(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6917087
(24)【登録日】2021年7月21日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】作業システム
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20210729BHJP
【FI】
B25J5/00 Z
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-102820(P2020-102820)
(22)【出願日】2020年6月15日
(65)【公開番号】特開2021-720(P2021-720A)
(43)【公開日】2021年1月7日
【審査請求日】2020年6月15日
(31)【優先権主張番号】201910539510.9
(32)【優先日】2019年6月20日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520213274
【氏名又は名称】杭州孚亜科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Hangzhou Fuya Science and Technology Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 寧寧
【審査官】
樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−171460(JP,A)
【文献】
特開2002−61386(JP,A)
【文献】
特公平7−4778(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの固定ロープノードと、少なくとも一つの移動ロープノードと、吊下げロープノードとを備え、固定ロープノード、移動ロープノード及び吊下げロープノードのすべてはそれぞれロープにより連結され、前記移動ロープノードは固定ロープノードと吊下げロープノードとの間に設けられ、移動ロープノードに連結されるロープの長さは可変であり、前記固定ロープノードは建物に固定され、前記吊下げロープノードは重力作用で垂下状態となり、前記吊下げロープノードは指定の作業内容を実施可能な少なくとも一つの作業装置を含み、前記移動ロープノードはノード本体とノード本体に設けられた移動機構とを含み、建物にて移動可能であり、吊下げロープノードの吊下げ位置を変える役割を果たし、そして、前記移動ロープノードは建物に接触して作用力が発生し、作用力によって移動ロープノードが受けるロープの牽引力と自重力との釣り合いが取られていることを特徴とする作業システム。
【請求項2】
一つの固定ロープノードと、一つの移動ロープノードと、一つの吊下げロープノードとを備え、前記固定ロープノードは建物に固定され、前記固定ロープノードと移動ロープノードとの間のロープ、及び、前記移動ロープノードと吊下げロープノードとの間のロープの長さは可変であることを特徴とする、請求項1に記載の作業システム。
【請求項3】
前記固定ロープノードはロープの巻取・放出可能な巻取装置とされ、前記ロープは移動ロープノードのノード本体を通して吊下げロープノードに連結されることを特徴とする、請求項2に記載の作業システム。
【請求項4】
前記固定ロープノードは建物に固定連結されるロープ固定ブロックを含み、前記ノード本体は第一巻取装置と第二巻取装置とを含み、前記ロープ固定ブロックと前記第一巻取装置は第一ロープにより連結され、第一巻取装置により第一ロープの巻取・放出が行われてその長さが変えられ、前記第二巻取装置と吊下げロープノードは第二ロープにより連結され、第二巻取装置により第二ロープの巻取・放出が行われてその長さが変えられることを特徴とする、請求項2に記載の作業システム。
【請求項5】
前記固定ロープノードは建物に固定連結される第一巻取装置を含み、前記ノード本体は第二巻取装置を含み、前記第一巻取装置と移動ロープノードは第一ロープにより連結され、前記第一巻取装置により第一ロープの巻取・放出が行われてその長さが変えられ、前記第二巻取装置と吊下げロープノードは第二ロープにより連結され、前記第二巻取装置により第二ロープの巻取・放出が行われてその長さが変えられることを特徴とする、請求項2に記載の作業システム。
【請求項6】
二つ又はそれ以上の固定ロープノードを備え、すべての固定ロープノードは一本のロープにより直列連結されるようにロープの経路と方向を変えることを特徴とする、請求項1に記載の作業システム。
【請求項7】
前記二つ又はそれ以上の固定ロープノードは巻取装置と少なくとも一つのプーリとを含み、前記巻取装置に連結されるロープは順に前記プーリを通して移動ロープノードに連結され、前記プーリによりロープの経路と方向が変えられることを特徴とする、請求項6に記載の作業システム。
【請求項8】
二つ又はそれ以上の固定ロープノードを備え、すべての固定ロープノードはそれぞれロープにより移動ロープノードに連結され、移動ロープノードに作用する各ロープの牽引力の移動ロープノードの移動方向における分力は互いに相殺していることを特徴とする、請求項1に記載の作業システム。
【請求項9】
前記移動ロープノードは一つのロープ案内機構をさらに含み、前記二つ又はそれ以上の固定ロープノードのロープはロープ案内機構に連結され、前記ロープ案内機構と前記ノード本体はロープにより連結され、固定ロープノードとロープ案内機構との間のロープの長さを変えることでロープ案内機構とノード本体との間のロープの方向が変えられることを特徴とする、請求項8に記載の作業システム。
【請求項10】
前記固定ロープノードは第一巻取装置と第二巻取装置とを含み、前記ロープ案内機構はプーリとプーリを支持するホルダとを含み、前記プーリはプーリホルダに取り付けられ、前記第一巻取装置のロープはプーリを通してからノード本体に連結され、前記第二巻取装置のロープはプーリホルダに連結され、第一巻取装置及び/又は第二巻取装置のロープの巻取・放出を行うことでロープ案内機構とノード本体との間のロープの方向が変えられることを特徴とする、請求項9に記載の作業システム。
【請求項11】
前記ノード本体においては、ノード本体とロープ案内機構との間のロープの揺動方向を検出するためのロープ方向検出機構がさらに設けられていることを特徴とする、請求項9に記載の作業システム。
【請求項12】
前記ロープ方向検出機構は、ロープに連動するロープ連動ロッドと、ロープ連動ロッドの角度の変化を検出する角度センサとを含むことを特徴とする、請求項11に記載の作業システム。
【請求項13】
前記二つ又はそれ以上の固定ロープノードと移動ロープノードを連結するロープのうちの一本は移動ロープノードを通してから吊下げロープノードに連結されることを特徴とする、請求項8又は請求項9に記載の作業システム。
【請求項14】
前記移動ロープノードは建物にて吸着力を生じ得る移動ノード吸着機構を含むことを特徴とする、請求項1〜請求項13のいずれかに記載の作業システム。
【請求項15】
前記吊下げロープノードは建物の表面に吸着する吊下げ吸着機構を含むことを特徴とする、請求項1〜請求項13のいずれかに記載の作業システム。
【請求項16】
前記移動ロープノードはL字状の構造で、建物の複数の表面に接触し、それらにおいて作用力を生じることを特徴とする、請求項1〜請求項13のいずれかに記載の作業システム。
【請求項17】
前記移動ロープノードはΠ字状の構造で建物に被せられ、建物の複数の表面に接触して作用力を生じることを特徴とする、請求項1〜請求項13のいずれかに記載の作業システム。
【請求項18】
前記作業装置に作業用移動機構が設けられ、前記作業用移動機構により作業装置はその作動している建物の表面にて移動可能になり、前記作業用移動機構にホイールが設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の作業システム。
【請求項19】
前記作業装置の端部に障害物横断用そりが設けられ、前記障害物横断用そりは外へ広がる傾斜形状又は弧形状を成して設けられていることを特徴とする、請求項1又は請求項18に記載の作業システム。
【請求項20】
前記吊下げロープノードは二つ又はそれ以上の作業装置を含み、隣接する二つの作業装置の間を柔軟に連結することを特徴とする、請求項1又は請求項18に記載の作業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は壁面ロボットの応用の技術分野に属し、特に作業システムに関する。
【背景技術】
【0002】
垂直壁面作業ロボットは重力作用を克服して垂直壁面にて施工作業を行うことができるロボットである。従来の垂直壁面作業ロボットは吸着装置により直接建物の垂直壁面に吸着して移動することが多く、作業ツールを携帯して作業する機能を有する。建物としては、ビルであってもよく、大型のオイルタンクや汽船等であってもよい。かかる垂直壁面作業ロボットは以下のような欠点があった。
【0003】
(1)ロボットが故障した(例えば、吸着機構が作動不能になった)場合には落下してしまうことがあり、重大な結果(ロボットが落ちて壊れることや、地上施設を砕き壊すこと)を招いていた。このため、このようなロボットは安全上の欠陥が非常に大きかった。
【0004】
(2)ロボットは作業面の摩擦力により自重力や作業による反力及び作業ツールの重力等との釣り合いを取っていた。このため、このようなロボットは荷重能力と作業能力に大きな制限があった。また、高所作業の高さにも制限があった。
【0005】
図1に示される構造を有する垂直壁面作業ロボットもある。建物Aの頂面Fにおいて二台の巻取装置Bが取り付けられ固定されており、巻取装置BのロープCは作業装置Dに連結されている。二台の巻取装置Bは、それぞれ二本のロープCの長さを制御することで作業装置Dの作業垂直壁面E(即ち、建物Aの垂直側面)での位置を変えるようにされている。二本のロープCは作業装置Dに牽引力を与え、牽引力により作業装置D及びそれに取り付けられた作業ツールの重力との釣り合いが取られている。そのため、この手段によれば、上記二つの課題は解決可能になるが、新しい課題が生じている。作業装置Dから巻取装置Bまでの垂直距離Gが非常に短くなった場合、ロープによる夾角θが非常に大きくなる。作業装置Dの重力との釣り合いを取るために、二本のロープCの牽引力は非常に大きくならなくてはならない。理論的には、作業装置Dを作業垂直壁面Eの頂部(即ち、巻取装置Bからの垂直距離Gがゼロとなる)まで到達させるためには、ロープによる夾角θが180度に極めて近くなり、二本のロープCの牽引力が無限大になる場合にのみ、十分な力を生じて作業装置Dの重力との釣り合いを取ることができる。巻取装置Bが生じ得る牽引力と出力のいずれにも限界があることは明らかであるため、作業装置Dが作業垂直壁面Eにおける巻取装置B上部に近い一部の領域に達することは不可能であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、作業装置が垂直壁面から落下するという安全上の欠陥が効果的に防止され、高所作業の高さや作業範囲を広げられる作業システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
少なくとも一つの固定ロープノードと、少なくとも一つの移動ロープノードと、吊下げロープノードとを備え、固定ロープノード、移動ロープノード及び吊下げロープノードのすべてはそれぞれロープにより連結され、前記移動ロープノードは固定ロープノードと吊下げロープノードとの間に設けられ、移動ロープノードに連結されるロープの長さは可変であり、前記固定ロープノードは建物に固定され、前記吊下げロープノードは重力作用で垂下状態となり、前記吊下げロープノードは指定の作業内容を実施可能な少なくとも一つの作業装置を含み、前記移動ロープノードはノード本体とノード本体に設けられた移動機構とを含み、建物にて移動可能であり、吊下げロープノードの吊下げ位置を変える役割を果たし、前記移動ロープノードは建物に接触して作用力を発生し、作用力によって移動ロープノードが受けるロープの牽引力との釣り合いが取られている作業システムを提供する。
【0008】
さらには、一つの固定ロープノードと、一つの移動ロープノードと、一つの吊下げロープノードとを備え、前記固定ロープノードは建物に固定され、前記固定ロープノードと移動ロープノードとの間のロープ、及び、前記移動ロープノードと吊下げロープノードとの間のロープの長さは可変である。
【0009】
さらには、前記固定ロープノードはロープの巻取・放出可能な巻取装置とされ、前記ロープは移動ロープノードのノード本体を通して吊下げロープノードに連結される。
【0010】
さらには、前記固定ロープノードは建物に固定連結されるロープ固定ブロックを含み、前記ノード本体は第一巻取装置と第二巻取装置とを含み、前記ロープ固定ブロックと第一巻取装置は第一ロープにより連結され、第一巻取装置により第一ロープの巻取・放出が行われてその長さが変えられ、前記第二巻取装置と吊下げロープノードは第二ロープにより連結され、第二巻取装置により第二ロープの巻取・放出が行われてその長さが変えられる。
【0011】
さらには、前記固定ロープノードは建物に固定連結される第一巻取装置を含み、前記ノード本体は第二巻取装置を含み、前記第一巻取装置と移動ロープノードは第一ロープにより連結され、前記第一巻取装置により第一ロープの巻取・放出が行われてその長さが変えられ、前記第二巻取装置と吊下げロープノードは第二ロープにより連結され、前記第二巻取装置により第二ロープの巻取・放出が行われてその長さが変えられる。
【0012】
さらには、二つ又はそれ以上の固定ロープノードを備え、すべての固定ロープノードは一本のロープにより直列連結されるようにロープの経路と方向を変える。
【0013】
さらには、前記二つ又はそれ以上の固定ロープノードは巻取装置と少なくとも一つのプーリとを含み、前記巻取装置に連結されるロープは順に前記プーリを通して移動ロープノードに連結され、前記プーリによりロープの経路と方向が変えられる。
【0014】
さらには、二つ又はそれ以上の固定ロープノードを備え、すべての固定ロープノードはそれぞれロープにより移動ロープノードに連結され、移動ロープノードに作用する各ロープの牽引力の移動ロープノードの移動方向における分力は互いに相殺している。
【0015】
さらには、前記移動ロープノードは一つのロープ案内機構をさらに含み、前記二つ又はそれ以上の固定ロープノードのロープはロープ案内機構に連結され、前記ロープ案内機構とノード本体はロープにより連結され、固定ロープノードとロープ案内機構との間のロープの長さを変えることでロープ案内機構とノード本体との間のロープの方向が変えられる。
【0016】
さらには、前記固定ロープノードは第一巻取装置と第二巻取装置とを含み、前記ロープ案内機構はプーリとプーリを支持するホルダとを含み、前記プーリはプーリホルダに取り付けられ、前記第一巻取装置のロープはプーリを通してからノード本体に連結され、前記第二巻取装置のロープはプーリホルダに連結され、第一巻取装置及び/又は第二巻取装置のロープの巻取・放出を行うことでロープ案内機構とノード本体との間のロープの方向が変えられる。
【0017】
さらには、前記ノード本体においては、ノード本体とロープ案内機構との間のロープの揺動方向を検出するためのロープ方向検出機構が設けられている。
【0018】
さらには、前記ロープ方向検出機構は、ロープに連動するロープ連動ロッドと、ロープ連動ロッドの角度の変化を検出する角度センサとを含む。
【0019】
さらには、前記二つ又はそれ以上の固定ロープノードと移動ロープノードを連結するロープのうちの一本は、移動ロープノードを通してから吊下げロープノードに連結される。
【0020】
さらには、前記移動ロープノードは建物にて吸着力を生じ得る移動ノード吸着機構を含む。
【0021】
さらには、前記吊下げロープノードは建物の表面に吸着する吊下げ吸着機構を含む。
【0022】
さらには、前記移動ロープノードはL字状の構造で、建物の複数の表面に接触し、それらにおいて作用力を生じる。
【0023】
さらには、前記移動ロープノードはΠ字状の構造で建物に被せられ、建物の複数の表面に接触し作用力を生じる。
【0024】
さらには、前記作業装置に作業用移動機構が設けられ、前記作業用移動機構により作業装置はその作動している建物の表面にて移動可能になり、前記作業用移動機構にホイールが設けられている。
【0025】
さらには、前記作業装置の端部に障害物横断用そりが設けられ、前記障害物横断用そりは外へ広がる傾斜形状又は弧形状を成して設けられている。
【0026】
さらには、前記吊下げロープノードは二つ又はそれ以上の作業装置を含み、隣接する二つの作業装置の間が柔軟に連結され、この柔軟な連結はロープ連結とされている。
【発明の効果】
【0027】
従来技術に比べて、本発明による作業システムは、ロープにより互いに順に連結される固定ロープノード、移動ロープノード及び吊下げロープノードを備え、固定ロープノードは建物の表面に固定され、作業装置は吊下げロープノードに設けられる。移動ロープノードと吊下げロープノードにはそれぞれ移動機構と吸着機構が設けられ、作業装置の作動範囲を広げながら、移動ロープノードと吊下げロープノードの吸着能力が向上し、作業装置が作動の時に垂直壁面から落ちてしまうという安全上の欠陥が効果的に防止され、安全性が向上している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】従来技術による垂直壁面作業ロボットの構造模式図である。
【
図2a】本発明による作業システムの好適な実施例の構造原理模式図である。
【
図2b】
図2aにおける移動ロープノードの実施例の拡大模式図である。
【
図2c】
図2aにおける移動ロープノードの他の実施例の拡大模式図である。
【
図3a】
図2における移動ロープノードが建物の頂面にある場合の力解析の模式図である。
【
図3b】
図2における移動ロープノードが建物の垂直側面にある場合の力解析の模式図である。
【
図3c】
図2における移動ロープノードが建物の頂面と垂直側面にある場合の力解析の模式図である。
【
図3d】
図2における移動ロープノードが建物の薄肉壁にある場合の力解析の模式図である。
【
図4a】本発明による作業システムの移動ロープノードの第二実施例の構造原理模式図である。
【
図4b】本発明による作業システムの移動ロープノードの他実施例の構造原理模式図である。
【
図5】
図2aの作業システムにおいて固定ロープノード(プーリ)を一つ増設した場合の構造原理模式図である。
【
図6】
図2aの作業システムにおいて固定ロープノードと移動ロープノードをそれぞれ一つ増設した場合の構造原理模式図である。
【
図7】
図6の移動ロープノードにロープ方向検出機構を設けた場合の構造原理模式図である。
【
図8】
図2aの作業システムにおいて固定ロープノードを二つ増設した場合の構造原理模式図である。
【
図9】本発明による作業における二つの固定ロープノードと一つの移動ロープノードのいずれをも薄肉壁に設けた場合の構造原理模式図である。
【
図10】
図2aの作業における吊下げロープノードの障害物横断時の原理模式図である。
【
図11】
図2aの作業における吊下げロープノードに二つの作業装置が設けられた場合の構造模式図である。
【
図12】
図11の吊下げロープノードの二つの作業装置の障害物横断時の原理模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明が解決しようとする技術的課題や解決手段及び有益な効果をより明らかにするために、添付図面及び実施例に合わせて本発明をより詳細に説明する。ここで述べられる具体的な実施例は本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するためのものではないことは理解されたい。
【実施例1】
【0030】
図2aを参照すると、建物Rはビルであり、その垂直側面Sは作業垂直壁面となる。建物Rにおいて複数のロープノードによるシステムを構築する。固定ロープノード1は建物Rの頂面Tに固定される。移動ロープノード2は頂面Tにて移動可能である。吊下げロープノード3は垂直側面Sにあり、その自重力で吊下げ状態となる。固定ロープノード1と移動ロープノード2は第一ロープ4によって互いに連結され、移動ロープノード2と吊下げロープノード3は第二ロープ5により互いに連結される。吊下げロープノード3の重力作用で、第二ロープ5は引張状態となる。力の伝達により、第一ロープ4も引張状態となる。第一ロープ4と第二ロープ5の長さは可変である。第二ロープ5は、重力との釣り合いを取る牽引力を吊下げロープノード3に対して提供するものである。
【0031】
具体的には、本実施例では、固定ロープノード1は巻取装置であり、第一ロープ4の巻取・放出を行うことができ、建物Rの頂面Tに固定されている。移動ロープノード2はノード本体21とノード本体21に設けられた移動機構とで構成される。移動機構はホイールを用いたものであってもよく、足を用いたものであってもよく、ここでは具体的に指定していない。吊下げロープノード3は作業装置であり、建物Rの垂直側面Sに対して特定の作業、例えば洗浄や吹付け等を実施することができる。
図2bでは、移動機構はホイール8とされ、第一ロープ4は巻取装置から放出されてノード本体21のロープ案内溝22を通している。
図2cはもう一つの解決手段を示している。ノード本体21は一つのプーリ23を含み、第一ロープ4は巻取装置から放出されてプーリ23に巻き付けられている。第二ロープ5の末端に作業装置が連結されている。つまり、図中の第一ロープ4と第二ロープ5は一本のロープの両側部分である。移動ロープノード2は、吊下げロープノードに対して吊下げ用支点を提供する役目を果たしている。移動ロープノードの移動に伴い、吊下げ用支点も対応して位置が変わる。移動ロープノード2の移動により第一ロープ4の長さを変えている。巻取装置によりロープの巻取・放出を行うことで、第二ロープ5の長さを調節でき、作業装置は垂直壁面を移動しながら作動することが可能になる。
【0032】
次に、移動ロープノード2が受ける力について解析を行う。移動ロープノード2は自重力を受けている以外に、第一ロープ4の牽引力T1と第二ロープ5の牽引力T2をも受けている。また、移動ロープノード2は建物Rに接触し作用力を生じている。作用力によりロープの牽引力と重力との釣り合いを取ることができなければ、移動ロープノード2は正常に移動して安定した吊下げ用支点を提供することができない。このため、移動ロープノード2は、建物Rに接触し作用力を生じてロープの牽引力と自重力との釣り合いを取ることをその重要な機能の一つとし、移動ロープノード2は力学的平衡状態になる。この機能を実現する構造は様々であり、本願では網羅できないため、下記の例のみを挙げる。
【0033】
(1)
図2aと
図3aを参照すると、建物Rは頂面Tと垂直側面Sを有する。移動ロープノード2は頂面Tに置かれ、設けられた移動機構8におけるホイールを駆動することで移動し、第一ロープ4の牽引力T1と第二ロープ5の牽引力T2及び自重力を受けている。牽引力T2と自重力の作用で、移動ロープノード2と頂面Tとの間に押圧力が発生してホイールに作用しながら摩擦力が発生する。押圧力と摩擦力は建物Rから移動ロープノード2に与えられる作用力となる。押圧力により牽引力T2と自重力との釣り合いが取られ、摩擦力により牽引力T1との釣り合いが取られる。移動ロープノード2の重量を増やすことで移動ロープノード2と頂面Tとの間の押圧力を増加させることができ、それにより、十分に大きな摩擦力が得られ、牽引力T1との釣り合いを取られる十分な摩擦力が確保される。また、
図2aに示されるように、頂面Tと垂直側面Sとのなす夾角δは90度に限らない。移動ロープノード2が力学的平衡状態にあることを満たし得れば、夾角δは任意の角度を取ってもよい。
【0034】
(2)
図3bを参照すると、建物Rに薄肉壁Uが設けられることがある。移動ロープノード2は垂直側面Sに置かれている。牽引力T1は移動ロープノード2に与えられ、垂直側面Sとの間に押圧力が発生する。この押圧力は移動機構8におけるホイールに作用しながら摩擦力を発生する。この摩擦力により牽引力T1と移動ロープノード2の重力との釣り合いが取られる。
【0035】
(3)
図3cを参照すると、移動ロープノード2はL字状の構造で、その一方側のホイールが建物Rの頂面Tに押し付けられ、他方側のホイールが建物Rの垂直側面Sに接触し、頂面Tと垂直側面Sはいずれもホイールに作用力を与えている。作用力のうちの押圧力によれば、大部分のロープ牽引力との釣り合いが取られ、作用力のうちの摩擦力により小部分のロープ牽引力との釣り合いを取ればよい。このため、
図3bに比べて、
図3cにおける移動ロープノード2はより安定的、且つ安全な力受け状態とすることができる。そして、移動ロープノード2を所定の位置に保持できる。
【0036】
(4)
図3dを参照すると、建物Rに薄肉壁Uが設けられることがある。移動ロープノード2はΠ字状の構造で建物Rに被せられ、移動機構8のホイールは薄肉壁Uの複数の面に接触している。このため、ロープ牽引力はどのように変化しても、移動ロープノード2は薄肉壁Uから落ちることがない一方、薄肉壁Uとの間に3個の移動機構の摩擦力が発生するため、移動ロープノード2を所定の位置に保持する。
【0037】
このため、
図2a〜cと
図3a、
図3b、
図3c、
図3dに示される解決手段は下記の利点を有する。
【0038】
1)建物Rに固定される巻取装置のロープにより移動ロープノード2と作業装置は連結されているため、すべての装置は落下のリスクがなくなる。
【0039】
2)移動ロープノード2は左右に移動し、巻取装置によりロープの巻取・放出を行うことで作業装置を上下に移動させる。このため、作業装置は垂直側面S全体にわたって走行が可能になる。
【0040】
3)牽引力T1と牽引力T2による合力は建物Rに向かっており、移動ロープノード2を転覆させるモーメントが発生することはない。このため、移動ロープノード2は建物Rにて移動する場合にはレールを使用せず、建物Rにレールを敷く等の補助的作業が省かれる。
【0041】
図2a〜cと
図4a・bを参照して、追加の説明をする。上記実施例では、第一ロープ4と第二ロープ5は一本のロープの両側部分とされている。この両区間のロープを別体にしてもよい。
図4aに示されるように、本発明による作業システムの移動ロープノードの他の実施例であり、固定ロープノード1はロープ固定ブロックとされ、建物Rに固定連結されている。移動ロープノード2は移動機構8(図示せず)とノード本体21とを含む。ノード本体21は第一巻取装置6と第二巻取装置7とを含む。第一巻取装置6の第一ロープ4はロープ固定ブロックに連結され、第一巻取装置6により第一ロープ4の巻取・放出を行うことでその長さが変えられる。第二巻取装置7の第二ロープ5は吊下げロープノード3に連結され、第二巻取装置7により第二ロープ5の巻取・放出を行うことでその長さが変えられる。また
図4bに示されるように、固定ロープノード1は建物Rに固定連結される第一巻取装置6を含み、ノード本体21は第二巻取装置7を含み、前記第一巻取装置6と移動ロープノード2は第一ロープ4により連結され、前記第一巻取装置6により第一ロープ4の巻取・放出を行うことでその長さが変えられる。前記第二巻取装置7と吊下げロープノード3は第二ロープ5により連結され、前記第二巻取装置7により第二ロープ5の巻取・放出を行うことでその長さが変えられる。
【0042】
なお、第一ロープ4と第二ロープ5の長さを変える他の方法は多くあるが、それらのすべてをここで挙げることはしない。
【実施例2】
【0043】
実施例1のもとに、移動ロープノード2は移動ノード吸着機構9を含む。移動ノード吸着機構9はノード本体21に取り付けられる。移動ノード吸着機構9は真空により吸着力を発生させるようにしてもよく、頂面Tが磁性材料とされている場合、磁気吸着機構により吸着力を発生させるようにしてもよく、吸着方式として非接触方式や接触方式のいずれを採用してもよい。
ここで、移動ノード吸着機構の原理や取付け方式及び位置については特に指定していないが、吸着機構9としては、本出願人が日本国特許第6123030号公報、及び特許第6189551号公報で提案している機構を採用しても良い。移動ノード吸着機構9は移動ロープノード2に対して吸着力を付与し、移動ロープノード2と建物Rとの間の作用力を増やす役目を果たしている。
【0044】
図3a、
図3b、
図3c、
図3dの各実施例において、移動ロープノード2に移動ノード吸着機構9を増設することで建物R表面への吸着を行い、移動機構8のホイールと建物R表面との間の作用力(押圧力と摩擦力を含む)が向上し、移動ロープノード2がより良好な力学的平衡状態にあるようにするのに役立つ。
図3aと
図3bにおいて、移動ノード吸着機構9の吸着面をV面に設けることができ、
図3cにおいて、移動ノード吸着機構9の吸着面をV面又はW面に設けてもよく、V面とW面の両方に設けてもよい。
【実施例3】
【0045】
図2aと
図5を参照すると、作用力が建物Rの頂面Tと垂直側面Sのいずれからも移動ロープノード2のホイールに与えられている。作用力のうちの押圧力によって、大部分のロープ牽引力との釣り合いが取られ、作用力のうちの摩擦力により小部分のロープ牽引力(例えば、牽引力T1の移動ロープノード2の移動方向での分力)との釣り合いを取ればよい。しかし、移動ロープノード2の横方向移動に伴い、
図2aにおける夾角εが大きくなるため、牽引力T1の移動ロープノード2の移動方向における分力も大きくなる。移動ロープノード2と建物R表面との間の摩擦力がこの分力よりも小さくなると、移動ロープノード2は継続して移動できなくなり、装置の横方向の移動範囲が制限されるようになる。
【0046】
固定ロープノードを増やすことにより上記問題を解決可能である。移動ロープノードに連結されるロープの牽引力は移動ロープノードの移動方向において分力がある。そして、固定ロープノードを増やすことは、それらの分力の大きさや方向を変えて、それらの分力による移動ロープノードの移動への影響を低減することを目的としている。以下、三つの具体的な解決手段によりさらに説明する。
【0047】
(1)
図2aを参照すると、固定ロープノード1と移動ロープノード2との間の直線距離Hを増加させることで移動ロープノード2の移動範囲を広げることができる。横方向に同一距離を移動する場合、直線距離Hが長くなるほど、夾角εが小さくなり、牽引力T1の横方向の分力も小さくなり、横方向の移動範囲の拡張に役立つ。固定ロープノード1の巻取装置を一層遠い場所に取り付け固定することで垂直距離を増加させることができる。しかし、巻取装置は大きくて重いものであるから、運搬と取付けが面倒になる。これに対して、
図5に示されるように、二つの固定ロープノード1’と1’’を増設し、これら二つの固定ロープノードは二つのプーリとしている。プーリは小型かつ軽量で、取付けや固定の自由度が高く、建物Rにおける鉄骨フレームや水道、旗ざお、手すり等の構造物に非常に容易に取り付けて固定することができる。三つの固定ロープノードはロープにより直列連結される。即ち、巻取装置のロープは二つのプーリに巻き付けられてから移動ロープノード2に達している。プーリによりロープの経路と方向が変えられ、建物の頂面にある障害物Xを避けることができ、固定ロープノードから移動ロープノード2までの直線距離Hを増加させることもできるため、移動ロープノード2の横方向の移動範囲を広げることが可能になる。固定ロープノード1’と1’’は、その代わりとしてロープ用リング等の他の部品を用いてもよい。
【0048】
(2)
図2aと
図6を参照する。
図2aと
図6を比較すると、
図6においては固定ロープノード1’’が増設され、移動ロープノード2に対してロープ案内機構2’が増設されている。ロープ案内機構2’とノード本体21はロープ4’により連結されている。固定ロープノード1’’も巻取装置であり、ロープ案内機構2’はプーリホルダとプーリホルダに取り付けられたプーリとを含む。固定ロープノード1’’は第三ロープ10によりプーリホルダに連結されている。第一ロープ4はプーリを通してノード本体21に達し、つまり、ロープ案内機構2’とノード本体21との間のロープ4’は第一ロープ4の一部である。固定ロープノード1’’のロープの巻取・放出を行うことで、第一ロープ4と第三ロープ10の長さは変わり、それにより、ロープ案内機構2’の位置が変えられ、さらにロープ4’がノード本体21に入る角度が変えられる。ロープ4’とノード本体21の移動方向とのなす角度が垂直になると、ロープ4’の牽引力1は移動方向において分力がなくなることは明らかである。このため、ノード本体21の移動は牽引力の移動方向での分力に影響されることがなくなる。
【0049】
図6と
図7を参照すると、ノード本体21においてロープ4’とノード本体21の相対角度を検出するためのロープ方向検出機構を増設する。そして、制御システム中のワンチップコンピュータはこの相対角度に応じて、第三ロープ10の巻取・放出を行うように固定ロープノード1’’を制御し、ロープ4’がノード本体21の移動方向に垂直となることを確保している。具体的な実現手法として、ノード本体21にロープ連動ロッド12を取り付ける。ロープ連動ロッド12は軸線の回りに回転可能なものであり、前端にホールがあり、ロープ4’はホールを通している。ロープ4’を揺動すると、ロープ連動ロッド12が揺動するように動く。ロープ連動ロッド12の揺動角度は角度センサ13により検出される。
【0050】
(3)
図8を参照する。
図2aにおいて二つの固定ロープノード1’’と1’’’を増設すると、
図8の解決手段が得られる。それらは二つの巻取装置であり、建物Rに固定連結され、それぞれ第三ロープ10と第四ロープ11により移動ロープノード2に連結されている。移動ロープノード2の移動に伴い、三つの巻取装置は協働してロープの巻取・放出を行うことで、三本のロープが適切な長さになる。三本のロープによる移動ロープノード2に作用する牽引力は、移動ロープノードの移動方向におけるその分力が異なる方向を有する。
図8に示される状態を例とすれば、1’’の分力が左方向となり、1と1’’’の分力が右方向となる。このように、三つの分力は互いに相殺しているため、移動ロープノード2は横方向に移動する時にはいつも力学的平衡状態になることができる。以上から、複数の固定ロープノードは、各固定ロープノードのロープ牽引力について移動ロープノード2の移動方向において異なる方向の分力を発生させて、分力を互いに相殺させるために設けられていることが分かる。また、移動ロープノード2と吊下げロープノード3を連結する第二ロープ5は、第一ロープ4、第三ロープ10、第四ロープ11のいずれかから伸びたものとしてもよい。例えば、第三ロープ10と第二ロープ5は巻取装置1’’のロープとしてもよく、そして、巻取装置1’’のロープの巻取・放出を行えば、第三ロープ10と第二ロープ5の長さを変えることができる。
【0051】
(4)
図9を参照する。
図9の建物Rに薄肉壁Uがあり、固定ロープノード1と移動ロープノード2は薄肉壁Uに設けられ、移動ロープノード2の他方側に固定ロープノード1’’がさらに増設されている。移動ロープノード2は
図3dにおけるコの字状の構造を採用しており、薄肉壁Uの複数の表面のいずれにも接触している。固定ロープノード1の巻取装置の第一ロープ4は移動ロープノード2を通して吊下げロープノード3の作業装置に連結されている。つまり、第一ロープ4と第二ロープ5は一本のロープの両側部分である。固定ロープノード1の巻取装置によりロープの巻取・放出を行えば、第一ロープ4と第二ロープ5の長さを変えることができる。固定ロープノード1’’の巻取装置は第三ロープ10により移動ロープノード2に連結されている。固定ロープノード1’’の巻取装置によりロープの巻取・放出を行えば、第三ロープ10の長さを変えることができる。牽引力T2は移動ロープノード2と薄肉壁Uとの間の作用力と釣り合いが取られる。第一ロープ4の牽引力T1は第三ロープ10の牽引力T3と釣り合いが取られる。そして、移動ロープノード2は力学的平衡状態にある。固定ロープノード1’’の巻取装置により第三ロープ10の巻取・放出を行えば、移動ロープノード2の薄肉壁Uでの横方向位置を変えることができる。巻取装置1と1’’は移動ロープノードの両側にあるため、第一ロープ4と第三ロープ10の牽引力T1とT3は移動ロープノードの移動方向における分力が異なる方向に互いに相殺しており、移動ロープノード2は良好な力学的平衡状態にできる。
【実施例4】
【0052】
実施例1では、吊下げロープノード3は特定の機能、例えば洗浄や吹付け等を果たし得る作業装置を含む。作業装置は垂直側面Sにて作業する場合、作業反力が発生する。この作業反力により作業装置を押して揺れ動かせるようになる。また、作業装置は高所の横風に影響されて揺動しやすく、安全上の欠陥になってしまう。これらの問題を解決するために、吊下げロープノード3の作業装置に作業用吸着機構(図示せず)を取り付ける。それは、建物の垂直壁面への吸着により吊下げロープノードを安定させながら作業装置の作業能力を向上させる役目を果たしている。作業用吸着機構は真空により吸着力を発生させるようにしてもよく、建物の垂直壁面が磁性材料とされている場合、磁気吸着機構により吸着力を発生させるようにしてもよく、吸着方式として非接触方式や接触方式のいずれかを採用するようにしてもよい。ここで、作業用吸着機構の原理や取付け方式及び位置については特に指定していない。作業用吸着機構は作業装置に対して吸着力を付与し、作業装置の作業能力と高所での安定性を向上させる役目を果たしている。
【実施例5】
【0053】
図10を参照すると、吊下げロープノード3の作業装置に作業用移動機構14が設けられることで、作業装置はその作動している建物の垂直側面Sにて移動するようになる。作業用移動機構14には無動力で駆動するホイールが設けられ、第二ロープ5の巻取・放出に伴い、作業装置のホイールが作業垂直側面Sにて転がり、作業装置は上下に移動するようになる。垂直側面Sにおいて突起した障害物Xがあると、作業装置は障害物Xを超えることができなくなる。作業装置の障害物横断能力を向上させるために、
図10に示されるように、作業装置の端部に障害物横断用そり15が取り付けられている。障害物横断用そり15は外へ広がる傾斜形状又は弧形状として設けられ、その傾斜面又は弧形状の最外端の高さが障害物Xよりも高くされている。障害物横断用そり15が障害物Xにぶつかると、作業装置は障害物横断用そり15により持ち上げられるようになり、障害物Xを超えることが可能になる。
【実施例6】
【0054】
図11を参照すると、作業用吸着機構が取り付けられた作業装置は、垂直側面Sに吸着し移動して作業する場合では、作業用吸着機構が作動不能になると、例えば、磁気吸着機構が取り付けられた作業装置が作業垂直壁面における非磁性材料の領域にまで移動すると、高所の横風により作業装置が揺れてしまう。ロープが長くなるほど、大きく揺れるようになる。そして、作業装置は再度吸着を行える磁性材料の領域まで移動しても、大きく揺れることにより作業装置は再度作業垂直側面Sに吸着することができない。これに対して、
図11の解決手段を提出している。吊下げロープノード3は二つ又はそれ以上の作業装置17を含み、作業装置17毎に作業用吸着機構と作業用移動機構14が取り付けられ、作業用吸着機構の吸着面Vが垂直側面Sに向かっている。隣接する作業装置17の間は柔軟に連結される。例えば、この柔軟な連結はロープ連結とされており、隣接する作業装置17の間に連結ロープ16がある。一部の作業装置17の作業用吸着機構が作動不能になった場合、他の作業装置17の作業用吸着機構がやはり垂直側面Sに吸着し続けて支点になり、連結ロープ16が原因となって、作業用吸着機構が作動不能になった作業装置17が揺れることは制約されている。このため、吸着条件が再び成立すると、作動不能になった作業用吸着機構は再度垂直側面Sに吸着することができる。この解決手段によれば、作業装置17の垂直側面Sでの安定性が確保されている。例えば、
図11に示されるように、何らかの原因で、上部にある作業装置17の作業用吸着機構は作動不能になった。ただし、下部にある作業装置17の作業用吸着機構が垂直側面Sに吸着し続けているため、下部にある作業装置17が揺動し揺れることがなく、連結ロープ16に制約されるようになり、そして吸着条件が再び成立すると、作動不能になった作業用吸着機構は再度垂直側面Sに吸着することができる。
【実施例7】
【0055】
図12を参照する。実施例5のもとに、吊下げロープノード3は二つ又はそれ以上の作業装置17を含み、作業装置17毎の端部に障害物横断用そり15が取り付けられている。例えば、吊下げロープノード3が下へ移動する場合、まずは下方にある作業装置17が突起した障害物Xを超えるようになる。下方にある作業装置17は障害物Xを超えている時には垂直側面Sから離れるから、この作業装置17の作業用吸着機構が作動不能になってしまう。ただし、上方にある作業装置17はやはり垂直側面Sに吸着し続けているため、下方にある作業装置17は大きく揺れることがなく連結ロープ16に制約されるようになる。障害物Xを超えた場合、下方にある作業装置17は再度垂直側面Sに吸着することができる。吊下げロープノード3は下へ移動し続けると、上方にある作業装置17が障害物Xを超えるようになり、下方にある作業装置17による吸着により上方にある作業装置17も大きく揺れず、それにより、吊下げロープノード3全体の作業装置17システムの安定性が保持されている。
【0056】
上記は本発明の好適な実施例にすぎず、本発明の制限となるものではなく、本発明の精神や原則の範囲においてなされたあらゆる変更や等価取替及び改良等は本発明の保護範囲に含まれるべきである。