(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6917230
(24)【登録日】2021年7月21日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】放熱器およびこれを用いた液冷式冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20210729BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-140650(P2017-140650)
(22)【出願日】2017年7月20日
(65)【公開番号】特開2019-21825(P2019-21825A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年1月31日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592108676
【氏名又は名称】日伸工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】松島 誠二
(72)【発明者】
【氏名】米川 喬士
【審査官】
多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−159254(JP,A)
【文献】
特開2009−170607(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0026073(US,A1)
【文献】
特開2012−037136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34−23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂壁、底壁および周壁を有するケーシングを備えており、ケーシング内に、ケーシング内に流入した冷却液が流れる冷却液流路が設けられ、ケーシングの頂壁外面および底壁外面のうち少なくともいずれか一方に設けられた発熱体取付部に取り付けられる発熱体を、冷却液流路を流れる冷却液により冷却する液冷式冷却装置において、ケーシング内の冷却液流路に配置されて発熱体から発せられる熱を冷却液に放熱する放熱器であって、
互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の縦長方形状フィンプレートからなり、フィンプレートが、長手方向が冷却液流路における冷却液の流れ方向を向くとともに幅方向が上下方向を向いた状態で、厚み方向に間隔をおいて配置されており、隣り合う2つのフィンプレートに、当該両フィンプレート間の間隔を一定に保持する間隔保持部が、フィンプレートの長手方向に間隔をおいて少なくとも2つ設けられ、間隔保持部が、隣り合う2つのフィンプレートに具備させられた互いに平行となる平坦部分、隣り合う2つのフィンプレートのうちの一方のフィンプレートの平坦部分における同他方のフィンプレートの平坦部分を向いた面に形成された凹所、および隣り合う2つのフィンプレートのうちの他方のフィンプレートの平坦部分に前記一方のフィンプレート側に突出するように設けられ、かつ先端側の一部が凹所に嵌め入れられた凸部からなり、当該凸部における凹所内に嵌め入れられた部分の外周面と、凹所の内周面との間の摩擦力により凸部が凹所内に保持されることによって隣り合う2つのフィンプレートどうしが固定されており、隣り合う2つのフィンプレートの平坦部分間の間隔が、凸部における凹所外に存在する部分の長さと等しくなっており、
前記凸部の先端面に凹みが形成されている放熱器。
【請求項2】
隣り合う2つのフィンプレートに2つの間隔保持部が設けられており、第1の間隔保持部がフィンプレートの長手方向の一端寄りの部分に設けられ、第2の間隔保持部がフィンプレートの長手方向の他端寄りの部分に設けられ、第1の間隔保持部の凹所および凸部がフィンプレートの上側縁部寄りに位置し、第2の間隔保持部の凹所および凸部がフィンプレートの下側縁部寄りに位置している請求項1記載の放熱器。
【請求項3】
フィンプレートが長方形の平板状であり、フィンプレートにおける幅方向と直交する平面で切断した形状が、冷却液の流れ方向にのびる一直線状であり、冷却液が、隣り合う2つのフィンプレート間を真っ直ぐに流れるようになされている請求項1または2に記載の放熱器。
【請求項4】
第1の間隔保持部および第2の間隔保持部に対してフィンプレートの長手方向に離間した位置に、第3の間隔保持部が設けられており、第3の間隔保持部の凹所および凸部がフィンプレートの上下方向の中間部に位置している請求項3記載の放熱器。
【請求項5】
フィンプレートにおける第1の間隔保持部と第2の間隔保持部との間の部分の幅方向と直交する平面で切断した形状が波形であり、冷却液が、隣り合う2つのフィンプレート間を蛇行状に流れるようになされている請求項2記載の放熱器。
【請求項6】
各フィンプレートに、複数の貫通穴が形成されている請求項1〜5のうちのいずれかに記載の放熱器。
【請求項7】
前記凹みの内周面は、凹みの底側に向かって径方向内方に傾斜した傾斜面となっている請求項1〜6のうちのいずれかに記載の放熱器。
【請求項8】
頂壁、底壁および周壁を有するケーシングを備えており、ケーシング内に、冷却液が流れる冷却液流路と、冷却液流路よりも上流側に位置しかつ冷却液が流入する入口ヘッダ部と、冷却液流路よりも下流側に位置しかつ冷却液が流出する出口ヘッダ部とが設けられており、ケーシングの頂壁外面および底壁外面のうち少なくともいずれか一方に発熱体取付部が設けられ、ケーシング内の冷却液流路に、発熱体取付部に取り付けられる発熱体から発せられる熱を、冷却液流路を流れる冷却液に放熱する放熱器が配置されている液冷式冷却装置において、
請求項1〜7のうちのいずれかに記載された放熱器が、フィンプレートの長手方向が入口ヘッダ部と出口ヘッダ部とを結ぶ方向を向くとともに、幅方向が上下方向に向くように冷却液流路に配置されており、全てのフィンプレートの上下両側縁部のうち少なくとも外面に発熱体取付部が設けられている壁側の側縁部が、外面に発熱体取付部が設けられている壁に接合されている液冷式冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は放熱器およびこれを用いた液冷式冷却装置に関し、さらに詳しくいえば、たとえば半導体素子などの電子部品からなる発熱体を冷却する液冷式冷却装置に用いられる放熱器およびこれを用いた液冷式冷却装置に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、
図2の上下を上下というもとのとする。
【背景技術】
【0003】
たとえば、電気自動車、ハイブリッド自動車、電車などに搭載される電力変換装置に用いられるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワーデバイス(半導体素子)を冷却する液冷式冷却装置として、特許文献1記載のものが提案されている。
【0004】
特許文献1記載の液冷式冷却装置は、頂壁、底壁および周壁を有するケーシングを備えており、ケーシング内に、冷却液が流れる冷却液流路と、冷却液流路よりも上流側に位置しかつ冷却液が流入する入口ヘッダ部と、冷却液流路よりも下流側に位置しかつ冷却液が流出する出口ヘッダ部とが設けられており、ケーシング内の冷却液流路に、ケーシングの頂壁外面および底壁外面のうち少なくともいずれか一方に取り付けられる発熱体から発せられる熱を、冷却液流路を流れる冷却液に放熱する放熱器が配置され、放熱器が、互いに間隔をおいて並列状に配置されるとともに上下両側縁部がケーシングの頂壁および底壁にろう付された複数の縦長方形状フィンプレートからなり、端部のフィンプレートを除いたフィンプレートの両面には、複数の凸部が点在するように設けられ、隣り合うフィンプレートの凸部どうしが接触した状態でろう付されている。
【0005】
特許文献1記載の液冷式冷却装置は、複数のフィンプレートを、隣り合うフィンプレートの凸部どうしが接触するように積層し、これをケーシングを構成する上下1対のプレート間に配置し、両本体プレートのフランジ部どうし、両本体プレートとフィンプレートの上下両側縁部、および隣り合うフィンプレートの凸部どうしを一括してろう付することを含む方法で製造される。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の液冷式冷却装置の放熱器は、両本体プレートとフィンプレートとのろう付、および隣り合うフィンプレートの凸部どうしのろう付前の状態においては、全フィンプレートがばらばらの状態であるから、全フィンプレートの位置がずれることがあり、液冷式冷却装置を製造する際に、全フィンプレートの取扱が面倒になって、液冷式冷却装置の製造作業が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−37136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記問題を解決し、液冷式冷却装置を製造する際の全フィンプレートの取扱性が向上した放熱器およびこれを用いた液冷式冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)頂壁、底壁および周壁を有するケーシングを備えており、ケーシング内に、ケーシング内に流入した冷却液が流れる冷却液流路が設けられ、ケーシングの頂壁外面および底壁外面のうち少なくともいずれか一方に取り付けられる発熱体を、冷却液流路を流れる冷却液により冷却する液冷式冷却装置において、ケーシング内の冷却液流路に配置されて発熱体から発せられる熱を冷却液に放熱する放熱器であって、
互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の縦長方形状フィンプレートからなり、フィンプレートが、長手方向が冷却液流路における冷却液の流れ方向を向くとともに幅方向が上下方向を向いた状態で、厚み方向に間隔をおいて配置されており、隣り合う2つのフィンプレートに、当該両フィンプレート間の間隔を一定に保持する間隔保持部が、フィンプレートの長手方向に間隔をおいて少なくとも2つ設けられ、間隔保持部が、隣り合う2つのフィンプレートに具備させられた互いに平行となる平坦部分、隣り合う2つのフィンプレートのうちの一方のフィンプレートの平坦部分における同他方のフィンプレートの平坦部分を向いた面に形成された凹所、および隣り合う2つのフィンプレートのうちの他方のフィンプレートの平坦部分に前記一方のフィンプレート側に突出するように設けられ、かつ先端側の一部が凹所に嵌め入れられた凸部からなり、当該凸部における凹所内に嵌め入れられた部分の外周面と、凹所の内周面との間の摩擦力により凸部が凹所内に保持されることによって隣り合う2つのフィンプレートどうしが固定されており、隣り合う2つのフィンプレートの平坦部分間の間隔が、凸部における凹所外に存在する部分の長さと等しくなっている放熱器。
【0011】
2)隣り合う2つのフィンプレートに2つの間隔保持部が設けられており、第1の間隔保持部がフィンプレートの長手方向の一端寄りの部分に設けられ、第2の間隔保持部がフィンプレートの長手方向の他端寄りの部分に設けられ、第1の間隔保持部の凹所および凸部がフィンプレートの上側縁部寄りに位置し、第2の間隔保持部の凹所および凸部がフィンプレートの下側縁部寄りに位置している上記1)記載の放熱器。
【0012】
3)フィンプレートが長方形の平板状であり、フィンプレートにおける幅方向と直交する平面で切断した形状が、冷却液の流れ方向にのびる一直線状であり、冷却液が、隣り合う2つのフィンプレート間を真っ直ぐに流れるようになされている上記2)記載の放熱器。
【0013】
4)第1の間隔保持部および第2の間隔保持部に対してフィンプレートの長手方向に離間した位置に、第3の間隔保持部が設けられており、第3の間隔保持部の凹所および凸部がフィンプレートの上下方向の中間部に位置している上記3)記載の放熱器。
【0014】
5)フィンプレートにおける第1の間隔保持部と第2の間隔保持部との間の部分の幅方向と直交する平面で切断した形状が波形であり、冷却液が、隣り合う2つのフィンプレート間を蛇行状に流れるようになされている上記2)記載の放熱器。
【0015】
6)各フィンプレートに、複数の貫通穴が形成されている上記1)〜5)のうちのいずれかに記載の放熱器。
【0016】
7)頂壁、底壁および周壁を有するケーシングを備えており、ケーシング内に、冷却液が流れる冷却液流路と、冷却液流路よりも上流側に位置しかつ冷却液が流入する入口ヘッダ部と、冷却液流路よりも下流側に位置しかつ冷却液が流出する出口ヘッダ部とが設けられており、ケーシングの頂壁外面および底壁外面のうち少なくともいずれか一方に発熱体取付部が設けられ、ケーシング内の冷却液流路に、発熱体取付部に取り付けられる発熱体から発せられる熱を、冷却液流路を流れる冷却液に放熱する放熱器が配置されている液冷式冷却装置において、
上記1)〜6)のうちのいずれかに記載された放熱器が、フィンプレートの長手方向が入口ヘッダ部と出口ヘッダ部とを結ぶ方向を向くとともに、幅方向が上下方向に向くように冷却液流路に配置されており、全てのフィンプレートの上下両側縁部のうち少なくとも外面に発熱体取付部が設けられている壁側の側縁部が、外面に発熱体取付部が設けられている壁に接合されている液冷式冷却装置。
【発明の効果】
【0017】
上記1)〜6)の放熱器によれば、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の縦長方形状フィンプレートからなり、フィンプレートが、長手方向が冷却液流路における冷却液の流れ方向を向くとともに幅方向が上下方向を向いた状態で、厚み方向に間隔をおいて配置されており、隣り合う2つのフィンプレートに、当該両フィンプレート間の間隔を一定に保持する間隔保持部が、フィンプレートの長手方向に間隔をおいて少なくとも2つ設けられ、間隔保持部が、隣り合う2つのフィンプレートに具備させられた互いに平行となる平坦部分、隣り合う2つのフィンプレートのうちの一方のフィンプレートの平坦部分における同他方のフィンプレートの平坦部分を向いた面に形成された凹所、および隣り合う2つのフィンプレートのうちの他方のフィンプレートの平坦部分に前記一方のフィンプレート側に突出するように設けられ、かつ先端側の一部が凹所に嵌め入れられた凸部からなり、当該凸部における凹所内に嵌め入れられた部分の外周面と、凹所の内周面との間の摩擦力により凸部が凹所内に保持されることによって隣り合う2つのフィンプレートどうしが固定されており、隣り合う2つのフィンプレートの平坦部分間の間隔が、凸部における凹所外に存在する部分の長さと等しくなっているので、上記1)〜6)の放熱器を用いた液冷式冷却装置を製造する際の全フィンプレートの取扱性が向上し、液冷式冷却装置の製造作業が簡単になる。
【0018】
また、全フィンプレートの厚みおよび形状、ならびに隣り合う2つのフィンプレート間の間隔を、冷却性能を向上させる上で効果的なものとすることが可能になる。
【0019】
上記5)の放熱器を使用した液冷式冷却装置においては、冷却液が、隣り合う2つのフィンプレート間を、フィンプレートに沿って蛇行状に流れることになり、フィンプレートにおける伝熱に有効に働く面積が効果的に増大し、冷却性能を向上させることができる。
【0020】
上記7)の液冷式冷却装置によれば、製造時には、放熱器の隣り合う2つのフィンプレートどうしが固定されることにより全フィンプレートが一体化されているので、全フィンプレートの取扱性が向上し、製造作業が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明による放熱器を使用した液冷式冷却装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す液冷式冷却装置に使用する放熱器を部分的に示す斜視図である。
【
図7】
図1に示す液冷式冷却装置に使用する放熱器の第1の変形例を部分的に示す斜視図である。
【
図8】
図1に示す液冷式冷却装置に使用する放熱器の第2の変形例を部分的に示す斜視図である。
【
図9】
図1に示す液冷式冷却装置に使用する放熱器の第3の変形例を部分的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0023】
全図面を通じて同一物および同一部分には同一符号を付す。
【0024】
この明細書において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0025】
また、以下の説明において、
図2および
図3の左右を左右といい、
図3の上側(
図5および
図6の右側)を前、これと反対側を後というものとする。
【0026】
図1〜
図3はこの発明による放熱器を使用した液冷式冷却装置を示し、
図4〜
図6は放熱器を示す。
【0027】
図1〜
図3において、液冷式冷却装置(1)は、頂壁(2a)、底壁(2b)および周壁(2c)を有するケーシング(2)を備えており、ケーシング(2)内に、冷却液がケーシング(2)の長手方向の片側(右側)から他側(左側)に流れる冷却液流路(3)と、冷却液流路(3)よりも上流側(右側)に位置しかつ冷却液が流入する入口ヘッダ部(4)と、冷却液流路(3)よりも下流側(左側)に位置しかつ冷却液が流出する出口ヘッダ部(5)とが設けられたものである。ケーシング(2)内の冷却液流路(3)に、ケーシング(2)の頂壁(2a)外面および底壁(2b)外面のうち少なくともいずれか一方、図示の例では頂壁(2a)外面に設けられた発熱体取付部(10)に取り付けられている発熱体(P)から発せられる熱を、冷却液流路(3)を流れる冷却液に放熱する放熱器(6)が配置されている。
【0028】
ケーシング(2)は、頂壁(2a)および周壁(2c)を構成する下方に開口した箱状のアルミニウム製上構成部材(7)を、底壁(2b)を構成する板状のアルミニウム製下構成部材(8)上にろう材により接合(ろう材による接合をろう付と称する)することにより形成されている。上構成部材(7)および下構成部材(8)は、少なくとも一面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートを使用して、ろう材層がケーシング(2)内側に位置するように形成されている。
【0029】
ケーシング(2)内の入口ヘッダ部(4)および出口ヘッダ部(5)は、それぞれ冷却液流路(3)の幅方向(前後方向)にのびており、ケーシング(2)の頂壁(2a)の一端寄り(右端寄り)の部分でかつ前後方向の中央部に、入口ヘッダ部(4)に通じる冷却液入口(9)が形成され、ケーシング(2)の頂壁(2a)の他端寄り(左端寄り)の部分でかつ前後方向の中央部に、出口ヘッダ部(5)に通じる冷却液出口(11)が形成されている。また、ケーシング(2)の頂壁(2a)に、冷却液入口(7)を通して入口ヘッダ部(4)内に冷却液を送り込むアルミニウム製入口パイプ(12)と、冷却液出口(11)を通して出口ヘッダ部(5)内から冷却液を送り出すアルミニウム製出口パイプ(13)とがろう付されている。
【0030】
発熱体(P)は、IGBTなどのパワーデバイスや、IGBTが制御回路と一体化されて同一パッケージに収納されたIGBTモジュールや、IGBTモジュールにさらに保護回路が一体化されて同一パッケージに収納されたインテリジェントパワーモジュールなどからなり、絶縁部材(I)を介してケーシング(2)の頂壁(2a)外面に設けられた発熱体取付部(10)に取り付けられる。
【0031】
放熱器(6)は、長手方向を冷却液流路(3)における冷却液の流れ方向(左右方向)に向けるとともに幅方向を上下方向に向けた状態で、前後方向(厚み方向)に間隔をおいて並列状に配置された複数の縦長方形状アルミニウム製フィンプレート(14)からなる。放熱器(6)の隣り合う2つのフィンプレート(14)間、および両端のフィンプレート(14)とケーシング(2)の周壁(2c)における前後両側部分との間に冷却液が流れる分割流路(15)となっている。
【0032】
図4〜
図6に示すように、放熱器(6)における隣り合う2つのフィンプレート(14)に、当該両フィンプレート(14)間の間隔を一定に保持する間隔保持部(16A)(16B)が、フィンプレート(14)の長手方向に間隔をおいて少なくとも2つ設けられている。この実施形態においては、2つの間隔保持部(16A)(16B)が設けられており、第1の間隔保持部(16A)が両フィンプレート(14)の長手方向の右端寄りの部分に設けられ、第2の間隔保持部(16B)が両フィンプレート(14)の長手方向の左端寄りの部分に設けられている。各間隔保持部(16A)(16B)は、隣り合う2つのフィンプレート(14)に具備させられた互いに平行となる平坦部分(17)、隣り合う2つのフィンプレート(14)のうちの一方、ここでは後側フィンプレート(14)の平坦部分(17)における同他方の前側フィンプレート(14)の平坦部分(17)を向いた面に形成された凹所(18)、および隣り合う2つのフィンプレート(14)のうちの他方、ここでは前側フィンプレート(14)の平坦部分(17)に第1フィンプレート(14)側に突出するように設けられ、かつ先端側の一部が凹所(18)に嵌め入れられた凸部(19)からなる。第1の間隔保持部(16A)の凹所(18)および凸部(19)はフィンプレート(14)の上側縁部寄りに位置し、第2の間隔保持部(16B)の凹所(18)および凸部(19)はフィンプレート(14)の下側縁部寄りに位置している。
【0033】
フィンプレート(14)は長方形の平板状であり、フィンプレート(14)における幅方向と直交する平面で切断した形状が、冷却液の流れ方向にのびる一直線状となっており、冷却液が、冷却液流路(3)の分割流路(15)を、入口ヘッダ部(4)側(右側)から出口ヘッダ部(5)側(左側)に向かって真っ直ぐに流れるようになされている。そして、すべてのプレートフィン(14)に、2つの平坦部分(17)、凹所(18)および凸部(19)が設けられており、凸部(19)の先端側の一部が凹所(18)内に嵌め入れられることによって放熱器(6)が構成されている。全てのフィンプレート(14)の上下両側縁部は、ケーシング(2)の頂壁(2a)および底壁(2b)にそれぞれろう付されており、これにより全てのフィンプレート(14)の上下両側縁部のうち少なくとも外面に発熱体取付部(10)が設けられている頂壁(2a)側の側縁部が頂壁(2a)にろう付されている。
【0034】
図6に示すように、凹所(18)は有底円筒穴状であり、その開口端部に大径部(18a)が形成されている。凸部(19)は円柱状であり、その先端面に凹み(19a)が形成されている。凹所(18)の底面は、凸部(19)の高さ方向の中間部で、かつ凹所(18)が形成された第1フィンプレート(14)における第2フィンプレート(14)側を向いた面よりも第2フィンプレート(14)側に位置している。凸部(19)の先端面の凹み(19a)の内周面は、凹み(19a)の底側に向かって径方向内方に傾斜した傾斜面となっている。ここで、凸部(19)における第1フィンプレート(14)側を向いた面からの突出高さHは、フィンプレート(14)の肉厚tの0.7倍以上となっている(H≧0.7t)ことが好ましい。凸部(19)は凹所(18)内に圧入されており、凸部(19)における凹所(18)内に嵌め入れられた部分の外周面と、凹所(18)の内周面との間の摩擦力により凸部(19)が凹所(18)内に保持されることによって隣り合う2つのフィンプレート(14)どうしが固定され、隣り合う2つのフィンプレート(14)の平坦部分(17)間の間隔が、凸部(19)における凹所(18)外に存在する部分の長さと等しくなっている。なお、凸部(19)の先端面に凹み(19a)が形成されることによって、凸部(19)の凹所(18)内への圧入作業が容易になる。ここでは、フィンプレート(14)は長方形の平板状であり、フィンプレート(14)における幅方向と直交する平面で切断した形状が、冷却液の流れ方向にのびる一直線状となっているので、冷却液流路(3)の隣り合うフィンプレート(14)間の分割流路(15)の幅が、凸部(19)における凹所(18)外に存在する部分の長さと等しくなっている。
【0035】
上記構成の液冷式冷却装置(1)において、入口パイプ(12)から冷却液入口(9)を通って入口ヘッダ部(4)内に流入した冷却液は、冷却液流路(3)の前後両端の分割流路(15)、および冷却液流路(3)に配置された放熱器(6)の隣り合う2つのフィンプレート(14)間の分割流路(15)に分流し、各分割流路(15)内を左方に流れる。冷却液流路(3)の分割流路(15)を左方に流れた冷却液は、出口ヘッダ部(5)内に入り、冷却液出口(11)を通って出口パイプ(13)により送り出される。
【0036】
そして、発熱体(P)から発せられる熱は、絶縁部材(I)、ケーシング(2)の頂壁(2a)および放熱器(6)の各フィンプレート(14)を経て冷却液流路(3)の各分割流路(15)内を流れる冷却液に放熱され、発熱体(P)が冷却される。
【0037】
図7は
図1の液冷式冷却装置に用いられる放熱器の第1の変形例を示す。
【0038】
図7に示す放熱器(20)の場合、隣り合う2つのフィンプレート(14)に、当該両フィンプレート(14)間の間隔を一定に保持する第3の間隔保持部(16C)が、第1の間隔保持部(16A)および第2の間隔保持部(16B)に対してフィンプレート(14)の長手方向に離間した位置に設けられている。ここでは、第3の間隔保持部(16C)は、両フィンプレート(14)の長手方向の中央部に設けられている。第3の間隔保持部(16C)の構成は第1および第2間隔保持部(16A)(16B)の構成と同様であって、隣り合う2つのフィンプレート(14)に具備させられた互いに平行となる平坦部分(17)、隣り合う2つのフィンプレート(14)のうちの一方、ここでは後側フィンプレート(14)の平坦部分(17)における同他方の前側フィンプレート(14)の平坦部分(17)を向いた面に形成された凹所(18)、および隣り合う2つのフィンプレート(14)のうちの他方、ここでは前側フィンプレート(14)の平坦部分(17)に第1フィンプレート(14)側に突出するように設けられ、かつ先端側の一部が凹所(18)に嵌め入れられた凸部(19)からなる。第3の間隔保持部(16C)の凹所(18)および凸部(19)が両フィンプレート(14)の上下方向の中間部に位置している。
【0039】
その他の構成は、上述した実施形態1の放熱器(6)と同様である。
【0040】
図8は
図1の液冷式冷却装置に用いられる放熱器の第2の変形例を示す。
【0041】
図8に示す放熱器(25)の場合、フィンプレート(14)における第1の間隔保持部(16A)と第2の間隔保持部(16B)との間の部分の幅方向と直交する平面で切断した形状が波形であり、冷却液が、隣り合う2つのフィンプレート(14)間を蛇行状に流れるようになされている。すなわち、フィンプレート(14)における両端部の平坦部分(17)を除いた部分の幅方向と直交する平面で切断した形状が波形となっている。
【0042】
その他の構成は、上述した実施形態1の放熱器(6)と同様である。
【0043】
図9は
図1の液冷式冷却装置に用いられる放熱器の第3の変形例を示す。
【0044】
図9に示す放熱器(30)の場合、フィンプレート(14)における第1の間隔保持部(16A)と第2の間隔保持部(16B)との間の部分、すなわちフィンプレート(14)における両端部の平坦部分(17)を除いた部分に複数の貫通穴(31)が形成されている。ここでは、複数の貫通穴(31)は縦横に並んで形成されている。
【0045】
その他の構成は、上述した実施形態1の放熱器(6)と同様である。
【0046】
なお、
図7および
図8に示す放熱器(20)(25)のフィンプレート(14)における隣り合う間隔保持部(16A)(16B)(16C)間、すなわち放熱器(20)(25)のフィンプレート(14)における隣り合う平坦部分(17)間にも、複数の貫通穴(31)が形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
この発明による放熱器は、電気自動車、ハイブリッド自動車、電車などに搭載される電力変換装置に用いられるIGBTなどのパワーデバイスを冷却するの液冷式冷却装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0048】
(1):液冷式冷却装置
(2):ケーシング
(2a):頂壁
(2b):底壁
(2c):周壁
(3):冷却液通路
(4):入口ヘッダ部
(5):出口ヘッダ部
(6)(20)(25)(30):放熱器
(10):発熱体取付部
(14):フィンプレート
(16A)(16B)(16C):間隔保持部
(17):平坦部分
(18):凹所
(19):凸部
(31):貫通穴