(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被測定者の胸部に配置される第1の電極と第2の電極のうちの前記第1の電極に供給する第1のパルス信号と、前記第1のパルス信号とは位相が180°異なり、前記第2の電極に供給する第2のパルス信号と、を生成するパルス信号生成回路と、
前記被測定者の呼吸運動によって変化する前記第1の電極と前記第2の電極の間のインピーダンスが反映された電位差信号であり、前記第1のパルス信号または前記第2のパルス信号の変化に起因した変化の第1のタイミングが、前記第1のパルス信号または前記第2のパルス信号が変化する第2のタイミングよりも第1の時間、遅延した前記電位差信号を受け、前記電位差信号を整流した整流信号を出力する整流回路と、
前記整流回路に、前記第1のタイミングから負の電圧値になる前記電位差信号を、前記第1のタイミングから正の電圧値に反転させる第1の制御信号を供給する制御信号生成回路と、
前記整流信号の大きさに基づいたデジタル値を出力するAD変換回路と、
を有する半導体集積回路。
前記制御信号生成回路が出力する第2の制御信号に基づいて、前記第1の制御信号の変化に起因して発生する前記整流信号の過渡応答期間の少なくとも一部を含む期間において、前記期間の開始タイミングの前記整流信号の値を保持したまま変えずに出力するマスク回路を、さらに有し、
前記AD変換回路は、前記マスク回路の出力信号の大きさに基づいた前記デジタル値を出力する、
請求項1に記載の半導体集積回路。
前記呼吸運動の検査の条件に応じた前記第1の時間の変化に合わせて、前記整流回路に、前記第1のタイミングから前記負の電圧値となる前記電位差信号を、前記第1のタイミングから前記正の電圧値に反転させるように、前記第1の制御信号が変化するタイミングを制御する制御回路を、さらに有する、請求項1に記載の半導体集積回路。
被測定者の胸部に配置される第1の電極と第2の電極のうちの前記第1の電極に供給する第1のパルス信号と、前記第1のパルス信号とは位相が180°異なり、前記第2の電極に供給する第2のパルス信号と、を生成するパルス信号生成回路と、前記被測定者の呼吸運動によって変化する前記第1の電極と前記第2の電極の間のインピーダンスが反映された電位差信号であり、前記第1のパルス信号または前記第2のパルス信号の変化に起因した変化の第1のタイミングが、前記第1のパルス信号または前記第2のパルス信号が変化する第2のタイミングよりも第1の時間、遅延した前記電位差信号を受け、前記電位差信号を整流した整流信号を出力する整流回路と、前記整流回路に、前記第1のタイミングから負の電圧値になる前記電位差信号を、前記第1のタイミングから正の電圧値に反転させる制御信号を供給する制御信号生成回路と、前記整流信号の大きさに基づいたデジタル値を出力するAD変換回路と、を備えた半導体集積回路と、
前記デジタル値に基づいた情報を送信する通信処理回路と、
を有する呼吸運動検査装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の呼吸運動検査装置及び半導体集積回路の一例を示す図である。
【0012】
呼吸運動検査装置10は、被測定者20の胸部に配置された電極21a,21bに電圧を印加して胸部に電流を流し、肺22a,22b内の酸素量の変化に応じて変わる人体のインピーダンスを電極21a,21b間の電圧変化により測定する装置である。
【0013】
呼吸運動検査装置10は、半導体集積回路11と通信処理回路12とを有する。
半導体集積回路11は、たとえば、1チップのLSI(Large Scale Integrated circuit)であり、パルス信号生成回路11a、整流回路11b、制御信号生成回路11c、AD変換回路11d、制御回路11e、記憶回路11fを有する。
【0014】
パルス信号生成回路11aは、電極21aに供給するパルス信号MODPと、電極22bに供給するパルス信号MODNとを生成する。パルス信号MODNは、パルス信号MODPとは位相が180°異なる信号である。パルス信号MODP,MODNは、たとえば、クロック信号CLKを分周するなどして生成される。たとえば、クロック信号CLKの周波数を12MHz、パルス信号MODP,MODNの周波数を32KHzなどとする。
【0015】
なお、クロック信号CLKを生成するクロック源については
図1では図示が省略されているが、クロック源は、半導体集積回路11の内部にあってもよいし、半導体集積回路11の外部で、呼吸運動検査装置10内にあってもよい。
【0016】
整流回路11bは、電極21a,21b間の電位差を示す電位差信号AINを受け、電位差信号AINを整流した整流信号を出力する。なお、パルス信号MODP,MODNの変化に起因した電位差信号AINの変化のタイミングは、パルス信号MODP,MODNが変化するタイミングよりも遅延する。その理由については後述する。
【0017】
図2は、整流回路の一例を示す図である。
整流回路11bは、スイッチ11b1,11b2,11b3,11b4を有する。スイッチ11b1の一端は電極21aに接続され、スイッチ11b1の他端はAD変換回路11dの端子11d1に接続される。スイッチ11b2の一端は電極21aに接続され、スイッチ11b2の他端はAD変換回路11dの端子11d2に接続される。スイッチ11b3の一端は電極21bに接続され、スイッチ11b3の他端はAD変換回路11dの端子11d1に接続される。スイッチ11b4の一端は電極21bに接続され、スイッチ11b4の他端はAD変換回路11dの端子11d2に接続される。
【0018】
スイッチ11b1,11b4は、制御信号生成回路11cが出力する制御信号SF1,SF2のうち、制御信号SF1により、オンまたはオフされ、スイッチ11b2,11b3は、制御信号SF2により、オンまたはオフされる。
【0019】
スイッチ11b1〜11b4は、たとえば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などで実現できる。その場合、制御信号SF1,SF2は、MOSFETのゲート端子に供給され、制御信号SF1,SF2の電圧に応じて、MOSFETがオン状態またはオフ状態となる。
【0020】
図1の説明に戻る。
制御信号生成回路11cは、整流回路11bを制御する制御信号SF1,SF2を出力する。制御信号SF2は、制御信号SF1とは位相が180°異なる信号である。制御信号SF1,SF2は、たとえば、パルス信号MODP,MODNを所定の遅延量で遅延することで、位相を変えた信号である。
【0021】
電位差信号AINは、パルス信号MODP,MODNが変化するタイミングから、上記の遅延の時間分、経過後のタイミングから負の電圧値になる場合がある。制御信号生成回路11cは、制御信号SF1,SF2により、電位差信号AINが負の電圧値になるそのタイミングから、整流回路11bに、電位差信号AINを正の電圧値に反転させる。
【0022】
AD変換回路11dは、AD変換を行い、整流信号の大きさに基づいたデジタル値を出力する。なお、AD変換回路11dは、図示しないアンプにより増幅された整流信号をデジタル値に変換してもよい。
【0023】
制御回路11eは、AD変換回路11dが出力するデジタル値に基づいて、インピーダンスを算出する。また、制御回路11eは、たとえば、予め記憶回路11fに記憶されているインピーダンスと呼吸量との関係式を用いて、算出したインピーダンスに基づいて、呼吸量を算出してもよい。また、制御回路11eは、AD変換回路11dが出力するデジタル値から直接呼吸量を算出してもよい。また、制御回路11eは、制御信号生成回路11cに対して、制御信号SF1,SF2が変化するタイミングを制御する信号を供給してもよい。上記の遅延の時間は、電極21a,21bの種類や、電極21a,21bと呼吸運動検査装置10とを接続するケーブルの長さや種類、半導体集積回路11の回路構成など、様々な条件で変動する。制御回路11eは、このような検査の条件に応じた遅延の時間の変化に合わせて、上記の電位差信号AINが負の電圧値になるタイミングから電位差信号AINを正の電圧に反転させるように、制御信号SF1,SF2が変化するタイミングを制御する。
【0024】
制御回路11eは、たとえば、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサまたは複数のプロセッサの集合(マルチプロセッサと呼ばれる場合もある)である。ただし、制御回路11eは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの特定用途の電子回路を含んでもよい。制御回路11eは、記憶回路11fに記憶された各種のデータを用いて、記憶回路11fに記憶されたプログラムを実行する。
【0025】
記憶回路11fは、たとえば、RAM(Random Access Memory)などの揮発性の記憶装置と、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性の記憶装置を含む。たとえば、不揮発性の記憶装置に記憶されたプログラムが、制御回路11eの制御に基づいて、揮発性の記憶装置に展開されて実行される。プログラムは、たとえば、デジタル値からインピーダンス(または呼吸量)を算出する処理、制御信号SF1,SF2が変化するタイミングを制御する処理、通信処理回路12を制御する処理などを実行するプログラムを含む。
【0026】
通信処理回路12は、呼吸運動検査装置10の外部の装置との間で有線または無線通信により情報の送受信を行う。
図1では、通信処理回路12が表示装置25(たとえば、タブレット端末)に対して無線通信により情報の送信を行っている様子が示されている。通信処理回路12は、AD変換回路11dが出力するデジタル値に基づいた情報(インピーダンスまたは呼吸量)を送信する。
【0027】
以下、第1の実施の形態の呼吸運動検査装置10及び半導体集積回路11の動作を説明する前に、パルス信号MODP,MODNと電位差信号AINの変化のタイミングが同じである場合(遅延時間がない場合)の動作例を説明する。
【0028】
図3は、遅延時間がない場合の各部の信号波形の一例を示すタイミングチャートである。
図3では、クロック信号CLK、パルス信号MODP,MODN、電位差信号AIN、制御信号SF1,SF2、整流回路11bが出力する整流信号DEMoutの時間変化の例が示されている。
【0029】
パルス信号MODP,MODNが0Vから所定の電圧Vcに立ち上がる、または電圧Vcから0Vに立ち下がるタイミングt0,t1,t2において、電位差信号AINが正の電圧値から負の電圧値、または負の電圧値から正の電圧値に変化する。
【0030】
なお、呼吸運動に伴うインピーダンスの変化が電位差信号AINに現れている。たとえば、タイミングt0からタイミングt1の間では、電位差信号AINの電圧値が徐々に減少している。
【0031】
上記のように、パルス信号MODP,MODNと電位差信号AINの変化のタイミングが同じである場合、制御信号SF1,SF2を変化させるタイミングをパルス信号MODP,MODNの変化のタイミングと一致させればよい。
【0032】
たとえば、制御信号生成回路11cは、タイミングt0において、制御信号SF1を
図2に示したスイッチ11b1,11b4をオンさせる電圧VHに立ち上げ、制御信号SF2をスイッチ11b2,11b3をオフさせる電圧VLに立ち下げる。これにより、整流回路11bは、タイミングt0からタイミングt1の間、正の電位差信号AINと同じ整流信号DEMoutを出力する。なお、たとえば、電圧VHは電源電圧であり、電圧VLは、0Vである。
【0033】
一方、制御信号生成回路11cは、タイミングt1において、制御信号SF1をスイッチ11b1,11b4をオフさせる電圧VLに立ち下げ、制御信号SF2をスイッチ11b2,11b3をオンさせる電圧VHに立ち上げる。これにより、整流回路11bは、タイミングt1からタイミングt2の間、負の電圧値である電位差信号AINを正の電圧値に反転した整流信号DEMoutを出力する。
【0034】
しかしながら、実際は、パルス信号MODP,MODNの変化に起因する電位差信号AINの変化のタイミングは、パルス信号MODP,MODNの変化のタイミングよりも遅延する。人体においての信号の伝播遅延や、電極21a,21bと整流回路11bまでの間の経路(ケーブル長など)による伝播遅延などによる影響のためである。
【0035】
図4は、遅延時間がある場合の各部の信号波形の一例を示すタイミングチャートである。
パルス信号MODP,MODNが0Vから電圧Vcに立ち上がる、または電圧Vcから0Vに立ち下がるタイミングt3,t4,t5から時間td、遅延して電位差信号AINが正の電圧値から負の電圧値、または負の電圧値から正の電圧値に切り替わっている。
【0036】
制御信号SF1,SF2の変化のタイミングをパルス信号MODP,MODNの変化のタイミングと同じままにした場合、
図4に示すように、整流回路11bが出力する整流信号DEMoutが負の電圧値になる期間が生じる。つまり、整流が正常に行われない。
【0037】
この場合、AD変換後のデジタル値に誤差が生じ、インピーダンスに測定誤差が生じる。これにより呼吸動作を精度よく検査できなくなる。
このような問題を解決するために、第1の実施の形態の半導体集積回路11において、制御信号生成回路11cは、上記のような遅延を考慮したタイミングで、整流回路11bに電位差信号AINの正負を反転させる。
【0038】
図1の上部に示すように、制御信号生成回路11cは、パルス信号MODP,MODNの変化のタイミングから時間td、経過後のタイミングta,tb,tcで、制御信号SF1,SF2を電圧VHまたは電圧VLに変化させる。これにより、たとえば、電位差信号AINが負の電圧値になるタイミングtbから、整流回路11bは、電位差信号AINを正の電圧値に反転した整流信号DEMoutを出力する。
【0039】
このような処理により、整流信号DEMoutが負の電圧値になる期間がなくなり、整流が正常に行われる。これにより、インピーダンスの測定誤差が抑制される。したがって、呼吸動作を精度よく検査できる。
【0040】
図1に示した整流回路11bの整流信号DEMoutは、AD変換回路11dによりデジタル値に変換される。制御回路11eは、たとえば、そのデジタル値からインピーダンスを算出し、さらに呼吸量を算出する。そして呼吸量の情報は、制御回路11eの制御に基づいて通信処理回路12から表示装置25に送信される。
【0041】
なお、
図1に示した呼吸運動検査装置10は、電極21a,21bにパルス信号MODP,MODNを供給しない期間に電極21a,21b間の電位差に基づいて、心電波形を取得することもできる。また、呼吸運動検査装置10は、電極21a,21bとは別の複数の電極を用いて心電波形を取得してもよい。そして、呼吸運動検査装置10は、取得した心電波形の情報を表示装置25に送信してもよい。
【0042】
図5は、表示装置の画面に表示される呼吸波形の一例を示す図である。
図5には呼吸波形とともに心電波形の例も示されている。心電波形(“ECG”と表記されている)においては、縦軸は電圧[mV]を表し、横軸は時間[sec]を表す。呼吸波形(“RESP”と表記されている)においては、縦軸は呼吸量[ml]を表し、横軸は時間[sec]を表す。
【0043】
呼吸波形の周波数は、心電波形よりも小さく、たとえば、1Hz程度である。
(第2の実施の形態)
図6は、第2の実施の形態の呼吸運動検査装置及び半導体集積回路の一例を示す図である。
【0044】
呼吸運動検査装置30は、半導体集積回路31と無線通信回路32とを有する。
半導体集積回路31は、たとえば、1チップのLSIであり、検査用信号生成回路31a、整流回路31b、バッファ31c1,31c2、マスク回路31d、アンプ31e、AD変換回路31fを有する。さらに半導体集積回路31は、CPU31g、RAM31h、ROM31i、インターフェース回路(
図6では、“I/F”と表記されている)31j、バス31kを有する。
【0045】
検査用信号生成回路31aは、パルス信号生成回路31a1、制御信号生成回路31a2を有する。
パルス信号生成回路31a1は、
図1に示したパルス信号生成回路11aと同様の機能を有し、電極40aに供給するパルス信号MODPと、電極40bに供給するパルス信号MODNとを生成する。電極40a,40bは、被測定者の胸部に配置される。パルス信号MODNは、パルス信号MODPとは位相が180°異なる信号である。
【0046】
制御信号生成回路31a2は、
図1に示した制御信号生成回路11cと同様の機能を有する。すなわち、制御信号生成回路31a2は、制御信号SF1,SF2により、電位差信号AINが負の電圧値になるタイミングから、整流回路11bに、電位差信号AINを正の電圧値に反転させる。
【0047】
さらに、第2の実施の形態の半導体集積回路31において、制御信号生成回路31a2は、マスク回路31dを制御するための制御信号BCKを生成する。制御信号SF1,SF2,BCKの変化タイミングは、CPU31gによって制御可能である。
【0048】
なお、検査用信号生成回路31aの回路例については後述する。
整流回路31bは、電極40a,40b間の電位差信号AINを受け、電位差信号AINを整流した整流信号を出力する。整流回路31bは、
図2に示した整流回路11bと同様の回路で実現できる。
【0049】
マスク回路31dの2つの入力端子のそれぞれは、バッファ31c1またはバッファ31c2を介して整流回路31bの2つの出力端子の一方に接続される。なお、バッファ31c1,31c2はなくてもよい。マスク回路31dは、制御信号SF1,SF2の変化に起因して発生する整流信号の過渡応答期間の少なくとも一部を含む期間において、その期間の開始タイミングの整流信号の値を保持したまま変えずに出力する。つまり、マスク回路31dは、整流信号の過渡応答期間の少なくとも一部の期間、整流信号の変化をマスクする機能を有する。マスクする期間の開始タイミングや期間の長さは、制御信号BCKにより決定される。
【0050】
このようなマスク回路31dは、たとえば、サンプルホールド回路によって実現される。サンプルホールド回路の例については、後述する。
アンプ31eは、マスク回路31dを介して供給される整流信号を増幅する。
【0051】
AD変換回路31fは、マスク回路31dの出力信号の大きさに基づいたデジタル値を出力する。
図6の例では、マスク回路31dの出力信号(整流信号)は、アンプ31eにより増幅され、増幅後のマスク回路31dの出力信号がデジタル値に変換される。
【0052】
CPU31gは、ROM31iに格納されたプログラムやデータの少なくとも一部を、バス31kを介してRAM31hにロードし、プログラムを実行する。CPU31gは、プログラムを実行することで、たとえば、AD変換回路31fが出力するデジタル値に基づいて、インピーダンスを算出する処理を行う。また、CPU31gは、プログラムを実行することで、たとえば、予めROM31iに記憶されているインピーダンスと呼吸量との関係式を用いて、算出したインピーダンスに基づいて、呼吸量を算出してもよい。また、CPU31gは、AD変換回路31fが出力するデジタル値から直接呼吸量を算出してもよい。
【0053】
また、CPU31gは、プログラムを実行することで、インターフェース回路31jと無線通信回路32との間の情報の送受信を制御する。
RAM31hは、CPU31gが実行するプログラムやCPU31gが演算に用いるデータを一時的に記憶する揮発性の半導体メモリである。
【0054】
ROM31iは、CPU31gが実行するプログラム、及び、各種データを記憶する不揮発性の記憶装置である。
インターフェース回路31jは、CPU31gの制御のもと、無線通信回路32との間で情報の送受信を行う。
【0055】
無線通信回路32は、呼吸運動検査装置30の外部の装置(たとえば、タブレット端末)との間で無線通信により情報の送受信を行う。たとえば、無線通信回路32は、CPU31gが算出した呼吸量の情報を、外部の装置に送信する。
【0056】
図7は、検査用信号生成回路の一例を示す図である。
検査用信号生成回路31aのパルス信号生成回路31a1は、D型フリップフロップ(
図7では“D−FF”と表記されている)41a1,41a2,41a3,41a4,…,41an、ドライブ回路41bを有する。
【0057】
D型フリップフロップ41a1〜41anは、前段の出力端子が後段のデータ入力端子に接続されるように直列にn段接続され、それぞれにクロック信号CLKが供給されている。
【0058】
なお、初段のD型フリップフロップ41a1のデータ入力端子には、図示を省略している分周回路によってクロック信号CLKを所定の分周比で分周した信号INが入力される。その分周回路は、たとえば、12MHzのクロック信号CLKを分周して、32KHzの信号INを生成する。
【0059】
D型フリップフロップ41a1〜41anの各段から、信号INを異なる遅延量(位相のシフト量)で遅延した信号が出力される。たとえば、n段目のD型フリップフロップ41anから出力される信号は、信号INに対する遅延量がもっとも大きくなる。
【0060】
ドライブ回路41bは、所定の遅延量で遅延された信号INを所定の電圧レベルに調節し、電圧レベルを調節した信号に基づいて、位相が180°異なるパルス信号MODP,MODNを生成し、出力する。
図7の例では、ドライブ回路41bは、D型フリップフロップ41a3の出力端子に接続されているが、他のD型フリップフロップの出力端子に接続されてもよい。
【0061】
制御信号生成回路31a2は、セレクタ42a、SF生成回路42b、インバータ回路42c、BCK生成回路42dを有する。
セレクタ42aは、CPU31gから供給される選択信号SEL1に基づいて、D型フリップフロップ41a1〜41anの何れか1つから選択される出力信号を選択し、出力する。
【0062】
SF生成回路42bは、セレクタ42aの出力信号を異なる遅延量で遅延した複数の信号を生成するとともに、その複数の信号の何れか1つをCPU31gから供給される選択信号SEL2に基づいて選択し、制御信号SF1として出力する。
【0063】
SF生成回路42bは、シフトレジスタとセレクタを用いて実現できる。シフトレジスタにより、クロック信号CLKaの周期を分解能とした異なる遅延量の複数の信号が得られる。セレクタは、選択信号SEL2に基づいて、異なる遅延量の複数の信号の1つを選択して制御信号SF1として出力する。
【0064】
クロック信号CLKaは、クロック信号CLKよりも周波数が高い(たとえば、10倍程度)信号である。このため、セレクタ42aの出力信号の位相の分解能よりも、細かい分解能で制御信号SF1の位相を選択できる。
【0065】
インバータ回路42cは、制御信号SF1の位相を180°反転させた制御信号SF2を出力する。
選択信号SEL1,SEL2は、電位差信号AINの変化のタイミングで、制御信号SF1,SF2が電圧VHから電圧VL、または電圧VLから電圧VHに変化するように、CPU31gによって設定される。
【0066】
BCK生成回路42dは、セレクタ42aの出力信号を異なる遅延量で遅延した複数の信号を生成するとともに、その複数の信号の何れか1つをCPU31gから供給される選択信号SEL3に基づいて選択する。さらにBCK生成回路42dは、選択した信号のパルス幅(デューティ比)を、CPU31gから供給される制御信号CNTに基づいて調整し、制御信号BCKとして出力する。選択信号SEL3と、制御信号CNTは、制御信号SF1,SF2の変化に起因して発生する整流信号の過渡応答期間の少なくとも一部の期間、制御信号BCKが電圧VLとなるようにCPU31gによって設定される。
【0067】
BCK生成回路42dは、シフトレジスタとセレクタとを用いて実現できる。シフトレジスタにより、クロック信号CLKaの周期を分解能とした異なる遅延量の複数の信号が得られる。セレクタは、選択信号SEL3と制御信号CNTとに基づいて、制御信号BCKの立ち下がりタイミングと立ち上がりタイミングを選択し、任意の遅延量とパルス幅の制御信号BCKとして出力する。
【0068】
図8は、マスク回路の一例を示す図である。
マスク回路31dは、スイッチ43,44、キャパシタ45を有する。
スイッチ43の一端は、バッファ31c1を介して整流回路31bの一方の出力端子に接続され、スイッチ43の他端は、アンプ31eの一方の入力端子に接続される。スイッチ44の一端は、バッファ31c2を介して整流回路31bの他方の出力端子に接続され、スイッチ44の他端は、アンプ31eの他方の入力端子に接続される。スイッチ43,44は、制御信号BCKに基づいて、オンまたはオフする。
【0069】
スイッチ43,44は、たとえば、MOSFETなどで実現できる。その場合、制御信号BCKは、MOSFETのゲート端子に供給され、制御信号BCKの電圧に応じて、MOSFETがオン状態またはオフ状態となる。
【0070】
以下では、制御信号BCKが電圧VHである場合には、スイッチ43,44がオンし、制御信号BCKが電圧VLである場合に、スイッチ43,44がオフするものとして説明する。
【0071】
キャパシタ45は、アンプ31eの一方の入力端子と他方の入力端子との間に接続される。
このようなマスク回路31dでは、制御信号BCKが電圧VHとなりスイッチ43,44がオンするとき、整流回路31bの出力電圧Vaがキャパシタ45に保持される。また、このときマスク回路31dの出力電圧Vbは整流回路31bの出力電圧Vaと等しくなる。一方、制御信号BCKが電圧VLとなりスイッチ43,44がオフするとき、整流回路31bの出力電圧Vaが変化しても、マスク回路31dの出力電圧Vbはキャパシタ45に保持されている値となる。すなわち、スイッチ43,44がオフのときは、出力電圧Vaの変化は、アンプ31e、及びその後段のAD変換回路31fには伝わらず、マスクされる。
【0072】
以下、第2の実施の形態の呼吸運動検査装置30及び半導体集積回路31の動作例を説明する。
図9は、呼吸運動検査装置の各部の信号波形の一例を示すタイミングチャートである。
図9では、クロック信号CLK、パルス信号MODP,MODN、電位差信号AIN、制御信号SF1,SF2、整流回路31bの出力電圧Va、制御信号BCK、マスク回路31dの出力電圧Vbの時間変化の例が示されている。
【0073】
第1の実施の形態の呼吸運動検査装置10と同様に、制御信号生成回路31a2は、パルス信号MODP,MODNが変化するタイミングt10,t13から時間td、経過後に、制御信号SF1,SF2を電圧VHまたは電圧VLに変化させる。これにより、たとえば、電位差信号AINが負の電圧値になるタイミングから、整流回路31bは、電位差信号AINを正の電圧値に反転した整流信号を出力し、マスク回路31dの出力電圧Vaは正となる。
【0074】
したがって、第1の実施の形態の呼吸運動検査装置10と同様に、出力電圧Va(第1の実施の形態の整流回路11bの整流信号DEMoutに相当する)が負の電圧値になる期間がなくなり整流が正常に行われ、インピーダンスの測定誤差が抑制される。
【0075】
ただし、
図9に示すように、出力電圧Vaは、制御信号SF1,SF2の変化に起因して発生する高周波の過渡応答成分を有する。出力電圧Vaを直接、アンプ31eに供給した場合、高周波の過渡応答成分の影響により、AD変換後のデジタル値が、呼吸運動によるインピーダンス変化をより正確に反映できず、インピーダンスの測定誤差が生じる可能性がある。AD変換回路31fにおいて、たとえば、ローパスフィルタなどで単純に平滑化処理を行っても、過渡応答成分が残存する。
【0076】
第2の実施の形態の呼吸運動検査装置30では、以下のように出力電圧Vaの過渡応答成分をカットする。
制御信号生成回路31a2は、タイミングt10,t13から、時間ts、経過後のタイミングt11,t14に、制御信号BCKを電圧VHから電圧VLに変える。これにより、
図8に示したマスク回路31dのスイッチ43,44がオフし、タイミングt11における出力電圧Vaの値が保持され、出力電圧Vbとなる。
【0077】
タイミングt11,t14から、前述のように設定された制御信号BCKのパルス幅tw分の時間が経過したタイミングt12,t15において、制御信号BCKは電圧VHとなる。これにより、
図8に示したマスク回路31dのスイッチ43,44がオンし、出力電圧Vbは出力電圧Vaと同じとなる。
【0078】
以上のような処理によって、制御信号SF1,SF2の変化に起因して発生する出力電圧Vaの過渡応答期間(整流信号の過渡応答期間に相当する)の少なくとも一部の期間、出力電圧Vaの変化がAD変換回路31fに伝わらなくなる。これにより、AD変換回路31fに伝わる出力電圧Vaの高周波の過渡応答成分が少なくなり、AD変換回路31fの入力電圧が、より平滑化される。そのため、AD変換後の時間領域での平均電圧の誤差が小さくなり、インピーダンスの測定誤差が抑制され、より精度よく呼吸運動を検査することができる。
【0079】
なお、制御信号BCKを電圧VHから電圧VLに変えるタイミング(マスク開始タイミング)は、パルス信号MODP,MODNの過渡応答のタイミング(タイミングt10,t13など)よりも前であってもよい。その場合、たとえば、
図7に示したセレクタ42aが、選択信号SEL1により、D型フリップフロップ41a1,41a2の何れかの出力信号を選択するようにすればよい。
【0080】
また、電位差信号AINの変化のタイミングは、電極40a,40bの種類や、電極40a,40bと呼吸運動検査装置30とを接続するケーブルの長さや種類、半導体集積回路31の回路構成など、様々な条件で変動する。たとえば、ケーブルが長くなると、電位差信号AINの変化のタイミングは、パルス信号MODP,MODNの変化のタイミングに対してより遅れる(時間tdが長くなる)。第2の実施の形態の呼吸運動検査装置30では、
図7の選択信号SEL1,SEL2により、制御信号SF1,SF2の変化のタイミングを制御できる。そのため、電位差信号AINの変化のタイミングの変動(時間tdの変動)に対応できる。
【0081】
たとえば、呼吸運動検査装置30の出荷前に、各条件における適切な選択信号SEL1,SEL2の値の組み合わせが、予めROM31iに格納されるようにしてもよい。各条件における適切な選択信号SEL1,SEL2の値の組み合わせは、たとえば、各条件における電位差信号AINの変化のタイミングの検出結果に基づいて、そのタイミングで制御信号SF1,SF2が変化するように決定される。出荷後は、検査時の条件に対応した選択信号SEL1,SEL2の値の組み合わせを、CPU31gがROM31iから取得して、制御信号生成回路31a2に供給するようにしてもよい。その条件の少なくとも一部の情報は、外部の装置(たとえば、タブレット端末など)から送信され、無線通信回路32は、その情報を受信し、インターフェース回路31jを介してCPU31gに供給するようにしてもよい。
【0082】
また、出力電圧Vaの過渡応答の開始タイミングや期間も、上記各種の条件で変動する。第2の実施の形態の呼吸運動検査装置30では、制御信号BCKを電圧VLにして出力電圧Vaの過渡応答期間の変化をマスクするマスク期間の開始タイミングや、マスク期間の長さ(パルス幅tw)が、
図7の選択信号SEL1〜SEL3、制御信号CNTにより変更可能である。そのため、出力電圧Vaの過渡応答の開始タイミングや期間の変動に対応できる。
【0083】
たとえば、呼吸運動検査装置30の出荷前に、各条件における適切な選択信号SEL1,SEL2,SEL3、制御信号CNTの値の組み合わせが、予めROM31iに格納されるようにしてもよい。各条件における適切な選択信号SEL1,SEL2,SEL3、制御信号CNTの値の組み合わせは、たとえば、各条件における出力電圧Vaの過渡応答期間の検出結果に基づいて、その期間の少なくとも一部の出力電圧Vaの変化がマスクされるように決定される。出荷後は、検査時の条件に対応した組み合わせを、CPU31gがROM31iから取得して、制御信号生成回路31a2に供給するようにしてもよい。その条件の少なくとも一部の情報は、外部の装置から送信され、無線通信回路32は、その情報を受信し、インターフェース回路31jを介してCPU31gに供給するようにしてもよい。
【0084】
また、呼吸量に関する情報を受信したタブレット端末の画面に表示される呼吸波形を確認したユーザが、たとえば、タッチパネルなどの入力インターフェースを用いて、選択信号SEL1〜SEL3または制御信号CNTの変更要求を入力してもよい。その場合、入力された変更要求に関する情報を無線通信回路32が受信し、受信した情報に基づいて、CPU31gが選択信号SEL1〜SEL3または制御信号CNTの何れかを変更する。
【0085】
以上、実施の形態に基づき、本発明の半導体集積回路及び呼吸運動検査装置の一観点について説明してきたが、これらは一例にすぎず、上記の記載に限定されるものではない。