(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鉛直方向に延在する軸の周りで回転可能に設けられた中空の外基体と、前記軸の周りに回転可能であって前記外基体内に配置された中空の内基体と、該外基体の周囲に均等に配置された少なくとも3枚のブレードと、各ブレードを前記外基体に対して機械的に結合する結合手段とを含む風車であって、
各ブレードは、前記軸から離れた側の面である外側ブレード面と前記軸に近い側の面である内側ブレード面とを有し、
前記外側ブレード面は、前記軸に垂直な断面内において前記軸から離れる側に膨らんだ湾曲形状を有し、
前記内側ブレード面は、前記外基体が少なくとも各ブレードに対応する部分において提供する外周面に対向して延在し、前記軸の側方から到来し、前記外側ブレード面に沿って通過する気流と前記内側ブレード面と前記外基体の外周面との間を通過する気流とが生じることによって前記ブレードには、前記ブレードを前記軸から離隔させようとする揚力が発生するようになっており、
前記結合手段は、各ブレードと前記外基体とを接続する接続手段と、駆動手段と、を備え、
前記接続手段は、前記揚力に伴って前記接続手段に惹起される張力の作用線が前記軸を通らないように、前記接続手段は、一端が前記ブレードに固定され、他端が前記外基体に2箇所で摺動可能支持される長尺状部材を有し、
風車にかかる風力乃至風速に応じて、前記内基体を前記外基体に対して相対的に回転させるために、前記軸に近い側の面である内側ブレード面と前記外基体の前記外周面とで形成される領域内に、前記軸に平行なウィンドキャッチャを少なくとも3枚備え、
前記駆動手段は、鉛直方向に延在する軸の周りで回転可能に設けられた前記外基体に同軸に、かつ、相対回転自在に支持される内基体を備え、
前記長尺状部材は、前記内基体の外周面とギア接続され、
前記内基体は、前記軸と巻き戻しスプリングで接続されており、
前記ウィンドキャッチャは、前記ウィンドキャッチャの上部と下部が連結部材により前記内基体の上部と下部とに連結されており、
前記ウィンドキャッチャは、風車にかかる風力乃至風速に応じて、前記内基体を前記外基体に対して前記軸を中心として相対的に回転させ、
前記内基体の前記外基体に対する相対的な回転量を制限する内部ドラムストッパーを備えている、
風車。
鉛直方向に延在する軸の周りで回転可能に設けられた中空の外基体と、前記軸の周りに回転可能であって前記外基体内に配置された中空の内基体と、該外基体の周囲に均等に配置された少なくとも3枚のブレードと、各ブレードを前記外基体に対して機械的に結合する結合手段とを含む風車であって、
各ブレードは、前記軸から離れた側の面である外側ブレード面と前記軸に近い側の面である内側ブレード面とを有し、
前記外側ブレード面は、前記軸に垂直な断面内において前記軸から離れる側に膨らんだ湾曲形状を有し、
前記内側ブレード面は、前記外基体が少なくとも各ブレードに対応する部分において提供する外周面に対向して延在し、前記軸の側方から到来し、前記外側ブレード面に沿って通過する気流と前記内側ブレード面と前記外基体の外周面との間を通過する気流とが生じることによって前記ブレードには、前記ブレードを前記軸から離隔させようとする揚力が発生するようになっており、
前記結合手段は、各ブレードと前記外基体とを接続する接続手段と、駆動手段と、を備え、
前記接続手段は、前記揚力に伴って前記接続手段に惹起される張力の作用線が前記軸を通らないように、前記ブレードと前記外基体とを接続しており、一端が前記ブレードに固定され、他端が前記外基体に2箇所で摺動可能支持される長尺状部材を有し、
前記駆動手段は、鉛直方向に延在する軸の周りで回転可能に設けられた前記外基体に同軸に、かつ、相対回転自在に支持される内基体を備え、前記内基体は、モータがギア構造によって連結されており、風速が予め設定された限度を超えたときに、前記モータの駆動力によって前記内基体を回転させ、前記内基体とギア構造により接続された前記長尺状部材は、前記外基体内に引き込まれるように移動し、風速が予め設定された値を下回ると、前記モータを逆回転させ、前記長尺状部材が前記外基体から外側方向に移動する、
風車。
前記各ブレードは、翼状の形状を有し、後方からの風を受けられるように、回転方向の後方側に開口を設け、各ブレード内に風を受ける空洞を設けている、請求項1または2に記載の風車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
風力発電は、昼夜、天候に関わらず、風があれば発電できるが、ビル風、ベランダ風など市街地では風向速が大きく変動するため、風向き反転対応が不要で、微風から台風などまでの風速に耐える風車が求められている。
特許文献1に開示の風車では、揚力調節の機能がなく風速によっては風車の構造的な耐久強度を超過する可能性がある。
そこで本発明の目的は、前記揚力が前記風車の構造的な耐久強度を超過しないように抑制することができる、新方式の風車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る風車は、鉛直方向に延在する軸の周りで回転可能に設けられた基体と、該基体の周囲に配置された少なくとも3枚のブレードと、各ブレードを前記基体に対して機械的に結合する結合手段とを含んでいる。各ブレードは、前記軸から離れた側の面である外側ブレード面と前記軸に近い側の面である内側ブレード面とを有する。
【0006】
そして、前記外側ブレード面は、前記軸に垂直な断面内において前記軸から離れる側に膨らんだ湾曲形状を有する一方、前記内側ブレード面は、前記基体が少なくとも各ブレードに対応する部分において提供する外周面に対向して延在している。これにより、前記軸の側方から到来し、前記外側ブレード面に沿って通過する気流と前記内側ブレード面と前記外側基体面との間を通過する気流とが生じることによって前記ブレードには、前記ブレードを前記軸から離隔させようとする揚力が発生し得る。
【0007】
また、前記結合手段は、各ブレードと前記基体とを接続する接続手段を備えており、前記接続手段は、前記揚力に伴って前記接続手段に惹起される張力の作用線が前記軸を通らないように、前記ブレードと前記基体とを接続している。これにより、風車を回転させるトルクが生じる。また更に、前記軸に垂直な断面内において楔形状の少なくとも1つの分流器が付設され、前記分流器が、前記軸の側方から到来する風を受けて前記軸の両側に逸れるように指向する2つの流れが生成される。
【0008】
ここで、前記基体は、前記軸を中心軸の持つドラム形状とすることができる。また、前記基体は、前記軸を中心軸の持つ多角柱形状を有していても良い。前記接続手段は、弾性的に伸縮可能な部材を含み、各ブレードは前記張力に応じて前記軸からの距離を変え得るようになっていることが好ましい。
【0009】
本発明の一実施形態は、
鉛直方向に延在する軸の周りで回転可能に設けられた中空の外基体と、前記軸の周りに回転可能であって前記外基体内に配置された中空の内基体と、該外基体の周囲に均等に配置された少なくとも3枚のブレードと、各ブレードを前記外基体に対して機械的に結合する結合手段とを含む風車であって、
各ブレードは、前記軸から離れた側の面である外側ブレード面と前記軸に近い側の面である内側ブレード面とを有し、
前記外側ブレード面は、前記軸に垂直な断面内において前記軸から離れる側に膨らんだ湾曲形状を有し、
前記内側ブレード面は、前記外基体が少なくとも各ブレードに対応する部分において提供する外周面に対向して延在し、前記軸の側方から到来し、前記外側ブレード面に沿って通過する気流と前記内側ブレード面と前記外基体の外周面との間を通過する気流とが生じることによって前記ブレードには、前記ブレードを前記軸から離隔させようとする揚力が発生するようになっており、
前記結合手段は、各ブレードと前記外基体とを接続する接続手段と、駆動手段と、を備え、
前記接続手段は、前記揚力に伴って前記接続手段に惹起される張力の作用線が前記軸を通らないように、前記接続手段は、一端が前記ブレードに固定され、他端が前記外基体に2箇所で摺動可能支持される長尺状部材を有し、
風車にかかる風力乃至風速に応じて、前記内基体を前記外基体に対して相対的に回転させるために、前記軸に近い側の面である内側ブレード面と前記外基体の前記外周面とで形成される領域内に、前記軸に平行なウィンドキャッチャを少なくとも3枚備え、
前記駆動手段は、鉛直方向に延在する軸の周りで回転可能に設けられた前記外基体に同軸に、かつ、相対回転自在に支持される内基体を備え、
前記長尺状部材は、前記内基体の外周面とギア接続され、
前記内基体は、前記軸と巻き戻しスプリングで接続されており、
前記ウィンドキャッチャは、前記ウィンドキャッチャの上部と下部が連結部材により前記内基体の上部と下部とに連結されており、
前記ウィンドキャッチャは、風車にかかる風力乃至風速に応じて、前記内基体を前記外基体に対して前記軸を中心として相対的に回転させ、
前記内基体の前記外基体に対する相対的な回転量を制限する内部ドラムストッパーを備えている。
前記各ブレードは、翼状の形状を有し、後方からの風を受けられるように、回転方向の後方側に開口を設け、各ブレード内部に風を受ける空洞を設けてもよい。
【0010】
本発明の他の実施形態は、
鉛直方向に延在する軸の周りで回転可能に設けられた中空の外基体と、前記軸の周りに回転可能であって前記外基体内に配置された中空の内基体と、該外基体の周囲に均等に配置された少なくとも3枚のブレードと、各ブレードを前記外基体に対して機械的に結合する結合手段とを含む風車であって、
各ブレードは、前記軸から離れた側の面である外側ブレード面と前記軸に近い側の面である内側ブレード面とを有し、
前記外側ブレード面は、前記軸に垂直な断面内において前記軸から離れる側に膨らんだ湾曲形状を有し、
前記内側ブレード面は、前記外基体が少なくとも各ブレードに対応する部分において提供する外周面に対向して延在し、前記軸の側方から到来し、前記外側ブレード面に沿って通過する気流と前記内側ブレード面と前記外基体の外周面との間を通過する気流とが生じることによって前記ブレードには、前記ブレードを前記軸から離隔させようとする揚力が発生するようになっており、
前記結合手段は、各ブレードと前記外基体とを接続する接続手段と、駆動手段と、を備え、
前記接続手段は、前記揚力に伴って前記接続手段に惹起される張力の作用線が前記軸を通らないように、前記ブレードと前記外基体とを接続しており、一端が前記ブレードに固定され、他端が前記外基体に2箇所で摺動可能支持される長尺状部材を有し、
前記駆動手段は、鉛直方向に延在する軸の周りで回転可能に設けられた前記外基体に同軸に、かつ、相対回転自在に支持される内基体を備え、前記内基体は、モータがギア構造によって連結されており、風速が予め設定された限度を超えたときに、前記モータの駆動力によって前記内基体を回転させ、前記内基体とギア構造により接続された前記
長尺状部材は、前記外基体内に引き込まれるように移動し、風速が予め設定された値を下回ると、前記モータを逆回転させ、前記
長尺状部材が前記外基体から外側方向に移動する。
前記各ブレードは、翼状の形状を有し、後方からの風を受けられるように、回転方向の後方側に開口を設け、各ブレード内部に風を受ける空洞を設けてもよい。
【発明の効果】
【0011】
回転軸周りに配置され、風を受けるブレードに生じる力(特に揚力)を、張力を介して風車回転用のトルク生成に有効利用できる。従って、トルク生成の効率を高める事が容易である。また、従来の揚力型風車等と比べて、ブレードに生じる揚力自体に大きな回転方向成分を生じさせなくとも、風車回転用のトルクが得られるので、ブレードの断面形状や配置方向等の選択自由度が高くなる。更に、鉛直方向に延在する回転軸周りで回転可能な基体(以下、「回転基体」)の寸法、特に奥行き寸法(鉛直方向に沿った寸法)の選択を通して、ブレードの面積を大きくすることが容易で、大きな揚力を得て、そこから大きなトルクを生成することも容易である。
そして、前記駆動手段は、各ブレードの前記軸からの距離を変えることが容易である。これによって、前記揚力が前記風車の構造的な耐久強度を超過しないように抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。先ず、
図1〜
図3を参照すると、本発明の1つの実施形態に係る風車の概略構造が、正面図、上面図及び部分拡大図で示されている。なお、
図1及び
図2中に記された座標系(右手系の直交X座標)は、方向を示すための便宜的なもので、Z方向が回転軸〇4の延在方向(
図1において+Zが上方向、−Zが下方向)を指し、X方向は
図1において左右方向(+Xが水平右方向、−Xが水平左方向)を指している。Y方向は、X方向とZ方向のいずれにも垂直な方向で、
図1においては紙面に垂直で向こう向きが+Y、こちらきが−Yとなる。また、
図2においては水平右方向が+Y方向、水平左方向が−Y方向となる。
【0014】
特に
図1の正面図と
図2の上面図を合わせて参照すると判るように、風車は設置面(水平な地面)GR上の適所に築かれた設置ベース10上に設置されている。設置ベース10上には、+Z方向(鉛直上方向)に向けて延在する回転軸〇4が設けられ、同回転軸〇4上には外基体11が軸支されている。なお、軸支のための機構については、周知の軸受機構を用いることができるので、詳細は省略する。
【0015】
外基体11は、ここでは回転軸〇4と一致する中心軸と円筒状の外周面13と内周面を持つドラム形状の中空部材で構成されている。
図1,
図2では外基体11の外周面13のみが示されているが、外基体11は、外周面13と図示しない内周面とを有する所定の厚みを持つ円筒状の物体である。外基体11の外周面13の“外側”には、回転軸〇4周りに略等角度間隔で配列するように少なくとも3枚(ここでは3枚を例示)のブレード21〜23が取り付けられている。なお、本明細書においては、特に断らない限り、“外側”とは、“基体の回転軸から離れる側(基体の回転軸から遠い側)”を意味し、“内側”とは、“外基体の回転軸に向かう側(基体の回転軸に近い側)”を意味するものとする。
【0016】
各ブレード21〜23は湾曲板状部材からなり、外基体11の外周面13の一部を外側から覆うように配置されている。本実施形態の場合、各ブレード21〜23の形状と寸法は実質的に同一である。即ち、
図1の描示から容易に理解されるように、各ブレード21〜23は、Z方向に沿ってドラム形状の基体11の全長をカバーし、更に各側端面12、14から若干張り出す態様(各側端面12、14から張り出す縁部を持つ態様)で設けられている。一方、ブレード21〜23一枚当たりの回転軸〇4周りのカバー角度範囲は60度程度とされている。
【0017】
但し、これはあくまで例示であって、各ブレード21〜23について、外基体11の外周面13との間の風の通路の確保が阻害されない限り、特に絶対的な制限はなく、例えばブレード21〜23一枚当たりの回転軸〇4周りのカバー角度範囲を30度〜90度の間で適宜選択することができる。一般には、回転軸〇4周りに配置するブレードの枚数が多い程、1枚当たりのカバー角度範囲は小さくされることが好ましい。例えば、1枚当たりのカバー角度範囲を20度として、12枚の同形同寸のブレードを回転軸〇4周りで30度毎に配置しても良い。なお、各ブレード21〜23は、回転方向の後方側に開口を設け、各ブレード内部に風を受ける空洞を設け、お椀型の風車のブレードとしてもよい。
【0018】
また、Z方向に沿ってのカバー範囲についても、必ずしも基体(ここではドラム形状の外基体11)の全長をカバーする必要はない。例えば、外基体11のZ方向の全長を略二分し、2枚にブレードで略半分ずつをカバーしても良い。更に、各ブレードのサイズを大小混ざったものとすることもできる。
【0019】
次に、各ブレード21〜23の支持の仕方について、主として
図2、
図3を参照して説明する。各ブレード21〜23は、外基体11に対して機械的に結合されることによって支持される。そのための手段(結合手段)は、各ブレード21〜23と外基体11とを接続する接続手段を備えている。本実施形態では、
図2に示すように、ブレード21〜23の各々について、接続手段は3つの部分で構成されている。各3つの部分の内、ブレード21〜23側と外基体11側の部分には、夫々ブレード側接続部材(第1アーム状接続要素)A1〜A3と基体側接続部材(第3アーム状接続要素)C1〜C3が用いられている。
【0020】
そして、両者をブリッジする部分に中間接続部B1〜B3が設けられている。各接続部材セットA1、C1〜A3、C3について、中間接続部B1〜B3は、
図3に示すように、伸縮ばね(伸縮弾性部材)SP1〜SP3を挿通させた規制筒(外基体11の上側の側端面12(底面側では側端面14)に固定)で構成されている。各伸縮ばねSP1〜SP3の両端は夫々対応する接続部材セットA1、C1〜A3、C3間を伸縮可能に繋いでいる。なお、外観上、中間接続部は規制筒に対応するので、説明の便宜上、符号B1〜B3を、規制筒を指す符号としても使用する。
【0021】
各ブレード21〜23について、これら3つの部分からなるセットは、外基体11の頂部側と底部側に設けられるが、各側における配置と構造の態様は同等なので、詳細説明は主として頂部側を例にとって行う。
図2に描かれているように、外基体11の頂部側において、各ブレード側接続部材A1〜A3のブレード側の端部は、対応するブレード21〜23の側端の固定個所(以下、便宜上、「第1の固定個所」という)41a〜43aで当該各ブレード21〜23に固定されている。なお、
図1では、接続部材の描示は殆ど省略されており、基体頂部側及び底部側でそれぞれ第1の固定個所に対応する個所(3個所ずつ)の内の各2個所のみ符号41a、42a、41b、42bで示した。
【0022】
一方、各基体側接続部材C1〜C3の基体側の端部は、外基体11の頂部側の側端面12の固定個所(以下、便宜上、「第2の固定個所」という)51〜53で側端面12に固定されている。なお、外基体11の底部側の側端面14においても各接続部材の基体側端部が第2の固定個所に対応する個所で固定されている(図示は省略)。このように、各ブレード21〜23について、接続部材が伸縮可能な部分を有しているので、後述するように、風の作用によりブレード21〜23に揚力が発生すると、揚力の強さに応じてブレード21〜23は外基体11の外周面13から離れるように移動する。規制筒B1〜B3は、ブレード21〜23が風を受けて大きく揺動することを防止する(伸縮ばねSP1〜SP3が大きく屈曲することを防止)。
【0023】
なお、ブレード21〜23乃至それを外基体11に接続する接続手段の揺動をより効果的に防止する観点から、規制筒をブレード21〜23側に接近させて設置することも考えられる。
図4はその例を示す。
図4に示した例においては、各ブレード21〜23について、1本のアーム状部材A1’(A2’、A3’)と1個の伸縮ばね(伸縮弾性部材)SP1’(SP2’、SP3’)とを接続した接続部材が採用されている。接続部材の両端の接続については、
図3に示した例と同様なので説明は省略する。
【0024】
また、無揚力あるいは弱い揚力しか発生していない場合や、揚力ではなくブレード21〜23を外基体11の外周面13側に押し付ける力が作用する場合には、ブレード21〜23は外基体11の外周面13に接近する(接触しても良いが、密着することは好ましくない)。
【0025】
さて、各ブレード21〜23は上述した如く外基体11の外周面13の外側で支持されているので、上方(+Z方向)から見ていずれかのブレード21〜23に沿うような風が吹くと、風はそのブレード21〜23と外基体11の外周面13の間にも入り込み、ブレード21〜23になんらかの力が作用する。本実施形態では、そのような風の成分が生じ易くするために、回転軸〇4の側方からの風(
図2では+Y方向の風を例示)を受けた時に、回転軸〇4及びその周辺(近傍)に向かって進もうとする空気の流れを回転軸〇4の両側に逸らすように指向させるよう、流れを分岐させる楔形状の分流器31〜33が、外基体11の周囲の「適所」に配置されている(
図1、
図2参照)。
【0026】
各分流器31〜33は、全体としては鉛直方向に沿って延在する柱状の部材で構成され、各分流器31〜33は、回転軸〇4に垂直な断面内で楔形状を有し、楔形状の先細り側が半径方向(回転軸〇4から離れる方向)を向くように配置されている(
図2参照)。なお、上記の「適所」とは、外基体11の回転時のブレード21〜23の軌道より外側で、ブレード21〜23の回転移動に支障の無い位置のことであるが、外基体11の外周面13から余り離れると、ブレード21〜23と基体11の外周面13の間に入り込む風を生成する能力が落ちるので、結局、分流器31〜33の設置位置は、風車の回転の邪魔にならない条件でなるべく外基体11の外周面13に近い位置とするのが好ましい。
【0027】
分流器31〜33の設置数についても設計的に定めれば良く、3つはあくまで例示である。今、
図1、
図2に示した例で、
図2中で左方から(−Y方向から)風が吹いている状態を考えてみると、分流器31が機能を発揮し、ブレード21の一端(風上側の一端)へ向かう流れと、ブレード22の一端(風上側の一端)付近へ向かう流れの生成が促進される。
【0028】
そして、風は更にブレード21、22の各一端付近から、各ブレード21、22の外側と内側を流れることになる。ここで、各ブレード21、22の内側面は外基体11の外周面13の一部(各ブレード21、22に対応する部分)に対向しているので、各ブレード21、22と外周面13(各ブレード21、22に対応する部分)との間には、風の通路となり得る。但し、前述した伸縮ばねによって通路の形成が妨げられないように配慮する。そのために、伸縮ばねは、中立状態(無風状態)で各ブレード21〜23が外周面13から多少浮き上がって(離れて)配置されるように設けられることが好ましい。
【0029】
さて、本発明では、上記したように、ブレードのいずれか(少なくとも1枚)について、一方側(風上側)から他方側(風下側)へ、ブレードの両側を風が吹き抜ける際に発生し得る揚力を、風車回転の主たる原動力とする。その意味で、本発明に係る風車は基本的には「揚力型風車」の一種であるということができる。但し、外基体11の丁度風下側に位置するブレード(
図2の例ではブレード23)についても、僅かであるが風車回転に一部寄与し得る。なぜならば、外基体11の丁度風下側に位置するブレード23には、その両端から外周面13との間に風が入り込もうとする結果、ブレード23を外周面13から離そうとする力が生じるからである。この力は、空気力学的な意味での「揚力」には当たらないが、「ブレードを外周面13から離そうとする力」という点では、ブレード21、22に発生し得る揚力と共通している。
【0030】
ここで、ブレードがブレード21、22のような位置にある時に揚力を発生するに適したブレードの断面形状の条件を考える。ここで言う、断面形状は、鉛直方向(回転軸の延在方向)に垂直な断面内における形状のことで、このような断面内で取り出したブレード断面片を「翼素」と呼ぶことがある。以下の説明では、この語を適宜使用する。さて、揚力発生のための翼素形状の条件である。
【0031】
ブレード21,22として「翼状」のブレードを採用することもできる。
図5(a)〜
図5(c)はその例を示している。これら各図において、PS1〜PS3は、回転軸周りで回転する基体の外側表面(
図2の例では外周面13)で、
図5(c)では平坦面となっており、このようなケースは例えば「多角形状の基体」の採用時に該当する。また、直線Nは、基体の回転軸と翼素代表点(翼素の面積重心)を通る直線である。
【0032】
図5(a)は、直線Nに関して対称であるが、外側面、内側面の外側への膨らみの曲率が、外側面の方が大きいことが特徴となっている。このブレードBL1の翼素形状の下で、外側面に沿って流れる空気の流速は、内側面と外側表面PS1との間の通路を流れる空気の流速より大きくなる。
図5(b)のブレードBL2は典型的な翼素形状を有し、直線Nに関して非対称であり、外側面、内側面の外側への膨らみの曲率が、外側面の方が大きくなっている。このような翼素形状においても、外側面に沿って流れる空気の流速は、内側面と外側表面PS2との間の通路を流れる空気の流速より大きくなる。
【0033】
図5(c)は、
図5(a)、(b)とは異なり、外側面が外側に凸に湾曲する一方で内側面は内側に凸に湾曲した翼素形状を有するブレードBL3を用いている。なお、図中の破線LLは翼素の先端(風上側端)LAと末端(風下側端)LBとを結んだ直線で、翼素形状は、破線LLの上側(外側)の面積が破線LLの下側(内側)の面積を上回るように設計されている。また、回転基体としては平坦な外側表面PS3を提供するものを採用して通路形成に利用している。この場合も、外側面に沿って流れる空気の流速が、内側面と外側表面PS3との間の通路を流れる空気の流速より大きくなる点に変わりはなく、従って、揚力の発生に支障はない。
なお、前記各ブレードは、翼状の形状を有し、後方からの風を受けられるように、回転方向の後方側に開口を設け、各ブレード内部に風を受ける空洞を設けてもよい。
【0034】
ここで、
図6を参照して、上述した諸例においてブレードに揚力が発生した時に、これが風車回転のトルクに変換される理由を説明する。ここでは、説明を簡単にするために、
図6に示したように、接続手段のブレードBL側の固定個所F1(第1の固定個所)と基体側の固定個所F2(第2の固定個所;
図2における固定個所51〜53に対応)とを結ぶ直線が、第1の固定個所F1と回転軸Oとを結ぶ直線に対してなす角度をΦ1とする。更に、三角形F1OF2を考え、残りの内角を図示の如くθ1、θ2とする。dは、OF2間の距離である。ここで、
図2の例に例示したように、第2の固定個所F2は、回転軸Oの側方にずれた位置にある。
【0035】
今、ブレードBLに揚力Fが発生すると、その主成分の向きは概略、回転軸Oを中心として半径方向となる。また、揚力F(合力)の作用点は一般に、第1の固定個所F1に近いと仮定し、ここではF1が揚力F(合力)の作用点になる例で考える。すると、揚力FはOF2×COSΦ1に比例した左周りのモーメントを生じ得ることになる。つまり、ブレードBLを接続手段を介して基体に固定するにあたり、基体側の固定個所(第2の固定個所)F2を、ブレードBLに生じた揚力に由来して接続手段に作用する張力の作用線が回転軸Oを通らないように偏心設定することで、同張力をトルク生成源として利用できるようにする。
【0036】
このようなトルク生成により、風車は
図6あるいは
図2において、左周りで回転することになる。なお、第2の固定個所F2は、第2の固定個所F2と回転軸Oを結ぶ直線が半径方向となす角度θ2やOF2間の距離dは設計的に選択すれば良い。但し、張力Sの作用線が回転軸Oを通ることがあってはならないので、そのために、角度θ2を0度あるいは180度から十分外れた値とすることが好ましい。また、OF2間の距離dは余り小さくしないことが好ましい。
【0037】
図2に示されるように、ブレード21〜23が風を受けて大きく振動するのを防止する機構として、規制筒B1〜B3が設けられている。規制筒B1〜B3内にはそれぞれ、伸縮ばねSP1〜SP3が備わっている。
【0038】
図2に示されるように、揚力の強さに応じてブレード21〜23は基体11の外周面13から離れるように移動する。風力乃至風速によっては、風車の許容風力乃至許容風速を超過することがありうる。そこで、許容風力乃至許容風速を超過した場合、ブレード21〜23を、回転軸〇4方向に移動させ、風車の回転モーメントを小さくする手段を備える風車としもよい。
【0039】
図7は、各ブレードの軸からの距離を変化させる第1の駆動手段を示す図である。この実施形態では、回転軸〇4を中心軸として、本体ドラムである外基本11と、その内側に、外基体11の内周面より径の小さい外周面を有する内基体61を備えている。
【0040】
外基体11は、ここでは回転軸〇4と一致する中心軸と円筒状の外周面13と内周面を持つドラム形状の中空部材で構成されている。
図7では外基体11の外周面13のみが示されているが、外基体11は、外周面13と図示しない内周面とを有する所定の厚みを持つ円筒状の物体である。
【0041】
外基体11の外周面13の“外側”には、回転軸〇4周りに略等角度間隔で配列するように少なくとも3枚(ここでは3枚を例示)のブレード21〜23が取り付けられている。“外側”とは、“基体の回転軸から離れる側(基体の回転軸から遠い側)”を意味し、“内側”とは、“基体の回転軸に向かう側(基体の回転軸に近い側)”を意味するものとする。
【0042】
また、内基体61は、ここでは回転軸〇4と一致する中心軸と円筒状の外周面63と内周面を持つドラム形状の中空部材で構成されている。
図7では内基体61の外周面63のみが示されているが、内基体61は、外周面13と図示しない内周面とを有する所定の厚みを持つ円筒状の物体である。
【0043】
回転軸〇4と内基体61の内周面とは巻き戻しスプリング64で連結されている。このため、外基体11と内基体61とは巻き戻しスプリング64により規制された状態で相対回転が可能である。
【0044】
ウィンドキャッチャ65は、外基体11の内周面と内基体61の外周面の間に設けられている。ウィンドキャッチャ65の上部と下部は、連結部材66a,66bにより、内基体61の上部と下部とで連結されている。ウィンドキャッチャ65は、風車にかかる風力乃至風速に応じて、内基体61を外基体11に対して相対的に回転させる。
【0045】
ブレード21の内側ブレード面の上部と下部にアームD,Dが固定されている。そして、ブレード21と外基体11とは、ブレード21の上部と下部とで、棒状の部材からなるアームD,Dにより摺動自在に接続されている。上部と下部のアームD,Dはそれぞれ、外基体11の所定箇所に設けられた2つの穴部13a,13bを摺動自在に貫通することにより、外基体11により穴部13a,13bの2カ所で摺動自在に支持されている。
【0046】
ブレード21に固定されているアームDと内基体61とは、アームDに設けられたラックと内基体61の外周面63に設けられた歯車とによるギア構造により、連結されている。この構造によって、内基体61の回転運動が、アームDの並進運動に変換される。
【0047】
ウィンドキャッチャ65が風力を受けて、ウィンドキャッチャ65は、このウィンドキャッチャ65に連結部材66a,66bを介して連結された内基体61を、外基体11の回転方向に対して相対的に反対方向に回転させる。そうすると、内基体61とギア構造により接続されたアームDは、外基体11の内に引き込まれるように移動する。これにより、ブレード21と回転軸〇4との距離が小さくなる。
【0048】
内基体61の外基体11に対する相対的な回転は、内部ドラムストッパー67a,67bによって回転の限度が設定されている。内部ドラムストッパー67aは、外基体11の内周面に設けられている。一方、内部ドラムストッパー67bは、内基体61の外周面63に設けられている。内基体61が外基体11に対して相対的に後方に回転すると、内部ドラムストッパー67aと内部ドラムストッパー67bが接触し、内基体61の相対的な後方回転は停止する。
【0049】
ウィンドキャッチャ65が受ける風力が弱くなると、巻き戻しスプリング64により、上記と反対方向に内基体61が相対的に回転する。これにより、アームD,Dが外基体11に対して外側方向に移動する。これによって、アームD,Dに固定されたブレード21は回転軸〇4からの距離が大きくなる。
【0050】
図8は、各ブレードの軸からの距離を変化させる第2の駆動手段を示す図である。第2の駆動手段は、ブレード21を外基体11の外周面13に対して離隔あるいは接近させるために小型モータ70を用いる実施形態である。
【0051】
この実施形態では、回転軸〇4を中心軸として、本体ドラムである外基体11と、外基体11内に配置されている内基体61を備えている。なお、
図8にはブレード21のみが示されているが、実際には複数枚のブレードが上述の実施形態と同様に、外基体11の外周面13の周囲に均等に配置されている。なお、各ブレード21〜23は、回転方向の後方側に開口を設け、各ブレード内部に風を受ける空洞を設け、お椀型の風車のブレードとしてもよい。
【0052】
ブレード21の内側ブレード面の上下2カ所に棒状の部材からなるアームDが固定されている。そして、それぞれのアームDは、円筒状の外基体11の側面に設けられた2つの穴部13a,13bを摺動自在に貫通する。このことにより、アームDはそれぞれ外基体11により穴部13a,13bの2カ所で摺動支持されている。ブレード21の内側ブレード面に固定されているアームDと内基体61とは、アームDに設けられたラックと内基体61の外周面63に設けられた歯車とによるギア構造により、連結されている。
【0053】
小型モータ70は、ギア機構によって小型モータ70の回転力が内基体61に伝達可能なように連結されている。図示しない風速計により測定された情報に基づいて小型モータは図示しない制御装置により駆動制御されている。風速が予め設定された限度を超えたときに、小型モータ70の駆動力によって内基体61を回転させる。そうすると、内基体61とギア構造により接続されたアームDは、外基体11内に引き込まれるように移動する。これにより、ブレード21と回転軸〇4との距離が小さくなる。
【0054】
風速が予め設定された値を下回ると、小型モータ70を上記と逆回転させ、上記と反対方向に外周面63が回転する。これにより、アームDが外基体11から外側方向に移動する。アームDに固定されたブレード21は回転軸〇4からの距離が大きくなる。
【課題】回転基体の周囲に配置したブレードに生じた揚力を、張力を介してトルクに変換でき、かつ、前記揚力が前記風車の構造的な耐久強度を超過しないように抑制することができる風車。
ブレード21に固定されているアームDと、内基体61とは、ギア構造により、連結されている。ウィンドキャッチャ65が風力を受けて、内基体61を回転させる。そうすると、内基体61とギア構造により接続されたアームDは、外基体11内に引き込まれるように移動する。これにより、ブレード21と回転軸〇4との距離が小さくなる。ウィンドキャッチャ65が受ける風力が弱くなると、巻き戻しスプリング64により、上記と反対方向に内基体61が回転する。これにより、アームDが外基体11から外側方向に移動する。アームDに固定されたブレード21は回転軸〇4からの距離が大きくなる。