特許第6916507号(P6916507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916507
(24)【登録日】2021年7月20日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】積層油吸着材
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20060101AFI20210729BHJP
   C02F 1/40 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   C02F1/28 N
   C02F1/40 E
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-217452(P2016-217452)
(22)【出願日】2016年11月7日
(65)【公開番号】特開2018-47444(P2018-47444A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年8月22日
(31)【優先権主張番号】特願2016-180924(P2016-180924)
(32)【優先日】2016年9月15日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229162
【氏名又は名称】日本ソリッド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波多野 倫
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−192152(JP,A)
【文献】 特開平06−170359(JP,A)
【文献】 特開2005−139736(JP,A)
【文献】 特開2010−179222(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0122718(US,A1)
【文献】 実開昭48−98568(JP,U)
【文献】 実開昭48−98566(JP,U)
【文献】 実開昭49−70135(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/28
C02F 1/40
B01J 20/26
B32B 27/00
E02B 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布の上面および下面の表層面と側壁面の表面積の比が1:0.2〜3であるマット状の不織布製油吸着材を積層させて積層油吸着材とし、該積層油吸着材に挿通口を設け、該挿通口にロープを挿通し、前記積層された油吸着材を回転可能に設けたことを特徴とする積層油吸着材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流出油等の回収に用いられる油吸着材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場等から油の流出事故や船舶から排出される油あるいは船舶の事故による大量の原油の流出に基因して、河川、港湾、海洋等が汚染される状況が増大している現状にある。
これらの流出油等を回収する方法として広く油吸着材が用いられている。この油吸着材は、天然繊維、合成繊維等種々の素材のものが提案されているが、最近は、ポリエステル、ポリプロピレンを素材とした油吸着材が広く使用されている。特にポリプロピレンは疎水性で且つ親油性であることから多く使用されている。
【0003】
油吸着材の形状もマット状、ロール状、チューブ状、リボン状あるいはそれらを加工した万国旗状、フェンス状等の種々のものが使用されている。なかでもマット状のものは最も多く使用されている。
例えば油吸着シートを複数枚重ね合わせ、重ね合わせた前記複数枚の油吸着シート間にポケット部を構成させるようにして該複数枚の油吸着シートを上下に互いに接合したことを特徴とする油吸着材(特許文献1)。また油吸着シートを折り重ねて積層状とし、少なくとも1つのポケット部を構成させ、形状保持体を折り重ねて積層状にした油吸着シートの表面と裏面に設けた後、これらの折り重ねられた油吸着シートと形状保持体を一体化させた油吸着材(特許文献2)等が知られている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の油吸着材はその表面層で吸着する目的で開発されたものであり、油吸着材の厚さ部によって主に吸着するものではなかった。
従って油吸着材を重ね合わせ接合したものは各油吸着材の厚さ部が間隔を有するように構成されていることから極めて油吸着効率が悪い欠点があった。
【0005】
また特許文献2の油吸着材は、油吸着シートを折り重ねて積層状としていることから油吸着シートの厚さ部の占める面積部が少なく効率的な油の吸着が不可能であった。
そして前記油吸着材は、薄膜状の油層の場合には実質的には油の吸着効果がなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−192152号公報
【特許文献2】特開2010−75833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記したように従来の油吸着材は、水面上の油層の厚さが厚い場合には一定の吸着効果はあるが、油層の厚さが薄くなるにつれて吸着効果が低下する傾向にあった。特に薄膜状の油層については実質的に効果が無かった。本発明者は、かかる現象について種々観察した結果、マット状油吸着材を油層に投入した場合、該マット状油吸着材の下面に接した油が吸着されると、下面が水に直接接触することにより、下面に表面張力が生じ水膜が形成され、油の吸着が出来なくなる現象を見出した。
そしてかかる現象に起因してマット状油吸着材は、その下面によって水面に浮かんだ状態となることから油層と側壁面との接触面積が極めて少なくなるため薄膜状の油が吸着されないことを見出した。
そこで本発明者は、短時間に大量の油を吸着すると共に、薄い油膜状の流出油についても短時間で良く吸収し、また油吸着率を高め、さらに油吸着材の回収時に油の漏出量の少ない油吸着材について種々研究を重ねた結果本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、マット状の不織布製油吸着材を積層させ、一体化することを特徴とする積層油吸着材である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、厚い油層の流出油は勿論のこと、薄い油膜状になった流出油も短時間で吸着することができ、また油吸着率を高め、さらに積層油吸着材の回収時に油の漏出量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】原布の不織布の平面図である。
図2】マット状油吸着材Mの平面図である。
図3図2のa‐a部のマット状油吸着材Mの断面図である。
図4】切り込み部の入ったマット状油吸着材Mの平面図である。
図5】マット状油吸着材Mを積層した側面図である。
図6】マット状油吸着材Mを積層させ、結束具で緊縮した積層油吸着材M´の切り込み部位の側断面図である。
図7】円形の穴を穿ったマット状油吸着材Mの平面図である。
図8】本発明の積層油吸着材M´の斜視図である。
図9】本発明の他の態様の積層油吸着材M´の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
不織布は、一般的に連続した長尺状シートとして製造されるため、工程中にテンションをかけられる等のことから、ランダムに配置された繊維がわずかに全体としてシートの長尺方向Aに流れている。そして得られたマット状油吸着材は、上面および下面は繊維が密なために表面張力が働いて水膜を生じ、一方側壁面(切断面部)(以下「側壁面」と云う)は繊維が粗く空隙が大きいために表面張力が小さくなる性質を有している。またこのようにして調製した油吸着材は、油を吸着した後シートを長尺方向Aに吊下すると、油の漏出量が多く、反対に短尺方向Bに吊下すると油の漏出量が少ないことが知られている。
また従来の不織布製油吸着材は、前記したような新たな知見から明らかなように油の吸着に長時間を要すると共に油の吸着率も低かった。特に薄い油膜状を呈した油については実質的に吸着することが困難であった。
【0012】
本発明は、薄い油膜状を呈した流出油をも迅速に吸着し、不織布製油吸着材の単位表面積当たりの吸油量を高め、また吸着した油の漏出量を抑えるために、不織布の上面および下面の表層面と側壁面の表面積の比を1:0.2〜3、好ましくは1:0.5〜2とすることによって前記の目的がさらに向上されることを見出した。
すなわちこの値が0.2より小さいと油の漏出量が増大し、一方3より大きくなると、油の吸着量は増大するが、保形性を維持することが困難となり、油吸着材の回収が困難になる。
また油吸着材Mの大きさは、1〜2,000cm、特に50〜200cmのものが好ましい。
【0013】
次に本発明を図面に参照しながら説明する。
図1は、本発明のマット状油吸着材に使用する不織布の長尺シートの一部の平面図であり、Aが長尺方向を示し、Bが短尺方向を示す。図2は長尺シートから四角形に裁断したマット状不織布製油吸着材(以下「マット状油吸着材」という)Mの平面図である。該マット状油吸着材Mは表層面1と側壁面2からなっている。図3は、図2のマット状油吸着材Mのa‐a断面図である。このマット状油吸着材Mは上面および下面からなる表層面1と4辺の側壁面2とからなっている。
【0014】
マット状油吸着材Mの形状も丸型、楕円型、五角形、六角形、星形等の種々の形状にすることができ、さらに外縁部を凹凸状として調製することもできる。
【0015】
本発明のマット状油吸着材Mは、図4に示すように両サイドに切り込み部3を設けることもできる。この切りこみ部3の形状は線状でも溝状でも差しつかえない。このように切り込み部3を設けたマット状油吸着材Mは図5に示すように同じ方向に揃えて積層する。積層されたマット状油吸着材Mは、切り込み部3に例えば紐等の結束具4を入れて緊縮することによって一体化することができ、図6に示すような積層油吸着材M´を調製することができる。積層されたマット状油吸着材Mの切り込み部3と紐等の結束具4は、複数個所設ける事が出来る(図示せず)。また他の方法としてはネット等で被包することによっても一体化することができる。マット状油吸着材Mの積層枚数は、マット状油吸着材の厚さあるいは使用目的により適宜選択すれば良いが通常は2〜20枚程度が好ましい。
マット状油吸着材Mを密着状態で積層することによって、厚い油層の流出油は勿論のこと、薄い油膜状になった流出油も短時間で吸着することができ、また油吸着率を高め、さらに積層油吸着材M´の回収時に油の漏出量を抑えることができる。
前記結束具4としては紐の外、結束バンド、鎖、繊維ロープ、ワイヤーロープ等の種々のものが使用できる。
このようにして調製された積層油吸着材M´は常に側壁面が充分に油層に接することから油を短時間に吸着する事が出来る。
【0016】
そしてマット状油吸着材Mの表層面1と側壁面2との表面積の割合を調整する方法としては、図7に示すようにマット状油吸着材Mに適宜の数の円形の穴5を穿つことによって行うことができる。また穴5はマット状油吸着材Mを積層した後パンチング処理することによっても設けることができる。さらに穴5の形状も円形の外、三角形、四角形、五角形、六角形、星形、楕円型、ひょうたん形等の種々の形状とすることができる。これらの穴5の配列は整列させて配列する外、列をずらしたり、不規則に配列したり、異なる形の穴5を組合わせたりすることによって、回収時の油の漏出をさらに防止することができる。
【0017】
本発明の積層油吸着材M´は図8に示すようにマット状油吸着材Mの中心部にロープ7等を通す挿通口6を設け、所望の枚数を積層した後、前記挿通口6にロープ7等を通して両端部のロープ7等に固定具8によって止めることによって積層油吸着材を構成することもできる。またこの際各油吸着材Mが回転可能なように遊動状態として固定具8によって止めることもできる。そして図8のように油吸着材M´を間隔を設けて設置することによって収納時容易に折り畳むことができ、収納スペースを小さくすることができる。
また前記ロープ7等は蛍光性、夜光性、発光性のものを使用することにより、夜間等の暗い場所でも油回収作業が行える。
さらに図9に示すような周囲を凹凸状の形状とした積層油吸着材M´とすることによって凹部に油を溜めることができるので薄膜状の油も効率よく捕捉し、吸着することができる。
【0018】
また、本発明の積層油吸着材M´は適宜の方法で例えば万国旗状ならびに吸着フェンス状に連結して使用することによって回収作業が容易になる。
【符号の説明】
【0019】
1・・・表層面
2・・・側壁面
3・・・切り込み部
4・・・結束具
M・・・マット状油吸着材
M´・・・積層油吸着材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9