(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6917257
(24)【登録日】2021年7月21日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】継手
(51)【国際特許分類】
F16L 33/01 20060101AFI20210729BHJP
F16L 33/24 20060101ALI20210729BHJP
F24F 13/22 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
F16L33/01
F16L33/24
F24F1/0007 361B
F24F13/22
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-183266(P2017-183266)
(22)【出願日】2017年9月25日
(65)【公開番号】特開2018-138820(P2018-138820A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2020年7月21日
(31)【優先権主張番号】特願2016-192595(P2016-192595)
(32)【優先日】2016年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-34409(P2017-34409)
(32)【優先日】2017年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505190035
【氏名又は名称】有限会社アキヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】秋山 仁
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−68448(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第152723(EP,A1)
【文献】
特開2017−145971(JP,A)
【文献】
特開2017−146083(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0377317(US,A1)
【文献】
国際公開第2007/066604(WO,A1)
【文献】
特開平9−303649(JP,A)
【文献】
特表2009−543005(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第10126429(DE,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第1855043(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 33/01
F16L 33/24
F24F 13/22
F24F 1/0007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調室内機のドレン管に接続されるホースと、前記空調室内機が設置された室の外に前記空調室内機から排出されるドレンを導くと共に端面にのみ露出する断熱材を有する筒状配管とを接続するための継手であって、
前記ホースから導入されるドレンを前記筒状配管へ供給するドレン通路と、
該ドレン通路の一端に設けられ、前記ホースを接続するための筒状の第1接続部と、
該ドレン通路の他端に設けられ、前記筒状配管を接続するための第2接続部とを備え、
前記第2接続部は、前記筒状配管の端面並びに該端面の近傍の外周面及び内周面を全周にわたって収容する溝部を備えることを特徴とする継手。
【請求項2】
前記第2接続部の前記溝部を形成する内側筒状部及び外側筒状部を備え、
前記内側筒状部は、外周面に該外周面の全周にわたって該外周面に垂直な方向に突出する突条を備えることを特徴とする請求項1に記載の継手。
【請求項3】
前記外側筒状部が前記内側筒状部よりも前記ドレン通路のドレン流れ方向に延長されており、
該外側筒状部の延長部分は、内周面に該内周面の全周にわたって該内周面に垂直な方向に突出する突条を備えることを特徴とする請求項2に記載の継手。
【請求項4】
前記外側筒状部の延長部分の外周面で、かつ該外側筒状部の前記内周面に形成された前記突条に対向する位置に、該外周面を該外周面に垂直な方向に締め付ける締付部材が設けられることを特徴とする請求項3に記載の継手。
【請求項5】
前記第2接続部の溝部の表面と、前記筒状配管の端面並びに該端面の近傍の外周面及び内周面とを接着するための接着剤を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の継手。
【請求項6】
前記第1接続部及び前記第2接続部の内周面に当接する円筒状部材を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内に設置された空調室内機で発生したドレンを室外に導く際に、空調室内機のドレン管に接続されるホースと、前記空調室内機が設置された部屋の外に前記空調室内機から排出されるドレンを導く筒状配管とを接続するための継手に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、室内の天井裏等に設置した空調室内機で発生したドレンを室外に導く際に用いられるドレンアップ配管の一例を示す。このドレンアップ配管21は、空調室内機22のドレン管22aと、このドレン管22aから排出されたドレンを室外に導くためのドレン横走り管23とを接続するドレンホース継手25と、空調室内機22を天井部(不図示)に吊すための吊り部27に付設され、ドレンホース継手25を吊持する吊持部26とで構成される(特許文献1参照)。上記ドレンアップ配管21において、水滴の付着及び落下を防止するため、各部材を断熱材で覆ったり、断熱材入りの材料で構成していた。
【0003】
上記断熱施工の一例として、
図10及び
図11に示すように、断熱材28入りのドレン横走り管23(上方に向かって延設される部分のみを図示)をドレンホース継手25に接続している。
図10においては、ドレンホース継手25の継手25aに拡径部25bを設け、この拡径部25bにドレン横走り管23の上端部23aを収容し、拡径部25bと上端部23aの当接面を接着剤で接合している。一方、
図11においては、ドレン横走り管23より小径のアダプタ30を用い、アダプタ30とドレン横走り管23及び継手25cの当接部、及びドレン横走り管23と継手25cの接合面31を接着剤で接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3150922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドレン横走り管23の断熱材28は、
図10及び
図11に示すように、ドレン横走り管23全体にわたって設けられ、上端面23bで露出する。そのため、
図10に示すようにドレン横走り管23と継手25aを接続すると、両者を接合する接着剤が剥がれた場合に当接部29からドレンが侵入して断熱材28が水分を吸収し、断熱効果が低下するおそれがあった。
【0006】
一方、
図11に示すようにアダプタ30を介してドレン横走り管23と継手25cを接続した場合には、両者の接合面31がアダプタ30によって保護されるため、断熱材28がドレンと接触し難くなり、断熱材28が水分を吸収することを防止することができるものの、アダプタ30を設ける分コストが増加するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、低コストでドレン横走り管の断熱効果の低下を防止することが可能な継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、空調室内機のドレン管に接続されるホースと、前記空調室内機が設置された室の外に前記空調室内機から排出されるドレンを導くと共に端面にのみ露出する断熱材を有する筒状配管とを接続するための継手であって、前記ホースから導入されるドレンを前記筒状配管へ供給するドレン通路と、該ドレン通路の一端に設けられ、前記ホースを接続するための筒状の第1接続部と、該ドレン通路の他端に設けられ、前記筒状配管を接続するための第2接続部とを備え、前記第2接続部は、前記筒状配管の端面並びに該端面の近傍の外周面及び内周面を全周にわたって収容する溝部を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、筒状配管(ドレン横走り管)の端部を収容する溝部を設けることで、継手と筒状配管の当接部にドレンが侵入することを防止し、筒状配管の断熱材とドレンの接触を防止することができるため、筒状配管の断熱効果の低下を防止することができる。また、継手と筒状配管を接続する上で、上述のアダプタのような部材を別途用いる必要がないため、製造コスト及び作業コストを低く抑えることができる。
【0010】
上記継手は、前記第2接続部の前記溝部を形成する内側筒状部及び外側筒状部を備え、前記内側筒状部は、外周面に該外周面の全周にわたって該外周面に垂直な方向に突出する突条を備えることができる。突条が筒状配管の端部表面と密着することで、断熱材とドレンの接触をより効果的に防止することができる。
【0011】
また、前記外側筒状部が前記内側筒状部よりも前記ドレン通路のドレン流れ方向に延長されており、該外側筒状部の延長部分は、内周面に該内周面の全周にわたって該内周面に垂直な方向に突出する突条を備えることができる。この突条が筒状配管の端部表面と密着することで、断熱材とドレンの接触をより効果的に防止することができる。
【0012】
さらに、前記外側筒状部の延長部分の外周面で、かつ該外側筒状部の前記内周面に形成された前記突条に対向する位置に、該外周面を該外周面に垂直な方向に締め付ける締付部材を設けることができる。これにより、上記突条と共に、外側筒状部の延長部分が筒状配管の端部表面に密着し、断熱材とドレンの接触をさらに効果的に防止することができる。
【0013】
また、前記第2接続部の溝部の表面と、前記筒状配管の端面並びに該端面の近傍の外周面及び内周面とを接着するための接着剤を設けることで、筒状配管の断熱効果の低下をさらに効果的に回避することができる。
【0014】
さらに、前記第1接続部及び前記第2接続部の内周面に当接する円筒状部材を備えることで、接続部2及び接続部2と接続部4の境界部を補強することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、低コストでドレン横走り管の断熱効果の低下を防止することが可能な継手を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る継手を備えるドレンアップ配管の一例を示す概略図である。
【
図2】
図1の継手とドレン横走り管を示す断面図である。
【
図4】
図2の継手の円筒状部材を示す拡大斜視図である。
【
図5】漏水試験を行う前に、筒状配管に漏水検知インクを塗布した状態を示す写真である。
【
図6】漏水試験を行う前に、漏水検知インクを塗布した筒状配管を本発明に係る継手に接続した状態を示す写真である。
【
図7】漏水試験を行っている状態を示す写真である。
【
図8】漏水試験を行った後の状態を示す写真である。
【
図9】従来のドレンアップ配管の一例を示す概略図である。
【
図10】
図9に示す継手とドレン横走り管の接続例を示す概略断面図である。
【
図11】
図9に示す継手とドレン横走り管の別の接続例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る継手を備えるドレンアップ配管を示し、このドレンアップ配管10は、
図9に示す従来のドレンアップ配管21と同様に、空調室内機22のドレン管22aと、ドレン管22aから排出されたドレンを室外に導くためのドレン横走り管(以下「筒状配管」という。)23と、空調室内機22を天井部(不図示)に吊すための吊り部27に付設される吊持部26とを備え、ドレンホース継手25に代えて、ドレン管22aと筒状配管23をホース3を介して連結する継手1を備える。
【0019】
継手1は、軟質の塩化ビニール等からなり、
図2及び
図3にも示すように、ホース3から導入されるドレンを筒状配管23へ供給するドレン通路1aと、一端に、空調室内機22のドレン管22aに接続されるホース3を接続するための接続部(第1接続部)2と、他端に、筒状配管23に接続するための接続部(第2接続部)4と、接続部2及び接続部4の内側に補強用の円筒状部材5を備える。
【0020】
接続部4は、内側筒状部4a及び外側筒状部4bを有し、これら2つの筒状部4a、4bにより、筒状配管23の上端面23bを含む上端部23aの外周面及び内周面を全周にわたって収容する溝部4cが構成される。これにより、筒状配管23の上端面23bにおいて露出する断熱材28と、ドレン通路1aの内部を流れるドレンの接触を防止することができる。
【0021】
ここで、筒状部4bを筒状部4aよりもドレン通路1aの軸線方向(ドレン流れ方向)に延長し、この筒状部4bの延長部分4dの内面に、筒状部4a側に全周にわたって突出する2つの突条4e、4f(
図3にのみ示す)を設けることができる。これらの突条4e、4fが筒状配管23の外周面と密着することで、断熱材28とドレンの接触をより効果的に防止することができる。
【0022】
さらに、筒状部4bの延長部分4dの外面で、かつ突条4e、4fに対向する位置に凹部4gを設け、この凹部4gにステンレス鋼等からなる結束バンド(締付部材)6を設けることで、突条4e、4fと共に、延長部分4dの内周面が筒状配管23の外周面に密着し、断熱材28とドレンの接触をさらに効果的に防止することができる。
【0023】
一方、筒状部4aの外面に、筒状部4b側に全周にわたって突出する3つの突条4h−4j(
図3にのみ示す)を設けることができる。これらの突条4h−4jが筒状配管23の内周面と密着することで、断熱材28とドレンの接触をより効果的に防止することができる。
【0024】
円筒状部材5は、樹脂等で形成され、接続部2の開口端部から接続部4の筒状部4aの開口端部の内側に装着されている。
図4に示すように、円筒状部材5は、円筒状の基部5aに複数の凹部5bを備え、円筒状部材5を接続部2の開口端部から内部に圧入するだけで、接続部2の内面が凹部5bに入り込んで円筒状部材5が固定される。そのため、接着剤は不要である。
【0025】
円筒状部材5をステンレスパイプで形成することも可能であるが、その際には、長いステンレス管を所定の寸法に切断する必要があり、切断とバリ取りの作業が必要になり、さらに接続部2の内部に装着する際に接着剤が必要となる。樹脂等の場合には、上述のように接着材が不要となるだけでなく、金型を用いて成形すればよく、製造コストを大幅に低減することができる。
【0026】
円筒状部材5を装着することで接続部2及び接続部2と接続部4の境界部を補強することができ、
図2においてホース3の下端部に曲げが加わったような場合にも充分耐えることができる。
【0027】
以上のように、本発明によれば、従来のようなアダプタ30(
図11参照)を用いることなく、溝部4c等によって筒状配管23の断熱材28がドレンと接触することを効果的に防止することができるため、低コストで筒状配管の断熱効果の低下を防止することができる。
【0028】
尚、上記は本発明に係る継手の一実施の形態を示したに過ぎず、筒状配管23の上端面23bを含む上端部23aを収容する溝部4cを備えるものであれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、筒状配管23の上端部23aと接続部4の溝部4cを接着材を用いて接着してもよく、筒状部4a、4bの形状、突条4e、4f、4h−4jの有無、形状やその数、円筒状部材5及び結束バンド6の有無や設置位置等は適宜変更可能である。
【0029】
次に、本発明の試験例について
図5−
図8を参照しながら説明する。尚、各図には、実施例1、実施例2及び比較例の3つを並べて表示し、水没時間は45時間程度とする。
【0030】
まず、比較例について説明する。
図5及び
図6に示すように、筒状配管23(
図2参照)の上面に水に濡れると色が落ちる漏水検知インクを塗布し、
図7に示すように、漏水検知インクが塗布されていない筒状配管23の下部を水没させた。その結果、
図8に示すように、筒状配管23の上面に塗布された漏水検知インクの色が落ち、筒状配管23の下面から断熱材28(
図2参照)を介して上面まで水が浸透したことが判る。
【0031】
次に、実施例1について説明する。
図2に示す継手1と筒状配管23を用意し、
図5に示すように、筒状配管23の端面に漏水検知インクを塗布し、
図6に示すように、筒状配管23の漏水検知インクが塗布された側と継手1を接続し、
図7に示すように、これら継手1及び筒状配管23の接続部分を水没させた。その後、継手1から筒状配管23を取り外したところ、
図8に示すように、筒状配管23の端面に塗布された漏水検知インクの色が落ちず、継手1及び筒状配管23の接続部分における漏水は認められなかった。
【0032】
最後に、実施例2について説明する。
図2及び
図3に示す継手1の内側筒状部4aの突条4h−4iの形状を丸みを帯びていないV型に変更したもの(不図示)と筒状配管23を用意し、実施例1と同様に漏水試験を行った(
図5−7参照)。その後、継手から筒状配管23を取り外したところ、
図8に示すように、筒状配管23の端面に塗布された漏水検知インクの色が落ちず、継手及び筒状配管23の接続部分における漏水は認められなかった。これにより、内側筒状部4aの突条4h−4iの形状は、実施例1の丸みを帯びたR型、本実施例のV型どちらでも同様の効果を奏することが判った。
【符号の説明】
【0033】
1 継手
1a ドレン通路
2 接続部
3 ホース
4 接続部
4a、4b 筒状部
4c 溝部
4d 延長部分
4e、4f 突条
4g 凹部
4h−4j 突条
5 円筒状部材
5a 基部
5b 凹部
6 結束バンド
10 ドレンアップ配管