特許第6916735号(P6916735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6916735ガラス−セラミック物品の表面の構造的特徴を制御する方法およびそれによって形成された物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916735
(24)【登録日】2021年7月20日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】ガラス−セラミック物品の表面の構造的特徴を制御する方法およびそれによって形成された物品
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20210729BHJP
   C04B 41/91 20060101ALI20210729BHJP
   C04B 35/16 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   C03C15/00 B
   C03C15/00 D
   C04B41/91 B
   C04B35/16
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-544928(P2017-544928)
(86)(22)【出願日】2016年2月24日
(65)【公表番号】特表2018-511547(P2018-511547A)
(43)【公表日】2018年4月26日
(86)【国際出願番号】US2016019211
(87)【国際公開番号】WO2016138051
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2019年2月25日
(31)【優先権主張番号】62/121,012
(32)【優先日】2015年2月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ベイズモア,ブランドン アレン
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ユィホイ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ウンシク
(72)【発明者】
【氏名】ペトリウスキー,タミー リン
【審査官】 長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−021241(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/070869(WO,A1)
【文献】 米国特許第03616098(US,A)
【文献】 特表2013−504514(JP,A)
【文献】 特表2012−521958(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0092353(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0231542(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00
C04B 41/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス−セラミック物品の触覚を増加させる方法であって、
第一エッチング液による該ガラス−セラミック物品の表面の第一エッチングを実施することにより、該表面上に複数の構造的特徴を作製する工程であって、
該第一エッチング液が、フッ化水素酸および無機フッ化物塩を含み、ならびに 該複数の構造的特徴が、凸部および凹部を含む、工程と、
該第一エッチング液とは異なる第二エッチング液による該表面の第二エッチングを実施することにより、該複数の構造的特徴を削って、同じタイプの隣接する構造的特徴の間の距離を拡大させる工程であって、
該第二エッチングが該第一エッチングの後に行われ、
該第二エッチングの後に、同じタイプの隣接する構造的特徴の間の平均距離が、0.5μmから25μmの範囲であり、および該同じタイプの構造的特徴の密度が、9,000個から25,000個の構造的特徴/mmの範囲であり、ならびに
該第二エッチングの後の該表面の触覚が、該第一エッチングの前の該表面の該触覚よりも良好である、工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第一エッチング液が、重量パーセントにおいて、3〜6%のフッ化水素酸、2.5〜5%の無機フッ化物塩、および10〜25%の湿潤剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記湿潤剤が、グリコール類、グリセロール類、アルコール類、界面活性剤類、酸類、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記無機フッ化物塩が、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化水素カリウム、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第二エッチング液が、フッ化水素酸および鉱酸を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
同じタイプの隣接する構造的特徴の間の前記平均距離が、7μmから20μmの範囲である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記無機フッ化物塩が、前記ガラス−セラミック物品の前記表面と反応して、前記第一エッチングの際のマスクとしての機能を果たす結晶を形成する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
複数の構造的特徴を有する表面であって、
該複数の構造的特徴が、該表面の凸部および凹部を含み、ならびに
同じタイプの構造的特徴の間の平均距離が、0.5μmから25μmの範囲であり、該同じタイプの構造的特徴の密度が、9,000個から25,000個の構造的特徴/mmの範囲であり、前記凸部の平均高さが、80nm以上である、表面、
を含むガラス−セラミック物品。
【請求項9】
同じタイプの隣接する構造的特徴の間の前記平均距離が、7μmから20μmの範囲である、請求項8に記載のガラス−セラミック物品。
【請求項10】
前記表面が、使用者が該表面に触ることができるように位置決めされる、請求項8または9に記載のガラス−セラミック物品を含む電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条の下、2015年2月26日に出願された米国特許仮出願第62/121012号に対する優先権の恩典を主張するものであり、なお、本出願は当該仮出願の内容に依拠し、ならびに当該仮出願の全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ガラス−セラミック物品を修飾する方法に関し、より具体的には、ガラス−セラミック物品の表面を修飾することにより当該表面の触覚を増加させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電子デバイスにおけるガラスセラミックスの使用は、益々、一般的となっている。電子デバイスにおけるガラスおよびガラスセラミックスの使用は、光学特性および表面テクスチャを提供し、これらは、機能性、触覚、およびそのようなデバイスの外観にかなりの影響を及ぼす。特に、ガラスおよびガラスセラミックスの触覚(触れることによるテクスチャの知覚)は、近年、消費者の需要を満たすために重要となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
触覚は、外部物体または外部力を、身体(とりわけ、手および指)との接触を通じて知覚する能力である。触覚を評価するための因子は、物体(例えば、表面テクスチャ)および当該物体を評価する人の両方に基づいて特定することができる。したがって、触覚は、材料によって、および人によって異なり得る。触覚と物体の表面テクスチャとの間の相関性を確立すること、ならびに触覚を増加させるために物体の表面テクスチャを変更するための方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書において、(a)第一エッチング液によるガラス−セラミック物品の表面の第一エッチングを実施することにより、当該表面上に複数の構造的特徴を作製する工程であって、当該第一エッチング液が、フッ化水素酸および無機フッ化物塩を含み、ならびに当該複数の構造的特徴が、凸部および凹部を含む、工程と、(b)当該第一エッチング液とは異なる第二エッチング液による当該表面の第二エッチングを実施することにより、当該複数の構造的特徴を削って、同じタイプの隣接する構造的特徴の間の距離を拡大させる工程であって、当該第二エッチングが当該第一エッチングの後に行われ、当該第二エッチングの後に、同じタイプの隣接する構造的特徴の間の平均距離が、0.5μmから25μmの範囲であり、当該同じタイプの構造的特徴の密度が、9,000個から25,000個の構造的特徴/mmの範囲であり、および、当該第二エッチングの後の表面の触覚が、当該第一エッチングの前の当該表面の触覚よりも良好である、工程と、を含む、ガラス−セラミック物品の触覚を増加させる方法が開示される。いくつかの実施形態において、当該第一エッチング液は、湿潤剤も含み得る。
【0006】
本明細書において、複数の構造的特徴を伴う表面を有するガラス−セラミック物品であって、当該複数の構造的特徴が、当該表面における凸部および凹部を含み、同じタイプの構造的特徴の間の平均距離が、0.5μmから25μmの範囲であり、当該同じタイプの構造的特徴の密度が、9,000個から25,000個の構造的特徴/mmの範囲である、ガラス−セラミック物品も開示される。
【0007】
さらなる特徴および利点は以下の詳細な説明において述べられ、ある程度は、当業者にはその説明から容易に明らかとなるであろうし、あるいは、以下の詳細な説明および特許請求の範囲を含み、添付図面も含む、本明細書において説明されるような実施形態を実施することによって認められるであろう。
【0008】
上述の全般的説明および以下の詳細な説明の両方は、単なる例示であり、特許請求の範囲の本質および特質を理解するための概要または枠組みを提供することを意図していることは理解されたい。添付の図面は、さらなる理解を提供するために含められており、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を成すものである。当該図面は、1つまたは複数の実施形態を例示するものであり、説明と共に、様々な実施形態の原理および作用を説明するのに役に立つ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】触覚を増加させるためにガラス−セラミック物品の表面を修飾するための例示的プロセスの際の各段階でのガラス−セラミック物品の例示的断面図である。
図1B】触覚を増加させるためにガラス−セラミック物品の表面を修飾するための例示的プロセスの際の各段階でのガラス−セラミック物品の例示的断面図である。
図1C】触覚を増加させるためにガラス−セラミック物品の表面を修飾するための例示的プロセスの際の各段階でのガラス−セラミック物品の例示的断面図である。
図1D】触覚を増加させるためにガラス−セラミック物品の表面を修飾するための例示的プロセスの際の各段階でのガラス−セラミック物品の例示的断面図である。
図2図1Dの拡大図である。
図3】構造的特徴の平均距離に対する触覚のプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態は、ガラス−セラミック物品の触覚を増加させるための方法に関する。いくつかの実施形態において、触覚の増加は、一連のエッチング手順によりガラス−セラミック物品の表面を粗化することによって達成することができる。例えば、当該方法は、第一エッチング液によるガラス−セラミック物品の表面の第一エッチングを実施して当該表面上に構造的特徴を作製する工程と、それに続いて、第一エッチング液とは異なる第二エッチング液による当該表面の第二エッチングを実施して、表面の構造的特徴を削りおよび/または隣接する構造的特徴の距離を増加させる工程とを含み得る。図1A図1Dは、触覚を増加するためにガラス−セラミック物品の表面を修飾するための例示的プロセスの際の各段階におけるガラス−セラミック物品の例示的断面図を示している。
【0011】
図1Aは、反対の第一および第二表面102および104を有するガラス−セラミック物品100を示している。米国特許第5,491,115号明細書において詳細に説明されているように、ガラス−セラミックは、ガラス前駆体の少なくとも一部分に、実質的に均一なパターンで熱的に成長した少なくとも1つの結晶相を有する材料であり、なお、当該特許の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。ガラス−セラミックスは、少なくとも1つの結晶相を有することに加えて、非晶相も有する。ガラス−セラミックスは、食品の調製および給仕においてならびに電子デバイスにおいて用いられる物品の製作など、様々な分野での応用が可能である。ガラス−セラミック材料は、一般的に、1)一般的に核形成剤を含む、原材料の混合物を溶融させてガラスを製造する工程と、2)当該ガラスから物品を形成し、当該ガラスをその転移領域より低い温度に冷却する工程と、3)適切な処理によって当該ガラス物品を結晶化(すなわち、「セラミック化(ceramming)」させる工程と、によって製造される。ガラス−セラミックスは、様々な特性、例えば、ゼロ気孔率、高強度、半透明性、靱性、不透明性、顔料着色性、および乳白色など、を有する様々な材料を提供する。そのような特性は、ベースガラスの組成の選択ならびにベースガラスの熱処理および結晶化の制御によって付与され得る。好適なガラス−セラミック物品の例としては、以下のガラス−セラミック系、1)LiO−Al−SiO系(すなわち、LAS系)、2)MgO−Al−SiO系(すなわち、MAS系)、および3)ZnO−Al−SiO系(すなわち、ZAS系)、から形成されるものが挙げられる。
【0012】
好適な透明、半透明、または不透明なガラス−セラミック物品の例としては、LAS系のガラス−セラミック物品、すなわち、アルミノケイ酸リチウムガラス−セラミック物品、が挙げられる。米国特許第5,491,115号明細書において詳細に説明されるように、LAS系は、一般的に、1)透明なβ−石英固溶体、または2)不透明なβ−スポジュメン溶液(セラミック化温度に依存する)、の支配的な結晶相を含む、高度に結晶化されたガラス−セラミックスを提供し得る。そのようなLAS系ガラス−セラミックスの外観は、セラミック化条件、例えば、加熱処理など、を変えることにより、変えることができる。したがって、透明、半透明、または不透明なガラス−セラミックス(ウォーターホワイト、半透明、不透明、白色であっても、または様々に着色されてもよい)を実現することができる。より詳しくは、米国特許第5,491,115号明細書において詳細に説明されるように、LAS系の透明なガラス−セラミックスは、前駆体ガラスを、通常は約900℃を超えないような比較的低い温度においてセラミック化させることにより、実現することができる。その上、約1150℃のより高い温度での同じガラスのセラミック化は、不透明なβ−スポジュメン結晶相を生じ得る。そのような高温では、小さなβ−石英結晶は、β−スポジュメン結晶へと転化し得、サイズが大きく成長し、その結果、当該生成物を不透明にする。
【0013】
好適な半透明または不透明なアルミノケイ酸リチウムガラス−セラミック物品のさらなる例は、国際公開第2012/075068号において詳細に説明されており、なお、当該特許の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。国際公開第2012/075068号において詳細に説明されるように、当該半透明または不透明な、ケイ酸塩結晶含有ガラス−セラミックスは、酸化物ベースでの重量パーセントにおいて、40〜80%のSiO、2〜30%のAl、2〜10%のLiO、0〜8%のTiO、0〜3%のZrO、0〜2%のSnO、0〜7%のBrO、0〜4%のMgO、0〜12%のZnO、0〜8%のBaO、0〜3%のCaO、0〜6%のSrO、0〜4%のKO、2%までのNaO、0〜1.0%のSb、0〜0.25%のAg、0〜0.25%のCeCを含み、この場合、Li+NaO/Al+Bの組み合わせは0.8mol%を超える量であり、TiO+ZrO+SnOの組み合わせは少なくとも3.0mol%の量である。そのようなケイ酸塩結晶含有ガラス−セラミックスは、概して、a)酸化物ベースの重量パーセントにおいて、40〜80%のSiO、2〜30%のAl、5〜30%のNaO、0〜8%のTiO、0〜12%のZrO、0〜2%のSnO、0〜7%のB、0〜4%のMgO、0〜6%のZnO、0〜8%のBaO、0〜3%のCaO、0〜6%のSrO、0〜4%のKO、0〜2%のLiO、0〜1.0%のSb、0〜0.25%のAg、0〜0.25%のCeOを含む組成であって、NaO/Al+Bの組み合わせが0.8mol%を超える量であり、TiO+ZrO+SnOの組み合わせが少なくとも3.0mol%の量である組成を有するガラス物品のバッチを溶融しダウンドロー加工する工程と、b)ガラスひずみ点を十分に超える温度を示すLi含有塩浴に当該ガラス物品を入れて、実質的に当該ガラス物品全体を通してNaイオンによるLiイオンのイオン交換を完了するのに十分な期間において当該ガラスシートを保持することによって当該ガラス物品をイオン交換する工程と、c)アルミノケイ酸リチウム(β−スポジュメンおよび/またはβ−石英固溶体)の支配的ケイ酸塩結晶相、メタケイ酸リチウムおよび/または二ケイ酸リチウム相を含有し、SiO−R−LiO/NaO−TiO系内のガラス−セラミック組成を示すガラス−セラミックを生成するのに十分な期間において、約550〜1100℃の間の温度で当該ガラスをセラミック化する工程と、d)当該ガラス−セラミック物品を室温まで冷却する工程と、によって形成することができる。
【0014】
国際公開第2012/075068号においても詳細に説明されるように、支配的なスポジュメン結晶相と、支配的でないルチル結晶相とを有する不透明なガラス−セラミック物品について開示されている。そのような不透明なガラス−セラミック物品は、基本的なSiO−Al−NaO系の前駆体ガラスから形成することができる。より詳しくは、重量パーセントにおいて、以下のバッチ化された組成、58.8%のSiO、21.5%のAl、13.6%のNaO、0.3%のSnO、および4.3%のTiOの単純なアルミノケイ酸ナトリウムガラスが製造され得る。このガラスは、バッチ化され、混合され、白金るつぼにおいて1650℃で溶融され、その後、650℃でアニール処理され得る。次いで、このガラスは、切断され、削られ、75重量%のLiSOおよび25重量%のNaSOを有する組成の溶融塩浴に入れられ、800℃で2時間保持され得る。この時間および温度は、LiイオンとNaイオンのイオン交換を可能にしかつ当該ガラスの厚さ全体にわたって内部核生成および結晶化を生じさせるのに十分であり得、すなわち、イオン交換およびセラミック化が当該溶融塩浴内において同時に生じ得る。結果として得られるガラス−セラミック物品は、光沢の外被を示す白色のガラス−セラミックであり得る。さらに、そのような白色のガラス−セラミック物品は、支配的な結晶相としてアルミノケイ酸リチウムを含み得る。より詳しくは、そのような白色のガラス−セラミック物品は、支配的結晶相としてのβ−スポジュメン、支配的でない結晶相としてのルチル、および非晶相を含み得る。
【0015】
さらに、米国特許出願公開第2013/0136909号明細書において詳細に説明されるように、Corning(登録商標) Gorilla(登録商標)ガラス(Corning Incorporated,コーニング,ニューヨーク)は、アルミノケイ酸アルカリガラスの例である。そのような特許出願公開も、アルミノケイ酸ガラス物品から、着色されたガラス物品を製造する方法を開示している。なお、米国特許出願公開第2013/0136909号明細書の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0016】
好適なガラス−セラミック物品のさらなる例としては、MAS系ガラス−セラミック物品、すなわち、ケイ酸アルミニウムマグネシウムガラス−セラミック物品が挙げられる。米国特許第7,465,687号明細書において詳細に説明されるように、MAS系は、概して、コーディエライトによる支配的な結晶相を有するガラス−セラミック物品を提供し得、なお、当該特許の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。そのようなガラス−セラミック物品は、以下、1)針状結晶相、例えば、チタン酸マグネシウム、チタン酸アルミニウム、およびそれらの組み合わせなどのチタン酸塩など、および/または、2)例えば、エンスタタイトおよび/またはアノーサイトなどの、層状の双晶形成が可能なセラミック化合物、の支配的でない結晶相も含み得る。1つまたは複数の実施形態において、そのようなガラス−セラミック物品は、50〜80体積%のコーディエライト、8〜20体積%の支配的でない針状結晶相、および20体積%までの、層状の双晶形成が可能なセラミック化合物を含み得る。さらなる実施形態において、当該ガラス−セラミック物品は、重量%において、35〜50%のSiO、10〜35%のAl、10〜25%のMgO、7〜20%のTiO、5%までのCaO、および10%までのSrO、ならびに5%までのFを有する組成物であって、CaO+SrOが少なくとも0.5%である組成から形成され得る。
【0017】
好適なガラス−セラミック物品のさらなる例としては、ZAS系のガラス−セラミック物品、すなわち、酸化亜鉛アルミノケイ酸ガラス−セラミック物品が挙げられる。米国特許第6,936,555号明細書において詳細に説明されるように、当該ZAS系は、概して、ZnO六方晶の支配的な結晶相を示す透明なガラス−セラミック物品を提供し得、なお、当該特許の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。1つまたは複数の実施形態において、そのようなガラス−セラミック物品は、少なくとも15重量%のZnO六方晶を含み得る。さらなる実施形態において、そのようなガラス−セラミック物品は、合計で15〜35%の範囲の結晶化度のZnO結晶を含み得る。別の実施形態において、当該ガラス−セラミック物品は、重量%において、25〜50%のSiO、0〜26%のAl、15〜45%のZnO、0〜25%のKO、0〜10%のNaO、0〜32%のGaを含む組成であって、KO+NaO>10%およびAl+Ga>10%である組成から形成され得る。
【0018】
いくつかの実施形態において、当該ガラス−セラミック物品は、透明、半透明、または不透明である。特定の一実施形態において、当該ガラス−セラミック物品は黒色である。別の特定の実施形態において、当該ガラス−セラミック物品は白色である。他の実施形態において、当該ガラス−セラミック物品は、アルミノケイ酸リチウムガラス−セラミック物品、ケイ酸マグネシウムアルミニウムガラス−セラミック物品、または酸化亜鉛アルミノケイ酸ガラス−セラミック物品である。いくつかの実施形態において、米国特許出願公開第2014/0087194号明細書において詳細に説明されるように、当該ガラス−セラミック物品は色を微調整され、なお、当該特許出願公開の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0019】
いくつかの実施形態において、当該ガラス−セラミック物品は、主要な結晶相を有する。本明細書において使用される場合、用語「主要な結晶相」は、30体積%以上の結晶化度を有するガラス−セラミックを意味する。特定の一実施形態において、当該ガラス−セラミック物品は、約90体積%の結晶化度を有する。あるいは、他の実施形態において、当該ガラス−セラミック物品は、主要な非晶相を有する。本明細書において使用される場合、用語「主要な非晶相」または「主要なガラス相」は、30体積%未満の結晶化度を有するガラス−セラミックを意味するために相互互換的に使用される。特定の一実施形態において、当該ガラス−セラミック物品は、約95体積%の非晶相を有する。
【0020】
図1Bに示されているように、マスク106をガラス−セラミック物品100の第一表面102上に形成することにより、表面の構造的特徴を第一表面102中へ向かって選択的にエッチングすることができ、それにより、ガラス−セラミック物品100の触覚を増加させることができる。当該ガラス−セラミック物品の表面への第一化学エッチング溶液の適用は、結果として、インサイチューマスクの生成を生じ得、その場合、結晶が当該表面上に形成される。いくつかの実施形態において、当該第一化学エッチング溶液は、フッ化水素酸(すなわち、HF)と無機フッ化物塩(すなわち、無機カチオン、XおよびF)とを混合することによって形成することができる。ガラス−セラミック物品の溶解は、結果として、アニオンSiF2−およびAlF3−の形成を引き起こし、これらは、第一化学エッチング溶液に由来するフッ素イオンと、それによってガラス−セラミック物品から溶解した元素との間において形成される。そのようなアニオンは、次に、第一化学エッチング溶液に由来するカチオン、すなわち、無機フッ化物塩の無機カチオンXと結合し得る。そのような無機カチオンXと、当該形成されたアニオンSiF2−およびAlF3−との結合は、結果として、当該ガラス−セラミック物品の損傷を受けていない表面上において、結晶の形成を生じる。理論に束縛されるわけではないが、当該損傷を受けていない表面上においてのそのような結晶の形成および/または成長は、当該損傷を受けていない表面の一部を遮蔽し、その一方で、その周囲の表面は、化学エッチング溶液に晒され続けると考えられる。換言すれば、当該ガラス−セラミック物品におけるダメージを受けていない表面上においてのそのような結晶の形成および/または成長は、そのような結晶の下部にある当該ガラス−セラミック物品がエッチングおよび/または修飾されることを防ぐ、と考えられる。結果として、ディファレンシャルエッチングを達成することができ、これは、そのような結晶の除去の際に、その結果として、粗化された表面および/またはテクスチャード加工された表面を生じ得る。いくつかの実施形態において、インサイチューマスクの形成を支援するために、ワックス粒子が当該化学エッチング溶液に加えられ得る。当該インサイチューマスクまたは結晶106は、第一化学エッチング溶液によるガラス−セラミック物品の一部の溶解の際に形成され得る。
【0021】
フッ化水素酸に関して、当該化学エッチング溶液は、約0.5(w/w)%から約6(w/w)%、約0.5(w/w)%から約5(w/w)%、約0.5(w/w)%から約4(w/w)%、約0.5(w/w)%から約3(w/w)%、約1(w/w)%から約6(w/w)%、約1(w/w)%から約5(w/w)%、約1(w/w)%から約4(w/w)%、約1(w/w)%から約3(w/w)%、約2(w/w)%から約6(w/w)%、約2(w/w)%から約5(w/w)%、約2(w/w)%から約4(w/w)%、約2(w/w)%から約3(w/w)%、約3(w/w)%から約6(w/w)%、約3(w/w)%から約5(w/w)%、約3(w/w)%から約4(w/w)%、または約4(w/w)%から約6(w/w)%のフッ化水素酸を含み得る。無機フッ化物塩に関して、当該化学エッチング溶液は、約2.5(w/w)%から約30(w/w)%、約2.5(w/w)%から約25(w/w)%、約2.5(w/w)%から約20(w/w)%、約2.5(w/w)%から約15(w/w)%、約2.5(w/w)%から約10(w/w)%、約2.5(w/w)%から約5(w/w)%、約5(w/w)%から約30(w/w)%、約5(w/w)%から約25(w/w)%、約5(w/w)%から約20(w/w)%、約5(w/w)%から約15(w/w)%、約5(w/w)%から約10(w/w)%、約10(w/w)%から約30(w/w)%、約10(w/w)%から約25(w/w)%、約10(w/w)%から約20(w/w)%、約10(w/w)%から約15(w/w)%、約15(w/w)%から約30(w/w)%、約15(w/w)%から約25(w/w)%、約15(w/w)%から約20(w/w)%,約20(w/w)%から約30(w/w)%、約20(w/w)%から約25(w/w)%、または約25(w/w)%から約30(w/w)%の無機フッ化物塩を含み得る。好適な無機フッ化物塩の例としては、これらに限定されるわけではないが、フッ化アンモニウム(すなわち、NHF)、フッ化水素アンモニウム(すなわち、NHF・HF、および以下において「ABF」)、バッファードフッ化水素酸(以下において「BHF」)、フッ化ナトリウム(すなわち、NaF)、フッ化水素ナトリウム(すなわち、NaHF)、フッ化カリウム(すなわち、KF)、フッ化水素カリウム(すなわち、KHF)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。しかしながら、明確には記載していないが、当業者に既知のさらなる無機フッ化物塩も、本明細書において説明される使用に対して想到される。
【0022】
いくつかの実施形態において、当該第一化学エッチング溶液は、湿潤剤も含み得る。そのような実施形態において、当該第一化学エッチング溶液は、約5(w/w)%から約40(w/w)%、約5(w/w)%から約35(w/w)%、約5(w/w)%から約30(w/w)%、約5(w/w)%から約25(w/w)%、約5(w/w)%から約20(w/w)%、約5(w/w)%から約15(w/w)%、約5(w/w)%から約10(w/w)%、約10(w/w)%から約40(w/w)%、約10(w/w)%から約35(w/w)%、約10(w/w)%から約30(w/w)%、約10(w/w)%から約25(w/w)%、約10(w/w)%から約20(w/w)%、約10(w/w)%から約15(w/w)%、約15(w/w)%から約40(w/w)%、約15(w/w)%から約35(w/w)%、約15(w/w)%から約30(w/w)%、約15(w/w)%から約25(w/w)%、約15(w/w)%から約20(w/w)%、約20(w/w)%から約40(w/w)%、約20(w/w)%から約35(w/w)%、約20(w/w)%から約30(w/w)%、約20(w/w)%から約25(w/w)%、約25(w/w)%から約40(w/w)%、約25(w/w)%から約35(w/w)%、約25(w/w)%から約30(w/w)%、約30(w/w)%から約40(w/w)%、約30(w/w)%から約35(w/w)%、または約35(w/w)%から約40(w/w)%の湿潤剤を含み得る。いくつかの実施形態において、当該第一化学エッチング溶液は、約5(w/w)%まで、約10(w/w)%まで、約15(w/w)%まで、約20(w/w)%まで、約25(w/w)%まで、約30(w/w)%まで、約35(w/w)%まで、または約40(w/w)%までの湿潤剤を含み得る。本明細書において説明される化学エッチング溶液による使用にとって好適な湿潤剤の例としては、グリコール類(例えば、プロピレングリコール)、グリセロール類(例えば、グリセロール)、アルコール類(例えば、イソプロピルアルコール)、界面活性剤類、酸類(例えば、酢酸)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。しかしながら、明確には記載していないが、当業者に既知のさらなる湿潤剤も、本明細書において説明される使用に対して想到される。
【0023】
いくつかの実施形態において、当該第一化学エッチング溶液は、鉱酸も含み得る。当該第一化学エッチング溶液への鉱酸の添加は、エッチング速度を加速し得る。本明細書において説明される化学エッチング溶液による使用にとって好適な鉱酸の例としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
いくつかの実施形態において、当該第一化学エッチング溶液は、ガラス−セラミック物品の表面に適用される。いくつかの実施形態において、当該第一化学エッチング溶液は、クリーム、スラリー、または溶液であり得る。当該化学エッチング溶液をガラス−セラミック物品の表面に適用する方法の好適な例としては、噴霧、カーテンコーティング、スクリーン印刷、ディップコーティング、スピンコーティング、ローラーによる塗布、ロッドコーティング、ロールコーティング、および同様の方法、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、当該化学エッチング溶液は、ディップコーティング、すなわち、当該ガラス−セラミック物品を当該化学エッチング溶液に浸漬することによって、当該ガラス−セラミック物品の表面に適用される。
【0025】
次に、図1Cに示されるように、構造的特徴108は、第一表面102のディファレンシャルエッチングおよび/または特異的修飾によって形成することができる。いくつかの実施形態において、第一化学エッチング溶液は、ディファレンシャルエッチングを実施するために使用することもできる。いくつかの実施形態において、当該ディファレンシャルエッチングおよび結晶形成は、同時に生じ得る。結晶相と非晶相の両方を有するガラス−セラミックスの独自性が、化学エッチング液、例えば、化学エッチング溶液などによる、それぞれの相のディファレンシャルエッチングおよび/または特異的修飾を可能にする。ディファレンシャルエッチングは、ガラス−セラミック物品の結晶相および非晶相が、同じ化学エッチング液および/または化学エッチング溶液によって、異なる速度においてエッチングおよび/または修飾される能力を意味する。主要な結晶相を有するガラス−セラミック物品および主要な非晶相を有するガラス−セラミック物品の両方にとって好適な化学エッチング溶液に関して、いくつかの実施形態では、当該化学エッチング溶液は、上記において説明した第一化学エッチング溶液であり得、これは、フッ化水素酸(すなわち、HF)、無機フッ化物塩(すなわち、無機カチオン、XおよびF)、および任意選択により湿潤剤を混合することによって形成される。したがって、いくつかの実施形態において、構造的特徴108を作製するためにディファレンシャルエッチングに使用される当該化学エッチング溶液は、マスク106を作製するために使用される化学エッチング溶液と同じであってもよい。
【0026】
いくつかの実施形態において、当該第一化学エッチング溶液は、構造的特徴108を作製するのに十分な期間においてガラス−セラミック物品100に適用することができる。当該第一化学エッチング溶液は、約5秒から15分未満のエッチング時間において、ガラス−セラミック物品100の第一表面102に適用することができる。あるいは、当該第一化学エッチング溶液は、約15秒から約8分、1分から約8分、または約1分から約4分、または約4分から約8分、または約2分から約8分、または約2分から約6分、または約1分から約4分のエッチング時間において、当該ガラス−セラミック物品の第一表面102に適用することができる。一実施形態において、当該第一化学エッチング溶液は、約10分未満のエッチング時間において、当該ガラス−セラミック物品の表面に適用することができる。別の実施形態において、当該化学エッチング溶液は、5分未満のエッチング時間において、当該ガラス−セラミック物品の表面に適用することができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、構造的特徴108は、マスク106のパターンに対応し、そのため、ガラス−セラミック物品100の第一表面102においてマスク106によって覆われたエリアは、エッチングから保護され、マスク106によって覆われていないエリアは、エッチング除去される。これは、結果として、凸部または頂点110(マスク106によって覆われたエリア)ならびに窪みまたは凹部112(マスク106によって覆われていないエリア)の形成を生じる。したがって、構造的特徴108は、凸部110および凹部112を含み得る。構造的特徴108の存在は、ガラス−セラミック物品100の第一表面102を粗化し、テクスチャおよび触覚を増加させる。化学エッチング溶液の成分の量の変更は、同様の構造的特徴108の間の距離、例えば、隣接する凸部110または隣接する凹部112の間の距離などに影響を及ぼす。さらに、同様の構造的特徴の間の距離は、ガラス−セラミック物品100の第一表面102の触覚に影響を及ぼす。例えば、無機フッ化物塩の量を増加させると、形成される結晶の量が増加し、結果として、マスク106の密度が増加する。同様に、増粘剤の量を増加させることにより、より緻密なマスク106の形成が促進される。したがって、無機フッ化物塩および増粘剤の量を増加させると、マスク106の密度が増加し、それはさらに、隣接する構造的特徴108の間の距離を減少させる。逆に、フッ化水素酸の量を増加させると、形成される結晶の量が減少し、それはさらに、隣接する構造的特徴108の間の距離を増加させる。
【0028】
第一化学エッチング溶液は、ガラス−セラミック物品100の約0.01μmから約20μmの深さ(すなわち、除去の深さ)が、マスク106によって覆われていないエリアから除去されるように、ガラス−セラミック物品100の第一表面102を修飾および/またはエッチングすることができる。あるいは、当該第一化学エッチング溶液は、ガラス−セラミック物品100の、約0.01μmから約2μm、または約0.1μmから約2μm、または約0.25μmから約1μm、または約0.25μmから約0.75μm、または約0.5μmから約0.75μmの深さが、マスク106によって覆われていないエリアから除去されるように、ガラス−セラミック物品100の第一表面102を修飾および/またはエッチングすることができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、第一化学エッチング溶液の組成およびエッチングパラメータを調節することにより、第一表面102の表面粗度(Ra)を制御することができる。いくつかの実施形態において、第一表面102の表面粗度(Ra)は、約0.08μmから約1μmとなるように制御することができる。表面粗度(Ra)は、Newview(商標) 7300(Zygo Corporation,ミドルフィールド,コネチカット州)によって測定した。
【0030】
いくつかの実施形態において、ディファレンシャルエッチングの終了時に、マスク106および第一化学エッチング溶液を、第一表面102から除去することができる。マスク106および第一化学エッチング溶液は、ガラス−セラミック物品100の第一表面102を脱イオン水または脱イオン水で希釈した酸溶液で洗い流すことによって除去することができる。
【0031】
次に、図1Dに示されているように、ガラス−セラミック物品100の第一表面102を第二化学エッチング溶液で削ることにより、同様の構造的特徴の間の距離(例えば、隣接する凸部110の間の距離または隣接する凹部112の間の距離)を拡大することができる。いくつかの実施形態において、当該第二化学エッチング溶液は、フッ化水素酸(すなわち、HF)および鉱酸を混合することによって形成することができる。フッ化水素酸に関して、当該第二化学エッチング溶液は、約0.5Mから約6M、約0.5Mから約5.5M、約0.5Mから約5M、約0.5Mから約4.5M、約0.5Mから約4M、約0.5Mから約3.5M、約0.5Mから約3M、約0.5Mから約2.5M、約0.5Mから約2M、約0.5Mから約1.5M、約0.5Mから約1M、約1Mから約6M、約1Mから約5.5M、約1Mから約5M、約1Mから約4.5M、約1Mから約4M、約1Mから約3.5M、約1Mから約3M、約1Mから約2.5M、約1Mから約2M、約1Mから約1.5M、約1.5Mから約6M、約1.5Mから約5.5M、約1.5Mから約5M、約1.5Mから約4.5M、約1.5Mから約4M、約1.5Mから約3.5M、約1.5Mから約3M、約1.5Mから約2.5M、約1.5Mから約2M、約2Mから約6M、約2Mから約5.5M、約2Mから約5M、約2Mから約4.5M、約2Mから約4M、約2Mから約3.5M、約2Mから約3M、約2Mから約2.5M、約2.5Mから約6M、約2.5Mから約5.5M、約2.5Mから約5M、約2.5Mから約4.5M、約2.5Mから約4M、約2.5Mから約3.5M、約2.5Mから約3M、約3Mから約6M、約3Mから約5.5M、約3Mから約5M、約3Mから約4.5M、約3Mから約4M、約3Mから約3.5M、約3.5Mから約6M、約3.5Mから約5.5M、約3.5Mから約5M、約3.5Mから約4.5M、約3.5Mから約4M、約4Mから約6M、約4Mから約5.5M、約4Mから約5M、約4Mから約4.5M、約4.5Mから約6M、約4.5Mから約5.5M、約4.5Mから約5M、約5Mから約6M、約5Mから約5.5M、または約5.5Mから約6Mの範囲のフッ化水素酸濃度を有することができる。鉱酸に関して、当該第二化学エッチング溶液は、約0.5Mから約6M、約0.5Mから約5.5M、約0.5Mから約5M、約0.5Mから約4.5M、約0.5Mから約4M、約0.5Mから約3.5M、約0.5Mから約3M、約0.5Mから約2.5M、約0.5Mから約2M、約0.5Mから約1.5M、約0.5Mから約1M、約1Mから約6M、約1Mから約5.5M、約1Mから約5M、約1Mから約4.5M、約1Mから約4M、約1Mから約3.5M、約1Mから約3M、約1Mから約2.5M、約1Mから約2M、約1Mから約1.5M、約1.5Mから約6M、約1.5Mから約5.5M、約1.5Mから約5M、約1.5Mから約4.5M、約1.5Mから約4M、約1.5Mから約3.5M、約1.5Mから約3M、約1.5Mから約2.5M、約1.5Mから約2M、約2Mから約6M、約2Mから約5.5M、約2Mから約5M、約2Mから約4.5M、約2Mから約4M、約2Mから約3.5M、約2Mから約3M、約2Mから約2.5M、約2.5Mから約6M、約2.5Mから約5.5M、約2.5Mから約5M、約2.5Mから約4.5M、約2.5Mから約4M、約2.5Mから約3.5M、約2.5Mから約3M、約3Mから約6M、約3Mから約5.5M、約3Mから約5M、約3Mから約4.5M、約3Mから約4M、約3Mから約3.5M、約3.5Mから約6M、約3.5Mから約5.5M、約3.5Mから約5M、約3.5Mから約4.5M、約3.5Mから約4M、約4Mから約6M、約4Mから約5.5M、約4Mから約5M、約4Mから約4.5M、約4.5Mから約6M、約4.5Mから約5.5M、約4.5Mから約5M、約5Mから約6M、約5Mから約5.5M、または約5.5Mから約6Mの範囲の鉱酸濃度を有することができる。例示的鉱酸としては、これらに限定されるわけではないが、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、臭化水素酸、過塩素酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
当該第二化学エッチング溶液を適用することにより、ガラス−セラミック物品100の第一表面102を削ることができ、それにより、それらのテクスチャおよび触覚を微調整および/または最適化することができる。これは、同様の構造的特徴の間の距離(例えば、隣接する凸部110の間の距離および隣接する凹部または窪み112の間の距離)を増加させること、ならびに構造的特徴108の鋭利な端部および/または角を削るかまたは丸みを付けることによって達成される。いくつかの実施形態において、当該第二化学エッチング溶液は、約1分から15分未満までのエッチング時間において、ガラス−セラミック物品100の第一表面102に適用することができる。あるいは、当該第二化学エッチング溶液は、約1分から約8分、または約1分から約4分、または約4分から約8分、または約2分から約8分、または約2分から約6分、または約1分から約4分のエッチング時間において、ガラス−セラミック物品100の第一表面102に適用することができる。
【0033】
第二化学エッチング溶液で削った後、第一表面102の触覚は、第一化学エッチング溶液を適用する前の触覚より向上している。当該触覚は、表面で指を動かしてみて指でテクスチャをどのくらい感じることができるかにより触覚をランク付けすることによって特定することができる。いくつかの実施形態において、触覚のランク付けは、1から7の段階であり得、この場合、1は最も低い触覚を有し、7は最も高い触覚を有する。
【0034】
いくつかの実施形態において、当該触覚は、上記において説明した方式において第一および第二化学エッチング溶液によって第一表面102を処理した結果として作製された構造的特徴108の特質の影響を受ける。図2は、図1Dの拡大図であり、測定することが可能な、第一表面102の触覚に貢献することができる構造的特徴108のいくつかの特質または特性を示している。特性としては、凸部の高さHおよび隣接する同様の構造的特徴の間の距離D(例えば、隣接する凸部の間の距離または隣接する窪みの間の距離)が挙げられる。高さHは、凸部の頂点と、隣接する窪みの底との間の距離を測定することによって特定することができる。Hは、窪みまたは凹部の深さも意味する。いくつかの実施形態において、当該高さは、表面粗度(Ra)の大きさであり得る。いくつかの実施形態において、第一表面102の凸部の高さ(または凹部の深さ)の平均は、約80nm以上から約100nm以上の範囲であり得る。表面粗度(Ra)は、「Newview」7300(Zygo Corporation,ミドルフィールド,コネチカット州)によって測定した。当該距離Dは、ある構造的特徴の中心、例えば、図2に示されるような凸部の中心と、同じタイプの隣接する構造的特徴の中心、例えば、図2に示されるような隣接する凸部の中心との間の距離を測定することによって特定することができる。あるいは、当該距離Dは、隣接する窪みの中心の間の距離であり得る。いくつかの実施形態において、隣接する同様の構造的特徴の間の距離は、約0.5μmから約25μm、約0.5μmから約23μm、約0.5μmから約20μm、約0.5μmから約17μm、約0.5μmから約15μm、約0.5μmから約10μm、約0.5μmから約5μm、約2μmから約25μm、約2μmから約23μm、約2μmから約20μm、約2μmから約17μm、約2μmから約15μm、約2μmから約10μm、5μmから約25μm、約5μmから約23μm、約5μmから約20μm、約5μmから約17μm、約5μmから約15μm、約7μmから約25μm、約7μmから約23μm、約7μmから約20μm、約7μmから約17μm、約7μmから約15μm、約10μmから約25μm、約10μmから約23μm、約10μmから約20μm、約10μmから約17μm、または約10μmから約15μmの範囲であり得る。当該構造的特徴の距離Dは、当該構造的特徴の密度における因子であり、これは、別の特徴的な触覚である。いくつかの実施形態において、同様の構造的特徴(例えば、凸部または窪み)の密度は、約9,000個から約25,000個の構造的特徴/mm、約9,000個から約23,000個の構造的特徴/mm、約9,000個から約20,000個の構造的特徴/mm、約9,000個から約17,000個の構造的特徴/mm、約9,000個から約15,000個の構造的特徴/mm、約10,000個から約25,000個の構造的特徴/mm、約10,000個から約23,000個の構造的特徴/mm、約10,000個から約25,000個の構造的特徴/mm、約10,000個から約20,000個の構造的特徴/mm、約10,000個から約17,000個の構造的特徴/mm、約11,000個から約25,000個の構造的特徴/mm、約11,000個から約23,000個の構造的特徴/mm、約11,000個から約25,000個の構造的特徴/mm、約11,000個から約20,000個の構造的特徴/mm、約11,000個から約17,000個の構造的特徴/mm、約12,000個から約25,000個の構造的特徴/mm、約12,000個から約23,000個の構造的特徴/mm、約12,000個から約25,000個の構造的特徴/mm、約12,000個から約20,000個の構造的特徴/mm、または約12,000個から約17,000個の構造的特徴/mmの範囲であり得る。距離Dおよび構造的特徴の密度は、光学顕微鏡を使用して表面を約200倍に拡大し、画像の写真を撮影し、次に同様の構造的特徴の間の距離Dを測定し、特定のエリア内の特定のタイプの構造的特徴の数をカウントすることによって測定することができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、当該ガラス−セラミック物品は、化学強化プロセス、例えば、イオン交換プロセスなどを施すことができる。いくつかの実施形態において、当該ガラス−セラミック物品は、エッチング工程を実施する前に、化学強化することができる。他の実施形態において、当該ガラス−セラミック物品は、エッチング工程を実施した後に、化学強化することができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、本明細書において説明した表面修飾は、当該ガラス−セラミック物品の2つ以上の表面に適用することができる。例えば、本明細書において説明した表面修飾プロセスは、触覚を増加させるために、ガラス−セラミック物品100の第一表面102および第二表面104の両方に適用することができる。
【実施例】
【0037】
以下の実施例により、様々な実施形態がさらに明確となるであろう。
【0038】
上記において説明したように、表面の構造的特徴の特性(例えば、構造的特徴の高さ、構造的特徴の距離、および構造的特徴の密度)は、当該表面の触覚に影響を及ぼし得る。さらに、第一化学エッチング溶液の組成は、以下の実施例において示されるように、表面の構造的特徴の特性に影響を及ぼし得る。
【0039】
黒色のガラス−セラミック表面の8つの試料を、それぞれ、下記の表1に示されるような異なるエッチング溶液においてエッチングした。当該黒色のガラス−セラミック試料は、重量パーセントにおいて、約57%のSiO、約21%のAl、約5%のB、約13%のNaO、約1%のMgO、約1%のTiO、および約1%のFeの一般的な組成を有していた。当該エッチング溶液のそれぞれは、フッ化水素酸(HF)、ポリエチレングリコール(PG)、およびフッ化アンモニウム(NHF)を含有し、ならびに、当該組成は、3(w/w)%または6(w/w)%のフッ化水素酸、10(w/w)%または25(w/w)%のポリエチレングリコール、および2.5(w/w)%または5(w/w)%のフッ化アンモニウムを有するように変量した。当該エッチング溶液は、静的なエッチング浴に各試料を垂直に浸漬することによって適用した。当該試料を、22℃においておよそ8分間エッチングした。次いで、当該試料を、1.5Mのフッ化水素酸および0.9Mの硫酸のエッチング溶液において、およそ10分間削った。表1に、第一エッチング溶液の組成、構造的特徴の平均距離、凸部の平均高さ、表面粗度、光沢度、構造的特徴の密度、および触覚を一覧にする。表面粗度(Ra)、構造的特徴の平均距離、構造的特徴の密度、および触覚は、上記において説明した方法により特定した。60°での光沢度は、ASTM法D523に従って特定した。
【0040】
【表1】
【0041】
表1から分かるように、フッ化水素酸の量を増加させた場合、構造的特徴の距離は増加し、ポリエチレングリコールまたはフッ化アンモニウムの量を増加させた場合、構造的特徴の距離は減少する。表1のデータは、構造的特徴の平均距離の増加に対し、結果として、触覚のランク付けにおける直線的な減少を生じることを示している。図3は、構造的特徴の平均距離(x軸)に対する触覚のランク付け(y軸)のプロット図であり、0.8783のR値での、触覚のランク付け=(−0.3406構造的特徴平均距離)+8.1395、の直線関係を示している。溶液6は、この関係に従わない異常値であることに留意されたい。可能性として考えられる解釈は、触覚試験の主観性によるものかもしれないということである。
【0042】
本明細書において特定の実施形態について例示し説明したが、権利請求される主題の趣旨および範囲を逸脱することなく、様々な他の変更および修正を為すことができることは理解されるべきである。さらに、権利請求される主題の様々な態様について、本明細書において説明してきたが、そのような態様は、必ずしも組み合わせにおいて利用される必要はない。したがって、添付の特許請求の範囲は、権利請求される主題の範囲内の全てのそのような変更および修正を網羅することが意図される。
【0043】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0044】
実施形態1
ガラス−セラミック物品の触覚を増加させる方法であって、
第一エッチング液による前記ガラス−セラミック物品の表面の第一エッチングを実施することにより、前記表面上に複数の構造的特徴を作製する工程であって、
前記第一エッチング液が、フッ化水素酸および無機フッ化物塩を含み、ならびに
前記複数の構造的特徴が、凸部および凹部を含む、工程と、
前記第一エッチング液とは異なる第二エッチング液による前記表面の第二エッチングを実施することにより、前記複数の構造的特徴を削って、同じタイプの隣接する構造的特徴の間の距離を拡大させる工程であって、
前記第二エッチングが前記第一エッチングの後に行われ、
前記第二エッチングの後に、同じタイプの隣接する構造的特徴の間の平均距離が、0.5μmから25μmの範囲であり、および前記同じタイプの構造的特徴の密度が、9,000個から25,000個の構造的特徴/mmの範囲であり、ならびに、
前記第二エッチングの後の前記表面の触覚が、前記第一エッチングの前の前記表面の前記触覚よりも良好である、工程と、
を含む方法。
【0045】
実施形態2
前記第一エッチング液がさらに、湿潤剤を含む、実施形態1に記載の方法。
【0046】
実施形態3
前記第一エッチング液が、重量パーセントにおいて、3〜6%のフッ化水素酸、2.5〜5%の無機フッ化物塩、および10〜25%の湿潤剤を含む、実施形態2に記載の方法。
【0047】
実施形態4
前記無機フッ化物塩が、フッ化アンモニウムであり、および前記湿潤剤が、プロピレングリコールである、実施形態3に記載の方法。
【0048】
実施形態5
前記湿潤剤が、グリコール類、グリセロール類、アルコール類、界面活性剤類、酸類、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、実施形態2に記載の方法。
【0049】
実施形態6
前記湿潤剤がプロピレングリコールである、実施形態5に記載の方法。
【0050】
実施形態7
前記無機フッ化物塩が、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化水素カリウム、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、実施形態1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【0051】
実施形態8
前記第二エッチング液が、フッ化水素酸および鉱酸を含む、実施形態1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【0052】
実施形態9
前記鉱酸が、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、臭化水素酸、過塩素酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、実施形態8に記載の方法。
【0053】
実施形態10
前記第二エッチング液が、0.5Mから6Mの範囲の濃度のフッ化水素酸および0.5Mから6Mの範囲の濃度の鉱酸を含む、実施形態8または9に記載の方法。
【0054】
実施形態11
同じタイプの隣接する構造的特徴の間の前記平均距離が、7μmから20μmの範囲である、実施形態1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【0055】
実施形態12
前記無機フッ化物塩が、前記ガラス−セラミック物品の前記表面と反応して、前記第一エッチングの際のマスクとしての機能を果たす結晶を形成する、実施形態1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【0056】
実施形態13
前記マスクが、前記表面上において該表面の構造的特徴の形成される場所を制御する、実施形態12に記載の方法。
【0057】
実施形態14
無機フッ化物および増粘剤の量が、前記マスクの密度を制御する、実施形態13に記載の方法。
【0058】
実施形態15
複数の構造的特徴を有する表面であって、
該複数の構造的特徴が、該表面の凸部および凹部を含み、ならびに
同じタイプの構造的特徴の間の平均距離が、0.5μmから25μmの範囲であり、該同じタイプの構造的特徴の密度が、9,000個から 25,000個の構造的特徴/mmの範囲である、表面、
を含むガラス−セラミック物品。
【0059】
実施形態16
同じタイプの隣接する構造的特徴の間の前記平均距離が、7μmから20μmの範囲である、実施形態15に記載のガラス−セラミック物品。
【0060】
実施形態17
前記表面が、使用者が該表面に触ることができるように位置決めされる、実施形態15または16に記載のガラス−セラミック物品を含む電子デバイス。
【符号の説明】
【0061】
100 ガラス−セラミック物品
102 第一表面
104 第二表面
106 マスク
108 構造的特徴
110 凸部
112 凹部
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3