特許第6916797号(P6916797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916797
(24)【登録日】2021年7月20日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】抗体ポリペプチド及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20210729BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20210729BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20210729BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20210729BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20210729BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20210729BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20210729BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20210729BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20210729BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20210729BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20210729BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20210729BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210729BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20210729BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   C07K16/30ZNA
   C07K16/40
   C07K16/46
   C12N15/13
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   A61K39/395 P
   A61K39/395 T
   A61K47/68
   A61K51/10 200
   A61K51/10 100
   A61P13/08
   A61P35/00
   A61P35/04
   G01N33/574 A
【請求項の数】26
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2018-536343(P2018-536343)
(86)(22)【出願日】2016年10月4日
(65)【公表番号】特表2018-531045(P2018-531045A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(86)【国際出願番号】EP2016073684
(87)【国際公開番号】WO2017060247
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2019年9月30日
(31)【優先権主張番号】1517550.8
(32)【優先日】2015年10月5日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1519105.9
(32)【優先日】2015年10月29日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514107082
【氏名又は名称】フレダックス・アクチエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アマンダ・トゥイ・トラン
(72)【発明者】
【氏名】アンデシュ・アクセルソン
(72)【発明者】
【氏名】セシーリア・アン−クリスティン・マルムボリ・ハーガー
(72)【発明者】
【氏名】シェル・フェーストレーム
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン−エリク・ストランド
(72)【発明者】
【氏名】ウルポ・ユハニ・ラミンメキ
【審査官】 小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−004895(JP,A)
【文献】 特表2004−509934(JP,A)
【文献】 特表2014−530898(JP,A)
【文献】 Almagro, J. C. et al.,Humanization of antibodies,Front. Biosci.,2008年,Vol. 13,pp. 1619-1633
【文献】 Evans-Axelsson, S. et al.,Targeting free prostate-specific antigen for in vivo imaging of prostate cancer using a monoclonal antibody specific for unique epitopes accessible on free prostate-specific antigen alone,Cancer Biother. Radiopharm.,2012年,Vol. 27(4),pp. 243-251
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
C12N 15/00−15/90
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺特異的抗原(PSA)に対する結合特異性を有する抗体ポリペプチドであって、
(a)配列番号1及び配列番号2及び配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、ならびに
(b)配列番号4及び配列番号5及び配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が、1つ以上のヒト抗体に由来するフレームワークアミノ酸配列を含み、前記抗体ポリペプチドが、マウス5A10抗体と比較して、増強された腫瘍取り込みを呈する、前記抗体ポリペプチド。
【請求項2】
前記抗体ポリペプチドが、
(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むか、もしくはそれからなる、重鎖可変領域;及び/または
(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むか、もしくはそれからなる、軽鎖可変領域
を含む、請求項1に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項3】
無傷抗体;または
Fv断片(例えば、一本鎖Fv及びジスルフィド結合Fv)、Fab様断片(例えば、Fab断片、Fab’断片、及びF(ab)2断片)、ならびにドメイン抗体(例えば、単一VH可変ドメインもしくはVL可変ドメイン)からなる群から選択される抗原結合断片を含むか、またはそれからなる、請求項1に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項4】
重鎖定常領域またはその一部を更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項5】
軽鎖定常領域またはその一部を更に含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項6】
配列番号10のアミノ酸配列を含むか、もしくはそれからなる重鎖定常領域、及び/または、配列番号11のアミノ酸配列を含むか、もしくはそれからなる軽鎖定常領域、を含む、請求項4または5に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項7】
配列番号12のアミノ酸配列を含むか、もしくはそれからなる重鎖、及び/または、配列番号13のアミノ酸配列を含むか、もしくはそれからなる軽鎖、を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項8】
前記抗体ポリペプチドが、直接的または間接的に治療部分に連結される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項9】
前記治療部分が、1つ以上の放射性同位体を含むか、またはそれからなる細胞傷害性部分である、請求項8に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項10】
前記1つ以上の放射性同位体がそれぞれ独立して、ベータ放射体、オージェ放射体、転換電子放射体、アルファ放射体、及び低光子エネルギー放射体からなる群から選択される、請求項9に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項11】
前記1つ以上の放射性同位体がそれぞれ独立して、長距離ベータ放射体(90Y、32P、186Re/188Re;166Ho、76As/77As、153Smなど)、中距離ベータ放射体(131I、177Lu、67Cu、161Tbなど)、低エネルギーベータ放射体(45Ca、35S、ま
たは14Cなど)、転換またはオージェ放射体(51Cr、67Ga、99Tcm111In、123
I、125I、201Tl、135Laなど)、ならびにアルファ放射体(212Bi、213Bi、223Ac、225Ac、及び221Atなど)からなる群から選択される、請求項10に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項12】
前記抗体ポリペプチドが、検出可能な部分を更に含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項13】
前記検出可能な部分が、放射性同位体を含むか、またはそれからなる、請求項12に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項14】
前記放射性同位体が、99mTc、111In、67Ga、68Ga、72As、89Zr、123I、
及び201Tlからなる群から選択される、請求項13に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項15】
前記治療部分及び/または検出可能な部分が、連結部分を介して抗体ポリペプチドに間接的に接合される、請求項8〜14のいずれかに記載の抗体ポリペプチド。
【請求項16】
前記連結部分がキレート剤である、請求項15に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項17】
記キレート剤が、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10,四酢酸(DOTA)の誘導体、デフェロキサミン(DFO)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)の誘導体、S−2−(4−イソチオシアナトベンジル)−1,4,7−トリアザシクロノナン−1,4,7−三酢酸(NOTA)の誘導体、及び1,4,8,11−テトラアザシクロドセダン−1,4,8,11−四酢酸(TETA)の誘導体からなる群から選択される、請求項16に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の抗体ポリペプチドまたはその構成成分ポリペプチド鎖をコードする、単離された核酸分子。
【請求項19】
配列番号14及び/または配列番号15のヌクレオチド配列を含む、請求項18に記載の核酸分子。
【請求項20】
請求項18または19に記載の核酸分子を含む、組み換え宿主細胞。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の抗体ポリペプチドと、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項22】
医学において使用するための、請求項1〜17のいずれか1項に記載の抗体ポリペプチドを含む、医薬組成物。
【請求項23】
前立腺癌の治療及び/または診断において使用するための、請求項1〜17のいずれか1項に記載の抗体ポリペプチドを含む、医薬組成物。
【請求項24】
治療される前記前立腺癌が、転移性前立腺癌である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
治療される前記転移性前立腺癌が、リンパ系の転移、骨の転移(脊椎、椎骨、骨盤、肋骨を含む)、骨盤、直腸、膀胱、尿道内の転移である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
治療される前記前立腺癌が、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)である、請求項2325のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、特に前立腺癌の分野における、治療的及び診断的薬剤ならびに方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌は、現在のところ、男性において最も一般的な形態の癌である。前立腺は、精液の構成成分である体液を産生する、男性におけるクルミ程の大きさの腺である。前立腺は、組織の外層によって囲まれた2つ以上の葉または区分を有する。前立腺は、直腸の前かつ膀胱の直下に位置し、尿道を囲む。
【0003】
前立腺癌の発生率は、欧州の北西部分及び米国において最も高い。腫瘍の成長は通常、長期間かけて起こるプロセスである。前立腺癌は通常、軽度の形態の癌である。実際、前立腺癌と診断された大部分の男性は生存かつ回復し、少数の男性が早期段階に転移するより悪性度の高い形態の前立腺癌に遭遇するに過ぎない。この悪性度の高い形態の前立腺癌は、癌が関節外組織に伝播してしまう前に、それが早期段階に診断された場合にのみ治療可能であり得る。
【0004】
今日、前立腺癌の診断及び監視は典型的には、患者の血液中の前立腺特異的抗原(PSA)の濃度を測定することによって実行される。異なる時点で実行されるいくつかの連続した測定においてPSAの濃度が著しく高い場合、前立腺癌の可能性が存在するという評価となる。この時点で、前立腺癌を検証するために生検が実行され得る。
【0005】
PSA(カリクレインIIIとしても知られる)は、前立腺の分泌細胞内で産生される、237個のアミノ酸の一本鎖で構成されるタンパク質である。これらの分泌細胞は、前立腺全体において見出すことができる。PSAは、確立されかつ徹底的に研究された前立腺癌に関するマーカーである。健康な細胞と比較すると、PSAの産生は悪性細胞においてより低く、過形成性細胞においてより高い。実際、PSAの濃度が前立腺癌を患う男性からの血液中でより高いということは、むしろ矛盾している。しかしながら、1つの説明は、悪性細胞が変質した細胞構造を有し、それ故にPSAに対してより透過性であることであり得る。
【0006】
前立腺癌の治療のための標的として好適である別の重要なセリンプロテアーゼは、ヒト腺性カリクレイン2(hK2)である。hK2をコードする遺伝子は、PSAをコードする遺伝子とともに染色体19上に位置する。hK2は、PSAと同様に主に前立腺組織中で発現される。前立腺において、PSAは不活性プロ形態として存在し、hK2のペプチダーゼ作用を通して活性化される。hK2に関する免疫組織化学的研究は、hK2が分化のレベルに関連して発現されることを示している。これは、hK2が低分化の組織(前立腺癌に供されている組織など)中でより高い収率で発現され、高分化の組織(別の一般的な前立腺の問題である前立腺肥大症(BPH)に供されている組織など)中でより低い収率で発現されることを意味する。
【0007】
今日の前立腺癌の治療は、手術(例えば、前立腺全摘除術)、放射線療法(塩化ラジウム−223投与、密封小線源治療、及び外部照射放射線療法を含む)、高密度焦点式超音波法(HIFU)、化学療法、経口化学療法薬、凍結手術(腫瘍の凍結)、ホルモン療法(抗アンドロゲン療法など)、去勢、または前述のものの組み合わせである。
【0008】
しかしながら、これらの療法のうちのほとんど(手術及び外部放射線療法)は、原発腫瘍及び大型の転移の治療にのみ(または主にそれに)有用である。化学療法は播種性の癌に使用されるが、これらの患者のうちのほとんどにとって、それは対症効果及び/または生存延長である。したがって、他のまたは相補的治療様式は、特に微小転移の場合、播種性悪性疾患のかなりの改善を達成する必要がある。
【0009】
抗体及びそれらの断片などの標的分子を使用する免疫療法または放射免疫療法などの療法は、播種性疾患の治療の可能性をもたらし得る。
【0010】
したがって、前立腺癌を治療及び診断するための新たな治療剤及び方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、当該技術分野における上記に特定された不足及び不利益のうちの1つ以上を、単独または任意の組み合わせで、軽減、緩和、または除去しようと努力し、添付の特許請求の範囲に従う治療剤及び方法を提供することによって、少なくとも前述の問題を解決する。
【0012】
本発明の第1の態様は、前立腺特異的抗原(PSA)に対する結合特異性を有する抗体ポリペプチドであって、
(a)配列番号1及び配列番号2及び配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域
CDRH1: TTGMGVS 配列番号1
CDRH2: HIYWDDDKRYSTSLK 配列番号2
CDRH3: KGYYGYFDY 配列番号3
ならびに/または
(b)配列番号4及び配列番号5及び配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
CDRL1: RASQNVNTDVA 配列番号4
CDRL2: STSYLQS 配列番号5
CDRL3: QQYSNYPLT 配列番号6
を含み、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が、1つ以上のヒト抗体に由来するフレームワークアミノ酸配列を含む、抗体ポリペプチドを提供する。
【0013】
上記の6つのアミノ酸配列は、Kabat et al.,(1991)Sequences of Immunological Interest,5th edition,NIH,Bethesda,MD(この開示は参照により本明細書に組み込まれる)に従って定義される、本発明の抗体ポリペプチドの相補性決定領域(CDR)を表す。
【0014】
「抗体ポリペプチド」によって、我々は、無傷抗体分子、一本鎖抗体、ダイアボディ、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖及び/または抗体軽鎖のホモ二量体及びヘテロ二量体、ならびに抗原結合断片及びその誘導体を実質的に含む。
【0015】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、標準的な20個の遺伝子的にコードされたアミノ酸及び(天然「L」形態と比較して)「D」形態のそれらの対応する立体異性体、オメガ−アミノ酸、他の天然に存在するアミノ酸、非定型アミノ酸(例えば、α,α−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸など)、ならびに化学的に誘導体化されたアミノ酸(以下を参照されたい)を含む。
【0016】
「アラニン」または「Ala」または「A」などのように、アミノ酸が具体的に列挙されている場合、別段明示的に述べられない限り、この用語は、L−アラニン及びD−アラニンの両方を指す。ポリペプチドが所望される機能的特性を保持する限り、他の非定型アミノ酸もまた、本発明のポリペプチドの好適な構成成分であり得る。示されるペプチドについて、必要に応じて、各コードされたアミノ酸残基は、従来のアミノ酸の慣用名に対応する1文字の表記によって表される。
【0017】
一実施形態において、本明細書で定義されるポリペプチドは、L−アミノ酸を含むか、またはそれからなる。
【0018】
本発明の抗体ポリペプチドは、PSA、及び好ましくは成熟活性形態のヒトPSAに対する特異性を呈する。
【0019】
ヒトPSAのアミノ酸配列を以下に示す。
【化1】
(式中、成熟活性PSAタンパク質の配列に下線が引かれている。UniProtKB受入番号P07288もまた参照されたい)
【0020】
精漿に見出されるPSAのほとんどは不活性であり、タンパク質C阻害剤(PCI)と複合体化されている。PSAが、他の細胞外プロテアーゼ阻害剤と複合体を形成することもまた可能である。インビトロ研究は、PSAがα2−抗プラスミン(α2−AP)、ACT、AMG、抗−トロンビンIII(ATIII)、C1−失活剤、及びプラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1(PAI−1)に結合し得ることを示している。
【0021】
一実施形態において、本抗体ポリペプチドは、複合体化されたアイソフォームのPSAと比較して、遊離(つまり、複合体化されていない)アイソフォームのPSAに対する特異性を有する。遊離アイソフォームのPSAに対する特異性を有する結合分子は、遊離アイソフォームのPSA上では曝露されているが、複合体化されたアイソフォームのPSA上では曝露されていないエピトープに対する結合特異性を有し得、これは、直鎖状または立体構造(つまり、非直鎖状)エピトープであり得る。例えば、抗体ポリペプチドは、遊離PSAでは曝露されており、複合体化されたアイソフォーム(PSAがPCIに複合体化されている場合に精液に存在する形態など)では曝露されていないPSAの触媒クレフトの一部である1つ以上のアミノ酸残基を含むエピトープに対する特異性を有し得る。
【0022】
「特異性」によって、我々は、抗体ポリペプチドが、インビボで、すなわち、PSAがヒトの体内で存在する生理的条件下で、PSAに結合することができることを意味する。好ましくは、本抗体ポリペプチドは、インビボでいかなる他のタンパク質にも結合しない。
【0023】
そのような結合特異性は、PSAを発現するトランスフェクトされた細胞を使用する、ELISA、免疫組織化学法、免疫沈降法、ウェスタンブロット法、及びフローサイトメトリー法などの当該技術分野において周知の方法によって決定され得る。有利に、本抗体ポリペプチドはPSAに選択的に結合することができ、すなわち、それは別のタンパク質(特に、前立腺特異的抗原またはPSAなどの他のカリクレイン)に結合するよりも少なくとも10倍強力にPSAに結合する。
【0024】
本発明の抗体ポリペプチドは、予想外の有利な特性を呈する、選択された5A10抗体のヒト化バージョンに基づく。
【0025】
特に、本発明のヒト化抗体は、それらのCDR配列が由来した親マウス5A10抗体(m5A10)と比較して、腫瘍への増強された取り込みを呈する(実施例6を参照されたい)。
【0026】
「腫瘍への増強された取り込み」によって、我々は、本発明の抗体ポリペプチド(5A10抗体のヒト化形態)が、前立腺腫瘍を有する患者に投与されるときに、より少ない正常器官毒性をもって、親マウス5A10抗体よりも高い腫瘍吸収線量を提供し得ることを意味する。
【0027】
この予想外により良好な腫瘍蓄積は、本発明の抗体のより良好な治療プロファイルを提供する。転じて、それは、より高い放射線量(吸収線量)の使用を可能にし、健康な組織または器官に対する副作用または「付帯的損害」を増加させることなく、前立腺癌の治療においてより大きな有効性をもたらす。
【0028】
ヒト化(再成形またはCDRグラフト化とも呼ばれる)は、異種源由来(一般的には、マウスなどの齧歯類由来)のモノクローナル抗体の免疫原性を低減するための、かつヒト免疫系のそれらの活性化を改善するための技術である(Almagro&Fransson,2008,Frontiers in Bioscience13:1619−1633の概説(この開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。臨床治験において、いくつかのヒト化モノクローナル抗体が存在し、いくつかは薬物としての使用を承認されている。分子生物学の技術を使用して、操作されたモノクローナル抗体を産生する力学は比較的容易であるものの、ヒトフレームワークへの齧歯類相補性決定領域(CDR)の単純なグラフト化は、元のモノクローナル抗体の結合親和性及び特異性を常に再構成するとは限らない。抗体をヒト化するために、ヒト化抗体の設計が、元の分子の機能を再生する上で重要なステップである。
【0029】
ヒト化抗体の設計は、使用されるCDRの程度及び使用されるヒトフレームワークの程度を含む、いくつかの重要な選択を含む。しかしながら、親抗体の特異性を保持するために、齧歯類mAbに由来する1つ以上の残基を、ヒトフレームワーク領域へと置換すること(いわゆる、逆突然変異)もまた、重要であり得る。必要な逆突然変異の位置の特定は、詳細な配列/構造分析を必要とする。近年、選択された位置でアミノ酸を変化させるために、ファージライブラリが使用されている。同様に、齧歯類CDRをグラフトするのに最も適切なヒトフレームワークを選択するために、多くのアプローチが使用されている。初期の実験は、齧歯類モノクローナル抗体に対する配列同一性とは無関係に、(しばしばその構造が入手可能であった場合)良く特性評価されたヒトモノクローナル抗体の限られたサブセットを使用した(いわゆる、固定フレームワークアプローチ)。いくつかのグループは、齧歯類可変領域に対する高いアミノ酸配列同一性を有する可変領域を使用し(相同性マッチングまたは最良適合)、他のグループは、コンセンサスまたは生殖系列配列を使用する一方で、更に他のグループは、いくつかの異なるヒトモノクローナル抗体に由来する軽鎖または重鎖可変領域内のフレームワーク配列の断片を選択する。表面齧歯類残基を、ヒトモノクローナル抗体に見出される最も一般的な残基と置き換える(「リサーフェイシング」または「ベニアリング」)ヒト化に対するアプローチ、及び異なる定義の程度のCDRを使用するアプローチもまた、開発されている。
【0030】
しかしながら、抗体ヒト化についての広範な研究にも関わらず、いくつかの齧歯類モノクローナル抗体は、ヒト化が困難だということが判明している。
【0031】
本発明の抗体ポリペプチドの開発は、フレームワーク領域内だけでなく、CDRのうちのいくつかにおける逆突然変異も必要とした(以下の実施例2を参照されたい)。したがって、上記に配列番号1〜6で表される6つのCDR配列は、マウス抗PSA抗体5A10に由来するが、親マウス抗体と比較して、CDRH2(配列番号2)及びCDRL1(配列番号4)における変異を含有する。CDRにおけるこれらの変異は、5A10のヒト化バージョンに最適な特異性及び安定性を与えるために行われた。
【0032】
一実施形態において、本発明の抗体ポリペプチドは、0.1×10−9M超のKでPSAに結合する。
【0033】
全体的親和性(K)、ならびにある相互作用(抗体とリガンドとの間の相互作用など)の会合速度(ka)及び解離速度(kd)を測定するための方法は、当該技術分野において周知である。例示的なインビトロ方法を、以下の実施例3に記載する。フローサイトメトリーに基づく方法を使用することもまた、考えられる(Sklar et al.,2002,Annu Rev Biophys Biomol Struct,31:97−119(この開示は参照により本明細書に組み込まれる))。
【0034】
有利に、本発明の抗体ポリペプチドは、1.0×10−10M未満のPSAへの親和性(K)、例えば、9.0×10−11M未満、8.0×10−11M未満、7.0×10−11M未満、6.0×10−11M未満、5.0×10−11M未満、4.0×10−11M未満、3.0×10−11M未満、2.0×10−11M未満、または1.0×10−11M未満のKを有する。
【0035】
当業者によって、本発明の抗体ポリペプチドが、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖及び/または抗体軽鎖のホモ二量体及びヘテロ二量体、ならびに抗原結合断片及びその誘導体を構成し得ることが理解されるだろう。
【0036】
一実施形態において、本抗体ポリペプチドは、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM分子などの無傷(すなわち、完全)抗体を含むか、またはそれからなる。
【0037】
有利に、本抗体ポリペプチドは、無傷IgG分子、または抗原結合断片もしくはその誘導体を含むか、またはそれからなる。
【0038】
IgG分子は、任意の既知のサブタイプのもの、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4であり得る。
【0039】
抗体の「抗原結合断片及び誘導体」によって、我々は、Fv断片(例えば、一本鎖Fv及びジスルフィド結合Fv)、Fab様断片(例えば、Fab断片、Fab’断片、及びF(ab)断片)、ならびにドメイン抗体(例えば、単一V可変ドメインまたはV可変ドメイン)を含む。
【0040】
例えば、本抗体ポリペプチドは、scFvまたはFab断片を含むか、またはそれからなり得る。
【0041】
本発明の抗体ポリペプチドの更なる特性評価的特徴は、重鎖及び軽鎖可変領域内の、1つ以上のヒト抗体に由来するフレームワークアミノ酸配列の存在である。
【0042】
「フレームワーク配列」によって、我々は、CDR以外の重鎖及び軽鎖可変ドメインの領域を含む。典型的には、各可変ドメインは、その中にCDR配列が位置する、FR1〜FR4と表記される4つのフレームワーク領域を含む。
FR1−−−−CDR1−−−−FR2−−−−CDR2−−−−FR3−−−−CDR3−−−−FR4
【0043】
フレームワーク領域のアミノ酸配列は完全にヒトであっても、1つ以上の逆突然変異を含有してもよい(すなわち、ヒトフレームワーク内に存在するアミノ酸配列が、CDRが由来している親齧歯類可変ドメイン内の対応する位置に見出されるアミノ酸で置換されてもよい)ことが理解されるだろう。結果的に、本発明の抗体ポリペプチドの重鎖及び/または軽鎖可変ドメイン(複数可)のFR1、FR2、FR3、及び/またはFR4の配列は、天然に存在しなくてもよい。
【0044】
一実施形態において、本抗体ポリペプチドのフレームワーク配列は、1つ以上のヒト抗体に由来するフレームワーク領域と少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を共有する。したがって、本抗体ポリペプチドは、ヒト抗体のFR1領域と少なくとも70%の配列同一性を共有する重鎖FR1領域を含み得る。しかしながら、本抗体ポリペプチドの重鎖及び軽鎖は、異なるヒト抗体のフレームワーク領域と配列同一性を共有し得ることが理解されるだろう。
【0045】
同一性パーセントは、例えば、パラメータとして、グローバルアラインメントオプション、スコアリングマトリックスBLOSUM62、オープニングギャップペナルティー−14、エクステンディングギャップペナルティー−4を使用して、Expasyファシリティサイト(http://www.ch.embnet.org/software/LALIGN_form.html)のLALIGNプログラム(Huang and Miller,Adv.Appl.Math.(1991)12:337−357)によって決定され得る。あるいは、2つのポリペプチド間の配列同一性パーセントは、好適なコンピュータプログラム、例えば、University of Wisconsin Genetic Computing GroupのGAPプログラムを使用して決定され得、同一性パーセントは、配列が最適に整列されているポリペプチドに関連して計算されることが理解されるだろう。
【0046】
あるいは、整列は、(参照により本明細書に組み込まれる、Thompson et al.,1994,Nucl.AcidRes.22:4673−4680に記載される)Clustal Wプログラムを使用して実行されてもよい。使用されるパラメータは、以下の通りであり得る。
−高速対整列パラメータ:K−タプル(ワード)サイズ;1、ウィンドウサイズ;5、ギャップペナルティー;3、上部対角の数;5。スコアリング方法:xパーセント。
−複数整列パラメータ:ギャップオープンペナルティー;10、ギャップエクステンションペナルティー;0.05。
−スコアリングマトリックス:BLOSUM。
【0047】
あるいは、BESTFITプログラムを使用して、局在配列整列を決定することができる。
【0048】
一実施形態において、本発明の抗体ポリペプチドの重可変ドメインのフレームワーク配列は、ヒト免疫グロブリンVH4遺伝子ファミリーによってコードされる。
【0049】
例えば、フレームワーク配列は、少なくとも一部には、VH4−28生殖系列遺伝子によってコードされ得る(例えば、FR1、FR2、及びFR3はVH4−28によってコードされ得、FR4はJH1によってコードされ得る)。
【0050】
したがって、一実施形態において、本抗体ポリペプチドは、配列番号8(式中、CDR配列は太字で下線が引かれている)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる重鎖可変領域を含むか、またはそれからなり得る。
【化2】
【0051】
一実施形態において、本発明の抗体ポリペプチドの軽可変ドメインのフレームワーク配列は、ヒト免疫グロブリンカッパV4遺伝子ファミリーによってコードされる。
【0052】
例えば、フレームワーク配列は、少なくとも一部には、IgkV4−B3生殖系列遺伝子によってコードされ得る(例えば、FR1、FR2、及びFR3はIgkV4−B3によってコードされ得、FR4はJK2によってコードされ得る)。
【0053】
したがって、一実施形態において、本抗体ポリペプチドは、配列番号9(式中、CDR配列は太字で下線が引かれている)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる軽鎖可変領域を含むか、またはそれからなり得る。
【化3】
【0054】
「少なくとも一部には」によって、我々は、フレームワーク配列が、参照遺伝子によってコードされた少なくとも10個の近接アミノ酸、例えば、少なくとも20個の近接アミノ酸を含むことを含む。我々はまた、全てではないが1つ以上のFR領域が参照遺伝子によってコードされる(例えば、FR1及びFR2が参照遺伝子によってコードされ得、FR3はコードされない)ことも含む。
【0055】
好ましい一実施形態において、本抗体ポリペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる重鎖可変領域と、配列番号9のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる軽鎖可変領域とを含む。
【0056】
任意で、本発明の抗体ポリペプチドは、重鎖定常領域またはその一部を更に含む。
【0057】
一実施形態において、本抗体ポリペプチドは、IgG重鎖(IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4重鎖など)のCH1、CH2、及び/またはCH3領域を含む。したがって、本抗体ポリペプチドは、IgG1重鎖に由来する定常領域の一部または全てを含み得る。例えば、本抗体ポリペプチドは、CH1及びCL定常領域を含むFab断片であり得る。
【0058】
一実施形態において、本抗体ポリペプチドは、抗体Fc領域を含み得る。当業者によって、Fc部分が、IgG抗体または異なるクラスの抗体(IgM、IgA、IgD、またはIgEなど)に由来し得ることが理解されるだろう。一実施形態において、Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体に由来する。
【0059】
Fc領域は、天然に存在するもの(例えば、内因的に産生される抗体の一部)であっても、人工のもの(例えば、天然に存在するFc領域と比較して、1つ以上の点変異及び/またはCH2ドメイン内の炭水化物部分に対する修飾を含むもの)であってもよい。FcRに結合するそれらの能力を改善する点変異を有するFc領域は、例えば、血清半減期を変化させること、またはADCC及びCDCを伴うFcγ受容体(FcγR)への結合を調節(すなわち、増強または低減)することによって、有利であり得る。
【0060】
有利に、本抗体ポリペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列またはその一部を含み得る。
【化4】
【0061】
任意で、本発明の抗体ポリペプチドは、軽鎖定常領域またはその一部を更に含む。
【0062】
一実施形態において、本抗体ポリペプチドは、IgG軽鎖(カッパまたはラムダ軽鎖)のCL領域を含む
【0063】
例えば、本抗体ポリペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列またはその一部を含み得る。
【化5】
【0064】
有利に、本抗体ポリペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる重鎖定常領域と、配列番号11のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる軽鎖定常領域とを含む。
【0065】
好ましい一実施形態において、本発明の抗体ポリペプチドは、
(a)配列番号12(式中、可変領域は太字であり、CDR配列に下線が引かれている)
のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる重鎖
【化6】
ならびに/または
(b)配列番号13(式中、可変領域は太字であり、CDR配列に下線が引かれている)のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる軽鎖を含む。
【化7】
【0066】
例えば、本抗体ポリペプチドは、ジスルフィド架橋によってともに接合されて、典型的なIgG抗体構造を形成する、配列番号12の2つの重鎖及び配列番号13の2つの軽鎖を含むか、またはそれからなり得る。
【0067】
本発明の抗体ポリペプチドは、修飾または誘導体化されている1つ以上のアミノ酸を含むか、またはそれからなり得る。
【0068】
1つ以上のアミノ酸の化学的誘導体は、官能側基との反応によって達成され得る。そのような誘導体化分子としては、例えば、遊離アミノ基が誘導体化されて、塩酸アミン、p−トルエンスルホニル基、カルボキシベンゾキシ基、t−ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基、またはホルミル基を形成している分子が挙げられる。遊離カルボキシル基は、誘導体化されて、塩、メチルエステル及びエチルエステル、または他の種類のエステル及びヒドラジドを形成し得る。遊離ヒドロキシル基は、誘導体化されて、O−アシルまたはO−アルキル誘導体を形成し得る。20個の標準的なアミノ酸の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するペプチドもまた、化学的誘導体に含まれる。例えば、4−ヒドロキシプロリンはプロリンに対して置換され得、5−ヒドロキシリジンはリジンに対して置換され得、3−メチルヒスチジンはヒスチジンに対して置換され得、ホモセリンはセリンに対して置換され得、オルニチンはリジンに対して置換され得る。誘導体はまた、必要な活性が維持される限り、1つ以上の付加または欠失を含有するペプチドも含む。他の含まれる修飾は、アミド化、アミノ末端アシル化(例えば、アセチル化またはチオグリコール酸アミド化)、(例えば、アンモニアまたはメチルアミンでの)末端カルボキシルアミド化、及び同様の末端修飾である。
【0069】
当業者によって、ペプチド模倣化合物もまた有用であり得ることが更に理解されるだろう。「ペプチド模倣物」という用語は、治療剤としての特定のペプチドの立体構造及び望ましい特徴を模倣する化合物を指す。
【0070】
例えば、該ポリペプチドは、アミノ酸残基がペプチド(−CO−NH−)連結によって接合されている分子だけでなく、ペプチド結合が逆転している分子も含む。そのようなレトロ−インベルソペプチド模倣物は、当該技術分野において既知の方法、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Meziere et al.(1997)J.Immunol.159,3230−3237に記載される方法を使用して作製され得る。このアプローチは、側鎖の配向ではなく、主鎖に関与する変化を含有する偽ペプチドの作製を伴う。CO−NHペプチド結合の代わりにNH−CO結合を含有するレトロ−インベルソペプチドは、タンパク質分解に対してより一層抵抗性である。あるいは、該ポリペプチドは、アミノ酸残基のうちの1つ以上が、従来のアミド連結の代わりに−y(CHNH)−結合によって連結されている、ペプチド模倣化合物であり得る。
【0071】
更なる一代替形態において、ペプチド結合は完全に省かれ得るが、但し、アミノ酸残基の炭素原子間のスペーシングを保持する適切なリンカー部分が使用されることを条件とし、リンカー部分がペプチド結合と実質的に同一の電荷分布及び実質的に同一の平面性を有することが有利であり得る。
【0072】
該ポリペプチドが、そのN末端またはC末端で、エキソタンパク質消化に対する感受性の低減を助けるように好都合に遮断され得ることが理解されるだろう。
【0073】
Dアミノ酸及びN−メチルアミノ酸などの、様々なコードされていないアミノ酸または修飾されているアミノ酸もまた、哺乳動物ペプチドを修飾するために使用されている。加えて、推定される生理活性立体構造は、環化などの共有結合修飾によって、またはラクタムもしくは他の種類の架橋の組み込みによって安定化され得、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Veber et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.USA75:2636及びThursell et al.,1983,Biochem.Biophys.Res.Comm.111:166を参照されたい。
【0074】
当業者によって、本発明の抗体ポリペプチドが、(例えば、インビボ撮像剤または治療剤としての)それらの意図される使用を促進するために、官能部分で増大され得ることが理解されるだろう。
【0075】
したがって、一実施形態において、本抗体ポリペプチドは、直接的または間接的に治療部分に連結される。
【0076】
任意の好適な治療部分が使用され得る。好適な治療部分は、前立腺癌細胞の成長を低減もしくは阻害すること、または特にそれを死滅させることができる部分である。例えば、治療剤は細胞傷害性部分であり得る。細胞傷害性部分は、1つ以上の放射性同位体を含むか、またはそれからなり得る。例えば、1つ以上の放射性同位体はそれぞれ独立して、ベータ放射体、オージェ放射体、転換電子放射体、アルファ放射体、及び低光子エネルギー放射体からなる群から選択され得る。1つ以上の放射性同位体がそれぞれ独立して、薬剤の近傍で高線量吸収を創出する、局在的に吸収されたエネルギーの放射パターンを有することが所望され得る。例示的な放射性同位体としては、長距離ベータ放射体(90Y、32P、186Re/188Re;166Ho、76As/77As、89Sr、153Smなど)、中距離ベータ放射体(131I、177Lu、67Cu、161Tb、105Rhなど)、低エネルギーベータ放射体(45Caまたは35Sなど)、転換またはオージェ放射体(51Cr、67Ga、99Tc111In、114mIn、123I、125I、201Tlなど)、ならびにアルファ放射体(212Bi、213Bi、223Ac、225Ac、212Pb、255Fm、223Ra、149Tb、及び221Atなど)を挙げることができる。他の放射性核種が利用可能であり、治療に使用することができるだろう。
【0077】
別の実施形態において、治療部分または細胞傷害性部分が、WO2006/087374A1、特にその11頁7〜15行に「トレーサー」として開示される部分ではないことが所望され得る。
【0078】
好ましい一実施形態において、本抗体ポリペプチドは、放射性同位体177Luに連結される(か、または別様に標識される)。
【0079】
あるいは、治療部分は、1つ以上の治療(細胞傷害性など)薬、例えば、細胞分裂阻害薬、抗アンドロゲン薬、コルチゾン及びその誘導体、ホスホネート、テストステロン−5−α−リダクターゼ阻害剤、ボロンアデンド、サイトカイン、タプシガルジン及びその代謝物、毒素(サポリンもしくはカリケアマイシンなど)、化学療法剤(代謝拮抗剤など)、または前立腺癌の治療において有用である任意の他の治療薬もしくは細胞傷害性薬を含むか、またはそれからなり得る。
【0080】
例示的な治療薬/細胞傷害性薬としては、例えば、
●シクロホサミド、クロラムブシル、イホスファミド、ブスルファン、ロムスチン、タキサン、リン酸エストラムスチン及び他のナイトロジェンマスタード、抗生物質(ドキソルビシン、カリケアマイシン、及びエスペラミシンを含む)、ビンカアルカロイド、アザリジン、白金含有化合物、エンドスタチン、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、トリアゼン、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、酵素、置換尿素、メチル−ヒドラジン誘導体、ダウノルビシン、両親媒性アミンを含むが、これらに限定されない、細胞分裂阻害、特に、用量制限副作用を有するもの、
●フルタミド及びビカルタミドならびにそれら代謝物などの抗アンドロゲン薬;
●コルチゾン及びその誘導体;
●ジホホネート(diphophonate)及びブホスホネート(buphosphonate)などのホスホネート;
●テストステロン−5−α−リダクターゼ阻害剤;
●ボロンアデンド;
●サイトカイン;
●タプシガルジン及びその代謝物;
●前立腺癌の治療において使用される他の薬剤を挙げることができる。
【0081】
あるいは、細胞傷害性部分は、光子活性化療法、中性子活性化療法、中性子誘起オージェ電子療法、シンクロトロン照射療法、または低エネルギーX線光子活性化療法などの活性化療法における使用に好適な1つ以上の部分を含むか、またはそれからなり得る。
【0082】
例えば、本発明の抗体ポリペプチドによって、癌組織中の外部X線照射からの局在エネルギー付与が、事前投与された高Z腫瘍標的剤との相互作用によって増強される、いわゆる光活性化放射線療法(PAT)に主に着目して、シンクロトロン放射線(または低エネルギーX線)を使用して、放射線療法を進歩させる潜在性が存在するだろう。
【0083】
PAT治療様式は、GrenobleにあるEuropean Synchrotron Radiation Facility(ESRF)のID17生物医学的ビームラインによって提供されるものなどであり、新たなスウェーデンのシンクロトロン施設Max−IVなどの他の施設でも将来入手可能であることが期待される、シンクロトロン源からの単色光X線を利用する。
【0084】
更なる潜在的な治療様式として、「誘起オージェ電子腫瘍療法」についての研究が、LundのEuropean Spallation Source(ESS)で進んでおり、医学的実験ステーションとなることが期待されている。反応器で産生された熱中性子及び半熱中性子が、長期にわたって、ボロン−中性子−捕捉−療法(BNCT)に、前臨床実験のため、ならびに誘起アルファ−粒子及び高度の局在的に吸収されたエネルギー(吸収線量)をもたらす反跳核(Li)による脳腫瘍の治療のための両方に使用されてきた。類似したアプローチは、中性子、及び中性子のための高断面積を有する安定した核で標識された、好適な腫瘍標的分子を使用することである。例えば、抗体またはペプチドは、安定したガドリニウム(157Gd)で標識され、Gd核によって捕捉される中性子の標的分子として作用し得る(いわゆるガドリニウム中性子捕捉療法(GdNCT))。Monte Carloの技術によって、腫瘍中及び周辺組織の線量分布が計算され、これは、それがγ−光子、中性子、核反跳、ならびに特性評価的x線、内部転換、及びガドリニウムまたは他の潜在的な原子からのオージェ−電子に起因するためである。
【0085】
上記に考察されるように、治療部分(放射性同位体または細胞傷害性部分など)は、直接的または間接的に結合部分(その抗体または断片)に連結され得る。好適なリンカーは、当該技術分野において既知であり、例えば、補欠分子族、非フェノールリンカー(N−スクシミジル−ベンゾエートの誘導体、ドデカボレート)、大環状キレート剤及び非環式キレート剤の両方のキレート部分(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10,四酢酸(DOTA)の誘導体、デフェロキサミン(DFO)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)の誘導体、S−2−(4−イソチオシアナトベンジル)−1,4,7−トリアザシクロノナン−1,4,7−三酢酸(NOTA)の誘導体、及び1,4,8,11−テトラアザシクロドセダン−1,4,8,11−四酢酸(TETA)の誘導体、3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]−ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン−4−(S)−(4−イソチオシアナト−ベンジル)−3,6,9−三酢酸(PCTA)の誘導体、5−S−(4−アミノベンジル)−1−オキサ−4,7,10−トリアザシクロドデカン−4,7,10−トリス(酢酸)(DO3A)の誘導体など)、ならびに他のキレート部分が挙げられる。そのようなリンカーの使用は、治療部分として、薬剤がリンカーを介して放射性同位体に連結された結合部分として抗体もしくはその断片を含むか、またはそれからなる状況において、特に適切であり得る。
【0086】
1つの好ましいリンカーは、例えば、177Lu−DTPA−[本発明の抗体ポリペプチド]において使用される、DTPAである。
【0087】
更なる好ましいリンカーは、例えば、好ましくは治療的使用のための、89Zr−DFO−[本発明の抗体ポリペプチド]において使用される、デフェロキサミンDFOである。
【0088】
任意で、本発明の抗体ポリペプチドは、検出可能な部分を更に含んでも、含まなくてもよい。例えば、検出可能な部分は、99mTc、111In、67Ga、68Ga、72As,89Zr、123I、及び201Tlからなる群から選択される放射性同位体などの放射性同位体を含むか、またはそれからなり得る。任意で、薬剤は、86Y/90Yま
たは124I/211Atなどの一対の検出可能かつ細胞傷害性の放射性核種を含み得る。あるいは、薬剤は、検出可能な部分として、かつまた細胞傷害性部分としても多様式で同時に作用して、いわゆる「多様式治療診断剤」を提供することができる放射性同位体を含み得る。したがって、結合部分は、放射性核種または化学療法剤などの細胞傷害性薬を使用した治療能力とともに、複数撮像(例えば、SPECT、PET、MRI、光学、または超音波)能力を有するナノ粒子にカップリングされ得る。本発明には、高周波数交流磁場及び付随する超音波撮像を使用して、温熱療法によって治療する可能性もまた含まれる。
【0089】
あるいは、検出可能な部分は、157Gd、55Mn、162Dy、52Cr、及び56Feからなる群から選択される常磁性同位体などの常磁性同位体を含むか、またはそれからなり得る。
【0090】
本抗体ポリペプチドが検出可能な部分を含む場合、検出可能な部分は、SPECT、PET、MRI、光学、または超音波撮像などの撮像技術によって検出可能であり得る。
【0091】
治療部分及び検出可能な部分は、当該技術分野において周知である方法を使用して、抗体ポリペプチドとコンジュゲートされるか、または別様に組み合わされ得る(例えば、既存の免疫コンジュゲート療法、ゲムツズマブオゾガマイシン[商品名:Mylotarg(登録商標)]は、細胞毒カリケアマイシンに連結されたモノクローナル抗体を含む)。
【0092】
更なる一実施形態において、本発明の抗体ポリペプチドを、抗体ポリペプチド分子の集団を含む製剤の形態で使用して、前立腺癌を治療することができる。1つの選択肢において、この集団中の抗体ポリペプチド分子の全て(または90重量%、95重量%、99重量%、または99.9重量%以上など、実質的に全て)が、同一の治療部分を含む。別の選択肢において、この集団は、他の薬剤と異なる治療部分との混合物を含む。この選択肢は、化学療法剤、ホルモン療法剤などの様々な薬剤を使用した標的放射性核種療法、または標的剤が治療活性放射性核種を腫瘍関連抗原に送達するだけでなく、細胞内シグナルカスケードを調節(例えば、誘因または遮断)することによって、標的腫瘍細胞も同時に放射線感作する、他の療法の組み合わせの効果を増強する可能性をもたらすだろう。この選択肢はまた、例えば、大型腫瘍、微小転移、及び単一腫瘍細胞の併用治療のために、アルファ放射体及び異なる射程のベータ放射体のカクテルまたは異なる射程を有する放射性核種のカクテル、LET(線エネルギー付与)、及びRBE(相対的生物学的効果)を使用した、細胞傷害性剤の混合物による前立腺癌の治療においても有用である。一実施形態において、長距離放射体は大型腫瘍の治療に使用され得、短距離放射体はより小さな腫瘍(微小転移など)及び単一腫瘍細胞の治療に使用され得る。
【0093】
任意で、本発明の抗体ポリペプチドは、薬剤のインビボ半減期を増加させるための部分を更に含んでも、含まなくてもよい。薬剤のインビボ半減期を増加させるための例示的な部分としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒト血清アルブミン、グリコシル化基、脂肪酸、及びデキストランを挙げることができる。PEGが特に企図され得る。
【0094】
本発明のポリペプチドは、例えば、フリーズドライ、スプレー乾燥、スプレー冷却を通して、または超臨界二酸化炭素による粒子形成(沈降)の使用を通して、保管のために凍結乾燥され、使用前に好適な担体中に再構成され得ることが理解されるだろう。任意の好適な凍結乾燥方法(例えば、フリーズドライ、スプレー乾燥、ケーキ乾燥)及び/または再構成技術を用いることができる。当業者によって、凍結乾燥及び再構成が異なる程度の活性喪失をもたらし得ること、ならびに使用レベルを上方調節して、補償する必要があることが理解されるだろう。好ましくは、凍結乾燥された(フリーズドライされた)ポリペプチドは、再水和させたとき、(凍結乾燥前の)その活性の約1%以下を喪失するか、または再水和させたとき、(凍結乾燥前の)その活性の約5%、10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%以下、もしくは約50%以下を喪失する。
【0095】
本発明のポリペプチドの産生方法は、当該技術分野において周知である。
【0096】
好都合に、本ポリペプチドは、組み換えポリペプチドであるか、またはそれを含む。そのような組み換えポリペプチドの好適な産生方法は、原核生物または真核生物宿主細胞における発現のように、当該技術分野において周知である(例えば、Sambrook&Russell,2000,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Third Edition,Cold Spring Harbor,New York(この文章の関連する開示は、参照により組み込まれる)を参照されたい)。
【0097】
本発明の抗体ポリペプチドはまた、ウサギ網状赤血球ライセートまたはコムギ胚芽ライセート(Promegaから入手可能)などの市販のインビトロ翻訳系を使用しても産生され得る。好ましくは、インビトロ翻訳系は、ウサギ網状赤血球ライセートである。好都合に、翻訳系は、TNT転写−翻訳系(Promega)などの転写系にカップリングされ得る。この系は、翻訳と同一の反応において、コードDNAポリヌクレオチドから、好適なmRNA転写物を産生するという利益を有する。
【0098】
当業者によって、代替的に、本発明のポリペプチドが、例えば、周知の液相または固相合成技術(t−BocまたはFmoc固相ペプチド合成など)を使用して、人工的に合成され得ることが理解されるだろう。
【0099】
本発明の第2の態様は、本発明の抗体ポリペプチドまたはその構成成分ポリペプチド鎖をコードする、単離された核酸分子を提供する。「核酸分子」によって、我々は、一本鎖または二本鎖であり得る、DNA(例えば、ゲノムDNAまたは相補的DNA)及びmRNA分子を含む。
【0100】
一実施形態において、核酸分子は、cDNA分子である。
【0101】
当業者によって、核酸分子が、特定の宿主細胞内での抗体ポリペプチドの発現のために(例えば、ヒト細胞内での発現のために)コドン最適化され得ることが理解されるだろう(例えば、Angov,2011,Biotechnol.J.6(6):650−659を参照されたい)。
【0102】
好ましい一実施形態において、本発明の核酸分子は、
(a)配列番号14のヌクレオチド配列
【化8】
ならびに/または
(b)配列番号15のヌクレオチド配列を含む。
【化9】
【0103】
したがって、本発明の核酸分子は、
(a)配列番号16のヌクレオチド配列
【化10】
ならびに/または
(b)配列番号17のヌクレオチド配列を含み得る。
【化11】
【0104】
以下もまた、本発明の範囲内に含まれる。
(a)本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様に従う核酸分子を含むベクター(発現ベクターなど)を提供する。
(b)本発明の第4の態様は、本発明の第2の態様に従う核酸分子または本発明の第3の態様に従うベクターを含む宿主細胞(哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞など)を提供する。
(c)本発明の第5の態様は、本発明の第1の態様に従う抗体ポリペプチドの作製方法であって、該ポリペプチドが発現される条件下で、本発明の第4の態様に従う宿主細胞の集団を培養することと、そこからポリペプチドを単離することとを含む、方法を提供する。
【0105】
本発明の第6の態様は、本発明の第1の態様の薬学的に有効な量の抗体ポリペプチドと、薬学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤とを含む薬学的組成物を提供する。
【0106】
EDTA、クエン酸、EGTA、またはグルタチオンなどのキレート剤を含む、追加の化合物もまた、薬学的組成物中に含まれ得る。
【0107】
薬学的組成物は、十分に保管安定性かつ人及び動物への投与に好適である、当該技術分野において既知の様式で調製され得る。例えば、薬学的組成物は、例えば、フリーズドライ、スプレー乾燥、スプレー冷却を通して、または超臨界粒子形成による粒子形成の使用を通して、凍結乾燥され得る。
【0108】
「薬学的に許容される」によって、我々は、本発明の薬剤のカリクレインタンパク質結合活性の有効性を低下させない非毒性材料を意味する。そのような薬学的に許容される緩衝剤、担体、または賦形剤は、当該技術分野において周知である(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,A.R Gennaro,Ed.,Mack Publishing Company(1990)及びHandbook of Pharmaceutical Excipients,3rd edition,A.Kibbe,Ed.,Pharmaceutical Press(2000)(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0109】
「緩衝剤」という用語は、pHを安定化する目的を有する酸系混合物を含有する水溶液を意味することが意図される。緩衝剤の例は、Trizma、Bicine、Tricine、MOPS、MOPSO、MOBS、Tris、Hepes、HEPBS、MES、リン酸、炭酸、酢酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、ホウ酸、ACES、ADA、酒石酸、AMP、AMPD、AMPSO、BES、CABS、カコジル酸、CHES、DIPSO、EPPS、エタノールアミン、グリシン、HEPPSO、イミダゾール、イミダゾール酢酸、PIPES、SSC、SSPE、POPSO、TAPS、TABS、TAPSO、及びTESである。
【0110】
「希釈剤」という用語は、薬学的調製物中の薬剤を希釈する目的を有する水溶液または非水溶液を意味することが意図される。希釈剤は、生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、または油(ベニバナ油、トウモロコシ油、ピーナツ油、綿実油、もしくはゴマ油など)のうちの1つ以上であり得る。
【0111】
「アジュバント」という用語は、本発明の薬剤の生物学的効果を増加させるために製剤に添加される任意の化合物を意味することが意図される。アジュバントは、異なるアニオンを有する亜鉛塩、銅塩、または銀塩、例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、チオシアン酸(tiocyanate)、亜硫酸、水酸化物、リン酸、炭酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸、ホウ酸、酒石酸、及び異なるアシル組成物の酢酸などであるが、これらに限定されないもののうちの1つ以上であり得る。アジュバントは、カチオン性ポリマー(カチオン性セルロースエーテル、カチオン性セルロースエステルなど)、脱アセチル化ヒアルロン酸、キトサン、カチオン性デンドリマー、カチオン性合成ポリマー(ポリ(ビニルイミダゾール)など)、及びカチオン性ポリペプチド(ポリヒスチジン、ポリリジン、ポリアルギニンなど)、ならびにこれらのアミノ酸を含有するペプチドでもあり得る。
【0112】
賦形剤は、炭水化物、ポリマー、脂質、及び鉱物のうちの1つ以上であり得る。炭水化物の例としては、例えば、凍結乾燥を促進するために組成物に添加される、ラクトース、グルコース、スクロース、マンニトール、及びシクロデキストリンが挙げられる。ポリマーの例は、全てが異なる分子量である、デンプン、セルロースエーテル、セルロースカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸、カラゲナン、ヒアルロン酸及びその誘導体、ポリアクリル酸、ポリスルホン酸、ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、異なる加水分解の程度のポリビニルアルコール/ポリビニルアセテート、ならびにポリビニルピロリドンであり、これらは、例えば、粘度制御のため、生体接着の達成のため、または化学分解及びタンパク質分解からの脂質の保護のために組成物に添加される。脂質の例は、全てが異なるアシル鎖長及び飽和度である、脂肪酸、リン脂質、モノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリド、セラミド、スフィンゴ脂質、ならびに糖脂質;卵レシチン、ダイズレシチン、水素化卵レシチン、及び水素化ダイズレシチンであり、これらは、ポリマーの理由に類似した理由のために組成物に添加される。鉱物の例は、タルク、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、及び酸化チタンであり、これらは、脂質蓄積の低減または有利な顔料特性などの利益を得るために組成物に添加される。
【0113】
本発明の抗体ポリペプチドは、当該技術分野においてその送達が好適であることが既知である任意の種類の薬学的組成物に製剤化され得る。
【0114】
一実施形態において、本発明の薬学的組成物は、抗体ポリペプチドが、他の薬学的に許容される担体に加えて、ミセル、不溶性単層、及び液体結晶として凝集した形態で存在する脂質などの両親媒性剤と組み合わされる、リポソームの形態であり得る。リポソーム製剤に好適な脂質としては、非限定的に、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、リン脂質、サポニン、及び胆汁酸などが挙げられる。好適な脂質としてはまた、血流循環時間の延長のために、極性頭部基においてポリ(エチレングリコール)によって上記のように修飾された脂質も挙げられる。そのようなリポソーム製剤の調製は、例えば、US4,235,871(この開示は参照により本明細書に組み込まれる)に見出すことができる。
【0115】
本発明の薬学的組成物はまた、生分解性小球体の形態でもあり得る。脂肪族ポリエステル(ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)など)、PLAとPGA(PLGA)またはポリ(カプロラクトン)(PCL)とのコポリマー、及びポリ無水物は、小球体の産生において生分解性ポリマーとして幅広く使用されている。そのような小球体の調製は、US5,851,451及びEP0 213 303(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)に見出すことができる。
【0116】
更なる一実施形態において、本発明の薬学的組成物は、デンプン、セルロースエーテル、セルロースカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸、カラゲナン、ヒアルロン酸及びその誘導体、ポリアクリル酸、ポリビニルイミダゾール、ポリスルホン酸、ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、異なる加水分解の程度のポリビニルアルコール/ポリビニルアセテート、ならびにポリビニルピロリドンなどのポリマーが、薬剤を含有する溶液を増粘するために使用される、ポリマーゲルの形態で提供される。ポリマーはまた、ゼラチンまたはコラーゲンも含み得る。
【0117】
あるいは、本抗体ポリペプチドは単に、生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、または油(ベニバナ油、トウモロコシ油、ピーナツ油、綿実油、もしくはゴマ油など)、トラガカントゴム、及び/または様々な緩衝剤中に溶解され得る。
【0118】
本発明の薬学的組成物が、活性抗体ポリペプチドの作用を強化するために、イオン及び定義されたpHを含み得ることが理解されるだろう。更に、本組成物は、無菌化などの従来の薬学的操作に供されても、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤、充填剤などの従来のアジュバントを含有してもよい。
【0119】
本発明に従う薬学的組成物は、当業者にとって既知である任意の好適な経路を介して投与され得る。したがって、可能性のある投与経路としては、非経口(静脈内、皮下、及び筋肉内)、局所、眼内、経鼻、肺、口腔、経口、非経口、及び直腸が挙げられる。また、移植片からの投与も可能である。投与される薬剤の潜在的に高い細胞傷害性のため、注入が、所望される経路であり得る。
【0120】
一実施形態において、本薬学的組成物は、非経口、例えば、静脈内、脳室内、関節内、動脈内、腹腔内、髄腔内、側脳室内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、または皮下投与されるか、またはそれらは、注入技術によって投与され得る。それらは、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするのに十分な塩またはグルコースを含有し得る、無菌水溶液の形態で好都合に使用される。水溶液は、必要に応じて、好適に(例えば、3〜9のpHに)緩衝されるべきである。無菌条件下での好適な非経口製剤の調製は、当業者にとって周知である標準的な薬学的技術によって容易に達成される。
【0121】
非経口投与に好適な製剤としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る、水溶性及び非水溶性の無菌注射溶液、ならびに懸濁剤及び増粘剤を含み得る水溶性及び非水溶性の無菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単位用量または複数用量の容器、例えば、密封アンプル及びバイアルで提示され得、無菌液体担体、例えば、注射に際して、使用直前に水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件で保管され得る。即時注射溶液及び懸濁液は、既に記載した種類の無菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製され得る。
【0122】
したがって、本発明の薬学的組成物は、患者における腫瘍への非経口、例えば、静脈内投与または局所投与(例えば、腫瘍内または腫瘍周囲)に特に好適なである。
【0123】
本薬学的組成物は、薬学的に有効な用量、すなわち、治療的に有効な吸収線量の治療放射性核種で患者に投与されるだろう。
【0124】
本発明の抗体ポリペプチドの治療使用の文脈において、本明細書で使用される場合、「薬学的に有効な量」、または「有効な量」、または「治療的に有効な」は、所与の条件及び投与レジメンで治療効果を提供する量を指す。これは、必要とされる添加剤及び希釈剤、すなわち、担体または投与ビヒクルに関連して、所望される治療効果を産生すると計算される所定の量の活性材料である。更に、それは、活性、機能、及び宿主の応答の臨床的に有意な欠如を低減及び/または予防するのに十分な量を意味することが意図される。あるいは、治療的に有効な量は、宿主の臨床的に有意な病態に改善を引き起こすのに十分な量である。当業者によって理解されるように、化合物の量は、その特異的活性に応じて変化し得る。好適な投薬量は、必要とされる希釈剤に関連して、所望される治療効果を産生すると計算される所定の量の活性組成物を含有し得る。本発明の組成物の製造のための方法及び使用において、治療的に有効な量の活性構成成分が、提供される。治療的に有効な量は、当該技術分野において周知であるように、年齢、体重、性別、病態、合併症、他の疾患などの患者の特徴に基づいて、医学当業者によって決定され得る(以下の実施例6を参照されたい)。薬学的に有効な用量の投与は、個々の用量単位または他のいくつかのより小さな用量単位の形態の単回投与、及び特定の間隔での細分化された用量の複数回投与の両方によって実行され得る。あるいは、用量は、長期間にわたる連続注入として提供され得る。
【0125】
本発明の抗体ポリペプチドの診断使用の文脈において、本明細書で使用される場合、「薬学的に有効な量」、または「有効な量」、または「診断的に有効な」は、インビボ撮像目的で検出可能なシグナルを提供する量を指す。
【0126】
本発明の抗体ポリペプチドは、使用される化合物の有効性/毒性に応じて様々な濃度で製剤化され得る。製剤は、0.1μM〜1mM、1μM〜500μM、500μM〜1mM、300μM〜700μM、1μM〜100μM、100μM〜200μM、200μM〜300μM、300μM〜400μM、400μM〜500μM、及び約500μMの濃度のポリペプチドを含み得る。
【0127】
典型的には、ヒト患者における(治療部分を有するか、または有さない)治療用量の抗体ポリペプチドは、(70kgの体重に基づいて)1回の投与当たり100μg〜700mgの範囲内であるだろう。例えば、最大治療用量は、1回の投与当たり0.1〜10mg/kg、例えば、0.1〜5mg/kg、または1〜5mg/kg、または0.1〜2mg/kgの範囲内であり得る。そのような用量は、腫瘍学者/医師によって決定される異なる間隔で投与され得ることが理解され、例えば、用量は、1日1回、1週間に2回、1週間に1回、2週間に1回、または1ヶ月に1回投与され得る。
【0128】
当業者によって、本発明の薬学的組成物が、単独もしくは前立腺癌の治療に使用される他の治療剤との組み合わせで、または前立腺癌の治療のための他の治療様式(他の治療抗体、手術(例えば、前立腺全摘除術)、放射性核種療法、密封小線源治療、外部照射放射線療法、高密度焦点式超音波法(HIFU)、化学療法、経口化学療法薬、凍結手術(腫瘍の凍結)、ホルモン療法(抗アンドロゲン療法など)、去勢、もしくは前述のものの組み合わせなど)による患者後治療の前、その後、もしくはそれと同時に、投与され得ることが理解されるだろう。
【0129】
本発明の第7の態様は、本発明の第1の態様に従う抗体ポリペプチドまたは本発明の第6の態様に従う薬学的組成物を、本明細書に記載されるその使用指示書とともに含む、キットを提供する。
【0130】
本発明の第8の態様は、医学において使用するための、本発明の第1の態様に従う抗体ポリペプチドを提供する。
【0131】
本発明の第9の態様は、前立腺癌の治療及び/または診断において使用するための、本発明の第1の態様に従う抗体ポリペプチドを提供する。
【0132】
本発明の第10の態様は、対象における前立腺癌を治療するための方法であって、対象に、本発明の第1の態様に従う治療的に有効な量の抗体ポリペプチドを投与することを含む、方法を提供する。
【0133】
「治療」によって、我々は、患者の治療処置及び予防処置の両方を含む。「予防」という用語は、患者または対象における、前立腺癌の可能性、または局在化前立腺癌の伝播、播種、もしくは転移の予防または低減のいずれかを行う、本明細書に記載される薬剤またはその製剤の使用を包含するように使用される。「予防」という用語はまた、以前に前立腺癌が治療されている患者における前立腺癌の再発を予防するための、本明細書に記載される薬剤またはその製剤の使用も包含する。
【0134】
本発明の第11の態様は、対象における前立腺癌を診断するための方法であって、対象に、本発明の第1の態様に従う診断的に有効な量の抗体ポリペプチドを投与することを含む、方法を提供する。
【0135】
「診断」によって、我々は、インビボ(すなわち、患者の体内)またはエキソビボ(すなわち、患者の体内から除去された組織もしくは細胞試料内)のいずれかでの前立腺癌細胞の検出を含む。
【0136】
治療または診断される前立腺癌は、前立腺に局在化されているものでも、非局在化(つまり、播種性)前立腺癌でもよい。前立腺に局在化されている前立腺癌は、例えば、TNMシステム(腫瘍/結節/転移の略称)に従って臨床T1またはT2癌と分類され得る一方で、非局在化/播種性前立腺癌は、例えば、臨床T3またはT4癌と分類され得る。
【0137】
治療または診断される前立腺癌は、転移性前立腺癌であり得る。転移は、その元の位置から体内の他の部位への癌の伝播を指す。例えば、治療または診断される転移性前立腺癌は、リンパ系内、骨内(脊椎、椎骨、骨盤、肋骨を含む)に存在する転移、骨盤、直腸、膀胱、または尿道内の転移であり得る。他のより一般的でない位置に存在する転移もまた、本発明によって治療することができる。転移は、微小転移であり得る。微小転移は、新たに形成される腫瘍が一般に小さすぎて検出できないか、または検出に困難を伴う転移の形態である。例えば、本発明は、当業者に、単一の癌細胞または細胞集団の存在が診断不可能であるが存在する場合(潜在播種性疾患など)にも、そのような細胞または集団を治療するための手段を提供する。
【0138】
したがって、先行技術の前立腺癌の治療と比較して、本発明によって提供される治療の特に重要な技術的利益は、播種性及び/または転移性(微小転移性を含む)前立腺癌の治療における増強された有効性であることが期待される。
【0139】
したがって、一実施形態において、本発明は、原発前立腺腫瘍の転移を予防または治療するための抗体ポリペプチド及び方法を提供する。
【0140】
前立腺癌は、50歳超の年齢の男性において、より一般的には60、65、または70歳超の男性において発症する傾向があり、それは男性において最も一般的な種類の癌の1つであるものの、多くは症状を有さず、治療を受けず、かつ最終的には他の原因で死亡する。これは、前立腺癌が、ほとんどの場合、成長が緩徐で無症状であり、かつ病態を有する男性がより高齢であるため、彼らが前立腺癌とは無関係の原因(心臓/循環疾患、肺炎、他の無関係の癌、または老齢など)で死亡するためである。前立腺癌の症例のうちの3分の2は成長が緩徐であり、他方の3分の1はより悪性度が高く、発達が急速である。
【0141】
したがって、前立腺癌を治療及び診断するための有効な方法の開発は、特により若年の患者における、悪性度が高く、発達が急速な形態の癌の管理にとって特に重要である。したがって、一実施形態において、本発明は、前立腺癌の診断時点及び/または治療時点で、90歳未満、85歳、80歳、75歳、70歳、65歳、60歳、55歳、50歳、45歳、40歳以下の患者における前立腺癌の治療または診断に関する。
【0142】
家族歴を有さない男性と比較して、前立腺癌を有する第一度近親者(父親または兄弟)を1人有する男性は、前立腺癌を発症する2倍のリスクを有すると考えられ、罹患した第一度近親者を2人有する男性は、5倍のより大きなリスクを有すると考えられる。したがって、本発明は、1人または2人以上の家族、特に第一度家族(父親または兄弟など)が、以前に前立腺癌と診断されていることを特徴とする患者における前立腺癌の治療または診断に関し得る。
【0143】
本発明はまた、患者における前立腺癌の治療及び診断にも関し、治療される前立腺癌は、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)を有する。CRPCは典型的には、1〜3年後にホルモン治療に対して難治性となり、ホルモン療法にも関わらず成長を再開することを特徴とし得る。
【0144】
本発明の医学的使用及び方法において、本抗体ポリペプチドは典型的には、患者の体内に注射または注入される。その後、インビボで、本抗体ポリペプチドは、標的抗原PSAを産生する組織、主に前立腺癌細胞及びそれらの転移に結合する。結合時、本抗体ポリペプチドは、治療効果(例えば、ADCC、CDCを介した、または放射性同位体もしくは他の細胞傷害性部分を担持することによる細胞死の誘導)を直接発揮し得る。あるいは、結合した本抗体ポリペプチドは、療法の選択を誘導するか、または癌細胞の外科的除去を援助し得る診断(撮像)ツールとしての役割を果たし得る。
【0145】
当業者によって、本発明の抗体ポリペプチドが、他の治療及び/または診断剤/処置(外部放射線療法、手術、細胞分裂阻害、及びアンドロゲン治療など)との組み合わせで使用され得ることが理解されるだろう。
【0146】
前述の記述は、前立腺癌を治療及び診断するための方法に適用可能な本発明の実施形態に着目する。しかしながら、本発明は、そのような用途に限定されず、手術後の検査、ならびに放射線、細胞分裂阻害、及びアンドロゲン治療中またはその後の検査に有用であり得ることが理解されるだろう。
【0147】
別の実施形態において、放射線誘導手術(RGS)または画像誘導手術(IGS)を使用して、手術中及び/またはその前にトレーサー標識された本発明の抗体ポリペプチドを特定することができる。したがって、上記に考察される検出可能な部分を有する抗体ポリペプチドは、手術中及び/またはその前に投与され得る。この実施形態において、本抗体ポリペプチドが、まず注入され得る。その後、RGS/IGSを使用して、手術中またはその前に、検出可能な部分に対して感受性がある検出機器によってPSA産生組織を特定することができる。検出可能な部分は、例えば、放射線を放射するか、または磁気感受性の検出可能な部分であっても、それは、例えば、チェレンコフ放射線及び/または制動放射の放射体であっても、それは、蛍光標識及び/または磁気もしくは磁化可能標識であってもよい。したがって、本発明に従うRGS/IGSは、例えば、光学、チェレンコフ、制動放射、もしくはベータ放射線の検出、または放射性核種標識の検出に基づく方法であっても、かつ/あるいは磁気測定を伴ってもよい。RGSは、外科医が、検出可能な部分によって「マークされた」組織を特定することを可能にする外科的技術として、当業者にとって周知である。
【0148】
上記の方法に従って得られた可視化は、SPECT/PET、コンピュータ断層撮影(CT)、超音波(US)、及び磁気共鳴撮像(MRI)などの他の放射線学的可視化方法と組み合わされ得る。
【0149】
したがって、更なる一態様において、本発明はまた、放射線誘導または画像誘導手術などの手術前または手術中に、前立腺癌を有する患者に投与することによって、医学において使用するための抗体ポリペプチドも提供する。
【0150】
本発明の依然更なる一態様は、対象の血液中の前立腺腫瘍細胞を検出するためのインビトロ方法であって、
(a)試験される対象からの血液試料を提供することと、
(b)任意で、血液試料中に存在する細胞を抽出及び/または精製することと、
(c)本発明の第1の態様に従う抗体ポリペプチドを、血液試料中に存在する細胞と接触させることと、
(d)抗体ポリペプチドが、遊離(すなわち、複合体化されていない)PSAに結合するかどうかを(直接的または間接的に)判定することと、
を含み、遊離PSAへの抗体ポリペプチドの結合が、対象の血液中の前立腺腫瘍細胞の存在を示す、方法を提供する。
【0151】
したがって、本方法は、アッセイを実行して、血液試料が遊離PSAを含有するかどうかを判定することを含み、遊離PSAの存在は、対象の血液中の前立腺腫瘍細胞の存在を示す。
【0152】
当業者は、そのようなアッセイを実行するための多くの方法が存在することを理解するだろう。例えば、免疫アッセイは、均一、またはより好ましくは異種のいずれかであり得る。アッセイはまた、競合、またはより好ましくは非競合形式のいずれかでも実行され得る。
【0153】
異種非競合アッセイの場合、例示的なプロトコルは、
(a)試験される対象からの血液試料を提供することと、
(b)任意で、血液試料中に存在する細胞を抽出及び/または精製することと、
(c)本発明の第1の態様に従う固相固定化抗体ポリペプチドを、血液試料中に存在する細胞と接触させることと、
(d)洗浄して、(固体表面に結合していない)可溶性構成成分を除去することと、
(e)トレーサー、すなわち、レポーター分子/粒子で標識された別の抗PSA特異的抗体を添加することと、
(f)洗浄して、未結合のトレーサー抗体を除去することと、
(g)トレーサー抗体からシグナルを検出することとであり得る
【0154】
ステップbとcとの間またはステップcとdとの間に、典型的には、細胞による可溶性PSAの産生、その後、その検出を可能にするためのインキュベーション期間が存在するべきである。
【0155】
本発明の追加の一態様は、対象の組織中の前立腺腫瘍細胞を検出するためのインビトロ方法であって、
(a)試験される対象からの組織試料(組織学的試料など)を提供することと、
(b)任意で、組織試料中に存在する細胞を抽出及び/または精製することと、
(c)本発明の第1の態様に従う抗体ポリペプチドを、組織試料中に存在する細胞と接触させることと、
(d)抗体ポリペプチドが、遊離(すなわち、複合体化されていない)PSAに結合するかどうかを(直接的または間接的に)判定することと、
を含み、遊離PSAへの抗体ポリペプチドの結合が、対象の組織中の前立腺腫瘍細胞の存在を示す、方法を提供する。
【0156】
上記のインビトロ方法の一実施形態において、ステップ(d)は、ELISAによって実行される。しかしながら、インビトロでの抗体−抗原相互作用の検出に好適な任意のアッセイが、使用され得る。
【0157】
追加の一実施形態において、本方法は、試料中の前立腺腫瘍細胞の定量化を更に含む。
【0158】
上記のインビトロ方法の更なる一実施形態において、本方法は、対象における前立腺癌を診断するためのものである。
【0159】
特許請求の範囲及び/または明細書において、「を含む」という用語と組み合わせて使用される場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」という単語の使用は、「1つの(one)」を意味し得るが、それはまた、「1つ以上の」、「少なくとも1つの」、及び「1つまたは1つ以上の」の意味とも一貫する。
【0160】
本発明のこれらの及び他の実施形態は、上記の記述及び添付の図面と組み合わせて考慮されるときに、より良く認識され、理解されるだろう。しかしながら、上記の記述は、本発明の様々な実施形態及びそれらの多数の具体的な詳細を示す一方で、限定ではなく例示のために与えられていることが理解されるべきである。本発明の範囲内で、その趣旨を逸脱することなく、多くの代替、修正、追加、及び/または再編成がなされ得、本発明は、全てのそのような代替、修正、追加、及び/または再編成を含む。
【0161】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様を更に実証するために含まれる。本発明は、本明細書に提示される具体的な実施形態の詳細な記述と組み合わせて、これらの図面のうちの1つ以上を参照することによって、より良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0162】
図1111In−DTPA−h5A10注射の最大7日後にスキャンした、LNCaP異種移植片のSPECT/CT画像を表す。
図2111In−DTPA−m5A10注射の最大7日後にスキャンした、LNCaP異種移植片のSPECT/CT画像を表す。
図3】LNCaP異種移植片マウスにおける、m5A10及びh5A10の腫瘍対対側比の分析。
図4】LNCaP異種移植片マウスにおける、m5A10及びh5A10の肝臓対腫瘍比の分析。
図5】LNCaP異種移植片マウスにおける、111In−DTPA−m5A10及び111In−DTPA−h5A10の体内分布分析。
【0163】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を実証するために含まれる。続く実施例に開示される技術は、本発明者が本発明の実施にあたって良好に機能することを発見した技術を表し、それ故に特定の様式を構成すると見なされ得ることが、当業者によって理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示される特定の実施形態において多くの変更がなされ得、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、同様のまたは類似した結果が得られることを理解するべきである。
【実施例】
【0164】
実施例1−マウス5A10モノクローナル抗体の、FAb形式へのクローニング
試薬
制限酵素はFermentas and Promegaから、アルカリホスファターゼはAmersham Pharmacia Biotechから、dNTP及びT4DNAリガーゼはFermentasからのものであった。プライマーは、University of Turku,Department of Biotechnologyから、及びEurogentecからのものであった。Qiagenキットを、DNA精製に使用した。
【0165】
mRNA抽出及びcDNA合成
製造者によって「Biomagnetic Techniques in Molecular Biology:Technical handbook」(Dynal A.S,2nd edition,1995)に記載される手順に従って、Dynal poly−dT磁気ビーズによって、5A10MAb産生ハイブリドーマ細胞(2E6細胞、Lilja et al,1991)からmRNAを抽出した。Super Script酵素(Gibco BRL)によって、mRNAからのcDNA合成を実行した。まず、mRNAと結合している磁性粒子を、1×反応緩衝剤、0.1MのDTT、2mMのdNTP、及びリボヌクレアーゼ阻害剤(50μlの全反応物体積中1.5μl)を含有する反応物中、42℃で2分間インキュベートした。その後、1μlのSuper Script(200U)を添加し、42℃で1時間反応を進めた。cDNA合成後、粒子及び反応混合物を磁性粒子回収機によって分離し、液体を除去し、粒子をTE緩衝剤中に懸濁させ、95℃で1分間インキュベートして、mRNAを放出させた。インキュベーション後、粒子に結合したcDNAを回収し、mRNA含有緩衝剤を除去し、粒子をTEで洗浄し、最後に50μlのTE中に懸濁して、保管した。
【0166】
cDNAからの抗体遺伝子の増幅及びクローニング
軽鎖及び重鎖のN末端アミノ酸配列を、University of Turku,Center of Biotechnology配列決定サービスにおいて、エドマン分解法によって決定した。軽鎖及び重鎖から得られた配列はそれぞれ、DIVMTQS[配列番号18]及びEVQLVESG[配列番号19]であった。N末端アミノ酸配列に基づいて、データベース検索(SwissProt)を実行して、マウスの免疫グロブリン生殖系列V遺伝子中の対応するヌクレオチド配列を特定した。重鎖及び軽鎖をクローニングするフォワードPCRプライマーの相補性領域を、この検索に基づいて設計した。それぞれ、CH1及びCLに結合するリバースプライマーを設計した。プライマーはまた、クローニングに必要とされる制限酵素認識部位(後に強調する)も含有する。
【0167】
以下の条件(プライマー及び鋳型の変更を除く)でPCR反応を行った。125μMのdNTP、0.5μMのフォワード及びリバースプライマー、1×Pfuの反応緩衝剤、ならびに2.5U PfuのDNAポリメラーゼ(Stratagene)。95℃を30秒、55℃を1分、及び72℃を1分30秒のサイクルを30回行うことによって、増幅を行った。
【0168】
以下のプライマーによって、cDNAから軽鎖を増幅した。
●5A10−L(5’−CCAGCCATGGCTGACATTGTGATGACCCAGTCTCA−3’、NcoI[配列番号20])、及び
●WO252(5’−GCGCCGTCTAGAATTAACACTCATTCCTGTTGAA−3’、XbaI[配列番号21])。
無関係のFabの遺伝子を含有する軽鎖及びベクターpComb3(Barbas et al.,1991)を、NcoI及びXbaIによって消化させ(ベクターの場合、NcoIでは部分的消化)、アガロースゲルから精製し、ライゲーションした。ライゲーション産生物を、E.coli XL1−Blueに形質転換して、プラスミドp5A10−Lを得た。
【0169】
以下のプライマー対によって、Fd(VH+CH1)鎖を増幅した。5A10−H(5’−CCAGCCATGGCTGAGGTGCAATTGGTGGAGTCTGG−3’、NcoI[配列番号22])、及びWO267(5’−CTAGACTAGTACAATCCCTGGGCACAATTTTC−3’、SpeI[配列番号23])。Fd鎖をベクターpComb3にクローニングして、そのベクターによって担持される別のFabのFd遺伝子を置き換えた。PCR産生物及びベクターを、NcoI(ベクター及び挿入断片の場合どちらも、NcoIでは部分的消化)ならびにSpeI(New England Biolabs)によって消化させ、アガロースゲルから精製し、ライゲーションした。ライゲーション産生物を、E.coli XL1−Blueに形質転換して、ベクターp5A10−Hを産生した。
【0170】
SpeI及びXbaIによって、プラスミドp5A10−Lから5A10軽鎖を消化させ、ゲル精製の後、ゲル精製したプラスミドp5A10−Hによってライゲーションし、対応する酵素によって消化も行った。ライゲーション産生物を、E.coli XL1−Blueに形質転換して、Fab5A10の軽鎖及びFd鎖の両方を含有するプラスミドpComb3−5A10を得た。Fd鎖に融合したファージコートタンパク質遺伝子gIIIpを除去するために、pComb3−5A10をSpeI及びNheIによって更に消化させ、自己ライゲーションさせ、E.coli XL1−Blueに形質転換した。プラスミドpComb3−5A10DIIIは、可溶性官能Fab5A10の発現を可能にした。
【0171】
参考文献
Barbas CF3rd,Kang AS,Lerner RA,Benkovic SJ.(1991)Assembly of combinatorial antibody libraries on phage surfaces:The gene
III site.Proc.Nat.Acad.Sci.,Vol.88,pp.7978−7982
Biomagnetic Techniques in Molecular Biology:Technical handbook.Dynal A.S,2nd edition,1995
Lilja H,Christensson A,Dahlen U,Matikainen MT,Nilsson O,Pettersson K,Lovgren T.(1991)Prostate−specific antigen in serum
occurs predominantly in complex with alpha1−antichymotrypsin.Clin Chem.37(9):1618−25
【0172】
実施例2−ヒト化5A10抗体の発現及び精製
HEK293細胞を、FreeStyle293発現培地(Life Technologies)中、2Lの懸濁液培養物に拡大した。トランスフェクションの日、細胞密度は、1×10個の細胞/mlであった。
【0173】
構成成分重鎖及び軽鎖(すなわち、それぞれ配列番号16及び17)をコードするヌクレオチド配列を、哺乳動物細胞内での発現のためにコドン最適化し、合成し、IgG発現ベクターにクローニングした。その後、重鎖及び軽鎖のヌクレオチド配列を含有するプラスミドDNA(発現ベクター)を、トランスフェクション剤と混合し、室温で10分間インキュベートした。DNAトランスフェクション剤混合物を、フラスコを緩徐に回旋させながら、細胞培養物に緩徐に添加した。その後、トランスフェクトされた細胞培養物を、37℃、8%のCO、約135rpmで回転する軌道式振盪機プラットフォームで、7日間インキュベートした。
【0174】
培養培地を遠心分離によって収集し、5μm、0.6μM、及び0.22μMのフィルター系を通して濾過した。
【0175】
タンパク質Gクロマトグラフィーによって抗体を精製し、透析によって緩衝剤をPBS(pH7.4)に変更し、その後、限外濾過によって抗体を濃縮した。
【0176】
吸光度によって濃度を測定した。
DNA:
軽鎖: p5A10VLhDhk(4300塩基対)量: 0.35mg
重鎖: p5A10VHhDhIgG1(4900塩基対)量: 0.60mg
DNA量は最適化されなかった。
【0177】
トランスフェクション剤:専売(しかしながら、Xfect(商標)トランスフェクション試薬(Clontech)、Lipofectamine(Life Technologies)、FuGENE(登録商標)HDトランスフェクション試薬(Promega)、FreeStyle(商標)Max試薬(Invitrogen)、DEAE−デキストラン、ポリエチレンイミン、及びリン酸カルシウムなどの好適な市販のトランスフェクション剤は、容易に入手可能である)。
全体的収率:15mg(7.5mg/L)。
【0178】
実施例3−h5A10の特性評価:親和性
研究の目的
この研究の目的は、Biacore機器で表面プラズモン共鳴(SPR)の技術を使用することによって、抗体5A10の8つのバリアントと、抗原PSAとの間の結合速度論を調査することであった。
【0179】
タンパク質試料(抗体及び抗原)の品質を調査するために、SPR実験前にSDS−PAGEゲルを泳動させた。
【0180】
事前研究において、異なるパラメータを調査して、この研究における実験の適切な条件を見出した。
【0181】
研究において、8つの抗体及び抗原について、複数の結合測定を実行した。回収されたデータから、会合及び解離速度定数(kon及びkoff)ならびに解離定数(KD)を計算し、本明細書に報告した。
【0182】
試薬及び機器の情報
以下の8つの抗体及び1つの抗原の溶液は、Diaprost ABによって提供された。
●PSA 169μg/ml
●m5A10(141203) 1mg/ml
●m5A10(140905) 4μM
●m5A10−DFO(140905) 4μM
●m5A10−DOTA(140905) 4μM
●m5A10−DTPA(140905) 4μM
●h5A10(141203) 1mg/ml
●h5A10−DFO(141203) 2mg/ml
●h5A10−DTPA(141203) 1mg/ml
●h5A10−DOTA(141211) 2.5μM
全ての試料をアリコートに分け、分析前に−20℃の冷凍庫内で保持した。
【0183】
全ての結合実験を、Biacore3000機器で、CM4チップ上で実行した。活性化、固定化、不活性化、結合、及び再生に必要とされたチップ及び全ての試薬は、GE Healthcareから購入し、製造者のガイドラインに従って使用した。
【0184】
SDS−PAGE
(a)実験の記述
Diaprost ABによって提供された試薬を、製造者のガイドラインに従って、NovexからのTRIS−Tricineの10〜20%のアクリルアミドゲル上に泳動させた。
【0185】
2連のタンパク質試料(天然及び還元)を、標準試料とともに、同一のゲル上で同時に泳動させた。
【0186】
天然の連の各試料は、1〜1.3μgのタンパク質、TRIS緩衝剤(pH7.4)、SDS、及び充填緩衝剤を含有した。
【0187】
還元の連の各試料は、1〜1.3μgのタンパク質、TRIS緩衝剤(pH7.4)、SDS、充填緩衝剤、及び0.04体積%のベータ2−メルカプトエタノール(還元剤)を含有した。
【0188】
ゲルの染色を、酢酸、エタノール、及び水(0.7、3.0、6.3の対応する割合)のクーマシーブリリアントブルー溶液中で実行した。
【0189】
ゲルの脱染を、酢酸、エタノール、及び水(0.7、3.0、6.3の対応する割合)の溶液中で実行した。
【0190】
(b)結果及び結論
これらの結果から、抗体及び抗原試料は高品質かつ高純度のものであることが明らかである(結果示さず)。
【0191】
親和性研究
(a)以下に記載される条件を使用して、相互作用の親和性を決定するために、2つの実験を実行した。
【0192】
CM4上での抗原の固定化。
【0193】
EDC及びNHS混合物を使用したアミンカップリングについての製造者のガイドラインに従って、チップCM4−1の活性化を実行した。
【0194】
3.00μg/mlの抗原PSA(10mMのNaAc緩衝剤(pH3.8)中に希釈したPSAストック溶液)を含有する溶液を、チップCM4−1上のチャネルfc2〜4に流動させて、抗原をチップに固定化した。流量:5μl/分、体積:200μl。
標的RU≦M/10 M(PSA)=30000Da 標的RU(PSA)≦3000チャネルfc1を、ブランクとして使用した。
【0195】
第1の実験において、以下の固定化を達成した。
fc2=1450RU fc3=850RU fc4=900RU
第2の実験において、以下の固定化を達成した。
fc2=1325RU fc3=890RU fc4=1060RU
活性化及び固定化の後、全てのチャネル(fc1〜4)を、エタノールアミンによって遮断した。
【0196】
これらのデータは、3.00μg/mlの抗原を使用して、適切な固定化が達成されたことを実証する。
【0197】
(b)会合相の調査
各抗体の4つの異なる濃度の溶液(HSP緩衝剤中に希釈したストック溶液)を、チップCM4−1上のチャネルfc2〜4に30μl/分の流量で流動させた時、チップCM4−1に対する8つの抗体の会合相を5分間続けた。
【0198】
調査した各抗体の濃度は、100、50、25、及び12.5nMであった。
【0199】
更に、解離プロセスを8時間続けた実験から、会合データを得た。
【0200】
合計で、各抗体について、3〜9つの個々の会合実験を実行した。
【0201】
ブランクfc1からのシグナルを、全てのデータから減算した。
【0202】
我々は、5分後、会合プロセスのデータを適合することができることを見出した。
【0203】
(c)解離相の調査
抗体のそれぞれについて、解離相を8時間続けた。
【0204】
ブランクfc1からのシグナルを、解離速度定数の計算に使用した全てのデータにおいて減算した。
【0205】
データは、解離プロセスが非常に緩徐であることを示す。
【0206】
(d)解離速度定数(koff)の推定
解離相データを適合し、解離速度定数(koff)を推定した(表1を参照されたい)
【0207】
(e)会合速度定数(kon)の推定
会合速度定数を推定するために、解離速度定数(表1)を適合した等式において使用した。
【0208】
(f)解離定数(k)の推定
試験した抗体のそれぞれの解離定数(K)を、表1に示す。
【表1】
【0209】
8つ全ての抗体について、解離定数(K)は、10−11M範囲内である。
【0210】
統計学的に有意ではないものの、ヒト化抗体の解離定数は、親マウス抗体の解離定数よりも高いようである。
【0211】
は有意には変化していないため、ヒト化抗体のコンジュゲーションは親和性には著しくは影響を与えないようである。
【0212】
要約
●全ての抗体について、会合プロセスは非常に高速であり、3〜9回の各抗体の実験に基づいて、会合速度定数(kon)は全て10−1−1の範囲内である。
●解離プロセスは非常に緩徐であり、ほぼBiacoreの技術的な限界の範囲内である。3〜9回の各抗体の実験に基づいて、解離速度定数(koff)は全て10−6−1の範囲内である。
●全ての抗体について、解離定数(K)は10−11Mの範囲内である。
【0213】
実施例4−h5A10の特性評価:凝集
全体の要約
IgGの6つのバリアントに、動的光散乱(DLS)研究を実行して、それらの凝集傾向を研究した。DLS結果は、全ての構築物が妥当な大きさ(球状タンパク質想定して、200kDaまたはわずかに200kDa超)を有し、凝集をほとんどまたは全く有さないことを示す。
【0214】
目的
動的光散乱を使用して、6つのIgG構築物をオリゴマー状態に関して特性評価すること。
【0215】
結果
動的光散乱
Malvern Zetasizer APS装置を使用して、20℃、2連の試料で動的光散乱を測定した。各試料を3回測定した。HBS−EP緩衝剤(顧客より)を対照として使用して、緩衝剤が粉塵及び凝集体を妥当に含まないことを確実にした。HBS−EP緩衝剤中の凝集体の信頼できる測定は行うことができず、これは良いことであった(緩衝剤は凝集体を含まないべきであるため)。数分布関数を使用して、全ての試料を確実に測定することができた。最も豊富な種の平均半径を、その種の多分散とともに計算した。その種の平均質量分布もまた計算した(表2を参照されたい)。
【表2】
【0216】
完全な球状の形状を有するタンパク質の場合、5.7nmの半径は、約200kDaの分子量に対応する。完全な球状の形状を有するタンパク質の場合、6.1nmの半径は、約230kDaの分子量に対応する。これは、IgG分子の150kDaの分子量に妥当に近く、これは、試料のほとんどが主に単量体及び/または二量体IgG分子からなることを意味する。二量体を排除しない理由は、光散乱が分子形状に基づいて大まかなサイズ推定をもたらし、これにより単量体と二量体との分離は困難となるが、単量体からの大きな凝集体の分離が容易となるためである。1kDa未満の小さな粒子は、全てのマウスIgG試料中に見出された。これらの粒子は、それらの小さなサイズのため、緩衝剤中に見出される構成成分に属することが想定されるため、それらは、表1では無視した。対照的に、より大きな凝集体の小画分は、全てのヒトIgGにおいて見出されるが、マウスIgGでは見出されなかった。
【0217】
結論
動的光散乱は、全ての構築物が妥当な大きさを有し、凝集をほとんどまたは全く有さないことを示す。6つ全ての構築物のサイズ分布は、重複している。驚くべきことに、緩衝剤様粒子(<1kDa)は全てのマウスIgG試料において見出される一方で、より大きな凝集体はヒトIgG試料のみにおいて見出される。
【0218】
実施例5−h5A10の特性評価:インビボ体内分布
この研究は、111Inで標識した場合の、マウス5A10とヒト5A10とのインビボ体内分布を比較する。
【0219】
材料及び方法
ヒト化対応物の抗体h5A10を、以下に記載されるように産生した。
●抗体:配列番号12に従う重鎖及び配列番号13に従う軽鎖を含む、例示的なヒト化モノクローナル抗体5A10(IgG1/カッパ、HEK293細胞内に一過性発現、実施例2を参照されたい)は、Innovagen AB,Lund(ロット番号90475.33、PBS中濃度1.0mg/ml、pH7.4)によって提供された。非特異的IgG抗体を、アイソタイプ対照として利用した(マウス血清からのIgG抗体、Sigma I−8765)。
【0220】
コンジュゲーション及び放射性標識
CHX−A’’−DTPAと5A10とのコンジュゲーション:PBSまたはNaCl中のマウス及びヒト化5A10mAbの溶液を、0.07Mのホウ酸ナトリウム緩衝剤(Sigma Aldrich)を使用してpH9.2に調節した。その後、タンパク質溶液を、3:1のキレート剤対抗体のモル比で、キレート剤CHX−A’’−DTPA(Macrocyclics,USA)と、40℃で4時間コンジュゲートさせた。反応を終了させ、20mlの0.2Mの酢酸アンモニウム緩衝剤(pH5.5)で平衡化したNAP−5カラム(GE Healthcare)でのサイズ排除クロマトグラフィーによって、CHX−A’’−DTPA−11B6(DTPA−11B6)を遊離キレートから分離した。コンジュゲートされた5A10抗体を1mlの酢酸アンモニウム緩衝剤で溶出させ、200uLのアリコートに分けた試料を−20℃で保管した。
【0221】
DTPA−5A10の放射性標識:酢酸アンモニウム緩衝剤(pH5.5)中のマウス及びヒト化DTPA−5A10を、所定の量の111InCl(Mallinkrodt Medical,Dublin,Ireland)と混合した。室温で2時間インキュベートした後、標識付けを終了させ、PBSで平衡化したNAP−5カラム(Thermo Scientific,USA)で精製した。0.2Mのクエン酸(Sigma Aldrich)で溶出する即時薄層クロマトグラフィー(ITLC)(Biodex,Shirley,NY,USA)によって、標識付け効率及び速度論を監視した。このシステムにおいて、放射性標識されたコンジュゲートは、遊離111Inの間、元の線に留まる。Optiquant定量化ソフトウェア(Perkin Elmer;Waltham,MA,USA)を有するCyclone Storage Phosphor Systemを使用して、放射線活性分布を決定した
【0222】
動物研究
インビボ研究について、hK2を発現する前立腺癌腫細胞株LNCaP(ATCC,Manassas,VA,USA)を使用した。細胞を、Thermo Scientificからの、10%のウシ胎仔血清及びPEST(ペニシリン100IU/ml及び100μg/mlのストレプトマイシン)で補助したRPMI1640培地(Thermo Scientific)中で培養した。細胞を、5%のCOを有する加湿インキュベーター内で37℃で維持し、トリプシン−EDTA溶液(0.25%のトリプシン、0.02%のEDTA緩衝剤、Thermo Scientific)で剥離した。LNCaP細胞の異種移植時には、Matrigelマトリックス(BD−Biosciences,San−Jose,California,USA)を使用した。
【0223】
実験動物の保護に関する国内法に従い、Ethics Committee for Animal Research(Lund University,Sweden)の承認を受けて、全ての動物実験を実行した
【0224】
生後6〜8週間の雄の免疫不全ヌードマウスNMRI−Nu(Janvier Labs,France)を、この研究に使用した。全てのマウスの左側腹部に、LNCaP細胞(100μlの成長培地及び100μlのMatrigel中、500〜600万個の細胞)を皮下異種移植した。異種移植片を、6〜8週間成長させた。
【0225】
SPECT/CT撮像研究
111In−DTPA−h5A10及び111In−DTPA−m5A10のSPECT/CT撮像研究を実行した。撮像中、動物を、2%〜3%のイソフルランガス(Baxter;Deerfield,IL,USA)で麻酔した。皮下LNCaP異種移植片を有するNMRI−nuマウスの尾静脈に、約13〜15MBq、100uLのPBS中50ugのmAbで、111In−DTPA−h5A10(n=4)または111In−DTPA−h5A10(n=4)を静脈内注射した。NSP−106マルチピンホールマウスコリメータを有する前臨床SPECT/CTスキャナ(NanoSPECT/CT Plus,Bioscan;Washington,DC,USA)を使用することによって、動物を1時間撮像した。注射の1、2、3、及び7日後に、撮像を実行した。HiSPECTソフトウェア(SciVis;Goettingen,Germany)を使用して、SPECTデータを再構築した。各全身SPECTの前に、CT撮像を行った。InVivoScope2.0ソフトウェア(inviCRO;Boston,MA,USA)を使用して、SPECT/CT画像を分析し、CT画像を解剖学的基準として使用して、対象領域ROIを引き出した。
【0226】
体内分布研究
111In−DTPA−h5A10及び111In−DTPA−m5A10両方の体内分布研究を実行した。マウスの動物(n=12)群に、111In−DTPA−h5A10(約3〜4MBq、100uLのPBS中50ugのmAb)または111In−DTPA−m5A10(3〜4MBq、100uLのPBS中50ugのmAb)を静脈内注射した。動物を注射の7日後に屠殺し、対象器官を回収し、3インチのNaI(Tl)検出器(1480WIZARD,Wallac Oy,Turku,Finland)を有する自動NaI(Tl)ウェル計数器で分析した。
【0227】
1グラムの組織当たりの注射用量パーセント(%IA/g)として表される組織取り込み値を、以下のように計算した。
%IA/g=(組織放射線活性/注射放射線活性)/器官重量×100
式中、静脈内注射の場合、
注射放射線活性= シリンジ中の放射線活性
−使用後のシリンジ中に残された放射線活性
−尾部の放射線活性
であった。器官はまた、解剖の後にも秤量した。バックグラウンド及び物理的減衰について、データを補正した。
【0228】
結果
SPECT/CT撮像
111In−DTPA−h5A10及び111In−DTPA−m5A10注射の最大7日後にスキャンしたLNCaP異種移植片の代表的なSPECT/CT画像を、図1及び2に示す。活性は、24時間以内までにLNCaP腫瘍内に急速に蓄積し、放射線活性は、注射の7日後、高いままである。活性の高い蓄積はまた、肝臓内でも検出された。ROI分析は、対側脚の腫瘍対軟部組織の比率が、注射の7日後、111In−DTPA−m5A10の場合は5.2±0.84、及び111In−DTPA−h5A10の場合は6.4±1.3であることを示した。
【0229】
体内分布
異なる器官における活性蓄積をより徹底的に調査するために、より多くの数の動物(1つの抗体当たりn=12)においてエキソビボ体内分布を実行した。
【0230】
経時的な111In−DTPA−m5A10及び111In−DTPA−h5A10の腫瘍対対側比を、図3に示す。予想外に、この比率は、「親」マウス抗体の場合よりも、ヒト化抗体の場合で著しくより高いことが観察された。
【0231】
経時的な111In−DTPA−m5A10及び111In−DTPA−h5A10の腫瘍対肝臓比を、図4に示す。再び、予想外に、この比率は、「親」マウス抗体の場合よりも、ヒト化抗体の場合で著しくより高いことが観察された。
【0232】
111In−DTPA−m5A10及び111In−DTPA−h5A10の体内分布データを、図5に示す。
【0233】
マウス、及びLNCaP異種移植片を有するNMRIマウス内のヒト化5A10の体内分布は、7日目で高度の腫瘍蓄積を示した一方で、骨、筋肉などの他の器官における蓄積は、より一層低かった。
【0234】
ヒト化111In−DTPA−h5A10の体内分布データと、親マウス抗体(111In−DTPA−m5A10)の体内分布データとの比較は、予想外かつ有利な差異を明らかにした。腫瘍蓄積は、マウスの場合よりもヒト化の場合で有意により一層高く、注射の7日後、m5A10の2.7±0.75%IA/g(p<0.001)と比較して、h5A10の場合では7.4±1.4%IA/gであった(図6)。他の器官における放射線活性の蓄積は、両方の抗体の場合でおよそ同一のレベルであり、これにより、腫瘍対器官比は、親マウスm5A10よりもヒト化h5A10でより一層高いものとなった(表3)。
【表3】
【0235】
結論及び考察
この研究の結果は、以下のことを実証する。
●ヒト化5A10抗体111In−h5A10が、インビボで前立腺腫瘍を効果的に標的とすること、
●ヒト化h5A10抗体が、そのマウス抗体よりも予想外に良好な腫瘍蓄積を呈すること、及び
●ヒト化h5A10抗体が、マウス抗体よりも(より高い腫瘍対器官比によって示される)良好な撮像対比を提供すること。
【0236】
まとめると、これらの発見は、診断におけるヒト化5A10抗体のより良好な標的特性、及び前立腺癌の治療におけるより良好な治療有効性の可能性についての説得力ある証拠を提供する。
【0237】
実施例6−放射性核種療法の線量測定計画及び患者における前立腺癌治療
放射性核種療法(RNT)の場合、放射線源は全体的に分布しており、放射線活性は通常放射性医薬品として全身投与される。放射線活性分布は、経時的に異なる組織内に蓄積する放射性医薬品の量(患者間で異なるものである)に依存する(1)。
【0238】
RNT治療は、処方された吸収線量に基づくべきである(2)。その後、まずトレーサー量の放射性医薬品を使用して、治療前研究を実行し、腫瘍及び器官吸収線量を決定するべきである。通常、この情報は、mGy/MBq;D(器官)の単位での、1投与活性単位当たりの器官吸収線量を記載する因子として表される。
【0239】
その後、類似した条件下で治療投与が与えられる場合、この因子を使用して、所与の器官、組織、または腫瘍に処方された吸収線量を送達するために投与の必要がある活性を決定することができる(4,6)。
【0240】
放射性標識h5A10抗体による前立腺癌治療の場合、治療前研究は、111In−h5A10による111In撮像に基づくべきである。111Inは、その後、177Luが治療放射性核種となる場合、定量的(平面/SPECT)撮像に最も好適である。その後、D(器官)が決定されると、処方された治療効果を与える治療活性Aで治療が与えられ得る。治療中、活性分布及び対応する線量率は、撮像に基づいて計算して、治療の評価に必要な、腫瘍及び正常器官に与えられる実際の治療吸収線量を得るべきである。
【0241】
治療計画の結果として骨髄毒性レベルに達している治療の場合、骨髄支持が必要であり、その骨髄腔の線量測定計算に基づいて、幹細胞の再注入の時間が決定されなくてはならない。
【0242】
要約すると、以下の治療スキームがそれに合うように計画されるべきである。
治療前線量測定研究
1.111In−標識h5A10(200〜300MBq)注射
2.採血−血液及び血漿中の活性濃度を第1週目に決定
3.少なくとも1週間にわたる撮像(SPECT/平面)(3〜5回)
4.LundaDoseスキーム(3)または同等のプログラムに基づく器官線量測定
5.骨髄(2〜3Gy)、腎臓(20〜30Gy)、及び肝臓(12〜36Gy)などの放射線感受性器官に対する特定の吸収線量によって限定される治療活性を決定。
治療内線量測定を含む治療
1.177Lu−標識h5A10を(治療前線量測定に基づいて)投与
2.採血−血液及び血漿中の活性濃度
3.少なくとも1週間にわたる撮像(3〜5回)
4.LundaDoseスキーム(3)または同等のプログラムに基づく器官線量測定=>処方された治療吸収線量の検証。
【0243】
線量測定についての具体的な解説
累積活性は、一定器官にわたって所与の領域内で発生する減衰の数である。単位は、Bq sまたはBq hである。イオン化放射線が物質を通って移動するとき、それは相互作用し、エネルギーを付与する。与えられたエネルギーは、所与の体積における全てのエネルギー付与の合計である。吸収線量は、与えられたエネルギー対その体積の質量の比率である。吸収線量の単位はグレイ(Gy)であり、1Gyは1J/kgに等しい。
【0244】
異なる時間での組織内の活性の値から、積分によって累積活性が決定され、吸収線量が決定され得る。活性測定は、器官全体の線量測定の平面撮像を使用して行われる。定量的SPECT/CTは、ボクセルに基づく方法を使用して、より小さな体積での線量測定を可能にする。
【0245】
活性濃度値の3D分布から、組織内に位置する点源周辺のエネルギー付与パターンを記載する、いわゆる点用量カーネルまたはボクセルS値を使用して、吸収線量率分布が計算され得る。この方法は、解剖学的領域(体躯内の軟部組織など)が密度に関して均一であることを想定する。肺内のように、密度が不均一である身体領域の場合、直接的Monte Carlo計算が好ましい。ここで、SPECTまたはPETによる活性分布を、Monte Carlo用量計算コードへの入力として使用する。
【0246】
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図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]