特開2006−097275(JP,A)
【文献】 実開昭57−105123(JP,U)
【文献】 特開2013−087505(JP,A)
【文献】 特開2019−011551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭頭部が水中または地中にある既設鋼管杭を撤去する鋼管杭撤去装置であって、
前記既設鋼管杭の前記杭頭部を下端に挿入可能であり、前記杭頭部との連結時に上端が
水面上または地上に出る長さを有する延長鋼管と、
前記延長鋼管に設けられ、前記杭頭部を固定する固定装置と、
前記延長鋼管の上端から前記既設鋼管杭の内部に挿入され、内周面側から前記既設鋼管
杭を切断する切断装置と、を備え
前記固定装置は、前記既設鋼管杭の径方向外側に延伸可能な駆動部と、前記杭頭部の外周面を軸心側へ押圧する押圧部と、一端が前記駆動部側に延在し、他端が前記押圧部側に延在するリンク部材と、前記リンク部材を回動可能に支持する支持部と、を備え、
前記一端と前記支持部が支持している位置との距離は、前記他端と前記支持部が支持している位置との距離よりも長く、
前記リンク部材は、前記駆動部が延伸した場合に前記一端が径方向外側に移動したことに伴い、前記支持部が支持している位置を基準に回動することで、前記他端が径方向内側に移動して、前記押圧部を前記軸心側へ押圧させる、
鋼管杭撤去装置。
【請求項2】
前記延長鋼管は、相互に連結される複数の鋼管を含む、
請求項1に記載の鋼管杭撤去装置。
【請求項3】
前記複数の鋼管はフランジ接合により連結される、
請求項2に記載の鋼管杭撤去装置。
【請求項4】
前記延長鋼管の前記下端から前記既設鋼管杭側に突出して設けられ、前記既設鋼管杭の
前記杭頭部を前記延長鋼管の前記下端に誘導する誘導部を備える、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼管杭撤去装置。
【請求項5】
前記固定装置は、複数の前記押圧部によって、前記杭頭部の外周面の複数個所を軸心側へ押圧して、前記杭頭部を挟持して固定する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼管杭撤去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鋼管杭撤去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海中などの水中に鋼管杭を打ち込む水中鋼管杭打設において、設計支持層深度が現状と一致せず、ヤットコ等を用い再打設することは多々ある。
【0003】
この場合、鋼管の内部に切断装置を挿入し、この切断装置によって鋼管を所定の位置で切断し、切断した鋼管を上方にクレーン等で吊り上げることによって鋼管杭を撤去する手法がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4431255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1などに記載される従来の撤去手法では、切断装置を鋼管杭の杭頭部から内部に挿入するため、杭頭部が水面上に露呈している必要がある。このため、杭頭部が水面下にある鋼管杭には適用できない。
【0006】
杭頭部が水面下にある水中鋼管杭を切断するためには、従来はダイバーによる火器を用いた方法に頼らざるを得ないが、施工性や安全性の観点から改善の余地がある。
【0007】
本開示は、迅速かつ安全な既設鋼管杭の撤去作業が可能な鋼管杭撤去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態の一観点に係る鋼管杭撤去装置は、杭頭部が水中または地中にある既
設鋼管杭を撤去する鋼管杭撤去装置であって、前記既設鋼管杭の前記杭頭部を下端に挿入
可能であり、前記杭頭部との連結時に上端が水面上または地上に出る長さを有する延長鋼
管と、前記延長鋼管に設けられ、前記杭頭部を固定する固定装置と、前記延長鋼管の上端
から前記既設鋼管杭の内部に挿入され、内周面側から前記既設鋼管杭を切断する切断装置
、を備え、前記固定装置は、前記既設鋼管杭の径方向外側に延伸可能な駆動部と、前記杭頭部の外周面を軸心側へ押圧する押圧部と、一端が前記駆動部側に延在し、他端が前記押圧部側に延在するリンク部材と、前記リンク部材を回動可能に支持する支持部と、を備え、前記一端と前記支持部が支持している位置との距離は、前記他端と前記支持部が支持している位置との距離よりも長く、前記リンク部材は、前記駆動部が延伸した場合に前記一端が径方向外側に移動したことに伴い、前記支持部が支持している位置を基準に回動することで、前記他端が径方向内側に移動して、前記押圧部を前記軸心側へ押圧させる。

【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、迅速かつ安全な既設鋼管杭の撤去作業が可能な鋼管杭撤去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る鋼管杭撤去装置の主要部の概略構成を示す図
図2】固定装置の構成の一例を示す模式図
図3図2に示す固定装置の作動時の状態を示す模式図
図4】実施形態に係る鋼管杭撤去装置の全体構成図
図5】本実施形態における既設鋼管杭の撤去作業の施工手順の第1段階を示す図
図6】本実施形態における既設鋼管杭の撤去作業の施工手順の第2段階を示す図
図7】本実施形態における既設鋼管杭の撤去作業の施工手順の第3段階を示す図
図8】本実施形態における既設鋼管杭の撤去作業の施工手順の第4段階を示す図
図9】従来の切断装置による施工例を示す図
図10】従来の鋼管杭の杭頭部が水面下に位置している場合の施工方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。なお、以下では、図面の上下方向を、鋼管杭撤去装置1や既設鋼管杭Pの実際の上下方向として説明する。例えば上下方向に延在する部材(リンク部53など)の図面上側の端部を上端、図面下側の端部を下端と表記する。
【0012】
本実施形態に係る鋼管杭撤去装置1は、杭頭部Hが海中などの水中にある既設鋼管杭Pを撤去するために用いられる。図1は、実施形態に係る鋼管杭撤去装置1の主要部の概略構成を示す図である。図1に示すように、鋼管杭撤去装置1は、延長鋼管2と、固定装置5と、ガイドプレート6(誘導部)とを備える。
【0013】
延長鋼管2は、既設鋼管杭Pの上端部である杭頭部Hを下端から挿入可能であり、既設鋼管杭Pの杭頭部Hとの連結時に上端が水面上に出る長さを有する。延長鋼管2は、既設鋼管杭Pと同様の円筒状の管状部材であり、その内径が既設鋼管杭Pの外径より大きく形成される。
【0014】
延長鋼管2は、相互に連結される複数の鋼管により構成されるのが好ましい。例えば図1に示すように、延長鋼管2は、既設鋼管杭Pに直接連結されるエクステンション鋼管3と、エクステンション鋼管3の上方に連結される接続用鋼管4とを有する。また、接続用鋼管4を複数設け、図1に示す1個目の接続用鋼管4の上方にさらに別の接続用鋼管4を連結することもできる。この構成により、様々な水深の既設鋼管杭Pに対して、接続用鋼管4を連結する個数を調整すれば、延長鋼管2の上端を確実に水面上に出すことが可能となり、汎用性を向上できる。
【0015】
なお、既設鋼管杭Pにエクステンション鋼管3を連結した状態で、図1とは異なりエクステンション鋼管3の上端部が水面上に出る場合には、単一のエクステンション鋼管3のみで延長鋼管2の役割を果たしているので、エクステンション鋼管3に接続用鋼管4を連結しなくてもよい。
【0016】
また、接続用鋼管4は、同一の長さのものを複数連結する構成としてもよい。これにより、複数の接続用鋼管4を纏めて搬送しやすくでき、可搬性を向上できる。また、延長鋼管2の長さの調整を容易にできる。
【0017】
また、延長鋼管2を構成する複数の鋼管(エクステンション鋼管3や接続用鋼管4)は、フランジ接合により連結されるのが好ましい。相互に対向するフランジ部をボルト締結することで2つの鋼管を連結する構成とすれば、既設鋼管杭Pを撤去する現場で溶接などの複雑な作業を行うことなく、簡易に鋼管同士を連結することができるし、作業終了後の分解も容易にできる。
【0018】
固定装置5は、延長鋼管2のエクステンション鋼管3の外周面上に設けられ、既設鋼管杭Pの杭頭部Hを固定する。本実施形態では、固定装置5は、杭頭部Hの外周面の複数個所を軸心側へ押圧して、杭頭部Hを挟持して固定する油圧ヒンジユニットである。
【0019】
図2は、固定装置5の構成の一例を示す模式図である。図2に示すように、固定装置5が油圧ヒンジユニットの場合、シリンダ51と、押圧部52と、リンク部53と、支持部54と、油圧ホース55とを有する。
【0020】
シリンダ51は、エクステンション鋼管3の外周面に設けられ、エクステンション鋼管3の径方向外側に伸びるように設置されている。シリンダ51は、油圧ホース55を介して供給される油圧によって駆動される。
【0021】
シリンダ51の先端にはリンク部53の上端部が回動自在に連結される。リンク部53は、エクステンション鋼管3の軸方向に延在し、下端部に押圧部52が回動自在に連結される。また、リンク部53の上端部と下端部の中間位置には支持部54が連結される。
【0022】
支持部54はエクステンション鋼管3の外周面に固設され、これによりリンク部53は支持部54との連結部分を中心に回動可能となっている。
【0023】
押圧部52は、例えば棒状部材であり、その一端がリンク部53の下端部に連結され、他端はエクステンション鋼管3の外周面の貫通穴に挿入されている。
【0024】
図3は、図2に示す固定装置5の作動時の状態を示す模式図である。図3に示すように、油圧ホース55から油圧が供給されてシリンダ51が駆動して径方向外側に伸びると、リンク部53の上端部も径方向外側に移動する。この上端部の移動によって、リンク部53が支持部54を中心に(図3では反時計回りに)回動して、リンク部53の下端部は、上端部と反対に径方向内側に移動する。この結果、押圧部52の先端部がエクステンション鋼管3の内部に進入して、エクステンション鋼管3の内部に挿入されている既設鋼管杭Pの杭頭部Hの外周面を押圧する。このとき、例えば図1に示すように、固定装置5は、3個の(または3個より多い)油圧ヒンジユニットを有するので、各ユニットの押圧部52が既設鋼管杭Pの外周面の複数個所を軸心側へ押圧して、この結果、既設鋼管杭Pが複数の押圧部52により挟持されて、エクステンション鋼管3に対して固定される。
【0025】
なお、図2図3に示す固定装置5の構造や固定方法は一例であって、固定装置5は他の構成でもよい。例えば油圧以外の動力を用いる構成でもよいし、リンク部53のようにてこの原理を使わずに駆動源から直接押圧部52に動力を加える構成でもよいし、押圧部52により挟持以外の手法で既設鋼管杭Pを固定する構成でもよい。
【0026】
図1に戻り、ガイドプレート6は、エクステンション鋼管3の下端から既設鋼管杭P側に突出して設けられ、既設鋼管杭Pの杭頭部Hをエクステンション鋼管3の下端に誘導する部材である。ガイドプレート6は、例えば複数の板材を、その主面がエクステンション鋼管3の周方向に向くように、エクステンション鋼管3の外周面に固設される。さらに、各板材の径方向内側の端面の位置が、下方に進むほど径方向外側になるように、端面が傾斜状に形成されている。
【0027】
なお、ガイドプレート6は、誘導部の機能を有するものであればよく、例えば下方になるほど広がる円錐台形状など、他の形状のものを用いてもよい。
【0028】
図4は、実施形態に係る鋼管杭撤去装置1の全体構成図である。図4に示すように、鋼管杭撤去装置1は、さらに切断装置7を備える。切断装置7は、延長鋼管2の上端から既設鋼管杭Pの内部に挿入され、内周面側から既設鋼管杭Pを切断する。
【0029】
切断装置7は、例えば図4に示すように、モータ71と、変速機72と、ロッド73と、回転刃74と、固定用油圧シリンダ75とを有する。
【0030】
モータ71及び変速機72は、ロッド73と、ロッド73の先端に設けられる回転刃74を回転駆動させる駆動源である。モータ71及び変速機72は、ロッド73及び回転刃74を延長鋼管2の内部に挿入した状態で、延長鋼管2の上端に載置される。固定用油圧シリンダ75は、この載置状態のときに延長鋼管2の外周面に対向する位置に設けられ、固定用油圧シリンダ75が伸びて外周面を押圧することで、切断装置7の全体が延長鋼管2に固定される。
【0031】
図5図8を参照して、本実施形態における水中の既設鋼管杭Pの撤去作業の施工手順を説明する。
【0032】
図5は、本実施形態における既設鋼管杭Pの撤去作業の施工手順の第1段階を示す図である。図5に示す第1段階では、海中などの水中にある既設鋼管杭Pの杭頭部Hと、水面との距離に応じて、エクステンション鋼管3の上部に接続用鋼管4が適宜連結され、延長鋼管2の上端が既設鋼管杭Pとの連結時に水面上に出るように延長鋼管2の長さが調整される。長さが調整された延長鋼管2が水面上から既設鋼管杭Pに向けて下降される。延長鋼管2の下降は、例えば吊りワイヤ8を介して延長鋼管2をクレーン等に吊り下げて行われる。
【0033】
図6は、本実施形態における既設鋼管杭Pの撤去作業の施工手順の第2段階を示す図である。図6に示す第2段階では、延長鋼管2のエクステンション鋼管3に既設鋼管杭Pの上端部が挿入される位置まで延長鋼管2が下降される。そして、固定装置5の押圧部52が既設鋼管杭Pの杭頭部Hの外周面と対向する位置まで下降すると、固定装置5が作動して杭頭部Hの外周面が固定装置5により軸心方向に押圧されて、既設鋼管杭Pが延長鋼管2に固定される。
【0034】
図7は、本実施形態における既設鋼管杭Pの撤去作業の施工手順の第3段階を示す図である。図7に示す第3段階では、既設鋼管杭Pに固定された延長鋼管2の上端開口から切断装置7の回転刃74とロッド73とが挿入される。切断装置7の下降は、例えば吊りワイヤ9を介して切断装置7をクレーン等に吊り下げて行われる。
【0035】
回転刃74が既設鋼管杭Pの切断位置に到達するまで下降すると、固定用油圧シリンダ75が作動して延長鋼管2を押圧して、これにより切断装置7が延長鋼管2に固定される。この状態でモータ71が駆動して、ロッド73を介して回転刃74が回転駆動されて、回転刃74によって既設鋼管杭Pが切断される。
【0036】
図8は、本実施形態における既設鋼管杭Pの撤去作業の施工手順の第4段階を示す図である。図8に示す第4段階では、既設鋼管杭Pのうち切断位置より上方の部分P1が、固定装置5により延長鋼管2に固定された状態のままで、延長鋼管2と共に吊りワイヤ8によって上方に引き上げられ、この結果、既設鋼管杭Pの上方部分P1が撤去される。延長鋼管2及び既設鋼管杭の上方部分P1の上昇は、例えば吊りワイヤ8を介して延長鋼管2をクレーン等に吊り下げて行われる。
【0037】
ここで、図9図10を参照して、従来の鋼管杭撤去方法と比較する。
【0038】
図9は、従来の切断装置による施工例を示す図である。図9に示すように、切断装置7は、本実施形態のものと同様であるが、既設鋼管杭Pの上端の杭頭部Hに直接取り付けられる点が本実施形態と異なる。この構成では、切断装置7を取り付けるためには、既設鋼管杭Pの杭頭部Hが水面上にあることが必要であるため、本実施形態のように既設鋼管杭Pの杭頭部Hが水中にある場合には、切断装置7を用いた既設鋼管杭Pの切断を行うことができない。
【0039】
図10は、従来の鋼管杭の杭頭部Hが水面下に位置している場合の施工方法を示す図である。図10に示すように、従来は、既設鋼管杭Pの上端の杭頭部Hが水中にある場合には、切断装置7を既設鋼管杭Pの内部に挿入できず、切断装置7を用いることができない。このため、ダイバーDが潜水して火器等の手動の切断機10を用いて水中で既設鋼管杭Pの切断作業を行う必要があった。ダイバーDによる切断作業は、切断装置7を用いた自動化された切断作業と比べて、作業時間が多くかかり施工効率が悪く、また、ダイバーDに危険が伴うなどの問題があった。
【0040】
これに対して本実施形態では、図5図8を参照して説明したように、切断対象の既設鋼管杭Pの上端の杭頭部Hが水面下にある状況でも、延長鋼管2の長さを適宜調整した上で既設鋼管杭Pの上方に連結することで、既設鋼管杭Pの状況に依存することなく、常に延長鋼管2の上端を水面上に出すことができる。これにより、杭頭部Hが水面上にあるかないかによらず、切断装置7を既設鋼管杭Pの内部に挿入させることが常に可能となり、切断装置7による既設鋼管杭Pの切断を常に実施可能とすることができる。この結果、本実施形態の鋼管杭撤去装置1は、ダイバーDによる作業を回避でき、迅速かつ安全な既設鋼管杭Pの撤去作業が可能となる。なお、本実施形態により回避できるダイバーDの作業とは、例えば、鋼管杭Pの切断位置の計測(測量)、鋼管杭Pの切断治具設置作業、鋼管杭Pの玉掛作業、鋼管杭Pの切断作業である。
【0041】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0042】
上記実施形態では、本実施形態の鋼管杭撤去装置1の切断対象の既設鋼管杭Pが海などの水中に設置される構成を例示したが、既設鋼管杭Pは地中に打ち込まれるものでもよい。この場合、既設鋼管杭Pの上端の杭頭部Hが地中に位置し、延長鋼管2は、杭頭部Hとの連結時に上端が地上に出る長さを有する。
【符号の説明】
【0043】
1 鋼管杭撤去装置
2 延長鋼管
3 エクステンション鋼管
4 接続用鋼管
5 固定装置
6 ガイドプレート(誘導部)
7 切断装置
P 既設鋼管杭
H 杭頭部
【要約】
【課題】迅速に安全な既設鋼管杭の撤去作業が可能な鋼管杭撤去装置を提供する。
【解決手段】杭頭部Hが水中または地中にある既設鋼管杭Pを撤去する鋼管杭撤去装置1は、既設鋼管杭Pの杭頭部を下端に挿入可能であり、杭頭部との連結時に上端が水面上または地上に出る長さを有する延長鋼管2と、延長鋼管2に設けられ、杭頭部を固定する固定装置5と、延長鋼管2の上端から既設鋼管杭Pの内部に挿入され、内周面側から既設鋼管杭Pを切断する切断装置7と、を備える。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10