(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
なお、本実施形態中、各物性は、後述する実施例に記載された方法により測定することができる。
【0015】
[触媒]
本実施形態におけるニッケル珪藻土触媒は、水素TG400−600℃重量減少率が0.05〜2.0%である。水素TG400−600℃重量減少率は、0.1〜1.8%であることが好ましく、0.1〜1.0%であることがより好ましい。水素TG400−600℃重量減少率が0.05%未満であると、過酷な条件での還元が必要となるため経済性及び安全性の点から不利となり、2.0%を超えると耐熱性に劣る。
【0016】
本実施形態におけるニッケル珪藻土触媒の比表面積は50〜180m
2/gであることが好ましく、60〜180m
2/gであることがより好ましく、60〜170m
2/gであることがさらに好ましい。触媒の比表面積が50m
2/g以上である場合、水素化性能に優れた触媒となる傾向にあり、180m
2/g以下である場合、耐熱性に優れた触媒となる傾向にある。
【0017】
本実施形態におけるニッケル珪藻土触媒のニッケル結晶子径は20〜250Åであることが好ましく、30〜100Åであることがより好ましく、30〜80Åであることがさらに好ましい。触媒のニッケル結晶子径が20Å以上であると、液体アンモニアと水素雰囲気下における耐熱性が向上する傾向にあり、250Å以下であると、水素化性能が向上する傾向にある。
【0018】
また、本実施形態におけるニッケル珪藻土触媒の耐熱性試験前後のニッケル結晶子径の変化Δは、耐熱性の観点から、210Å以下であることが好ましく、160Å以下であることがより好ましく、100Å以下であることがさらに好ましい。
ここで、耐熱性試験とは、後述する実施例における耐熱性試験のことをいう。
【0019】
本実施形態におけるニッケル珪藻土触媒は、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Ca、Sr、Ba、Ti、Cu、Cr、Zn、Mn、Mg、Ga、Ge、Nb、Ir、Pt、Bi、Al、In、Sr、Ce、Co及びMoからなる群より選ばれる1種以上の成分を含んでいてもよい。
【0020】
[製造方法]
本実施形態におけるニッケル珪藻土触媒の製造方法は、沈殿法を用いた製造方法であって、
珪藻土とニッケル触媒の塩を混合した分散液にアルカリ溶液の沈殿剤を入れる工程、
乾燥処理、焼成処理、還元処理を行う工程、を含み、
前記焼成処理後に得られる焼成分の水素TPR測定のピーク温度+40℃以上で還元処理を行う。
沈殿法としては、珪藻土の表面に水酸化ニッケル及び炭酸ニッケルを含む化合物を沈着させることができる方法であれば特に限定されず、従来公知の方法を適用することができる。
【0021】
[沈殿処理]
珪藻土とニッケル触媒の塩を混合した分散液を調製する際には、珪藻土を溶媒に添加してもよいし、珪藻土へ溶媒を添加してもよい。添加する際は、例えば、0〜40℃の溶媒に珪藻土を添加して30〜60分撹拌をしてから、所定の温度まで昇温してもよいし、溶媒を所定の温度にした状態で、珪藻土を添加してもよい。
【0022】
ニッケル触媒の塩としては、特に限定されず、例えば、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル等が挙げられる。
【0023】
アルカリ溶液の沈殿剤としては、特に限定されず、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の炭酸塩を溶解したアルカリ溶液が挙げられる。珪藻土を分散させた溶液に、ニッケル触媒の塩の溶液を加えて混合して得られた分散液に、アルカリ溶液の沈殿剤をチューブポンプ等を用いて注加してもよい。
【0024】
アルカリ溶液の沈殿剤の注加としては、正注加、逆注加のどちらを用いてもよいが、一般的には、ニッケル触媒の塩溶液にアルカリ溶液の沈殿剤を注加する方法(正注加法)が用いられる。ニッケル触媒を用いた場合、珪藻土の表面に水酸化ニッケル及び炭酸ニッケルを含む化合物が沈着した前駆体を得ることができる。ニッケル源を硝酸ニッケルとし、アルカリ源を炭酸ナトリウムとした場合、この沈殿反応は、以下の式(1)で表され、塩基性炭酸ニッケルが得られる。
【0025】
(化1)
Ni(NO
3)
2+Na
2CO
3→mNi(OH)
2・NiCO
3+NaNO
3・・・(1)
【0026】
ニッケルに対するアルカリのモル比は1〜4倍であることが好ましく、1.5〜3倍であることがより好ましい。ニッケルに対するアルカリのモル比が上記範囲であると、沈殿pHが8〜9程度となり、塩基性炭酸ニッケルの析出と珪藻土への沈着が起こり易くなる傾向にある。
【0027】
珪藻土とニッケル触媒の塩を溶解した触媒成分溶液の分散液(以下、「母液」ともいう。)へアルカリ溶液の沈殿剤を注加する際は、母液を50〜90℃に保持することが好ましく、60〜80℃に保持することがより好ましい。加温時に沈殿を生成することにより、沈殿粒子の粒子径が均一になり易くなる。
【0028】
沈殿温度が低いと沈殿粒子がゆっくりと生成されるため、高活性な触媒沈殿が得られ易くなる。沈殿温度が高いと短時間で沈殿が形成されるため、工程短縮が可能で、また沈殿粒子の大きさが小さく揃ったものを生成することが可能になる。
【0029】
アルカリ溶液の沈殿剤を注加する際は、母液を攪拌することが好ましい。生成した沈殿粒子の表面には、粒子同士が凝集する力が働いており、母液を撹拌することにより大きな凝集体となってしまうことを防ぐことができる。
【0030】
沈殿剤を注加する時間は30〜120分が好ましく、60〜90分がより好ましい。注加後もしばらく加熱と撹拌を行い、沈殿物の熟成を進行させることが好ましい。熟成温度を変えることで触媒の性能を変えることができる。熟成温度は、注加温度よりも高くても低くてもよいが、生成した沈澱成分から塩基性炭酸ニッケルを形成する観点から、50〜90℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。熟成時間は、塩基性炭酸ニッケルを珪藻土に沈着、固定するための時間の観点から、0〜3時間程度が好ましく、0.5〜2時間がより好ましい。
【0031】
珪藻土は、焼成品、未焼成品を単独又は所定の物性が得られるように混合して用いてもよい。ただし、焼成品のみでは塩基性炭酸ニッケルの珪藻土への沈着が起こりづらくなり、易還元性の触媒となり易い。また、未焼成品のみでは塩基性炭酸ニッケルの珪藻土への沈着が起こり易くなるため、難還元性の触媒になり易い。適度な還元性を決定するにあたって、アルカリ溶液の沈殿剤により処理した際の溶出Si量から塩基性炭酸ニッケルの珪藻土への沈着量を推算し、焼成品又は未焼成品を単独で使用するか、或いは両者を混合使用し、適宜配合比を決めればよい。
【0032】
例えば、10%Na
2CO
3水溶液を用いて、珪藻土を80℃で2時間撹拌処理をした際の溶出Si量は、0.5〜1.5%が好ましく、0.7〜1.1%がより好ましい。珪藻土の混合は、焼成品と未焼成品を混ぜた後にNa
2CO
3水溶液を加えてもよいし、液体に焼成品と未焼成品それぞれの珪藻土を添加してもよい。混ぜる条件として、例えば、10〜40℃の液体に入れ30〜60分撹拌をしてから、所定の温度まで昇温してもよいし、液体を所定の温度にしておいた状態で珪藻土を加えてもよい。
【0033】
珪藻土を単独で用いる場合には、珪藻土の種類によって熟成時間を変化させることで、還元性を制御することができる。例えば、焼成品を使用する際は、易還元性になりやすいため熟成時間を長くすればよく、未焼成品を使用する際には、難還元性になりやすいため、熟成時間を短くすればよい。
【0034】
また、熟成温度を変化させることでも、同様に還元性を制御することができる。例えば、焼成品を使用する際は、易還元性になりやすいため熟成温度を上げればよく、未焼成品を使用する際には、難還元性になりやすいため熟成温度を下げればよい。
【0035】
[洗浄・濾過・乾燥処理]
沈殿処理により得られる沈殿物は、一般的な方法で洗浄、ろ過、乾燥をすればよい。例えば、ヌッチェを用いて回収し、さらに水等を用いて洗浄を行い不純物イオン(SO
42−、NO
3−等)の除去を行うことができる。ニッケル化合物とS、Nは結合しやすく、被毒の原因物質となる危険性がある。洗浄は、一旦濾過で得た濾過ケーキを水に懸濁し、攪拌する懸濁洗浄を行う。懸濁洗浄後の濾液の電気伝導度は1mS/cm以下にすることが好ましい。洗浄終了後の濾過ケーキは100℃前後で十分乾燥を行い、乾燥ケーキを得る。
【0036】
[焼成処理]
乾燥ケーキは、一般的な方法で焼成すればよい。例えば、電気炉を用いて焼成処理を行う。焼成雰囲気としては、空気でも窒素でもよい。焼成温度は、水酸化ニッケル、炭酸ニッケルを分解させる温度の観点から、200〜500℃が好ましく、350〜450℃がより好ましい。焼成時間は、水酸化ニッケル、炭酸ニッケルを十分に分解させるのに必要な時間の観点から、3〜10時間が好ましく、5〜7時間がより好ましい。塩基性炭酸ニッケルを焼成処理した場合、以下の式(2)のとおりに熱分解し、酸化ニッケル(焼成粉)となる。
【0037】
(化2)
mNi(OH)
2+nNiCO
3→(m+n)NiO+mH
2O+nCO
2・・・(2)
【0038】
触媒の還元性を確認するため、焼成粉の水素による昇温還元(水素TPR測定)を行う。水素TPR測定におけるピーク温度は200〜500℃が好ましく、300〜400℃がより好ましく、300〜360℃がさらに好ましい。上記の方法で調製したニッケル触媒は酸化物の状態であり、この状態では触媒活性を示さない。
【0039】
[還元処理]
焼成処理の後、触媒を活性化させるために還元処理を行う(以下の式(3)参照)。この際用いられる還元剤としては、一般的な還元剤、例えば、水素、一酸化炭素、メタノール等を用いればよく、毒性や取り扱いやすさの観点から、水素が好ましい。例えば、焼成後の触媒を一定量SUS製反応管にとり、窒素雰囲気中で昇温し、水素ガスを導入する。反応温度は350〜500℃が好ましく、380〜450℃がより好ましい。
より高い温度で還元反応を行うことにより、未還元ニッケル化合物量を少なくすることができるが、温度が高過ぎると、比表面積が小さくなり、活性が下がる傾向にある。また、高温にするためには時間とエネルギーを必要とするため、経済的ではなく、危険性も増加する傾向にある。
【0040】
(化3)
NiO+H
2→Ni+H
2O・・・(3)
【0041】
還元されずに残ったニッケル(未還元ニッケル)化合物は、シンタリングを促進する要因になっていると考えられる。未還元ニッケル化合物が少なくなるよう還元するためには、焼成処理後の焼成粉の水素による昇温還元(水素TPR測定)におけるピーク温度より、還元処理温度を高くする。具体的には、還元処理温度は、焼成分の水素TPR測定におけるピーク温度+40℃以上であり、好ましくは+50℃以上であり、より好ましくは+60℃以上である。還元処理温度の上限としては特に限定されないが、触媒活性の低下を防止する観点から、焼成分の水素TPR測定におけるピーク温度+200℃以下であることが好ましく、+150℃以下であることがより好ましく、+100℃以下であることがさらに好ましい。
【0042】
還元反応後は窒素雰囲気中で室温まで冷却し、安定化させる。活性化されたニッケル触媒は、空気に触れると急激に酸化発熱をして活性が劣化する。そのため、触媒の保存や取り扱いにあたっては、外気との接触や保存期間に十分注意をする必要がある。触媒性能を保持するには、還元されたニッケル表面を低温で部分酸化し、または炭酸ガスや窒素などの不活性ガスを吸着させて保護したり、用途によっては油等の溶媒中に分散して保護をする。
【0043】
触媒には、必要に応じてLi、Na、K、Rb、Cs、Be、Ca、Sr、Ba、Ti、Cu、Cr、Zn、Mn、Mg、Ga、Ge、Nb、Ir、Pt、Bi、Al、In、Sr、Ce、CoおよびMoからなる群より選ばれた1種以上の成分を添加することができる。添加の方法としては、ニッケル塩溶液と各成分の水溶液を混合してから沈澱剤を注加することによって沈澱を形成させてもよいし、洗浄・濾過処理後の沈澱に各成分の化合物を所定量加えてもよい。
【0044】
触媒の形状としては特に限定されず、使用条件に応じて必要な形状とサイズに成型すればよい。例えば、触媒粒子に高い機械強度を必要とする場合や、他の成型法では十分な強度を得られない場合には圧縮成型法が用いることができる。圧縮成型法としては、例えば、グラファイトを添加して、打錠成形にてペレット状に成形すればよい。また、高い機械的強度を必要としない場合には、生産性や連続生産に優れる押出成型法を用いてもよい。この際、強度向上剤として、無機バインダーを加えてもよい。無機バインダーは、例えば、カオリンやモンモリロナイト等の粘土鉱物、或いはシリカゾル、アルミナゾル等である。成型加工後のニッケル触媒の粒径は0.1mm〜10mm程度であることが好ましい。
【0045】
本実施形態におけるニッケル珪藻土触媒は、アンモニア溶媒中における全ての水素化反応に用いることができる。例えば、アンモニア溶媒中、フタロニトリル、イソフタロニトリル(IPN)、テレフタロニトリル(TPN)、その混合物(IPN/TPN)を水素化することにより、キシリレンジアミン、メタキシレンジアミン(MXDA)、パラキシレンジアミン(PXDA)、その混合物(MXDA/PXDA)を製造することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0047】
実施例及び比較例における各物性の測定方法および評価方法は以下のとおりである。
[物性測定]
乾燥ケーキについて物性測定を行った。乳鉢で粉砕した後、60〜80メッシュの篩により得られた乾燥粉を測定試料として用いた。比表面積については、表面積測定装置(QUANTACHROME INSTRUMENTS社製 NOVA4200e)を用いた。前処理として測定試料を100℃で5時間乾燥を行った後、窒素吸着測定(BET法)によって比表面積を測定した。
【0048】
次に焼成粉について物性測定を行った。比表面積については、上記と同様の方法にて測定を行った。
ニッケル金属表面積については、以下の方法によって還元触媒の水素吸着量を測定して算出した。装置はBELCAT−B(日本ベル製)を用いた。初めに、ガラス製U字管に約0.4gの焼成粉を仕込んだ。反応管内部の温度を340℃として、ヘリウム(50mL/分)を45分導入した後、水素(50mL/分)を30分導入して、触媒を水素還元した。次に還元触媒をガラス製U字管内に保持したまま、ヘリウム(50mL/分)を10分間導入して、室温まで放冷した。次に、還元触媒をガラス製U字管内に保持したまま、水素ガス(50mL/分)を1分間導入することを繰り返し、排出されたガスの水素濃度をガスクロマトグラフィーにて測定した。U字管の入口及び出口の水素濃度増減がなくなるまでパルスを行い、その吸着量からニッケル金属表面積を算出した。
【0049】
還元挙動を水素TPRにより測定した。装置はBELCAT−A(日本ベル製)を用いた。焼成粉を0.1g仕込み、反応管内部の温度を200℃として、ヘリウム(50mL/分)を30分間導入した。その後、流通ガスを10%水素/90%アルゴン(50mL/分)に切り替え、昇温速度2℃/分にて800℃まで昇温し、その時の消費水素量から還元性の測定を行い、水素TPRピーク温度を求めた。
【0050】
次に還元安定化品について、物性測定を行った。乳鉢で粉砕した後、60〜80メッシュの篩により得られた粉を測定試料として用いた。
比表面積については、上記と同様の方法にて測定を行った。
還元挙動を熱天秤(TG)により測定した。装置は示差熱天秤(Rigaku製 Thermo plus evo TG8120)を用いた。還元安定化品を約10mg仕込み、3%水素/97%窒素(50mL/分)で導入した。昇温速度10℃/分にて600℃まで昇温し、この時の400−600℃の高温度域における重量減少率を測定した。該重量減少率は、未還元ニッケルから脱離した含酸素化合物と考えられ、未還元ニッケル量を示す指標になる。
【0051】
[耐熱試験]
液体アンモニアと水素雰囲気下における触媒の耐熱性の評価を行った。還元安定化品0.4g(60−80メッシュ)を内径6mmのSUS製反応管へ仕込んだ後、反応管内部の温度を250℃として、水素(40mL/分)を10時間導入して還元触媒を得た。その後、反応管の内部の圧力を水素10MPaG、温度を120℃として、液体アンモニア(10g/時)、水素(40mL/分)を14時間導入した。液体アンモニア導入後、常温常圧に戻した後に触媒を取りだし、XRD装置(Rigaku製 MiniFlex600)にてニッケル結晶子径の測定を行った。
【0052】
[活性試験]
焼成粉にグラファイトを3質量%添加し、打錠成形機にて6mmφ×6mmに打錠成型し、上記と同様の方法で還元安定化品を得た。この還元安定化品を用いて以下のように活性(水素化反応)試験を行った。100mLSUS製オートクレーブ反応器に還元安定化品2gを仕込んだ後、反応管内部の温度を250℃として、50%水素/50%窒素ガスを20mL/分で10時間導入した。その後、反応器にメタキシレン(和光純薬製)10g、イソフタロニトリル(東京化成工業製)6.7g、液体アンモニア10gを充填し、水素を10MPaGまで充填した。水素充填後、反応器内部の撹拌を行いながら80℃で2時間加熱して水素化反応を行い、メタキシリレンジアミン(MXDA)を得た。
【0053】
[珪藻土の溶出Si量]
珪藻土2gに10%Na
2CO
3水溶液80mLを加え、60℃で2時間の撹拌処理を行い、処理液中の溶出Si量をICP−AES(Varian製 Vista)にて測定した。結果を表1に示す。
なお、表2には、各実施例及び比較例で用いた珪藻土の平均の溶出Si量を示した。
【0054】
【表1】
【0055】
[実施例1]
珪藻土としてフィルターセル(未焼成品、イメリス社製)17.5gとセライト503(焼成品、イメリス社製)17.5g、ニッケル源として硫酸ニッケル・6水和物(和光純薬製)283.2g、水1000gを3L三口フラスコに25℃で混合し、スラリーを調製した。スラリーは300rpmで攪拌を行い、70℃まで昇温した。
別容器を用いて、炭酸ナトリウム(和光純薬製)202gを水1000gに溶解させ、沈殿剤を調製した。チューブポンプを用いて、沈殿剤をスラリーに20g/分で注加した。注加の間、スラリーの温度は70℃に保持し、撹拌を行った。全量を注加後、2℃/分で80℃に昇温し、2時間撹拌を行い、熟成を行った。その後、得られたスラリーを、ヌッチェ(ろ紙:アドバンテック 4A)を用いて減圧濾過し、濾過ケーキを得た。
濾過ケーキを3Lポリプロピレン製ジョッキに入れ、純水1000gを加え、25℃で攪拌しながら再度スラリー化して、懸濁洗浄および濾過を行った。濾液の電気伝導率が0.5mS/cm以下になるまで、懸濁洗浄と濾過を繰り返し行った。濾過ケーキは、電気乾燥機を用いて110℃で12時間乾燥を行い、乾燥ケーキを得た。
乾燥ケーキは焼成炉にて380℃で5時間焼成を行い、触媒焼成ケーキを得た。この焼成ケーキを粉砕し、触媒焼成粉を得た。
触媒焼成粉を内径1.4cmのSUS製反応管へ仕込み、50%水素/50%窒素ガス(60mL/分)を用いて400℃で10時間還元を行った。還元安定化後は窒素雰囲気にて室温まで放冷を行い、1%酸素/99%窒素ガス(60mL/分)を4時間流通させた後、続けて4%酸素/96%窒素ガス(60mL/分)を2時間流通させて安定化を行い、還元安定化品を得た。各測定結果を表2に示す。
ニッケル結晶子径は試験前後において、42Åから180Åとなった。試験後のニッケル結晶子は180Åであり、成長は小さく、耐熱性は高かった。
【0056】
[実施例2]
触媒焼成粉の還元条件を450℃で10時間に代えたこと以外は、実施例1と同じ方法によりニッケル珪藻土触媒を得た。各測定結果を表2に示す。
【0057】
[実施例3]
触媒焼成粉の還元条件を380℃で10時間に代えたこと以外は、実施例1と同じ方法によりニッケル珪藻土触媒を得た。各測定結果を表2に示す。
【0058】
[比較例1]
触媒焼成粉の還元条件を310℃で10時間に代えたこと以外は、実施例1と同じ方法によりニッケル珪藻土触媒を得た。各測定結果を表2に示す。
【0059】
[実施例4]
珪藻土の割合を、フィルターセル/セライト503=25質量%/75質量%に代えたこと以外は、実施例1と同じ方法によりニッケル珪藻土触媒を得た。各測定結果を表2に示す。
【0060】
[実施例5]
珪藻土の割合を、フィルターセル/セライト503=75質量%/25質量%に代えたこと以外は、実施例1と同じ方法によりニッケル珪藻土触媒を得た。各測定結果を表2に示す。
【0061】
[比較例2]
珪藻土の割合を、フィルターセル=100質量%、熟成時間を180分にしたこと以外は、実施例1と同じ方法によりニッケル珪藻土触媒を得た。各測定結果を表2に示す。
【0062】
[比較例3]
珪藻土の割合を、フィルターセル/Diafil♯110(未焼成品、イメリス社製)=50質量%/50質量%、熟成時間を180分に代えたこと以外は、実施例1と同じ方法によりニッケル珪藻土触媒を得た。各測定結果を表2に示す。
【0063】
[実施例6]
熟成時間を100分にしたこと以外は比較例2と同じ方法によりニッケル珪藻土触媒を得た。各測定結果を表2に示す。
【0064】
[実施例7]
熟成温度を70℃、熟成時間を120分にしたこと以外は比較例2と同じ方法によりニッケル珪藻土触媒を得た。各測定結果を表2に示す。
【0065】
[実施例8]
珪藻土の割合を、セライト503=100質量%にしたこと以外は、比較例2と同じ方法によりニッケル珪藻土触媒を得た。各測定結果を表2に示す。
【0066】
[実施例9]
還元温度を420℃にしたこと以外は、比較例2と同じ方法によりニッケル珪藻土触媒を得た。各測定結果を表2に示す。
【0067】
[実施例10]
還元温度を420℃にしたこと以外は、比較例3と同じ方法によりニッケル珪藻土触媒を得た。各測定結果を表2に示す。
【0068】
[実施例11]
還元温度を450℃にしたこと以外は、比較例2と同じ方法によりニッケル珪藻土触媒を得た。各測定結果を表2に示す。
【0069】
[実施例12]
還元温度を450℃にしたこと以外は、比較例3と同じ方法によりニッケル珪藻土触媒を得た。各測定結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
実施例1においては、TG400−600℃重量減少率を0.55%にすることで、耐熱試験後の結晶子径を180Å程度にすることができた。
【0072】
実施例2においては、TG400−600℃重量減少率を0.1%にすることで、耐熱試験後の結晶子径を100Å程度にすることができ、耐シンタリング性が向上した。
【0073】
実施例3においては、TG400−600℃重量減少率を1.8%にすることで、耐熱試験後の結晶子径を250Å程度にすることができた。
【0074】
実施例3、4、5、比較例2、3においては、珪藻土の未焼成品と焼成品の割合を変えることで、溶出Si量とTG400−600℃重量減少量を変化させることができ、この重量減少率が2.0%より大きいと、耐熱試験による結晶子径が300Åを超え、耐シンタリング性が低下した。
【0075】
実施例6、7においては、比較例2における沈澱の熟成時間、熟成温度を変えることで、珪藻土が未焼成品のみでも、TG400−600℃重量減少量を小さくすることができ、耐シンタリング性が向上した。
【0076】
実施例8〜12においては、触媒の耐熱性は良好であった。
【0077】
本出願は、2015年11月2日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2015−215897に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。