(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6917105
(24)【登録日】2021年7月21日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】ドリルねじ
(51)【国際特許分類】
F16B 25/10 20060101AFI20210729BHJP
【FI】
F16B25/10 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-194420(P2016-194420)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-54101(P2018-54101A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】宮田 啓一
(72)【発明者】
【氏名】大森 勇作
【審査官】
竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0178148(US,A1)
【文献】
特開昭52−032455(JP,A)
【文献】
特公昭46−015562(JP,B1)
【文献】
特開平09−042255(JP,A)
【文献】
特表2009−539041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と、頭部に一体形成される軸部と、軸部の外周面に形成されるねじ山と、軸部の先端部に形成されるドリル部とを備えるドリルねじにおいて、
ドリル部は、軸部の先端部の外周面を縦方向に切り欠いて形成される刃面と、軸部の先端に形成される刃先とを有し、この刃先は、その中央部が頭部側に後退して両端の頂部が先鋭に成形されていることを特徴とするドリルねじ。
【請求項2】
ドリル部の刃面は、軸部の先端部の外周面を部分的に縦方向に切り欠いて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のドリルねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端部にドリル機能を有するドリルねじに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドリルねじとしては、日本工業規格のJISB1124に規定されたタッピンねじのねじ山をもつドリルねじや、JISB1125に規定されたドリリングタッピンねじが知られている。前者のドリルねじにおいては、ねじ先端が切り刃先に形成されている。一方、後者のドリルねじにおいては、ねじ先端がとがり先に形成されている。
【0003】
前記切り刃先とは、下端に一点のポイントをもち、ポイント位置から左右に100〜110度の角度で拡がる切削刃と、ねじ径よりも若干小さい位置でねじの軸心と平行に形成された左右のサイド刃とを備えるものである。一方、とがり先とは、先端が尖鋭に形成されており、その開き角が約25度に形成されたものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本工業規格JISB1124 タッピンねじのねじ山をもつドリルねじ
【非特許文献2】日本工業規格JISB1125 ドリリングタッピンねじ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記切り刃先及びとがり先をもつドリルねじは、刃先の中央部分を尖らせた形状であり、ここから下穴を拡げていくのだが、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で成る相手材にねじ込んで下穴を拡げる際に、ねじ込み時の推力が刃先の中央部分に集中するため、相手材である炭素繊維の層が推力に負けて剥離する問題があった。
【0006】
この発明は、上述のような問題点を解決することを課題とするものであって、その目的は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で成る相手材を損傷させることなくねじ込み可能なドリルねじを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
頭部と、頭部に一体形成される軸部と、軸部の外周面に形成されるねじ山と、軸部の先端部に形成されるドリル部とを備えるドリルねじにおいて、ドリル部は、軸部の先端部の外周面を縦方向に切り欠いて形成される刃面と、軸部の先端に形成される刃先とを有し、この刃先は、その中央部が頭部側に後退して両端
の頂部が先鋭に成形されているドリルねじによる。
【0009】
なお、ドリル部の刃面は、軸部の先端部の外周面を部分的に縦方向に切り欠いて形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のドリルねじによれば、ドリル部の刃先の両端によって相手材に下穴を空けるように構成されているので、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で成る相手材にねじ込んだ場合でも、相手材を損傷させることなく難なくねじ込むことが可能になる。
【0011】
また、ドリル部の刃先は中央部および両端が尖った形状を成し、刃先の中央部は両端よりも前方に突出しているので、相手材にねじ込む際に回転の支点となるため、位置決めが容易となる。
【0012】
また、ドリル部の刃面は軸部の先端部の外周面を部分的に縦方向に切り欠いて形成されているので、刃先の肉厚を厚くすることができるため、刃先の強度が増す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明であるドリルねじの実施形態を示す正面図である。
【
図2】本発明であるドリルねじの実施形態を示す右側面図である。
【
図3】本発明であるドリルねじの実施形態を示す底面図でる。
【
図4】本発明であるドリルねじの他の実施形態を示す正面図である。
【
図5】本発明であるドリルねじの他の実施形態を示す右側面図である。
【
図6】本発明であるドリルねじの他の実施形態を示す底面図でる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明であるドリルねじの実施形態を図面に基づいて説明する。ドリルねじ1は、
図1乃至
図3に示すように、十字穴2aを備える頭部2と、この頭部2に一体成形された軸部3と、この軸部3の外周面に形成されたねじ山4と、軸部3の先端部に形成されたドリル部5とからなる。
【0015】
ねじ山4は、
図1及び
図2に示すように、軸部3の外周面を螺旋状に延びており、また、このねじ山4の条数は2条に設定されている。さらに、ねじ山4は、縦断面視において非対称であり、圧力側フランク角が遊び側フランク角よりも小さくなるように構成されている。
【0016】
軸部3の横断面形状は、断面位置によって異なり、頭部側が円形状を成す一方、先端側が略三角形状を成している。具体的には、頭部側の端部からねじ山3つ分までが円形状であり、ここ以外は略三角形状を成している。
【0017】
軸部3の先端部の外周面は、
図2に示すように、テーパ状に成形されており、軸部の先端部は、先端にかけて厚みが薄くなるように成形されている。ただし、軸部の先端の最大径は、
図1に示すように、軸部の外径と同一になる。このように形成された軸部の先端部にドリル部が形成されている。
【0018】
ドリル部5は、刃面として第1の刃面6a及び第2の刃面6bと、軸部3の先端に形成される刃先7とを有する。
【0019】
第1の刃面6a及び第2の刃面6bは、軸部3の先端部の外周面を縦方向に2箇所切り欠くことにより形成される。なお、ドリルねじ1の背面図は、
図1に示す正面図と同一であり、第2の刃面6bは、
図1に示す第1の刃面6aと同様に背面に現れる。
【0020】
第1の刃面6a及び第2の刃面6bは各々刃先7a,7bを有しており、これら刃先7a,7bが連結することにより、軸部3の先端に刃先7が形成されている。刃先7a,7bの連結部位であって、つまり刃先7の中央部分Aは、頭部2側に後退しているため、刃先7は、その両端B,Cが尖った形状を成している。刃先7の両端B,C間の距離が、前述した軸部3の先端の最大径である。
【0021】
続いて、上記ドリルねじ1による締結動作について説明する。このドリルねじ1は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で成る相手材(図示せず)に部品(図示せず)を締結する際に使用するものであり、ドライバビット(図示せず)を頭部2の十字穴2aに嵌合させてドライバビットの先端でドリルねじ1を保持し、ドリルねじ1のドリル部5を相手材に押しつける。
【0022】
この状態でドリルねじ1をねじ込み方向に回転させると、ドリル部5の刃先7が相手材を切削することにより、ドリル部5の最大径と同一径の下穴が穿設される。さらに、ねじ込みを続けると、ねじ山4によって下穴の内周面には、雌ねじが成形される。このように、ドリルねじ1は、下穴と雌ねじとを成形しながらねじ込むように構成されている。
【0023】
本発明のドリルねじ1によれば、ドリル部5の刃先7は、両端B,Cが尖っており、ここで相手材に下穴を空けるように構成されているので、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で成る相手材に使用した場合、相手材の表面層が剥離する問題を生じることなく、ねじ込むことが可能になる。また、ドリル部5の刃面6a,6bは、軸部3の先端部の外周面を部分的に切り欠いて形成されているので、先端部の外周面が全体的に刃面として成形された従来のドリルねじと比較して,刃先7の肉厚を厚くすることができるため、強度が増すことになる。
【0024】
次に、本発明であるドリルねじ10の他の実施形態を
図4乃至
図6に基づいて説明する。なお、ドリルねじ10は、ドリル部15の構成がドリルねじ1と相違するだけで、その他の部位についてはドリルねじ1と同様であるから、以下、ドリルねじ10のドリル部15の構成のみを説明し、その他の部位については、ドリルねじ1と同一の部品番号を
図4乃至
図6に付して説明を省略する。
【0025】
ドリルねじ10のドリル部15は、刃面として第1の刃面16a及び第2の刃面16bと、軸部3の先端に形成される刃先17とを有する。
【0026】
第1の刃面16a及び第2の刃面16bは、軸部3の先端部の外周面を縦方向に2箇所切り欠くことにより形成される。なお、ドリルねじ10の背面図は、
図4に示す正面図と同一であり、第2の刃面16bは、
図4に示す第1の刃面16aと同様に背面に現れる。
【0027】
第1の刃面16a及び第2の刃面16bは各々刃先17a,17bを有しており、これら刃先17a,17bが連結することにより、軸部3の先端に刃先17が形成されている。ドリル部15の刃先17は、中央部に突起A’を有するとともに両端B’,C’が尖った形状を成しており、突起A’は、両端B’,C’よりも前方に突出している。
【0028】
続いて、上記ドリルねじ10による締結動作について説明する。このドリルねじ10は、ドリルねじ1と同様に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で成る相手材(図示せず)に部品(図示せず)を締結する際に使用するものである。ドリルねじ10によれば、ドリル部10の刃先17は、中央部に突起A’を有するととともに両端B’,C’が尖った形状を成し、突起A’が両端B’,C’よりも前方に突出している。このため、ドリルねじ10を相手材にねじ込む際に、突起A’が回転の支点となるため、位置決めが容易となる。
【0029】
なお、ドリルねじ1及びドリルねじ10の各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1,10 ドリルねじ
2 頭部
2a 十字穴
3 軸部
4 ねじ山
5,15 ドリル部
6a,16a 第1の刃面
6b,16b 第2の刃面
7 刃先