特許第6917166号(P6917166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6917166ダイシング用粘着テープ、ダイシング用粘着テープの製造方法、および半導体チップの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6917166
(24)【登録日】2021年7月21日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】ダイシング用粘着テープ、ダイシング用粘着テープの製造方法、および半導体チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20210729BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20210729BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20210729BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   H01L21/78 M
   C09J7/00
   C09J133/06
   C09J11/06
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-49564(P2017-49564)
(22)【出願日】2017年3月15日
(65)【公開番号】特開2018-152529(P2018-152529A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 理恵
(72)【発明者】
【氏名】酒井 貴広
(72)【発明者】
【氏名】増田 晃良
【審査官】 湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/018270(WO,A1)
【文献】 特開2011−233718(JP,A)
【文献】 特開2010−126617(JP,A)
【文献】 特開平07−135189(JP,A)
【文献】 特開2012−227232(JP,A)
【文献】 特開2008−222894(JP,A)
【文献】 特開2014−157964(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/174381(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/00
C09J 11/06
C09J 133/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の少なくとも一方の表面側に設けられる粘着剤層と、
を有し、
前記粘着剤層は少なくとも、官能基として水酸基を有するアクリル酸エステル系共重合体と、重量平均分子量Mwが500以上6000以下であって分子中に放射線重合性炭素−炭素二重結合を3つ以上有し水酸基価が3mgKOH/g以下である放射線硬化性オリゴマーと、当該アクリル酸エステル系共重合体が有する当該官能基と反応する官能基を有する架橋剤と、
を備え
前記架橋剤の前記官能基の総量は、前記アクリル酸エステル系共重合体の前記官能基に対して1mol当量以上であり、
前記粘着剤層は、放射線を照射され硬化した後の貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上7.0×10Pa以下であるダイシング用粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層は、前記アクリル酸エステル系共重合体を100質量部としたときに、前記放射線硬化性オリゴマーを80質量部以上180質量部以下含むことを特徴とする請求項に記載のダイシング用粘着テープ。
【請求項3】
基材を準備する基材準備工程と、
粘着剤層を形成するための塗布溶液であり少なくとも、官能基として水酸基を有するアクリル酸エステル系共重合体と、重量平均分子量Mwが500以上6000以下であって分子中に放射線重合性炭素−炭素二重結合を3つ以上有し水酸基価が3mgKOH/g以下である放射線硬化性オリゴマーと、当該アクリル酸エステル系共重合体が有する当該官能基と反応する官能基を有する架橋剤と、を含む塗布溶液を作製する塗布溶液作製工程と、
前記塗布溶液を用いて、前記基材の少なくとも一方の表面側に前記粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程と、
前記アクリル酸エステル系共重合体と前記架橋剤とを架橋させる処理を含み、形成した前記粘着剤層を熱硬化させる熱硬化工程と、
を含み、
前記架橋剤の前記官能基の総量は、前記アクリル酸エステル系共重合体の前記官能基に対して1mol当量以上であり、
前記粘着剤層は、放射線を照射され硬化した後の貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上7.0×10Pa以下であるダイシング用粘着テープの製造方法。
【請求項4】
ダイシング用粘着テープを、複数の半導体素子が基板上に形成された素子用基板に対して貼り付ける貼付工程と、
前記ダイシング用粘着テープが貼り付けられた前記素子用基板を、複数の半導体チップに切断する切断工程と、
前記半導体チップに貼り付いた前記ダイシング用粘着テープに対して放射線を照射して、当該ダイシング用粘着テープの粘着力を低下させる照射工程と、
前記半導体チップを、粘着力が低下した前記ダイシング用粘着テープから剥がし取る剥離工程と、
を含み、
前記ダイシング用粘着テープは、
基材と、
前記基材の少なくとも一方の表面側に設けられる粘着剤層と、
を有し、
前記粘着剤層は少なくとも、官能基として水酸基を有するアクリル酸エステル系共重合体と、重量平均分子量Mwが500以上6000以下であって分子中に放射線重合性炭素−炭素二重結合を3つ以上有し水酸基価が3mgKOH/g以下である放射線硬化性オリゴマーと、当該アクリル酸エステル系共重合体が有する当該官能基と反応する官能基を有する架橋剤と、
を備え
前記架橋剤の前記官能基の総量は、前記アクリル酸エステル系共重合体の前記官能基に対して1mol当量以上であり、
前記粘着剤層は、放射線を照射され硬化した後の貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上7.0×10Pa以下である半導体チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子用基板のダイシングに用いられるダイシング用粘着テープ、ダイシング用粘着テープの製造方法、および半導体チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージ等の半導体関連材料や半導体ウェハ等の半導体素子用基板は、例えば回転刃を用いて切断され、小片の半導体素子やIC部品に分離されている。
例えば、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム−砒素等を材料とする半導体ウェハは、大径の状態で製造された後、予め定められた厚さになるまで裏面が研削(バックグラインド処理)され、さらに必要に応じて裏面処理(エッチング処理、ポリッシング処理など)が施される。
続いて、半導体ウェハの研削面にダイシング用粘着テープを貼り付けるマウント工程、半導体ウェハに粘着テープを貼り付けた状態で半導体ウェハを個々の半導体チップにダイシングするダイシング工程、半導体ウェハを洗浄する洗浄工程、後に行われる半導体チップのピックアップを容易にするために粘着テープを引き伸ばすエキスパンド工程、半導体チップを粘着テープから引き剥がすピックアップ工程などが行われる。
そして、上記ピックアップ工程においては、ダイシング用粘着テープをある程度張った状態とし、1または複数の突き上げ用ピン(ニードル)を用いて、ダイシング用粘着テープに対して基材が位置する側から半導体チップを持ち上げ、半導体チップとダイシング用粘着テープとの剥離を助長した状態で、コレットを用いて真空吸着などにより半導体チップを取り上げる方式が採用されている。
【0003】
従来、半導体チップを作製するために使用されるダイシング用粘着テープとして、放射線硬化性の粘着剤層を有する粘着テープが知られている。例えば、直鎖アルキル基の炭素数が14〜18である(メタ)アクリル系ポリマーを有する放射線硬化性の粘着剤層を含む粘着テープが知られている(特許文献1参照)。
また、ダイシング用粘着テープとして、水酸基価が15〜60mgKOH/gであるアクリル重合体を有する放射線硬化性の粘着剤層を含む粘着テープが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−232629号公報
【特許文献2】特開2012−216842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、半導体製造工程においては、半導体チップの生産効率の向上や、半導体ウェハの薄膜化(例えば、100μm以下)に起因する破損防止を目的として、半導体ウェハの裏面を研削した後、または裏面の研削および裏面処理の後に、短時間の間に半導体ウェハの研削面に対してダイシング用粘着テープを貼り付ける場合がある。
すなわち、半導体ウェハを切断して作製する半導体チップの生産性を向上させるために、半導体チップの作製過程において、バックグラインド処理を行った後、直ちに、インラインで半導体ウェハのダイシングを行うことが増えつつある。この場合、半導体ウェハの裏面を研削して半導体ウェハを薄膜化した後、短期間の間に、この半導体ウェハの研削面に対してダイシング用粘着テープが貼り付けられる。
【0006】
また、上述した半導体ウェハの薄膜化に伴い、半導体ウェハが自重で反りやすくなってきており、取り扱い時や搬送用ケース内における保管時に破損しやすいという問題も多くなっている。この不具合を改善し、作業性を向上させるという観点からも、半導体ウェハの裏面を研削した直後に、インラインでダイシングする方法を採用するケースが増えつつある。半導体ウェハの研削面に貼り付けたダイシング用粘着テープは、半導体ウェハの支持体の機能を有するため、ダイシング用粘着テープが貼り付けられた半導体ウェハは、搬送用ケースに保管されることなく、そのままインラインでダイシングされる。これにより、上述の薄膜化した半導体ウェハの破損を抑えられる。
【0007】
このように、半導体ウェハを研削した直後に研削面に粘着テープを貼り付けることが多くなってきたが、従来のダイシング用粘着テープでは以下のような問題があった。すなわち、半導体ウェハ等の半導体素子用基板の研削直後の表面は活性な原子が存在する活性面となっており、この活性面に従来のダイシング用粘着テープを貼り付けると、半導体素子用基板に対する粘着テープの粘着力が過度に大きくなり、その結果、粘着テープに放射線を照射し粘着剤層を硬化させても、粘着テープから半導体チップを剥がし取りにくくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、半導体素子用基板の活性面に対して貼り付けた場合であっても、得られた半導体チップを剥がし取りやすいダイシング用粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、特定の範囲の重量平均分子量及び水酸基価を有し、かつ放射線重合性炭素−炭素二重結合を3つ以上有する放射線硬化性オリゴマーと、アクリル酸エステル系共重合体と、を主成分として併用した粘着剤層を備えた粘着テープを用いれば、粘着剤層と研削直後の半導体素子用基板表面の活性面との間の過度な相互作用が抑制され、ダイシングにより形成された個々の半導体チップが粘着テープへの放射線照射による粘着剤層の効果的な硬化・収縮と相まって粘着剤層から剥がし取りやすくなることを見出し、本発明を成すに至った。
【0010】
すなわち、本発明のダイシング用粘着テープは、基材と、前記基材の少なくとも一方の表面側に設けられる粘着剤層と、を有し、前記粘着剤層は少なくとも、官能基として水酸基を有するアクリル酸エステル系共重合体と、重量平均分子量Mwが500以上6000以下であって分子中に放射線重合性炭素−炭素二重結合を3つ以上有し水酸基価が3mgKOH/g以下である放射線硬化性オリゴマーと、当該アクリル酸エステル系共重合体が有する当該官能基と反応する官能基を有する架橋剤と、を備え、前記架橋剤の前記官能基の総量は、前記アクリル酸エステル系共重合体の前記官能基に対して1mol当量以上であり、前記粘着剤層は、放射線を照射され硬化した後の貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上7.0×10Pa以下である
【0011】
ここで、前記粘着剤層は、前記アクリル酸エステル系共重合体を100質量部としたときに、前記放射線硬化性オリゴマーを80質量部以上180質量部以下含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明のダイシング用粘着テープの製造方法は、基材を準備する基材準備工程と、粘着剤層を形成するための塗布溶液であり少なくとも、官能基として水酸基を有するアクリル酸エステル系共重合体と、重量平均分子量Mwが500以上6000以下であって分子中に放射線重合性炭素−炭素二重結合を3つ以上有し水酸基価が3mgKOH/g以下である放射線硬化性オリゴマーと、当該アクリル酸エステル系共重合体が有する当該官能基と反応する官能基を有する架橋剤と、を含む塗布溶液を作製する塗布溶液作製工程と、前記塗布溶液を用いて、前記基材の少なくとも一方の表面側に前記粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程と、前記アクリル酸エステル系共重合体と前記架橋剤とを架橋させる処理を含み、形成した前記粘着剤層を熱硬化させる熱硬化工程と、を含み、前記架橋剤の前記官能基の総量は、前記アクリル酸エステル系共重合体の前記官能基に対して1mol当量以上であり、前記粘着剤層は、放射線を照射され硬化した後の貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上7.0×10Pa以下である
【0013】
また、本発明の半導体チップの製造方法は、ダイシング用粘着テープを、複数の半導体素子が基板上に形成された素子用基板に対して貼り付ける貼付工程と、前記ダイシング用粘着テープが貼り付けられた前記素子用基板を、複数の半導体チップに切断する切断工程と、前記半導体チップに貼り付いた前記ダイシング用粘着テープに対して放射線を照射して、当該ダイシング用粘着テープの粘着力を低下させる照射工程と、前記半導体チップを、粘着力が低下した前記ダイシング用粘着テープから剥がし取る剥離工程と、を含み、前記ダイシング用粘着テープは、基材と、前記基材の少なくとも一方の表面側に設けられる粘着剤層と、を有し、前記粘着剤層は少なくとも、官能基として水酸基を有するアクリル酸エステル系共重合体と、重量平均分子量Mwが500以上6000以下であって分子中に放射線重合性炭素−炭素二重結合を3つ以上有し水酸基価が3mgKOH/g以下である放射線硬化性オリゴマーと、当該アクリル酸エステル系共重合体が有する当該官能基と反応する官能基を有する架橋剤と、を備え、前記架橋剤の前記官能基の総量は、前記アクリル酸エステル系共重合体の前記官能基に対して1mol当量以上であり、前記粘着剤層は、放射線を照射され硬化した後の貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上7.0×10Pa以下である
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、半導体素子用基板の活性面に対して貼り付けた場合であっても、半導体チップを剥がし取りやすいダイシング用粘着テープ等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態が適用される粘着テープの構成の一例を示した図である。
図2】粘着テープの製造方法について説明したフローチャートである。
図3】半導体チップの製造方法について説明したフローチャートである。
図4】(a)〜(d)は、粘着テープを使用した半導体チップの製造例を示した図である。
図5】実施例および比較例について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定するものではない。またその要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。さらに使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0017】
<粘着テープの構成>
図1は、本実施の形態が適用される粘着テープ1の構成の一例を示した図である。本実施の形態の粘着テープ1は、素子用基板の一例としての半導体ウェハのダイシングの用途に使用される。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態の粘着テープ1は、基材2と粘着剤層3とが積層された構造を有している。
なお、図示は省略するが、粘着テープ1は、基材2と粘着剤層3との間に必要に応じてアンカーコート層を備えていてもよい。また、粘着剤層3の基材2とは逆の表面側(一方の表面側)に、剥離ライナーを備えていてもよい。
【0019】
<基材>
基材2は、粘着剤層3の支持体となるものである。また、基材2は、放射線透過性を有することが求められる。
このような基材2に使用される材料としては、プラスチック製、金属製、紙製等のものを用いることができるが、本実施の形態では、放射性を透過し易いという観点から、プラスチック製のものを好適に使用することができる。プラスチック製の基材2の材料としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなど)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー系樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体など)、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレートなど)、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスチレン系樹脂(ポリスチレンなど)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、セルロース系樹脂や、これらの樹脂の架橋体などを用いることができる。これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。またこれらの材料は、官能基を有していてもよい。またこれらの材料に、機能性モノマーや改質性モノマーがグラフトされていてもよい。さらに、基材2の表面とこの基材2に隣接する層との密着性を向上させるために、基材2の表面に対して、表面処理を施してもよい。このような表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理などが挙げられる。また、下塗り剤によるコーティング処理、プライマー処理、マット処理、架橋処理などを基材2に施してもよい。
【0020】
基材2としては、単層構造のものおよび積層構造のものの何れも使用することができる。また、基材2には、必要に応じて、充填剤、難燃剤、老化防止剤、帯電防止剤、軟化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤などの添加剤が含まれていてもよい。基材の厚さは、特に制限されるものではないが、10〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
【0021】
<粘着剤層>
粘着剤層3は、粘着性を有し、粘着テープ1と被着体との間で粘着力を発揮させる機能層である。また、本実施の形態の粘着剤層3は、放射線を照射されると硬化・収縮して粘着力が低下する性質を有する。
これにより、粘着テープ1を半導体ウェハのダイシングに用いた場合に、半導体ウェハに対して粘着テープ1が良好な粘着性を有する。また、ダイシングにより半導体ウェハを等間隔ごとに切断すると個々の半導体チップが形成されるが、粘着テープ1に対して放射線を照射することで、この半導体チップを粘着テープ1から剥がし取りやすくなる。放射線としては、例えば、X線、電子線、紫外線等が挙げられる。中でも、本実施の形態では、紫外線をより好適に用いることができる。
【0022】
本実施の形態の粘着剤層3は、粘着剤としてのアクリル酸エステル系共重合体と、放射線硬化性オリゴマーとを含む。また、粘着剤層3は、アクリル酸エステル系共重合体が有する官能基と反応する架橋剤と、光重合開始剤とを含む。また、粘着剤層3は、必要に応じて、着色剤等を含んでいてもよい。
【0023】
粘着剤層3は、放射線を照射され硬化した後の貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上7.0×10Pa以下であるものを使用することが好ましい。
貯蔵弾性率が1.0×10Pa未満であると、粘着テープ1に対して放射線を照射しても、粘着力が低下しにくくなる。その結果、ダイシングにより形成された個々の半導体チップを粘着テープ1から剥がし取りにくくなる。
また、貯蔵弾性率が7.0×10Paよりも大きいと、粘着剤層3が硬くなり、曲げ弾性率が高くなり過ぎるため、粘着テープ1を介して半導体チップを突き上げて半導体チップを粘着テープ1から剥がし取る際に、半導体チップが薄い場合、割れるおそれがある。
【0024】
また、粘着剤層3の厚さは、3μm〜50μmの範囲が好ましく、5μm〜20μmの範囲がより好ましい。
粘着剤層3の厚さが3μm未満の場合には、粘着テープ1の粘着力が過度に低下するおそれがある。この場合、半導体ウェハのダイシングの際に、粘着テープ1が半導体チップを十分に保持することができず、半導体チップが飛散するおそれがある。
その一方で、粘着剤層3の厚さが50μmよりも厚い場合には、ダイシング時の振動が粘着剤層3に伝わりやすく、振動幅が大きくなり、半導体ウェハのダイシング中にこの半導体ウェハが基準位置からずれるおそれがある。この場合、半導体チップに欠け(チッピング)が生じたり、個々の半導体チップごとに大きさのずれが生じるおそれがある。
【0025】
(アクリル酸エステル系共重合体)
アクリル酸エステル系共重合体は、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーを主剤とした粘着剤である。(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、直鎖および/または分岐アルキル基含有(メタ)アクリル系モノマーと、官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーと、必要に応じその他のモノマーとを共重合させることにより得られる。
アクリル酸エステル系共重合体としては、官能基として水酸基、カルボキシル基のうちのいずれか一つを有するものを好適に使用することができる。
【0026】
直鎖または分岐アルキル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上併用してもよい。中でも本実施の形態では、炭素数が4以上であって12以下であるアルキル基を含有する(メタ)アクリル系モノマーを好適に用いることができ、炭素数が8であるアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルをさらに好適に用いることができる。
【0027】
水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、けい皮酸、フマル酸、フタル酸等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本実施の形態において、アクリル酸エステル系共重合体は、本発明の効果を妨げない限りにおいては、必要に応じて他の共重合モノマー成分を含有してもよい。このような他の共重合モノマー成分としては、具体的には、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマーや、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系モノマーや、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル等のアミノ基含有モノマーや、(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有モノマーや、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等のオレフィン系モノマーや、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマーや、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマーや、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマーや、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有モノマーや、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシ基含有モノマーや、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン等の窒素原子含有環を有するモノマー等が挙げられる。
【0030】
また、本実施の形態において、アクリル酸エステル系共重合体は、側鎖に放射線重合性炭素−炭素二重結合を導入したものを用いることもできる。例えば、水酸基を有するアクリル酸エステル系共重合体を合成し、その後、合成したアクリル酸エステル系共重合体の水酸基と2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートとを反応させ、側鎖に放射線重合性炭素−炭素二重結合として作用するメタクリロイル基を導入したアクリル酸エステル系共重合体等が挙げられる。
【0031】
(放射線硬化性オリゴマー)
放射線硬化性オリゴマーは、放射線を照射されると、硬化する性質を有する。放射線硬化性オリゴマーとしては、特に限定されるものではないが、エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリエステルアクリレート系オリゴマー等を用いることができる。エポキシアクリレートは、エポキシ化合物とカルボン酸との付加反応により合成される。ウレタンアクリレートは、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの付加反応物に、末端に残るイソシアネート基をヒドロキシ基含有アクリレートと反応させてアクリル基を分子末端に導入して合成される。ポリエステルアクリレートは、ポリエステルポリオールとアクリル酸との反応によって合成される。
【0032】
本実施の形態においては、ウレタンアクリレート系オリゴマーを好適に用いることができる。この放射線硬化性オリゴマーの硬化により、粘着剤層3の粘着力が低下する。
粘着剤層3は、アクリル酸エステル系共重合体を100質量部としたときに、放射線硬化性オリゴマーを80質量部以上180質量部以下含むことが好ましい。
【0033】
放射線硬化性オリゴマーの含有量が80質量部未満であると、粘着テープ1に対して放射線を照射しても粘着剤層3が十分に硬化・収縮せず、粘着力が低下しにくくなる。その結果、半導体ウェハのダイシングにより形成された個々の半導体チップを粘着テープ1から剥がし取りにくくなるとともに、この剥がし取りの際、半導体チップが一部欠損するおそれがある。
また、放射線硬化性オリゴマーの含有量が180質量部を超えると、粘着テープ1に対して放射線を照射した際に、硬化したオリゴマー量増大の影響によって粘着剤層3が硬くなり、曲げ弾性率が高くなり過ぎるため、粘着テープ1を介して半導体チップを突き上げて半導体チップを粘着テープ1から剥がし取る際に、半導体チップが薄い場合、割れるおそれがある。
【0034】
本実施の形態においては、放射線硬化性オリゴマーとしては、水酸基価が3mgKOH/g以下のものを使用することが好ましい。ここで、水酸基価とは、対象物1g中に含まれるOH基をアセチル化するために必要とする水酸化カリウムの量(mg)である。
ここで、放射線硬化性オリゴマーの水酸基価が3mgKOH/gよりも大きいと、特に研削直後の半導体ウェハに粘着テープ1を貼り付ける場合に、半導体ウェハに対する粘着剤層3の粘着力が過度に大きくなる。その結果、粘着テープ1に対して放射線を照射しても、ダイシングにより形成された個々の半導体チップを粘着テープ1から剥がし取りにくくなるおそれや、半導体チップが欠損するおそれがある。
【0035】
すなわち、半導体チップの作製過程において、研削により半導体ウェハを薄膜化すると、この半導体ウェハの表面には、経時的に自然酸化膜が形成される。ここで、半導体チップの生産性を向上させるため、半導体ウェハを研削して薄膜化してから直ぐに研削面に粘着テープ1を貼り付ける工程を行う場合、研削された半導体ウェハの表面は、未酸化状態であるとともに、活性な原子(例えばケイ素原子など)が存在する活性面となっている。この活性面の活性原子と、放射線硬化性オリゴマーの水酸基とが結合すると、粘着剤層3の粘着力が過度に大きくなる。
その結果、放射線照射後でも、ダイシングにより形成された個々の半導体チップを粘着テープ1から剥がし取りにくくなるとともに、この際、半導体チップが一部欠損するおそれがある。
【0036】
これに対し、放射線硬化性オリゴマーの水酸基価が3mgKOH/g以下のものを使用する場合、半導体ウェハの活性面の活性原子と結合する水酸基(放射線硬化性オリゴマーの水酸基)が少なく、放射線照射後の粘着剤層3の粘着力が過度に大きくなることが抑制される。その結果、半導体チップを粘着テープ1から剥がし取りやすくなる。放射線硬化性オリゴマーの水酸基価は0mgKOH/gが好ましい。
【0037】
また、放射線硬化性オリゴマーとしては、分子中に放射線重合性炭素−炭素二重結合を3つ以上有するものを使用することが好ましい。
放射線硬化性オリゴマーが分子中に放射線重合性炭素−炭素二重結合を3つ以上有しない場合には、粘着テープ1に対して放射線を照射しても粘着剤層3が十分に硬化・収縮せず、粘着力が低下しにくくなる。その結果、ダイシングにより形成された個々の半導体チップを粘着テープ1から剥がし取りにくくなる。
なお、分子中に放射線重合性炭素−炭素二重結合を3つ以上有する放射線硬化性オリゴマーを使用する場合、これに加えて、本願発明の効果を妨げない限りにおいては、分子中の放射線重合性炭素−炭素二重結合を2つ有する放射線硬化性オリゴマーを併せて用いてもよい。この場合も、放射線硬化性オリゴマーの水酸基価が3mgKOH/g以下のものを使用するのが好ましい。
【0038】
また、放射線硬化性オリゴマーとしては、重量平均分子量Mwが500以上6000以下のものを使用することが好ましい。
重量平均分子量Mwが500未満の放射線硬化性オリゴマーを使用する場合、粘着テープ1に対して放射線を照射したときに粘着剤層3が、オリゴマー同士の架橋密度が高くなる影響により、硬くなり、曲げ弾性率が高くなるため、粘着テープ1を介して半導体チップを突き上げて半導体チップを粘着テープ1から剥がし取る際に、半導体チップが薄い場合、割れるおそれがある。
【0039】
また、重量平均分子量Mwが6000よりも大きい放射線硬化性オリゴマーを使用する場合、粘着テープ1に対して放射線を照射したときに粘着剤層3が硬化・収縮する程度が小さく、粘着剤層3の粘着力が低下しにくくなる。その結果、半導体ウェハのダイシングにより形成された個々の半導体チップを粘着テープ1から剥がし取りにくくなる。
【0040】
(架橋剤)
架橋剤としては、アクリル酸エステル系共重合体が有する官能基と反応するものを好適に使用することができる。アクリル酸エステル系共重合体の官能基が水酸基の場合はイソシアネート系架橋剤、アクリル酸エステル系共重合体の官能基がカルボキシル基の場合はエポキシ系架橋剤を好適に用いることができる。
また、架橋剤の添加量は、架橋剤のうちの、アクリル酸エステル系共重合体が有する官能基と反応する官能基の総量が、アクリル酸エステル系共重合体の官能基に対して、1mol当量以上となる量が好ましい。
【0041】
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、粘着テープ1に対して放射線を照射したときにラジカルを生成し、放射線炭素−炭素二重結合を開裂させて重合反応を開始させる役割を有する。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ベンジル、ベンゾイン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、2−ナフタレンスルホニルクロリド、1−フェノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
<アンカーコート層>
上述したように、本実施の形態の粘着テープ1では、粘着テープ1の製造条件や製造後の粘着テープ1の使用条件等に応じて、基材2と粘着剤層3との間に、基材の種類に合わせたアンカーコート層を設けてもよい。アンカーコート層を設けることにより、基材2と粘着剤層3との密着力が向上する。
【0043】
<剥離ライナー>
また、粘着剤層3の基材2とは逆の表面側(一方の表面側)には、必要に応じて剥離ライナーを設けてもよい。剥離ライナーとして使用できるものは、特に制限されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂や、紙類などが挙げられる。また、剥離ライナーの表面には、粘着剤層3の剥離性を高めるために、シリコーン系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤などによる剥離処理を施してもよい。剥離ライナーの厚さは、特に限定されないが、10μm以上200μm以下のものを好適に使用することができる。
【0044】
<粘着テープの製造方法>
図2は、粘着テープ1の製造方法について説明したフローチャートである。
まず、基材2を準備する(ステップ101:基材準備工程)。
次に、粘着剤層3を形成するための粘着剤層3用の塗布溶液(粘着剤層形成用塗布溶液)を作製する(ステップ102:塗布溶液作製工程)。塗布溶液は、粘着剤層3の成分であるアクリル酸エステル系共重合体と、放射線硬化性オリゴマーと、架橋剤とを含む。そして、これらを溶媒に投入し、攪拌を行うことで塗布溶液を作製することができる。溶媒としては、例えば、トルエンや酢酸エチル等の汎用の有機溶剤を使用することができる。
【0045】
そして、ステップ102で作製した粘着剤層3用の塗布溶液を用いて、基材2上に粘着剤層3を形成する(ステップ103:粘着剤層形成工程)。
基材2上に粘着剤層3を形成する方法としては、基材2上に粘着剤層3用の塗布溶液を直接塗布して乾燥する方法、あるいは、剥離ライナーの上に粘着剤層3用の塗布溶液を塗布して乾燥し、その後、粘着剤層3の上に基材2を貼り合わせる方法のいずれかの方法を用いることができる。
続いて、形成した粘着剤層3を例えば40℃〜60℃の環境下でエージングしてアクリル酸エステル系共重合体と架橋剤とを架橋させることで熱硬化させる(ステップ104:熱硬化工程)。
【0046】
以上詳述した本実施の形態によれば、粘着剤層3に含まれるアクリル酸エステル系共重合体の官能基(水酸基、カルボキシル基のうちのいずれか一つの官能基)は、架橋剤の官能基と反応している。また、粘着剤層3に含まれる放射線硬化性オリゴマーは、重量平均分子量Mwが500以上6000以下であり分子中に放射線重合性炭素−炭素二重結合を3つ以上有し水酸基価が3mgKOH/g以下である。
【0047】
本実施の形態の粘着テープ1は、半導体ウェハをダイシングして個々の半導体チップを形成する場合に用いることができる。特に、表面に活性面を有する半導体ウェハをダイシングして個々の半導体チップを形成する場合に好適に用いることができる。
【0048】
すなわち、本実施の形態の粘着テープ1によると、活性面を有する半導体ウェハに粘着テープ1を貼り付けた場合に、粘着テープ1に放射線を照射して粘着剤層3を硬化させることで、粘着剤層3の粘着力を十分に低減させられる。この場合、ダイシングにより形成された個々の半導体チップを粘着テープ1から剥がし取りやすくなる。
したがって、半導体ウェハを研削して活性面となっている半導体ウェハの表面に対して本実施の形態の粘着テープ1を貼り付けた場合であっても、ダイシングや、ダイシングにより形成された個々の半導体チップのピックアップを良好に行える。
【0049】
なお、本実施の形態の粘着テープ1は、ロール状に巻かれた形態や、幅が広いシートが積層している形態であってもよい。また、これらの形態の粘着テープ1を予め定められた大きさに切断して形成されたシート状またはテープ状の形態であってもよい。
【0050】
<半導体チップの製造方法>
図3は、本実施の形態の粘着テープ1を使用した半導体チップの製造方法について説明したフローチャートである。また、図4(a)〜(d)は、本実施の形態の粘着テープ1を使用した半導体チップの製造例を示した図である。
【0051】
まず、図4(a)に示すように、例えばシリコンを主成分とする基板101上に複数の集積回路102を搭載した半導体ウェハ100を準備する(ステップ201:準備工程)。
続いて、半導体ウェハ100の集積回路102が搭載された面とは反対側の面を研削し、半導体ウェハ100を予め定められた厚さにする(ステップ202:研削工程)。この際に、図示はされていないが半導体ウェハ100の集積回路102が搭載された面には保護テープが貼り付けられる。保護テープは切断(ダイシング)工程の前に剥がされる。
そして、半導体ウェハ100の研削面が粘着テープ1の粘着剤層3と対向するように、半導体ウェハ100に対して粘着テープ1を貼り付ける(ステップ203:貼付工程)。ステップ202で半導体ウェハ100を研削した直後に粘着テープ1を貼り付けることにより、半導体ウェハ100の表面に活性な原子が存在する状態で、半導体ウェハ100に粘着テープ1が貼り付けられる。
【0052】
ここで、貼付工程では、一般的に、粘着テープ1を押圧する押圧ロール等を用いて、半導体ウェハ100に粘着テープ1を貼り付ける。また、加圧可能な容器(例えば、オートクレーブなど)の中で半導体ウェハ100と粘着テープ1とを重ね合わせ、容器内を加圧することにより、半導体ウェハ100に粘着テープ1を貼り付けてもよい。さらに、減圧チャンバー(真空チャンバー)内で、半導体ウェハ100に粘着テープ1を貼り付けてもよい。
【0053】
続いて、図4(b)に示すように、粘着テープ1と半導体ウェハ100とを貼り合わせた状態で、切断予定ラインXに沿って、半導体ウェハ100をダイサー等によって切断する(ステップ204:切断工程)。図4(c)に示すように、この例では、半導体ウェハ100を全て切り込む所謂フルカットを行っている。
【0054】
ここで、切断工程では、一般的に、摩擦熱の除去や切断屑の付着の防止のために粘着テープが貼り付けられた半導体ウェハに洗浄水を供給しながら、例えば回転するブレードを用いて半導体ウェハ100を予め定められた大きさに切断する。なお、ダイシングにより形成された個々の半導体チップのピックアップを容易にするため、切断工程の後に、粘着テープ1の引き伸ばし(エキスパンド)を行ってもよい。
【0055】
続いて、粘着テープ1に対して放射線を照射することにより、粘着剤層3を硬化・収縮させ、粘着剤層3の粘着力を低下させる(ステップ205:照射工程)。
続いて、図4(d)に示すように、半導体ウェハ100を切断することにより形成された半導体チップ200を粘着テープ1から剥がし取る所謂ピックアップを行う(ステップ206:剥離工程)。
このピックアップの方法としては、例えば、半導体チップ200を粘着テープ1側からニードル300によって突き上げ、突き上げられた半導体チップ200を、ピックアップ装置(不図示)を用いて粘着テープ1から剥がし取る方法等が挙げられる。
【0056】
なお、図4(a)〜(d)で説明した方法は、粘着テープ1を用いた半導体チップ200の製造方法の一例であり、粘着テープ1の使用方法は、上記の方法に限定されない。すなわち、本実施の形態の粘着テープ1は、ダイシングに際して、半導体ウェハ100に貼り付けられるものであれば、上記の方法に限定されることなく使用することができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。本発明は、その要旨を越えない限りこれらの実施例により限定するものではない。
【0058】
図1に示す粘着テープ1を作製し、評価を行った。
〔粘着テープ1の作製〕
(実施例1)
本実施例では、基材2として、厚さが90μmのポリオレフィン(PO)系フィルムを用いた。
【0059】
次に、基材2の一方の表面側に粘着剤層3を以下のようにして形成した。
まず、50質量部のアクリル酸2−エチルヘキシルと、3質量部のアクリル酸2−ヒドロキシエチルと、37質量部のメタクリル酸メチルと、10質量部のN−ビニル−2−ピロリドンとを酢酸エチル溶媒中でアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を開始剤としてラジカル共重合させることで、水酸基を有するアクリル酸エステル系共重合体(固形分濃度:35質量%)を作製した。ここで、メタクリル酸メチルは、粘着剤層3の硬さを調整するために使用した。
【0060】
続いて、酢酸エチルに、作製したアクリル酸エステル系共重合体と、放射線硬化性ウレタンアクリレート系オリゴマーと、イソシアネート系架橋剤としての東ソー社製のコロネート(登録商標)Lと、光重合開始剤としてのBASFジャパン社製のイルガキュア(登録商標)369とを溶解させ、粘着剤層3用の塗布溶液を作製した。
ここで、塗布溶液の配合組成は、アクリル酸エステル系共重合体100質量部(固形分)に対して、放射線硬化性ウレタンアクリレート系オリゴマーが120質量部(固形分)、コロネートLが7.5質量部(固形分)、イルガキュア369が1.0質量部(固形分)、酢酸エチルが343質量部となるようにした。
放射線硬化性ウレタンアクリレート系オリゴマーは、重量平均分子量Mwが1000、水酸基価が1mgKOH/g、放射線重合性炭素−炭素二重結合の数が6つのものを用いた。
【0061】
そして、乾燥後の粘着剤層3の厚さが10μmとなるように、剥離ライナー(厚さ38μm、ポリエステルフィルム)の剥離処理面側に上記塗布溶液を塗布して100℃の温度で3分間加熱することにより乾燥させた後に、粘着剤層3上に基材2を貼り合わせ、粘着テープ1を作製した。その後、粘着テープ1を40℃の温度で72時間保存して粘着剤層3を硬化させた。
以上の工程により本実施例の粘着テープ1を作製した。
【0062】
(実施例2〜12)
実施例1に対し、図5に示すように放射線硬化性ウレタンオリゴマーについて変更を行なった以外は、実施例1と同様にして粘着テープ1を作製した。
【0063】
(実施例13)
実施例1に対し、アクリル酸エステル系共重合体について、3質量部のアクリル酸2−ヒドロキシエチルを1質量部のメタクリル酸に変更することでカルボキシル基を有するアクリル酸エステル系共重合体とし、架橋剤について、イソシアネート系架橋剤であるコロネートL:7.5質量部をエポキシ系架橋剤である共栄社化学社製のエポライト40E:2.5質量部に変更を行った以外は、実施例1と同様にして粘着テープ1を作製した。
【比較例】
【0064】
(比較例1〜4)
実施例1に対し、図5に示すように放射線硬化性ウレタンオリゴマーについて変更を行なった以外は、実施例1と同様にして粘着テープを作製した。このうち比較例1では、放射線硬化性オリゴマーの分子中における放射線重合性炭素−炭素結合の数が、下限値を下回る2つである。また、比較例2では、放射線硬化性オリゴマーの重量平均分子量Mwが、下限値を下回る200である。また、比較例3では、放射線硬化性オリゴマーの重量平均分子量Mwが、上限値を上回る6500である。また、比較例4では、放射線硬化性オリゴマーの水酸基価が、上限値を上回る5mgKOH/gである。
【0065】
〔評価方法〕
(1)粘着力試験
実施例1〜13および比較例1〜4の粘着テープについて、粘着力試験を行った。
具体的には、鏡面研磨した直後の半導体ウェハに対して、粘着テープを貼り付け、温度23℃および湿度50%の雰囲気下で7日間保持した。なお、半導体ウェハの研削面に自然酸化膜が形成される前に粘着テープを貼り付けるために、半導体ウェハの研削後5分以内に粘着テープを貼り付けた。
続いて、粘着テープに対して紫外線(積算光量:300mJ/cm)を照射した。そして、23±3℃の環境下において、粘着テープの表面に沿う方向に力を加えて引張速度300m/分で粘着テープを引っ張り、半導体ウェハから粘着テープを引き剥がし、半導体ウェハに対する粘着力の評価を行った。即ち、粘着力については、半導体ウェハから粘着テープを引き剥がすために必要とした力が0.15N/10mm以下であるときに○の評価とし、0.15N/10mmよりも大きいときに×の評価とした。なお、○の評価を合格とした。
【0066】
(2)ピックアップ試験
実施例1〜13および比較例1〜4の粘着テープについて、ピックアップ試験を行った。
具体的には、株式会社ディスコ製のDAG810(製品名)を用いて半導体ウェハを研削して50μmの厚さにしてから、活性な原子が存在する半導体ウェハの表面に対して粘着テープを貼り付けた。その後、株式会社ディスコ製のDFD651(製品名、送り速度:50mm/min)を用いてダイシングを行い、個々の大きさが100mmの半導体チップを形成してから、粘着テープの基材側から紫外線(積算光量:300mJ/cm)を照射した。そして、粘着テープの引き伸ばし(エキスパンド)を行った後に、ダイトエレクトロン株式会社製のWCS−700(製品名、ピンの数:5本)を用いて半導体ウェハのピックアップを行い、ピックアップ性を評価した。
即ち、任意の半導体素子50個に対してピックアップを行い、全ての半導体素子について割れることなくピックアップが成功したときに◎の評価とした。また、1個以上5個以下の半導体素子について割れが生じたものの、残りの半導体素子について割れることなくピックアップが成功したときに〇の評価とした。また、6個以上の半導体素子について割れが生じたときに×の評価とした。なお、○または◎の評価を合格とした。
【0067】
(3)貯蔵弾性率の測定
実施例1〜13および比較例1〜4の粘着テープについて、各々の粘着剤層の放射線照射・硬化後の貯蔵弾性率を測定した。
具体的には、調製した各々の粘着剤層を乾燥後の厚さが500μmになるように塗布・乾燥させた試料を作製し、粘着剤層に紫外線(積算光量:300mJ/cm)を照射してから、株式会社日立ハイテクサイエンス社製の粘弾性測定装置DMA6100(製品名)を用いて、動的粘弾性を測定し、貯蔵弾性率を求めた。測定条件は、周波数1Hz、昇温速度2℃/分とし、23℃の数値を貯蔵弾性率とした。
【0068】
〔評価結果〕
評価結果を図5に示す。
実施例1〜13の粘着テープについては、粘着力試験における粘着力は、いずれも〇と良好な結果で合格であった。
また、実施例1〜13の粘着テープについては、ピックアップ試験におけるピックアップ性は、◎または〇と良好な結果でいずれも合格であった。
さらに、実施例を詳細に比較すると、実施例5は放射線硬化性オリゴマーの水酸基価が3mgKOH/gと上限値であるため、ピックアップ性がわずかに劣っていた(半導体素子の割れ数:1個)。
また、実施例8は放射線硬化性オリゴマーの含有量が50質量部と比較的少ないため、貯蔵弾性率が7.0×10Paとやや低く、ピックアップ性がやや劣っていた(半導体素子の割れ数:2個)。
また、実施例9は放射線硬化性オリゴマーの重量平均分子量Mwが800とやや小さく、含有量が170質量部とやや多いため、貯蔵弾性率が1.0×10Paとやや高く、ピックアップ性がわずかに劣っていた(半導体素子の割れ数:1個)。
また、実施例11は放射線硬化性オリゴマーの含有量が180質量部とやや多いため、貯蔵弾性率が7.5×10Paとわずかに高く、ピックアップ性がわずかに劣っていた(半導体素子の割れ数:1個)。
また、実施例12は放射線硬化性オリゴマーの含有量が190質量部と比較的多いため、貯蔵弾性率が1.0×10Paとやや高く、ピックアップ性がやや劣っていた(半導体素子の割れ数:2個)。
【0069】
これに対し、比較例1、比較例3、4の粘着テープについては、粘着力試験において、粘着剤層の粘着力が過度に大きく×の評価で不合格であった。
また、比較例1〜4の粘着テープについては、ピックアップ試験におけるピックアップ性について、いずれも×の評価で不合格であった。
すなわち、比較例1は、放射線硬化性オリゴマーの分子中における放射線重合性炭素−炭素結合の数が下限値を下回る2つであり、放射線照射後に粘着剤層が十分に硬化・収縮できずに粘着力が十分に低下しなかったため、個片化された半導体チップを粘着テープから剥がし取りにくくなり、ピックアップ性が低下した。
また、比較例2では、放射線硬化性オリゴマーの重量平均分子量Mwが下限値を下回る200であり、放射線照射後に粘着力は低下するものの、オリゴマー同士の架橋密度が高くなる影響により硬くなり、曲げ弾性率が高くなるため、個片化された半導体チップを粘着テープから剥がし取る際に割れが生じ、ピックアップ性が低下した。
また、比較例3では、放射線硬化性オリゴマーの重量平均分子量Mwが、上限値を上回る6500であり、放射線照射後に粘着剤層が十分に硬化・収縮できずに粘着力が十分に低下しなかったため、個片化された半導体チップを粘着テープから剥がし取りにくくなり、ピックアップ性が低下した。
また、比較例4では、放射線硬化性オリゴマーの水酸基価が、上限値を上回る5mgKOH/gであり、鏡面研磨した直後の半導体ウェハに対して粘着テープを貼り付けた際に粘着力が過度に大きくなり、放射線照射しても粘着力が十分に低下しなかったため、個片化された半導体チップを粘着テープから剥がし取りにくくなり、ピックアップ性が低下した。
【0070】
実施例1〜13および比較例1〜4の結果により、アクリル酸エステル系共重合体が、官能基として水酸基、カルボキシル基のうちのいずれか一つを有すること、および、放射線硬化性オリゴマーが、重量平均分子量Mwが500以上6000以下であって分子中に放射線重合性炭素−炭素二重結合を3つ以上有し水酸基価が3mgKOH/g以下であることを要することが確認された。
【符号の説明】
【0071】
1…粘着テープ、2…基材、3…粘着剤層
図1
図2
図3
図4
図5