(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一次コイルおよび二次コイルを有するトランスと、前記一次コイルに直列接続された主スイッチング素子と、前記二次コイルに直列接続された整流スイッチング素子およびチョークコイルと、前記二次コイルおよび前記整流スイッチング素子に並列接続された転流スイッチング素子と、前記二次コイル、前記整流スイッチング素子および前記チョークコイルに並列接続された平滑コンデンサと、を備え、前記主スイッチング素子、前記整流スイッチング素子および前記転流スイッチング素子がPWM信号によりそれぞれオンオフ制御される同期整流型フォワードコンバータにおいて、
前記PWM信号がそれぞれ入力され、その入力された時点から所定の同じ遅延時間の経過後に、入力された該PWM信号にしたがって前記主スイッチング素子および前記整流スイッチング素子をそれぞれオンオフ制御する第1の遅延回路および第2の遅延回路と、
所定の参照電位、前記PWM信号、及び、前記チョークコイルと前記転流スイッチング素子の接続点の電位であるチョークコイル電位を入力され、前記転流スイッチング素子をオンオフ制御する演算増幅回路と、を有し、
前記演算増幅回路は、
前記PWM信号がオフでありかつ前記チョークコイル電位が前記参照電位以下に降下しようとするときに前記転流スイッチング素子をオフからオンにして前記チョークコイル電位を前記参照電位と同電位に保持するように動作すると共に、
前記PWM信号がオンとなるかまたは前記チョークコイル電位が前記参照電位を超えたときに前記転流スイッチング素子をオンからオフにすることを特徴とする
同期整流型フォワードコンバータ。
前記参照電位が、前記二次コイルに生じる逆起電圧と同極性でかつ逆起電圧よりも絶対値が小さい電圧であることを特徴とする請求項1に記載の同期整流型フォワードコンバータ。
前記整流スイッチング素子がオフとなったときに前記二次コイルに発生する逆起電圧に対して順方向となるように、前記二次コイルの一端と前記平滑コンデンサの一端との間に接続された整流要素をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の同期整流型フォワードコンバータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4を参照して一般的な同期整流型フォワードコンバータの問題点について説明する。
図4(a)はPWM信号、(b)は主スイッチング素子Q1および整流スイッチング素子Q2のゲートソース間電圧(すなわちQ2のオンオフ)、(c)はチョークコイルLと転流スイッチング素子Q3の接続点の電位(以下「チョークコイル電位」と称する)V
L、(d)は転流スイッチング素子Q3のゲートソース間電圧(すなわちQ3のオンオフ)のそれぞれの波形を示している。時間軸に沿ってモードI〜IIIについて説明する。
【0008】
モードI:PWM信号のオン期間には、主スイッチング素子Q1および整流スイッチング素子Q2が導通(オン)する。一次コイルNpに電流が流れることにより、二次コイルNsに生じた正の起電圧により、整流スイッチング素子Q2およびチョークコイルLに電流が流れ、出力端p、nから負荷に供給される。チョークコイルLには磁気エネルギーが蓄積される。転流スイッチング素子Q3は遮断(オフ)されている。
【0009】
モードII:PWM信号がオフになると、主スイッチング素子Q1および整流スイッチング素子Q2が遮断(オフ)され、チョークコイル電圧V
Lには負の逆起電圧が生じる。このとき転流スイッチング素子Q3はまだオフのままである。モードIIの期間は、整流スイッチング素子Q2と転流スイッチング素子Q3を同時にオンとしないために設けられるいわゆるデッドタイムである。制御部は、例えばチョークコイル電位V
Lをモニタリングし、所定のデッドタイムの経過後に転流スイッチング素子Q3をオンとする。図示の例とは異なるが、転流スイッチング素子Q3がオフした後、所定のデッドタイムの経過後に整流スイッチング素子Q2をオンさせる制御を行う場合もある。このようなデッドタイム制御は非常に複雑であり、通常、演算処理のためにプロセッサ等が用いられる。
【0010】
モードIII:オンになった転流スイッチング素子Q3を通ってチョークコイルLに電流が流れ、出力端p、nから負荷に供給される。これによりチョークコイルLに蓄積された磁気エネルギーが放出される。電流が零になると逆起電圧は零に戻る。そしてPWM信号の次のオンを迎える。これが繰り返される。図示の例では、制御部が、チョークコイルL電位V
L(または電流)をモニタリングし、これが零となったときに転流スイッチング素子Q3をオフにする制御を行っている。しかしながら、電位V
Lは、通常、零付近で変動するため、転流スイッチング素子Q3がオンオフを繰り返すチャタリングが発生しやすい(
図4(d)参照)。また、チョークコイル電位V
Lを何ら制御しないままにすると、発振し易いという問題もある。
【0011】
以上の問題点から、本発明は、同期整流型フォワードコンバータにおいて、複雑な制御を必要とせずに、各スイッチング素子の安全かつ確実な同期制御を可能とすると共に、より高い効率と安定性を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するべく、本発明は、以下の構成を提供する。
・ 本発明の態様は、一次コイルおよび二次コイルを有するトランスと、前記一次コイルに直列接続された主スイッチング素子と、前記二次コイルに直列接続された整流スイッチング素子およびチョークコイルと、前記二次コイルおよび前記整流スイッチング素子に並列接続された転流スイッチング素子と、前記二次コイル、前記整流スイッチング素子および前記チョークコイルに並列接続された平滑コンデンサと、を備え、前記主スイッチング素子、前記整流スイッチング素子および前記転流スイッチング素子がPWM信号によりそれぞれオンオフ制御される同期整流型フォワードコンバータにおいて、
前記PWM信号がそれぞれ入力され、その入力された時点から所定の同じ遅延時間の経過後に、入力された該PWM信号にしたがって前記主スイッチング素子および前記整流スイッチング素子をそれぞれオンオフ制御する第1の遅延回路および第2の遅延回路と、
所定の参照電位、前記PWM信号、及び、前記チョークコイルと前記転流スイッチング素子の接続点の電位であるチョークコイル電位を入力され、前記転流スイッチング素子をオンオフ制御する演算増幅回路と、を有し、
前記演算増幅回路は、
前記PWM信号がオフでありかつ前記チョークコイル電位が前記参照電位以下に降下しようとするときに前記転流スイッチング素子をオフからオンにして前記チョークコイル電位を前記参照電位と同電位に保持するように動作すると共に、
前記PWM信号がオンとなるかまたは前記チョークコイル電位が前記参照電位を超えたときに前記転流スイッチング素子をオンからオフにすることを特徴とする。
・ 上記態様において、前記参照電位が、前記二次コイルに生じる逆起電圧と同極性でかつ逆起電圧よりも絶対値が小さい電圧であることが、好適である。
・ 上記態様において、前記整流スイッチング素子がオフとなったときに前記二次コイルに発生する逆起電圧に対して順方向となるように、前記二次コイルの一端と前記平滑コンデンサの一端との間に接続された整流要素をさらに有することが、好適である。
・ 上記態様において、前記PWM信号がフォトカプラを介して前記第1の遅延回路に入力されることが、好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の同期整流型フォワードコンバータでは、複雑な制御を必要とせずに、各スイッチング素子の安全かつ確実な同期制御が行われる。加えて、より高い効率と安定性が実現される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1)回路構成
図1は、本発明の同期整流型フォワードコンバータの実施形態の回路構成例を概略的に示した図である。上述した
図4の同期整流型フォワードコンバータの基本形態と同一の構成要素には同一符号を付している。本明細書において、ある電位がOPアンプの入力端に「入力される」とは、ダイオードまたは抵抗を介して入力される場合を含む。
【0016】
トランスTは、極性の向きが同じ一次コイルNpおよび二次コイルNsを有する。コイルの巻き始端は黒丸で示している。一次コイルNpに対し、主スイッチング素子Q1が直列接続されている。本例では、主スイッチング素子Q1はnチャネルFETであり、ドレインが一次コイルNpに、ソースが一次側の接地端に接続されている。主スイッチング素子Q1は、そのゲートに印加される電圧によりオンオフ制御される。これにより、一次コイルNpに印加される直流入力電圧+Vinがスイッチングされる。
【0017】
トランスTの二次コイルNsに対し、整流スイッチング素子Q2およびチョークコイルLが直列接続されている。本例では、整流スイッチング素子Q2はnチャネルFETであり、ドレインが二次コイルNsに、ソースが二次側の接地端である出力端nに接続されている。整流スイッチング素子Q2は、非同期整流型フォワードコンバータの整流ダイオードの役割を担う。整流スイッチング素子Q2は、そのゲートに印加される電圧によりオンオフ制御される。チョークコイルLは、その一端が二次コイルNsに、他端が出力端pに接続されている。
【0018】
さらに、直列接続された二次コイルNsおよび整流スイッチング素子Q2に対し、転流スイッチング素子Q3が並列接続されている。本例では、転流スイッチング素子Q3はnチャネルFETであり、ドレインがチョークコイルLの一端に、ソースが二次側の接地端である出力端nに接続されている。さらに転流スイッチング素子Q3に対し、そのボディダイオードと同じ向きにダイオードD6が並列接続されている。ダイオードD6は必須ではないが、FETのボディダイオードを電流が流れると損失が大きくなるため、ダイオードD6を接続することが好ましい。ダイオードD6は、応答が速くかつ電圧降下の小さい、例えばショットキーバリアダイオードが好適である。転流スイッチング素子Q3は、非同期整流型フォワードコンバータの転流ダイオードの役割を担う。転流スイッチング素子Q3は、そのゲートに印加される電圧によりオンオフ制御される。
【0019】
さらに、直列接続された二次コイルNs、整流スイッチング素子Q2およびチョークコイルLに対し、平滑コンデンサCが並列接続されている。平滑コンデンサCの両端が直流出力電圧の出力端p、nである。
【0020】
さらに、二次コイルNsと正の出力端pの間にダイオードD7が接続されている。ダイオードD7は、アノードが二次コイルNsの巻き終端に、カソードが出力端pに接続されている。
【0021】
次に、スイッチング素子Q1、Q2、Q3をそれぞれオンオフ制御する回路について説明する。上述した通り、同期整流型フォワードコンバータにおいては、主スイッチング素子Q1および整流スイッチング素子Q2を制御するPWM信号と、転流スイッチング素子Q3を制御するそれとは、基本的に相反関係である。加えて、双方が同時にオンする状態を確実に回避する必要がある。
【0022】
本発明による
図1の回路では、スイッチング素子Q1、Q2、Q3をそれぞれオンオフ制御する電圧は、図示のPWMICのout端子から出力される1つのPWM信号を用いてそれぞれ生成される。PWMICは、通常、一定の周波数のパルス波形における所定のデューティ比を決定してPWM信号を生成し、出力する。PWMICにおけるデューティ比の決定方法については、本発明の範囲外であるのでここでは言及しない。
【0023】
先ず、主スイッチング素子Q1および整流スイッチング素子Q2のオンオフ制御のための回路構成について説明する。PWMICのout端子から出力されるPWM信号(例えば、H:+15V、L:0Vのパルス信号)は、実質的にコンパレータとして機能するOPアンプA1とOPアンプA2を介して、主スイッチング素子Q1と整流スイッチング素子Q2の各ゲートにそれぞれ印加される。OPアンプA1とOPアンプA2は、同じ所定の応答速度を有している。
【0024】
OPアンプA1とOPアンプA2に入力される信号は、所定の応答速度に相当する遅延時間の経過後に出力端に出力される。したがって、OPアンプA1とOPアンプA2は、PWM信号を所定の時間だけ遅延させて主スイッチング素子Q1と整流スイッチング素子Q2のゲートに印加するための、第1の遅延回路と第2の遅延回路を構成している。
【0025】
主スイッチング素子Q1については、PWM信号が抵抗R1を介してOPアンプA1の非反転入力端に印加される。OPアンプA1の反転入力端は接地端に接続されている。ダイオードD1は電圧制限用である。非反転入力端に印加されたPWM信号は、OPアンプA1の応答速度に起因する所定の遅延時間だけ遅れて、OPアンプA1の出力端に出力され、主スイッチング素子Q1のゲートに印加される。OPアンプA2についても同様である。この結果、主スイッチング素子Q1と整流スイッチング素子Q2は、同時にオンオフすることとなる。
【0026】
図示の例では、PWM信号が直接OPアンプA1に入力され、OPアンプA1とOPアンプA2の反転入力端同士が接続されているが、フォトカプラ等を用いて一次側を二次側から絶縁することが、好適である。
【0027】
次に、転流スイッチング素子Q3のオンオフ制御のための回路構成について説明する。out端子から出力されるPWM信号は、抵抗R3およびダイオードD3を介してOPアンプA3の反転入力端に印加される。OPアンプA3は、上述したOPアンプA1、A2に比べて応答速度の速い高速アンプである。OPアンプA3の非反転入力端には、一定の参照電位Vrefが印加される。
【0028】
参照電位Vrefは、二次コイルNsの巻き始端に生じる逆起電圧と同極性であって、逆起電圧よりも絶対値が小さい電位とする。好ましくは、接地端電位すなわち零電位に近い電位とする。
図1の回路では、例えば、零電位より若干低い負電位(例えば−10mV)に設定する。
【0029】
OPアンプA3は正電源+Vcc(例えば+15V)と負電源−Vcc(例えば−15V)により駆動される。OPアンプA3の出力端は、2つのトランジスタからなるプッシュプルエミッタフォロワ回路を介して転流スイッチング素子Q3のゲートに接続されている。プッシュプルエミッタフォロワ回路は電流供給のために設けられている。
【0030】
さらに、転流スイッチング素子Q3のドレインとチョークコイルLの接続点(二次コイルNsの巻き始端でもある)が、抵抗R4を介してOPアンプA3の反転入力端に接続されることによって、OPアンプA3が演算増幅回路として動作する際の帰還路を形成している。
【0031】
反転入力端と接地端の間に逆並列接続されたダイオードD4とダイオードD5は、反転入力端の入力電圧制限用に設けられている。
【0032】
OPアンプA3の反転入力端には、抵抗R3及びダイオードD3を介してPWM信号のオン(H)またはオフ(L)の電位が印加されると共に、抵抗R4を介してチョークコイル電位V
Lが印加される。これら2つの反転入力端への入力電位と、非反転入力端の参照電位Vrefとの関係によって、出力端に正電位(H)または負電位(L)が出力される。この関係を、概略的に表1に示す。
【0034】
表1のモードIIIのときにのみ、OPアンプA3の出力端に正電位(H)が出力され、転流スイッチング素子Q3のゲートソース間に印加され、転流スイッチング素子Q3はオン状態となる。
【0035】
モードIIIの条件は、PWM信号がオフ(L)であり、かつ、チョークコイル電位V
Lが参照電位Vrefより低い(または参照電位Vrefより低い電位に降下しようとする)ことである。但し、後述するように、モードIIIにおいて、転流スイッチング素子Q3が一旦オン状態となると、OPアンプA3の増幅動作によってチョークコイルV
L電位は参照電位Vrefと同電位となるように保持される。
【0036】
一方、モードI、II及びIVでは、転流スイッチング素子Q3はオフ状態となる。これらのモードの条件は、PWM信号がオン(H)であるか、または、チョークコイル電位V
Lが参照電位Vrefより高いかの少なくとも一方を満たすときである。
【0037】
(2)回路動作
以下、
図1の同期整流型フォワードコンバータの回路動作を、重負荷時と軽負荷時の各々の場合について説明する。重負荷時と軽負荷時は相対的なものであるが、ここでは一応、出力電流が連続モードであるか、不連続モードであるかで区別する。
【0038】
<重負荷時の動作>
図2は、
図1に示した回路において負荷(図示せず)が重い時のタイミングチャートの一例を示した図である。これは、負荷が多くの電流を必要とするときである。PWM信号のデューティ比は比較的大きく、すなわちオン期間が長い。
図2(b)および(d)に記載のVgsは、FETのゲートソース間電圧を意味する(
図3においても同じ)。
【0039】
図2のタイミングチャートには、表1に示したモードI、II、III、IVにほぼ対応する期間をそれぞれ示している。以下、モードの順序にしたがって説明する。
【0040】
・モードI
モードIの始点は、PWM信号のオン期間の始点ではなく、そこから所定の遅延時間だけ遅れた時点とする(
図2(a))。所定の遅延時間は、OPアンプA1、A2の応答遅れにより決まる。主スイッチング素子Q1および整流スイッチング素子Q2は、OPアンプA1、A2の応答遅れによってPWM信号よりも所定の遅延時間だけ遅れてオンになる(
図2(b))。スイッチング素子Q1、Q2のオン時が、モードIの始点である。
【0041】
主スイッチング素子Q1がオンになると一次コイルNpに電流が流れ、二次コイルNsに起電圧(例えば、+30V)が発生し、チョークコイル電位V
Lが正電位となる(
図2(c))。二次コイルNsの起電圧は、入力直流電圧VinとトランスTの巻数比により決まる。
【0042】
これにより、整流スイッチング素子Q2およびチョークコイルLを通って出力端pへ電流I
Lが流れる(
図2(f))。電流I
Lは、負荷へ供給される。電流I
Lは、二次コイルNsに起電圧が発生している間、リニアに増加していく。チョークコイルLに電流I
Lが流れることにより、チョークコイルLに磁気エネルギーが蓄積される。また、トランスTにも磁気エネルギーが蓄積される。
【0043】
モードIでは、転流スイッチング素子Q3はオフである(
図2(d))。また、ダイオードD6およびボディダイオードも逆バイアスであるので、この経路に電流は流れない。さらに、ダイオードD7も逆バイアスとなるので電流は流れない(
図2(g))。
【0044】
・モードII
モードIIの始点は、PWM信号がオンからオフとなる時点である(
図2(a))。主スイッチング素子Q1および整流スイッチング素子Q2のオフ時は、OPアンプA1、A2の応答遅れによってPWM信号のオフ時よりも遅れる。スイッチング素子Q1、Q2のオフ時を、モードIIの終点とする(
図2(b))。
【0045】
モードIIでは、スイッチング素子Q1、Q2はまだオン状態であるので、二次コイルNsの巻き始端およびチョークコイル電位V
Lは正電位を保持している(
図2(c))。
【0046】
モードIIでは、転流スイッチング素子Q3はまだオフ状態である(
図2(d))。PWM信号はオフとなっても、まだチョークコイル電位V
Lが正電位だからである。
【0047】
・モードIII
モードIIIの始点は、主スイッチング素子Q1および整流スイッチング素子Q2のオフ時である(
図2(b))。これにより一次コイルNpの電流が遮断され、一次コイルNp、二次コイルNs、チョークコイルLに逆起電圧が発生する。これによりチョークコイル電位V
Lは、正電位から負電位となる(
図2(c))。そして、OPアンプA3の反転入力端の電位が、非反転入力端の参照電位Vref(
図2(e)、例えば−10mV)よりも降下したとき、OPアンプA3の出力端が正電位となり、転流スイッチング素子Q3がオンとなる(
図2(d))。
【0048】
モードIIIの始点における、主スイッチング素子Q1および整流スイッチング素子Q2のオフから、転流スイッチング素子Q3のオンまでの過程において、スイッチング素子Q1、Q2とスイッチング素子Q3とが、同時にオンとなることはない。主スイッチング素子Q1および整流スイッチング素子Q2のオフ後、チョークコイル電位V
Lが負電位まで降下してから、転流スイッチング素子Q3がオンとなるからである。
【0049】
これにより、電流I
Lは、転流スイッチング素子Q3およびチョークコイルLを通って出力端pへ流れ(
図2(f))、チョークコイルLに蓄積されていた磁気エネルギーが放出される。電流I
Lは、チョークコイルLの磁気エネルギーの放出と共に、リニアに減少していく。
【0050】
また、二次コイルNsに逆起電圧が生じることにより、ダイオードD7が順バイアスとなり、電流I
Dが出力端pへ流れる(
図2(g))。これにより、トランスTに蓄積されていた磁気エネルギーを二次側に電力として取り出すことができる。電流I
Dは、磁気エネルギーが放出されるにつれて、リニアに減少する。
【0051】
一般的なフォワードコンバータでは、オン期間にトランスTに蓄積された磁気エネルギーをリセットするためのリセット回路や、オフ時に一次コイルNsに生じる逆起電圧対策のためのスナバ回路を、一次側に設ける必要がある。本回路では、トランスTに蓄積された磁気エネルギーをダイオードD7を介して二次側に出力できるので、一次側のリセット回路やスナバ回路を簡素化することができる。
【0052】
さらに、モードIIIにおいて転流スイッチング素子Q3がオンとなると、OPアンプA3の出力端→チョークコイルLの一端(Q3のドレイン)→抵抗R4→OPアンプA3の反転入力端、という帰還路が形成される。これにより、OPアンプA3は、実質的にボルテージフォロワの演算増幅回路として機能する。したがって、転流スイッチング素子Q3がオンの間、チョークコイル電位V
Lは、OPアンプA3の非反転入力端の参照電位Vrefと同電位に保持される(
図2(c))。
【0053】
この演算増幅回路の機能によって、チョークコイル電位V
Lが安定化する。このような演算増幅回路が無い、従来の同期整流型フォワードコンバータの場合、チョークコイル電位V
Lが接地端電位(0V)の近傍において揺らいで不安定となったり、発振しやすくなったりすることがある。
【0054】
・モードIV
モードIVの始点は、PWM信号がオフからオンになる時点である(
図2(a))。主スイッチング素子Q1および整流スイッチング素子Q2は、OPアンプA1、A2の応答遅れによって、モードIVではまだオフ状態である(
図2(b))。
【0055】
一方、OPアンプA3の反転入力端は、PWM信号がオンとなるため、正電位(ダイオードD4による上限電圧、例えば+0.6V)となり、OPアンプA3の出力端の電位が反転し、転流スイッチング素子Q3はオフとなる(
図2(d))。
【0056】
転流スイッチング素子Q3がオフとなっても、チョークコイルLに磁気エネルギーが残っている場合、電流I
LがダイオードD6を通って流れ続ける(
図2(f))。このとき、チョークコイル電位V
Lは、ダイオードD6の電圧降下による電位(例えば−0.6V)となる(
図2(c))。
【0057】
モードIVでは、電流I
LがダイオードD6を通るので、転流スイッチング素子Q3がオンのときに比べて電力損失が大きいが、モードIVの期間は短く、電流I
Lも減少しているので、さほど大きな問題とはならない。電流I
Lは、次のモードIの始点において主スイッチング素子Q1および整流スイッチング素子Q2がオンになると、再び増加し始める。電流I
Lは連続モードであり、零となることはない。
【0058】
電流I
Dは、モードIVにおいてまだ流れていた場合も、次のモードIの始点において、ダイオードD7が逆バイアスとなるので零になる(
図2(g))。
【0059】
モードIVでは、PWM信号がオフからオンとなっても、OPアンプA1、A2の応答遅れによって、主スイッチング素子Q1及び整流スイッチング素子Q2は、オフのままである。したがって、PWM信号がオフからオンになるときも、スイッチング素子Q1、Q2とスイッチング素子Q3とが、同時にオンとなることはない。
【0060】
<軽負荷時の動作>
図3は、
図1に示した回路において負荷(図示せず)が軽い時のタイミングチャートの一例を示した図である。これは、負荷があまり電流を必要としないときである。PWM信号のデューティ比が比較的小さく、すなわちオン期間が短い。
【0061】
図3のタイミングチャートには、
図2と同様に、表1に示したモードI、II、III、IVにほぼ対応する期間をそれぞれ示している。軽負荷時には、モードIIIとモードIVの間に、別のモードが現れる。これをモードIIIaと称する。以下、軽負荷時の動作について、主として重負荷時の動作とは異なる部分を説明する。
【0062】
・モードI
軽負荷時のモードIの動作は、重負荷時の動作と同じである。但し、軽負荷時では、二次側に流れる電流I
Lが不連続モードである。したがって、モードIにおける電流I
Lは、零からリニアに増加する(
図3(f))。
【0063】
・モードII
軽負荷時のモードIIの動作は、重負荷時の動作と同じである。
【0064】
・モードIII
モードIIIの動作は、電流I
Lが不連続モードの場合、重負荷時の動作と異なる。モードIIIの始点における動作は、重負荷時と同じであり、主スイッチング素子Q1および整流スイッチング素子Q2のオフ時に始まる(
図3(b))。これにより一次コイルNpの電流が遮断され、一次コイルNp、二次コイルNs、チョークコイルLに逆起電圧が発生する。したがってチョークコイル電位V
Lは、正電位から負電位となる(
図3(c))。そして、OPアンプA3の反転入力端の電位が、非反転入力端の参照電位Vref(例えば、−10mV、
図3(e))よりも降下したとき、OPアンプA3の出力端が正電位となり、転流スイッチング素子Q3がオンとなる(
図3(d))。
【0065】
モードIIIの始点における、主スイッチング素子Q1および整流スイッチング素子Q2のオフから、転流スイッチング素子Q3のオンまでの過程において、スイッチング素子Q1、Q2とスイッチング素子Q3とが、同時にオンとなることはない。
【0066】
これにより、電流I
Lは、転流スイッチング素子Q3およびチョークコイルLを通って出力端pへ流れ(
図3(f))、チョークコイルLに蓄積されていた磁気エネルギーが放出される。軽負荷時にはチョークコイルLに蓄積される磁気エネルギーは小さい。不連続モードの電流I
Lは、チョークコイルLの磁気エネルギーの放出と共にリニアに減少していき、やがて零になる(
図3(f))。
【0067】
軽負荷時には、電流I
Lが零になった時点でモードIIIが終了し、モードIIIaに移行する。電流I
Lが零になると、チョークコイル電位V
Lが正電位に上昇する(
図3(c))。これは、出力端pの電位(例えば+12V)に相当する。この正のチョークコイル電位V
Lが、抵抗R4を介してOPアンプA3の反転入力端に印加されると、OPアンプA3の出力端の電位が正電位から負電位に反転する。この結果、転流スイッチング素子Q3はオフとなる(
図3(d))。
【0068】
なお、モードIIIでは、二次コイルNsに逆起電圧が生じることにより、重負荷時と同じくダイオードD7が順バイアスとなり、電流I
Dが出力端pへ流れる(
図3(g))。電流I
Dは、トランスTの磁気エネルギーが放出されるにつれてリニアに減少し、磁気エネルギーがなくなると零になる。
【0069】
・モードIIIa
モードIIIaでは、PWM信号はオフ期間が続いており(
図3(a))、主スイッチング素子Q1および整流スイッチング素子Q2はオフであり(
図3(b))、チョークコイル電位V
Lは出力端電位であり(
図3(c))、転流スイッチング素子Q3はオフであり(
図3(d))、電流I
Lは零である(
図3(f))。
【0070】
・モードIV
軽負荷時のモードIVは、重負荷時にはないモードIIIaに続くモードであるので、重負荷時のモードIVとは動作が異なる。
【0071】
モードIVの始点は、重負荷時と同じくPWM信号がオフからオンになる時点である(
図3(a))。主スイッチング素子Q1および整流スイッチング素子Q2は、OPアンプA1、A2の応答遅れによって、モードIVではまだオフ状態である(
図3(b))。
【0072】
したがって、モードIVでは、トランスTの一次側および二次側のいずれにおいてもモードIIIaと同じ状態が持続する。転流スイッチング素子Q3もオフ状態のままである。
【0073】
モードIVは、次のモードIの始点まで持続する。モードIの始点は、上述した通り、所定の遅延時間後に主スイッチング素子Q1および整流スイッチング素子Q2がオンした時点である。
【0074】
軽負荷時には、転流スイッチング素子Q3は、PWM信号のオフ期間中に電流I
Lが零となった時点で既にオフとなっている。したがって、転流スイッチング素子Q3は、次のPWM信号のオン時よりさらに遅れてオンになる主スイッチング素子Q1及び整流スイッチング素子Q2と、同時にオンとなることはない。
【0075】
以上説明した本発明の同期整流型フォワードコンバータの動作を実現する回路構成は、
図1に示したものに限定されず、多様な回路構成が可能である。