(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両内に設けられたバッテリの所定位置の電圧又は前記バッテリの温度の少なくともいずれかを検出する検出部と、前記検出部による検出結果に基づき、前記バッテリの電圧又は温度の少なくともいずれかを示す検出情報を無線送信する無線通信部と、を有する複数のバッテリ監視装置と、
前記バッテリ監視装置の前記無線通信部から送信された前記検出情報を受信する受信部と、前記受信部が受信した前記検出情報を、前記バッテリ監視装置の外部に設けられ前記バッテリの状態を判定する外部装置に無線送信する送信部とを有する中継器と、
を含み、
前記中継器は複数の前記バッテリ監視装置から無線送信される各情報を受信して前記外部装置にそれぞれ無線送信し、
前記バッテリ監視装置及び前記中継器は、前記バッテリ及び前記外部装置を内部に収容する金属筐体内に配置され、
所定位置の前記バッテリ監視装置と前記外部装置との間には、前記金属筐体の一部が金属材料を含む障害部として配置され、前記所定位置の前記バッテリ監視装置と前記中継器との間で前記障害部が介在しない直線経路を結ぶことができ、前記外部装置と前記中継器との間で前記障害部が介在しない直線経路を結ぶことができる関係となっている車両用のバッテリ監視システム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のバッテリ監視システムにおいて、中継器の受信部は、外部装置から所定の指令情報が無線送信された場合に当該指令情報を受信するように機能してもよい。中継器の送信部は、受信部が指令情報を受信した場合に指令情報を無線送信するように機能してもよい。バッテリ監視装置は、外部から与えられた指令に対応する制御を行う制御部を有していてもよい。無線通信部は、送信部から指令情報が無線送信された場合に指令情報を受信するように機能してもよい。制御部は、無線通信部が指令情報を受信する場合に、指令情報に対応する制御を行ってもよい。
【0019】
上記構成によれば、バッテリ監視装置が外部装置からの指令に応じた制御を行い得るバッテリ監視システムを、配線数の低減を図りうる構成且つ情報の伝送を良好に行い得る構成で実現できる。
【0020】
本発明のバッテリ監視システムにおいて、中継器の受信部は、外部装置から所定の通知指令情報が無線送信された場合に当該通知指令情報を受信するように機能してもよい。中継器の送信部は、受信部が通知指令情報を受信する場合に通知指令情報を無線送信するように機能してもよい。制御部は、無線通信部が通知指令情報を受信する場合に、バッテリの電圧及び温度の少なくともいずれかを示す検出情報を中継器に向けて無線送信する動作を無線通信部に行わせてもよい。
【0021】
上記構成によれば、バッテリ監視装置が検出した情報(バッテリの電圧及び温度の少なくともいずれかを示す検出情報)を外部装置からの指令に応じて当該外部装置に送信し得るバッテリ監視システムを、配線数の低減を図りうる構成且つ情報の伝送を良好に行い得る構成で実現できる。
【0022】
本発明のバッテリ監視システムにおいて、中継器の受信部は、外部装置から所定のセルバランス指令情報が無線送信された場合に当該セルバランス指令情報を受信するように機能してもよい。中継器の送信部は、受信部がセルバランス指令情報を受信した場合にセルバランス指令情報を無線送信するように機能してもよい。検出部は、複数の電池セルが接続されてなるバッテリにおける各々の電池セルの端子間電圧を特定する電圧情報を検出してもよい。制御部は、無線通信部がセルバランス指令情報を受信した場合に、検出部による検出結果に基づいて各々の電池セルの端子間電圧を均一化させるように複数の電池セルの充電又は放電を制御してもよい。
【0023】
上記構成によれば、バッテリ監視装置が複数の電池セルの端子間電圧を均一化させるセルバランス制御を外部装置からの指令に応じて行い得るバッテリ監視システムを、配線数の低減を図りうる構成且つ情報の伝送を良好に行い得る構成で実現できる。
【0028】
本発明のバッテリ監視システムは、複数のバッテリ監視装置を有していてもよい。中継器は複数のバッテリ監視装置から無線送信される各情報を受信して外部装置にそれぞれ無線送信するように機能してもよい。
【0029】
上記構成によれば、複数のバッテリ監視装置が共通の外部装置と通信を行い得るシステムを、配線数の低減を図りうる構成且つ情報の伝送を良好に行い得る構成で実現できる。
特に、複数のバッテリ監視装置が分散して配置される場合において、それぞれのバッテリ監視装置と外部装置との間で通信を行い得るように配線を設ける場合、配線がより多く必要になるため、サイズや重量の増大が避けられない。これに対し、上記構成によれば、複数のバッテリ監視装置と共通の外部装置との間で通信を行うにあたり、配線数を格段に減らすことができるため、サイズや重量の低減効果がより大きくなる。
【0030】
本発明のバッテリ監視システムは、外部装置を含んでいてもよい。
【0031】
上記構成によれば、配線数の低減を図ることができ、且つ情報の伝送をより良好に行い得るバッテリ監視システムを、外部装置を含んだ形で実現できる。
【0032】
<実施例1>
以下、本発明をより具体化した実施例1について説明する。
まず、本発明の適用例である車両用の電源システム100の概要を説明する。
図1には、車両用の電源システム100を簡略的に示している。
図1で示す車両用の電源システム100は、バッテリ10と、バッテリ10を監視する車両用のバッテリ監視システム1(以下、バッテリ監視システム1ともいう)と、バッテリ監視システム1と通信可能に設けられたパワーマネージメントECU120(Electric Control Unit)とを備える。
【0033】
バッテリ10は、例えば複数の電池セル12からなるリチウムイオンバッテリであり、例えば、ハイブリッド自動車又は電気自動車(EV(Electric Vehicle))などの車両における電動駆動装置(モータ等)を駆動するための電力を出力する電源として用いられる。このバッテリ10は、車両に搭載された図示しない発電装置により充電が行われる。
【0034】
バッテリ10は、リチウムイオンバッテリとして構成された電池セル12が複数個直列に接続された形で1つの組電池11が構成され、所定数の組電池11が直列に配置されて1つのスタック10Aが構成され、このスタック10Aがケース内に収容されている。そして、このように構成されたスタック10Aが複数個直列に接続された形で所望の出力電圧(例えば数百V)を出力し得るバッテリ10が構成されている。
【0035】
図1のように、バッテリ監視システム1は、複数の車両用のバッテリ監視装置30(以下、バッテリ監視装置30ともいう)と、外部装置としてのバッテリECU20と、これらの間での情報の伝送を中継する中継器90とを備えており、複数のバッテリ監視装置30が中継器90を介してバッテリECU20(外部装置)と無線通信を行う構成となっている。なお、バッテリ監視装置30は中継器90を介さなくてもバッテリECU20と無線通信を行い得る構成をなす。
【0036】
ここで、バッテリ監視装置30について詳述する。
図1の例では、バッテリ10を構成する一つの組電池11に対して一つのバッテリ監視装置30が割り当てられている。各々のバッテリ監視装置30は、割り当てられた組電池11の電圧や温度を検出する検出部50と、外部からの指令に応じた制御などの各種制御を行う制御部40と、外部装置としてのバッテリECU20と中継器90を介して又は介さずに直接的に無線通信を行う無線通信部60とを備える。
【0037】
制御部40は、マイクロコンピュータ又はその他のハードウェア回路によって構成され、少なくとも無線通信部60が外部からの指令を受信した場合に、その指令に応じた制御を行い得る構成であればよい。本構成では、
図2のように、例えば制御部40と検出・調整回路部36とが集積化されて監視IC32が構成されている。
【0038】
図2の例では、制御部40は、CPU、ROM、RAMなどを備えたマイクロコンピュータとして構成され、例えば、バッテリECU20から中継器90を介して又は介さずに直接的に送信された所定の温度検出指令を無線通信部60が受信した場合に、検出部50からの信号に基づいてバッテリ10の温度や電圧を把握してバッテリECU20に対しバッテリ10の温度及び電圧に関する情報を送信する応答処理を行う機能を有する。また、制御部40は、バッテリECU20から中継器90を介して又は介さずに直接的に送信された所定のセルバランス指令情報を無線通信部60が受信した場合に、検出部50による検出結果に基づいて各々の電池セル12の端子間電圧を均一化させるように複数の電池セル12の充電又は放電を制御するセルバランス処理を行う機能を有する。
【0039】
検出部50は、バッテリ10の所定位置の電圧を検出する電圧検出部として機能する検出・調整回路部36と、バッテリ10の温度を検出する温度検出部38とを有する。
【0040】
検出・調整回路部36は、複数の電池セル12が接続されてなるバッテリ10における各々の電池セル12の端子間電圧を特定する電圧情報を検出する。検出・調整回路部36は、複数の電圧信号線14と、複数の電池セル12にそれぞれ並列に接続された複数の放電部16とを備える。なお、
図2では、一部の電池セル12(単位電池)を省略して示しており、省略された電池セル12に対応する回路も省略して示している。
【0041】
図2のように、複数の電圧信号線14は、複数の電池セル12が直列に接続されてなる組電池11の電池間電極部11C又は組電池11の端部電極部11A,11Bに電気的に接続されている。電極部11Aは、組電池11の一端部の電極部であり、組電池11において、電位が最も大きくなる電極部である。電極部11Bは、組電池11の他端部の電極部であり、組電池11において、電位が最も小さくなる電極部である。電池間の電極部11Cは、直列に接続された電池セル12(単位電池)の各電池間において一方側の正極と他方側の負極が電気的に接続された部分であり、複数の電池間電極部11Cは、電極部11Aに近づくほど電位が大きくなる。複数の電圧信号線14は、これら電極部11A,11B,11Cの各電位を示すアナログ信号を制御部40に入力する信号線である。
【0042】
制御部40は、各電圧信号線14を介して入力されたアナログ電圧信号に基づき各電池セル12(単位電池)の端子電圧を検出し得る。なお、制御部40は、各電圧信号線14を介して入力された各アナログ電圧信号をデジタル信号に変換するAD変換器を有する。制御部40は、電極部11A,11B,11Cの各電位を把握することができるため、各電池セル12の端子間電圧(各電池セル12の電圧)も算出することができる。
【0043】
なお、
図2では、各々の電圧信号線14に設けられる電流制限抵抗などの図示は省略しているが、電流制限抵抗を設けることで、電池セル12から制御部40に流れ込む電流を制限することができる。また、各電圧信号線14間には、過電圧時に電圧信号線間の電圧をクランプするためのツェナーダイオード(図示略)を各電池セル12と並列接続(具体的には、カソードを電池セル12の正極に接続し、アノードを負極に接続する形で当該電池セル12と並列接続)で配置することが望ましい。
【0044】
温度検出部38は、例えば公知の温度センサによって構成され、
図1で示す組電池11の表面部又はスタック10Aの表面部(例えば、組電池11を収容するケースの外面部や内面部など)に接触した形態又は接触せずに近接した形態で配置される。温度検出部38は、配置位置の温度(即ち、組電池11の表面温度又は表面近傍の温度)を示す電圧値を出力し、制御部40に入力する。
【0045】
制御部40及び検出・調整回路部36を備えてなる監視IC32は、電池セル12のそれぞれの電圧または容量を均等にするセルバランス回路として機能する。このセルバランス回路は、例えば、複数設けられた電池セル12の電圧のばらつきをできるだけ無くして均等にする回路であり、例えば、バッテリ監視装置30に割り当てられた組電池11のうちで正極と負極の電位差(端子間電圧)が最小となる電池セル12を検出し、他の電池セル12の電圧を、検出した電池セル12(即ち、端子間電圧が最小となる電池セル12)の電圧に合わせるように放電動作を行うようなパッシブ型セルバランス回路を用いることが考えられる。
【0046】
無線通信部60は公知の無線通信方式で無線通信を行う回路であればよく、無線信号の媒介及び周波数は限定されない。例えば、媒介は電波を好適に用いることができるが、赤外線等であってもよく、これら以外の電磁波であってもよい。
【0047】
無線通信部60は、バッテリECU20の無線通信部24から無線信号が送信された場合、この無線信号を、中継器90を介して又は直接的に受信するように動作する。例えば、バッテリECU20の無線通信部24から送信された無線信号が中継器90の受信部92で受信され、この無線信号が送信部94で無線送信された場合、無線通信部60は、中継器90から無線送信された無線信号を受信するように動作する。また、バッテリECU20の無線通信部24から無線送信された無線信号が直接的に無線通信部60に伝送された場合、この無線信号を受信し得る。
【0048】
無線通信部60は、制御部40の制御に応じて無線送信を行い、バッテリECU20の無線通信部24に対して少なくともバッテリ10に関する情報を送信するように動作する。例えば、バッテリECU20から温度検出指令があった場合、無線通信部60は、制御部40によって通信が制御され、検出部50の検出結果に基づく情報(バッテリ10の電圧及び温度を示す検出情報)を無線通信方式でバッテリECU20に向けて送信する。この場合、無線通信部60から無線送信された検出情報は、少なくとも中継器90の受信部92によって受信され、中継器90の送信部94によってバッテリECU20に対して無線送信される。なお、無線通信部60から無線送信された検出情報は、直接的にバッテリECU20に伝送されてもよい。
【0049】
このように構成されるバッテリ監視装置30は、例えば、
図3(A)(B)のようにバッテリ10に組み付けられる。
図3の例では、バッテリ監視装置30が公知のプリント基板等として構成される基板部70を有しており、この基板部70が組電池11に直接固定された形態で組電池11と一体的に構成されている。基板部70は、リジット基板であってもよく、FPCであってもよい。例えば、公知のバスバー基板などであってもよい。また、基板部70は、単層基板であってもよく、多層基板であってもよい。上述した監視IC32や無線通信部60は基板部70に実装されており、基板部70を介してバッテリ10と一体化されている。なお、
図3では、基板部70に形成される配線パターンや他の電子部品については省略して示している。
【0050】
図3の例では、基板部70が組電池11を構成する電池セル12の端子部12A,12B(正極又は負極を構成する突起部)に固定されており、これら端子部12A,12Bに電気的に接続される上述の電圧信号線14が、基板部70において配線パターンとして形成されている。端子部12Aは、電池セル12の正極を構成する突起部であり、端子部12Bは電池セルの負極を構成する突起部である。なお、
図3で示す構造はあくまで取付構造の一例であり、この例に限定されない。例えば、基板部70は、バッテリ10に直接固定されていなくてもよく、他部材を介して間接的に組み付けられていてもよい。
【0051】
図1、
図2で示す温度検出部38を構成する温度センサは、基板部70においてバッテリ10に接触する位置又はバッテリ10に近接する位置に実装されていてもよく、基板部70に実装されずにバッテリ10に対し直接又は他部材を介して間接的に固定されていてもよい。温度検出部38が基板部70に実装されていない場合、温度検出部38と基板部70とが配線部などを介して電気的に接続されていればよい。
【0052】
次に、バッテリECU20について説明する。
図1で示すバッテリECU20は、外部装置の一例に相当し、バッテリ監視装置30の無線通信部60又は中継器90から無線送信された情報を受信し得る構成をなすとともに、様々な制御を行い得る電子制御装置として構成されている。また、バッテリECU20は、
図1で示す外部のECU(
図1では、パワーマネージメントECU120)と通信可能とされている。
【0053】
バッテリECU20は、無線通信を行う無線通信部24と、電圧異常判定などの各種判定を行う判定部22とを有する。具体的には、
図2のように、バッテリECU20は、無線通信部
24及び公知のマイクロコンピュータ21(マイコン21とも称する)を備え、マイクロコンピュータ21が判定部22として機能する。マイクロコンピュータ21は、例えば、CPU、記憶部(ROM、RAM等)、AD変換器などを備え、様々な制御を行い得る。
【0054】
このように構成されたバッテリECU20は、直接的に又は中継器90を介してそれぞれのバッテリ監視装置30と無線通信可能に構成され、各バッテリ監視装置30の無線通信部60が送信した検出情報(バッテリの電圧又は温度の少なくともいずれかを示す検出情報)を受信し得る。また、バッテリECU20は、各バッテリ監視装置30に対して様々な指令を無線通信によって与え得る。
【0055】
このように構成されたバッテリ監視システム1は、例えば
図6のように、バッテリ10と共に、金属筐体80内に収容した形で車両内の所定位置に配置することができる。金属筐体80は、金属製のケースとして形成されるものであり、公知の様々な金属材料によって構成することができる。
図6のようにバッテリ10と複数のバッテリ監視装置30と中継器90とバッテリECU20とが同一の金属筐体80に収容されていると、外部からの衝撃や外部からのノイズの干渉などを金属筐体80によって抑え得る構成を、よりコンパクトに実現することができ、金属筐体80の内部において良好に無線通信を行い得る。
【0056】
バッテリ監視システム1は、少なくともいずれかのバッテリ監視装置30(
図6では、位置Pのバッテリ監視装置30)とバッテリECU20(外部装置)との間に、金属材料を含む障害部82(
図6の例では金属筐体80の一部)が配置される。そして、そのバッテリ監視装置30(位置Pのバッテリ監視装置30)の少なくとも一部と中継器90の少なくとも一部との間に障害部82を介在させず、バッテリECU20の少なくとも一部と中継器90の少なくとも一部との間に障害部82を介在させない位置関係で中継器90が配置される。具体的には、バッテリ監視装置30(位置Pのバッテリ監視装置30)における無線通信部60のいずれかの位置と、中継器90の受信部92及び送信部94におけるいずれかの位置との間で、障害部82が介在しない直線経路L1を結ぶことができる関係となっており、バッテリECU20の無線通信部24のいずれかの位置と、中継器90の受信部92及び送信部94におけるいずれかの位置との間で、障害部82が介在しない直線経路L2を結ぶことができる関係となっている。
【0057】
このようにバッテリ10及びバッテリ監視システム1を収容した金属筐体80は、車両内において、走行用の動力源となるモータやオルタネータなどのノイズ発生源から離して配置することが望ましく、例えば、車両内に設けられた座席の下位置などに好適に配置することができる。また、走行用の動力源となるモータやオルタネータなどが車両の前端寄りに配置される場合には、バッテリ監視システム1を車両の後端寄りに設けると良い。逆に、走行用の動力源となるモータやオルタネータなどが車両の後端寄りに配置される場合には、バッテリ監視システム1を車両の前端寄りに設けると良い。但し、これらの例はあくまで好適例であり、車両内において様々な位置に配置することができる。
【0058】
図1のように、バッテリECU20は、外部に設けられたパワーマネージメントECU120と無線通信又は有線通信を行い得るが、パワーマネージメントECU120は、上述した金属筐体80の外部に配置されていてもよく、内部に配置されていてもよい。例えば、金属筐体80内に収容されたバッテリECU20と金属筐体80外に配置されたパワーマネージメントECU120とがCAN通信線などの通信線を介して通信可能に接続され、相互に情報の送受信を行い得る構成となっていてもよい。
【0059】
次に、中継器90について説明する。
中継器90は、無線信号を受信する受信部92と、無線信号を送信する送信部94とを備え、外部からの無線信号を受信部92で受信して送信部94で送信し直す機能を有する。
【0060】
受信部92は、公知の無線通信方式で送信された無線信号を受信し得る回路であればよく、無線信号の媒介及び周波数は限定されない。具体的には、バッテリ監視装置30の無線通信部60から送信された無線信号(検出情報などを含む信号)やバッテリECUの無線通信部24から送信された無線信号(指令情報などを含む信号)を少なくとも受信し得る構成をなす。送信部94は、公知の無線通信方式で無線信号を送信し得る回路であればよく、無線信号の媒介及び周波数は限定されない。具体的には、バッテリ監視装置30の無線通信部60から送信された無線信号(検出情報などを含む信号)と同様の信号、及びバッテリECUの無線通信部24から送信された無線信号(指令情報などを含む信号)と同様の信号を送信し得る構成をなす。
【0061】
次に、バッテリ監視システム1の動作について説明する。
バッテリ監視システム1では、バッテリECU20が
図4のような流れで制御を行う。
図4の制御は、例えばバッテリECU20のマイクロコンピュータ21によって実行され、マイクロコンピュータ21は、イグニッションスイッチがオン状態となっている間、
図4の制御を短い時間間隔で継続的に繰り返す。
【0062】
バッテリECU20は、
図4の制御を開始した後、パワーマネージメントECU120から通知要求があったか否かを判定する。パワーマネージメントECU120は、所定のタイミングでバッテリECU20に対して所定の通知要求(バッテリ10の状態を通知する要求)を示す情報を送信するようになっており、バッテリECU20は、ステップS1においてパワーマネージメントECU120から通知要求があったか否かを判定する。なお、パワーマネージメントECU120からバッテリECU20に対して通知要求を送信するタイミングは、例えば、イグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替わった直後などであってもよく、それ以外の、予め定められた診断タイミングであってもよい。
【0063】
バッテリECU20は、ステップS1においてパワーマネージメントECU120から通知要求があったと判定した場合、ステップS2において、無線通信可能な全てのバッテリ監視装置30に対して所定の通知指令情報を無線送信する。この通知指令情報は、各バッテリ監視装置30に対して予め定められた項目の情報を送信することを指示する指令情報である。但し、ステップS2で通知指令情報を無線送信した場合、この指令情報を中継器90の受信部92が受信し、中継器90の送信部94から各バッテリ監視装置30に対して指令情報が送信し直されるように中継がなされる。従って、各バッテリ監視装置30は、中継器90の送信部94から送信される通知指令情報又はバッテリECU20から直接送信される通知指令情報のいずれかを受信すれば、通知指令情報を把握することができる。
【0064】
各バッテリ監視装置30は、
図5のような流れで制御を行うようになっている。
図5の制御は、例えば各バッテリ監視装置30の制御部40によって実行され、各制御部40は、イグニッションスイッチがオン状態となっている間、
図4の制御を短い時間間隔で継続的に繰り返す。
【0065】
制御部40は、
図5の制御を開始した後、ステップS21においてバッテリECU20から上述の通知指令があったか否か(具体的には、バッテリECU20又は中継器90から送信された通知指令情報を受信したか否か)を判定する。制御部40は、ステップS21において、バッテリECU20から通知指令があったと判定した場合(ステップS21でYesの場合)、ステップS24において電圧や温度を検出する。具体的には、制御部40は、
図2で示す各電圧信号線14を介して入力されるアナログ電圧値に基づいて、バッテリ監視装置30が割り当てられた組電池11の各電池セル12の端子間電圧をそれぞれ算出する。更に、温度検出部38から入力される検出値に基づいて、バッテリ10の温度(具体的には割り当てられた組電池11の温度)を把握する。
【0066】
制御部40は、ステップS24において各電池セル12の端子間電圧及び組電池11の温度を検出した後、ステップS25において、それらの情報(検出情報)をバッテリECU20に対して無線送信する。但し、ステップS25で検出情報を無線送信した場合、この検出情報を中継器90の受信部92が受信し、中継器90の送信部94からバッテリECU20に対して検出情報が送信し直されるように中継がなされる。従って、バッテリECU20は、中継器90の送信部94から送信される検出情報又はバッテリ監視装置30から直接送信される通知指令情報のいずれかを受信すれば、検出情報を把握することができる。
【0067】
なお、上述した説明では、ステップS24において組電池11を構成する各電池セル12の端子間電圧や組電池11の温度を検出する例を説明したが、組電池11の全体の電圧、内部抵抗、容量、劣化度、或いは各電池セル12の内部抵抗、容量、劣化度などを算出し、これらの情報をステップS25にてバッテリECU20に向けて送信してもよい。
【0068】
図4のように、バッテリECU20は、ステップS2で通知指令情報を送信した後、この通知指令情報に対する応答(バッテリ監視装置30がステップS25の処理を行うことで送信される電圧や温度の情報)を受信する。具体的には、複数のバッテリ監視装置30のそれぞれが
図5のステップS25で送信する温度情報及び電圧情報を、直接又は中継器90を介して受信する(ステップS3)。
【0069】
バッテリECU20は、ステップS3にて各バッテリ監視装置30からの情報を受信した後、ステップS3で受信した各情報に基づいてバッテリ10の状態を判定する。具体的には、判定部22(即ち、マイクロコンピュータ21)が、複数のバッテリ監視装置30からの情報に基づいてバッテリ10全体の電圧(バッテリ電圧)を算出する。例えば、各バッテリ監視装置30が割り当てられた各組電池11の全体電圧を積算することで、バッテリ10全体の電圧を算出することができる。或いは、全ての電池セル12の端子間電圧を積算することでバッテリ10全体の電圧を算出することができる。そして、判定部22は、このように算出されたバッテリ10全体の電圧(バッテリ電圧)が所定の第1閾値を超える過充電状態であるか否か、及びバッテリ電圧が第1閾値よりも低い所定の第2閾値未満である過放電状態であるか否かを判定する。更に、各バッテリ監視装置30から得られた温度情報に基づき、いずれかの組電池11の温度が所定の温度閾値を超える過昇温状態であるか否かを判定する。このように、判定部22は、無線通信部24が受信した検出情報に基づいてバッテリ10の電圧及び温度が異常であるか否かを判定する。
【0070】
ステップS4の後には、各々の組電池11において、複数の電池セル12の端子間電圧のばらつきが一定値以内に収まっているか否かを判定する(ステップS5)。例えば、各バッテリ監視装置30から受信した情報に基づき、いずれかの組電池11において、端子間電圧が最も大きい電池セル12の端子間電圧と、端子間電圧が最も小さい電池セル12の端子間電圧との差が所定値を超えるか否かを判定し、いずれかの組電池11で差が所定値を超える場合(ステップS5でYesの場合)、ステップS6において、その組電池11が割り当てられたバッテリ監視装置30に対してセルバランス指令情報を送信する。セルバランス指令情報とは、バッテリ監視装置30にセルバランス処理を実行させるための指令を含む情報であり、例えば、予め定められた情報で特定されるコマンドである。この場合も、ステップS6でセルバランス指令情報を無線送信したとき、このセルバランス指令情報を中継器90の受信部92が受信し、中継器90の送信部94からバッテリ監視装置30に対してセルバランス指令情報が送信し直されるように中継がなされる。従って、バッテリ監視装置30は、中継器90の送信部94から送信されるセルバランス指令情報又はバッテリECU20から直接送信されるセルバランス指令情報のいずれかを受信すれば、セルバランス指令情報を把握することができる。
【0071】
図5のように、バッテリ監視装置30は、短い時間間隔で繰り返される
図5の処理におけるステップS22においてセルバランス指令があったか否かを判定しており、バッテリECU20又は中継器90から上述した通知指令情報ではなくセルバランス指令情報を受信した場合(ステップS21でNo,ステップS22でYesの場合)、ステップS23でセルバランス処理を行う。具体的には、セルバランス指令情報が与えられたバッテリ監視装置30は、自己に割り当てられた組電池11を構成する複数の電池セル12のうち最も出力電圧が低い電池セル12の出力電圧に合わせるように、残りの電池セル12を放電させる動作を検出・調整回路部36に行わせる。検出・調整回路部36には、各電池セル12の放電を行うための放電部16がそれぞれ接続され、制御部40はこの放電部16の動作を制御することで、割り当てられた組電池11の全ての電池セル12の端子間電圧を同程度にするように均一化する。
【0072】
バッテリ監視装置30は、
図5のステップS23でセルバランス処理を行った場合、上述したステップS24の処理を再び行い、割り当てられた組電池11におけるセルバランス処理後の各電池セル12の端子間電圧及び組電池11の温度を検出する。そして、ステップS25の処理を行い、ステップS24で検出したこれらの情報をバッテリECU20に向けて送信する。
【0073】
なお、バッテリECU20からいずれかのバッテリ監視装置30に対して選択的にセルバランス指令情報を送信する場合、このセルバランス指令情報に、対象となるバッテリ監視装置30のアドレスを示すアドレス情報を含ませておけばよい。このような方法を用いる場合、各バッテリ監視装置30には予め固有のアドレス情報を記憶しておき、各バッテリ監視装置30はセルバランス指令情報に含まれるアドレス情報に基づいて、受信したセルバランス指令情報が自身に対する指令か否かを判断すればよい。つまり、自身のアドレス情報を含むセルバランス指令情報を受信した場合にステップS23の処理を行うようにすればよい。なお、このような方法を用いずに、バッテリECU20から全てのバッテリ監視装置30にセルバランス指令情報を与えるようにしてもよい。
【0074】
バッテリECU20は、
図4のステップS6にてセルバランス指令情報を送信した場合、このセルバランス指令情報を与えたバッテリ監視装置30から送信される情報をステップS3で受信し、この情報に基づいてステップS4以降の処理を行う。なお、この場合、セルバランス指令情報を与えていないバッテリ監視装置30が割り当てられた組電池11の情報(各電池セル12の端子間電圧や組電池11の温度の情報)は、既に取得した情報を用いればよい。
【0075】
バッテリECU20は、
図4のステップS5の判定を行ったとき、全ての組電池11において、複数の電池セル12の端子間電圧のばらつきが一定値以内に収まっていると判定した場合、ステップS7において外部ECU(パワーマネージメントECU120)にバッテリ状態を送信する。具体的には、直近のステップS4での判定結果に基づき、バッテリ電圧が所定の第1閾値を超える過充電状態であるか否かを示す情報、バッテリ電圧が第2閾値未満である過放電状態であるか否かを示す情報、いずれかの組電池11の温度が所定の温度閾値を超える過昇温状態であるか否かの情報などをパワーマネージメントECU120に送信する。なお、これ以外にも、例えば、バッテリ10のSOC、SOH、内部抵抗など、様々な情報を送信してもよい。
【0076】
以下、本構成の効果を例示する。
上述したバッテリ監視装置30及びバッテリ監視システム1は、検出部50の検出結果に基づく検出情報(バッテリの電圧又は温度の少なくともいずれかを示す情報)を無線通信によって伝送することができるため、配線数を効果的に減らすことができる。更に、検出情報をバッテリECU20(外部装置)に伝送する場合、少なくとも中継器90で中継した上で伝送することができるため、中継器90から無線送信を行い得る位置にバッテリECU20が配置されていれば、情報をより良好に伝送することができる。
【0077】
中継器90の受信部92は、バッテリECU20(外部装置)から所定の指令情報が無線送信された場合に当該指令情報を受信するように機能する。中継器90の送信部94は、受信部92が指令情報を受信した場合に指令情報を無線送信するように機能する。バッテリ監視装置30は、外部から与えられた指令に対応する制御を行う制御部40を有する。無線通信部60は、送信部94から指令情報が無線送信された場合に指令情報を受信するように機能する。制御部40は、無線通信部60が指令情報を受信する場合に、指令情報に対応する制御を行う。
【0078】
上記構成によれば、バッテリ監視装置30がバッテリECU20(外部装置)からの指令に応じた制御を行い得るバッテリ監視システム1を、配線数の低減を図りうる構成且つ情報の伝送を良好に行い得る構成で実現できる。
【0079】
中継器90の受信部92は、バッテリECU20(外部装置)から所定の通知指令情報が無線送信された場合に当該通知指令情報を受信するように機能する。中継器90の送信部94は、受信部92が通知指令情報を受信する場合に通知指令情報を無線送信するように機能する。制御部40は、無線通信部60が通知指令情報を受信する場合に、バッテリ10の電圧及び温度の少なくともいずれかを示す検出情報を中継器90に向けて無線送信する動作を無線通信部60に行わせる。
【0080】
上記構成によれば、バッテリ監視装置30が検出した情報(バッテリ10の電圧及び温度の少なくともいずれかを示す検出情報)をバッテリECU20(外部装置)からの指令に応じて当該バッテリECU20に送信し得るバッテリ監視システム1を、配線数の低減を図りうる構成且つ情報の伝送を良好に行い得る構成で実現できる。
【0081】
中継器90の受信部92は、バッテリECU20(外部装置)から所定のセルバランス指令情報が無線送信された場合に当該セルバランス指令情報を受信するように機能する。中継器90の送信部94は、受信部92がセルバランス指令情報を受信した場合にセルバランス指令情報を無線送信するように機能する。検出部50は、複数の電池セル12が接続されてなるバッテリ10における各々の電池セル12の端子間電圧を特定する電圧情報を検出し得る。制御部40は、無線通信部60がセルバランス指令情報を受信した場合に、検出部50による検出結果に基づいて各々の電池セル12の端子間電圧を均一化させるように複数の電池セル12の充電又は放電を制御する。
【0082】
上記構成によれば、バッテリ監視装置30が複数の電池セル12の端子間電圧を均一化させるセルバランス制御をバッテリECU20(外部装置)からの指令に応じて行い得るバッテリ監視システム1を、配線数の低減を図りうる構成且つ情報の伝送を良好に行い得る構成で実現できる。
【0083】
バッテリ監視システム1は、少なくともいずれかのバッテリ監視装置30とバッテリECU20(外部装置)との間に、金属材料を含む障害部82(
図6の例では金属筐体80の一部)が配置される。そして、そのバッテリ監視装置30と中継器90との間に障害部82を介在させず、バッテリECU20と中継器90との間に障害部82を介在させない位置関係で中継器90が配置される。
【0084】
このようにすれば、バッテリ監視装置30からバッテリECU20(外部装置)に対して直接的に無線送信する場合に無線通信媒体の低減が生じやすい環境下において、無線通信をより良好に行うことができる。
【0085】
バッテリ監視装置30及び中継器90は、バッテリ10及びバッテリECU20(外部装置)を内部に収容する金属筐体80内に配置される。
【0086】
このようにすれば、外部からの衝撃や外部からの電波等の干渉を金属筐体80によって防ぐことができ、金属筐体80内では、配線数を確実に低減しつつ、バッテリ監視装置30とバッテリECU20(外部装置)との間での通信を良好に行いやすくなる。
【0087】
バッテリ監視システム1は、複数のバッテリ監視装置30を有する。中継器90は複数のバッテリ監視装置30から無線送信される各情報を受信してバッテリECU20(外部装置)にそれぞれ無線送信するように機能する。
【0088】
上記構成によれば、複数のバッテリ監視装置30が共通のバッテリECU20(外部装置)と通信を行い得るシステムを、配線数の低減を図りうる構成且つ情報の伝送を良好に行い得る構成で実現できる。特に、複数のバッテリ監視装置30が分散して配置される場合において、それぞれのバッテリ監視装置30とバッテリECU20との間で通信を行い得るように配線を設ける場合、配線がより多く必要になるため、サイズや重量の増大が避けられない。これに対し、上記構成によれば、複数のバッテリ監視装置30と共通のバッテリECU20との間で通信を行うにあたり、配線数を格段に減らすことができるため、サイズや重量の低減効果がより大きくなる。
【0089】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上述した実施例や後述する実施例は矛盾しない範囲で組み合わせることが可能である。
【0090】
実施例1では、セルバランス処理の一例を示したが、他の公知の方式でセルバランス処理を行ってもよい。例えば、実施例1では、各電池セル12を個別に放電し得る構成とし、各電池セル12の放電制御によって端子間電圧を均一化する例を示したが、各電池セル12を放電及び充電し得る構成とし、電池セル12の充電制御又は放電制御によって端子間電圧を均一化してもよい。
【0091】
実施例1では、一つの組電池11に対して一つのバッテリ監視装置30が割り当てられていたが、複数の組電池11に対して一つのバッテリ監視装置30が割り当てられてもよい。或いは、1つの組電池11が複数の領域に分割され、それぞれの領域に対してバッテリ監視装置30が割り当てられてもよい。
【0092】
実施例1では、バッテリ10に対して直接的に基板部70が固定された例を示したが、基板部70は、他部材を介して間接的にバッテリ10に固定されていてもよい。
【0093】
実施例1では、外部装置の一例としてバッテリECU20を例示したが、バッテリ監視装置30の外部に設けられた車載用の電子装置であればバッテリECU20に限定されない。
【0094】
実施例1では、複数の電池セル12が集合してなる組電池11に対してバッテリ監視装置30が割り当てられた例を示したが、単一の電池(バッテリ単体)に対してバッテリ監視装置30が組み付けられ、このバッテリのバッテリ電圧やバッテリ温度を無線通信方式で直接又は中継器90を介してバッテリECU20に送信するような構成であってもよい。
【0095】
実施例1では、バッテリ監視システム1が金属筐体内に収容された例を示したが、金属筐体内に収容されていなくてもよい。
【0096】
実施例1では、中継器90において受信部92で受信した無線信号を送信部94によって無線送信する例を示したが、送信部94で無線送信する場合、受信部92が受信した無線信号を増幅して送信してもよい。