特許第6916622号(P6916622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916622
(24)【登録日】2021年7月20日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】多孔質石英ガラス母材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 8/04 20060101AFI20210729BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   C03B8/04 A
   G02B1/00
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-12788(P2017-12788)
(22)【出願日】2017年1月27日
(65)【公開番号】特開2018-118887(P2018-118887A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190138
【氏名又は名称】信越石英株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】角 児太郎
【審査官】 大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−135147(JP,A)
【文献】 特開平06−183770(JP,A)
【文献】 特開2003−212549(JP,A)
【文献】 特開2011−256069(JP,A)
【文献】 特開2001−026436(JP,A)
【文献】 特開2001−342571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 8/00 − 8/04
C03B 20/00
C03B 37/00 −37/018
G02B 1/00 、 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する種棒にガラス微粒子を堆積させて、多孔質石英ガラス母材を製造する方法であって、
前記種棒が、先端が半球形状である半球部を有する円柱状種棒であり、前記ガラス微粒子が堆積される堆積部である前記半球部の少なくとも表面が粗面化処理されてなり、
前記種棒の粗面化処理された面の面粗さRzが35μm以上であることを特徴とする多孔質石英ガラス母材の製造方法。
【請求項2】
前記種棒の粗面化処理された面が、1mm以下のピッチで深さが0.5mm以上1.5mm以下の凹凸を有することを特徴とする請求項1記載の多孔質石英ガラス母材の製造方法。
【請求項3】
前記多孔質石英ガラス母材が、35kgを超える重量を有することを特徴とする請求項1又は2記載の多孔質石英ガラス母材の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法により得られる多孔質石英ガラス母材を用いることを特徴とする石英ガラスインゴットの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法に用いられる種棒であって、
前記種棒が、先端が半球形状である半球部を有する円柱状種棒であり、前記ガラス微粒子が堆積される堆積部である前記半球部の少なくとも表面が粗面化処理されてなり、
前記種棒の粗面化処理された面の面粗さRzが35μm以上であることを特徴とする種棒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質石英ガラス母材の製造方法、該方法に用いられる種棒及び石英ガラスインゴットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成石英ガラスは光学、半導体、化学産業において広く用いられ、特にマイクロリソグラフィーにおける投影や露光システム用レンズ材としてや半導体製造冶具や光ファイバー用材料として多く用いられる。
【0003】
合成石英ガラスインゴットの製造には円柱状の多孔質石英ガラス母材(スート体)を製造し、それを焼結透明化することが一般的である。スート体の製造ではVAD(Vapor phase Axial Deposition)法が知られており、回転する種棒表面に珪素含有原料を火炎加水分解、又は熱分解によって微細なシリカ微粒子に変換し堆積することによりスート体を製造する。
【0004】
VAD法によるスート体の製造では、シリカ微粒子を出発材(種棒)に堆積させ、その種棒を回転させながら上方に引き上げていくことで軸方向にスート体を成長させる。スート体は種棒により吊るすように支持されるため種棒とスート体の接合部位の機械的強度が重要である。石英インゴットの大型大重量化ではスート体の自重が増える為、更に機械的強度が強いものが必要である。機械的強度を上げる為に様々な技術が発明されているが製造コストの増加なしに安価に実現する方法はない。
【0005】
特許文献1は、VAD法で製造したスート体が自重で落下する事を防ぐために、固着力を増加させるためにスート体製造時にスート体製造反応装置内もしくは外からヒーター等で種棒とスート体の接合部を加熱し、半ガラス化する事で機械的強度を増加させる方法を記載している。しかしながら、反応装置内または外にヒーターを設置することは装置の費用がかさむ事に加え、メンテナンス性も悪化し定常的な製造を行うに当たり容易ではない。
【0006】
尚、特許文献1には、『密着力を高めるため、バーナを介した火炎加水分解反応時の温度を水素供給量増により高め、これにより酸化物粉末棒を半ガラス化の状態で形成することも考えられているが、この際の水素量をどの程度に設定すべきかは技術的に確立しておらず、』(特許文献1、明細書2頁左上欄)との記載がある。本発明は特許文献1では確立されていないと記載されている酸水素火炎による半ガラス化を容易に安定的に実現する方法を提供するものである。
【0007】
また、特許文献2は、種棒とスート体の接続強度を上げる為の方法として、石英系材料からなる支持棒の外側に粉末成形法により成形体を作成し、それを種棒として使用する方法を記載している。特許文献2は、その作用として粉末成形体を形成する材料であるシリカ粉末粒子の寸法に対応した凹凸があり、スート体との接触面積が大きくなる事で機械的強度が増すとされている。しかしながら、粉末成形を種棒に実施する事は大きな費用と時間と労力の増加となる。
【0008】
更に、特許文献2記載の方法は、種棒形状の面で粉末成形体上にシリカ微粒子を堆積させスート体を得ることになるため、成長初期は粉末成形体の形状に沿ってスート体は成長する。従って、接触面積の増加を狙い段差や突起を種棒に形成すると、成長に伴い種棒の形状を顕著にしたスート体の形状となり、逆にスート体内の密度差が増しクラックが発生する原因となる。
【0009】
また、特許文献3は、少なくとも一つの環状溝を有する円柱状の種棒を提案している。しかしながら、特許文献2や特許文献3記載の形状の種棒は、その形状の変化が大きすぎクラックが多数発生し、安定した製造を行うには製造オペレーションの熟練した技能がなくては行うことが出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭57−200236号公報
【特許文献2】特開平6−183770号公報
【特許文献3】特開2011−256069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みなされたもので、VAD法において大重量にも耐えうる機械的強度を容易に且つ安価に確保できる種棒、及び該種棒を用いた多孔質石英ガラス母材の製造方法及び石英ガラスインゴットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の多孔質石英ガラス母材の製造方法は、回転する種棒にガラス微粒子を堆積させて、多孔質石英ガラス母材を製造する方法であって、前記種棒が、前記ガラス微粒子が堆積される堆積部の少なくとも先端部表面が粗面化処理されてなることを特徴とする。
【0013】
前記種棒が、先端が半球形状である半球部を有する円柱状種棒であり、少なくとも前記半球部の表面が粗面化処理されてなることが好適である。
【0014】
前記種棒の粗面化処理された面の面粗さRzが35μm以上であることが好ましい。本発明において、前記面粗さRzはJIS B 0601:2001に基づき算出される。また、前記種棒の粗面化処理された面が、1mm以下のピッチで深さが0.5mm以上1.5mm以下の凹凸を有することが好適である。
【0015】
本発明の石英ガラスインゴットの製造方法は前記製造方法により得られる多孔質石英ガラス母材を用いることを特徴とする。
【0016】
本発明の種棒は、前記製造方法に用いられる種棒であって、前記ガラス微粒子が堆積される堆積部の少なくとも先端部表面が粗面化処理されてなることを特徴とする種棒である。
【0017】
本発明の多孔質石英ガラス母材は、前記方法により得られる、多孔質石英ガラス母材である。
【0018】
本発明の石英ガラスインゴットは、前記方法により得られる、石英ガラスインゴットである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、VAD法において大重量にも耐えうる機械的強度を容易に且つ安価に確保できる種棒、及び該種棒を用いた多孔質石英ガラス母材の製造方法及び石英ガラスインゴットの製造方法を提供することができるという著大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】種棒の形状の例を示す概略説明図であり、(a)〜(c)は本発明の種棒の例、(d)及び(e)は従来の種棒の例をそれぞれ示す。
図2】加熱された表面の熱の集中を示す概略説明図であり、(a)は粗面化処理された表面の例、(b)は平滑な表面の例をそれぞれ示す。
図3】実施例1及び比較例2の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。図示において、同一部材は同一符号で表される。
【0022】
本発明は、回転する種棒にガラス微粒子を堆積させて、多孔質石英ガラス母材を製造する方法において、前記ガラス微粒子が堆積される堆積部の少なくとも先端部表面が粗面化処理されてなる種棒を用いるものである。
【0023】
図1は種棒の形状の例を示す概略説明図であり、(a)〜(c)は本発明の種棒の例、(d)、(e)は従来の種棒の例をそれぞれ示す。図2は、加熱された表面の熱の集中を示す概略説明図であり、(a)は粗面化処理された表面の例、(b)は平滑な表面の例をそれぞれ示す。
【0024】
図2(a)に示した如く、粗面化処理された表面10に加熱20を行った場合、尖った先端部は単位体積あたりの表面積が大きく、温度が高くなりやすく極局所的に高温になる。一方、平滑な表面100の場合は、熱が分散する為、極局所的な高温部位は発生しない[図2(b)]。
【0025】
図1の(a)〜(c)に、ガラス微粒子の堆積部に粗面領域Rを有する本発明の種棒の例を示す。図1(a)〜(c)及び図2(a)に示した如く、VAD法でスート体を製造する際に用いる種棒のシリカ微粒子堆積領域の面を粗くする事により、酸水素火炎にて加熱した際に細かい凸部の先端が局所的に高温化し、その細かい局所的な高温部にシリカ微粒子が堆積するとほぼ同時に半ガラス状態となる。半ガラスになったその部位の熱伝導度はシリカ微粒子が堆積しただけの部位に比べ高くなるため、その部位が核となり半ガラス化の領域が広がる。その繰り返しによりスート体と種棒との間に半ガラスの接合部領域を容易に形成することができ、種棒とスート体界面の機械的強度を大きくすることが出来る。
【0026】
堆積部の表面積を大きくするために、例えば、特許文献2及び3のように接触面積を大きくしたり突起や溝などの形状変化を設けることが有効とされているが、該方法は効果はあるが大重量化した場合、それだけでは落下のリスクを完全には回避できない。そればかりか後述するがその形状的変化による悪影響も存在する。その為、大重量を支える事のできる半ガラス領域を形成する事が重要である。
【0027】
図1(d)は従来の全て平滑な面である先端半球状の円柱状種棒であるが、このような堆積部の表面が粗くなく平滑な場合、図2(b)に示した如く、熱が分散し局所的な高温部位が発生せず、種棒先端の半球全体若しくは半球及び側面のすべてを半ガラス化できる温度まで上げる必要がある。その為、大量の可燃性ガス及び助燃性ガスを必要としてしまう。更に半ガラス化を形成する際の核がない為、半ガラスが自然発生する量や堆積工程開始からのタイミングは安定せず、製造における安定性は極めて乏しい。
【0028】
図1の(a)〜(c)は本発明の種棒であり、(a)は先端が半球形状である半球部を有する円柱状種棒であって、該半球部の全表面が粗面である種棒であり、(b)は先端が半球形状である半球部を有する円柱状種棒であって、該半球部の全表面及び下部側面が粗面である種棒であり、(c)は先端部が平面である円柱状種棒であって、先端部表面と下部側面が粗面である種棒である。図1においてRは粗面領域である。
【0029】
本発明で用いられる種棒は、ガラス微粒子が堆積される堆積部の少なくとも先端部表面が粗面である種棒である。該種棒の粗面領域Rは、堆積部の先端部のみでもよく、堆積部の先端部及び下部側面や、堆積部の全表面でもよい。ガラス微粒子堆積工程の極初期において種棒とスート体が接合する部位を粗面とした種棒を用いることにより、容易且つ安定して半ガラス状態を形成することができ、半ガラス領域の層によりスート体が種棒より抜け落ちないように機械的強度を増すことができる。特に、半ガラス領域の軸方向の厚みtが20mm以上40mm以下であることが好適である。
【0030】
種棒の形状は特に制限はないが、シンプルな形状が好ましく、図1(a)〜(c)に示した如く、円柱状がより好ましい。該円柱状種棒の先端形状は、半球状や急激な変化のない滑らかな曲線で形成されたものや平面が好適である。
円柱状の種棒を用いる場合、その直径は特に制限はなく、製造される多孔質石英ガラス母材の大きさに応じて適宜選択すればよいが、30〜100mmが好ましい。
【0031】
図1(e)は形状変化のある種棒の一例であるが、種棒に形状の変化を設けた場合、その影響でスート体に大きな密度の差が発生し、重量による問題でなくても落下やクラックといった問題が生じる場合がある。よって、本発明では、前述したシンプルな形状が好適である。
本発明の種棒を使用することにより、強度を増加することの出来る半ガラス化領域を再現性高く安定して製造することが出来る為、熟練した技能は必要とせず容易に製造することが出来る。
【0032】
本発明の種棒の材質は耐熱性であればよく特に制限はないが、石英ガラスや、アルミナまた炭化珪素、窒化珪素などのファインセラミックが挙げられ、石英ガラス製が好適である。
【0033】
本発明の種棒において粗面化処理の方法は特に制限はなく、研削、切削、成形、ブラスト等により行うことができる。
【0034】
種棒の粗面化処理された面の表面粗さは、最大高さRzが35μm以上であることが好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上が更に好ましい。表面粗さRzが35μm以上のものを用いることにより、堆積工程開始から半ガラス領域が形成されるまでの時間のバラツキが小さくなり、半ガラス領域の大きさも安定化し、バラツキが大幅に小さくなる。またスート体の落下の発生率も著しく減少することができる。
【0035】
また、種棒の粗面化処理された面が、1mm以下のピッチで深さが0.5mm以上1.5mm以下の凹凸を有することが好適である。
【0036】
種棒にガラス微粒子を堆積させる方法は特に制限はなく、公知のVAD法の条件により行うことができる。例えば、四塩化珪素等のガラス形成原料を酸水素火炎で加水分解してガラス微粒子を生成させ、回転支持された種棒の堆積部にガラス微粒子を堆積させ、半ガラス領域を形成し、多孔質石英ガラス母材を製造する。
【0037】
本発明方法は、VAD法において大重量にも耐えうる機械的強度を容易に且つ安価に確保できる為、35kgを超える大重量の多孔質石英ガラス母材の製造に好適であり、75kg以上の多孔質石英ガラス母材の製造に特に好適である。本発明方法によれば、35kg以上の大重量の多孔質石英ガラス母材を安定した製造を行うことができ、従来困難であった75kg以上の多孔質石英ガラス母材の製造の安定化も可能であり、さらには150kg以上の極めて大重量の多孔質石英ガラス母材をも製造可能である。
【0038】
本発明の石英ガラスインゴットの製造方法は、本発明方法により得られる多孔質石英ガラス母材を用いるものである。該石英ガラスインゴットの製造方法としては該多孔質石英ガラス母材を用いて公知の方法によりガラス化し、石英ガラスインゴットを製造すればよく、特に制限はないが、脱水処理及び焼結透明化し、石英ガラスインゴットを得ることが好適である。本発明方法により得られる多孔質石英ガラス母材は、堆積工程だけでなく堆積工程以降の工程でも落下が起こりにくい為、石英ガラスインゴットを落下せずに安定して製造することができる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0040】
(実施例1)
円柱状の無垢の石英ロッド(直径φ100mm)の先端にR50の半球を研削加工で形成し、その時の加工面の面粗さをRz=50μmにし、種棒を作成した。種棒の粗面の表面粗さの測定は、表面粗さ計(小形表面粗さ測定機:サーフテストSJ−210、株式会社ミツトヨ製)を用い、JIS B 0601:2001に基づき行った。
【0041】
該種棒を用い、VAD法により原料に四塩化珪素,燃性ガスに水素,支燃性ガスに酸素,不燃性ガスに窒素を同芯円多重管バーナーに導入し、燃焼火炎中で加水分解反応させながらスート体を製造し、半ガラス領域を製造した。製造条件の詳細を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
種棒を除く重量が40±5kgのスート体を20本製造したところ、スート体の破断やクラックはなく製造でき且つ半ガラス領域の厚みtはtmin=28mm、tmax=33mm、tcenter=31mmとバラツキは小さく、安定して製造できた。図3に、製造した20本のスート体のガラス領域の軸方向の厚みの結果を示す。ガラス領域の軸方向の厚みは成長中スート体の成長先端部のCCDカメラの画像解析により測定した。また、堆積工程開始から半ガラス領域が形成されるまでの時間は7〜15分であり、そのバラツキが小さかった。また、スート体製造中のスート体の落下の発生はなかった。
【0044】
堆積したスート体を1000〜1300℃で加熱する事で脱水し更に1300〜1500℃で加熱し焼結透明化を行ったがそのハンドリング中や処理中においても落下および破断することなく40±5kgの合成石英ガラスインゴットを得ることが出来た。
【0045】
(実施例2)
円柱状の無垢の石英ロッド(直径φ100mm)の先端にR50の半球を研削加工で形成し、さらに1mm以下のピッチで深さd:0.5mm≦d≦1.5mmの凹凸をその半球部に加工形成し、種棒を作成した。
該種棒を用い、VAD法により原料に四塩化珪素,燃性ガスに水素,支燃性ガスに酸素,不燃性ガスに窒素を同芯円多重管バーナーに導入し、燃焼火炎中で加水分解反応させながらスート体を製造し、半ガラス領域を製造した。製造条件の詳細を表1に示す。
【0046】
種棒を除く重量が40kgのスート体を製造したところ、スート体の破断やクラックはなく製造でき且つ半ガラス領域の厚みtはt=32mmとほぼ実施例1と同じ厚みであった。
さらにスート体を加熱炉において脱水、焼結透明化を行ったがそのハンドリング中や処理中においても落下および破断することなく40kgの合成石英ガラスインゴットを得ることが出来た。
【0047】
(実施例3)
円柱状の無垢の石英ロッド(直径φ100mm)の先端にR50の半球を研削加工で形成し、その時の加工面の面粗さをRz=100μmにし、種棒を作成した。
該種棒を用い、VAD法により原料に四塩化珪素,燃性ガスに水素,支燃性ガスに酸素,不燃性ガスに窒素を同芯円多重管バーナーに導入し、燃焼火炎中で加水分解反応させながらスート体を製造し、半ガラス領域を製造した。製造条件の詳細を表1に示す。
【0048】
種棒を除く重量が40kgのスート体を製造したところ、スート体の破断やクラックはなく製造でき且つ半ガラス領域の厚みtはt=34mmとほぼ実施例1と同じ厚みであった。さらに5回同様のスート体を製造したが半ガラス化の厚みは32mmから34mmの間とバラツキが実施例1よりも小さかった。
さらにスート体を加熱炉において脱水、焼結透明化を行ったがそのハンドリング中や処理中においても落下および破断することなく40kgの合成石英ガラスインゴットを得ることが出来た。
【0049】
(実施例4)
実施例1と全く同様の条件にて成長時間のみを延長し種棒を除く重量が80kgのスート体を製造したところ、スート体の破断やクラックはなく製造できた。
さらにスート体を加熱炉において脱水、焼結透明化を行ったがそのハンドリング中や処理中においても落下および破断することなく80kgの合成石英ガラスインゴットを得ることが出来た。
【0050】
(実施例5)
実施例1と全く同様の条件にて成長時間のみを延長し種棒を除く重量が160kgのスート体を製造したところ、スート体の破断やクラックはなく製造できた。
さらにスート体を加熱炉において脱水、焼結透明化を行ったがそのハンドリング中や処理中においても落下および破断することなく160kgの合成石英ガラスインゴットを得ることが出来た。
【0051】
(実施例6)
実施例2と全く同様の条件にて成長時間のみを延長し種棒を除く重量が80kgのスート体を製造したところ、スート体の破断やクラックはなく製造できた。
さらにスート体を加熱炉において脱水、焼結透明化を行ったがそのハンドリング中や処理中においても落下および破断することなく80kgの合成石英ガラスインゴットを得ることが出来た。
【0052】
(実施例7)
実施例2と全く同様の条件にて成長時間のみを延長し種棒を除く重量が160kgのスート体を製造したところ、スート体の破断やクラックはなく製造できた。
さらにスート体を加熱炉において脱水、焼結透明化を行ったがそのハンドリング中や処理中においても落下および破断することなく160kgの合成石英ガラスインゴットを得ることが出来た。
【0053】
(実施例8)
実施例3と全く同様の条件にて成長時間のみを延長し種棒を除く重量が80kgのスート体を製造したところ、スート体の破断やクラックはなく製造できた。
さらにスート体を加熱炉において脱水、焼結透明化を行ったがそのハンドリング中や処理中においても落下および破断することなく80kgの合成石英ガラスインゴットを得ることが出来た。
【0054】
(実施例9)
実施例3と全く同様の条件にて成長時間のみを延長し種棒を除く重量が160kgのスート体を製造したところ、スート体の破断やクラックはなく製造できた。
さらにスート体を加熱炉において脱水、焼結透明化を行ったがそのハンドリング中や処理中においても落下および破断することなく160kgの合成石英ガラスインゴットを得ることが出来た。
【0055】
(比較例1)
種棒として、実施例1と同じサイズの石英ロッドであり、先端の半球部は平滑面でRz≦3μmの種棒を用いた。種棒を変更した以外は実施例1と同様の方法によりスート体を製造したが、実施例1と同一水素、酸素の量では半ガラス領域を製造することは出来なかった。
種棒を除く重量が40±5kgのスート体を2本製造したところ、2本ともスート体と種棒の接合部より抜けおちた。その為、それ以上の実験は行わなかった。
【0056】
(比較例2)
種棒として、実施例1と同じサイズの石英ロッドであり、先端の半球部は平滑面でRz≦3μmの種棒を用いた。種棒を変更し、半ガラス化領域が発生するまで水素及び酸素の量を増加させた以外は実施例1と同様の方法によりスート体を製造した。製造条件の詳細を表1に示す。
【0057】
水素及び酸素を増やした事で半ガラス化領域は製造する事が出来た。種棒を除く重量が40±5kgのスート体を20本製造したところ、内1本のスート体が種棒の接合部より抜け落ちた。半ガラス領域の厚みtはtmin=6mm、tmax=42mm、tcenter=24mmとバラツキは大きかった。図3に、製造した20本のスート体のガラス領域の軸方向の厚みの結果を示す。ちなみに抜け落ちた1本の半ガラス領域の厚みはtmin=6mmと同一のスート体であり、半ガラス領域が薄すぎた事で強度が不足していたと判断される。また、使用する水素、酸素量が増えることによる製造コストも増加する
【0058】
(比較例3)
種棒に図1(e)に示した形状変化のあるものを使用した。種棒本体はφ50、スート体と接合する先端から50mmはR50の半球とした。種棒を変更した以外は実施例1と同様の方法によりスート体を製造した。製造条件の詳細を表1に示す。接合面積は増えるが種棒の径が急激に変化する段の部位は成長に伴いより大きい段差となり、成長初期の段階でスート体にクラックが入り、成長を継続する事が出来なかった。
【符号の説明】
【0059】
10:粗面化処理された表面、20:加熱、100:平滑な表面、R:粗面領域。
図1
図2
図3