(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6917033
(24)【登録日】2021年7月21日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】スプリングプローブ
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20210729BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20210729BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R31/26 J
H01L21/66 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-93088(P2020-93088)
(22)【出願日】2020年5月28日
【審査請求日】2020年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】520188477
【氏名又は名称】JCマイクロ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520188488
【氏名又は名称】生坂 ひとみ
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】生坂 ひとみ
【審査官】
島田 保
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2018/221777(WO,A1)
【文献】
特開2014−169887(JP,A)
【文献】
特開2019−164152(JP,A)
【文献】
特表2016−507751(JP,A)
【文献】
特開2019−82378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/067
G01R 31/26
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に加えられる圧力に対して弾発緩衝作動するバネ部を有するスプリングプローブにおいて、
上接地部を有する円筒状のスリーブ部が前記バネ部を覆うように、かつ、上下移動案内可能に設置され、
前記バネ部は、前記スリーブ部の中心軸線を中心として渦巻き状に巻き取られてなる外側バネと、該外側バネの両端のそれぞれから渦巻き状に巻き取られて延在してなる一対の内側バネとで構成されたバネ部材を少なくとも一つを有して構成され、
前記内側バネは、その収縮方向の幅が、前記外側バネの幅以下であって前記外側バネの両端のそれぞれから徐々に狭くなるように形成され、
前記外側バネとそれに隣接する外側バネとの前記中心軸方向における間隔が所定間隔空くように前記外側バネが形成されている、
ことを特徴とするスプリングプローブ。
【請求項2】
上記バネ部は、前記外側バネと、前記隣接する外側バネの端部同士を連結するようにして設けられる略U字状の前記内側バネとを備え、前記中心軸方向に、前記外側バネと前記内側バネとが交互に連続しており、前記内側バネが前記外側バネに向かって渦巻き状に巻回された状態で、前記スリーブ部に内装されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のスプリングプローブ。
【請求項3】
前記中心軸方向に対する前記外側バネの延在方向の角度は、前記中心軸方向に対する前記内側バネの延在方向の角度より小さい、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスプリングプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体部品やプリント配線基板等の電気的特性を検査する際に用いられるスプリングプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ICやLSI等の半導体部品は、ウエハ上に形成された段階、パッケージ化された段階等の各製造段階において電気的特性が検査されて、良品、不良品の選別が成されている。このような電気的特性を検査する検査装置としては、プローブカードを備えたテスタ、ICソケットが一般的に知られている。
【0003】
プローブカードやICソケットには、導電性を有する複数のコンタクトプローブが設けられており、それらコンタクトプローブを半導体部品の電極と検査用回路の電極との間に介在させて、これら電極間を通電状態とすることで、半導体部品の電気的特性を調査するようになっている。
【0004】
この種のコンタクトプローブとしては、例えば、
図7に示すようなスプリングプローブが知られている。スプリングプローブは、筒状スリーブ(図示せず)の一端部に取り付けられた端子(図示せず)と、端子を突出方向に付勢するスプリング部とを備えている。端子を、半導体部品の電極に接触させるとともに、筒状スリーブの他端部を、検査用回路の電極に接続して、端子をスプリング部の付勢によって半導体部品の電極に安定的に押し付けることで、電極間の通電状態を良好に維持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5724095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のスプリングプローブを構成する
図7に示すスプリング部100は、
図8に示すようにプローブ軸方向に直交するラインであって外側バネ120の一端部(
図8の上側円の中心)を通過するラインと他端部(
図8の下側円の中心)を通過するラインは重なる。このためプローブ軸方向(中心軸L
C方向)に沿って互いに隣接する外側バネ120と外側バネ121のプローブ軸方向における間隔が全くないのでスプリングに荷重がかかった時のストロークを確保することができない。上記例はスプリングプローブの中心軸を境に外側バネと内側バネで構成されるバネ部が略V字状のものであるが、例えば、上記特許文献1に示すようなプローブの中心軸を境に外側バネと内側バネで構成されるバネ部が略U字状のものであっても同様にスプリングに荷重がかかった時のストロークが確保できない。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、スプリングに荷重がかかった時のストロークを簡易な構造で確保することができるスプリングプローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のスプリングプローブの一側面は、上下に加えられる圧力に対して弾発緩衝作動するバネ部を有するスプリングプローブにおいて、上接地部を有する円筒状のスリーブ部が、バネ部を覆うように、かつ、上下移動案内可能に設置され、バネ部は、スリーブ部の中心軸線を中心として渦巻き状に巻き取られてなる外側バネと、外側バネの両端のそれぞれから渦巻き状に巻き取られて延在してなる一対の内側バネとで構成されたバネ部を少なくとも一つを有して構成され、内側バネは、その収縮方向の幅が、外側バネの幅以下であって外側バネの両端のそれぞれから徐々に狭くなるように形成され、外側バネとそれに隣接する外側バネとの中心軸方向における間隔が所定間隔空くように外側バネが形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のスプリングプローブの他の側面は、バネ部は、外側バネと、隣接する外側バネの端部同士を連結するようにして設けられる略U字状の内側バネとを備え、中心軸方向に、外側バネと内側バネとが交互に連続しており、内側バネが外側バネに向かって渦巻き状に巻回された状態で、スリーブ部に内装されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のスプリングプローブの他の側面は、中心軸方向に対する外側バネの延在方向の角度は、中心軸方向に対する内側バネの延在方向の角度より小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明のスプリングプローブは、スプリングに荷重がかかった時のストロークを簡易な構造で確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は本発明のスプリングプローブの構成を示した図である。
【
図2】
図2は本発明のスプリングプローブを構成するスプリングの構造を示した展開平面図である。
【
図3】
図3は本発明のスプリングプローブにおけるストロークを説明するための展開平面図である。
【
図4】
図4は本発明のスプリングプローブを構成するスプリングの構造を示した斜視図である。
【
図5】
図5は本発明のスプリングプローブを構成するスプリングの構造を示した他の斜視図である。
【
図6】
図6は本発明のスプリングプローブを構成するスプリングの構造を示したさらに他の斜視図である。
【
図7】
図7は従来のスプリングプローブを構成するスプリングの構造を示した展開平面図である。
【
図8】
図8は従来のスプリングプローブにおけるストロークを説明するための展開平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明のスプリングプローブについて図面に基づいて詳細に説明する。この発明の実施形態に係るスプリングプローブ1は、
図1に示すように、筒状スリーブ2と、筒状スリーブ2の一端部に設けられた被検査体接触用の端子3と、筒状スリーブ2の内側に上下移動案内可能に内装され、端子3を突出方向に付勢する機能を有するスプリング4とを一体成形してなる。ここで、筒状スリーブ2は請求項1のスリーブ部に相当し、スプリング4は請求項1のバネ部に相当する。
【0014】
このスプリングプローブ1は、例えばプローブガードを備えたテスタ、ICソケット等の検査装置に装着されて、その端子3を、半導体部品等の被検査体の電極に接触させるとともに、筒状スリーブ2の他端部を、検査用回路(図示せず)の電極に接続して、端子3をスプリング4の付勢によって半導体部品の電極に安定的に押し付けることで、電極間の通電状態を良好に維持するようになっている。
【0015】
図2に示すように、スプリング4は、スプリングプローブ1の軸方向(中心軸L
C)に沿って断続的に設けられる複数の外側バネ41・・と、外側バネ41・・から延在する略U字状の内側バネ42・・とで形成される。また、この内側バネ42は、
図2に示すように、一端部が、互いに対向する外側バネ41、41の端部にそれぞれ連結されるとともに、一対の延設部42a、42aと、この一対の延設部42a、42aの他端部同士を連結する湾曲部42bとから構成されている。また、
図2の展開平面図に示す外側バネ41は、渦巻き状に巻回すると外側バネ41Aと外側バネ41Bとして互いに隣接した構成となる。なお、外側バネ41・・と内側バネ42・・は請求項1のバネ部材に相当する。
【0016】
中心軸L
Cに対する外側バネ41・・の延在方向線分の角度(θ
1)は、中心軸L
Cに対する延設部42aの延在方向線分の角度(θ
2)よりも小さい。言い換えれば外側バネ41・・の延在方向線分と延設部42aの延在方向線分とは所定の角度をなしており、少なくとも平行ではない状態にある。そして互いに隣接する内側バネ42・・において、一方の内側バネ42が外側バネ41の一端側に位置され、他方の内側バネ42が外側バネ41の他端側に位置されるように互い違いに設けられている。
【0017】
すなわち、スプリング4は、最上部に位置する外側バネ41の下端部に、一方側の内側バネ42の上方側の延設部42aの端部が連結され、この内側バネ42の下方側の延設部42aの端部に、別の外側バネ41の上端部が連結され、この外側バネ41の下端側に他方側の内側バネ42の上方側の延設部42aの端部が連結され、この内側バネ42の下方側の延設部42aの端部に、さらに別の外側バネ41の上端部が連結され、この外側バネ41の下端部にさらに別の内側バネ41の上方側の延設部42aの端部が連結され、このように最下部に位置する外側バネ41まで外側バネ41と内側バネ42とが交互に連続形成された形態とされており、この形態を筒状プローブ2の上端から下端にかけて繰り返し連続することでスプリング4が構成されている。
【0018】
また、内側バネ42は、その幅が湾曲部42bに向かって徐々に狭くなるようにテーパー状に形成される(L1>L2>L3)。
【0019】
上記した実施例によれば、
図3に示すようにプローブ軸方向に直交するラインであって外側バネ41の一端部(
図3の上側円の中心)を通過するラインと他端部(
図3の下側円の中心)を通過するラインは重ならない。このためプローブ軸方向(中心軸方向)に沿って外側バネ41Aと外側バネ41Bのプローブ軸方向における間隔L
Xが所定の距離を有するためスプリング部4に荷重がかかった時のストロークを大きくすることができる。
【0020】
上記した実施例によれば、内側バネ42は、その幅が湾曲部42bに向かって徐々に狭くなるようにテーパー状に形成されるので、内側バネの荷重を小さくでき、結果として内側バネの荷重と外側バネの荷重との良好なバランスを保つことができる。したがって、外側バネに比べて荷重の大きい内側バネの荷重を軽減できるのでスプリング部4のより大きなストロークを確保することができる。
【0021】
以下に、スプリングプローブ1の製造方法について説明する。この製造方法においては、順送型による自動組立方式を採用しており、例えばベリリウム銅製又はベリリウムニッケル製の高硬度で導電性に優れた薄肉帯状の基板を、その長手方向に搬送しながら、基板に対して以下の各工程を順次実行することで、大量のスプリングプローブ1・・を連続して製造可能とする。
【0022】
まず、第1工程において、基板(図示せず)に打ち抜き加工を施して、略長方形状のスリーブ成形部(図示せず)と、このスリーブ成形部の短手方向の一端部中央から折曲境界部(図示せず)を介して延出したスプリング4と、スプリング4の先端部分を拡張してなる端子成形部(図示せず)とをそれぞれ同一平面上に形成する。
【0023】
続いて、第2工程において、端子成形部に曲げ加工を施して、端子成形部を筒状に丸めることで端子を成形する。
【0024】
続いて、第3工程において、スプリング4の内側バネ42・・に曲げ加工を施す。具体的には、
図4〜
図6に示すように、内側バネ42の先端部(湾曲部42b)が中心に位置するようにして、湾曲部42bから外側バネ41に向かって内側バネ42・・を渦巻き状に巻回する。また、この際、互い違いに延出された内側バネ42・・が同一面側(例えば表面側)に位置するように、また、渦巻き状の内側バネ42・・の軸心同士が略一致するように、さらに、渦巻き状の内側バネ42の軸心と外側バネ41の軸心とが略平行となるように内側バネ42・・が巻回される。その後、外側バネ41を中心軸Lcに向かって曲げ加工(巻回処理)する。
【0025】
続いて、第4工程において、基板と端子の先端部とを接続している接続部を切断し、スリーブ成形部とスプリング4との間の折曲境界部を折り曲げて、スプリングの中心軸をスリーブ成型部の長手方向の中心線に沿わせるようにしてスリーブ成形部とスプリング4とを重ね合わせる。
【0026】
続いて、第5工程において、スリーブ成形部に曲げ加工を施して、スリーブ成形部を筒状に丸めることで、端子のそれぞれの根元部及びスプリング4を包み込むように筒状スリーブ2を成形する。
【0027】
そして、第6工程において、端子をスプリング4の付勢力に抗して筒状スリーブ2に押し込み、焼入れ及び焼き戻しを行って、スプリング4を含めた製品全体に硬さと粘り強さを与えた後、最後に、基板10と筒状スリーブ2とを接続する接続部を切断して、製品すなわち
図1に示すスプリングプローブ1を切り離す。以上の各工程を、搬送される基板10に対して順次実行することで、各構成部品(筒状スリーブ2、被検査体接触用の端子3、スプリング4)が一体成形されたスプリングプローブ1が連続的に製造される。
【0028】
以上にこの発明の具体的な実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施例においては、複数の内側バネ42・・が設けられていたが1個でも良い。また、上記実施の形態では、内側バネ、外側バネの巻回は渦巻き状に行う旨説明したが、渦巻き状とは、螺旋状(らせん状)も含む概念である。
【符号の説明】
【0029】
1 スプリングプローブ
2 筒状スリーブ
3 被検査体接触用の端子
4 スプリング
41 外側バネ
42 内側バネ
42a 延設部
42b 湾曲部
【要約】
【課題】スプリングに荷重がかかった時のストロークを簡易な構造で確保することができるスプリングプローブを提供すること。
【解決手段】上下に加えられる圧力に対して弾発緩衝作動するスプリング4を有し、上接地部を有する筒状スリーブ2がスプリング4を覆うように、かつ、上下移動案内可能に設置され、スプリング4は、筒状スリーブ2の中心軸線を中心として渦巻き状に巻き取られてなる外側バネ41と、外側バネ41の両端のそれぞれから渦巻き状に巻き取られて延在してなる一対の内側バネ42,42とで構成されたスプリング4を少なくとも一つを有して構成され、内側バネ42は、その収縮方向の幅が、外側バネ41の幅以下であって外側バネ41の両端のそれぞれから徐々に狭くなるように形成され、外側バネ41とそれに隣接する外側バネ41との中心軸方向における間隔が所定間隔空くように外側バネ41が形成されている。
【選択図】
図2