(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のゴム組成物及びタイヤの実施形態について詳細に例示説明する。
【0009】
(ゴム組成物)
本発明の一例のゴム組成物(以下、「一例のゴム組成物」ともいう)は、少なくとも、ジエン系ゴム成分と、発泡剤と、脂肪酸金属塩と、尿素とを含み、必要に応じて、その他の成分を含む。
一例のゴム組成物には、ジエン系ゴム成分、発泡剤、脂肪酸金属塩、尿素の他に、ゴム工業界で通常使用される配合剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム成分、発泡剤、脂肪酸金属塩及び尿素の混合物に、必要に応じて適宜選択した各種配合剤を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0010】
<ジエン系ゴム成分>
上記ジエン系ゴム成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然ゴム(NR);ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)等のジエン系合成ゴム;などが挙げられ、また、これらの各ゴムを適宜変性させたものも「ジエン系ゴム」に含まれるものとする。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)が、ゴム組成物またはタイヤの氷上(低温)での柔軟性を確保する観点から、好ましい。
【0011】
<発泡剤>
上記発泡剤としては、二酸化炭素を発生する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、重曹、炭酸ナトリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、等の無機系発泡剤、などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、重曹が、加硫速度と発泡速度とのバランスの観点から、好ましい。
【0012】
上記ジエン系ゴム成分100質量部に対する上記発泡剤の配合量としては、0.1〜20質量部である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量部以上が好ましく、5〜15質量部がより好ましい。
上記配合量が、0.1質量部未満であると、発泡せず、20質量部超であると、耐摩耗性の低下の懸念がある。一方、上記配合量が、好ましい範囲内又はより好ましい範囲内であると、加硫速度と発泡速度とのバランスをより確実に確保することができる。
【0013】
<脂肪酸金属塩>
上記脂肪酸金属塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、などが、加硫速度と発泡速度とのバランスの点で好適に挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ステアリン酸亜鉛が、特に好ましい。
【0014】
<尿素>
上記ジエン系ゴム成分100質量部に対する上記尿素の配合量としては、上記脂肪酸金属塩との合計配合量が0.1〜20質量部である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3質量部以上が好ましい。
上記配合量が、好ましい範囲内又はより好ましい範囲内であると、加硫速度と発泡速度とのバランスをより確実に確保することができる。
また、上記尿素の配合量は、上記発泡剤が重曹である場合、当該重曹の配合量の1/2倍以上であることが好ましい。上記尿素の配合量が上記発泡剤としての重曹の配合量の1/2倍以上であることにより、加硫速度と発泡速度とのバランスをより確実に確保することができる。
【0015】
<脂肪酸金属塩及び尿素の合計配合量>
上記ジエン系ゴム成分100質量部に対する上記脂肪酸金属塩及び上記尿素の合計配合量としては、0.1〜20質量部である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。
上記配合量が、好ましい範囲内又はより好ましい範囲内であると、加硫速度と発泡速度とのバランスをより確実に確保することができる。
【0016】
<脂肪酸金属塩と尿素との質量比>
上記脂肪酸金属塩と上記尿素との質量比としては、1:0.5〜1:3.9である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1:0.7〜1:3.3が好ましく、1:0.9〜1:2.7がより好ましい。
上記質量比が、1:0.5未満であると、重曹が発泡せず、1:3.9超であると、加硫が速くなりすぎて発泡しない。一方、上記質量比が、好ましい範囲内又はより好ましい範囲内であると、発泡速度と加硫速度とのバランスを確保することができる。
【0017】
<その他の成分>
上記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、充填剤、老化防止剤、軟化剤、ステアリン酸、亜鉛華、加硫促進剤、加硫剤、オイル、硫黄、などが挙げられる。
【0018】
ここで、本発明のゴム組成物では、前記脂肪酸金属塩が、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。この構成によれば、加硫速度と発泡速度とのバランスを確実に確保することができる。
【0019】
更に、本発明のゴム組成物では、前記発泡剤が、重曹であることが更に好ましい。この構成によれば、加硫速度と発泡速度とのバランスをより確実に確保することができる。
【0020】
更に、本発明のゴム組成物では、前記ジエン系ゴム成分100質量部に対して、前記尿素を3質量部以上配合してなることが更に好ましい。この構成によれば、加硫速度と発泡速度とのバランスをより確実に確保することができる。
【0021】
更に、本発明のゴム組成物では、前記ジエン系ゴム成分100質量部に対して、前記脂肪酸金属塩及び前記尿素を合計5質量部以上配合してなることが更に好ましい。この構成によれば、加硫速度と発泡速度とのバランスをより確実に確保することができる。
【0022】
更に、本発明のゴム組成物では、前記ジエン系ゴム成分100質量部に対して、前記発泡剤を5質量部以上配合してなることが更に好ましい。この構成によれば、加硫速度と発泡速度とのバランスをより確実に確保することができる。
【0023】
(タイヤ)
本発明の一例のタイヤ(以下、「一例のタイヤ」ともいう)は、本発明のゴム組成物をトレッドに用いることを必要とする。
一例のタイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、タイヤ成形用ドラム上に未加硫ゴムを含むカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常タイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望のタイヤ(例えば、空気入りタイヤ)を製造することができる。即ち、一例のタイヤを製造する方法は、例えば、(i)貼り重ね工程と、(ii)加熱加硫工程とを含む方法、である。
【0024】
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物をトレッドに用いたことを特徴とする。
本発明のタイヤによれば、加硫速度と発泡速度とのバランスを確保することができる。
これにより、例えば、除水効果を発現させて、最も滑り易い氷上(0℃付近)での氷上性能を向上させることができる。
【実施例】
【0025】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0026】
(実施例1〜13及び比較例1〜10)
表1及び2に示す各配合内容に基づいて常法により、実施例1〜13及び比較例1〜10のゴム組成物を製造した。表1及び2において、特に、単位の記載がない場合は、「質量部」を示す。
得られた各ゴム組成物をトレッド(発泡ゴム層)として加硫して、常法によって試験用の乗用車用ラジアルタイヤ、タイヤサイズ185/70R15を製造した。
【0027】
<発泡率の測定>
上記発泡率Vsは、トレッドにおける全発泡率を意味し、各トレッドからサンプリングした試料(n=10)を用いて次式により算出した。
Vs=((ρ
0/ρ
1)−1)×100(%)
ここで、ρ
1は、加硫後のゴム(発泡ゴム)の密度(g/cm
3)を表す。ρ
0は、加硫後のゴム(発泡ゴム)における固相部の密度(g/cm
3)を表す。なお、加硫後のゴム(発泡ゴム)の密度及び加硫後のゴム(発泡ゴム)における固相部の密度は、例えば、エタノール中の質量と空気中の質量を測定し、これから算出した。測定結果及び評価結果を表1及び2に示す。なお、発泡率の評価基準は以下の通りとする。
<発泡率の評価基準>
○:現行発泡剤対比95%以上105%未満
△:現行発泡剤対比50%以上95%未満、現行発泡剤対比105%以上
×:現行発泡剤対比50%未満
【0028】
<加硫速度の測定>
一般的なレオメーターで測定し、加硫速度T0.9で定量化した。測定結果及び評価結果を表1及び2に示す。なお、加硫速度の評価基準は以下の通りとする。
<加硫速度の評価基準>
○:現行対比90%以上
△:現行対比50%以上90%未満
×:現行対比50%未満
【0029】
<氷上性能評価>
前記試験用のタイヤ(タイヤサイズ185/70R15)を国産1600CCクラスの乗用車に4本を装着し、氷温−1℃における氷上制動性能を確認した。比較例1のタイヤをコントロールとして下記の式により指数で表示した。数値の大きい方が、氷上性能が優れていることを示す。評価結果を表1及び2に示す。
氷上性能=(比較例1のタイヤの制動距離/供試タイヤの制動距離)×100
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
*1.天然ゴム(NR)
*2.ブタジエンゴム(BR):(製造会社名:JSR株式会社、商品名:ポリブタジエンゴムBR01)
*3.カーボンブラック(CB):(旭カーボン株式会社製、[N134(N
2SA:146m
2/g)])
*4.シリカ:(東ソー・シリカ株式会社製、商品名「Nipsil AQ」)
*5.シランカップリング剤:(デグサ社製、商品名「Si69」)
*6.オイル:ナフテン系プロセスオイル:(出光興産株式会社製、商品名「ダイアナプロセスオイルNS−24」、流動点:−30℃)
*7.ワックス
*8.老化防止剤6C:(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製、「ノクラックNS−6」)
*9.酸化防止剤RD:(精工化学工業株式会社製、「ノンフレックスRD」)
*10.加硫促進剤CZ:(三新化学工業株式会社製、「サンセラーCZ」)
*11.脂肪酸金属塩:ステアリン酸亜鉛:(日油株式会社製、「ジンクステアレートG」)
*12.無機系発泡剤:重曹:(大塚化学株式会社製、「P−5」):二酸化炭素を発生する発泡剤
*13.有機系発泡剤:ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT):二酸化炭素を発生しない発泡剤
*14.有機系発泡剤:アゾジカルボンアミド(ADCA):二酸化炭素を発生しない発泡剤
【0033】
表1及び2より、(i)発泡剤の配合量が、ジエン系ゴム成分100質量部に対して0.1〜20質量部であり、(ii)脂肪酸金属塩及び尿素の合計配合量が、ジエン系ゴム成分100質量部に対して0.1〜20質量部であり、(iii)脂肪酸金属塩と尿素との質量比が、1:0.5〜1:3.9である実施例1〜13のゴム組成物は、これらの(i)〜(iii)の少なくともいずれかを満たさない比較例1〜10のゴム組成物と比較して、加硫速度と発泡速度とのバランスを確保することができることが分かった。
さらに、表1及び2より、上述の(i)〜(iii)を全て満たす実施例1〜13のゴム組成物から製造されたタイヤは、上述の(i)〜(iii)の少なくともいずれかを満たさない比較例1〜10のゴム組成物から製造されたタイヤと比較して、氷上性能が向上したタイヤを所定範囲内の加硫時間で製造することができることが分かった。