特許第6916602号(P6916602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916602
(24)【登録日】2021年7月20日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】コンクリート養生シート
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20210729BHJP
【FI】
   E04G21/02 104
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-155428(P2016-155428)
(22)【出願日】2016年8月8日
(65)【公開番号】特開2017-36657(P2017-36657A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2019年7月31日
(31)【優先権主張番号】特願2015-158048(P2015-158048)
(32)【優先日】2015年8月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】沢崎 泰寿
(72)【発明者】
【氏名】川島 健治
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−196396(JP,A)
【文献】 特開2013−245526(JP,A)
【文献】 特開2011−144480(JP,A)
【文献】 特開2006−348414(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3181091(JP,U)
【文献】 特開2003−343086(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3169229(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設したコンクリートを被覆して養生するコンクリート養生シートであって、
前記コンクリートの上に配置して当該コンクリートの表面の湿潤状態を保持する保水層と、前記保水層からの水分の蒸発を防止する非透湿層とを備え、
前記保水層は、前記コンクリートの表面に接触する保護シートと、前記保護シートに重ねられる保水性不織布シートとを含み
前記保水性不織布シートは、嵩密度が0.02〜0.25g/cmであり
前記保護シートの嵩密度をaとし、前記保水性不織布シートの嵩密度をbとしたとき、嵩密度比(a:b)が0.5:1〜9:1に設定されている、コンクリート養生シート。
【請求項2】
前記保水層は、前記非透湿層に接触する平滑シートを含む請求項1に記載のコンクリート養生シート。
【請求項3】
前記非透湿層は、非透湿性フィルムに金属粒子を練り込んだ金属粒子含有フィルムである請求項1又は2に記載のコンクリート養生シート。
【請求項4】
前記非透湿層は、非透湿性フィルムの少なくとも片面に金属膜を形成した金属膜形成フィルムである請求項1又は2に記載のコンクリート養生シート。
【請求項5】
前記非透湿層は、JIS P 8147に準拠して測定される表面の静摩擦係数が0.25以上である請求項1〜4の何れか一項に記載のコンクリート養生シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打設したコンクリートを被覆して養生するコンクリート養生シートに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート工事を施工するにあたっては、コンクリートを打設後、一定期間に亘って表面を養生シートで覆うことにより、急激な水分蒸発によるヒビ割れ等の防止が図られている。従来のコンクリート養生シートとして、保湿シートと保温シートとを積層したものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1には、保湿シートとして不織布又は織布を使用し、保温シートとして軟質樹脂発泡体を使用したコンクリート養生シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−196396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリート養生シートは、コンクリートに接触させて使用するため、保水性に優れていることに加えて、コンクリートに影響を及ぼさない安定性が求められる。この点に関し、特許文献1のコンクリート養生シートは、保湿シートの上に保温シートを積層することで養生中のコンクリートの保温性を高めるものであるが、保湿シートから水分が蒸発することを保温シートで防止するようには構成されていない。このため、例えば、気温が高い夏季における養生では、保湿シートに含まれる水分が容易に保温シートを透過して外部に蒸発し、コンクリートの乾燥が進行してヒビ割れが発生する虞がある。
【0005】
また、特許文献1のコンクリート養生シートは、保湿シートが直接コンクリートに接触することになるため、養生後にコンクリート養生シートをコンクリートから剥がすと、保湿シートが毛羽立って脆弱になることがある。そして、このようなコンクリート養生シートを繰り返し使用すると、徐々に強度が低下し、裂けや破れが発生する虞がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、養生中のコンクリートの過度な乾燥を防止しながら、使用による強度低下が起こり難いコンクリート養生シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明にかかるコンクリート養生シートの特徴構成は、
打設したコンクリートを被覆して養生するコンクリート養生シートであって、
前記コンクリートの上に配置して当該コンクリートの表面の湿潤状態を保持する保水層と、前記保水層からの水分の蒸発を防止する非透湿層とを備え、
前記保水層は、前記コンクリートの表面に接触する保護シートと、前記保護シートに重ねられる保水性不織布シートとを含むことにある。
【0008】
本構成のコンクリート養生シートによれば、コンクリートの上に配置して当該コンクリートの表面の湿潤状態を保持する保水層と、保水層からの水分の蒸発を防止する非透湿層とを備えるため、コンクリート養生中は保水層の保水効果と非透湿層の水分蒸発防止効果により、コンクリート表面の湿潤状態を維持し続けることができる。その結果、過度な乾燥によるコンクリート表面のヒビ割れを防止することができる。ここで、保水層は、コンクリートの表面に接触する保護シートと、保護シートに重ねられる保水性不織布シートとを含む。これにより、保護シートによる保水性不織布シートの表面保護と、保水性不織布シートによるコンクリートの乾燥防止とを両立することができる。保水性不織布シートは、コンクリートの表面に直接接触しないため、養生後にコンクリート養生シートをコンクリートから剥がしても、保水性不織布シートの表面がコンクリートに引っ掛かることがないため毛羽立ち等が発生せず、コンクリート養生シートの強度低下が起こり難い。従って、本構成のコンクリート養生シートは、繰り返し使用にも耐え得るものとなる。
【0009】
本発明にかかるコンクリート養生シートにおいて、
前記保水層は、前記非透湿層に接触する平滑シートを含むことが好ましい。
【0010】
本構成のコンクリート養生シートによれば、保水層に含まれる保水性不織布シートの表面が平滑シートによって平坦化されるため、非透湿層を保水層の上に密着させることができる。その結果、非透湿層の剥離が抑制され、コンクリート養生中に保水層から水分が蒸発することを効果的に防止することができる。
【0011】
本発明にかかるコンクリート養生シートにおいて、
前記保水性不織布シートは、嵩密度が0.02〜0.25g/cmであることが好ましい。
【0012】
本構成のコンクリート養生シートによれば、保水層に含まれる保水性不織布シートの嵩密度が上記の適切な範囲に設定されているため、保水層による保水効果を長期に亘って維持することができる。
【0013】
本発明にかかるコンクリート養生シートにおいて、
前記非透湿層は、非透湿性フィルムに金属粒子を練り込んだ金属粒子含有フィルムであることが好ましい。
【0014】
本構成のコンクリート養生シートによれば、金属粒子が太陽の輻射熱を反射するため、非透湿層の遮熱性が高まり、保水層の過度な温度上昇が抑制される。また、夜間若しくは寒冷な時期では、コンリートから発する水和熱がシート内に留まることで保温性が高まり、より好適な温度を維持することが可能となる。その結果、コンクリート養生中に保水層から水分が蒸発することを効果的に防止することができる。また、シート内の温度差をより小さくすることができ、コンクリート表面の品質が向上する。さらに、金属粒子は非透湿性フィルムに練り込まれているため、金属粒子の剥離が起こらず、長期に亘るコンクリートの養生にも対応することができる。
【0015】
本発明にかかるコンクリート養生シートにおいて、
前記非透湿層は、非透湿性フィルムの少なくとも片面に金属膜を形成した金属膜形成フィルムであることが好ましい。
【0016】
本構成のコンクリート養生シートによれば、金属膜が太陽の輻射熱を反射するため、非透湿層の遮熱性が高まり、保水層の過度な温度上昇が抑制される。また、夜間若しくは寒冷な時期では、コンリートから発する水和熱がシート内に留まることで保温性が高まり、より好適な温度を維持することが可能となる。その結果、コンクリート養生中に保水層から水分が蒸発することを効果的に防止することができる。また、シート内の温度差をより小さくすることができ、コンクリート表面の品質が向上する。さらに、金属膜は非透湿性フィルムの少なくとも片面に形成されているため、非透湿層は確実に金属膜で被覆されることとなり、優れた遮熱性を実現することができる。
【0017】
本発明にかかるコンクリート養生シートにおいて、
前記非透湿層は、JIS P 8147に準拠して測定される表面の静摩擦係数が0.25以上であることが好ましい。
【0018】
本構成のコンクリート養生シートによれば、非透湿層の表面の静摩擦係数が上記の適切な範囲に設定されているため、非透湿層の表面をコンクリートと反対側(大気側)に位置するようにすると、仮にコンクリート養生シートの上を人が歩いても滑り難く、安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の代表的なコンクリート養生シートの概略断面図である。
図2図2は、第1実施形態にかかるコンクリート養生シートの概略断面図である。
図3図3は、第2実施形態にかかるコンクリート養生シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のコンクリート養生シートの実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下の構成に限定されることを意図しない。
【0021】
図1は、本発明の代表的なコンクリート養生シート100の概略断面図である。なお、図1は、コンクリート養生シート100の各構成の位置関係を示すものであるが、各層の厚み関係については正確に反映したものではない。コンクリート養生シート100は、保水層10と非透湿層20とを備える。保水層10は、コンクリート工事の施工により打設したコンクリートGの上に配置することにより、当該コンクリートGの表面の湿潤状態を保持するものである。保水層10は、コンクリートGの表面に接触する保護シート11と、保護シート11に重ねられる保水性不織布シート12とを含む。また、保水層10は、追加の構成として非透湿層20に接触する平滑シート13を含むこともできる。非透湿層20は、保水層10からの水分の蒸発を防止するものであり、非透湿性フィルム21を含む。以下、コンクリート養生シート100を構成する各シート及びフィルムについて、詳細に説明する。
【0022】
保護シート11は、主に、その上に積層される保水性不織布シート12の表面を保護する機能を有し、さらに、下のコンクリートGの表面も保護することができる。そのため、保護シート11は、毛羽立ちの少ない平滑な表面形状を有するシートが使用される。また、保護シート11は、上方の保水性不織布シート12と下方のコンクリートGとの間で水分が移動できるように、一定の透水性を有することが好ましい。
【0023】
保護シート11は、水分を十分に浸透可能なように、吸水性(JIS L 1097 滴下法に準拠して実施)が5秒以下であることが好ましい。吸水性が5秒を超える場合、保護シートの透水性が低下し、上方の保水性不織布シート12と下方のコンクリートGとの間で水分が十分に移動できない場合がある。
【0024】
保護シート11の例として、スパンボンド不織布、ワリフ(登録商標)シート、クロスシート、有孔フィルムが挙げられる。これらのシートうち、スパンボンド不織布は、平滑性及び保護性に優れ、保水性を有しているため、保護シート11として好適に使用可能である。保護シート11の素材は、例えば、合成繊維であるエチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体又は共重合体等のポリオレフィン系繊維、環状ポリオレフィン等の非結晶ポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール繊維、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系繊維、ポリウレタン、ポリウレタンウレア、アミン−ウレタン共重合体等のポリウレタン系繊維等から選択される少なくとも一種を用いることができる。これらのうち、耐久性の観点から、ポリエステル系繊維であるポリエステル、又はポリオレフィン系繊維であるポリプロピレンが好適である。
【0025】
保護シート11は平滑性及び保護性に優れているため、養生後にコンクリート養生シート100をコンクリートGから剥がしても、保水性不織布シート12及びコンクリートGに与える影響は少なく、コンクリート養生シート100自体の強度低下を抑制できるので、繰り返しの使用が可能となる。保護シート11の厚みは、0.01〜2mmが好ましい。厚みが0.01mm未満の場合、養生の際に外部からの物理的応力によって保護シート11が裂けたり、破れたりする虞がある。厚みが2mmを超える場合、保護シート11の柔軟性が損なわれるため、コンクリートGの表面形状に追随し難くなる。保護シート11の嵩密度は、0.08〜0.5g/cmが好ましく、0.15〜0.25g/cmがより好ましい。嵩密度が0.08g/cm未満の場合、強度が不足し、養生の際に外部からの物理的応力によって保護シート11が裂けたり、破れたりする虞がある。嵩密度が0.5g/cmを超える場合、強度は良好となるが、柔軟性が劣る虞がある。
【0026】
保護シート11は、片面及び/又は内部に、界面活性剤、浸透剤、吸水剤等の添加剤を付与してもよい。付与法としては、例えば、パディング、グラビア、フレキソ、ナイフコート等が挙げられるが、これらの方法に制限されるものではない。保護シート11にこれらの添加剤を付与すると、水分の浸透性が向上し、保水層10に水分を速やかに浸透させることが可能となる。
【0027】
保水性不織布シート12は、主にコンクリートGの表面の乾燥を防止する機能を有する。そのため、保水性不織布シート12は、水分を十分に保持可能なように、嵩密度が0.02〜0.25g/cmのシートが使用される。嵩密度が0.02g/cm未満の場合、保水性不織布シート12から水分が抜け落ち易くなり、コンクリートGの乾燥を有効に防止することができない。嵩密度が0.25g/cmを超える場合、保水性不織布シート12の保水性及び柔軟性が低下し、コンクリートGの表面に保水性不織布シート12を密着できない虞がある。保水性不織布シート12の例として、メルトブロー不織布、ニードルパンチ不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布が挙げられる。これらのシートのうち、メルトブロー不織布及びニードルパンチ不織布は、嵩密度を大きくして強度を維持しながら繊維間に多量の水分を保持することができるため、保水性不織布シート12として好適に使用可能である。保水性不織布シート12の素材は、例えば、合成繊維であるエチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体又は共重合体等のポリオレフィン系繊維、環状ポリオレフィン等の非結晶ポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール繊維、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系繊維、ポリウレタン、ポリウレタンウレア、アミン−ウレタン共重合体等のポリウレタン系繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、綿、麻等の天然繊維等から選択される少なくとも一種を用いることができる。これらのうち、耐久性の観点から、保護シート11の素材と同様に、ポリエステル系繊維であるポリエステル、又はポリオレフィン系繊維であるポリプロピレンが好適である。保護シート11の素材と保水性不織布シート12の素材とを合わせることにより、両者の間で良好な密着性を得ることができる。
【0028】
なお、コンクリート養生シート100を保水性と強度とのバランスに優れたものとするためには、保護シート11の嵩密度と保水性不織布シート12の嵩密度との比率を最適な範囲に設定することが有効となる。保護シート11の嵩密度をaとし、保水性不織布シート12の嵩密度をbとすると、両者の嵩密度比(a:b)は、0.5:1〜9:1が好ましく、0.8:1〜4:1がより好ましい。上記の嵩密度比の範囲であれば、保護シート11により損傷が軽減され、且つ十分な保水性を有するコンクリート養生シート100を得ることが可能となる。
【0029】
平滑シート13は、保水層10に対する非透湿層20の密着性を向上させる機能を有する。ここで、保水層10の表面には、保水性不織布シート12を構成する繊維に起因した微細な凹凸が形成されている。そのため、保水層10に非透湿層20を直接重ねて接着しようとしても、凹凸の存在によって実質的な接触面積が小さくなり、十分な接着強度を達成できない場合がある。そこで、本発明では、保水層10を保護シート11、保水性不織布シート12、及び平滑シート13の三層構造とし、保水性不織布シート12を露出させないことで、保水性不織布シート12と非透湿層20とを直接接触させないように構成することができる。この場合、保水性不織布シート12は平滑シート13によって表面が平滑化されるため、三層構造を有する保水層10の上に非透湿層20を重ねて接着すると、両者が密着して十分な接着強度を達成することができる。平滑シート13には、例えば、スパンボンド不織布、ワリフ(登録商標)シート、クロスシート、フィルム等のシートが使用可能である。これらのシートのうち、スパンボンド不織布は、平滑性及び密着性に優れ、保水性を有しているため、平滑シート13として好適に使用可能である。平滑シート13の素材は、例えば、合成繊維であるエチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体又は共重合体等のポリオレフィン系繊維、環状ポリオレフィン等の非結晶ポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール繊維、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系繊維、ポリウレタン、ポリウレタンウレア、アミン−ウレタン共重合体等のポリウレタン系繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、綿、麻等の天然繊維等から選択される少なくとも一種を用いることができる。これらのうち、耐久性の観点から、保水性不織布シート12の素材と同様に、ポリエステル系繊維であるポリエステル、又はポリオレフィン系繊維であるポリプロピレンが好適である。保水性不織布シート12の素材と平滑シート13の素材とを合わせることにより、両者の間で良好な密着性を得ることができる。
【0030】
保水層10を構成する各シート間の接着は、熱溶着、ニードルパンチング、超音波溶着等の方法により実施することができる。このとき、シート間を全面接着するのではなく、線状、格子状、ドット状、スプレー状等のパターンで部分的に接着すれば、水分が保水層10の内部に浸透し易くなるため、保水層10の保水性(保水量)を向上させることができる。
【0031】
保水層10は、少なくとも片面及び/又は内部に、界面活性剤、浸透剤、吸水剤等の添加剤を付与することも可能である。保水層10にこれらの添加剤を付与すると、保水層10に水分を速やかに浸透させることが可能となり、結果として保水性(保水量)を向上させることができる。
【0032】
非透湿性フィルム21は、保水層10からの水分の蒸発を防止するため、実質的に水分を透過させない素材が使用される。非透湿性フィルム21には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の合成樹脂をベースとしたフィルムが使用可能である。
【0033】
非透湿層20のコンクリートGと反対側(大気側)の表面には、防滑樹脂を含む防滑層(図示せず)を積層することも可能である。防滑樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらのうち、耐アルカリ性に良好なオレフィン系樹脂又はアクリル系樹脂が好適に用いられる。防滑層の積層法としては、グラビア法、フレキソ法、ナイフコート法、コンマコート法等が挙げられる。
【0034】
非透湿性フィルム21には、気温が高い夏季や気温差が大きい時期においてコンクリートGの養生に影響が出ないように、遮熱機能及び保温機能も求められる。そこで、非透湿性フィルム21には、遮熱効果がある金属が付与される。非透湿性フィルム21への金属の付与形態として、以下の第1実施形態及び第2実施形態を例示する。
【0035】
<第1実施形態>
図2は、第1実施形態にかかるコンクリート養生シート100の概略断面図である。コンクリート養生シート100は、非透湿性フィルム21に金属粒子22を練り込むことにより、非透湿層20を構成したものである。保水層10の構成については、図1に示した代表的なコンクリート養生シート100と同様である。金属粒子22の素材は、アルミニウム、チタン、鉄、ニッケル、銅、銀、ステンレス等が挙げられるが、生産性や経済性の点からアルミニウムが好適である。金属粒子22としてアルミニウム微粒子を使用する場合、耐アルカリ性を向上させ、アルミニウム微粒子の酸化、変色、溶解を防止するため、アルミニウム微粒子の表面をアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等でコーティングしておくことが好ましい。金属粒子22のサイズは、nmオーダーからμmオーダーのものまで使用可能である。金属粒子22の添加量は、非透湿性フィルム21に対して1〜10重量%に調整される。添加量が1重量%未満の場合、十分な遮熱効果を得ることが困難となる。添加量が10重量%を超える場合、非透湿性フィルム21の内部で剥離等が発生して強度が低下する虞がある。非透湿性フィルム21には金属粒子22に加えて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、顔料等の添加剤を含有させることも可能である。非透湿性フィルム21の素材は、上述のとおり、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等を使用可能であるが、加工性の点から高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、及び直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)が好適である。非透湿性フィルム21は、押し出し成型法やインフレーション法により製膜することができ、膜厚は20〜150μmに調整される。
【0036】
<第2実施形態>
図3は、第2実施形態にかかるコンクリート養生シート100の概略断面図である。コンクリート養生シート100は、非透湿性フィルム21の少なくとも片面に金属膜23を形成することにより、非透湿層20を構成したものである。図3では、非透湿性フィルム21の上面に金属膜23を形成した例を示してある。保水層10の構成については、図1に示した代表的なコンクリート養生シート100と同様である。金属膜23の素材は、アルミニウム、チタン、鉄、ニッケル、銅、銀、ステンレス等が挙げられるが、生産性や経済性の点からアルミニウム及びステンレスが好適である。金属膜23は、印刷法又は蒸着法により非透湿性フィルム21の表面に形成することができる。
【0037】
印刷法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、ナイフコート法、コンマコート法等が挙げられる。印刷法では、nmオーダー乃至μmオーダーの金属粒子をバインダーとともに溶媒に分散させた金属ペーストが使用される。金属ペーストには、光輝性を向上させるため、パール顔料を添加することも可能である。非透湿性フィルム21への金属ペーストの塗布量は、0.5〜5g/mに調整される。塗布量が0.5g/m未満の場合、十分な遮熱効果を得ることが困難となる。塗布量が5g/mを超える場合、非透湿性フィルム21と金属膜23との間で剥離が発生する虞がある。非透湿性フィルム21への金属ペーストの印刷面積は、非透湿性フィルム21の一面につき40%以上とすることが好ましい。印刷面積が40%未満の場合、十分な遮熱効果を得ることが困難となる。なお、金属ペーストとしてアルミニウム微粒子を含むものを使用する場合、耐アルカリ性を向上させ、アルミニウム微粒子の酸化、変色、溶解を防止するため、アルミニウム微粒子の表面をアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等でコーティングしておくことが好ましい。また、アルミニウム微粒子とともに使用するバインダーについても、耐アルカリ性を有する樹脂を選択することが好ましい。
【0038】
蒸着法としては、物理蒸着法(PVD)又は化学蒸着法(CVD)の何れの方法でも可能である。非透湿性フィルム21への金属の蒸着厚は、20〜100nmに調整される。蒸着厚が20nm未満の場合、十分な遮熱効果を得ることが困難となる。蒸着厚が100nmを超える場合、それ以上の遮熱効果の向上は見込めないため不経済となる。
【0039】
印刷法又は蒸着法に使用する非透湿性フィルム21の素材は、上述のとおり、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等を使用可能である。非透湿性フィルム21は、押し出し成型法やインフレーション法により製膜することができ、その際の膜厚は10〜100μmに調整される。第2実施形態における非透湿層20は、非透湿性フィルム21の面全体に金属膜23が形成されることから、非透湿層20の遮熱効率を比較的高くすることができる。このため、第1実施形態における非透湿層20よりも膜厚を小さくしても、十分な遮熱効果を得ることができる。なお、第2実施形態においては、金属膜23の酸化、変色、溶解を防止するため、金属膜23の上に樹脂をコーティングしたり、保護フィルムを重ねてラミネート加工することも可能である。コーティングに使用する樹脂としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン系樹脂等が挙げられる。ラミネート加工に使用する保護フィルムとしては、PPフィルム、PETフィルム等が挙げられる。ラミネート加工の方法は、ドライラミネート、ウェットラミネート、熱ラミネート等を採用することができる。
【0040】
その他、本発明のコンクリート養生シート100に求められる特性として、飽和保水量、引張強度、引裂強度などが挙げられ、これらの諸特性を最適化することが好ましい。飽和保水量は、好ましくは500g/m以上であり、より好ましくは1000g/m以上である。飽和保水量が500g/m以上であれば、長期の湿潤状態を維持するために十分な水分量を維持することができ、耐乾燥性が向上する。引張強度は、長手方向及び幅方向において、好ましくは50N/5cm以上であり、より好ましくは150N/5cm以上である。引張強度が50N/5cm以上であれば、十分な強度を確保できるため、コンクリート養生シート100の施工時に裂けや破れが起こり難い。引裂強度は、長手方向及び幅方向において、好ましくは5N以上であり、より好ましくは10N以上である。引裂強度が5N以上であれば、コンクリート養生シート100の施工時の物理的応力による裂けや破れを軽減することができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明のコンクリート養生シートの具体例を実施例として説明する。本実施例では、コンクリートの養生試験を実施するにあたって、本発明の構成を有するコンクリート養生シート(実施例1〜12)、及び本発明の構成を有さないコンクリート養生シート(比較例1及び2)を夫々作製した(表1)。夫々の実施例及び比較例にかかるコンクリート養生シートの作製手順について説明する。
【0042】
〔実施例1〕
保護シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:30g/m、厚み:0.15mm、嵩密度:0.20g/cm、吸水性:3.0秒)と、保水性不織布シートとしてメルトブロー不織布(素材:ポリエステル、目付:120g/m、厚み:1.5mm、嵩密度:0.08g/cm)と、平滑シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:50g/m、厚み:0.50mm、嵩密度:0.10g/cm)とを、この順に下から積層し、三枚のシートを熱溶着により接合して保水層を形成した。次いで、保水層の上に金属を含まない厚み0.03mmのポリプロピレンフィルムからなる非透湿層を接合し、実施例1のコンクリート養生シートを作製した。実施例1における保水層は、目付が200g/m、厚みが2.2mm、嵩密度が0.09g/cmであった。また、保水層と非透湿層との接合は樹脂接着により行った。
【0043】
〔実施例2〕
保水層の平滑シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:15g/m、厚み:0.10mm、嵩密度:0.15g/cm)を使用し、非透湿層としてアルミニウム微粒子を練り込んだ厚み0.05mmのポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様の素材を使用して同様の手順により、実施例2のコンクリート養生シートを作製した。実施例2における保水層は、目付が165g/m、厚みが1.8mm、嵩密度が0.09g/cmであった。
【0044】
〔実施例3〕
保護シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:15g/m、厚み:0.10mm、嵩密度:0.15g/cm、吸水性:2.2秒)と、保水性不織布シートとしてニードルパンチ不織布(素材:ポリエステル、目付:120g/m、厚み:3.5mm、嵩密度:0.03g/cm)とを、この順に下から積層し、二枚のシートを超音波溶着により接合して保水層を形成した。すなわち、実施例3は、平滑シートを含まない保水層とした。次いで、保水層の上にアルミニウム微粒子を練り込んだ厚み0.05mmのポリエチレンフィルムからなる非透湿層を接合し、実施例3のコンクリート養生シートを作製した。実施例3における保水層は、目付が135g/m、厚みが3.6mm、嵩密度が0.04g/cmであった。また、保水層と非透湿層との接合は超音波溶着により行った。
【0045】
〔実施例4〕
保護シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:50g/m、厚み:0.20mm、嵩密度:0.25g/cm、吸水性:3.6秒)と、保水性不織布シートとしてニードルパンチ不織布(素材:ポリエステル、目付:120g/m、厚み:3.5mm、嵩密度:0.03g/cm)とを、この順に下から積層し、二枚のシートをニードルパンチングにより接合して保水層を形成した。すなわち、実施例4は、平滑シートを含まない保水層とした。次いで、保水層の上にアルミニウム微粒子を練り込んだ厚み0.05mmのポリエチレンフィルムからなる非透湿層を接合し、実施例4のコンクリート養生シートを作製した。実施例4における保水層は、目付が170g/m、厚みが3.7mm、嵩密度が0.05g/cmであった。また、保水層と非透湿層との接合は樹脂接着により行った。
【0046】
〔実施例5〕
保水層の平滑シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:35g/m、厚み:0.15mm、嵩密度:0.23g/cm)を保水性不織布シートの上にさらに積層したこと以外は、実施例4と同様の素材を使用して同様の手順により、実施例5のコンクリート養生シートを作製した。実施例5における保水層は、目付が205g/m、厚みが3.9mm、嵩密度が0.05g/cmであった。
【0047】
〔実施例6〕
非透湿層としてアルミニウムペーストを表面に印刷した厚み0.03mmのポリプロピレンフィルムを使用したこと以外は、実施例2と同様の素材を使用して同様の手順により、実施例6のコンクリート養生シートを作製した。実施例6における保水層は、目付が165g/m、厚みが1.8mm、嵩密度が0.09g/cmであった。
【0048】
〔実施例7〕
保水層の保護シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:30g/m、厚み:0.15mm、嵩密度:0.20g/cm、吸水性:3.0秒)に、パディングによって吸水加工(下記の処方1)を施したもの(加工後の吸水性:1.0秒未満)を使用し、保水性不織布シートとしてメルトブロー不織布(素材:ポリエステル、目付:240g/m、厚み:1.0mm、嵩密度:0.24g/cm)を使用したこと以外は、実施例6と同様の素材を使用して同様の手順により、実施例7のコンクリート養生シートを作製した。実施例7における保水層は、目付が285g/m、厚みが1.3mm、嵩密度が0.23g/cmであった。
(処方1)
・パーマリンUA−99 5重量部
(エーテル系ポリウレタン樹脂(固形分20%)、三洋化成工業株式会社製)
・イソプロピルアルコール 10重量部
・水 85重量部
ピックアップ率:26%
乾燥条件:90℃×20秒
【0049】
〔実施例8〕
保水層の保護シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:15g/m、厚み:0.10mm、嵩密度:0.15g/cm、吸水性:2.2秒)を使用し、保水性不織布シートとしてメルトブロー不織布(素材:ポリエステル、目付:50g/m、厚み:1.0mm、嵩密度:0.05g/cm)を使用したこと以外は、実施例6と同様の素材を使用して同様の手順により、実施例8のコンクリート養生シートを作製した。実施例8における保水層は、目付が80g/m、厚みが1.2mm、嵩密度が0.07g/cmであった。
【0050】
〔実施例9〕
非透湿層としてアルミニウムペーストを表面に印刷した厚み0.03mmのポリプロピレンフィルムを使用したこと以外は、実施例3と同様の素材を使用して同様の手順により、実施例9のコンクリート養生シートを作製した。実施例9における保水層は、目付が135g/m、厚みが3.6mm、嵩密度が0.04g/cmであった。
【0051】
〔実施例10〕
保護シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:50g/m、厚み:0.20mm、嵩密度:0.25g/cm、吸水性:3.6秒)と、保水性不織布シートとしてニードルパンチ不織布(素材:ポリエステル、目付:120g/m、厚み:3.5mm、嵩密度:0.03g/cm)とを、この順に下から積層し、二枚のシートをニードルパンチングにより接合して保水層を形成した。すなわち、実施例10は、平滑シートを含まない保水層とした。次いで、保水層の上にアルミニウムペーストを表面に印刷した厚み0.03mmのポリプロピレンフィルムからなる非透湿層を接合し、実施例10のコンクリート養生シートを作製した。実施例10における保水層は、目付が170g/m、厚みが3.7mm、嵩密度が0.05g/cmであった。また、保水層と非透湿層との接合は樹脂接着により行った。
【0052】
〔実施例11〕
保水層の平滑シートとしてスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:35g/m、厚み:0.15mm、嵩密度:0.23g/cm)を保水性不織布シートの上にさらに積層したこと以外は、実施例10と同様の素材を使用して同様の手順により、実施例11のコンクリート養生シートを作製した。実施例11における保水層は、目付が205g/m、厚みが3.9mm、嵩密度が0.05g/cmであった。
【0053】
〔実施例12〕
保護シートとしてクロスシート(素材:ポリプロピレン、目付:90g/m、厚み:0.35mm、嵩密度:0.26g/cm、吸水性:4.8秒)と、保水性不織布シートとしてニードルパンチ不織布(素材:ポリエステル、目付:120g/m、厚み:3.5mm、嵩密度:0.03g/cm)と、平滑シートとしてフィルム(素材:ポリプロピレン、目付:30g/m、厚み:0.03mm、嵩密度:1.00g/cm)とを、この順に下から積層し、三枚のシートを熱溶着により接合して保水層を形成した。次いで、保水層の上にアルミニウムペーストを表面に印刷した厚み0.03mmのポリプロピレンフィルムからなる非透湿層を接合し、実施例12のコンクリート養生シートを作製した。実施例12における保水層は、目付が240g/m、厚みが3.9mm、嵩密度が0.06g/cmであった。また、保水層と非透湿層との接合は樹脂接着により行った。
【0054】
〔比較例1〕
保水性不織布シートであるニードルパンチ不織布(素材:ポリエステル、目付:120g/m、厚み:3.5mm、嵩密度:0.03g/cm)をそのまま保水層とした。次いで、保水層の上にアルミニウムペーストを表面に印刷した厚み0.03mmのポリプロピレンフィルムからなる非透湿層を接合し、比較例1のコンクリート養生シートを作製した。保水層と非透湿層との接合は樹脂接着により行った。
【0055】
〔比較例2〕
保護シートであるスパンボンド不織布(素材:ポリプロピレン、目付:30g/m、厚み:0.10mm、嵩密度:0.30g/cm、吸水性:3.0秒)をそのまま保水層とした。次いで、保水層の上にアルミニウムペーストを表面に印刷した厚み0.03mmのポリプロピレンフィルムからなる非透湿層を接合し、比較例2のコンクリート養生シートを作製した。保水層と非透湿層との接合は樹脂接着により行った。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示した実施例1〜12、並びに比較例1及び2のコンクリート養生シートについて、表面(非透湿層の表面)の静摩擦係数(JIS P 8147(傾斜法)に準拠して実施)、長手方向及び幅方向の引張強度(JIS L 1096 8.12.1 A法に準拠して実施)、長手方向及び幅方向の引裂強度(JIS L 1096 8.15.1 A法に準拠して実施)、並びに飽和保水量を計測した。静摩擦係数については、タテ6cm×ヨコ3cmの500gの平板に安全靴を模したゴムシート(和気産業株式会社製の天然ゴム系ゴムシート、GS−04)を被覆し、これを非透湿層の上に載置して徐々に傾斜させ、平板が滑り出した角度に基づいて算出した。飽和保水量については、10cm角に切り出したコンクリート養生シートの重量(w1)を測定し、次いでこのシートを水槽に5分間浸漬し、シートを金網に載せて水槽から水平の状態のまま取り出し、30秒静置した後のシートの重量(w2)を測定し、両重量の差(w2−w1)から求めた。さらに、これらの測定結果から、コンクリートの耐乾燥性、及び養生後の保護シートの表面状態を評価した。評価は、以下の基準に従って行った。
【0058】
(1)コンクリートの耐乾燥性
20cm角に切り出したコンクリート養生シートに飽和保水量の水分を吸収させ、これをコンクリートの上に水平に配置し、ハロゲンランプで光を照射して表面温度が50℃となるように調整した。24時間経過後、コンクリート養生シートの保水量を測定した。そして、保水量が500g/m以上を「○」、100g/m以上500g/m未満を「△」、100g/m未満を「×」とした。
(2)養生後の保護シート表面状態
一週間に亘ってコンクリートを養生したコンクリート養生シートをコンクリート表面から剥がし、当該コンクリート養生シートの保水層のうちコンクリートに接していた面(保護シートの表面)の状態を目視により観察した。そして、シート表面に破損が見られなかったものを「○」、シート表面に破損がやや見られたものを「△」、シート表面に破損が著しく見られたものを「×」とした。
【0059】
静摩擦係数、引張強度、引裂強度、及び飽和保水量の測定結果、並びにコンクリートの耐乾燥性、及び養生後の保護シート表面状態の評価結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例1〜12のコンクリート養生シートは、引張強度及び引裂強度が実用上問題ないレベルであり、静摩擦係数が一定以上に確保されており、安全性が高い製品であった。そして、コンクリートの養生後にコンクリート表面からコンクリート養生シートを剥がしたとき、保水層を形成する保護シートの表面に毛羽等の部分的な破損は見られず、強度が十分に保たれていて繰り返し使用が可能な状態であった。また、コンクリート側にも毛羽等の異物は付着しておらず、良好な表面状態を維持していた。さらに、コンクリート養生シートの飽和保水量が十分確保されているため、保水量の低下が少なく、コンクリートの耐乾燥性についても良好な結果であった。
【0062】
これに対し、比較例1のコンクリート養生シートは、コンクリートの養生後にコンクリート表面から剥がすと、保護シートの表面の一部に強度低下を引き起こす異常が見られた。比較例2のコンクリート養生シートは、コンクリート養生中にコンクリートにひび割れが見られ、耐乾燥性に問題があった。従って、比較例1及び2のコンクリート養生シートは、繰り返し使用することが困難であり、改善が望まれる製品であった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のコンクリート養生シートは、コンクリート製の建築物、橋脚、道路、トンネル、広場、ブロック等の各種コンクリート製品の養生に利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 保水層
11 保護シート
12 保水性不織布シート
13 平滑シート
20 非透湿層
21 非透湿性フィルム
22 金属粒子
23 金属膜
100 コンクリート養生シート
G コンクリート
図1
図2
図3