【実施例】
【0041】
以下、本発明のコンクリート養生シートの具体例を実施例として説明する。本実施例では、コンクリートの養生試験を実施するにあたって、本発明の構成を有するコンクリート養生シート(実施例1〜12)、及び本発明の構成を有さないコンクリート養生シート(比較例1及び2)を夫々作製した(表1)。夫々の実施例及び比較例にかかるコンクリート養生シートの作製手順について説明する。
【0042】
〔実施例1〕
保護シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:30g/m
2、厚み:0.15mm、嵩密度:0.20g/cm
3、吸水性:3.0秒)と、保水性不織布シートとしてメルトブロー不織布(素材:ポリエステル、目付:120g/m
2、厚み:1.5mm、嵩密度:0.08g/cm
3)と、平滑シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:50g/m
2、厚み:0.50mm、嵩密度:0.10g/cm
3)とを、この順に下から積層し、三枚のシートを熱溶着により接合して保水層を形成した。次いで、保水層の上に金属を含まない厚み0.03mmのポリプロピレンフィルムからなる非透湿層を接合し、実施例1のコンクリート養生シートを作製した。実施例1における保水層は、目付が200g/m
2、厚みが2.2mm、嵩密度が0.09g/cm
3であった。また、保水層と非透湿層との接合は樹脂接着により行った。
【0043】
〔実施例2〕
保水層の平滑シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:15g/m
2、厚み:0.10mm、嵩密度:0.15g/cm
3)を使用し、非透湿層としてアルミニウム微粒子を練り込んだ厚み0.05mmのポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様の素材を使用して同様の手順により、実施例2のコンクリート養生シートを作製した。実施例2における保水層は、目付が165g/m
2、厚みが1.8mm、嵩密度が0.09g/cm
3であった。
【0044】
〔実施例3〕
保護シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:15g/m
2、厚み:0.10mm、嵩密度:0.15g/cm
3、吸水性:2.2秒)と、保水性不織布シートとしてニードルパンチ不織布(素材:ポリエステル、目付:120g/m
2、厚み:3.5mm、嵩密度:0.03g/cm
3)とを、この順に下から積層し、二枚のシートを超音波溶着により接合して保水層を形成した。すなわち、実施例3は、平滑シートを含まない保水層とした。次いで、保水層の上にアルミニウム微粒子を練り込んだ厚み0.05mmのポリエチレンフィルムからなる非透湿層を接合し、実施例3のコンクリート養生シートを作製した。実施例3における保水層は、目付が135g/m
2、厚みが3.6mm、嵩密度が0.04g/cm
3であった。また、保水層と非透湿層との接合は超音波溶着により行った。
【0045】
〔実施例4〕
保護シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:50g/m
2、厚み:0.20mm、嵩密度:0.25g/cm
3、吸水性:3.6秒)と、保水性不織布シートとしてニードルパンチ不織布(素材:ポリエステル、目付:120g/m
2、厚み:3.5mm、嵩密度:0.03g/cm
3)とを、この順に下から積層し、二枚のシートをニードルパンチングにより接合して保水層を形成した。すなわち、実施例4は、平滑シートを含まない保水層とした。次いで、保水層の上にアルミニウム微粒子を練り込んだ厚み0.05mmのポリエチレンフィルムからなる非透湿層を接合し、実施例4のコンクリート養生シートを作製した。実施例4における保水層は、目付が170g/m
2、厚みが3.7mm、嵩密度が0.05g/cm
3であった。また、保水層と非透湿層との接合は樹脂接着により行った。
【0046】
〔実施例5〕
保水層の平滑シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:35g/m
2、厚み:0.15mm、嵩密度:0.23g/cm
3)を保水性不織布シートの上にさらに積層したこと以外は、実施例4と同様の素材を使用して同様の手順により、実施例5のコンクリート養生シートを作製した。実施例5における保水層は、目付が205g/m
2、厚みが3.9mm、嵩密度が0.05g/cm
3であった。
【0047】
〔実施例6〕
非透湿層としてアルミニウムペーストを表面に印刷した厚み0.03mmのポリプロピレンフィルムを使用したこと以外は、実施例2と同様の素材を使用して同様の手順により、実施例6のコンクリート養生シートを作製した。実施例6における保水層は、目付が165g/m
2、厚みが1.8mm、嵩密度が0.09g/cm
3であった。
【0048】
〔実施例7〕
保水層の保護シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:30g/m
2、厚み:0.15mm、嵩密度:0.20g/cm
3、吸水性:3.0秒)に、パディングによって吸水加工(下記の処方1)を施したもの(加工後の吸水性:1.0秒未満)を使用し、保水性不織布シートとしてメルトブロー不織布(素材:ポリエステル、目付:240g/m
2、厚み:1.0mm、嵩密度:0.24g/cm
3)を使用したこと以外は、実施例6と同様の素材を使用して同様の手順により、実施例7のコンクリート養生シートを作製した。実施例7における保水層は、目付が285g/m
2、厚みが1.3mm、嵩密度が0.23g/cm
3であった。
(処方1)
・パーマリンUA−99 5重量部
(エーテル系ポリウレタン樹脂(固形分20%)、三洋化成工業株式会社製)
・イソプロピルアルコール 10重量部
・水 85重量部
ピックアップ率:26%
乾燥条件:90℃×20秒
【0049】
〔実施例8〕
保水層の保護シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:15g/m
2、厚み:0.10mm、嵩密度:0.15g/cm
3、吸水性:2.2秒)を使用し、保水性不織布シートとしてメルトブロー不織布(素材:ポリエステル、目付:50g/m
2、厚み:1.0mm、嵩密度:0.05g/cm
3)を使用したこと以外は、実施例6と同様の素材を使用して同様の手順により、実施例8のコンクリート養生シートを作製した。実施例8における保水層は、目付が80g/m
2、厚みが1.2mm、嵩密度が0.07g/cm
3であった。
【0050】
〔実施例9〕
非透湿層としてアルミニウムペーストを表面に印刷した厚み0.03mmのポリプロピレンフィルムを使用したこと以外は、実施例3と同様の素材を使用して同様の手順により、実施例9のコンクリート養生シートを作製した。実施例9における保水層は、目付が135g/m
2、厚みが3.6mm、嵩密度が0.04g/cm
3であった。
【0051】
〔実施例10〕
保護シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:50g/m
2、厚み:0.20mm、嵩密度:0.25g/cm
3、吸水性:3.6秒)と、保水性不織布シートとしてニードルパンチ不織布(素材:ポリエステル、目付:120g/m
2、厚み:3.5mm、嵩密度:0.03g/cm
3)とを、この順に下から積層し、二枚のシートをニードルパンチングにより接合して保水層を形成した。すなわち、実施例10は、平滑シートを含まない保水層とした。次いで、保水層の上にアルミニウムペーストを表面に印刷した厚み0.03mmのポリプロピレンフィルムからなる非透湿層を接合し、実施例10のコンクリート養生シートを作製した。実施例10における保水層は、目付が170g/m
2、厚みが3.7mm、嵩密度が0.05g/cm
3であった。また、保水層と非透湿層との接合は樹脂接着により行った。
【0052】
〔実施例11〕
保水層の平滑シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:35g/m
2、厚み:0.15mm、嵩密度:0.23g/cm
3)を保水性不織布シートの上にさらに積層したこと以外は、実施例10と同様の素材を使用して同様の手順により、実施例11のコンクリート養生シートを作製した。実施例11における保水層は、目付が205g/m
2、厚みが3.9mm、嵩密度が0.05g/cm
3であった。
【0053】
〔実施例12〕
保護シートとしてクロスシート(素材:ポリプロピレン、目付:90g/m
2、厚み:0.35mm、嵩密度:0.26g/cm
3、吸水性:4.8秒)と、保水性不織布シートとしてニードルパンチ不織布(素材:ポリエステル、目付:120g/m
2、厚み:3.5mm、嵩密度:0.03g/cm
3)と、平滑シートとしてフィルム(素材:ポリプロピレン、目付:30g/m
2、厚み:0.03mm、嵩密度:1.00g/cm
3)とを、この順に下から積層し、三枚のシートを熱溶着により接合して保水層を形成した。次いで、保水層の上にアルミニウムペーストを表面に印刷した厚み0.03mmのポリプロピレンフィルムからなる非透湿層を接合し、実施例12のコンクリート養生シートを作製した。実施例12における保水層は、目付が240g/m
2、厚みが3.9mm、嵩密度が0.06g/cm
3であった。また、保水層と非透湿層との接合は樹脂接着により行った。
【0054】
〔比較例1〕
保水性不織布シートであるニードルパンチ不織布(素材:ポリエステル、目付:120g/m
2、厚み:3.5mm、嵩密度:0.03g/cm
3)をそのまま保水層とした。次いで、保水層の上にアルミニウムペーストを表面に印刷した厚み0.03mmのポリプロピレンフィルムからなる非透湿層を接合し、比較例1のコンクリート養生シートを作製した。保水層と非透湿層との接合は樹脂接着により行った。
【0055】
〔比較例2〕
保護シートであるスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:30g/m
2、厚み:0.10mm、嵩密度:0.30g/cm
3、吸水性:3.0秒)をそのまま保水層とした。次いで、保水層の上にアルミニウムペーストを表面に印刷した厚み0.03mmのポリプロピレンフィルムからなる非透湿層を接合し、比較例2のコンクリート養生シートを作製した。保水層と非透湿層との接合は樹脂接着により行った。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示した実施例1〜12、並びに比較例1及び2のコンクリート養生シートについて、表面(非透湿層の表面)の静摩擦係数(JIS P 8147(傾斜法)に準拠して実施)、長手方向及び幅方向の引張強度(JIS L 1096 8.12.1 A法に準拠して実施)、長手方向及び幅方向の引裂強度(JIS L 1096 8.15.1 A法に準拠して実施)、並びに飽和保水量を計測した。静摩擦係数については、タテ6cm×ヨコ3cmの500gの平板に安全靴を模したゴムシート(和気産業株式会社製の天然ゴム系ゴムシート、GS−04)を被覆し、これを非透湿層の上に載置して徐々に傾斜させ、平板が滑り出した角度に基づいて算出した。飽和保水量については、10cm角に切り出したコンクリート養生シートの重量(w1)を測定し、次いでこのシートを水槽に5分間浸漬し、シートを金網に載せて水槽から水平の状態のまま取り出し、30秒静置した後のシートの重量(w2)を測定し、両重量の差(w2−w1)から求めた。さらに、これらの測定結果から、コンクリートの耐乾燥性、及び養生後の保護シートの表面状態を評価した。評価は、以下の基準に従って行った。
【0058】
(1)コンクリートの耐乾燥性
20cm角に切り出したコンクリート養生シートに飽和保水量の水分を吸収させ、これをコンクリートの上に水平に配置し、ハロゲンランプで光を照射して表面温度が50℃となるように調整した。24時間経過後、コンクリート養生シートの保水量を測定した。そして、保水量が500g/m
2以上を「○」、100g/m
2以上500g/m
2未満を「△」、100g/m
2未満を「×」とした。
(2)養生後の保護シート表面状態
一週間に亘ってコンクリートを養生したコンクリート養生シートをコンクリート表面から剥がし、当該コンクリート養生シートの保水層のうちコンクリートに接していた面(保護シートの表面)の状態を目視により観察した。そして、シート表面に破損が見られなかったものを「○」、シート表面に破損がやや見られたものを「△」、シート表面に破損が著しく見られたものを「×」とした。
【0059】
静摩擦係数、引張強度、引裂強度、及び飽和保水量の測定結果、並びにコンクリートの耐乾燥性、及び養生後の保護シート表面状態の評価結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例1〜12のコンクリート養生シートは、引張強度及び引裂強度が実用上問題ないレベルであり、静摩擦係数が一定以上に確保されており、安全性が高い製品であった。そして、コンクリートの養生後にコンクリート表面からコンクリート養生シートを剥がしたとき、保水層を形成する保護シートの表面に毛羽等の部分的な破損は見られず、強度が十分に保たれていて繰り返し使用が可能な状態であった。また、コンクリート側にも毛羽等の異物は付着しておらず、良好な表面状態を維持していた。さらに、コンクリート養生シートの飽和保水量が十分確保されているため、保水量の低下が少なく、コンクリートの耐乾燥性についても良好な結果であった。
【0062】
これに対し、比較例1のコンクリート養生シートは、コンクリートの養生後にコンクリート表面から剥がすと、保護シートの表面の一部に強度低下を引き起こす異常が見られた。比較例2のコンクリート養生シートは、コンクリート養生中にコンクリートにひび割れが見られ、耐乾燥性に問題があった。従って、比較例1及び2のコンクリート養生シートは、繰り返し使用することが困難であり、改善が望まれる製品であった。