特許第6917077号(P6917077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6917077遺伝子工学菌VNP20009−Mの悪性肉腫予防・治療薬の製造にお ける応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6917077
(24)【登録日】2021年7月21日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】遺伝子工学菌VNP20009−Mの悪性肉腫予防・治療薬の製造にお ける応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20210729BHJP
   A61K 38/51 20060101ALI20210729BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210729BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20210729BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20210729BHJP
   C12N 15/60 20060101ALN20210729BHJP
【FI】
   A61K35/74 D
   A61K38/51
   A61P35/00
   A61P35/04
   !C12N1/21
   !C12N15/60
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-550212(P2019-550212)
(86)(22)【出願日】2018年3月29日
(65)【公表番号】特表2020-510056(P2020-510056A)
(43)【公表日】2020年4月2日
(86)【国際出願番号】CN2018081116
(87)【国際公開番号】WO2018177375
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年9月12日
(31)【優先権主張番号】201710216811.9
(32)【優先日】2017年4月1日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519315589
【氏名又は名称】広州華津医薬科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】趙 子建
(72)【発明者】
【氏名】林 艶
(72)【発明者】
【氏名】周 素瑾
(72)【発明者】
【氏名】李 芳紅
【審査官】 春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/036302(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0376593(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/145974(WO,A1)
【文献】 Guo H et al.,Therapeutic tumor-specific cell cycle block induced by methionine starvation in vivo,Cancer Research,1993年,Vol.53, No.23,p.5676-5679
【文献】 Breillout F et al.,Decreased rat rhabdomyosarcoma pulmonary metastases in response to a low methionine diet,Anticancer Research,1987年,Vol.7, No.4B,p.861-867
【文献】 Breillout F et al.,Methionine dependency of malignant tumors: a possible approach for therapy,Journal of the National Cancer Institute,1990年,Vol.82, No.20,p.1628-1632,doi: 10.1093/jnci/82.20.1628
【文献】 Tan Y et al.,Anticancer efficacy of methioninase in vivo,Anticancer Research,1996年,Vol.16, No.6C,p.3931-3936
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00−35/768
A61K 38/00−38/58
C12N 15/00−15/90
PubMed
医中誌WEB
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子工学菌VNP20009−Mの紡錘細胞肉腫予防・治療薬の製造における使用。
【請求項2】
前記紡錘細胞肉腫は、紡錘細胞肉腫の術後、肺へ転移した肉腫であることを特徴とする請求項に記載の使用
【請求項3】
前記遺伝子工学菌VNP20009−Mの最小有効投与量は、6.4×107CFU/
2であることを特徴とする請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記遺伝子工学菌VNP20009−Mは、L−メチオニナーゼ遺伝子がクローニングされた弱毒ネズミチフス菌VNP20009であることを特徴とする請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
前記遺伝子工学菌VNP20009−Mは、L−メチオニナーゼ遺伝子がクローニングされたプラスミドを有する弱毒ネズミチフス菌VNP20009であることを特徴とする請求項に記載の使用。
【請求項6】
前記遺伝子工学菌VNP20009−Mは、L−メチオニナーゼ遺伝子をプラスミドにサブクローニングして、L−メチオニナーゼ発現プラスミドを得て、L−メチオニナーゼ発現プラスミドを弱毒ネズミチフス菌VNP20009に電気的形質転換する方法によって構築されることを特徴とする請求項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子工学薬物の技術分野に属し、具体的には、遺伝子工学菌VNP20009−Mの悪性肉腫予防・治療薬の製造における新しい応用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、人間の死亡を引き起こす重要な原因となっており、2005年から2015年まで、癌発症率が33%増加した。世界保健機関(WHO)により発表された『世界癌レポート2014』は、世界の癌症例が2012年の1400万人から2025年の1900万人、2035年の2400万人まで、益々急速に成長する傾向があると予測している。
【0003】
肉腫(Sarcoma)は、間葉組織(結合組織及び筋肉を含む)に由来する悪性腫瘍であり、脂肪、筋膜、筋肉、繊維、リンパ及び血管、骨膜及び長骨の両端に多く発生する。各肉腫はいずれも異なる組織学、生物学的特性及び異なる局所浸潤、血行及びリンパ遷移傾向があり、そのうち、肉腫の肺転移が一般的である。
【0004】
肉腫の臨床表現は腫瘍塊であり、腫瘍塊が周囲組織を圧迫すると、症状が生じる。肉腫の発症率は低く、年発症率は2.4〜5例/10万人であり、成人悪性腫瘍の約1%を占め、小児悪性腫瘍の15%を占めるが、全ての癌に関する死亡率の2%を占める。肉腫亜型は多く、生物学的挙動は多種多様であるため、診断は困難であり、病状の発見は遅れ、約1/3−1/2の患者は肉腫再発及び転移で死ぬ。従来の医療手段は、後期肉腫の治療が停滞して前進しなく、化学療法は依然として標準的な治療方法であり、例えば、ドキソルビシンを含む治療は標準的な案であり、治療した患者の総生存期間は約12-16ヶ月しかない。総じて、早期患者の5年間の生存率は約60%-80%であり、後期患者の5年間の生存率は20%未満であった。
【0005】
従来技術から明らかなように、メチオニン依存性がほとんどの腫瘍細胞の特性であり、腫瘍細胞が過量のメチオニンを必要とし、メチオニンを除去したまたはその前駆体であるホモシステインでメチオニンを置換した培地で培養すると、細胞増殖が阻害されるが、メチオニンが存在した環境では正常に増殖すると表現しており、そのうち、前立腺癌、乳癌、肺癌、及びその他の10種類以上の悪性細胞などが含まれる。しかし、正常細胞にはメチオニン依存性がない。メチオニン欠乏を引き起こす方法として、主に食べ物におけるメチオニンを除去するか、メチオニナーゼでメチオニンを分解することがある。しかし、食べ物からのメチオニンの摂取を制限することによるメチオニンレベル低下の効果には限りがある一方、メチオニン摂取を長期的に制限すると体の栄養失調や代謝障害を引き起こす恐れがある。食べ物によりメチオニンを制限する場合に比べて、メチオニナーゼ(methioninase)を使用した方が過度の代謝問題を引き起こさないとともに、抗腫瘍効果を有する。
【0006】
サルモネラ菌属は、人間や動物の腸に寄生するグラム陰性の侵襲性細胞内通性嫌気性菌のグループである。そのうち、VNP20009菌株が高い腫瘍標的性及び安全性を有するとともに、抗腫瘍効果を果たす担体であることが知られている。VNP20009菌株は、悪性黒色腫や肺癌などのさまざまなマウス固形腫瘍モデルに対して顕著な腫瘍成長阻害効果がある。米国で実施された2つの第I相臨床研究から、安全的にヒトに使用できることが確認されたが、抗腫瘍効果は認められなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このため、本発明が解決しようとする技術的課題は、遺伝子工学菌VNP20009−Mの肉腫予防・治療薬の製造における新しい応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するために、本発明は、前記遺伝子工学菌VNP20009−Mの悪性肉腫予防・治療薬の製造における応用を開示する。
【0009】
さらに、前記肉腫は、結合組織や筋肉等の間葉組織に由来する悪性肉腫である。
【0010】
さらに、前記肉腫は、脂肪、筋膜、筋肉、繊維、リンパ及び血管、骨膜及び長骨の両端に生じる肉腫を含む。
【0011】
さらに、前記肉腫は、軟部組織肉腫及び骨肉腫を含む
【0012】
既存の軟部組織肉腫の患者において、未分化多形性肉腫(undifferentiated pleomorphic sarcoma、UPS)が最も一般的であり、25-35%を占め、次に、脂肪肉腫(liposarcoma、LPS)が25-30%を占め、平滑筋肉腫(leiomyosarcoma、LMS)が12%を占め、滑膜肉腫(synovial sarcoma、SS)が10%を占め、悪性末梢神経鞘腫(malignant peripheralnerve sheath tumor、MPNST)が6%を占める。
【0013】
骨肉腫は、骨形成性肉腫とも呼ばれ、20歳以下の青少年又は小児に多く発生する。骨肉腫は、間質細胞系から進んできたのであり、腫瘍が軟骨の段階を経て直接または間接的に腫瘍骨様組織および骨組織となって腫瘍を速やかに成長させる。骨肉腫は小児骨悪性腫瘍において最も一般的であり、約小児の腫瘍の5%である。
【0014】
前記肉腫は、原発性肉腫、術後再発肉腫及び術後他の部位へ転移した肉腫を含む。
【0015】
さらに、前記肉腫は、悪性肉腫の術後、肺へ転移した腫瘍である。
【0016】
好ましくは、前記遺伝子工学菌VNP20009−Mの最小有効投与量は、6.4×107CFU/M2である。
【0017】
上記腫瘍予防・治療の投与方式としては、複数種の手段で投与することができ、経口投与、局所投与、注射投与(静脈内投与、腹膜投与、皮下投与、筋肉投与、腫瘍内投与を含むが、これらに制限されない)などを含むが、これらに制限されない。
【0018】
従来技術から明らかなように、本発明に係る上記遺伝子工学菌VNP20009−Mは、既知の菌株であり、その性能、形状、構築方法がすべて中国特許CN105983103Aに記載されている。
【0019】
前記遺伝子工学菌VNP20009−Mは、L−メチオニナーゼ遺伝子がクローニングされた弱毒ネズミチフス菌VNP20009である。
【0020】
さらに、前記遺伝子工学菌VNP20009−Mは、L−メチオニナーゼ遺伝子がクローニングされたプラスミドを有する弱毒ネズミチフス菌VNP20009でる。
【0021】
前記遺伝子工学菌VNP20009−Mは、L−メチオニナーゼ遺伝子をプラスミドにサブクローニングして、L−メチオニナーゼ発現プラスミドを得て、L−メチオニナーゼ発現プラスミドを弱毒ネズミチフス菌VNP20009に電気的形質転換する方法によって構築される。
【0022】
前記プラスミドは、pSVSPORTプラスミド、pTrc99Aプラスミド、pcDNA3.1プラスミド、pBR322プラスミド又はpET23aプラスミドを含むが、これらに制限されない。
【0023】
最も好ましくは、遺伝子工学菌VNP20009−Mの構築過程において、pSVSPORTプラスミドを用いる場合、L−メチオニナーゼ遺伝子をプラスミドにサブクローニングして、L−メチオニナーゼ発現プラスミドを得て、次に、L−メチオニナーゼ発現プラスミドを弱毒ネズミチフス菌VNP20009に電気的形質転換して、遺伝子工学菌を得る。
【0024】
そのうち、前記電気的形質転換条件は、電圧2400V、抵抗400Ω、電気容量25μF、放電時間4msである。
【0025】
本発明は、前記遺伝子工学菌VNP20009−Mのメチオニナーゼ製剤の製造における応用を開示する。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、従来の用途に基づいて悪性肉腫を治療するための遺伝子工学菌VNP20009−Mの新しい応用を開示し、前記遺伝子工学菌VNP20009−Mは、腫瘍細胞を効果的に殺滅し、腫瘍病巣を消すことができ、原発性肉腫、術後再発腫瘍及び悪性肉腫術後から他の部位へ転移した腫瘍細胞に対して、優れた殺傷効果及び良好な治療効果を果たし、特に、軟部組織肉腫の術後、肺へ転移した腫瘍細胞に対して、優れた殺傷効果を果たし、さらに、前記遺伝子工学菌は、人体に明らかな毒性と副作用がなく、悪性肉腫を安全で効果的に治療するために新しい手段を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の内容を容易で明確に理解できるように、以下、本発明の特定実施例にて図面を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。
図1】プラスミドpSVSPORT−L−メチオニナーゼに対する酵素消化同定による1%アガロースゲル電気泳動像である。
図2】本発明におけるウエスターブロット同定によるメチオニナーゼ発現結果図である。
図3】本発明によるサルモネラ菌におけるメチオニナーゼ活性検出結果図である。
図4】実施例2における患者の治療前の胸部での病巣状況のCT検査結果図である。
図5】実施例2における患者の4週間治療後の胸部でのCT検査結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施例1 遺伝子工学菌VNP20009−Mの構築
【0029】
本発明の前記遺伝子工学菌VNP20009−Mの構築方法及び過程は、中国特許CN105983103Aにおける実施例に記載されている。
【0030】
(1)L−メチオニナーゼ遺伝子を発現させたプラスミドの構築
【0031】
まず、L−メチオニナーゼ(GenBank:L43133.1)遺伝子を合成してpUC57プラスミド(ジェンスクリプト社)にサブクローニングし、次に、KpnI及びHindIII酵素消化位点を介してpSVSPORTプラスミド(invitrogen)にサブクローニングし、pSVSPORT−L−メチオニナーゼ発現プラスミドを得た。構築過程は、具体的には、以下のとおりである。
【0032】
pSVSPORTプラスミドをKpnI及びHindIIIで二重酵素消化し、酵素消化系は、プラスミドDNA 2μg、10xbuffer 3μL、KpnI酵素1.5μL、HindIII酵素1.5μLに、ddH2Oを体積30μLになるまで加えて、37℃の温浴で3h処理したものである。次に、酵素消化系を1%アガロースゲルにおいて電気泳動分離し、サイズ4.1kbのDNAバンドを切り出し、ゲル回収精製試薬キットでDNAを精製した。
【0033】
全遺伝子合成を利用してL−メチオニナーゼコーディング領域DNA断片を得てpUC57プラスミド(ジェンスクリプト社)にサブクローニングし、KpnI及びHindIIIで二重酵素消化し、酵素消化系は、プラスミドDNA 3μg、10×buffer 3μL、KpnI酵素1.5μL、HindIII酵素1.5μLに、ddH2Oを体積30μLになるまで加えて、37℃の温浴で3h処理したものである。次に、酵素消化系を1%のアガロースゲルにおいて電気泳動分離し、サイズ1.2kbのDNAバンドを切り出し、ゲル回収精製試薬キットでDNAを精製した。
【0034】
pSVSPORT(KpnI/HindIII)及びL−メチオニナーゼコーディング領域DNA断片(KpnI/HindIII)をライゲーションし、ライゲーション反応においてベクター2μL、挿入断片6μL、T4DNAリガーゼ1μLを加えて、16℃の温浴で16h処理した。
【0035】
ライゲーション産物をE.coliDH5α(Takara)のコンピテント細胞に形質転換した。50μLのDH5αコンピテント細胞1本を氷に置き、溶けた後、それに上記ライゲーション産物5μLを加えて、軽くフリックして均一に混合し、次に氷において30minインキュベートし、42℃で60s熱ショックした後、氷において2min静置して、耐性のないLB液体培地500μLを加え、37℃で1h振とう培養した後、アンピシリン耐性を有するLB培地プレートに塗布し、一晩培養した。
【0036】
クローンが成長した後、モノクローナルコロニーをアンピシリンを含むLB培養液3mLに取り、37℃で16h振とう培養して、プラスミドDNAを抽出し、Kpnl及びHindlll酵素消化により同定したところ、図1に示すように、陽性クローンには4.1kb、1.2kbの2本のDNAバンドが認められた。さらにシーケンシングしたところ、陽性クローンの配列が完全に正確であることが確認された。
【0037】
(2)プラスミドを有するVNP20009菌及びL−メチオニナーゼ遺伝子がクローニングされたプラスミドを有するVNP20009菌の構築
【0038】
pSVSPORT及びpSVSPORT−L−メチオニナーゼ発現プラスミドをそれぞれVN20009菌株(YS1646、ATCC番号202165)に電気的形質転換して、それぞれVNP20009−V及びVNP20009−Mと命名した。構築過程は、具体的には、以下のとおりである。
【0039】
コンピテント細菌VNP20009を氷に置き、溶けた後、予備冷却電気的形質転換カップに移し、それにプラスミド2μLを加えて、軽くフリックして均一に混合し、氷において1分インキュベートした。電気的形質転換カップを電気的形質転換機器に入れて、条件として、電圧2400V、抵抗400Ω、電気容量25μF、放電時間4msと設定した。電気ショックした直後、SOC培地1mLを加えて、軽く均一に混合した。37℃で1h振とう培養し、ピペットを用いて細胞沈殿をピペッティングした後、アンピシリン耐性LB−O培地プレートに塗布した。次に、プレートを37℃のインキュベータに入れて16h培養した。VNP20009−V及びVNP20009−MをLB−Oで培養した後、プラスミドを抽出し、酵素消化で同定したところ、正確であった。
【0040】
1×108サルモネラ菌についてタンパク質溶解液でタンパク質を抽出し、10%SDS−PAGE電気泳動を行い、次に、電圧を安定化させながら氷浴でPVDF膜に電気的形質転換し、BSAを用いて室温で1hブロックした後、TBSTで3×5minリンスし、ウサギ抗L−メチオニナーゼ抗体(1:1000)を加えて、4℃で一晩インキュベートした。TBSTで3回リンスし、5minごとにHRP標識抗ウサギ二次抗体(1:10000)を加えて、室温で1hインキュベートし、TBSTで5minずつ3回リンスし、ECL化学発光法により現像させた。その結果、図2に示すように、約43kDの分子量では特異的バンドが認められ、それは、VNP20009、VNP20009−Vに比べて、VNP20009−MのL−メチオニナーゼ発現量が明らかに向上したことを示した。
【0041】
L−メチオニンとピリドキサールをそれぞれVNP20009−V及びVNP20009−M菌体と混合し、37℃で10minインキュベートした後、50%トリクロロ酢酸で停止して、遠心分離して上澄を得て、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノン−ヒドラゾン塩酸塩水和合(MBTH)と均一になるまで十分に混合し、50℃で30minインキュベートした後、320nmでの吸光値を測定し、1分間にケト酪酸を触媒変換する触媒の量を1酵素活性ユニットとして定義した。その結果(図3参照)、サルモネラ菌VNP20009−Mのメチオニナーゼ活性は、VNP20009−Vよりも10倍高かった。
【0042】
以上から分かるように、構築された遺伝子工学菌であるサルモネラ菌VNP20009−Mは、高いメチオニナーゼ活性を有するため、メチオニナーゼ製剤製造用として有用であった。
【0043】
実施例2 遺伝子工学菌VNP20009−Mの軟部組織肉腫の治療効果
【0044】
1)、過去の病歴及び診断
【0045】
臨床で、64歳の男性患者は、左脚の腫瘍塊は南京市鼓楼病院で穿刺生検により紡錘状細胞肉腫であると同定された。その後、腫瘍切除術を受けて、再度組織をとって病理を分析し、腫瘍細胞は、SMA(−)、DES(−)、MyoD1(−)、CD34(−)、EMA(−)、CKpan(−)、EMA(−)、Vimentin(−)を示し、HEセクションと組み合わせると、悪性線維性組織球腫であった。
【0046】
定期的なフォローアップから、CTで右肺での葉軟部組織占拠性病変を発見した、生検の病理学により紡錘細胞肉腫が示された。患者の以前の治療および関連検査によると、紡錘状細胞肉腫が肺に転移した後の再発と診断された。
【0047】
2)治療計画
【0048】
250ml生理食塩水で希釈された遺伝子工学菌VNP20009−Mは静脈投与で体内に注入し、投与量は6.4×107CFU/m2であった。1週間間隔で5回の点滴の投与を行った。
【0049】
3)治療効果
【0050】
3.1 腫瘍の大きさの変化
【0051】
治療前の胸部CT検査により、肺右上葉の病巣が約18×10×10cmであることが示されました(図4参照)。4週間の治療後、CT検査により、肺右上葉の病巣サイズは約17×10×10cmであった、(図5参照)、治療前と比較して腫瘍サイズに顕著な変化はなかった。
【0052】
治療前に、CT画像では、肺病巣内のフレーク状液化壊死を呈した、図4に示すように、白い線で囲んでいる病巣の内部は不均一な色を呈してた、暗い領域はここの細胞が壊死したことを示めた。明るい領域は生細胞を示めた。4週間の治療後、CT画像では、病巣内部に均一な構造を呈すことが示しされた(図5参照)、CT値は約10HUでした。CT値は物質の密度を示し、20HU未満の場合、物質は液体であった、この領域の腫瘍細胞は基本的に壊死した、液体を呈した。これから分かるように、肉腫患者の腫瘍細胞がVNP20009-Mでの治療後に急速に壊死し、液化した。しかし、病巣は体内にあるため、液体を抽出することができず、病巣の縮小は観察されなかった。
【0053】
3.2 副作用
【0054】
毎回治療の当日、注射5−6時間後で、患者の発熱が最大で約39.6度まであり、物理的手段で降温すると体温を正常に回復することができる。当日には、約10分間、吐き気や嘔吐を伴った。それ以外は、他の異常な感覚はなかった。治療中、肝機能及び腎機能の指標を検査して、結果を以下の表1に示した。結果から分かるように、患者の肝機能及び腎機能の各指標が正常範囲にあった。以上の結果から分かるように、VNP20009−Mには人体に対する明らかな毒性がなかった。
【0055】
【表1】
【0056】
以上のデータから、本発明に係る前記遺伝子工学菌VNP20009−Mは、悪性肉腫細胞を効果的に殺滅して、腫瘍病巣を消すことができ、しかも人体に明らかな毒性や副作用がないことが確認された。
【0057】
勿論、上記実施例は、明確に説明するために挙げられた例に過ぎず、実施形態を限定するものではない。当業者であれば、上記説明に基づいて様々な形態の他の変化または変更を行うことができる。ここで、すべての実施例を挙げる必要はなく、且つこのような方法もない。それから生じた明らかな変化または変更も本発明の保護範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5