(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916581
(24)【登録日】2021年7月20日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】地盤改良材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/08 20060101AFI20210729BHJP
E02D 3/10 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
E02D3/08
E02D3/10 104
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-56218(P2017-56218)
(22)【出願日】2017年3月22日
(65)【公開番号】特開2018-159213(P2018-159213A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2020年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】永石 雅大
【審査官】
東 芳隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−333740(JP,A)
【文献】
米国特許第05647690(US,A)
【文献】
特開2004−150032(JP,A)
【文献】
特開2010−013885(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101793021(CN,A)
【文献】
特開2015−183466(JP,A)
【文献】
特開2016−121235(JP,A)
【文献】
福島信吾 他,砂圧入式静的締固め工法(SAVE-SP工法)の開発と適用事例,第9回地盤改良シンポジウム論文集,2010年11月,pp.243-248,[2020年11月20日検索],URL,https://www.nn-techinfo.jp/NNTD/files/1252/1252_1101.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00−3/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料砂が最大粒径≦9.5mm、細粒分含有率Fc≦5%の範囲に収まっており、混入される含水比調整用水、アニオン系高分子材料である流動化剤、前記流動化剤に含まれた陰イオンを陽イオンで中和するための塑性化剤により流動化砂として圧送ポンプにて配管を通して圧送可能に処理されると共に、前記流動化砂が所定時間後に前記塑性化剤により塑性化されて非流動化砂となる地盤改良材の製造方法であって、
使用される前記材料砂及び前記含水比調整用水に含まれる陽イオン当量を計測する陽イオン計測工程と、
前記材料砂として乾燥砂1,000kgに対し前記含水比調整用水を300〜400kg、及び前記流動化剤を6.4kgを混ぜる流動化工程と、
前記塑性化剤の使用量として設定されている標準添加量0.5kgから前記陽イオン計測工程で得られた陽イオン当量相当分を減じた添加量を前記流動化工程で作成される流動化砂に混ぜて含水比30〜40%の流動化砂を製造する塑性化剤添加工程と
を有していることを特徴とする地盤改良材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料砂に流動化剤を混ぜてポンプ圧送可能に処理した地盤改良材
の製造方法に関する。なお、本明細書において、『材料砂』は砂を主とした材料、あるいは砂杭材料となる砂等の粒状材料という広義な意味で使用している。
【背景技術】
【0002】
例えば、サンドコンパクションパイル工法(SCP工法)は、地盤中に締固めた砂杭を造成することで地盤の密度を増大させる。このSCP工法では、大型施工機械を用いるため施工スペースの確保上の制約から適用できない場合が多い。代用工法として、小型施工機を用いる薬液注入系やセメントモルタルを圧入する工法等があるが、コストが高くなる。そのような背景から、本出願人らは特許文献1や2に開示されるごとく、材料砂をポンプで圧送可能な流動化状態にし、地盤への圧入を行うことでコスト削減と環境負荷の低減を可能にした圧入式砂杭造成工法を開発し実用化している。この工法は、砂圧入式静的締固め工法やSAVE−SP工法(登録商標)と称され、小型施工機の使用により狭隘地での施工や既設構造物直下の改良にも対応できる。
【0003】
特許文献1の工法特徴は、材料砂に含水比調整用水と共に流動化剤と遅効性塑性化剤(以下、塑性化剤という)とを含有する砂杭材料流動化物(以下、流動化砂という)を、流動状態を保持したまま地盤中に圧入し、地盤中で塑性化させる。具体的には、
図3に示されるごとく中空管23を地盤中に設計深度まで貫入した後、中空管23を通して流動化砂を地表から地中に圧入し、地中に該流動化砂を残致し、この上に次のステップ分の流動化砂を圧入し、これを繰り返すことで所定長さの改良体25を造成する。符号10は流動化砂製造プラント、1は流動化砂供給手段、2は砂材料供給手段、3は流動化剤供給手段、4は圧送ポンプ、5は塑性化剤供給装置である。
【0004】
特許文献2は流動化砂を作る製造プラントを示している。流動化砂は、砂材料に水、流動化剤、塑性剤の順に混合する。詳述すると、流動化砂は、砂材料の重量を計測し、その重量に基づき含水比調整用水、流動化剤、塑性剤を自動計算して混入する。
図4は流動化砂の施工時の状態変化を示した模式図である。(a)は圧入前の流動化砂を示し、流動化砂は、中空管から地盤中に圧入されるまでは流動化剤(好ましくはアニオン系高分子材料)が砂の粒子同士の間隙水の粘性を高め、粒子同士の摩擦をなくし砂と水との分離を抑制して高い流動性を維持している。(b)は圧入中の流動化砂を示し、圧入中は流動化砂が脱水し密な状態に締め固められる、流動化剤は網状で残る。(c)は塑性化終了状態を示し、この状態では塑性化剤が電気的に流動化剤を中和して流動化剤の網状構造を保てなくなり粒子同士の摩擦を回復している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5188894号公報
【特許文献2】特許第5189951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記SAVE−SP工法では、材料砂に含水比調整用水、流動化剤及び塑性化剤を添加することにより、該材料砂をポンプ圧送可能とし、地中に圧入して周囲地盤を締め固める。ここで、流動化剤として使用されている増粘剤は、材料圧送時には充分な流動性を確保することが望まれる反面、地中では速やかに塑性化し、それに伴って化学的に中和し粘性を失うことが要求される。流動化砂の製造では、そのように塑性化や化学中和を促進する目的で、塑性化剤が添加される。その塑性化剤の添加量は、流動化剤が持つ陰イオン量を中和するに足りる陽イオン当量となるよう調整される。
【0007】
ところが、実際の施工では、金属イオン等の陽イオンを多く含む材料砂や水を使用すると、流動化剤に含有される陰イオンと反応し、塑性化が早期に始まりポンプ圧送不能になるという問題があった。対策としては、用いられる材料砂の選定を厳しくしたり流動化剤及び塑性化剤の添加量を多めにすることもあった。しかしながら、それらは根本的な解決策ではなく、原材料である材料砂の選択範囲を狭め、引いては経費増の要因となっている。
【0008】
本発明の目的は、以上のような問題に対し塑性化が早期に始まることを的確に防止可能にすると共に、原材料として使用される材料砂の選択範囲を拡大可能にすることを目的としている。他の目的は以下の内容説明の中で明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成するため請求項1の発明では、材料砂が
最大粒径≦9.5mm、細粒分含有率Fc≦5%に収まっており、混入される含水比調整用水、
アニオン系高分子材料である流動化剤、
前記流動化剤に含まれた陰イオンを陽イオンで中和するための塑性化剤により流動化砂として圧送ポンプにて配管を通して圧送可能に処理されると共に、前記流動化砂が所定時間後に前記塑性化剤により塑性化されて非流動化砂となる地盤改良材
の製造方法であって、使用される
前記材料砂及び
前記含水比調整用水に含まれる陽イオン当量を
計測する陽イオン計測工程と、前記材料砂として乾燥砂1,000kgに対し前記含水比調整用水を300〜400kg、及び前記流動化剤を6.4kgを混ぜる流動化工程と、前記塑性化剤の使用量として設定されている標準添加量
0.5kgから
前記陽イオン計測工程で得られた陽イオン当量相当分を減じた添加量を前記流動化工程で作成される流動化砂に混ぜて含水比30〜40%の流動化砂を製造する塑性化剤添加工程とを有していることを特徴としている。
【0010】
以上の構成において、『使用される材料砂及び水に含まれる陽イオン当量』とは、材料砂が乾燥砂の状態で付着している陽イオン当量、砂の間隙水や付着水に含まれている陽イオン当量、含水比調整後の水に含まれている陽イオン当量を含む意味で使用している。
【0011】
また、前記陽イオン計測工程では、例えば、材料砂に含まれる水を使って誘導結合プラズマ発光分析法により含有する元素及び濃度を測定し、その測定値から陽イオン当量を求めることが好ましい。
【0012】
上記した発明は、次のような知見から検討を重ねて完成されたものである。
【0013】
すなわち、まず、我が国において、土壌に含まれる陽イオン当量は、一般的に乾土100g当たり数〜40mEq/100gと言われており、砂は多くて10mEq/100g程度とされている。また、火山帯や温泉地では、多量の金属イオンを含む砂や水が存在し、そのような粒状材料では陽イオン当量も高くなり、40mEq/100g程度となることもある。ここで、使用される材料砂及び水に含まれる陽イオンとしては、元素名でナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄などが挙げられる。
【0014】
また、流動化砂の製造においては、使用される材料砂及び水にある程度の陽イオン当量を含有している場合にも、一律に設定されている標準添加量の塑性化剤を加えれば、流動化剤(例えば、アニオン系高分子材料)の陰イオンに対し余剰な陽イオンを与えることとなる。そこで、本発明では、使用される材料砂及び水に含まれる陽イオン当量を計測すると共に、その陽イオン当量に相当する量の塑性化剤を減じて添加するようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1
の発明では、地盤改良
材の製造方法として流動化砂の早期の塑性化を防いで良好な施工を維持できる点、原材料である材料砂の選択範囲を拡大容易となる点、使用される材料砂及び水に含まれる陽イオン当量に相当する塑性化剤を低減可能となるため施工費の節減に寄与できる点、等の利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る地盤改良材の製造方法の基本手順例を示す模式説明図である。
【
図2】本発明の他の製造方法の手順例を示す模式説明図である。
【
図3】特許文献1に開示されている砂杭造成装置を示す説明図である。
【
図4】(a)〜(c)は施工時における流動化砂の状態変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る地盤改良材の構成特徴を明らかにした後、該地盤改良材の製造方法を
図1と
図2の例を参照しながら詳述する。
【0018】
(地盤改良材)対象の地盤改良材は、原材料である材料砂が混入される含水比調整用水、流動化剤、塑性化剤により流動化砂として圧送ポンプにて配管を通して圧送可能に処理されると共に、前記流動化砂が所定時間後に前記塑性化剤により塑性化されて元の材料砂とほぼ同じ非流動化砂となる。
【0019】
工夫点は、従来の流動化砂に対し、使用される材料砂及水に含まれる陽イオン当量を測定し、得られた陽イオン当量に相当する量を、塑性化剤の使用量として予め設定されている標準添加量から減じた添加量を加えている点にある。ここで、表1は以上のような流動化砂の標準配合例を示している。
【0021】
流動化砂は含水比30〜40%の間で調整されることが好ましい。流動化剤と塑性化剤はそれぞれ乾燥砂1,000kg当たり6.4kg、0.5kg添加される。流動化剤を添加せず含水比調整した砂をポンプで送ろうとしても砂粒子と水が分離し、流動性が失われるためポンプで圧送できない。流動化剤は、材料砂に添加されることにより、砂粒子間にある水の粘性を高め、水の分離を抑制すると共に砂粒子同士が接触することを防いで流動性を維持可能にする。一方、塑性化剤は、流動化砂が地中にポンプ圧送された際、速やかに塑性化し、その後、地中で流動化剤と中和反応と、流動化剤の粘性を除去するために使用されている。
【0022】
流動化剤としては、水溶性ポリマー及びアニオン系高分子凝集剤等が用いられている。具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、アクリルアミド2−メチルプロパンスルフォン酸、ビニルスルフォン酸、スチレンスルフォン酸などの単独重合体あるいはアクリルアミドとの共重合体などのアニオン系高分
子が挙げられる。
【0023】
塑性化剤としては、ポリ塩化アルミニウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウム、塩化第二鉄、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらは、流動化剤に含有される陰イオンを塑性化剤の陽イオンで中和するに好適なものである。そして、流動化剤に含有される陰イオンの量に釣り合う量の陽イオンを含有するよう塑性化剤の添加量が調整されており、表1の標準配合例において、乾燥砂1,000kgに対し添加される塑性化剤0.5kg中には4,750mEq/kgのイオン当量が含まれている。
【0024】
ところで、使用される材料砂及び水に金属イオン等の陽イオンを多く含む場合は、短時間に塑性化が進み流動性が失われることがある。すなわち、流動化砂は、塑性化剤を混入した1時間後〜3時間後にフロー値や貫入応力が規定範囲(
図1中に付記された流動化砂判定試験の欄を参照)に入らなくなることがあり、そのようなケースでは使用される材料砂及び水に陽イオンを多く含んでいることが想定される。陽イオンの含有量が多いと、フロー値試験において試料(流動化砂)が自立したままで、フロー値が100mm近傍となったり、テクスチャー試験の貫入応力が数万Paに達するものもある。このような材料砂については、一時的に陽イオンの働きを抑制するイオン電荷中和用添加剤(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、トリポリりん酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等の電解質物質)を添加することにより、流動化砂混練後の塑性化を抑制することで流動性を維持する構成が採用されている(例えば、特願2016−188204号
、この出願を基に優先権主張出願した特願2017−109646号、その特開2018−53701号公報を参照)。
【0025】
また、材料砂に含まれる水や含水比調整用水に含まれる陽イオンとしては、ナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、マグネシウム(Mg2+)、カルシウム(Ca2+)、アルミニウム(Al3+)、鉄(Fe3+)などがあり、温泉地や火山地付近で多く含まれることがある。また、温泉地や火山地以外にも、産地により砂にこれらの金属イオンを多く含むものがある。なお、含水比調整用水については、多様な成分を含む工業用水や海水の使用を避けて中性の水道水を使用することが好ましい。
【0026】
以上のような知見から、本発明者らは、使用される材料砂及び水に陽イオンが多く含有されているのであれば、その陽イオンも流動化剤の陰イオン中和として有効に働くので、その陽イオン当量だけ塑性化剤を減じて添加するようにしたものである。ここで、砂の間隙水、付着水、更に含水比調整用水に含有されるイオン当量を導くには、液試料にどの様な元素がどのくらいの量が含まれているか分析する必要がある。
【0027】
その分析には一般的に誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法が好適である。ICP発光分析法は、霧化した液試料を誘導結合プラズマに導入すると、プラズマ内部で熱エネルギーにより励起され発光するので、この光を分析器で元素固有のスペクトルに分け、各スペクトルの強さにより試料に含まれる元素の濃度を測定するものである。表2は実際に使用された材料砂C及び水(間隙水や付着水)について調べたICP発光分析法による分析結果を例示している。
【0028】
(表2:ICP発光分析法の分析結果例)
以上の分析結果よりイオン当量を求めることができる。イオン当量は、(原子化/原子量)×含有量で求めることができ、その結果を表3に示している。
【0029】
(表3:材料砂Cの金属イオンとイオン当量)
【0030】
表3より、材料砂Cの場合では、1kgの水の中に1310.6mEq/kgのイオン当量が含まれることになる。この水を乾燥砂1000gに対し仮に350g加えて含水比を35%に調整した場合、イオン当量は(1310.6mEq/kg)×0.35=458.7mEq/kgとなる。この値は、乾燥砂1000gに対し添加された流動化剤の陰イオンを中和するのに必要となる4750mEq/kgの陽イオン当量の9.66%となる。すなわち、この例では、約1割の塑性化剤を削減することができることとなる。塑性化剤は高価な薬剤であるため、その使用量を削減できると経済効果は非常に大きい。この点は、特に施工規模が大きな現場において甚大な効果となる。
【0031】
次に、本出願人が使用される材料砂及び水に含まれている金属イオンの含有量とイオン当量を調べた例を参考用として挙げる。これらからは、金属イオンの含有量は材料砂の採取場所によって大きく異なることが分かる。
【0032】
材料砂1.兵庫県神戸市の有馬温泉A域の水(含水比調整用水)
【0033】
材料砂2.兵庫県神戸市の有馬温泉B域の水(含水比調整用水)
【0034】
材料砂3.兵庫県三木市の水(含水比調整用水)
【0035】
材料砂4.千葉県君津市の材料砂(乾燥砂1kg当たりの含有量とイオン当量)
【0036】
(地盤改良材の製造方法1)
図1は対象の施工域において、材料砂の選定から地盤改良材として流動化砂を製造する場合の配合比設定までの手順を示している。まず、材料砂の選定(ST1)では、選定材料砂について一次判定(ST2)として、粒度試験により粒度分布が調べられて設計範囲に収まっているか否かが判定される(ST3)。この判定では、最大粒径≦9.5mm、細粒分含有率Fc≦5%のものが使用可能、それ以外のものが使用不能と判断される。使用不能と判断された場合は、材料砂の再選定又は粒度調整剤を添加し調整することになる。
【0037】
使用可能と判断された材料砂は二次判定(ST4)として、材料砂及び水が保有する陽イオン当量を計測する陽イオン計測工程(ST5)、塑性化剤の使用量として設定されている標準添加量から、陽イオン計測工程で得られた陽イオン当量を減じた塑性化剤の修正後添加量を算出(ST6)した後、試験配合が行われる(ST7)。
【0038】
試験配合では、前記材料砂の所要量(例えば、1バッチに対応する量)に対し含水比調整用水及び流動化剤として上記表1の標準配合比から算出される各標準添加量を混ぜて流動化砂を製造した後、ST6で算出された塑性化剤の修正後添加量つまり塑性化剤の標準添加量から計測された陽イオン当量に相当する添加量を混入する。なお、ST5〜ST7では、使用される材料砂及び水が保有する陽イオン当量の値として、塑性化剤の標準値より大きくなるようなケースも考えられ、それようなときは試験配合において可塑化剤の添加自体が不要となることもある。
【0039】
以上のようにして、製造された地盤改良材である流動化砂は、その物性値としてテーブルフロー試験、ブリーディング試験、テクスチャー試験により、各物性値が設計範囲内に収まっているか否かが判定される(ST8)。このうち、テーブルフロー試験は、セメントの物性試験方法(JIS R5201−1997)に準拠して行われる。この試験では、フロー値がほぼ170〜230mmであると、設計範囲内であると判断される。ブリーディング試験は、例えばセメントの物性試験方法(JSCE F522−2007)に準拠して行われる。使用ポリエチレン袋は、流動化砂(試料)を入れた状態でその径が50mm、長さが500mm以上のものである。この袋の中に試料を約20cmの高さまで充填した後、3時間経過したときの全試料に対する分離水の割合をブリーディング率(%)とする。この試験では、ブリーディング率が3%以下であると、設計範囲内と判断される。テクスチャー試験は、所定容器に流動化砂(試料)を充填し、テクスチャー試験装置にセットした後、シリンダーを一定速度で上下させ、試料上面から20mmの貫入及び引抜を行う。貫入応力(単位はPa)は、貫入時の最大荷重haを応力に換算した値である。この試験では、貫入応力が6,000Pa以下であると、設計範囲内と判断される。
【0040】
以上の物性値判断は従来と同じであり、試験配合が設計範囲内に収まるまで各添加量を予め決められた範囲内で多少変更しつつ繰り返される(ST9)。但し、どうしても収まらない場合は、材料砂の選定(ST1)に戻って原材料である材料砂自体を変えるか、又は、材料砂に粒度調整剤を添加してから以上の操作が繰り返される。各物性値が設計範囲内に収まっていると判断されると、その材料砂、含水比調整用水、流動化剤、塑性化剤の配合比が設定される(ST10)。
【0041】
(地盤改良材の製造方法2)
図2の製造方法において、同(a)の方は従来の製造方法と同様であり、同(b)の方は(a)で試験配合が設計範囲内にどうしても収まらない場合に
図1と同様な製造方法を採用する構成例である。
【0042】
このため、
図2(a)において、ST1〜ST4までは
図1のST1〜ST4と同じ。ST5の配合試験では、前記材料砂の所要量(例えば、1バッチに対応する量)に対し含水比調整用水及び流動化剤の各標準添加量を混ぜて流動化砂を製造した後、塑性化剤の標準添加量を混入する。その後、製造された地盤改良材である流動化砂は、その物性値としてテーブルフロー試験、ブリーディング試験、テクスチャー試験により、
図1のST8と同じく各物性値が設計範囲内に収まっているか否かが判定される(ST6)。この物性値判断では、試験配合が設計範囲内に収まるまで各添加量を予め決められた範囲内で多少変更しつつ繰り返される(ST7)。
【0043】
そして、どうしても収まらない場合は、
図2(b)へ進む。同(b)のST10〜ST15は、重複した説明を避けるが
図1のST5〜ST10と同じである。
図2の製造方法では、
図1に比べて、
図2(b)のST10がST7で物性値が設計範囲外と判断されたてから陽イオン当量を計測するため、ICP発光分析法の適用機会が少なくなる。
【0044】
なお、以上の形態例や実施例は本発明を何ら制約するものではない。本発明は、請求項で特定される技術要素を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。また、請求項
1で製造された地盤改良材については、文献1や2に開示されているごとく圧入式砂杭造成や砂充填等の地盤改良に利用されることになる。
図3及び
図4は以上の本
件発明でも共通である。
【符号の説明】
【0045】
1・・・・流動化物供給手段
2・・・・砂材料(材料砂)供給手段
3・・・・流動化剤供給手段
4・・・・圧送ポンプ
5・・・・塑性化剤供給装置
23・・・・中空管
34・・・・配管