(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
本発明に係る加熱包装体である加熱用パウチの形態は、三方シールや四方シール、合掌平袋、合掌ガゼット袋等の任意の袋体の形態採用し得る。また、加熱用パウチは、製袋しつつ内容物を自動充填するものとしても、予め製袋された袋シートとした後に、内容物を充填し袋シートを封ずるものとしても実施できる。
【0029】
(基本構成)
図1(A)へ内容物を収容した状態の加熱用パウチ1を示す。この実施の形態の加熱用パウチ1は、易剥離性のシール部を逃圧用シール部2として備えた袋シート10である。逃圧用シール部2は、当該袋シート10を構成するシートの一部分を前記シートの他の一部分と重ねてシールするものであり、逃圧用シール部2は、電子レンジ加熱による内圧上昇時に剥離して加熱用パウチ1の内部と加熱用パウチ1の外部とを連絡する脱気用通路を形成するものである。逃圧用シール部2は、蒸気を逃がすものであり、逃圧用シール部2は、袋シート10である加熱用パウチ1内の圧力を逃がすことを最終目的とする。
【0030】
袋シート10は、この例では、
図1(A)(C)へ示す通り、下側シート部12と、下側シート部12の上に重ねて配された上側シート部11とを備え、下側シート部12と上側シート部11との間へ食品fを収容する平面視略矩形のものである。
易剥離性の上記逃圧用シール部2は、上側シート部11に設けられる。即ち、逃圧用シール部2は、上側シート部11の一部分と上側シート部11の他の一部分を合掌状に重ねて接着したものである。逃圧用シール部2については、後に詳しく説明する。
【0031】
平面視略矩形の加熱用パウチ1は、前端辺3aと後端辺3bと左右の端辺3c,3dの夫々にて下側シート部12と上側シート部11とがシールされ食品fを密閉する。当該シールはヒートシールによって行うことができる。
加熱用パウチ1の上記各端辺を、脱気用通路を形成する上記逃圧用シール部2と区別するため、必要に応じて接合部と呼ぶ。具体的には、シール後の前端辺3aを前接合部3aと、シール後の後端辺3bを後接合部3bと、シール後の右端辺3cを右接合部3cと、シール後の左端辺3dを左接合部3dと呼ぶ。
図2(C)において最上段へ示す、左右の袋シート10のように、食品の収容前の加熱用パウチ1は、左右の端辺3c,3dの一方が開放されており、食品の収容後開放されていた端辺が
図1(A)(C)へ示すようにシールされる。
【0032】
この例では、上記袋シート10を構成する上側シート部11と下側シート部12とは1枚のプラスチックフィルムpにて形成されている。このため上側シート部11と下側シート部12は、左右の端辺3c,3dのうち一方が食品収容前から繋がっている。即ち、
図2(C)の最上段の袋シートを例に採ると、右側の袋シート10は左端辺3dが開放され右端辺3cは当初から閉じられており、左側の袋シート10は右端辺3cが開放され左端辺3dは当初から閉じられている。
【0033】
上記袋シート10は、電子レンジの加熱に対する耐熱性を備えたプラスチックであればよい。上記袋シート10は、
図1(B)へ示すように、基材10aとシーラント層10bとを有する。シーラント層10bは基材10aの一方の面に積層された層である。
基材10aには、電子レンジの加熱に対する耐熱性を有するプラスチック素材を用いる。例えば、基材10aは、ポリプロピレンやポリアミド,ポリエステル,エチレン−ビニルアルコール共重合体等からなる二軸延伸フィルム、塩化ビニリデン−アクリル酸エステル系共重合体フィルム、酸化アルミ蒸着二軸延伸ポリエステルフィルム、ポリメタキシリレンアジパミド系ポリアミド延伸フィルム(6−ナイロンとの共押出し積層フィルムを含む)等の素材にて形成することができる。但し、電子レンジの加熱に対する耐熱性を備えたものであれば、基材10aには、上記以外のプラスチック素材を採用して実施することも可能である。
【0034】
上記シーラント層10bには、シール強度と機械的強度の双方について優れ、加熱殺菌や電子レンジ調理に耐える耐熱性と強度を有し、耐油性等の耐内容物性に優れたフィルムを用いる。このようなフィルムとして、具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度・高密度の各ポリエチレン、ホモ・ランダム共重合・ブロック共重合の各ポリプロピレン、αオレフィン共重合体、その他を単独やブレンドして使用するものが挙げられる。またシーラント層10bは、電子レンジ加熱や湯煎による加熱時おいても、軟化による剥離を生じさせない。
【0035】
図示は省略するが上記接合部3a〜3dの少なくとも1つには、開封用のノッチが形成されている。前記ノッチは、袋シート1を裂く際の始点となるものであり、開封を容易にする切れ込みであればよい。ノッチはV字状の切欠部としてもよいが、この他、例えばU字状の切欠部としてもよく、また、単に一本の線状の切れ込みとしてもよい。
【0036】
(逃圧用シール部2)
前述の逃圧用シール部2は、摂氏100度における耐圧強度を6〜30kPaとするのが好ましい。
調理用加熱の他ボイル殺菌を含む湯煎加熱における破袋防止の数値として、このように逃圧用シール部2は、摂氏100度における耐圧強度の下限値を6kPaとする。この耐圧強度の下限値は、ボイル殺菌を例に採ると、摂氏95度の水槽内で水面から数十cm下へ浸け込むという条件での破袋防止の数値である。即ちボイル殺菌では、方式によって、摂氏95度の水槽内で水面から数十cm下の水圧に耐え、破袋を避ける必要があり上記下限値に制限される。特により確実に破袋防止を行うために当該下限値を8kPaとするのが好ましい。
【0037】
また、上記の通り逃圧用シール部2は、摂氏100度における耐圧強度の上限値を30kPaとする。この上限値は、電子レンジ加熱時の通蒸性を確保するため特に好ましい数値である。電子レンジ加熱により食品から発生した水蒸気による内圧で通蒸が必要となるからである。この例では特に通蒸をより確実に行うために当該上限値を25kPaとするのが好ましい。
【0038】
耐圧強度の上限値を上記30kPaとすることにより、加熱用パウチの内圧が30kPaを超えると、パウチ内で発生した蒸気は音を立てずに円滑に抜ける。
また、逃圧用シール部2は、シール強度の観点から、摂氏100度におけるシール強度を1.3〜20N/15mmとすることによっても実施できる。
【0039】
更に、逃圧用シール部2は、初期ピーク値/中間値の比率という観点から、摂氏100度におけるシール強度の、初期ピーク値/中間値を1.3〜3.0とすることによっても実施できる。
上記数値範囲が最も望ましいが、電子レンジ加熱と湯煎とを両立できる限りにおいて、上記各強度や比率の範囲のものより多少外れたものであっても構わない。
【0040】
この実施の形態の逃圧用シール部2について具体的に更に説明する。
図1(A)(D)へ示す通り、逃圧用シール部2は、第1シール機構21と、蒸気口8とを備える。
【0041】
(第1シール機構21)
第1シール機構21は、易剥離テープ20の厚み方向において易剥離部分と難剥離部分とを配置する機構である。
図1の例では、易剥離テープ20を備えたものとして実施されているため、一方(図では上方)の袋シート10と易剥離テープ20とが、接合境界面Bを挟んで対向するシート状体となるものとして実施されている。
易剥離テープ20は、易剥離部分(この例では層状の易剥離層)であるテープ本体4と、テープ本体4に積層され、その幅方向において層状に広がる難剥離部分(この例では層状の難剥離層)であるスキン層5とを備える。以下、テープ本体4を必要に応じて易剥離層4と呼ぶ。
【0042】
図1(D)へ示す通り、易剥離テープ20は上側シート部11の一部と合掌にて当該一部に重ねられる上側シート部11の他の一部との間に挿入される。スキン層5は、易剥離テープ20の上面となる易剥離テープ20の表面側に設けられて易剥離テープ20の表面側にシール面mを形成する。この例では、易剥離テープ20の下面即ち上記テープ本体4の裏面が直接上側シート部11に接着される。
図1(D)へ示す例では、易剥離テープ20の片面にのみスキン層5が形成されている。
【0043】
このようにテープ本体4へスキン層5が形成された易剥離テープ20を用いる場合も、逃圧用シール部2全体として、上記の通り摂氏100度における耐圧強度を上記6〜30kPaとし、より好ましくは摂氏100度における耐圧強度を上記8〜25kPaとする。
スキン層5には、引張降伏応力(JIS K 7161,7162)が10−40MPa、ヒートシールが可能であり、常態下で30N/15mm以上のシール強度を誘引する樹脂を使用する。
【0044】
具体的には、スキン層5は、ポリオレフィン樹脂にて形成することができる。この他スキン層5には、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度・高密度の各ポリエチレン、ホモ・ランダム共重合・ブロック共重合の各ポリプロピレン、αオレフィン共重合体、その他を単独やブレンドして使用することができる。
【0045】
スキン層5の製法については、他の層と共に共押出によりフィルム成形したり、押出ラミネート法で直接付与したり、フィルムをドライラミネート法で付与するといった方法がある。但し、周知の他の製法にてスキン層5を形成するのを除外するものではない。
上記のテープ本体4は、温度依存性の高いフィルムにて形成されたものであり、易剥離層をなすものである。
【0046】
テープ本体4には、例えば、ポリプロピレン系やポリエチレン系等のポリオレフィン系樹脂或いはポリエステル系樹脂等、シーラント層10bとヒートシール性のある素材を用いることができる。
ここで易剥離層の剥離の機構について説明すると、剥離機構としては、(a)界面剥離、(b)層間剥離、(c)凝集剥離があり、これらを選択的に、場合によっては複合的に採用し得る。
【0047】
(a)界面剥離とは、袋本体(袋シートを構成するシート)と挿入テープ(易剥離テープ20)の界面で易剥離することである。従って、中間層に易剥離層4がある場合は関係ない(界面剥離はない)。
(b)層間剥離とは、スキン層5を引き千切った後、スキン層5と易剥離層4の層間で剥離することであり、スキン層5の引張降伏応力とスキン層5と易剥離層4の層間接着力がシール強度に影響する。
【0048】
(c)凝集剥離とは、易剥離層4の素材自身が破壊されることであり、連続相中に適度に分散相を設けることで凝集力を調整して作製する。
中間層に易剥離層4がある場合は、スキン層5を引き千切る際の強度も影響してくる。
【0049】
易剥離層4を上記凝集剥離層として形成する為の樹脂配合としては、例えば、低密度ポリエチレンにポリブテンをブレンドする配合が挙げられる。
スキン層5の厚みは、3〜40μmとし、好ましくは3〜30μmとし、より好ましくは3〜15μmとする。スキン層5の厚みについて最も好ましくは、5〜15μmとする。
【0050】
後の製造方法の説明で述べる通り、上記易剥離テープ20を、合掌状にされる前の上記プラスチックフィルムpの折り目間へ挿入することにより、逃圧用シール部2へスキン層5を設けることができる。
この例では、スキン層5として、上記の温度依存性の高いフィルム、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン系の素材をテープ本体4へ積層して形成している。
【0051】
スキン層5は、この例ではポリオレフィン層であり、スキン層5は、テープ本体4を形成するフィルムと、ポリオレフィンとを共押し出しすることで易剥離テープ20即ちテープ本体4の表面へ形成された層である。
また、この例では、スキン層5の上記形成は、被覆する易剥離テープ20(テープ本体4)の表面にシール面mを付与するものである。電子レンジ加熱時、加熱による昇圧にて温度依存性の高い易剥離層の強度が低下すると共に、
図1(F)へ示す通り、パウチの膨張によりスキン層5が裂けて逃圧用シール部2が剥離して通蒸できる状態となる。なお
図1(F)の5aは、スキン層5の裂け目を示している。
【0052】
易剥離テープ20は、常温よりも高温に加熱されたとき、袋内の蒸気圧にて上記袋シート10に対し常温時よりも剥離し易くなると共にスキン層5の調整によって必要なシール強度を簡単に付与する設計が行え、更に当該シール強度を安定的にすることができる。
即ち、上記スキン層5が形成された易剥離テープ20は、常温で人手によって簡単に開封できるイージーピールフィルムと異なり、加熱により所定圧力に達すると確実に剥離する性質を備えたテープとする。このため易剥離テープ20により、電子レンジ加熱において内圧上昇時確実に袋シート1を開封させる設計が簡単に行える。スキン層5について例示した素材以外の周知の素材を採用して実施することができる。なお、上記の通り、易剥離テープ20の表面にスキン層5が配置されるものであれば、易剥離テープ20は、スキン層5と共にスキン層5以外の層を設けた更に多層のものとしても実施できる。
【0053】
図1(D)へ示す袋シート10と易剥離テープ20との関係をより詳しく見れば、
図1(E)へ示す通り、スキン層5は、袋シート10のシーラント層10bに対し昇圧時剥離できるよう接着するシール面mを提供するものである。
例えば、この
図1(E)へ示すものでは、袋シート10についてシーラント層10bは60μmの厚みを備え、基材10aは厚みを15μmとする2軸延伸ポリアミドフィルムである。そして、この
図1(E)へ示す例では、逃圧用シール部2についてテープ本体4の厚みを25μmとしスキン層5の厚みを5μmとする。但し各層の厚みについて上記数値は例示であり、電子レンジ加熱と湯煎とを両立する上記シール強度を確保できるものであれば、他の数値に変更して実施することが可能である。
なお、テープ本体4の層と上側シート部11の層との間のシール強度は、スキン層5におけるシール強度よりも強いものとする。
【0054】
逃圧用シール部2は、上記前端辺3aと後端辺3bの間の前後幅方向の略全域に渡って形成されたものである。上記前後幅方向の全域が均等に剥離するものとしてもよいが、特に逃圧用シール部2の前後幅方向の所定位置を当該前後幅方向の他の位置に優先して剥離する上記の蒸気口8を形成しておくのが好ましい。
【0055】
即ち、加熱用パウチ1の電子レンジ加熱による昇圧時に逃圧部として上記蒸気口8を設けて当該蒸気口8から確実に水蒸気を外部へ排出するようにするのが好ましいのである。
図1(A)へ示す通り、蒸気口8は、上側シート部11の易剥離テープ20を覆う部分に設けられており、蒸気口8は、逃圧用シール部2の上記前端辺3aと後端辺3bの間の中間部分に配置されている。蒸気口8は、逃圧用シール部2の先端2a側から逃圧用シール部2の基部側へ向け(当該基部へ届かぬ深さに)切欠する切欠部である。また、蒸気口8は、袋シート10をシールしない非接着部でもある。電子レンジ加熱時加熱用パウチ1の膨張により逃圧用シール部2が(矢印Yへ示す方向へ)起立し、蒸気口8は加熱パウチ1の最上部となる(
図1(C))。
【0056】
電子レンジ加熱による膨張時、蒸気口8から蒸気は一気に抜けるのではなく、
図1(C)の矢印Yへ示す方向へ逃圧用シール部2即ち易剥離テープ20において、スキン層の効果で、蒸気が小気味よく蒸気口8から抜けるのである。
易剥離テープ20については、上記易剥離層4とスキン層5に加えて、
図3(E)へ示すベース層9を備えるものとしても実施できる。
【0057】
ベース層9は、上記のスキン層5と同様、引張降伏応力(JIS K 7161,7162)が10−40MPa、ヒートシールが可能、常態下で30N/15mm以上のシール強度を誘引する樹脂を使用するのが好ましい。
即ち、ベース層9についても、ポリオレフィン樹脂にて形成することができ、この他ベース層9には、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度・高密度の各ポリエチレン、ホモ・ランダム共重合・ブロック共重合の各ポリプロピレン、αオレフィン共重合体、その他を単独やブレンドして使用することができる。
【0058】
またベース層9を2層以上とし、シール面に位置しないそのうち1層を二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、その他のフィルムとすることができ、これにより伸び止めの効果を持たせることができる。
【0059】
(第1シール機構21の製造方法)
図1(A)〜(D)へ示す加熱用パウチの製造方法を要約して説明する。
この製造方法は、次の1)〜5)の各工程を遂行するものである。
【0060】
1)折り込み工程
製造ラインにおいて、上記基材10aとシーラント層10bを備えた1枚の帯状のプラスチックフィルムpを連続して流しながら、当該プラスチックフィルムのシーラント層10b側を内側に向け、ガイド板を用いて「ひ」の字型に折り込む。具体的には、
図2(A)へ示す通り、帯状のプラスチックフィルムpの端面視において上方が開口する平底の袋状にして、当該袋の上部においてプラスチックフィルムpの左右の側端v,w側を当該袋の外側へ横向きに伸びるようガゼット状に折り込む。また
図2において、16は上記ガゼットの底の左右の折り込み部分を示している。
【0061】
2)テープ挿入工程
上記の折り込み工程と並行しテープ挿入工程にて易剥離性テープ20を挿入しながらガイド板(図示しない。)にてプラスチックフィルムpへ最後の折り込みをしてガゼット状に閉じる。
【0062】
即ち
図2(B)へ示す通り上記左右の側端v,w側同士を内側へ向けて折り、
図2(C)の最下段へ図示するように突き合わせる。
図2(B)の13は側端v,wを内側へ折り込む折り目を示している。
なお、
図2(C)のzは、プラスチックフィルムpの送り方向を示している。
図2(C)へ示す状態において、右接合部3cとした右端辺3cと、左接合部3dとした左端辺3dとは、夫々シールにより接合されておらず、ガゼット袋として1枚のシートを折ることにて形成した折り目である。
【0063】
3)断続送り工程
図2(D)へ示す、上記ダンサーロールdを通じて、プラスチックフィルムpの流れを断続的な動きにする。具体的には、プラスチックフィルムpを送るラインは、プラスチックフィルムpを移動させ、更に当該移動をガイドする、複数のローラを備える。各ローラは、
図2(D)へ円として描かれたものである。当該ローラのうち上記ダンサーロールdは、位置が固定された他のローラと異なり、上下に移動することができる。上記ラインにおいてダンサーロールdの上流側z1ではプラスチックフィルムpは連続して送られる。一方、ダンサーロールdの下流側z2ではプラスチックフィルムpは、ダンサーロールdの上下動によって断続的に送られる。
【0064】
4)蒸気口形成工程
縦シール装置(図示しない。)にて、蒸気口8を形成し、蒸気口シール端部即ち上記折り目13付近の耳部13aをスリットにて除去する。
5)サイドシール工程
サイドシール装置(図示しない。)にて、上記左右の折り込み部分16上をヒートシールすることにより、サイドシール部即ち左右接合部3c,3dを形成する。但し、右接合部3cとした右端辺3cと、左接合部3dとした左端辺3dとは、夫々シールにより接合せずに上記折り目のままとしてもよい。
【0065】
6)横シール工程
上記ダンサーロールdの下流側において、横シール装置(図示しない。)にてプラスチックフィルムpの送り方向と交差する方向について断続的にシールし、横シール3eを形成する。
【0066】
7)横シール切断工程
上記の横シール3eにおいて、裁断機(図示しない。)により横方向に沿ってプラスチックフィルムpを分割する。この分割により左右1対の袋シート10を順次形成する。
【0067】
(上記製造方法のメリット)
上記1)〜7)の工程を経ることで、電子レンジ用パウチを左右一対、横2面付けで効率的に製造することができる。最終的に下側シート部12を切断して、
図2(C)の最上段に図示の通り、左右対称な2枚の袋シートを形成することができる。
【0068】
図2へ示す方法により、一般の製袋に準じて、電子レンジ用パウチを横2面付けで効率良く製造できる。
また、易剥離性テープの使用は、袋シート10の特定箇所に易開封性を付与する易開封性処理として離型剤塗布やコロナ処理等を行うのに比較し、品質安定、コスト面で有利となる。
【0069】
更にダンサーロールdが設備に付帯していることで、プラスチックフィルムpを連続して流しながら折り込める。これにより流れ方向についての折り込み寸法の変動が抑えられる。またその下流で折り込み位置がずれたり、折り込みが開くことを防止する効果があり、不良発生の防止、品質安定、ロス率の低減に繋がる。
【0070】
また更に、ダンサーロールdを、ラインを構成する他のローラよりも径の大きな大径ロールにしたり、ロール円周に凹凸を付けることで、折り込み位置が変化することを抑えることが出来る。
上記2)のテープ挿入工程に述べたタイミングでの易剥離性テープ挿入により、テープを定位置にストレスなく挿入することが出来る。仮にこれよりも下流で挿入を実施すると、テープを(略)袋長さ分、横方向に移動させねばならず、テープ折れ・反転・テープ傷み等の不良原因となる。
【0071】
(第1シール機構21のシール強度の推移)
第1シール機構21を備えた
図1(D)〜(F)へ示すパウチを例に採り、加熱昇圧時の逃圧用シール部2のシール強度の推移を
図1(G)へ示す。
図1(G)の縦軸がシール強度を示し横軸が時間を示す。
【0072】
この
図1(G)のグラフの一点鎖線の丸で囲んだ部分に初期値としてシール強度のピークが現れ、その後破線の丸で囲んだ中間値が示す通りシール強度は低下して安定して推移している。このことから、
図1(F)へ示すスキン部5が裂ける加圧初期の大きなシール強度を確保し、スキン層5が裂けた後、シール強度は低下し一定の状態に安定したものを確保できていることが把握できる。
【0073】
(袋シート10の構成の変更例)
図2へ示す実施の形態において、袋シート10を構成する上側シート部11と下側シート部12とは、夫々1枚のプラスチックフィルムpにて形成した。この他、
図3(A)へ示す通り、上側シート部11と下側シート部は別々に形成されたプラスチックフィルムpとし、プラスチックフィルムpの各右端辺3c同士,各左端辺3d同士をシールすることにより、一体にされるものとしても実施できる。なお
図3(A)は
図2(C)の最下段の図と同じ向きから眺めた状態を示す。
【0074】
(第1シール機構21を備えた逃圧用シール部2の変更例)
図1(D)へ示す実施の形態と異なり、易剥離テープ20は
図1(F)へ示す通りはみ出し部hを備えるものとしても実施できる。はみ出し部hは、易剥離テープ20において、加熱用パウチ1の袋の内側即ち食品の収容空間k側へ突出する部位である。
【0075】
この易剥離テープ20は、図の上下の袋シート10、10の間に挟まれて双方のシートに対してシールされた部分と、前記双方に対してシールされた部分から収容空間内部にはみ出しているはみ出し部hとを備える。はみ出し部hは、一方の袋シート10に対してのみシールされている。
【0076】
なお、はみ出し部hを備える場合と備えない場合の何れの場合も、スキン層5は、テープ本体4の上面側へ設けるものとしてもよくテープ本体4の下面側へ設けるものとしてもよいが、
図1(D)〜(F)に示す実施の形態において易剥離テープ20は、片面即ち易剥離テープ20(テープ本体4)の表面(上面)にのみスキン層5が設けられるものとした。この場合、テープ本体4の裏面(下面)と下方の袋シート10との間もヒートシールされるが、両者間にはスキン層5が存在しない。したがって、昇圧時に両者間から剥離が生ずると、設計者の意図しない圧力などの条件で、開封が生じるおそれがある。そのため、剥離が生じる箇所をコントロールする手段を施すことが好ましく、その一例としてはみ出し部hを設けるものである。
【0077】
昇圧時には、加熱用パウチ1が膨張変形するが、その際、
図1(F)へ示す通りはみ出し部hがシールされていない袋シート10と易剥離テープ20との間に、応力が集中する。その結果、
図1(F)の裂け目5aからスキン層5と易剥離層であるテープ本体4の間で剥離が進行するなどして、予定した接合境界面Bから剥離を生じさせることができる。
【0078】
この
図1(F)の例の他、
図3(C)へ示す通り、易剥離テープ20は、両面即ちテープ本体4の表面側と裏面側の双方にスキン層5を設けるものとしても実施できる。
図3(C)は電子レンジ加熱時、テープ本体4の上面側のスキン層5のシール面が剥離する状態を示している。但し、電子レンジ加熱時、テープ本体4の上下何れか一方のスキン層5から剥離が発生するが、上下の両スキン層5から剥離が発生してもかまわない。
【0079】
剥離の開始箇所をコントロールするには、はみ出し部hを設けるのと異なる手段を用いてもかまわない。例えば
図3(A)へ示す例において、易剥離テープ20の上下の両スキン層5を同一の構成のものとすると、電子レンジ加熱時、
図3(C)へ図示の通りテープ本体4上方のスキン層5を剥離させるには、当該スキン層5と接着されるシーラント層10bと異なり、剥離しないスキン層5と接着されるシーラント層10bを、水蒸気の発生によっても剥離しないシール強度を備えたものとしておくことができる。
【0080】
ここで必要に応じて、蒸気発生時シーラント層10bから剥離する上記スキン層5を剥離スキン層5hと、当該剥離スキン層5hに接着されていた上記シーラント層10bを剥離側シーラント層10hと、蒸気発生時シーラント層10bから剥離しないスキン層5を非剥離スキン層5nと、当該非剥離スキン層5nに接着されるシーラント層10bを非剥離側シーラント層10nと呼ぶ。またこの場合、袋シート10は、基材10a及び剥離側シーラント層10hを備えるシート部材(以下第1シート部材14)と、基材10a及び非剥離側シーラント層10nを備えるシート部材(以下第2シート部材15)の、夫々別々のシート部材にて構成するものとする。
【0081】
そして、第1シート部材14の剥離側シーラント層10hは既に
図1(D)の説明で示した条件・組成のものである一方、第2シート部材15の非剥離スキン層5nは、剥離スキン層5hの剥離側シーラント層10hから剥離する加圧条件では、非剥離側シーラント層10nから剥離しないシール強度に調整されたシール状況(はみ出し部を反対側逃圧用シール部2より減らす乃至は無くす)とするか或いは調整された素材を採用しておくのである。即ち、シール強度は、逃圧用シール部2を構成する素材の選択とシール状況の調整の、双方にて達成すればよい。
【0082】
なお、逃圧シール部2は2枚の袋シートの接合部分間に形成され、これらの2枚の袋シートをどのような形態で接合するかは種々変更して実施することができるが、合掌シールを採用して実施することが望ましい。
最も望ましくは、
図5(A)に示すような形態にて実施することが、シール状況の調節を容易に行うことができるため有利である。
【0083】
具体的には、シール状況の調節方法として、合掌シールの形状を採用し、且つ、はみ出し部hの長さを非剥離側(上側u1の上側シート部11と易剥離テープ20との間)を剥離側(下側u2の上側シート部11と易剥離テープ20との間)よりも短くする。シールされる区間の長さで言い換えると、非剥離側(上側u1の上側シート部11と易剥離テープ20との間の)シールg1が形成されている区間の長さが、易剥離側(下側u2の上側シート部11と易剥離テープ20との間の)シールg2が形成されている区間の長さよりも、長くなる(
図5の各図において、上記非剥離側シールg1と易剥離側シールg2の夫々濃い斑点で示す領域である)。
【0084】
その際、易剥離側シールg2を下側(スキン層5を易剥離層4より下側)に位置させることをすれば、非常に容易に上記構造を実現することが出来る。特に、はみ出し部hの長い側と短い側を最低1回のシール動作で形成することができる点で有利である。その理由は、易剥離側シールg2の内端は、二つ折りにされた下側u2の上側シート部11の
図5(A)のTで示す折り込み位置に固定されるのに対し、非易剥離側シールg1の内端は、シール板Sの位置を変更するだけで、そのシール位置を任意に調整することが出来るためである。また、上側u1の上側シート部11は下側u2の上側シート部11よりもシール板Sに近いため、余熱によるシールg0を得ることもできる(
図5(A)において薄い斑点で示す領域)。
【0085】
図中S0は、シール板Sに対応する受け台を示す。
これに対する比較例として、
図5(C)を示すことができる。これは、スキン層5と易剥離層4の上下を逆にし、且つはみ出し部hの長さも逆にする場合を示したもので、この場合にあっては、はみ出し部hの長い側と短い側を個別にシールで形成しなければならない。しかも、非易剥離側シールg1を形成するには、上側u1の上側シート部11を一旦離脱させ、シールされない様にしなければならない(
図5(B)参照)。次には上側u1の上側シート部11を元の位置に重ねたのち、易剥離側シールg2(はみ出し部hの長い側)を形成することとなる(
図5(C))。この方法は設備が複雑で大がかりとなり、作業が格段に繁雑で、生産効率が落ち不良発生率が高くなる問題がある。
【0086】
また他の比較例として、非易剥離側シールg1のはみ出し部hを長くするため剥離剤g3を部分的に塗工したり(
図5(D))、シールをされないように離型性のあるシートg4を間に挟むことも出来る(
図5(E))が、これも加工工程が増えたり、生産効率が落ちることとなる。
【0087】
以上のように、
図5(A)が最も有利であるが、本発明の実施に際して、あえて
図5の他の図のようにして実施することも不可能ではない。
易剥離テープ20が表裏両面にスキン層5を備える場合においても、
図3(D)へ示すように
図3(B)と同様の上記はみ出し部hを備えるものとしても実施できる。
【0088】
図3(C)(D)の場合において、両スキン層5の厚みを5μmとし、当該スキン層5以外の、袋シート10や逃圧用シール部2を構成する他の層の厚みは、上述の
図1(E)の各層と同様である。
但し上記各層の厚みについて上記数値は例示であり、電子レンジ加熱と湯煎とを両立する上記シール強度を確保できるものであれば、他の数値に変更して実施することが可能である。
【0089】
図3(A)〜(D)へ示す実施の形態においても、特に言及しなかった事項については、
図1及び
図2へ示す実施の形態と同様である。
図3(F)〜
図3(I)へ易剥離テープ20の更に他の実施の形態を示す。
【0090】
図3(F)に示す易剥離テープ20は、上記易剥離層4とベース層9とにて構成されたものである。
図3(G)に示す易剥離テープ20は、ベース層9の表面側と裏面側(上下両面)とに易剥離層4を備え、更に両易剥離層4へスキン層5を積層して易剥離テープ20の表裏を当該スキン層5としたものである。
【0091】
図3(H)へ示す易剥離テープ20は、易剥離層4のみから構成されたものであり、上記のスキン層5やベース層9は備えない。
図3(I)へ示す易剥離テープ20は、ベース層9と当該ベース層9の表面側と裏面側(上下両面)とに積層された易剥離層4とにて構成されたものであり、スキン層5は備えない。
【0092】
図3(E)〜
図3(I)へ示す各実施の形態において、特に言及しない事項については、
図1、
図2または
図3(A)〜(D)へ示す実施の形態と同様である。
逃圧用シール部2について、
図4(A)へ更に他の実施の形態を示す。この逃圧用シール部2は、第2シール機構22と、蒸気口8とを備える。蒸気口8については、
図1へ示す第1シール機構21を備えた逃圧用シール部2と同様であるので、説明を省略する。
【0093】
(第2シール機構22)
第2シール機構22にあっては、難剥離部分が、逃圧用シール部2のシール幅の幅方向(
図1(A)及び
図4(A)〜(E)の左右方向)において、易剥離部分よりも収容空間kに近い位置に配置されている。
【0094】
具体的には、第2シール機構22は、易剥離部分となる平坦部6と、難剥離部分となるビーズ部7とが、逃圧用シール部2の幅方向に配置されている。平坦部6は、平坦なシール面mをなすもので、逃圧用シール部2のシールの主要部をなす。ビーズ部7は、平坦部6と収容空間kとの間に形成されたものである。このビーズ部7は袋シート10の厚み方向において平坦部6よりも突出する突状に形成されたものである。
【0095】
平坦部6とビーズ部7は常圧時に密封性を備えたものであるが、昇圧による通蒸時には、収納空間k内の蒸気が、その圧力によりビーズ部7を破り、次に平坦部6をその先端(図の右端)まで剥離させて脱気用通路を形成し、外部へ排出される。
第2シール機構22を備えた逃圧用シール部2においても、平坦部6やビーズ部7といった構成を含む逃圧用シール部2全体として耐圧強度を6〜30kPaとする。
【0096】
ビーズ部7は平坦部6よりもシール強度及び耐圧強度が大きい。
より詳しくは、一般的な凝集剥離型のイージーピール樹脂を例として挙げると、高温下では均一な組成のPE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)に比較し、高温下での強度低下が甚だしいことから、上記シール強度範囲に設計するのが非常に難しい。この対策として剥離初期のみシール強度を上げる方法を採るのであり、当該方法としてビーズ部7を備える上記第2シール機構22を採用するのが好ましい。上記のビーズ部7は、シールを高温や高圧で行うことで、シールの際にシーラント層10bへ設けられた樹脂のビーズ即ち盛り上がりである。後述する
図4(F)の中間値に入れば剥離が容易となるメリットもある。
【0097】
第2シール機構22は、通蒸の際に形成される前述の収容空間k側から蒸気口8へ向かう脱気用通路中最も収容空間k寄りの位置即ち袋内側から当該脱気用通路への流入部となる位置において、上記盛り上がりであるビーズ部7を備える。
このため
図4(A)へ示すように盛り上がり部であるビーズ部7は、上記平坦部6よりも収容空間k側へ配置されたものである。このようにビーズ部7より袋外側即ち蒸気口8側の中間領域をビーズ部7の無い上記平坦部6とする。
【0098】
剥離初期のビーズ部7のシール強度は、平坦部6のシール強度の1.3〜3.0倍である。
具体的に説明すると、
図4(A)へ示す通り、この場合も、袋シート10を互いにシーラント層10bの性状が異なる第1シート部材14と第2シート部材15とにて構成する。ビーズ部7の上方へ位置する第1シート部材14の上記シーラント層10bは剥離側シーラント層10bとして、ビーズ部7の下方へ位置する第2シート部材15の非剥離側シーラント層10bとなるシーラント層10bの備える上記平坦部6へ直接接着されている。非剥離側シーラント層10bは、前述の易剥離テープ20のテープ本体4と同様に機能するものであり、電子レンジ加熱によりパウチが膨脹した際、
図4(C)へ示す通り、ビーズ部7が上方の上記剥離側シーラント層10bから剥離し、その後非剥離側シーラント層10bが剥離側シーラント層10bから剥離して非剥離側シーラント層10bのシール強度が低下し通蒸できるものとなる。即ち、非剥離側シーラント層10bのシール強度が低下することにより前述の脱気用通路が形成される。
図4(C)へ示す例と逆に、ビーズ部7の下方へ位置するシーラント層10bをビーズ部7から剥離する剥離側シーラント層10bとし、ビーズ部7の上方へ位置するシーラント層10bをビーズ部7から剥離しない非剥離側シーラント層10bとして実施することも可能である。
【0099】
(第2シール機構22の製造方法)
図4(A)のビーズ部7の形成方法について説明する。
図4(B)へ示す通り、ビーズ部7は、上側シート部11の一部を他の一部へ重ねて直接接触する両部分のシーラント層10bをシールバーsにて上方の基材10a側から加熱して、溶融させることによって形成することができる。
【0100】
但し、
図4(B)の下方側から、下方の第2シート部15の基材10a側からシールバーsにて加熱し図中下方のシーラント層10bを溶融してビーズ部7を形成するものとしてもよい。また、上下両方のシーラント層10bを加熱溶解してビーズ部7を形成するものとしても実施できる。
【0101】
上下何れから袋シートを加熱する場合も、袋シートを挟んでシールバーsと反対側に袋シートと対面する受け部材(図示しない。)を設けておけばよい。シールバーsと共に上記受け部材にて、袋シートを挟んでシールバーsにて上記加熱を行えばよいのである。
当該製造方法において、特に言及しない事項については、
図2へ示す第1シール機構21の製造方法と同様である。
【0102】
(第2シール機構22のシール強度の推移)
第2シール機構22を備えた
図4(A)の実施の形態を例に採り、加熱昇圧時の逃圧用シール部2のシール強度の推移を
図4(F)へ示す。
図4(F)の縦軸がシール強度を示し横軸が時間を示す。
【0103】
この
図4(F)のグラフの一点鎖線の丸で囲んだ部分に初期値としてシール強度のピークが現れ、その後破線の丸で囲んだ中間値が示す通りシール強度は低下して安定するように推移している。このことから、ビーズ部7を備えた第2シール機構22において、ビーズ部7にて加圧初期の大きなシール強度を確保し平坦部6にて一定のシール強度で安定したものを確保できていることが把握できる。
【0104】
(第2シール機構22を備えた逃圧用シール部2の変更例)
第2シール機構22を備えた逃圧用シール部2の他の実施の形態について説明する。
図4(D)へ示す通り、上記第2シール機構22は、
図1(D)や
図3(B)〜(E)へ示す実施の形態と同様、袋シート10と別体の易剥離テープ20を備えるものとして実施できる。即ちこの変更例は、第1シール機構21と第2シール機構22とを併設したものである。但し、この易剥離テープ20は、
図1(D)や
図3(B)〜(D)へ示す実施の形態に示すテープ本体4のみからなる。即ち、
図4(D)へ示す例では易剥離テープ20はスキン層5を備えない。易剥離テープ20即ち上記テープ本体4の表面が平坦面6をなし、更に平坦部6と共にテープ本体4の表面にビーズ部7が設けられている。また、
図4(E)へ示す通り、易剥離テープ20の表面と裏面の双方に平坦部6とビーズ部7とを設けるものとしても実施できる。
【0105】
図示しないが、
図4(D)(E)に示すものにおいても、易剥離テープ20は、収容空間k側へ突出するはみ出し部hを備えるものとして実施できる。
また、ビーズ部7を、加熱用パウチ1の上記収容空間k寄りに配置するのみならず、当該ビーズ部7を挟んで上記収容空間kの反対側即ち逃圧用シール部2の先端2a側にも配置するものとして実施できる。
【0106】
図示は省略するが、逃圧用シール部2は、第1シール機構21と第2シール機構22の双方を備えるものとしても実施できる。即ち、易剥離テープ20について、テープ本体4の表面と裏面とに上記スキン層5を設けると共に、ビーズ部7を、シール面mを提供する両スキン層5から袋シート10即ち上側シート部11へ向けて突出し、上側シート部11の肉厚内へ食い込むものとすることができる。
上述の第2シール機構22を備える各実施の形態においても、特に言及しなかった事項については、
図1、
図2、
図3(A)〜(D)へ示す第1シール機構21を備えた実施の形態と同様であり、説明を省略する。
【0107】
(小括)
ビーズ部7を備える第2シール機構22では、安定した強度を得るためには都度の条件調整が必要である。スキン層5を備える第1シール機構21は、電子レンジ加熱による内圧上昇時に、当該内圧にてスキン層5が引きちぎられることにより脱気用通路が形成されるものであり、スキン層5を備える第1シール機構21は、シール強度を大幅に偏らせなくとも容易に目的の耐圧強度を実現でき、このため安定性の面では第1シール機構21は第2シール機構22よりも優れる。また、スキン層5は、設計も容易であり、品質の安定性にも繋がる。
前述の通り、電子レンジ加熱による内圧上昇時に、スキン層5が引きちぎられることにより、脱気用通路が形成される。
【0108】
(他の実施の形態)
次に、異なる先の各例とは異なる具体的形態で、第1、第2シール機構のそれぞれを得る例を示す。なお、先の例と同様の構成については、同じ符号を付してその一部又は全部の説明を省略する。
【0109】
(第1シール機構の他の実施の形態1:
図6参照)
図1に示す実施の形態では、テープ本体などから構成される易剥離部分である易剥離層4に対して、これとは異なる樹脂組成によるスキン層(難剥離層)5を配置して被覆することにより、シートの厚み方向においてシール強度(摂氏100度におけるシール強度)を変化させたが、
図6の例では、1種類の樹脂組成によるテープ本体101について、加工条件の相違により、易剥離層102と難剥離層103とを設けるものである。
【0110】
具体的には一つのテープ本体101について、ヒートシールの加熱条件を変化させることによって、易剥離層102と難剥離層103とを得ることができる。例えば、一般に加熱温度を高める方がシール強度が高まり、加熱温度を抑える方法がシール強度が低下する。また、同じ加熱温度であったとしても、加熱の回数を多くすることによりシール強度が高まり、加熱の回数を小さくする方がシール強度が低下する。さらにヒートシールの熱源との距離についても、シートの厚み方向において、熱源に近い部分については加熱温度が高まる結果シール強度が高まり、熱源に遠い部分については加熱温度が低くなる結果シール強度が低下する。
【0111】
これらの温度条件、加熱の回数条件、加熱の距離条件(加熱の方向条件)、圧力条件などを一種又は複数種を組み合わせることにより、単一の素材によるテープ本体101についても、シール強度が厚み方向に変化している逃圧用シール構造(言い換えれば、シールによる接合境界面Bに対して、厚み方向において近い方に難剥離層103が配置され、遠い方に易剥離層102が配置された構造)を得ることができる。なお、易剥離層102、難剥離層103は、明確に分離している必要はなく、シール強度が厚み方向において傾斜しているものであってもよい。
【0112】
加工の具体的な方法としては、図の上方からシールバーsなどで高い温度で2回シールし、その後に下方から比較的低い温度で1回シールする方法を示すことができる。
【0113】
(第1シール機構の他の実施の形態2:
図7参照)
図7の例にあっては傾斜材料を使用したテープ本体101を用いるものである。テープ本体101を構成する樹脂について、ポリマーなどのマトリックス相111中に非相容または準相容の樹脂成分あるいは無機微粒子や微細な気泡などの分散相112が島状に配位されたシートをテープ本体101として用いるものであり、その際、シートの厚み方向において分散相112(非相容または準相容の樹脂成分あるいは無機微粒子や微細な気泡)の密度を傾斜させるものである。分散相112の密度が高い層にあってはシール強度が低い易剥離層102となり、分散相112の密度が低い層にあってはシール強度が高い難剥離層103となる。これにより2層または3層以上あるいは連続的に変化している逃圧用シール構造(言い換えれば、シールによる接合境界面Bに対して、厚み方向において近い方に難剥離層103が配置され、遠い方に易剥離層102が配置された構造)を得ることができる。
【0114】
(第1シール機構の他の実施の形態3:
図8参照)
図8の例にあっては、多数の孔121を有するテープ本体101を用いるものである。孔121は、テープ本体101の裏面(接合境界面Bとなる表面の反対側の面)から、テープ本体101内部に向かうに従って、徐々にその内径が小さくなっている構造とすることができる。また、裏面に開口している孔121が、接合境界面Bとなる表面に到達していない ものとして実施することもできるし、両者を組み合わせた構造とすることもできる。このような形態の孔121は、多数の針状先端を備えた加工具を、テープ本体101の裏面側から突き刺すことにより形成することができる。
【0115】
この構成によって、開口率が厚み方向において変化している逃圧用シール構造(言い換えれば、接合境界面Bに対して、厚み方向において近い方に開口率が低い難剥離層103が配置され、遠い方に開口率が高い易剥離層102が配置された構造)を得ることができる。
なお、孔121は図のように非貫通孔でもいいし、貫通しているものであってもかまわない。テープ本体101は、表裏の両面(図では上下の両面)が袋シート10に対してシールされているため、貫通、非貫通の形態にかかわらず、密封状態は維持された状態で、シール強度がコントロールされることになる。
【0116】
(第1シール機構の他の実施の形態4:
図9参照)
図9の例にあっては2種の材料を使用したテープ本体101を用いるものである。
具体的には、溶融粘度特性が異なる2種の樹脂によって難剥離層103と易剥離層102とを形成する。樹脂の溶融粘度(流動性)は、メルトフローレイト(MFR: Melt Mass-Flow Rate)、メルトボリュームレイト(MVR: Melt Volume-Flow Rate)およびキャピラリーレオメーターなどの測定機による方法などで示されるが、溶融粘度特性が異なる樹脂組成の難剥離層103と易剥離層102とを層状に配置したテープ本体101や、溶融粘度がシートの厚み方向において傾斜しているテープ本体101を用いるものである。これにより、
図4に示した前述のビーズ7が形成し易くなる。また、ヒートシール後のシール強度が異なる樹脂を積層した構造を用いて実施することもできる。
【0117】
(第2シール機構の他の実施の形態)
第2シール機構は、逃圧用シール部2の平面視(言い換えればシートの厚み方向と直行する方向)において、シール強度が異なる領域を設けるものである。テープ本体201の平面視において、袋の内部寄り(言い換えれば収容空間kに近い側)に難剥離部分203を配置し、袋の外部寄り(言い換えれば収容空間kから遠く、袋の外側に近い側)に易剥離部分202を配置するものである。
【0118】
(第2シール機構の他の実施の形態1:
図10参照)
図10の例にあっては、1種類の樹脂組成によるテープ本体201について、加工条件の相違により、易剥離部分202と難剥離部分203とを設けるものである。例えば、一般に加熱温度を高める方がシール強度が高まり、加熱温度を抑える方法がシール強度が低下する。また、同じ加熱温度であったとしても、加熱の回数を多くすることによりシール強度が高まり、加熱の回数を小さくする方がシール強度が低下する。さらにヒートシールの熱源との距離についても、シートの厚み方向と直行する方向において、シールバーsなどの熱源に近い部分については加熱温度が高まる結果シール強度が高まり、熱源に遠い部分については加熱温度が低くなる結果シール強度が低下する。
【0119】
これらの温度条件、加熱の回数条件、加熱の距離条件(加熱の方向条件)などを一種又は複数種を組み合わせることにより、シール強度が平面視における袋の内外方向に変化している第2シール機構を得ることができる。なお、易剥離部分202、難剥離部分203は、明確に分離している必要はなく、シール強度が内外方向において傾斜しているものであってもよい。
【0120】
加工の具体的な方法としては、
図10(A)に示すように、加熱用のシールバーsの形状について、袋の内側寄りの部分204を袋の外側寄りの部分205よりも厚み方向において大きく突出させることにより、ヒートシール時に加わる圧力をテープ本体201の樹脂に強く作用させて、易剥離部分202の内側にシール強度の大きな難剥離部分203を形成する例を示すことができる。
【0121】
また
図10(B)に示すように、加熱用のシールバーsの加熱温度について、袋の内側寄りの部分204を袋の外側寄りの部分205よりも高温とすることにより、熱エネルギーをテープ本体201の樹脂に強く作用させて、易剥離部分202の内側にシール強度の大きな難剥離部分203を形成する例を示すことができる。
【0122】
さらにまた
図10(C)に示すように、加熱用のシールバーsを下駄状に形成して、シールバーsの形状や加熱温度について、袋の内側寄りの部分204と袋の外側寄りの部分205とに明確な差異を設けることもできる。
その他、図示は省略するが、シール回数を多くすることによって、難剥離部分203を形成してもかまわないし、上記の各加工方法を選択的に組み合わせて実施してもかまわない。
【0123】
(第2シール機構の他の実施の形態2:
図11参照)
図11の例にあっては、多数の孔211を有するテープ本体201を用いるものである。孔211は、テープ本体201の裏面(接合境界面Bとなる表面の反対側の面)から、接合境界面Bとなる表面に向かって形成され得るが、その深さを、袋の内側寄りの難剥離部分203では浅くしたり孔211を設けないものとする一方、袋の外側寄りの易剥離部分202では深くすることにより、開口率を袋の内外方向において変化させた第2シール機構を得ることができる。
【0124】
(第2シール機構の他の実施の形態3:
図12参照)
図12の例にあっては、加熱用のシールバーsとして、回転するシゴキローラを用いるものである。回転方向は、シートとの接面において、袋の外側から内側へ進む方向とする。これによって、溶融状態の樹脂が袋の内側方向へ送られるようになり、
図4に示されたビーズ部7を形成し易くすることができる。なお、ビーズ部7の形成やその大きさは、第1シール機構の他の実施の形態4で触れた溶融粘度特性とも関連するため、ビーズ部7を形成するに際しては、第2シール機構の他の実施の形態3(
図11参照)と第1シール機構の他の実施の形態4(
図9参照)を組み合わせて設計することもできる。このように、第1シール機構と第2シール機構とは併用して実施することもできるものである。
【実施例】
【0125】
(逃圧用シール部2へ第1シール機構21を採用する実施例)
表1へ、第1シール機構21を採用する実施例1〜4と、比較例1〜3とを示す。
図2(E)へ示す通り、この加熱用パウチ1について、左右幅即ち横幅t1は180mm、前後幅即ち縦幅t2は150mm、左端と逃圧用シール部2基端の間の左側横幅t3は150mm、逃圧用シール部2基端と右端の間の右側横幅t4は30mm、前接合部3aの前後幅t5は10mm,後接合部3bの前後幅t6は10mmである。右接合部3cは折り込まれて底部を形成している。逃圧用シール部2の基端から先端までの突出幅t8は10mmである。
左接合部3dの位置から内容物を入れた後に左接合部3dが形成される。
左接合部3dの横幅t7は10mmである。
【0126】
1)挿入テープ(易剥離テープ20)の作成
図3(E)へ示すベース層9と易剥離層4とスキン層5の3層よりなる共押出フィルムを製膜し使用した。易剥離層4は10μm、スキン層5は0、5,15,30,40,50μmの各厚みに調整した。なお総厚はスキン層50μmのみ110μm、他は70μmとしたものであり、ベース層9にてそのような厚みとなるよう調整した。
【0127】
ベース層9とスキン層5の材料にはプライムポリマーSP3530(L−LDPE、密度931kg/立方メートル,引張降伏応力13MPa)を使用した。易剥離層4については、日本ポリエチレン ノバテックLD LF443(LDPE)と三井化学タフマーBL3110M(ポリブテン)を夫々80/20(%)に配合して作成した。
【0128】
2)試験袋(加熱用パウチ1)の作成
ONy15μm(ユニチカON−RT)とL−LDPE50μm(東洋紡L−6101)をドライラミネート法にて積層し使用した。150×180mm(寸法は別紙参照)の袋を作成、蒸気口部には各挿入テープを挟んでシールした。シールはシール温度摂氏160度、シール時間1秒、シール圧力0.2MPa、シール回数2回の条件で実施した。
【0129】
3)試験方法
3−1−1)摂氏100度での耐圧強度
JIS Z0238 容器の破裂強さ試験に準じ、試験袋に空気を充填して密封し、摂氏100度に保持されたエアーバス内にて、試験袋に空気を1.0L/minの量で送入し、通蒸ないし破袋した際の圧力を測定し耐圧強度とした。
【0130】
3−1−2)摂氏100度でのシール強度
JIS Z0238 ヒートシール強さ試験に準じ、蒸気口部を15mm巾に切り取り、摂氏100度に保持されたエアーバス内で、引張速度300mm/min、剥離角度180度の条件でシール強度(ピーク値と中間値)を測定した。
【0131】
3−2)電子レンジ通蒸試験
水150gを充填包装して試験に供した。600W電子レンジにて3分間加熱し、正常に通蒸するかを確認した。
3−3)ボイル殺菌適性
水150gを充填包装して試験に供した。ボイル殺菌槽(湯温摂氏95度、水深60cm)に試験体を1時間浸漬し、破袋の有無を確認した。
【0132】
3−4)湯煎適性
文化鍋(直径24cm、容量4.5L)に試験体を入れて湯を満たし、沸騰を維持しながら30分加熱を行い、破袋の有無を確認した。
【0133】
(試験結果について)
表1へ示す通り、実施例1〜4は、スキン層5の厚みを5〜40μmとし摂氏100度での耐圧強度を8.6〜28.2kPaとし摂氏100度でのシール強度のピーク値を1.62〜17.1N/15mmとし摂氏100度でのシール強度の中間値を0.77〜6.1N/15mmとし、初期ピーク値/中間値を1.99〜2.8とする。
この実施例1〜4については、電子レンジ自動通蒸性とボイル殺菌適正と湯煎適正の何れも問題ないものであった。即ち、実施例1〜4では表1おいて電子レンジ自動通蒸性とボイル殺菌適正と湯煎適正の何れも○で示すように破袋はなかった。
なお、実施例4については本発明の加熱用パウチとして使用可能であるが、他の実施例より劣り(このため表1において○−としている)、他の実施例のほうが実施例4と比べて本発明の加熱用パウチとして適する。
【0134】
上記実施例1〜4に対し比較例1は、スキン層5を備えず、摂氏100度での耐圧強度を4.8kPaとし摂氏100度でのシール強度のピーク値を0.82N/15mmとし摂氏100度でのシール強度の中間値を0.75N/15mmとし、初期ピーク値/中間値を1.09とする。比較例2は、スキン層5の厚みを2μmとし摂氏100度での耐圧強度を5.3kPaとし摂氏100度でのシール強度のピーク値を1.12N/15mmとし摂氏100度でのシール強度の中間値を0.78N/15mmとし、初期ピーク値/中間値を1.44とする。
【0135】
表1へ示す通り上記比較例1及び比較例2では、電子レンジ自動通蒸性は認められる(表1において○)ものの、ボイル殺菌適正と湯煎適正の双方において破袋(表1において×)という結果であった。この比較例1及び比較例2における破袋は、シール強度の弱さから逃圧用シール部2の易剥離層4にて生じている。
【0136】
また比較例3は、スキン層5の厚みを50μmとし摂氏100度での耐圧強度を40.6kPaとし摂氏100度でのシール強度のピーク値を36.7N/15mmとする。
表1へ示す通り上記の比較例3では、ボイル殺菌適正と湯煎適正の双方において問題ないものの、電子レンジ自動通蒸性については、破袋が生じ×であった。
【0137】
比較例3の破袋は、シート部材14が内圧により引き延ばされた後生じている。これは易剥離層4が容易に剥離できない状況では各シール部3a〜3d及び第1第2の各シート部材14,15をも含め、一般的にはこれらのうち最も強度の弱い部分が破壊されたことによる。
【0138】
表1に示す試験結果の詳細について、表2へ示す実施例5の評価とまとめて、実施例の評価結果として後に述べる。
なお上記の通り、表1のシール強度についてはJIS Z 0238:1998(ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法)の7.袋のヒートシール強さ試験にしたがって行い、破袋の有無についはJIS Z 0238:1998の8.容器の破裂強さ試験に従って行った。また、上記7.袋のヒートシール強さ試験における荷重の補正については、JIS P 8113(紙及び板紙−引張特性の試験方法−第2部:定速伸張法)に準じる。
【0139】
【表1】
【0140】
(逃圧用シール部2へ第2シール機構22を採用する実施例)
表2へ、実施例5の試験結果を示す。実施例5は、第2シール機構22を採用しビーズ部7を備える
図4(A)へ示すタイプのものである。従って実施例5は表1の実施例1〜4と異なりスキン層5を備えない。表2へ示す実施例5において、各試験法や試験袋の製法については表1へ示すものと同様であり、加熱用パウチ1の寸法・構成についても
図2(E)について説明したのと同様である。
【0141】
表2へ示す通り、実施例5は、ビーズ部7の大きさ即ちシール面mである平坦部6から突出する突出幅を13μmとし摂氏100度での耐圧強度を8.7kPaとし摂氏100度でのシール強度のピーク値を1.67N/15mmとし摂氏100度でのシール強度の中間値を0.82N/15mmとし、初期ピーク値/中間値を2.04とする。
実施例5の試験結果については、表2へ示す通り、電子レンジ自動通蒸性とボイル殺菌適正と湯煎適正の何れの試験においても破袋はなかった。
【0142】
【表2】
【0143】
(実施例及び比較例の評価結果)
以下へ、上記の表1及び表2に示す実施例及び比較例における試験結果の評価をまとめる。
(1)100℃での耐圧強度
1)実施例1,2,3、5について
空気の送入により試験袋が球状にフルに膨らんだのち、3秒後に易開封性シール部が剥離し破裂音、内容物(水)の漏れもなく正常に通蒸した。試験終了後易開封性シール部を確認したところ、実施例1,2,3ではスキン層5が破れ、実施例5ではビーズ部7がシール部のシーラント層10bから剥離し、易剥離層4が凝集剥離するものであったが、いずれも正常な剥離状況であった。上記剥離までの3秒が試験袋の破袋せずに耐えている時間であり、表1及び表2の電子レンジ自動通蒸性の評価を「〇」とした。
【0144】
2)実施例4について
上記(1)1)と同様に易剥離層の剥離にて正常に通蒸したが、球状に膨らんだのち通蒸するまでの時間が、5秒に伸びたものであり、表1及び表2の電子レンジ自動通蒸性の評価を「〇−」としたが、通蒸自体は正常に行われた。
【0145】
3)比較例1,2について
上記(1)1)と同様に正常に通蒸した。
4)比較例3について
空気の送入により試験袋が球状にフルに膨らんだのちも通蒸せず、8〜15秒後に試験袋が大きな音を伴って破裂し水が洩れた。試験終了後試験袋を確認すると袋本体フィルムが引き延ばされた状態であり、袋上面フィルムの中央部が大きく斜め方向に裂けていた。また易剥離性シール部は剥離していなかった。
【0146】
(2)電子レンジ自動通蒸性
1)実施例1,2,3、5について
試験袋内の水が沸騰するとともに球状にフルに膨らみ、2秒後に易開封性シール部が剥離し破裂音、内容物(水)の漏れもなく正常に通蒸した。試験終了後易開封性シール部を確認したところ、実施例1,2,3ではスキン層5が破れ、実施例5ではビーズ部7がシール部のシーラント層10bから剥離し、易剥離層4が凝集剥離する正常な剥離状況であった。
【0147】
2)実施例4について
上記(2)1)と同様に正常に通蒸したが、球状に膨らんだのち通蒸するまでの時間が、5秒に伸びた。このため前述の通り他の実施例よりやや劣るものとして、表1の電子レンジ自動通蒸性欄において○−(○マイナス)と評価した。
【0148】
3)比較例1,2について
上記(2)1)と同様に正常に通蒸した。
4)比較例3について
試験袋が球状にフルに膨らんだのちも通蒸せず、8〜10秒後に試験袋が大きな音を伴って破裂し水が洩れた。試験終了後試験袋を確認すると袋本体フィルムが引き延ばされた状態であり、袋上面フィルムの中央部が大きく斜め方向に裂けていた。また易剥離性シール部は剥離していなかった。
【0149】
(3)ボイル殺菌適性及び湯煎適性
1)実施例1,2,3、4、5について
試験後試験袋を取り出し確認したところ破袋はなく、内容物(水)漏れなく、易開封性シール部、その他シール部に剥離は見られなかった。
【0150】
2)比較例1,2について
試験後試験袋を取り出し確認したところ破袋していた。易開封性シール部が剥離しており、内容物(水)が漏れ出し失われていた。
4)比較例3について
上記(3)1)と同様で破袋はなかった。
【0151】
(結論)
例示した条件の第1シール機構21を備える逃圧用シール部2について、ボイル殺菌適正や湯煎適正の観点において、表1の比較例2と実施例1〜4と比較例3からスキン層5の厚みを3〜48μmとするのが好ましく特に比較例2及び実施例1〜3からスキン層5の厚みを4〜40μmとするのが好ましく、とりわけ実施例1〜3からスキン層5の厚みを5〜40μmとするのが好ましく、その中でも5〜30μmとするのが好ましい。
【0152】
そして上記ボイル殺菌適正や湯煎適正の観点に電子レンジ加熱における通蒸性の観点を加え、次の結論に至った。
即ち、摂氏100度における耐圧強度を、表1の比較例2と実施例1〜4と比較例3から6〜40kPaとするのが好ましく、特に比較例2及び実施例1〜4から7〜28.2kPaとするのが好ましく、とりわけ実施例1〜3から8.6〜9kPaとするのが好ましい。
【0153】
また摂氏100度におけるシール強度のピーク値を、表1の比較例2と実施例1〜4と比較例3から1.3〜35N/15mmとするのが好ましく、特に比較例2と実施例1〜4から1.3〜20N/15mmとするのが好ましく、とりわけ1.5〜17.1N/15mmとするのが好ましく、その中でも実施例1〜3から1.62〜16.4N/15mmとするのが好ましい。
【0154】
更に表1の摂氏100度におけるシール強度のピークと中間値とで算出したピーク値/中間値を、比較例2と実施例1〜4とから1.3〜3とするのが好ましく、特に1.5〜2.8とするのが好ましく、とりわけ実施例1〜3から1.99〜2.1とするのが好ましい。
【0155】
上述の通り逃圧用シール部2全体として上記表1の各数値範囲を採ることで、電子レンジとボイル加熱を含む湯煎とを両立できる加熱用パウチを提供できる。
表2からビーズ部7を設けることによっても、逃圧用シール部2全体としてシール表1の各強度や比率の範囲内の数値を採ることができ、ボイル殺菌適正や湯煎適正、電子レンジ加熱における通蒸性について問題ないことが把握できた。