(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2制音体は、タイヤ幅方向断面視において、前記第1制音体のうち、前記タイヤ内面に固着されている固着面と反対側に位置する内側面の少なくとも一部を覆っており、
前記通信装置は、前記第1制音体の前記内側面と前記第2制音体との間で保持されている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
前記第2制音体は、タイヤ幅方向断面視において、前記第1制音体のうち、前記内側面と連続し、前記タイヤ内面に沿う方向の両側に位置する、端面の少なくとも一部を覆っている、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
前記第1制音体は、タイヤ幅方向断面視において、前記タイヤ内面に沿う方向の、前記通信装置を挟む両側で、前記第2制音体と固着されている、請求項2乃至6のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に記載されているように、空気入りタイヤ及びリムで区画されるタイヤ内腔にスポンジ材を配置することにより、空洞共鳴エネルギーを別のエネルギーに変換等して吸音し、空洞共鳴音を低減することができる。更に、特許文献1では、通信装置としての無線タグを、スポンジ材に取り付けることにより、無線タグを衝撃や振動などから保護している。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、走行中の衝撃や振動等により、無線タグがスポンジ材からタイヤ内腔に脱落するおそれが依然としてある。そのため、スポンジ材による無線タグの位置固定性を向上させることが好ましい。また、無線タグを衝撃や振動等から保護すべく、スポンジ材を軟質の材料で形成すると、スポンジ材は、走行時の衝撃、振動、タイヤ内腔の気流、等により変形し易くなる。スポンジ材が繰り返し変形すると、スポンジ材の表面からスポンジ材の小片が分離する破損が生じ易く、分離したスポンジ材の小片が、タイヤ内腔に散らばるおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、スポンジ材による通信装置の保護に加えて、スポンジ材による通信装置の位置固定性の向上と、スポンジ材の耐久性の向上と、の両立を実現可能な構成を備える、空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様としての空気入りタイヤは、タイヤ内面に固着されている、スポンジ材からなる第1制音体と、前記第1制音体のタイヤ内空間側に配置されている、スポンジ材からなる第2制音体と、前記第1制音体と前記第2制音体との間で保持されている通信装置と、を備え、前記第2制音体は、前記第1制音体よりも硬い。
上記構成を備えることにより、スポンジ材による通信装置の保護に加えて、スポンジ材による通信装置の位置固定性の向上と、スポンジ材の耐久性の向上と、の両立を実現することができる。
【0009】
本発明の1つの実施形態として、前記第2制音体は、タイヤ幅方向断面視において、前記第1制音体のうち、前記タイヤ内面に固着されている固着面と反対側に位置する内側面の少なくとも一部を覆っており、前記通信装置は、前記第1制音体の前記内側面と前記第2制音体との間で保持されている。
上記構成を備えることにより、通信装置に対して、タイヤ内面側から衝撃や振動が伝わり難くする緩衝性能を、より高めることができる。
【0010】
本発明の1つの実施形態として、タイヤ幅方向断面視において、前記第1制音体の最小厚さは、前記第2制音体の最大厚さ以上である。
上記構成を備えることにより、通信装置に対して、タイヤ内面側から衝撃や振動が伝わり難くする緩衝性能を、より一層高めることができる。
【0011】
本発明の1つの実施形態として、前記第2制音体は、タイヤ幅方向断面視において、前記第1制音体の前記内側面の全域を覆っている。
上記構成を備えることにより、第1制音体の内側面の外縁部からスポンジ材の小片が分離することを抑制することができる。
【0012】
本発明の1つの実施形態として、前記第2制音体は、タイヤ幅方向断面視において、前記第1制音体のうち、前記内側面と連続し、前記タイヤ内面に沿う方向の両側に位置する、端面の少なくとも一部を覆っている。
上記構成を備えることにより、第1制音体の表面からスポンジ材の小片が分離することを、より抑制することができる。
【0013】
本発明の1つの実施形態として、前記第2制音体は、タイヤ幅方向断面視において、前記第1制音体の前記内側面及び前記端面の全域を覆っている。
上記構成を備えることにより、第1制音体の表面からスポンジ材の小片が分離することを、より一層抑制することができる。
【0014】
本発明の1つの実施形態として、前記第1制音体は、タイヤ幅方向断面視において、前記タイヤ内面に沿う方向の、前記通信装置を挟む両側で、前記第2制音体と固着されている。
上記構成を備えることにより、タイヤ幅方向断面視において、通信装置のタイヤ内面に沿う方向の移動を抑制することができる。
【0015】
本発明の1つの実施形態として、前記第1制音体及び前記第2制音体は、タイヤ周方向の全域に亘って延在している。
上記構成を備えることにより、空洞共鳴音を、より低減することができる。
【0016】
本発明の1つの実施形態として、前記第2制音体の前記タイヤ内空間側の面には、凹凸形状が形成されている。
上記構成を備えることにより、空洞共鳴音を、より低減することができると共に、第2制音体からの放熱性能を高めることができる。
【0017】
本発明の1つの実施形態として、前記凹凸形状は、タイヤ周方向に延在する複数の凸リブと、前記複数の凸リブ間に区画される凹溝と、により構成されている。
上記構成を備えることにより、空洞共鳴音を、より低減することができると共に、第2制音体からの放熱性能を、より高めることができる。
【0018】
本発明の1つの実施形態として、前記通信装置は、前記第1制音体及び前記第2制音体の少なくとも一方に固着されている。
上記構成を備えることにより、通信装置の位置固定性を、より高めることができる。
【0019】
本発明の1つの実施形態として、前記第1制音体及び前記第2制音体の少なくとも一方には凹部が形成されており、前記通信装置は、前記凹部に収容されている。
上記構成を備えることにより、通信装置の位置固定性を、より向上させることができる。
【0020】
本発明の1つの実施形態として、前記通信装置は、RFタグである。
上記構成を備えることにより、スポンジ材によるRFタグの保護に加えて、スポンジ材によるRFタグの位置固定性の向上と、スポンジ材の耐久性の向上と、の両立を実現することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、スポンジ材による通信装置の保護に加えて、スポンジ材による通信装置の位置固定性の向上と、スポンジ材の耐久性の向上と、の両立を実現可能な構成を備える、空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態について、
図1〜
図10を参照して例示説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0024】
<<第1実施形態>>
図1は、空気入りタイヤ1(以下、単に「タイヤ1」と記載する。)と、リム2と、を備える組立体100を示す図である。具体的に、
図1は、組立体100の、タイヤ回転軸を含み、タイヤ幅方向Aに平行な、断面を示す断面図(以下、「タイヤ幅方向断面図」と記載する。)である。
図2は、
図1に示すタイヤ1単体を示すタイヤ幅方向断面図である。
図3は、
図2に示すタイヤ1の一部であるトレッド部1aを拡大して示す拡大断面図である。換言すれば、
図2及び
図3に示すタイヤ1は、リム2に装着されていない状態を示している。
【0025】
図1に示すように、組立体100において、タイヤ1は、リム2に装着されている。組立体100は、タイヤ1の内面(以下、「タイヤ内面」と記載する。)とリム2の外面(以下、「リム外面」と記載する。)とで構成されるタイヤ内腔面により、環状のタイヤ内腔101を区画している。なお、
図2に示すように、タイヤ幅方向断面視において、タイヤ内面のみにより区画される、タイヤ径方向Bの内側が開放されている空間を、以下「タイヤ内空間102」と記載する。
【0026】
<リム2>
リム2は、タイヤ1の後述するビード部1cが装着されるリム本体2aと、このリム本体2aを保持し車軸に取り付けられるディスク2bと、を備えている。本実施形態のリム2は、金属製の2ピースホイールリムであるが、これに限定されるものではなく、1ピースリム等としてもよい。また、リム本体2aは、タイヤ1の後述するビード部材4がタイヤ径方向Bの外側に取り付けられるリムシート部2a1と、このリムシート部2a1のタイヤ幅方向Aの両端からタイヤ径方向Bの外側に突出するリムフランジ部2a2と、を備えている。
【0027】
<タイヤ1>
タイヤ1は、トレッド部1aと、このトレッド部1aのタイヤ幅方向Aの両端部からタイヤ径方向Bの内側に延びる一対のサイドウォール部1bと、各サイドウォール部1bのタイヤ径方向Bの内側の端部に設けられた一対のビード部1cと、を備えている。本実施形態のタイヤ1は、チューブレスタイプの乗用車用ラジアルタイヤである。ここで「トレッド部1a」とは、後述するベルト6のタイヤ幅方向A両側の最も外側に位置するベルト端Q(
図2参照)をそれぞれ通過するタイヤ径方向Bに平行する2つの平面P1、P2に挟まれる部分(ビード部1cを除く)を意味する。また、「ビード部1c」とは、タイヤ径方向Bにおいて後述するビード部材4が位置する部分を意味する。そして「サイドウォール部1b」とは、トレッド部1aとビード部1cとの間の部分を意味する。
【0028】
タイヤ内腔101を区画するタイヤ内面は、トレッド部1aの内面31(以下、「トレッド内面31」と記載する。)と、サイドウォール部1bの内面32(以下、「サイドウォール内面32」と記載する。)と、ビード部1cの内面33(以下、「ビード内面33」と記載する。)と、を備えている。
【0029】
タイヤ1は、制音体3、ビード部材4、カーカス5、ベルト6、トレッドゴム7、サイドゴム8、インナーライナ9、及び、通信装置10、を備えている。
【0030】
[制音体3]
制音体3は、第1制音体3a及び第2制音体3bを備えている。第1制音体3aは、スポンジ材により構成されている。また、第1制音体3aは、タイヤ内面に固着されている。第2制音体3bは、スポンジ材により構成されている。また、第2制音体3bは、第1制音体3aのタイヤ内空間102側(
図1の組立体100ではタイヤ内腔101側と同じ)に配置されている。タイヤ内腔101に、スポンジ材からなる、第1制音体3a及び第2制音体3bを配置することにより、タイヤ内腔101の空洞共鳴音を低減することができる。
【0031】
ここで、「第1制音体のタイヤ内空間側」とは、第1制音体に対して、タイヤ内空間が位置する側を意味しており、第1制音体のうち、タイヤ内面に固着されている固着面と反対の面側のみを意味するものではない。すなわち、本実施形態において、第1制音体3aのタイヤ内空間102側とは、
図3に示すタイヤ幅方向断面視において、第1制音体3aのタイヤ径方向Bの内側(
図3では下側)、及び、第1制音体3aのタイヤ幅方向Aの両側(
図3では左右両側)、を意味している。本実施形態の第2制音体3bは、第1制音体3aのタイヤ内空間102側としての、第1制音体3aのタイヤ径方向Bの内側に、配置されているが、この構成に限らず、第1制音体3aのタイヤ内空間102側としての、第1制音体3aのタイヤ幅方向Aの片側又は両側に、配置されている第2制音体としてもよい。
【0032】
第2制音体3bは、第1制音体3aよりも硬い。ここで言う「硬さ」とは、JIS K6400−2(2012)の第6項の「硬さ試験」の測定法のうち、6.4項のA法に準拠して測定された値とする。
【0033】
後述するように、通信装置10は、第1制音体3aと第2制音体3bとの間で保持されている。そのため、第1制音体3aを軟質のスポンジ材で形成することにより、第1制音体3aがタイヤ1のタイヤ内面側からの衝撃や振動などを吸収し、通信装置10に衝撃や振動が伝わることを抑制することができる。その一方で、第2制音体3bを硬質のスポンジ材で形成することにより、第2制音体3bが、路面走行時の衝撃、振動、タイヤ内腔の気流、等により変形することを抑制することができる。そのため、第2制音体3bの表面からスポンジ材の小片が分離する破損が発生し難くなる。つまり、第2制音体3bとして、第1制音体3aよりも硬いスポンジ材を用いれば、第2制音体として第1制音体3aと同じ又は軟らかいスポンジ材を用いる構成と比較して、第2制音体3bの耐久性を向上させることができる。更に、通信装置10が、第1制音体3aと第2制音体3bとの間で保持されているため、第2制音体3bがカバーとなり、通信装置10がタイヤ内空間102側に脱落し難い。これにより、通信装置10の位置固定性を向上させることができる。
【0034】
このように、第1制音体3a及び第2制音体3bの硬さを上述の硬さ関係にすると共に、第1制音体3a及び第2制音体3bの間で通信装置10を保持する構成とすることにより、スポンジ材による通信装置10の保護に加えて、スポンジ材による通信装置10の位置固定性の向上と、スポンジ材の耐久性の向上と、の両立を実現することができる。
【0035】
スポンジ材からなる第1制音体3a及び第2制音体3bの硬さは、25N〜55Nの範囲で、上述の硬さ関係となるように設定されることが好ましい。特に、第1制音体3aは、30N〜50Nの範囲から設定されることが好ましい。また、第2制音体3bは、35N〜45Nの範囲から設定されることが好ましい。
【0036】
第1制音体3a及び第2制音体3bを構成するスポンジ材は、海綿状の多孔構造体であり、例えばゴムや合成樹脂を発泡させた連続気泡を有する所謂スポンジを含む。また、スポンジ材は、上述のスポンジの他に、動物繊維、植物繊維又は合成繊維等を絡み合わせて一体に連結したウエブ状のものを含む。なお、上述の「多孔構造体」は、連続気泡を有する構造体に限らず、独立気泡を有する構造体も含む意味である。但し、吸音性能の観点では、連続気泡を有する構造体を用いることが好ましい。
【0037】
上述のようなスポンジ材は、表面や内部に形成される空隙が振動する空気の振動エネルギーを熱エネルギーに変換することにより吸音する。これにより、タイヤ内腔での空洞共鳴音が低減される。
【0038】
スポンジ材の材料としては、例えば、エーテル系ポリウレタンスポンジ、エステル系ポリウレタンスポンジ、ポリエチレンスポンジなどの合成樹脂スポンジ、クロロプレンゴムスポンジ(CRスポンジ)、エチレンプロピレンゴムスポンジ(EPDMスポンジ)、ニトリルゴムスポンジ(NBRスポンジ)などのゴムスポンジが挙げられる。制音性、軽量性、発泡の調節可能性、耐久性などの観点を考慮すれば、エーテル系ポリウレタンスポンジを含むポリウレタン系又はポリエチレン系等のスポンジを用いることが好ましい。
【0039】
また、スポンジ材の比重は、タイヤ重量の増加と空洞共鳴音を低減する効果との両方のバランスを考慮し、0.005〜0.06とすることが好ましく、0.01〜0.04とすることがより好ましく、0.01〜0.03とすることが特に好ましい。
【0040】
更に、第1制音体3aと第2制音体3bとの体積の和である制音体3の体積は、タイヤ内腔101の全体積の0.4%〜20%とすることが好ましい。タイヤ内腔の全体積に対して制音体3の体積を0.4%以上確保することにより、所望量(例えば2dB以上)の空洞共鳴音の低減効果を実現し易い。制音体3の体積は、タイヤ内腔101の全体積の1%以上とすることがより好ましく、2%以上とすることが更に好ましく、4%以上とすることが特に好ましい。その一方、制音体3の体積がタイヤ内腔101の全体積の20%を超えるように構成しても空洞共鳴音の低減効果の向上が期待できない。むしろ組立体100の重量バランスを悪化させる可能性がある。このような観点より、制音体3の体積は、タイヤ内腔101の全体積の16%以下とすることがより好ましく、10%以下とすることが特に好ましい。
【0041】
第1制音体3a及び第2制音体3bの更なる詳細については後述する。
【0042】
[ビード部材4]
ビード部材4は、ビード部1cに埋設されている。ビード部材4は、ビードコア4aと、このビードコア4aに対してタイヤ径方向Bの外側に位置するゴム製のビードフィラ4bと、を備えている。ビードコア4aは、周囲をゴムにより被覆されている複数のビードワイヤを備えている。ビードワイヤはスチールコードにより形成されている。スチールコードは、例えば、スチールのモノフィラメント又は撚り線からなるものとすることができる。なお、ビードワイヤとして、有機繊維やカーボン繊維等を用いてもよい。
【0043】
[カーカス5]
カーカス5は、一対のビード部1c間、より具体的には一対のビード部材4のビードコア4a間に跨っており、トロイダル状に延在している。また、カーカス5は、少なくともラジアル構造を有している。
【0044】
更に、カーカス5は、カーカスコードをタイヤ周方向C(
図7参照)に対して例えば75°〜90゜の角度で配列した1枚以上(本実施形態では1枚)のカーカスプライ5aから構成されている。このカーカスプライ5aは、一対のビードコア4a間に位置するプライ本体部と、このプライ本体部の両端で、ビードコア4aの廻りでタイヤ幅方向Aの内側から外側に折り返されるプライ折返し部と、を備えている。そして、プライ本体部とプライ折返し部との間には、ビードコア4aからタイヤ径方向Bの外側に先細状に延びるビードフィラ4bが配置されている。カーカスプライ5aを構成するカーカスコードとして、本実施形態ではポリエステルコードを採用しているが、これ以外にもナイロン、レーヨン、アラミドなどの有機繊維コードや、必要によりスチールコードを採用してもよい。また、カーカスプライ5aの枚数についても、2枚以上としてもよい。
【0045】
[ベルト6]
ベルト6は、カーカス5のクラウン部に対してタイヤ径方向Bの外側に配置されている1層以上(本実施形態では5層)のベルト層を備えている。具体的には、
図3に示すように、本実施形態のベルト6は、傾斜ベルト6aと、周方向ベルト6bと、を備えている。
【0046】
図2に示すように、傾斜ベルト6aは、カーカス5のクラウン部に対してタイヤ径方向Bの外側に配置されている1層以上(本実施形態では2層)の傾斜ベルト層を備えている。より具体的に、本実施形態の傾斜ベルト6aは、タイヤ径方向Bに積層されている、第1傾斜ベルト層6a1及び第2傾斜ベルト層6a2、を備えている。第1傾斜ベルト層6a1及び第2傾斜ベルト層6a2それぞれは、金属のベルトコードとしてのスチールコードをタイヤ周方向C(
図7参照)に対して10°〜40°の角度で傾斜配列したベルトプライから形成されている。2枚のベルトプライは、ベルトコードの傾斜の向きを互いに違えて重ね置きされている。そのため、ベルトコードがベルトプライ間相互で交差し、ベルト剛性が高められ、トレッド部1aの略全幅をタガ効果により補強することができる。本実施形態では、タイヤ径方向Bの外側に位置する第2傾斜ベルト層6a2を、タイヤ径方向Bの内側に位置する第1傾斜ベルト層6a1と比較し狭幅に形成している。そのため、本実施形態では、タイヤ径方向Bの内側に位置する第1傾斜ベルト層6a1は、タイヤ径方向Bの外側に位置する第2傾斜ベルト層6a2よりも、タイヤ幅方向Aの外側まで延在している。
【0047】
但し、タイヤ径方向Bの内側に位置する第1傾斜ベルト層を、タイヤ径方向Bの外側に位置する第2傾斜ベルト層と比較し狭幅に形成してもよい。つまり、タイヤ径方向Bの外側に位置する第2傾斜ベルト層が、タイヤ径方向Bの内側に位置する第1傾斜ベルト層よりも、タイヤ幅方向Aの外側まで延在する構成としてもよい。また、傾斜ベルト6aは、1層のみのベルト層で構成してもよく、3層以上のベルト層で構成してもよい。
【0048】
図2に示すように、周方向ベルト6bは、傾斜ベルト6aに対してタイヤ径方向Bの外側に配置されている1層以上(本実施形態では3層)の周方向ベルト層を備えている。より具体的に、周方向ベルト6bは、タイヤ径方向Bに積層されている、第1周方向ベルト層6b1、第2周方向ベルト層6b2及び第3周方向ベルト層6b3、を備えている。第1周方向ベルト層6b1、第2周方向ベルト層6b2及び第3周方向ベルト層6b3それぞれは、有機繊維のベルトコードとしてのナイロンコードをタイヤ周方向C(
図7参照)に対して10°以下、好ましくは5°以下の角度で、タイヤ回転軸回りに、螺旋状に巻回させたベルトプライから形成されている。
【0049】
本実施形態の周方向ベルト6bは、傾斜ベルト6aに対してタイヤ径方向Bの外側に配置されている3層の周方向ベルト層により構成されているが、この構成に限らず、2層以下又は4層以上の周方向ベルト層からなる周方向ベルトとしてもよい。また、周方向ベルト層同士のタイヤ幅方向Aの長さ関係、各周方向ベルト層と各傾斜ベルト層とのタイヤ幅方向Aの長さ関係、周方向ベルト層同士でのベルト端の位置関係、各周方向ベルト層と各傾斜ベルト層とでのベルト端の位置関係、等は、本実施形態の構成に限らず、所望の性能に応じて適宜設計可能であり、本実施形態のベルト構造に限られるものではない。
【0050】
[トレッドゴム7及びサイドゴム8]
トレッドゴム7は、トレッド部1aのタイヤ径方向Bの外側の面(以下、「トレッド外面」と記載する。)を構成しており、トレッド外面には、タイヤ周方向C(
図7参照)に延在する周方向溝7aや、タイヤ幅方向Aに延在する、図示しない幅方向溝等、を含むトレッドパターンが形成されている。サイドゴム8は、サイドウォール部1bのタイヤ幅方向Aの外側の面を構成しており、上述のトレッドゴム7と一体で形成されている。
【0051】
[インナーライナ9]
インナーライナ9は、カーカス5の内面に積層されており、空気透過性の低いブチル系ゴムにより形成されている。なお、ブチル系ゴムとは、ブチルゴム、及びその誘導体であるハロゲン化ブチルゴムを意味する。また、第1制音体3aは、このインナーライナ9に対して、両面粘着テープや接着剤等により、固着されている。そのため、インナーライナ9のうち、第1制音体3aが固着される領域を、接着性の向上のため、第1制音体3aが固着されない領域よりもブチル系ゴムの配合量が低い低ブチル配合領域としてもよい。
【0052】
[通信装置10]
通信装置10は、第1制音体3aと第2制音体3bとの間で保持されている。通信装置10は、タイヤ1の外部の所定の装置と無線通信可能な構成であればよく、通信装置10の構成は特に限定されるものではない。
図4は、通信装置10の一例としてのRFタグと、このRFタグと無線通信可能なリーダ/ライタ60と、を示す図である。
図4に示すように、RFタグは、タイヤ1の識別情報を記憶する記憶部10aと、タイヤ1の外部に位置するリーダ/ライタ60と送受信可能なアンテナ部10bと、記憶部10aへの情報の書き込み、及び、記憶部10aからの情報の読み出しが可能な制御部10cと、を備えるパッシブ型のRFタグとすることが好ましい。具体的に、通信装置10としてのRFタグは、リーダ/ライタ60のアンテナ部60aから、電波又は磁界に乗せて送信される情報を、アンテナ部10bにより受信可能である。整流(電波の場合)または共振(磁界の場合)により、RFタグのアンテナ部10bに電力が発生し、記憶部10a及び制御部10cが所定の動作を行う。例えば、制御部10cは、RFタグの記憶部10a内の情報を読み出し、電波または磁界に乗せてアンテナ部10bから、リーダ/ライタ60に返信(送信)する。リーダ/ライタ60のアンテナ部60aは、RFタグからの電波又は磁界を受信する。リーダ/ライタ60の制御部60bは、受信した情報を取り出すことで、RFタグの記憶部10aに記憶されている情報を取得することができる。なお、上述の記憶部10a及び制御部10cは、例えば、不揮発性メモリを含む集積回路(ICチップ)により構成することができる。
【0053】
通信装置10としてのRFタグの記憶部10aは、例えば、タイヤ1の製造メーカ、製造工場、製造年月日等の、各タイヤをタイヤ毎に特定できるタイヤ1の固有の識別情報を記憶している。また、記憶部10aに、リーダ/ライタ60により書き換え可能な情報として、タイヤの走行距離、急制動回数、急発信回数、急旋回回数等のタイヤ履歴情報を記憶させてもよい。更に、例えば、タイヤ内部温度、タイヤ内圧、タイヤ加速度等を検出するセンサがタイヤ内腔101に設けられており、記憶部10aが、これらセンサにより検出された検出情報を記憶してもよい。通信装置10としてのRFタグは、アンテナ部10bを通じて、センサと無線通信することで、センサの検出情報を取得することができる。
【0054】
なお、上述したように、通信装置10は、タイヤ1の外部の所定の装置と無線通信可能な構成であればよく、上述のRFタグに限らず、例えば、タイヤ1の加速度を検出する加速度センサや、タイヤ1の内圧を検出する内圧センサ等を通信装置10としてもよい。但し、通信装置10としては、単位時間当たりのタイヤ変位量などの距離的要素により測定精度が変動する、例えば加速度センサなどのセンサではなく、上述の距離的要素とは関係しないRFタグとすることが好ましい。加速度センサ等の距離的要素により測定精度が変動するセンサは、第1制音体3aによりタイヤ変位が吸収されると、高精度な測定ができないおそれがあるためである。その一方でRFタグは、タイヤ1の変形、衝撃、振動等により歪が生じて破損するおそれがある。そのため、RFタグの場合には、タイヤ1のタイヤ内面側からの衝撃や振動などを第1制音体3aで吸収させ、RFタグに衝撃や振動が伝わり難くすることが好ましい。
【0055】
図5、
図6は、本実施形態の通信装置10としてのRFタグを示す斜視図である。
図5に示すように、本実施形態の通信装置10としてのRFタグは、アンテナ部10bを構成する第1アンテナ10b1及び第2アンテナ10b2と、これら第1アンテナ10b1及び第2アンテナ10b2で受信する電波により発生する誘電起電力により稼働する、制御部10c及び記憶部10aを構成するICチップ13と、このICチップ13が取り付けられている板状の支持部材10dと、ICチップ13と、第1アンテナ10b1及び第2アンテナ10b2それぞれと、を電気的に接続する導電性の導通部材10eと、を備えている。
図6は、
図5に示す通信装置10としてのRFタグが、被覆部10fにより被覆されている状態を示す斜視図である。被覆部10fは、ゴム又は樹脂から形成されている。本実施形態では、
図6に示すように周囲が被覆部10fにより被覆されている状態の、通信装置10としてのRFタグが、第1制音体3a及び第2制音体3bの間で保持されている。
【0056】
なお、通信装置10としてのRFタグは、第1制音体3a及び第2制音体3bの間で保持されている構成であれば、保持する具体的構成については特に限定されるものではない。したがって、通信装置10を、第1制音体3aと第2制音体3bとの間で、第1制音体3a及び第2制音体3bにより挟持することにより、保持する構成としてもよい。このような構成は、例えば、第1制音体3aと第2制音体3bを、タイヤ幅方向断面視(
図3等参照)において、タイヤ内面に沿う方向(
図3ではタイヤ幅方向Aに略等しい方向)の離れた別々の位置で固着し、通信装置10としてのRFタグを、第1制音体3a及び第2制音体3bが固着されていない箇所に挟持させて保持させることにより、実現可能である。但し、通信装置10としてのRFタグは、第1制音体3a及び第2制音体3bの少なくとも一方に、接着剤等により、固着されていることが好ましい。このようにすれば、通信装置10の位置固定性を高めることができる。本実施形態の通信装置10としてのRFタグは、第1制音体3a及び第2制音体3bに対して、接着剤により固着されている。通信装置10が少なくとも第1制音体3aに固着している構成とすれば、通信装置10と第1制音体3aとが一体化するため、路面走行時にタイヤ内面側から通信装置10に加わる衝撃、振動等を、第1制音体3aにより常時軽減することができる。更に、通信装置10が、第1制音体3aのみならず、第2制音体3bにも固着されている構成とすれば、通信装置10と第2制音体3bとが一体化するため、路面走行時の衝撃や振動等により、通信装置10と第2制音体3bとが繰り返し衝突することを防ぐことができる。これにより、通信装置10が破損等することを抑制することができ、通信装置10の耐久性を向上させることができる。
【0057】
[第1制音体3a及び第2制音体3b]
次に、第1制音体3a及び第2制音体3bの構成の詳細について説明する。
【0058】
図7は、タイヤ1単体についてのタイヤ赤道面CLに沿う断面図(以下、「タイヤ周方向断面図」と記載する。)である。
図7に示すように、本実施形態の第1制音体3a及び第2制音体3bは、タイヤ周方向Cの全域に亘って延在する帯状部材であり、タイヤ周方向Cの任意の位置でのタイヤ幅方向断面図(
図2等参照)において、略同一の断面外形を有している。第1制音体3a及び第2制音体3bは、その間に通信装置10が保持されていれば、タイヤ周方向Cの一部のみに設けられていてもよい。但し、本実施形態のように、第1制音体3a及び第2制音体3bを、タイヤ周方向Cの全域に亘って設けることが好ましい。このようにすれば、第1制音体及び第2制音体をタイヤ周方向Cの一部のみに設ける構成と比較して、タイヤ内腔101内でのスポンジ材の体積を増加させることができ、タイヤ内腔101の空洞共鳴音を、より低減することができる。
【0059】
本実施形態において、第1制音体3a及び第2制音体3bそれぞれは、タイヤ幅方向断面視(
図3等参照)において扁平形状を有している。
【0060】
第1制音体3aは、タイヤ内面のうちトレッド内面31に固着されており、タイヤ幅方向断面視(
図3等参照)において、タイヤ内面と直交する直交方向の最大厚さT1(本実施形態ではタイヤ径方向Bの最大長さに略等しい)よりも、タイヤ内面に沿う方向の最大長さW1(本実施形態ではタイヤ幅方向Aの最大長さに略等しい)が大きい、扁平形状を有している。なお、第1制音体3aの厚さとは、タイヤ内面と直交する直交方向の長さを意味する。
【0061】
第1制音体3aの上述の最大厚さT1及び最大長さW1は、タイヤ1に第1制音体3a及び第2制音体3bが取り付けられ、かつ、リム組前の状態(常温、常圧下)で測定されるものとする。本実施形態の第1制音体3aの最大厚さT1は、例えば、5mm〜45mmから設定される。
【0062】
より具体的に、本実施形態の第1制音体3aは、タイヤ幅方向断面視(
図3等参照)において、略長方形の断面外形を有している。本実施形態の第1制音体3aは、タイヤ幅方向断面視(
図3等参照)において、タイヤ内面に沿って延在し、タイヤ内面と固着されている固着面3a1と、この固着面3a1と反対側に位置し、タイヤ内面に沿って固着面3a1と略平行に延在する内側面3a2と、固着面3a1及び内側面3a2と連続し、タイヤ内面に沿う方向(本実施形態ではタイヤ幅方向Aと略等しい方向)の両側にそれぞれ位置する、タイヤ内面に対して直交する直交方向に延在する端面3a3と、を備えている。
【0063】
第2制音体3bは、第1制音体3aのタイヤ内空間102側の面に積層されている。そして、第2制音体3bは、タイヤ幅方向断面視(
図3等参照)において、最大厚さT2よりも、最大長さW2が大きい、扁平形状を有している。ここで、第2制音体3bの厚さとは、第1制音体3aのタイヤ内空間102側の面のうち、第2制音体3bが積層されている部分と直交する方向の長さを意味する。そして、第2制音体3bの最大厚さT2とは、第1制音体3aのタイヤ内空間102側の面のうち、第2制音体3bが積層されている部分(本実施形態では内側面3a2の一部)と直交する方向の長さの最大値を意味する。なお、本実施形態の第2制音体3bの最大厚さT2は、タイヤ内面に直交する直交方向の最大長さに等しく、かつ、タイヤ径方向Bの最大長さに略等しい。また、第2制音体3bの長さとは、第2制音体3bの、第1制音体3aの面に沿う方向の長さを意味する。そして、第2制音体3bの最大長さW2とは、第2制音体3bの、第1制音体3aの面に沿う方向の長さの最大値を意味する。本実施形態の第2制音体3bの最大長さW2は、タイヤ内面に沿う方向の最大長さに等しく、かつ、タイヤ幅方向Aの最大長さに略等しい。
【0064】
第2制音体3bの上述の最大厚さT2及び最大長さW2は、第1制音体3aの最大厚さT1及び最大長さW1と同様、タイヤ1に第1制音体3a及び第2制音体3bが取り付けられ、かつ、リム組前の状態(常温、常圧下)で測定されるものとする。
【0065】
本実施形態の第2制音体3bは、タイヤ幅方向断面視(
図3等参照)において、第1制音体3aの内側面3a2の少なくとも一部(本実施形態では内側面3a2の一部のみ)を覆っており、通信装置10としてのRFタグは、第1制音体3aの内側面3a2と第2制音体3bとの間で保持されている。このような構成とすれば、第1制音体3aの端面3a3と第2制音体3bとの間で通信装置を保持する構成と比較して、第1制音体3aの厚さ全体を利用して、タイヤ内面側からの衝撃や振動を吸収することができ、通信装置10に対して、タイヤ内面側から衝撃や振動が伝わり難くする緩衝性能を、より高めることができる。
【0066】
より具体的に、本実施形態の第2制音体3bは、タイヤ幅方向断面視(
図3等参照)において、略長方形の断面外形を有している。本実施形態の第2制音体3bは、タイヤ幅方向断面視(
図3等参照)において、第1制音体3aの内側面3a2と対向し、タイヤ内面に沿って延在する対向面3b1と、この対向面3b1と反対側に位置し、タイヤ内面に沿って対向面3b1と略平行に延在する自由面3b2と、対向面3b1及び自由面3b2と連続し、タイヤ内面に沿う方向(本実施形態ではタイヤ幅方向Aと略等しい方向)の両側にそれぞれ位置する、タイヤ内面に対して直交する直交方向に延在する端面3b3と、を備えている。
【0067】
ここで、本実施形態において、第1制音体3aの最小厚さT3は、第2制音体3bの最大厚さT2以上である。より具体的に、本実施形態の第1制音体3aの最小厚さT3は、第2制音体3bの最大厚さT2よりも厚い。
【0068】
第1制音体3aの最小厚さT3を厚くすれば、第1制音体3a及び第2制音体3bの間に保持されている通信装置10に、タイヤ内面側から衝撃や振動が伝わり難くすることができる。その一方で、第2制音体3bは、スポンジ材の表面から小片が分離することを抑制できればよく、タイヤ内空間102に面しているスポンジ材の表面を少なくとも構成するものであればよい。したがって、第2制音体3bの最大厚さT2は薄くてもよい。上述したように、スポンジ材からなる第1制音体3a及び第2制音体3bは、所望の空洞共鳴音の低減効果を得るために、所定の体積以上とすることが望ましい。そのため、第1制音体3a及び第2制音体3bの総合厚さを、所望の空洞共鳴音の低減効果を確保できる所定の厚さ以上としつつ、第1制音体3aの最小厚さT3を、第2制音体3bの最大厚さT2以上とすることにより、スポンジ材による通信装置10の位置固定性の向上と、スポンジ材の耐久性の向上と、の両立の実現に加えて、通信装置10に対して、タイヤ内面側から衝撃や振動が伝わり難くする緩衝性能を、より一層高めることができる。
【0069】
なお、本実施形態の第1制音体3aの厚さは、後述する凹部11の位置で最小となり、凹部11以外の位置では一様である。そのため、第1制音体3aの凹部11以外の任意の位置での厚さが、上述の最大厚さT1となる。その一方で、第1制音体3aの凹部11の位置での厚さが、上述の最小厚さT3となる。また、本実施形態の第2制音体3bの厚さは一様であるため、第2制音体3bの任意の位置での厚さが、上述の最大厚さT2となる。
【0070】
ここで、本実施形態では、第2制音体3bの最大長さW2(本実施形態ではタイヤ幅方向Aの最大長さに略等しい)は、第1制音体3aの最大長さW1(本実施形態ではタイヤ幅方向Aの最大長さに略等しい)よりも短い。より具体的に、本実施形態の第2制音体3bは、第1制音体3aの内側面3a2の一部のみを覆っており、かつ、タイヤ幅方向断面視(
図3等参照)のタイヤ内面に沿う方向において、第1制音体3aの内側面3a2の外側まで延在していない。換言すれば、本実施形態の第2制音体3bは、タイヤ幅方向断面視(
図3等参照)のタイヤ内面に沿う方向において、第1制音体3aの内側面3a2が位置する領域内にのみ位置している。そして、通信装置10としてのRFタグは、第1制音体3aの内側面3a2と、第2制音体3bの対向面3b1と、の間の位置で保持されている。
【0071】
第1制音体3aの最大長さW1及び第2制音体3bの最大長さW2の長さ関係は、本実施形態の上述の長さ関係に限られるものではなく、例えば、
図8、
図9に示す変形例のように、第2制音体3bの最大長さW2が、第1制音体3aの最大長さW1以上である構成としてもよい。
図8は、第2制音体3bの最大長さW2と、第1制音体3aの最大長さW1と、が略等しい構成を示している。
図9は、第2制音体3bの最大長さW2が、第1制音体3aの最大長さW1よりも長く、第1制音体3aの端面3a3に巻き付いている構成を示している。
【0072】
換言すれば、
図8に示す第2制音体3bは、タイヤ幅方向断面視において、第1制音体3aの内側面3a2の全域を覆っており、通信装置10としてのRFタグは、第1制音体3aの内側面3a2と第2制音体3bの対向面3b1との間で保持されている。このように、第2制音体3bが、タイヤ幅方向断面視(
図8参照)において、第1制音体3aの内側面3a2の全域を覆う構成とすれば、繰り返し変形することによりスポンジ材の小片が特に分離し易い、第1制音体3aの内側面3a2の外縁部X、の変形を抑制し、第1制音体3aの内側面3a2の外縁部Xからスポンジ材の小片が分離することを抑制することができる。
【0073】
また、
図9に示す第2制音体3bは、タイヤ幅方向断面視において、第1制音体3aのうち、端面3a3の少なくとも一部を覆っている。つまり、
図9に示す第2制音体3bは、タイヤ幅方向断面視において、内側面3a2全域のみならず、端面3a3の少なくとも一部を覆っている。このような構成とすれば、
図8に示すような、第2制音体3bが内側面3a2全域のみを覆う構成と比較して、第1制音体3aのうちタイヤ内空間102に露出する面積を更に低減することができる。そのため、第1制音体3aの表面からスポンジ材の小片が分離することを、より抑制することができる。
【0074】
より具体的に、
図9に示す第2制音体3bは、タイヤ幅方向断面視において、第1制音体3aの内側面3a2及び端面3a3の全域を覆っている。換言すれば、
図9に示す第1制音体3aのタイヤ内空間102側の全域が、第2制音体3bにより覆われている。そして、
図9に示す第2制音体3bは、タイヤ幅方向断面視(
図9参照)において、第1制音体3aのタイヤ内面に沿う方向の両側の位置で、タイヤ内面に接触している。
図9に示す例では、第2制音体3bの端面3b3が、タイヤ内面に接触している。このように、第1制音体3aのタイヤ内空間102側の全域を、第2制音体3bにより覆うことにより、第1制音体3aのうちタイヤ内空間102に露出する面を無くすことができる。これにより、変形してスポンジ材の小片が分離し易い、タイヤ内空間102に面する、第1制音体3aの表面全てが、第2制音体3bにより覆われるため、第1制音体3aの表面からスポンジ材の小片が分離することを、より一層抑制することができる。
【0075】
なお、
図9に示す第2制音体3bは、タイヤ幅方向断面視において、第1制音体3aの内側面3a2に積層されている第1積層部12aと、この第1積層部12aの一端と連続し、第1制音体3aの一方の端面3a3に積層されている第2積層部12bと、第1積層部12aの他端と連続し、第1制音体3aの他方の端面3a3に積層されている第3積層部12cと、を備えている。そして、通信装置10としてのRFタグは、第1制音体3aの内側面3a2と、第2制音体3bの第1積層部12aの位置での対向面3b1と、の間で保持されている。
【0076】
また、
図9に示す第2制音体3bの厚さは、第1積層部12aの位置では、内側面3a2に直交する方向の長さ(
図9の例ではタイヤ内面に直交する直交方向の長さに等しく、かつ、タイヤ径方向Bの長さに略等しい)を意味する。また、
図9に示す第2制音体3bの厚さは、第2積層部12b及び第3積層部12cの位置では、端面3a3に直交する方向の長さ(
図9の例ではタイヤ幅方向Aの長さに略等しい)である。そして、
図9に示す第2制音体3bの最大厚さT2は、第1積層部12aの位置の厚さである。
【0077】
上述したように、本実施形態の通信装置10としてのRFタグは、前記第1制音体3a及び第2制音体3bに固着されている。より具体的に、本実施形態の通信装置10としてのRFタグは、第1制音体3aの内側面3a2と、第2制音体3bの対向面3b1と、に接着剤により固着されている。更に、本実施形態の第1制音体3aは、タイヤ幅方向断面視(
図3等参照)において、タイヤ内面に沿う方向の、通信装置10を挟む両側で、第2制音体3bと固着されている。より具体的に、本実施形態では、第1制音体3aの内側面3a2と第2制音体3bの対向面3b1とが、タイヤ幅方向断面視(
図3等参照)において、通信装置10のタイヤ幅方向Aの両側で、接着剤により固着されている。このような構成とすれば、通信装置10と第1制音体3a及び第2制音体3bそれぞれとの接着が剥離するような事態が発生した場合であっても、タイヤ幅方向断面視(
図3等参照)において、通信装置10が、タイヤ内面に沿う方向(本実施形態ではタイヤ幅方向Aに略等しい)に移動することを、抑制することができる。そのため、通信装置10がタイヤ内腔101に脱落することを抑制することができる。
【0078】
また、
図3、
図8、
図9に示す第1制音体3a及び第2制音体3bそれぞれは、タイヤ赤道面CLに対して対称な形状を有している。更に、
図3、
図8、
図9に示す第1制音体3a及び第2制音体3bは、タイヤ内面のうちトレッド内面31の位置のみに設けられている。このような構成とすれば、タイヤ1の高速回転時においても、タイヤ径方向Bの外側に向かって作用する遠心力によって、第1制音体3a及び第2制音体3bをトレッド内面31に押し付けることができる。そのため、第1制音体3a及び第2制音体3bの動きを効果的に拘束し易くなる。つまり、第1制音体3a及び第2制音体3bをトレッド内面31に固着することにより、より小さい固定力で、第1制音体3a及び第2制音体3bの固定外れを抑制することができる。更に、タイヤ径方向Bの外側に向かって作用する遠心力により、第1制音体3aの内側面3a2と第2制音体3bの対向面3b1との間で通信装置10としてのRFタグを強く挟み込むことができるため、通信装置10の走行時の位置固定性を、より一層向上させることができる。
【0079】
更に、
図3、
図8、
図9に示す例では、第1制音体3aに凹部11が形成されており、通信装置10としてのRFタグは、凹部11に収容されている。より具体的に、第1制音体3aの内側面3a2には凹部11が形成されており、
図5及び
図6に示す通信装置10としてのRFタグは、第1制音体3aの内側面3a2の凹部11に収容されている。そして、第1制音体3aの内側面3a2のうち凹部11以外の部分が、第2制音体3bの対向面3b1と当接した状態とされると共に、第2制音体3bの対向面3b1に、接着剤等により、固着されている。このように、第1制音体3a及び第2制音体3bの少なくとも一方に、通信装置10を収容可能な凹部11を形成することにより、通信装置10が凹部11から脱離し難くなり、通信装置10の位置固定性を、より向上させることができる。
【0080】
なお、通信装置10を収容する凹部11の形状は、
図3、
図8、
図9に示すような広幅で深さが浅い浅溝に限らず、例えば、薄肉の通信装置10を差し込み可能な、狭幅で深さが深いスリット溝など、各種形状を有する凹部11とすることができる。
【0081】
また、
図3、
図8、
図9に示す例では、第1制音体3aに凹部11が形成されているが、第1制音体3aに代えて、第2制音体3bに凹部11を形成してもよい。更に、第1制音体3a及び第2制音体3bそれぞれに凹部11を形成してもよい。かかる場合には、第1制音体3a及び第2制音体3bの両方の凹部11により通信装置10を収容する1つの空洞を区画するように、第1制音体3a及び第2制音体3bを積層する。換言すれば、通信装置10としてのRFタグは、第1制音体3aの凹部11と、第2制音体3bの凹部11と、の両方に跨るように収容される。
【0082】
<<第2実施形態>>
次に、第2実施形態としての空気入りタイヤ21(以下、「タイヤ21」と記載する。)について、
図10を参照して説明する。
図10は、タイヤ21単体のタイヤ幅方向断面のうち、トレッド部1aを拡大した拡大断面図である。本実施形態のタイヤ21は、上述の第1実施形態のタイヤ1と比較して、第2制音体3bの構成が相違しているが、その他の構成は同一である。したがって、ここでは主に、第1実施形態のタイヤ1との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0083】
本実施形態において、第2制音体3bのタイヤ内空間102側の面には、凸部及び凹部による凹凸形状が形成されている。より具体的に、本実施形態の第2制音体3bは、タイヤ幅方向断面視(
図10参照)において、第1制音体3aの内側面3a2に積層されている第1積層部22aと、この第1積層部22aの一端と連続し、第1制音体3aの一方の端面3a3に積層されている第2積層部22bと、第1積層部22aの他端と連続し、第1制音体3aの他方の端面3a3に積層されている第3積層部22cと、を備えている。また、本実施形態の第2制音体3bのタイヤ内空間102側の面は、自由面3b2であり、この自由面3b2は、第1積層部22aのタイヤ径方向Bの内側の面、第2積層部22bのタイヤ幅方向Aの外側の面、及び、第3積層部22cのタイヤ幅方向Aの外側の面、により構成されている。そして、第2制音体3bのタイヤ内空間102側の面としての、第1積層部22aのタイヤ径方向Bの内側の面には、タイヤ周方向C(
図7参照)に延在する2つの、凸部としての凸リブ23と、これら2つの凸リブ23間に区画される、凹部としての凹溝24と、が形成されている。また、第2制音体3bのタイヤ内空間102側の面としての、第2積層部22bのタイヤ幅方向Aの外側の面にも、1つの凸リブ23が形成されている。同様に、第2制音体3bのタイヤ内空間102側の面としての、第3積層部22cのタイヤ幅方向Aの外側の面にも、1つの凸リブ23が形成されている。このように、本実施形態の第2制音体3bのタイヤ内空間102側の面に形成されている凹凸形状は、複数の凸リブ23と、複数の凸リブ23間に区画される凹溝24と、により構成されている。このような構成とすれば、第2制音体3bのタイヤ内空間102側の面が凹凸形状を有するため、音が乱反射し易く、空洞共鳴音を低減することができる。また、第2制音体3bのタイヤ内空間102に面する自由面3b2の表面積を大きくすることができるため、第2制音体3bの自由面3b2からの放熱性能を高めることができる。
【0084】
なお、本実施形態の凸リブ23は、タイヤ幅方向断面視(
図10参照)において、第1制音体3aのタイヤ内空間102側の面に沿って間隔を空けて4つ配置され、それぞれが、タイヤ周方向C(
図7参照)に延在する構成であるが、この構成に限らず、タイヤ周方向C(
図7参照)に間隔を空けて複数配置され、それぞれが、タイヤ幅方向Aに延在する構成としてもよい。また、タイヤ幅方向A及びタイヤ周方向Cに点在する凸部としてもよい。
【0085】
本発明に係る空気入りタイヤは、上述した実施形態及び変形例に示す具体的な構成に限られず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1:空気入りタイヤ、 1a:トレッド部、 1b:サイドウォール部、
1c:ビード部、 2:リム、 2a:リム本体、 2a1:リムシート部、
2a2:リムフランジ部、 2b:ディスク、 3:制音体、
3a:第1制音体、 3a1:固着面、 3a2:内側面、 3a3:端面、
3b:第2制音体、 3b1:対向面、 3b2:自由面、 3b3:端面、
4:ビード部材、 4a:ビードコア、 4b:ビードフィラ、
5:カーカス、 5a:カーカスプライ、 6:ベルト、 6a:傾斜ベルト、
6a1:第1傾斜ベルト層、 6a2:第2傾斜ベルト層、
6b:周方向ベルト、 6b1:第1周方向ベルト層、
6b2:第2周方向ベルト層、 6b3:第3周方向ベルト層、
7:トレッドゴム、 7a:周方向溝、 8:サイドゴム、
9:インナーライナ、 10:通信装置、 10a:記憶部、
10b:アンテナ部、 10b1:第1アンテナ、 10b2:第2アンテナ、
10c:制御部、 10d:支持部材、 10e:導通部材、
10f:被覆部、 11:凹部、 12a:第1積層部、
12b:第2積層部、 12c:第3積層部、 13:ICチップ、
21:空気入りタイヤ、 22a:第1積層部、 22b:第2積層部、
22c:第3積層部、 23:凸リブ、 24:凹溝、
31:トレッド内面(タイヤ内面)、
32:サイドウォール内面(タイヤ内面)、
33:ビード内面(タイヤ内面)、 60:リーダ/ライタ、
60a:アンテナ部、 60b:制御部、 100:組立体、
101:タイヤ内腔、 102:タイヤ内空間、 A:タイヤ幅方向、
B:タイヤ径方向、 C:タイヤ周方向、
P1、P2:ベルトのタイヤ幅方向における両側の幅方向最外ベルト端を通過する、タイヤ径方向に平行する平面、 Q:ベルト端、
T1:第1制音体の最大厚さ、 T2:第2制音体の最大厚さ、
T3:第1制音体の最小厚さ、 W1:第1制音体の最大長さ、
W2:第2制音体の最大長さ、 X:第1制音体の内側面の外縁部、
CL:タイヤ赤道面