特許第6916791号(P6916791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916791
(24)【登録日】2021年7月20日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】電気機械用スリップリング装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/28 20060101AFI20210729BHJP
   H02K 13/00 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   H02K9/28 Z
   H02K13/00 K
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-530132(P2018-530132)
(86)(22)【出願日】2016年12月13日
(65)【公表番号】特表2018-538775(P2018-538775A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】EP2016080739
(87)【国際公開番号】WO2017102691
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年12月5日
(31)【優先権主張番号】15199945.5
(32)【優先日】2015年12月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ツゥイユン
(72)【発明者】
【氏名】へディガー,ダニエル
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−003768(JP,U)
【文献】 特公昭55−026669(JP,B1)
【文献】 実開昭53−036004(JP,U)
【文献】 特開昭51−093305(JP,A)
【文献】 実開昭49−002307(JP,U)
【文献】 特開2014−079044(JP,A)
【文献】 特公昭49−017325(JP,B1)
【文献】 実開昭50−155508(JP,U)
【文献】 特開昭52−106403(JP,A)
【文献】 米国特許第04137474(US,A)
【文献】 中国実用新案第204131323(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/28
H02K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状本体(3)、端部部分(8)およびシュリンクシート(2)からなるスリップリング(11)と、外部で生成されたロータ電流を前記スリップリング(11)に伝達するブラシ(4)と、前記ブラシ(4)をその内部に収容するブラシギアハウジング(15)とを有する電気機械用のスリップリング装置(1)であって、前記円筒状本体(3)には半径方向開口部(4)が形成され、前記シュリンクシート(2)はシャフ上で収縮可能であり、前記シャフは、前記円筒状本体(3)の下に傾斜した環状エアギャップ(5)を形成して、前記半径方向開口部(4)を通って冷却媒体を導くために、前記円筒状本体(3)の下に縮小された直径を有し、前記ブラシギアハウジング(15)が、前記環状エアギャップ(5)の入口の近くに配置された第1の端部と、前記シュリンクシート(2)の近くに配置された第2の端部とを有し、前記ブラシギアハウジング(15)の前記第2の端部が、前記ブラシ(4)と前記スリップリング(11)が接する位置に前記冷却媒体の排気部を有し、前記ブラシギアハウジング(15)の前記第1の端部は、排気部を有しておらず、前記環状エアギャップ(5)内の前記冷却媒体は、前記シャフト及び前記スリップリング(11)の回転により前記環状エアギャップ(5)の前記入口から前記ブラシギアハウジング(15)の前記第2の端部の前記排気部へ移動する、スリップリング装置(1)。
【請求項2】
前記スリップリング(11)の外側に溝(6)が形成され、前記半径方向開口部(4)が前記溝(6)の一部または全部を接合することを特徴とする、請求項1に記載のスリップリング装置(1)。
【請求項3】
前記溝(6)が、前記半径方向開口部(4)に接合する溝(6)と、前記半径方向開口部(4)に接合しない溝(6)とを含む、ことを特徴とする、請求項に記載のスリップリング装置(1)。
【請求項4】
前記半径方向開口部(4)は、接線方向に矩形の長辺を有する丸みのある矩形断面を有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のスリップリング装置(1)。
【請求項5】
前記シャフトは、シャフト中心部(12)と、前記シャフト中心部(12)に固定されたシャフト支持体(9)を含み、
前記シュリンクシート(2)は、前記シャフト支持体(9)によって前記シャフト中心部(12)に接続され、
前記環状エアギャップ(5)の一部は、前記シャフト支持体(9)により画定される、請求項1に記載のスリップリング装置(1)。
【請求項6】
前記スリップリング(11)の前記半径方向開口部(4)は、前記スリップリング(11)の前記円筒状本体(3)に沿って均一に分布していることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載のスリップリング装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電流源から電気機械のロータに電流を伝達するための電気機械用スリップリング装置に関する。
【0002】
電気機械は、特に、ガスタービンまたは蒸気タービンに接続される同期発電機、または水力タービン(水力発電機)に接続される同期発電機、または非同期発電機、または同期もしくは非同期電動モータ、または他のタイプの電気機械などの回転電気機械である。
【背景技術】
【0003】
電気機械は、電気励磁電流で励磁されて巻線コイルに必要な磁界を生成する。特定の構成では、励磁電流が電気機械の巻線コイルまたはロータの巻線に供給されるので、ロータ電流と呼ばれる。一般に、機械の外部で生成されたロータ電流は、一組のブラシによってロータ巻線に伝達される。固定ブラシに流れる電流は、回転シャフト上に収縮した2つのリングを介してロータ巻線に伝達される。このリングは、この技術分野では通常スリップリングと呼ばれる。発電における高出力用途では、ブラシとスリップリングとの間の摩擦および電流の流れによりスリップリングが加熱される。主に、スリップリングは、シャフトに直接取り付けられているか、または外部に接続されたファンによって強制的に冷却される。現状技術では、スリップリングの軸方向全長に沿った螺旋溝も記載されている。しかし、現状技術の解決策は、切れ目のない大量のスリップリングと比較して、長期動作でスリップリング表面の変形を増加させる可能性がある。現状技術の解決策は、追加のラジアルファンと、スリップリングの大きな外径を意味する十分な冷却表面と、を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009048265号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、適切な冷却特性および機械的安定性を保証する電気機械用スリップリング装置を提供することである。この目的は、独立請求項1に記載の特徴によって解決される。
【0006】
本発明のさらなる例は、従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明の一例では、半径方向開口部は、スリップリングの外側に形成された溝と結合して、溝および半径方向開口部を通る冷却媒体のための流路を形成する。これらの溝は、螺旋溝として設計することもできる。
【0008】
本発明の別の例では、半径方向開口部は、接線方向に矩形の長辺を有する丸みのある矩形断面を有する。半径方向開口部の縁部の丸い形状は、機械的応力を低減する。さらに、冷却媒体の流動抵抗が低減される。さらに、開口部の接線方向の長さは40mmより小さい。この特徴により、動作中のスリップリングの表面変形が許容公差内に維持され得ることが保証される。スリップリングの表面変形を回避することはまた、動作中のスリップリングに置かれたブラシの振動を最小にすることを意味する。
【0009】
本発明の別の例では、スリップリングの開口部は、スリップリングのシリンダに沿って均一に分布される。これにより、スリップリングに対するブラシの接触面における温度差が最小になる。さらに、通常の回転速度でのスリップリングの機械的変形が大幅に低減され、これはブラシの振動の低減に寄与する。
【0010】
本発明のさらに別の例では、半径方向開口部は浸食技術によってスリップリング内に形成される。この浸食技術は、特にスリップリングの溝と開口部との組み合わせにおいて、一般的なミリングに対して有利であることが分かった。
【0011】
さらなる特徴および利点は、添付の図面において非限定的な実施例として示される、スリップリング装置の好ましいが非排他的な実施形態の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】左側にシュリンクシートを有するスリップリング装置の一部の側面断面図を示し、右側に傾斜した環状エアギャップを覆う円筒状本体を示し、いくつかの半径方向開口部が冷却媒体の通過のためにスリップリングに形成され、本発明の一例としてのスリップリング装置を確立するためのスリップリングの下の傾斜した環状エアギャップを有し、スリップリングの上側に形成された溝と、開口部が溝と共に冷却媒体の流路を形成するように、溝に接続されて溝を接合するいくつかの半径方向開口部と、を有する。
図2】スリップリングの下方の傾斜した環状エアギャップによって縮小した直径を有するロータシャフトのシャフト支持体上に収縮した、図1と同様のスリップリング装置の一部の断面図、およびロータの下方の切れ目がない図である。
図3】丸みのある矩形断面を有するスリップリング内に均一に形成された開口部を有する本発明の一実施例によるスリップリングの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照すると、これらはスリップリング装置の長手方向側の断面とスリップリングを示しており、類似する符号はいくつかの図面を通して同一または対応する部分を示す。
【0014】
図1は、本発明の一実施例によるスリップリング装置1の一部の側面断面図を示す。本開示によれば、スリップリング装置1は、傾斜した環状エアギャップ5を有するスリップリング11として画定されている。スリップリング11は、一体に製造された、円筒状本体3と、シュリンクシート2と、その間にある端部部分8と、を含む。スリップリング11は大量であり、金属または同様の導電性材料から製造される。シュリンクシート2は、シャフト支持体9によってロータのシャフト12に接続されている。スリップリング11の上部には、ロータ巻線に電流を伝達するためのブラシ10がスリップリング1に隣接している。ロータの長手方向軸による断面の長手方向部分が示されている。左側にはシュリンクシート2が設計されており、このシュリンクシート2は、電気機械のロータのシャフト12の下面で収縮して、確実な接続を確立する。シャフト12とシュリンクシート2との間には、シャフト支持体9が両方の部分に固定されている。この左側もスリップリング1の内側端部である。図1の右側には、シャフト支持体9に直接接続されていないスリップリング1の一部が示されている。この部分は、ここではスリップリング1の円筒状本体3と呼ばれる。円筒状本体3は、図1に示すように、シュリンクシート2よりも小さい幅とそれより大きい長さを有する。シュリンクシート2とスリップリング装置1の円筒状本体3との間に、スリップリング装置1の第2の部分が、スリップリング11の端部部分8と呼ばれる、円筒状本体3と一体に配置されており、端部部分8は電流を伝達する部分の端部を形成する。端部部分8は、接合面においてシュリンクシート2と同じ直径を有し、円筒状本体3の方向に減少する直径を有する。円筒状本体3との接合面では、端部部分8は、円筒状本体3と同じ直径を有する。円筒状本体3の下には、自由空間が冷却媒体、例えば空気の通過のために設計されている。冷却媒体は、換気装置(図示せず)なしでロータの回転により自己換気によって移動する。この流路は、傾斜した環状エアギャップ5と呼ばれる。冷却媒体は動作中にスリップリング11を冷却する。冷却媒体の流れ方向は、図1に矢印で示されている。この視点では、冷却媒体は、図2に示すように、右側からスリップリング11に入り、傾斜した環状エアギャップ5内に入る。冷却媒体は、スリップリング11に形成された開口部4を通過し、それによって動作中にスリップリング11を冷却する。開口部4は、スリップリング11を貫通して垂直方向、すなわちロータ軸またはロータシャフト12に垂直に突出している。これは、開口部4がスリップリング11内に半径方向に形成され、半径方向開口部4と呼ばれることを意味する。開口部4は、丸みのある縁部を有する矩形断面を有し、図1では、矩形の狭い辺が示されており、矩形の長辺は画像平面に向けられている。しかしながら、開口部4は、他の形状、円形、卵形などを有してもよい。この例では、半径方向開口部4がスリップリング11内に浸食技術によって形成されている。半径方向開口部4は、スリップリング11内に均一に分布している。この手段は、開口部4を有するスリップリング11の高い機械的安定性をもたらす。冷却媒体は、開口部4を通過してスリップリング11を冷却する。冷却媒体の流れは、開口部4に矢印で示されている。スリップリング11は、スリップリング11の上面に形成された溝6を有し、この溝は、大量のスリップリング11を貫通して特定の程度突出している。溝6は、外面からスリップリング11内に形成され、止まり穴を形成する。溝6は、スリップリング11を冷却する役目を果たし、スリップリング11の上方のブラシ10からの磨耗であるカーボンダストを導く機能も有する。スリップリング11の円筒状本体3の下方の空間または環状エアギャップ5は傾斜しており、スリップリング11の外側から内側への冷却媒体の流れ方向に断面が減少している。スリップリング11はシュリンクシート2に取り付けられ、その端部部分8はシュリンクシート2とスリップリング11の円筒状本体3とを一体のものとしてしっかりと接続している。シャフト12の直径は、円筒状本体3または円筒状リングの端部に向かって減少し、円筒状本体3の下に傾斜した環状エアギャップ5を形成する。円筒状本体3の下の傾斜した環状エアギャップ5は、半径方向開口部4を通って溝6に至る均一な流れ分布にさらに寄与し、冷却作用をさらに最適化する。
【0015】
この例では、各第2の溝6において、スリップリング11に開口部4が形成されており、垂直方向にスリップリング11全体を貫通して溝6との共通の流路を形成している。これによって、冷却媒体の流路は、溝6と開口部4との組み合わせとして設計されている。しかしながら、スリップリング11の全幅を通る冷却媒体用のダクトを形成するために、開口部4を溝6とは独立して形成してもよい。接続された開口部4を有するスリップリング装置1の製造は、この技術分野では一般的に使用されていない浸食技術によって単純化される。浸食技術は、開口部4の高精度成形を可能にする。スリップリング11の上側では、冷却媒体は、図1のスリップリング11から左側の排気部を介してスリップリング装置1およびロータから外部に排出される。冷却媒体のための排気部として、チャネル(図示せず)が2つの隣接するスリップリング装置1の間に配置されている。スリップリング11内で加熱された冷却媒体の排出をさらに支援するために、出口にさらなる換気装置を配置することができる。本発明は、スリップリング11の温度を大幅に低下させることができる。これは、ロータのシャフト12の安定した動作挙動に寄与する。
【0016】
図2は、ロータシャフト12に組み込まれた図1と同様のスリップリング装置1の部分断面図を示す。上半分は切断図で示され、下半分は切断されていない状態で示されている。シャフト支持体9内の溝6、開口部4、および傾斜した環状エアギャップ5を有する切断されたスリップリング11は、シャフト12に取り付けられている。スリップリング装置1の上方には、上側半分が示されており、全部で12個のブラシ10がスリップリング1に隣接して、電気機械の動作中にスリップリング11に電流を伝達する。ここでは6つのブラシ10が示されており、さらに6つのブラシ10が他の側でスリップリング1に隣接している。ブラシ10は、切断されて部分的に示されたブラシギアハウジング15内に収容されている。冷却媒体の流路は矢印で示され、冷却媒体は上方から傾斜した環状エアギャップ5に入り、傾斜した環状エアギャップ5に沿って流れ、そして結合した溝6および開口部4を通って流れる。傾斜した環状エアギャップ5から結合した溝6および開口部4を通ってブラシ10まで通過した後に、冷却媒体はスリップリング1から排気チャネルを通って右側の曲がった矢印の方向に逃げる。スリップリング11の冷却は、スリップリング11の円筒状本体3の全体に沿って行われる。説明の便宜上、本発明の一実施例によるシュリンクシート2を備えていないスリップリング11の斜視図が、図3に孤立して示されている。図3では、丸みのある矩形の開口部4を有する中央の円筒状本体3と、シリンダの両端部の端部部分8と、を見ることができる。開口部4は、軸方向よりも接線方向に大きく延びており、矩形の長辺は接線方向にある。各開口部4の接線方向の長さは40mmより小さい。開口部4のこれらの寸法は、効率的な冷却結果を提供することが証明されている。半径方向開口部4の存在により、現状技術によるシャフトに取り付けられたラジアルファンは任意である。ラジアルファンを適用して、スリップリング11の冷却をさらに強化することができる。
【0017】
本発明をその例示的な実施形態を参照して詳細に説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能であり、均等物を使用することができることは当業者には明らかであろう。本発明の好適な実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的で提示したものである。網羅的であること、または開示された正確な形態に本発明を限定することを意図しておらず、修正および変更は上記の教示を考慮して可能であり、または本発明の実施から得ることができる。実施形態は、本発明の原理およびその実際的な応用を説明し、それにより当業者が、本発明を、意図する特定の使用に適した様々な実施形態で利用することができるように選択および記載された。本発明の範囲は、本明細書に添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって定義されることが意図される。
【符号の説明】
【0018】
1 スリップリング装置、スリップリング
2 シュリンクシート
3 円筒状本体
4 半径方向開口部
5 傾斜した環状エアギャップ
6 溝
8 端部部分
9 シャフト支持体
10 ブラシ
11 スリップリング
12 ロータシャフト
15 ブラシギアハウジング
図1
図2
図3