特許第6916377号(P6916377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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▶ バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916377
(24)【登録日】2021年7月19日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】オレフィンの重合用触媒成分
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20210729BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   C08F4/654
   C08F10/00 510
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-508083(P2020-508083)
(86)(22)【出願日】2018年5月9日
(65)【公表番号】特表2020-517812(P2020-517812A)
(43)【公表日】2020年6月18日
(86)【国際出願番号】EP2018062056
(87)【国際公開番号】WO2018210665
(87)【国際公開日】20181122
【審査請求日】2019年10月23日
(31)【優先権主張番号】17171676.4
(32)【優先日】2017年5月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ディエゴ・ブリタ
(72)【発明者】
【氏名】シモナ・グイドッティ
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特表昭62−502344(JP,A)
【文献】 特表2007−505955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F4/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、及びクロライド(Cl)を含む固体触媒成分の粒子と、(b)0.1μm〜1mmの範囲の粒度を有し、50重量%以上のSiO単位を含有する0.5〜5.0重量%の固体化合物の粒子との機械的混合物を含み、
前記固体化合物(b)の粒子の重量%の基準が、前記固体触媒成分(a)の粒子および前記固体化合物(b)の粒子の合計である、触媒混合物。
【請求項2】
前記50重量%以上のSiO単位を含有する固体化合物(b)が、シリカ、ケイ酸塩及び珪藻土、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の触媒混合物。
【請求項3】
前記固体化合物(b)が、2〜800μmの範囲の粒度を有する、請求項1に記載の触媒混合物。
【請求項4】
前記50重量%以上のSiO単位を含有する固体化合物(b)がシリカから選択される、請求項1に記載の触媒混合物。
【請求項5】
前記固体触媒成分(a)が0.60超過の球形度係数を有する、請求項1に記載の触媒混合物。
【請求項6】
前記固体触媒成分(a)が、0.7を超える球形度係数及び10〜90μmの範囲の粒度を有する、請求項5に記載の触媒混合物。
【請求項7】
下記成分を接触させることによって得られる生成物を含む、オレフィンCH=CHR(ここで、Rは水素または1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビルラジカルである)の(共)重合用触媒システム:
(i)請求項1に記載の触媒混合物、
(ii)アルキルアルミニウム化合物、及び
(iii)任意に、外部電子供与体化合物。
【請求項8】
請求項7に記載の触媒システムの存在下で実行されるオレフィンCH=CHR(ここで、Rは水素または1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビルラジカルである)の(共)重合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された流動性を有するオレフィンの(共)重合用触媒成分、このような触媒成分から得られる触媒及びオレフィンの(共)重合方法におけるこれらの触媒の使用を含むことに関する。
【背景技術】
【0002】
チーグラー・ナッタ触媒成分は、プロピレンのようなオレフィンの立体特異的重合に使用され得る。業界で広く使用されたこのタイプの第1の触媒は、TiClをアルミニウムアルキル化合物で還元させることにより得られる固体TiClを含んである。しかしながら、触媒の活性及び立体特異性は、しばしば商業的に実行可能ではなく、生成される重合体は、触媒残留物を除去するために脱灰処理し、任意の生成されるアタクチック重合体を除去するために洗浄ステップを実行しなければならなかった。現在使用されている触媒は、しばしばジハロゲン化マグネシウム及び1つ以上の担持チタン化合物、内部電子供与体化合物、及び助触媒としてのAl−アルキル化合物をさらに含む固体触媒成分を含む。
【0003】
使用し得る重合技術のタイプに応じて、触媒の粒度は、約5〜約200μmの範囲であり得る。しかしながら、このサイズ範囲は、反応器内での触媒粒子の流動性を悪化させ、均質分布を減少させる凝集性の問題を被ることができる。
【0004】
これらの問題を解決するために、ステアレートまたはエルカミドのようなスリップ剤が使用されてきた。しかしながら、これらの添加剤は、一般に流動性の特徴を改善させることはできなかった。米国特許出願公開第2015/0344667号は、触媒または担体粒子をカーボンブラックのような材料導電材料で製造されたナノ粒子の層でコーティングする方法を提案している。しかしながら、この方法は、ナノ粒子を含むゲルを製造するための追加的な別個のステップが実行しなければならないため、負担になる。さらに、追加的な層の存在は、触媒活性金属(複数)と担体との間の必要な相互作用を妨げることができる。また、水性ベースナノ粒子ゲルの使用を含む手順は、Tiベース触媒を不活性化させることができる。
【0005】
したがって、触媒性能を損なうことなく触媒の流動性を改善する簡単な方法が好ましい。
【0006】
したがって、本出願人は、驚くべきことに、触媒成分粒子を特定の組成を有する少量の分離された無機粒子と機械的に混合することにより、向上した触媒流動性が得られることを発見した。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、(a)チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、及びクロライド(Cl)を含む固体触媒成分の粒子と、(b)0.1μm〜1mmの範囲の粒度を有し、50重量%以上のSiO単位を含有する0.2〜5.0重量%の固体化合物の粒子との機械的混合物を含む触媒混合物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
機械的混合物という用語は、固体触媒成分の粒子(a)が固体化合物の粒子(b)と区別され、分離されていることを示す。上記触媒成分の粒子(a)及び化合物の粒子(b)は、機械的混合により互いに近接している。
【0009】
好ましくは、本発明の触媒混合物において、無機固体化合物は、2〜800μmの範囲、より好ましくは1〜100μmの範囲、特に1〜30μmの範囲の粒度を有する。
【0010】
好ましくは、50重量%以上のSiO単位を含有する固体化合物b)は、シリカ、ケイ酸塩及び珪藻土から選択される。ケイ酸塩の中でも、タルクのようなフィロケイ酸塩が特に好ましい。好ましいタイプのシリカは、親水性シリカ、すなわち、疎水性に修飾されないシリカである。それらの中でも、特に0.1〜5μmのサイズを有する結晶性シリカを使用するのが好ましい。結晶性シリカという用語は、石英またはクリストバライトと同様の鋭い反射を持つX線スペクトルを示すシリカ系材料を意味する。
【0011】
また、珪藻土を使用するのが好ましい。それらの中でも、セライト(登録商標)(Celite(登録商標))という名前で商品化された珪藻土を使用するのが特に好ましい。
【0012】
固体触媒成分の粒度は,好ましくは4〜120μm、より好ましくは8〜100μm、特に10〜90μmの範囲である。
【0013】
好ましくは、固体化合物の粒子bの量は、触媒混合物(a)+(b)の総重量に基づいて、0.5〜5重量%、より好ましくは0.75〜4重量%、特に1〜3重量%の範囲である。
【0014】
固体触媒成分は、顆粒状、楕円体状の不規則な形態または球形の規則的な形態であり得る。
【0015】
顆粒状またはその他の不規則な触媒粒子は、Ti−ハライドを一般式MgX(OR)2−nの前駆体と反応させることにより得られることができ、上記式で、XはClまたはC−C10炭化水素基であり、RはC−Cアルキル基であり、nは0〜2の範囲である。このような反応は、基本的にはTi化合物が固定されたMgClで構成された固体粒子を生成する。
【0016】
球形の形態を有する触媒成分は、Ti−ハライドを式MgCl(ROH)の付加物を含む前駆体と反応させることにより得られることができ、上記式で、RはC−Cアルキル基、好ましくはエチルであり、nは2〜6である。
【0017】
本発明による好ましい固体触媒成分は、一般的な球形の形状を有するものである。特に、0.60超過、好ましくは0.70超過の球形度係数(sphericity factor)を特徴とするのが好ましい。球形度係数は、本出願の特性化セクションに記載されている画像分析技術を用して計算する。
【0018】
特定の実施形態によれば、固体触媒成分は、0.7を超える球形度係数及び10〜90μmの範囲の粒度を有する。
【0019】
好ましくは、固体触媒成分中のMgの量は、8〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%の範囲である。
【0020】
好ましくは、Tiの量は、0.1〜8重量%、より好ましくは0.5〜5重量%、さらにより好ましくは0.7〜3重量%の範囲である。
【0021】
チタン原子は、好ましくは、式Ti(OR4−nのチタン化合物に属し、上記式で、nは0〜4であり;Xはハロゲンであり;Rは炭化水素ラジカル、好ましくは1〜10個の炭素原子を有するアルキルラジカルである。それらの中で、四ハロゲン化チタンまたはハロゲンアルコラートのような少なくとも1つのTi−ハロゲン結合を有するチタン化合物が特に好ましい。好ましい特定のチタン化合物は、TiCl、及びTi(OEt)Clである。
【0022】
本発明の好ましい態様において、触媒成分は、電子供与体化合物(内部供与体)をさらに含む。好ましくは、これは、エステル、エーテル、アミン、シラン、カルバメート及びケトン、またはこれらの混合物から選択される。
【0023】
増加された立体特異性を有する触媒が要求される場合、内部供与体は、好ましくは、例えば、安息香酸及びフタル酸のエステル、及びマロン酸、グルタル酸、マレイン酸及びコハク酸から選択される脂肪族酸のエステルのような任意に置換された芳香族モノまたはポリカルボン酸のアルキル及びアリールエステルからなる群から選択される。このようなエステルの具体例は、フタル酸n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ−n−オクチル、安息香酸エチル及びp−エトキシ安息香酸エチルである。また、国際公開WO2010/078494号及び米国特許第7,388,061号に開示されたジエステルが使用されることができる。このクラスの中で、2,4−ペンタンジオールジベンゾエート誘導体及び3−メチル−5−t−ブチルカテコールジベンゾエートが特に好ましい。また、内部供与体は、ジカルバメート、モノエステルモノカルバメート及びモノエステルモノカーボネートの中から選択されたジオール誘導体の中から選択され得る。さらに、下記式の1,3ジエーテルがまた有利に使用されることができる:
【0024】
【数1】
【0025】
上記式で、R、R、RII、RIII、RIV及びRVは、互いに等しいかまたは異なり、水素または1〜18個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルであり、RVI及びRVIIは、互いに等しいかまたは異なり、それらが水素であることができないことを除いてはR−Rと同じ意味を有し;R−RVII基中の1つ以上は連結されてサイクルを形成することができる。RVI及びRVIIがC−Cアルキルラジカルから選択される1,3−ジエーテルが特に好ましい。
【0026】
また、上述された供与体の混合物を使用することができる。特定の混合物は、国際公開WO2011/061134号に開示されているようなコハク酸のエステル及び1,3ジエーテルで構成されたものである。
【0027】
エチレン/α−オレフィン共重合体を製造する場合のように、重合体鎖内でオレフィン共単量体を分布させる触媒の能力を増加させることが望ましい場合、単官能性供与体、特にエーテル及びエステルの中から電子供与体を選択することが好ましい。好ましいエーテルは、C−C20脂肪族エーテル、特に好ましくはテトラヒドロフラン及びジオキサンのような3〜5個の炭素原子環状エーテルを有する環状エーテルである。好ましいエステルは、酢酸エチル及びギ酸メチルのような脂肪族モノカルボン酸のC−Cアルキルエステルである。テトラヒドロフラン及び酢酸エチルが最も好ましい。
【0028】
一般に、固体触媒成分中の最終的な電子供与体化合物の量は、0.5〜40重量%の範囲、好ましくは1〜35重量%の範囲であり得る。
【0029】
固体触媒成分の製造は、いくつかの方法に従って実行され得る。1つの方法は、電子供与体化合物の存在下で、約80〜120℃の温度で、マグネシウムアルコラートまたはクロロアルコラート(特に、米国特許第4,220,554号に従って製造されたクロロアルコラート)と過剰のTiClとの間の反応を含む。
【0030】
好ましい方法によれば、固体触媒成分は、式Ti(OR)m−yXy(ここで、mはチタンの原子価であり、yは1〜mの数であり、Rは上述された意味を有する)のチタン化合物、好ましくはTiClを式MgCl・pROH(ここで、pは0.1〜6、好ましくは2〜3.5の数であり、Rは1〜18個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルである)の付加物に由来する塩化マグネシウムと反応させることにより製造され得る。上記付加物は,アルコール及び塩化マグネシウムを上記付加物と不混和性の不活性炭化水素の存在下で、上記付加物の溶融温度(100〜130℃)で攪拌条件下で混合することにより球形形態で適切に製造され得る。次いで、エマルジョンが急速にクエンチングされ、それによって付加物が球状粒子の形態で固化されるようにする。この手順に従って製造された球形付加物の例が、米国特許第4,399,054号及び米国特許第4,469,648号に記載されている。このようにして得られた付加物は、Ti化合物と直接反応させるか、またはアルコールのモル数が3未満、好ましくは0.1〜2.5である付加物を得るために、事前に(約80〜130℃の範囲の温度)熱制御された脱アルコール化させることができる。Ti化合物との反応は、冷たいTiCl(約0℃)中に(脱アルコール化されたまたはそのような)付加物を懸濁させることにより実行されることができ;次いで、混合物を80〜130℃まで加熱し、その温度で0.5〜2時間保持させる。TiClを用いた処理は、1回以上実行され得る。電子供与体化合物は、好ましくは、TiClで処理中に添加される。球形形態の触媒成分を製造する方法が、例えば、ヨーロッパ特許出願EP−A−395083号、EP−A−553805号、EP−A−553806号、EPA601525号及び国際特許出願公開WO98/44009号に記載されている。
【0031】
固体触媒成分で製造された粒子a及びSiO単位ベース化合物で製造された粒子bを含む触媒混合物は、好ましくは適切な装置内で2つの固体をドライブレンドすることを含むいくつかのブレンド方法で製造され得る。好ましくは、ドライブレンドは、窒素環境において、0.2〜20時間、好ましくは0.5〜15時間、より好ましくは0.5〜5時間の範囲の時間、室温で実行される。
【0032】
また、粒子(a)及び(b)の液体炭化水素スラリーを攪拌し、その後で液相を除去した後、粒子を乾燥させて混合物を製造することができる。
【0033】
実施例から分かるように、このようにして得られた触媒混合物は、そのような触媒粒子aに対して減少された破壊エネルギーを示す。この改善は、0.60超過、好ましくは0.70を超える球形度係数を有する触媒の使用と組み合わせる場合に特に顕著である。これらの触媒はまた、アバランシェエネルギー及び漏斗試験でも流動性の改善を示すので、様々な触媒取り扱い段階で改善を示すことができることを立証する。また、触媒混合物に対して実行された重合試験は、性能がSiO単位ベース化合物を含有しない固体触媒成分の性能と同じレベルであることを確認する。
【0034】
本発明による固体触媒成分は、それらを有機アルミニウム化合物と反応させることにより、オレフィン重合用触媒に変換される。
【0035】
特に、本発明の目的は、下記成分を接触させることによって得られる生成物を含む、オレフィンCH=CHR(ここで、Rは1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビルラジカルである)、任意には、エチレンとの混合物の重合用触媒である:
(i) 上記で開示された固体触媒成分及び
(ii) アルキルアルミニウム化合物及び、
(iii) 外部電子供与体化合物。
【0036】
アルキル−Al化合物(ii)は、好ましくは、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム化合物から選択される。アルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムハイドライドまたはアルキルアルミニウムセスキクロライド、例えば、AlEtCl及びAlEtClを、可能には、上記で引用されたトリアルキルアルミニウムとの混合物として使用することができる。
【0037】
Al/Ti比は、1よりも高く、好ましくは50〜2000に含める。
【0038】
適切な外部電子供与体化合物は、ケイ素化合物、エーテル、エステル、アミン、複素環式化合物及び特に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン及びケトンを含む。
【0039】
他のクラスの好ましい外部供与体化合物は、式(R(RSi(ORのケイ素化合物であって、ここで、a及びbは0〜2の整数であり、cは1〜4の整数であり、合計(a+b+c)は4であり;R、R、及びRは、任意にヘテロ原子を含有する1〜18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリールラジカルである。aが1であり、bが1であり、cが2であり、R及びRのうちの少なくとも1つが任意選択的にヘテロ原子を含有する3〜10個の炭素原子を有する分岐型アルキル、シクロアルキルまたはアリール基から選択され、RがC−C10アルキル基、特にメチルである。このような好ましいケイ素化合物の例は,メチルシクロヘキシルジメトキシシラン(C供与体)、ジフェニルジメトキシシラン、メチル−t−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン(D供与体)、ジイソプロピルジメトキシシラン、(2−エチルピペリジニル)−t−ブチルジメトキシシラン、(2−エチルピペリジニル)テキシルジメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2−エチルピペリジニル)ジメトキシシラン、メチル(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)ジメトキシシランである。さらに、aが0であり、cが3であり、Rが任意にヘテロ原子を含有する分岐型アルキルまたはシクロアルキル基であり、Rがメチルであるケイ素化合物も好ましい。このような好ましいケイ素化合物の例は、シクロヘキシルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン及びテキシルトリメトキシシランである。
【0040】
電子供与体化合物(iii)は、0.1〜500、好ましくは1〜300、より好ましくは3〜100の有機アルミニウム化合物と上記電子供与体化合物(iii)との間のモル比を提供する量で使用される。
【0041】
したがって、本発明のさらなる目的は、下記成分(i)、(ii)及び(iii)の間の反応生成物を含む触媒の存在下で実行されるオレフィンCH=CHR(ここで、Rは水素または1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビルラジカルである)の(共)重合方法である。
(i) 本発明の固体触媒成分、
(ii) アルキルアルミニウム化合物及び、
(iii) 任意に、電子供与体化合物(外部供与体)。
【0042】
重合方法は、種々の技術、例えば、不活性炭化水素溶媒を希釈剤として使用するスラリー重合、または液体単量体(例えばプロピレン)を反応媒体として使用するバルク重合によって実行され得る。さらに、1つ以上の流動式または機械攪拌式床反応器で気相作動する重合方法を実行することができる。
【0043】
重合は、20〜120℃、好ましくは40〜80℃の温度で実行され得る。重合が気相で実行される場合、作動圧力は0.5〜5MPaの範囲、好ましくは1〜4MPaの範囲である。バルク重合においで、作動圧力は1〜8MPaの範囲、好ましくは1.5〜5MPaの範囲である。
【0044】
下記の実施例は、本発明を限定せずにより良く説明するために提供される。
【実施例】
【0045】
X.I.の決定
重合体2.5gとo−キシレン250mlを冷却器及び還流凝縮器が装備された丸底フラスコ中に置いて窒素下で保持した。得られた混合物を135℃まで加熱し約60分間攪拌し続けた。最終溶液を連続的に攪拌しながら25℃まで冷却し、不溶性重合体を濾過した。濾過物を140℃で窒素流内で蒸発させて一定の重量に達するようにした。該キシレン可溶性画分の含有量を本来の2.5グラムに対する百分率で表し、控除法によってX.I.%を得た。
【0046】
平均粒度
「マルバーンインストルメント2000(Malvern Instruments 2000)」装置を使用して単色レーザー光の光学回折原理に基づいた方法で決定した。平均サイズは、P50として提供される。P10及びP90もまたこのような方法で決定する。
【0047】
粒度分布(SPAN)は、式
【0048】
【数2】
【0049】
によって計算され、ここで、P90は粒子の総体積の90%がその値よりも小さな直径を有するようにする直径の値であり;P10は粒子の総体積の10%がその値よりも小さな直径を有するようにする直径の値であり;P50は粒子の総体積の50%がその値よりも小さな直径を有するようにする直径の値である。
【0050】
マルバーンマスターサイザー2000(Malvern Mastersizer 2000)粒度分析器は、下記の3つのユニットに分割される:
【0051】
1)光学単位;2つのレーザービームソース:赤色He/Neレーザー、パワー5mw、波長633nm、青色(ダイオード)レーザー、波長450nmを装備した、0.02〜2000μの範囲のサイズの固体を測定するための光学コア単位。
【0052】
2)サンプリング単位;内部容量、遠心ポンプ、攪拌器及び40Wパワー出力を有する超音波プローブで作動する、50〜120mlの体積のヒドロ2000S自動サンプリング単位(Hidro 2000S automatic Sampling Unit)。
【0053】
3)PCコンソール;ウインドウ2000またはNT用のマルバーン・プロフェッショナルソフトウェアを使用するポータブルLGペンチウム・シリーズ(Portable LG Pentium series)。ミー光学理論を利用したデータ精巧化方法(サンプルの屈折率=1.596;n−ヘプタンの屈折率=1.39)。
【0054】
方法説明
本願に記載された測定のために、n−ヘプタン(+2g/lの静電気防止スパン80)が分散剤として使用される。
【0055】
測定セルには、分散剤がローディングされる一方、ポンプ/攪拌器速度は2205RPM以下に設定される。次いで、バックグラウンド測定(background measurement)が実行される。次に、固体またはスラリー専用ローディング手段を使用してサンプルをローディングする。その時点で、PS決定をする前に、サンプルを30秒間超音波処理する。その後に、測定が実行される。
【0056】
破壊エネルギー及びアバランシェエネルギーの決定
レボルーションパウダーアナライザー(Revolution Powder Analyzer)(Mercury Scientific Inc.,Newtown,CT,USA)で測定を実行した。具体的な測定条件は、2014年8月30日に改訂されたユーザーマニュアルに提供されている。
【0057】
球形度係数の決定
統計的に代表的な数の粒子を含むように触媒粒子の平均サイズに基づいて寸法が選択されるSEM写真で構成された画像のソースに適用されるアルゴリズムを使用して、粒子の球形度を記述する画像分析器用商用ソフトウェアであるアナリシスプロ(Analysis Pro)3.2を使用して測定が実行された。70μmの平均粒度を有する触媒サンプルの場合、写真のサイズは2.5×2.5mmであった。例えば、約9μmの粒度を有する触媒サンプルの場合、写真のサイズは150μm×150μmであった。
【0058】
球形付加物の製造手順
米国特許第4,399,054号の実施例2に記載されている方法に従うが、10,000rpmの代わりに3,000rpmで作動して、初期量の微細球形MgCl・2.8COHを製造した。このようにして生成された付加物は、70μmの平均粒度を有し、次いで、アルコール含有量が約42重量%になるまで、窒素流中で30℃から130℃まで増加する温度で熱的脱アルコール化を実施した。
【0059】
球形固体触媒成分の製造手順
下記の手順に従って、3ロットの固体触媒成分を製造した。機械式攪拌器、冷却器及び温度計を装備した500mlの丸底フラスコ内に300mlのTiClを窒素雰囲気下で、室温で導入した。0℃まで冷却した後、フタル酸ジイソブチル及び9.0gの球形付加物(上述されたように製造される)を攪拌しながら、フラスコに順次に添加した。充填された内部供与体の量は、8のMg/供与体モル比を満たす量であった。温度を100℃まで上昇させ、2時間維持した。その後、攪拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を100℃で吸い上げた。上澄み液を除去した後、追加の新たなTiClを添加して、初期液体体積に再び到逹した。次いで、混合物を120℃に加熱し、その温度で1時間保持した。再び攪拌を停止し、固体を沈降させ、上澄み液を吸い上げた。固体を60℃まで温度勾配で降下させながら、6回及び室温で、1回無水ヘキサンで洗浄した。次いで、生成された固体を真空下で乾燥させ、特徴づける。その球形度係数は、ロットAの場合には0.77であり、ロットBの場合には0.79であり、ロットCの場合には0.75であった。
【0060】
触媒ロットAに対するプロピレン重合試験は、23kg/gcatの触媒活性及び97.1%のキシレン不溶性を有するPPを生成した。
【0061】
プロピレンの重合手順
攪拌器、圧力計、温度計、触媒供給システム、単量体供給ライン及び自動温度調節ジャケットを装備した4リットル(L)のスチールオートクレーブを使用した。反応器を0.01グラムの固体触媒成分、0.76グラムのTEAL、0.063グラムのシクロヘキシルジメトキシシラン、3.2Lのプロピレン、及び2.0Lの水素で充填させた。システムを10分間かけて攪拌下で70℃まで加熱し、それらの条件で120分間維持した。重合終了時、任意の未反応単量体を除去することにより重合体を回収し、これを真空下で乾燥させた。
【0062】
オートクレーブを閉じて、所望の量の水素を添加した(特に、D供与体試験では2NL、C供与体試験では1.5NL、及び外部供与体なし試験では1.25NLが使用された)。次いで、攪拌しながら、1.2kgの液体プロピレンを反応に供給した。約10分間温度を70℃まで上昇させ、その温度で2時間重合を実行した。重合終了時、未反応プロピレンを除去し;重合体を回収し、70℃で、真空下で3時間乾燥させた。生成された重合体を秤量し、特徴づける。
【0063】
実施例1〜4及び比較例1
一般的な手順に従って製造された固体触媒成分のロットAを22μmの平均粒度を有する、表1に報告された特定の量のシグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich)社から市販されているセライト(登録商標)珪藻土と乾式混合することにより、一連の4つの混合物を製造した。ブレンディングは、下記のように実行した。100グラムの固体触媒成分を1Lのガラス瓶に入れた後、表1に報告された量のセライト(登録商標)をまた添加した。
【0064】
上記瓶を60rpmで1時間タンブリングして固体を混合した。
【0065】
生成された混合物に対してエネルギー破壊及びアバランシェエネルギーの決定を実施し、その結果が表1に報告されている。実施例1及び2の混合物に対する重合試験を実行した。触媒実施例1に対するプロピレン重合試験は、25kg/gcatの触媒活性及び96.9%のキシレン不溶性を有するPPを生成する一方、実施例2に対する試験は、23kg/gcatの触媒活性及び96.9%のキシレン不溶性を有するPPを生成した。これは、SiO系化合物の使用が触媒性能を変更させないことを立証する。
【0066】
実施例5〜18及び比較例2〜5
ロットBをロットAの代わりに使用し、表1に報告されたSiO系単位化合物をセライト(登録商標)の代わりに使用したことを除いては、実施例1〜4に記載されたように混合物を製造した。
【0067】
0.9μmの平均粒度を有するシリカS5631(フルカ(Fluka)社から市販)。
【0068】
10μmの平均粒度を有するシリカS342890(シグマアルドリッチ社から市販)。
【0069】
800μmを超えるサイズを有する粒子が90%以上のシリカS342831は、シグマアルドリッチ社から市販された。
【0070】
カシル(Gasil)AB200DFは、PQコポーレーション(PQ corporation)社により製品化する。これは、5μmのP50サイズを有する非晶質シリカである。
【0071】
カシルAB735は、PQコポーレーション社により製品化する。これは、3μmのP50サイズを有する非晶質シリカである。
【0072】
比較例7〜9
ロットCをロットAの代わりに使用し、表1に報告されたスリップ剤をセライト(登録商標)の代わりに使用したことを除いては、実施例1〜4に記載されたように混合物を製造した。
【0073】
実施例14〜15及び比較例10
固体触媒成分が、米国特許第7,759,445号の実施例1に記載されたように製造された破砕状(0.55の球形度係数を有する)であり、エネルギー破壊及びアバランシェエネルギーの決定について試験したことを除いては、実施例1〜4に記載されたように混合物を製造し、その結果が表1に報告されている。
【0074】
【表1-1】
【0075】
【表1-2】