(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916705
(24)【登録日】2021年7月20日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】自動運転の自車位置検出装置
(51)【国際特許分類】
G01S 19/48 20100101AFI20210729BHJP
G01S 19/50 20100101ALI20210729BHJP
【FI】
G01S19/48
G01S19/50
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-187709(P2017-187709)
(22)【出願日】2017年9月28日
(65)【公開番号】特開2019-60814(P2019-60814A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】財前 元希
【審査官】
藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−296138(JP,A)
【文献】
特開2017−116450(JP,A)
【文献】
特開平9−319872(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0150437(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0191461(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00− 5/14
G01S 19/00−19/55
G01B 11/24
G01C 21/26−21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行している自車進行路の同一事象を検出する複数のセンサユニットと、
前記各センサユニットで検出した前記同一事象を比較し、その差分が予め設定した信頼度判定閾値に収まっている場合に信頼性ありと判定する信頼度判定手段と、
前記信頼度判定手段で信頼性ありと判定された場合、前記各センサユニットで検出した前記同一事象に基づいて自車位置を検証する自車位置検証手段と
を備える自動運転の自車位置検出装置において、
前記同一事象は前記自車進行路の道路曲率であり、
前記信頼度判定手段は現在時間から所定過去時間までの前記各センサユニットで検出した前記道路曲率の差分が前記信頼度判定閾値に収まっている場合に前記各センサユニットは信頼性ありと判定し、
前記信頼度判定手段で信頼性ありと判定された場合、前記所定過去時間よりも前記現在時間側の予め設定した近過去時間に複数の前記センサユニットの1つで検出した前記道路曲率の検出位置を基準とする前記自車位置の車幅方向横位置との差分である自車横位置偏差を求める自車横位置演算手段を更に有し、
前記自車位置検証手段は、他の1つの前記センサユニットで検出した前記道路曲率上の前記自車位置を、前記自車横位置演算手段で求めた前記自車横位置偏差で補正し、補正した該自車位置に基づいて前記現在時間の自車位置を再計算する
ことを特徴とする自動運転の自車位置検出装置。
【請求項2】
複数の前記センサユニットはカメラユニットとロケータユニットであり、
前記カメラユニットが車載カメラと前記自車横位置演算手段とを有し、
前記自車横位置演算手段は、前記車載カメラで撮像した自車両前方の走行環境画像情報に基づき左右を区間する区画線間の中央の曲率を前記道路曲率として取得すると共に、該区画線間の中央を基準とする前記自車横位置偏差を算出し、
前記ロケータユニットは、測位衛星からの測位信号に基づいて求めた前記自車位置を道路地図データ上にマップマッチングして走行車線を特定すると共に、該道路地図データに記憶されている該走行車線の道路曲率を取得する自車位置推定手段を有し、
前記自車位置推定手段で前記自車位置検証手段が実行され、該自車位置検証手段は前記道路地図データの前記道路曲率上にある前記自車位置を、前記自車横位置演算手段で求めた前記自車横位置偏差で補正する
ことを特徴とする請求項1記載の自動運転の自車位置検出装置。
【請求項3】
前記所定過去時間は現在時間から3秒前の時間であり、前記近過去時間は現在時間から1秒前の時間である
ことを特徴とする請求項1或いは2記載の自動運転の自車位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車位置を検出する複数のセンサユニットによる多重系を損なうことなく、自車位置の検出精度を高めることができるようにした自動運転の自車位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動運転では、安全性、及び高信頼性を確保する目的で車載側センサユニットの多重化が図られている。センサユニットの多重化により一方のセンサユニットが失陥した場合であっても、他方のセンサユニットで補間することでフェールセーフを実現することができる。
【0003】
その際、多重化されているセンサユニットを相互利用して検出精度を高めようとすることも考えられる。しかし、多重化されたセンサユニットを相互利用した場合、1つのセンサユニットが失陥すると、他方のセンサユニットの信頼性が確保できず、多重系が損なわれてしまう。
【0004】
例えば、自車両にロケータユニットと前方認識手段とが搭載されている場合、ロケータユニットはGNSS((Global Navigation Satellite System )衛生からの測位信号に基づき道路地図データ上の自車位置を推定する。一方、前方認識手段は、自車両前方の走行環境を、ステレオカメラユニットや単眼カメラとレーザレーダとを組み合わせたユニットで取得した自車両前方の走行環境から走行車線上の自車位置を推定する。
【0005】
この場合、自動運転時の車線維持制御において、ロケータユニットで検出した道路地図上の自車位置を、前方認識手段で推定した走行車線上の自車位置で修正することで、自車位置検出精度を高めることができる。しかし、相互依存の関係にある2つのセンサの一方が失陥した場合、他方のセンサのみでの自動運転は安全性、信頼性を確保することが困難となり、多重系が損なわれる。
【0006】
従って、例えば、特許文献1(特開2003−15742号公報)に開示されているように、同一事象を検出するセンサユニットを、相互依存させることなく完全に独立させた多重系は、常に確保しておく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−15742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した自車位置を推定する技術において、センサユニットの多重系を損なうことなく、換言すれば、相互依存することなく各センサユニットで取得した情報を相互利用することができれば、自動運転時における自車位置をより高い精度で検出することが可能となる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、同一事象を検出するセンサユニットの多重系を損なうことなく、各センサユニットの情報を相互利用可能として、自動運転時における自車位置を高い精度で検出することのできる自動運転の自車位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、自車両が走行している自車進行路の同一事象を検出する複数のセンサユニットと、前記各センサユニットで検出した前記同一事象を比較し、その差分が予め設定した信頼度判定閾値に収まっている場合に信頼性ありと判定する信頼度判定手段と、前記信頼度判定手段で信頼性ありと判定された場合、前記各センサユニットで検出した前記同一事象に基づいて自車位置を検証する自車位置検証手段とを備える自動運転の自車位置検出装置において、前記同一事象は前記自車進行路の道路曲率であり、前記信頼度判定手段は現在時間から所定過去時間までの前記各センサユニットで検出した前記道路曲率の差分が前記信頼度判定閾値に収まっている場合に前記各センサユニットは信頼性ありと判定し、前記信頼度判定手段で信頼性ありと判定された場合、前記所定過去時間よりも前記現在時間側の予め設定した近過去時間に複数の前記センサユニットの1つで検出した前記道路曲率の検出位置を基準とする前記自車位置の車幅方向横位置との差分である自車横位置偏差を求める自車横位置演算手段を更に有し、前記自車位置検証手段は、他の1つの前記センサユニットで検出した前記道路曲率上の前記自車位置を、自車横位置演算手段で求めた前記自車横位置偏差で補正し、補正した該自車位置に基づいて前記現在時間の自車位置を再計算する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数のセンサユニットが信頼性を有していると判定した場合、1つのセンサユニットで現在時間に近い近過去時間に検出した自車位置を、他のセンサユニットで求めた近過去時間の自車横位置偏差で補正し、補正した該自車位置に基づいて現在時間の自車位置を再計算するようにしたので、同一事象である道路曲率を検出するセンサユニットの多重系を損なうことなく、各センサユニットの情報を相互利用することで自車位置を高い精度で求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】カメラ情報と地図情報との取得タイミングを示すタイムチャート
【
図4】自動運転により自車両を道路地図上の道路曲率に沿って走行させる状態を示す説明図
【
図5】自動運転により自車両を道路地図上の道路曲率に沿って走行させるに際しカメラ情報から取得したカメラ曲率にて道路曲率を補正する態様を示す説明図
【
図6】地図曲率とカメラ曲率との差分を示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
図1に示す自車位置検出装置1は、自車両M(
図4参照)に搭載されている。この自車位置検出装置1は、同一事象である道路曲率を検出するセンサユニットとして、ロケータユニット11及びカメラユニット21を有し、この両ユニット11,21が互いに依存することのない完全独立の多重系を構成している。
【0014】
ロケータユニット11は道路地図上の自車位置を推定するものであり、一方、カメラユニット21は自車両Mの走行車線の左右を区画する区画線を認識し、この区画線の中央を基準とする自車両Mの車幅方向の横位置偏差を検出する。
【0015】
ロケータユニット11は、自車位置を推定するロケータ演算部12と記憶手段としての高精度道路地図データベース18とを有している。このロケータ演算部12、及び後述する自車横位置演算手段としての自車横位置演算部21d、走行制御部22は、CPU,RAM,ROM等を備える周知のマイクロコンピュータ、及びその周辺機器で構成されており、ROMにはCPUで実行するプログラムやベースマップ等の固定データ等が予め記憶されている。
【0016】
このロケータ演算部12の入力側に、自車両Mに作用する前後加速度を検出する前後加速度センサ13、前後左右各車輪の回転速度を検出する車輪速センサ14、自車両Mの角速度或いは角加速度を検出するジャイロセンサ15、複数の測位衛星から発信される測位信号を受信するGNSS受信機16等、自車両Mの位置(自車位置)を推定するに際し、必要とするセンサ類が接続されている。
【0017】
ロケータ演算部12は、自車位置を推定する機能として自車位置推定手段としての自車位置推定部12a、地図情報取得部12bを備えている。又、高精度道路地図データベース18はHDD等の大容量記憶媒体であり、高精度な道路地図情報(ダイナミックマップ)が記憶されている。この高精度道路地図情報は、自動運転を行う際に必要とする車線データ(車線幅データ、車線中央位置座標データ、車線の進行方位角データ、制限速度等)を保有しており、この車線データは、道路地図上の各車線に数メートル間隔で格納されている。
【0018】
地図情報取得部12bは、例えば運転者が自動運転に際してセットした目的地に基づき、現在地から目的地までのルート地図情報を高精度道路地図データベース18に格納されている地図情報から取得し、取得したルート地図情報(ルート地図上の車線データ)を自車位置推定部12aへ送信する。自車位置推定部12aは、GNSS受信機16で受信した測位信号に基づき自車両Mの位置座標を取得し、この位置座標をルート地図情報上にマップマッチングして、道路地図上の自車位置を推定すると共に走行車線を特定し、道路地図データに記憶されている走行車線中央の道路曲率を取得する。
【0019】
更に、自車位置推定部12aは、トンネル内走行等のようにGNSS受信機16の感度低下により測位衛星からの有効な測位信号を受信することができない環境では、車輪速センサ14で検出した車輪速に基づき求めた車速、ジャイロセンサ15で検出した角速度、前後加速度センサ13で検出した前後加速度に基づいて自車位置を推定する自律航法に切替えて、道路地図上の自車位置を推定する。
【0020】
一方、カメラユニット21は、車室内前部の上部中央に固定されており、車幅方向中央を挟んで左右対称な位置に配設されているメインカメラ21a及びサブカメラ21bからなる車載カメラ(ステレオカメラ)と、画像処理ユニット(IPU)21c、及び自車横位置演算部21dとを有している。このカメラユニット21は、両カメラ21a,21bで撮像した自車両M前方の前方走行環境画像情報をIPU21cにて所定に画像処理して、自車横位置演算部21dへ送信する。
【0021】
自車横位置演算部21dは、受信した自車両Mの前方走行環境画像情報に基づき、自車両Mが走行する進行路(自車進行路)の左右を区画する区画線の道路曲率[1/m]、及び左右区画線間の幅(車幅)を求める。この道路曲率、及び車幅の求め方は種々知られているが、例えば、道路曲率は前方走行環境画像情報に基づき輝度差による二値化処理にて、左右の区画線を認識し、最小二乗法による曲線近似式等にて左右区画線の曲率を所定区間毎に求め、更に、両区画線間の曲率の差分から車幅を算出する。
【0022】
そして、この左右区間線の曲率と車線幅とに基づき車線中央の道路曲率(本実施形態では、これを「カメラ曲率」と称する)を求め、更に、車線中央を基準とする自車両Mの横位置偏差、正確には、車線中央から自車両Mの車幅方向中央までの距離(自車横位置偏差Xdiff)を算出する。
【0023】
ロケータ演算部12の自車位置推定部12aで推定した自車位置、及びカメラユニット21の自車横位置演算部21dで求めた自車横位置偏差Xdiffは、走行制御部22で読込まれる。ロケータユニット11とカメラユニット21とは完全独立の多重系を構成している。
【0024】
走行制御部22は、自車位置推定部12aで推定した自車位置の道路地図上の車線中央からの横位置と、自車横位置演算部21dで求めた自車横位置とを常時比較する。そして、その差分(の絶対値)が予め設定した閾値を超えている場合、自車位置推定部12aで推定した自車位置と自車横位置演算部21dで求めた自車横位置との何れかの信頼度が低下していると判定し、自動運転を停止すると共に、図示しない報知手段を介して運転者にその旨を報知する。
【0025】
自動運転が停止すると、走行制御部22はカメラユニット21の自車横位置演算部21dで求めた自車横位置に基づき、自車両Mが車線中央に沿って走行させる車線維持制御を実行する。その際、走行制御部22はカメラユニット21で左右区間線の一方又は双方を認識することができず、車線維持制御を継続することが困難と判定した場合は、車線維持制御を停止し、手動運転に切替える旨を運転者に報知した後、車線維持制御を停止させる。
【0026】
ところで、ロケータユニット11とカメラユニット21とは、同時刻における自車両Mの横位置情報(自車横位置情報)を有している。従って、ロケータユニット11で推定した自車横位置を、カメラユニット21で求めた自車横位置情報で補正すれば、自車位置を高い精度で推定することが可能となるが、センサユニットの多重系を維持することが困難になる。
【0027】
そのため、上述した自車位置推定部12aは、自車横位置演算部21dで求めた現在の自車横位置情報より以前(過去)の自車横位置情報で、同様に以前(過去)に求めた自車位置を補正することで、多重系の完全独立を維持した状態で、自車位置の検出精度を高めるようにしている。
【0028】
上述した自車位置推定部12aで求める自車位置は、具体的には、
図2に示す自車位置検出ルーチンにて求める。このルーチンは、先ず、ステップS1で、GNSS受信機16で受信した自車位置情報を読込み、続く、ステップS2で、地図情報取得部12bで取得したルート地図情報に自車位置をマップマッピングする。その後、ステップS3へ進み、ルート地図情報にマップマッチングされた自車位置の道路地図上の道路曲率(以下、「地図曲率」と称する)RMPU[1/m]を読込む。
【0029】
次いで、ステップS4へ進み、カメラユニット21の自車横位置演算部21dで求めた自車進行路の道路曲率(以下、「カメラ曲率」)RCAM [1/m]を読込む。尚、本発明では、実際の道路曲率がロケータユニット11とカメラユニット21で検出する同一事象であり、各ユニット11,21で検出した地図曲率RMPUとカメラ曲率RCAMとが同一事象を検出した値となる。
【0030】
そして、ステップS5へ進み、現在(t)から所定遠過去時間間(t-x')までの区間の演算周期Δt(
図3参照)毎に求めた両曲率RMPU(t)〜RMPU(t-x'),RCAM(t)〜RCAM(t-x')を読込み、それらの各曲率差分ΔR(t)〜ΔR(t-x')を算出する。その際、自車両Mが車線中央の地図曲率RMPUに沿って走行していると仮定した場合、自車両Mが車線中央と推定して走行している車線は、カメラユニット21からの画像情報によって取得した実際の車線中央(のカメラ曲率RCAM)から曲率差分ΔRだけ横位置がずれていることになる。尚、本実施形態では、遠過去時間(t-x')を現在時間(t)から3[sec]前に設定しているがこれに限定されるものではない。
【0031】
次いで、ステップS6へ進み、各曲率差分ΔR(t)〜ΔR(t-x')の絶対値|ΔR(t)|〜|ΔR(t-x')|と予め設定されている信頼度判定閾値ΔRoとを比較する。尚、信頼度判定閾値ΔRoは、カメラユニット21の信頼度を判定するものであり、本実施形態では±ΔRo=±3・10
−4に設定しているが、これに限定されるものではない。
【0032】
図3に示すように、地図曲率RMPU(t)〜RMPU(t-x'),RCAM(t)〜RCAM(t-x')は、演算周期Δt毎に前回値が順送りされ、地図曲率RMPU(t),RCAM(t)に最新の道路曲率が取り込まれる。従って、この信頼度判定は演算周期Δt毎に逐次実行される。
【0033】
そして、判定区間(t)〜(t-x')における全ての曲率差分の絶対値|ΔR(t)|〜|ΔR(t-x')|が信頼度判定閾値ΔRo以下の場合(|ΔR(t)|〜|ΔR(t-x')|≦ΔRo)、ステップS7へ進む。又、|ΔR(t)|〜|ΔR(t-x')|<ΔRo)の場合、ルーチンを抜ける。
【0034】
従って、
図4に実線で示すように、判定区間(t)〜(t-x')において、全ての曲率差分ΔR(t)〜ΔR(t-x')が信頼度判定閾値±ΔRo以内に収まっている場合、カメラユニット21の信頼性が高いと判定する。一方、同図に一点鎖線で示すように判定区間(t)〜(t-x')内で、信頼度判定閾値±ΔRoからはみ出た曲率差分ΔRが検出された場合は、NGと判定して、そのままルーチンを抜ける。尚、上述したステップS5,S6での処理が、本発明の信頼度判定手段に対応している。
【0035】
ところで、自車位置を正確に検出しようとした場合、現在の道路地図上の自車位置は、カメラユニット21で撮像した画像に基づいて求めた車線中央からの自車両Mの横位置分ずれているため、この横位置で修正すれば良い。しかし、上述したように、現在の道路地図上の自車位置をカメラユニット21で検出した横位置で修正した場合、制御系が統合されてしまい完全独立の多重系を維持することが困難となる。
【0036】
そのため、本実施形態では、ステップS7〜S9において、地図曲率RMPUとカメラ曲率RCAMとに基づき自車位置を検証し、自車位置の補正は過去時間(t-x)に検出した地図曲率RMPUとカメラ曲率RCAMとに基づいて行う。これにより、両ユニット11,21の完全独立された多重系を維持する。尚、このステップS7〜S9での処理が、本発明の自車位置検証手段に対応している。
【0037】
すなわち、先ず、ステップS7で、自車横位置演算部21d求めた過去時間(t-x)(以下、「近過去時間(t-x)」と称する)の自車横位置偏差Xdiffを読込む、近過去時間(t-x)は現在時(t)を基準とする時間であり、上述した遠過去時間(t-x')よりも現在側にある(t-x)<(t-x'))。因みに、本実施形態では、近過去時間(t-x)を現在時刻(t)から1[sec]前に設定しているが、これに限定されるものではない。
【0038】
次いで、ステップS8へ進むと、近過去時間(t-x)の道路地図上の自車位置を自車横位置偏差Xdiffで補正する。地図曲率RMPUとカメラ曲率RCAMとの曲率差分ΔRが時間(t)〜(t-x')の間、信頼度判定閾値±ΔRo内にあるため(
図4参照)、両曲率RMPU,RCAMは信頼性が高い。従って、カメラユニット21で検出した近過去時間(t-x)の車線中央からの自車横位置偏差Xdiffの信頼性も高く、この自車横位置偏差Xdiffで道路地図上の自車位置(自車横位置)を補正すれば、より高い自社位置精度を求めることができる。
【0039】
その後、ステップS9へ進み、近過去時間(t-x)において補正した道路地図上の自車位置を基準として現在時間(t)の自車位置を再計算し、ルーチンを抜ける。その結果、
図6に示すように、自車両Mの進行すべき目標進行路が近過去時間(t-x)から修正され、現在時間(t)の自車横位置偏差はより小さい値となる。
【0040】
このように、本実施形態では、所定判定区間(t)〜(t-x')での両曲率RMPU,RCAMの曲率差分ΔR(t)〜ΔR(t-x')が信頼度判定閾値±ΔRo内に収まっていれば、カメラユニット21からの画像に基づいて求めたカメラ曲率RCAMの信頼性が高いと判定し、近過去時間(t-x)における道路地図上の自車位置を自車横位置偏差Xdiffで修正して、現在時間(t)の道路地図上の自車位置を求めるようにしたので、ロケータユニット11とカメラユニット21との多重系を損なうことなく、各ユニット11,21の情報を相互利用可能として、自車位置をより高い精度で求めることができ、自動運転時における車線維持制御等を高い精度で制御することができる。
【0041】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば道路曲率を多重系で検出するセンサユニットは、ロケータユニット11,カメラユニット21に、他のセンサユニットを加えた3種類以上で構成されていても良い。この場合、各センサユニットで検出した道路曲率を互いに比較し、全ての差分が信頼度判定閾値±ΔRに収まっている場合、全てのセンサユニットは信頼性ありと判定する。
【符号の説明】
【0042】
1…自車位置検出装置、
11…ロケータユニット、
12…ロケータ演算部、
12a…自車位置推定部、
12b…地図情報取得部、
13…前後加速度センサ、
14…車輪速センサ、
15…ジャイロセンサ、
16…GNSS受信機、
18…高精度道路地図データベース、
21…カメラユニット、
21a…メインカメラ、
21b…サブカメラ、
21c…画像処理ユニット、
21d…自車横位置演算部、
22…走行制御部、
M…自車両、
RCAM…カメラ曲率、
RMPU…地図曲率、
Xdiff…自車横位置偏差、
ΔR…曲率差分、
ΔRo…信頼度判定閾値
Δt…演算周期