(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流れ方向から見て、前記流れ方向および前記幅方向の両方と直交する厚み方向における前記第2流入口の一方側の内面は、前記厚み方向における前記下流部分の一方側の内面と面一であり、
前記流れ方向から見て、前記厚み方向における前記第2流入口の他方側の内面は、前記厚み方向における前記下流部分の他方側の内面と面一であり、
前記流れ方向から見て、前記厚み方向における前記第3流入口の一方側の内面は、前記厚み方向における前記下流部分の一方側の内面と面一であり、
前記流れ方向から見て、前記厚み方向における前記第3流入口の他方側の内面は、前記厚み方向における前記下流部分の他方側の内面と面一であることを特徴とする、請求項6に記載の押出成形装置。
前記第2流入口における前記第2溶融樹脂の流速、および、前記第3流入口における前記第2溶融樹脂の流速は、前記第1マニホールドにおける前記第1溶融樹脂の流速の0.5倍以上、1.5倍以下であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の押出成形装置。
前記第2流入口における前記第2溶融樹脂の流速、前記第3流入口における前記第2溶融樹脂の流速、および、前記第1マニホールドにおける前記第1溶融樹脂の流速は、0.1m/分以上、10m/分以下であることを特徴とする、請求項10に記載の押出成形装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に記載されるような押出成形装置では、靭性樹脂の溶融樹脂は、第1流路の途中で、脆性樹脂の溶融樹脂と合流する。そのため、靭性樹脂の溶融樹脂が脆性樹脂の溶融樹脂と合流したときに、脆性樹脂の流れと靭性樹脂の流れとが乱れる。
【0006】
その後、第1流路を通った溶融樹脂は、マニホールドで、幅方向に広げられる。このとき、脆性樹脂の流れと靭性樹脂の流れとの乱れが、更に助長される。
【0007】
その結果、成形されたフィルムの端部の厚みが不均一になる場合がある。
【0008】
本発明は、押出成形した基材の端部の厚みが不均一になることを抑制できる押出成形装置、フィルムの製造システム、および、フィルムの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、第1溶融樹脂が通る第1流路と、第2溶融樹脂が通る第2流路および第3流路と、前記第1流路と通じる第1流入口と、前記第2流路と通じる第2流入口と、前記第3流路と通じる第3流入口とを有する第1マニホールドと、前記第1マニホールドを通った前記第1溶融樹脂および前記第2溶融樹脂を吐出する吐出口とを有し、前記第1マニホールドは、前記第1流入口から前記吐出口へ向かう流れ方向に延び、かつ、前記流れ方向と直交する幅方向に延び、前記第1流入口は、前記流れ方向において前記第1マニホールドの上流端に配置され、かつ、前記幅方向において前記第1マニホールドの両端部の間に配置され、前記第2流入口は、前記流れ方向において前記第1流入口よりも下流に配置され、かつ、前記幅方向において前記第1マニホールドの一端部に配置され、前記第3流入口は、前記流れ方向において前記第1流入口よりも下流に配置され、かつ、前記幅方向において前記第1マニホールドの他端部に配置される、押出成形装置を含む。
【0010】
このような構成によれば、第1マニホールドの両端部で、第1溶融樹脂に第2溶融樹脂を合流させることができる。
【0011】
そのため、第1マニホールドで幅方向に広げられた第1溶融樹脂の両端部に、第2溶融樹脂を合流させることができる。
【0012】
そのため、第1溶融樹脂の流れと第2溶融樹脂の流れとが乱れることを抑制できる。
【0013】
その結果、押出成形した基材の端部の厚みが不均一になることを抑制できる。
【0014】
本発明[2]は、前記幅方向における前記第1マニホールドの前記一端部および前記他端部が、前記流れ方向に沿って延び、前記第2流路のうちの前記第2流入口と接続される部分、および、前記第3流路のうちの前記第3流入口と接続される部分が、前記流れ方向に沿って延びる、上記[1]の押出成形装置を含む。
【0015】
このような構成によれば、第2溶融樹脂を第1マニホールドに流れ方向に沿って供給でき、かつ、第1マニホールドに供給された第2溶融樹脂を流れ方向に沿って流すことができる。
【0016】
そのため、第2溶融樹脂の流れが乱れることを、より抑制できる。
【0017】
その結果、押出成形した基材の端部の厚みが不均一になることを、より抑制できる。
【0018】
本発明[3]は、前記第1マニホールドが、前記第1流入口から前記幅方向に広がる上流部分と、前記流れ方向における前記上流部分の下流端から前記流れ方向に延びる下流部分とを有し、前記第2流入口が、前記幅方向において前記下流部分の一端部に配置され、前記第3流入口が、前記幅方向において前記下流部分の他端部に配置される、上記[1]または[2]の押出成形装置を含む。
【0019】
このような構成によれば、第1マニホールドの上流部分で第1溶融樹脂を幅方向に広げた後、第1マニホールドの下流部分で、流れ方向に流れる第1溶融樹脂の幅方向両端に、第2溶融樹脂を合流させることができる。
【0020】
そのため、第1溶融樹脂の流れと第2溶融樹脂の流れとが乱れることを、より抑制できる。
【0021】
その結果、押出成形した基材の端部の厚みが不均一になることを、より抑制できる。
【0022】
本発明[4]は、前記第1流入口が、円形状であり、前記吐出口が、前記幅方向に延びる扁平形状であり、前記第1マニホールドの前記下流部分が、前記流れ方向から見て、前記幅方向に延びる扁平形状である、上記[3]の押出成形装置を含む。
【0023】
このような構成によれば、第1マニホールドによって、吐出口の扁平形状と近似した扁平形状に第1溶融樹脂を広げ、第1マニホールドによって広げられた第1溶融樹脂の幅方向両端に、第2溶融樹脂を合流させることができる。
【0024】
そのため、第1マニホールドと吐出口との間で、第1溶融樹脂の流れと第2溶融樹脂の流れとが乱れることを、より抑制できる。
【0025】
その結果、押出成形した基材の端部の厚みが不均一になることを、より抑制できる。
【0026】
本発明[5]は、前記第2流入口が、前記下流部分の前記幅方向の一端部の形状に沿う形状を有し、前記第3流入口が、前記下流部分の前記幅方向の他端部の形状に沿う形状を有する、上記[4]の押出成形装置を含む。
【0027】
このような構成によれば、第2溶融樹脂が第2流入口から下流部分に入った段階で、第2溶融樹脂は、下流部分の幅方向の一端部の形状に沿う形状を有している。
【0028】
その結果、第2流入口から下流部分内に入った第2溶融樹脂が下流部分内で幅方向に広げられることがなくても、下流部分の幅方向の一端部の形状に沿った端部を形成できる。
【0029】
同様に、第2溶融樹脂が第3流入口から下流部分に入った段階で、第2溶融樹脂は、下流部分の幅方向の他端部の形状に沿う形状を有している。
【0030】
その結果、第3流入口から下流部分内に入った第2溶融樹脂が下流部分内で幅方向に広げられることがなくても、下流部分の幅方向の他端部の形状に沿った端部を形成できる。
【0031】
本発明[6]は、前記流れ方向から見て、前記幅方向における前記第2流入口の一方側の内面が、前記幅方向における前記下流部分の一方側の内面と面一であり、前記流れ方向から見て、前記幅方向における前記第3流入口の他方側の内面が、前記幅方向における前記下流部分の他方側の内面と面一である、上記[5]の押出成形装置を含む。
【0032】
このような構成によれば、第2流入口から下流部分に入った第2溶融樹脂が幅方向に広がることがなくても、第2溶融樹脂を、下流部分の幅方向の一端部の形状に沿わせることができる。
【0033】
その結果、下流部分の幅方向の一端部の形状に沿った端部を形成できる。
【0034】
また、第3流入口から下流部分に入った第2溶融樹脂が幅方向に広がることがなくても、第2溶融樹脂を、下流部分の幅方向の他端部の形状に沿わせることができる。
【0035】
その結果、下流部分の幅方向の他端部の形状に沿った端部を形成できる。
【0036】
本発明[7]は、前記流れ方向から見て、前記流れ方向および前記幅方向の両方と直交する厚み方向における前記第2流入口の一方側の内面が、前記厚み方向における前記下流部分の一方側の内面と面一であり、前記流れ方向から見て、前記厚み方向における前記第2流入口の他方側の内面が、前記厚み方向における前記下流部分の他方側の内面と面一であり、前記流れ方向から見て、前記厚み方向における前記第3流入口の一方側の内面が、前記厚み方向における前記下流部分の一方側の内面と面一であり、前記流れ方向から見て、前記厚み方向における前記第3流入口の他方側の内面が、前記厚み方向における前記下流部分の他方側の内面と面一である、上記[6]の押出成形装置を含む。
【0037】
このような構成によれば、第2流入口から下流部分に入った第2溶融樹脂、および、第3流入口から下流部分に入った第2溶融樹脂が、厚み方向に広がることを防止できる。
【0038】
そのため、第2溶融樹脂が第2流入口および第3流入口から下流部分に入るときに、第2溶融樹脂の流れが乱れることを、より抑制できる。
【0039】
本発明[8]は、さらに、前記第1マニホールドと前記吐出口との間に配置され、前記第1マニホールドと通じる第2マニホールドを有し、前記第2マニホールドが、前記幅方向において前記第1マニホールドよりも長い、上記[1]〜[7]のいずれか1つの押出成形装置を含む。
【0040】
このような構成によれば、第1マニホールドを通った第1溶融樹脂および第2溶融樹脂を、第2マニホールドで、さらに、幅方向に広げることができる。
【0041】
その結果、第1溶融樹脂の流れと第2溶融樹脂の流れとが乱れることを抑制しつつ、幅方向に大きな基材を成形できる。
【0042】
本発明[9]は、前記第1マニホールドを有するフィードブロックと、前記吐出口を有し、前記フィードブロックと接続されるダイとを備える、上記[8]の押出成形装置を含む。
【0043】
本発明[10]は、前記ダイが、前記第2マニホールドを、さらに有する、上記[9]の押出成形装置を含む。
【0044】
本発明[11]は、前記第2流入口における前記第2溶融樹脂の流速、および、前記第3流入口における前記第2溶融樹脂の流速が、前記第1マニホールドにおける前記第1溶融樹脂の流速の0.5倍以上、2.0倍以下である、上記[1]〜[10]のいずれか1つの押出成形装置を含む。
【0045】
このような構成によれば、第1溶融樹脂に第2溶融樹脂を合流させるときに、第2溶融樹脂の流速を第1溶融樹脂の流速に近づけることができる。
【0046】
その結果、第1溶融樹脂の流れと第2溶融樹脂の流れとが乱れることを抑制できる。
【0047】
本発明[12]は、前記第2流入口における前記第2溶融樹脂の流速、前記第3流入口における前記第2溶融樹脂の流速、および、前記第1マニホールドにおける前記第1溶融樹脂の流速が、0.1m/分以上、10m/分以下である、上記[11]の押出成形装置を含む。
【0048】
本発明[13]は、前記第1溶融樹脂および前記第2溶融樹脂の粘度が、100Pa・s以上、10000Pa・s以下である、上記[1]〜[12]のいずれか1つの押出成形装置を含む。
【0049】
本発明[14]は、前記第1溶融樹脂が、脆性樹脂の溶融樹脂であり、前記第2溶融樹脂が、靭性樹脂の溶融樹脂である、上記[1]〜[13]のいずれか1つの押出成形装置を含む。
【0050】
このような構成によれば、成形された基材において、脆性樹脂からなる部分の幅方向両端を、靭性樹脂で補強できる。
【0051】
本発明[15]は、上記[1]〜[14]のいずれか1つの押出成形装置と、前記押出成形装置によって押出成形された基材を延伸する延伸装置とを備える、フィルムの製造システムを含む。
【0052】
本発明[16]は、上記[1]〜[14]のいずれか1つの押出成形装置で基材を押出成形する押出成形工程と、前記押出成形工程によって得られた前記基材を延伸する延伸工程とを含む、フィルムの製造方法を含む。
【発明の効果】
【0053】
本発明の押出成形装置、フィルムの製造システム、および、フィルムの製造方法によれば、押出成形した基材の端部の厚みが不均一になることを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
1.フィルムの製造システム
フィルムFの製造システム1について説明する。
【0056】
図1に示すように、フィルムFは、基材Sと、被膜Cとを備える。基材Sは、基材Sの厚み方向において、第1面S1と、第2面S2とを有する。被膜Cは、基材Sの第1面S1の上に配置される。被膜Cは、基材Sの第1面S1を覆う。被膜Cは、易接着層であってもよい。被膜Cが易接着層である場合、フィルムFは、易接着フィルムである。易接着フィルムは、例えば、モバイル機器、カーナビゲーション装置、パソコン用モニタ、テレビなどの画像表示装置の偏光板に使用される。詳しくは、易接着フィルムは、偏光板の偏光子を保護する保護フィルムとして使用される。易接着フィルムは、接着剤層を介して、偏光子と貼り合わされる。易接着フィルムは、易接着層で、偏光子と貼り合わされる。
【0057】
図2に示すように、フィルムFの製造システム1は、押出成形装置2と、延伸装置の一例としての第1延伸装置4Aと、塗工装置3と、延伸装置の一例としての第2延伸装置4Bと、スリット加工装置5と、ナーリング加工装置6と、巻取装置7とを備える。
【0058】
(1)押出成形装置
押出成形装置2は、基材Sを押出成形する(押出成形工程)。押出成形装置2から押し出された基材Sは、シート形状を有する。
【0059】
基材Sは、熱可塑性樹脂からなる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アセテート樹脂(ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなど)などが挙げられる。
【0060】
偏光子の保護フィルムとして使用される易接着フィルムを製造する場合、基材Sの材料として、好ましくは、アクリル樹脂が挙げられる。
【0061】
また、偏光子の保護フィルムとして使用される易接着フィルムを製造する場合、アクリル樹脂は、グルタル酸無水物構造を有するアクリル樹脂、ラクトン環構造を有するアクリル樹脂であってもよい。グルタル酸無水物構造を有するアクリル樹脂、および、ラクトン環構造を有するアクリル樹脂は、高い耐熱性、高い透明性、および高い機械的強度を有するため、偏光度が高くかつ耐久性に優れる偏光板の製造に適する。グルタル酸無水物構造を有するアクリル樹脂は、特開2006−283013号公報、特開2006−335902号公報、特開2006−274118号公報に記載されている。ラクトン環構造を有するアクリル樹脂は、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報に記載されている。
【0062】
また、基材Sは、アクリル樹脂に加えて、アクリル樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含有してもよい。他の熱可塑性樹脂を含有することにより、アクリル樹脂の複屈折を打ち消して、光学等方性に優れる易接着フィルムを得ることができる。また、易接着フィルムの機械強度を向上させることもできる。
【0063】
なお、基材Sは、酸化防止剤、安定剤、補強材、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、充填剤、可塑剤、滑剤、フィラーなどの添加剤を含有してもよい。
【0064】
(2)第1延伸装置
第1延伸装置4Aは、押出成形工程によって得られた基材Sを、加熱した後、基材Sの流れ方向MDに延伸する(第1延伸工程)。
【0065】
(3)塗工装置
塗工装置3は、押出成形工程によって押出成形された基材Sの第1面S1に、塗工液を塗布する(塗布工程)。なお、基材Sの第1面S1には、押出成形工程の後、塗布工程の前に、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理が、施されてもよい。
【0066】
塗工装置3としては、例えば、バーコーター、グラビアコーター、キスコーターなどが挙げられる。
【0067】
易接着フィルムを製造する場合、塗工液は、易接着層を形成するための易接着組成物である。
【0068】
易接着層は、バインダ樹脂と、微粒子とを含有する。
【0069】
バインダ樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。易接着フィルムが偏光子の保護フィルムとして使用される場合、バインダ樹脂は、好ましくは、熱硬化性樹脂である。バインダ樹脂は、複数種類を併用できる。
【0070】
微粒子としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)などの酸化物、例えば、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどのケイ酸塩、例えば、タルク、カオリンなどのケイ酸塩鉱物、例えば、リン酸カルシウムなどのリン酸塩などが挙げられる。易接着フィルムが偏光子の保護フィルムとして使用される場合、微粒子は、好ましくは、酸化物、より好ましくは、酸化ケイ素である。微粒子は、複数種類を併用できる。
【0071】
塗工液(易接着組成物)は、樹脂成分と、上記した微粒子と、分散媒とを含有する。
【0072】
樹脂成分は、後述する延伸工程によって、上記したバインダ樹脂の被膜(易接着層)を形成する。バインダ樹脂がウレタン樹脂である場合、樹脂成分としては、例えば、水系ウレタン樹脂が挙げられる。水系ウレタン樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂の乳化物である非反応型水系ウレタン樹脂、例えば、イソシアネート基をブロック剤で保護したウレタン樹脂の乳化物である反応型水系ウレタン樹脂などが挙げられる。バインダ樹脂がウレタン樹脂である場合、塗工液は、ウレタン硬化触媒(トリエチルアミンなど)、イソシアネートモノマーを含有してもよい。
【0073】
分散媒としては、例えば、水、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンなどが挙げられる。
【0074】
(4)第2延伸装置
第2延伸装置4Bは、塗工工程によって塗布された塗工液を乾燥する。これにより、塗工液が上記した被膜Cになる。また、第2延伸装置4Bは、被膜Cが形成された基材Sを、加熱した後、基材Sの幅方向TDに延伸する(第2延伸工程)。幅方向TDは、流れ方向MDと直交する。第2延伸工程により、被膜Cが形成された基材Sが延伸され、上記したフィルムFが得られる。
【0075】
(5)スリット加工装置
スリット加工装置5は、延伸工程によって延伸されたフィルムFを、所定の幅に切断する(スリット工程)。
【0076】
(6)ナーリング加工装置
ナーリング加工装置6は、スリット工程によって所定の幅に切断されたフィルムFの幅方向両端に、ナールを形成する(ナーリング工程)。ナールは、レーザーによって形成される。ナールは、加熱されたエンボスロールによって形成されてもよい。
【0077】
(7)巻取装置
巻取装置7は、ナーリング工程によってナールが形成されたフィルムFを巻き取る(巻取工程)。巻取工程が完了することにより、フィルムFのロールを得ることができる。
【0078】
2.押出成形装置の詳細
次に、押出成形装置2の詳細について説明する。
【0079】
図3に示すように、本実施形態では、押出成形装置2によって成形された基材Sは、幅方向TDにおいて、本体部Mと、2つの補強部R1、R2とを有する。
【0080】
本体部Mは、幅方向TDに延びる。本体部Mは、脆性樹脂からなる。
【0081】
脆性樹脂とは、上記した熱可塑性樹脂のうち、曲げられたときに割れやすい樹脂である。詳しくは、脆性樹脂とは、JIS P 8115:2001における荷重を200g重に変えた耐折強さ試験において、耐折回数が50回未満である樹脂をいう。
【0082】
耐折強さ試験は、試験機として、BE−202(テスター産業製)を使用し、以下の条件で実施する。
【0083】
<耐折強さ試験条件>
試験片のサイズ:幅15mm、長さ110mm
試験速度:175cpm
折曲げ角度:135°
荷重:200g重
折曲げクランプの曲率半径R:0.38mm
折曲げクランプの開き:0.25mm
本実施形態では、本体部Mは、未延伸の状態で、脆性樹脂からなる。未延伸の状態とは、押出成形工程の後、押出成形された基材Sを流れ方向MDまたは幅方向TDに延伸する前の状態である。
【0084】
本実施形態は、本体部Mの耐折回数が10回未満である場合に好ましく、本体部Mの耐折回数が5回未満である場合に、より好ましい。
【0085】
具体的には、脆性樹脂としては、アクリル樹脂が挙げられる。
【0086】
補強部R1は、幅方向TDにおける本体部Mの一端部を補強する。補強部R1は、幅方向TDにおいて、基材Sの一端部に配置される。補強部R1は、幅方向TDにおける本体部Mの一端部を覆う。補強部R1は、靭性樹脂からなる。
【0087】
靭性樹脂とは、上記した熱可塑性樹脂のうち、上記した耐折強さ試験において、耐折回数が50回以上である樹脂をいう。
【0088】
靭性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との混合物などが挙げられる。
【0089】
補強部R2は、幅方向TDにおける本体部Mの他端部を補強する。補強部R2は、幅方向TDにおいて、基材Sの他端部に配置される。補強部R2は、幅方向TDにおいて、本体部Mに対して、補強部R1の反対側に配置される。補強部R2は、幅方向TDにおける本体部Mの一端部を覆う。補強部R2は、靭性樹脂からなる。
【0090】
詳しくは、押出成形装置2は、第1バレル21と、第2バレル22と、フィードブロック23と、ダイ24とを備える。
【0091】
(1)第1バレル
第1バレル21は、基材Sの本体部Mの原料である第1樹脂を溶融する。第1樹脂は、溶融されることにより、第1溶融樹脂になる。第1樹脂としては、例えば、上記した脆性樹脂が挙げられる。つまり、第1溶融樹脂は、脆性樹脂の溶融樹脂である。
【0092】
第1溶融樹脂の粘度は、例えば、100Pa・s以上、好ましくは、500Pa・s以上、例えば、10000Pa・s以下、好ましくは、2000Pa・s以下である。
【0093】
(2)第2バレル
第2バレル22は、基材Sの補強部R1、R2の原料である第2樹脂を溶融する。第2樹脂は、溶融されることにより、第2溶融樹脂になる。第2樹脂としては、上記した靭性樹脂が挙げられる。つまり、第2溶融樹脂は、靭性樹脂の溶融樹脂である。
【0094】
第2溶融樹脂の粘度は、例えば、100Pa・s以上、好ましくは、500Pa・s以上、例えば、10000Pa・s以下、好ましくは、2000Pa・s以下である。
【0095】
(3)フィードブロック
フィードブロック23は、第1バレル21および第2バレル22と接続される。フィードブロック23は、第1バレル21からの第1溶融樹脂、および、第2バレル22からの第2溶融樹脂を、ダイ24に供給する。
【0096】
フィードブロック23は、第1流路231と、第2流路232と、第3流路233と、第1マニホールド234とを有する。言い換えると、押出成形装置2は、第1流路231と、第2流路232と、第3流路233と、第1マニホールド234とを有する。
【0097】
(3−1)第1流路
第1流路231は、第1バレル21と接続される。第1流路231には、第1バレル21から第1溶融樹脂が供給される。第1バレル21から供給された第1溶融樹脂は、第1流路231を通る。第1流路231は、第1マニホールド234の第1流入口P1に接続される。第1流入口P1については、後で説明する。
【0098】
(3−2)第2流路
第2流路232は、第2バレル22と接続される。第2流路232には、第2バレル22から第2溶融樹脂が供給される。第2バレル22から供給された第2溶融樹脂は、第2流路232を通る。第2流路232は、第1マニホールド234の第2流入口P2に接続される。第2流入口P2については、後で説明する。第2流路232のうちの第2流入口P2と接続される部分は、流れ方向MDに沿って延びる。これにより、第2流路232を通った第2溶融樹脂を、第1マニホールド234に、流れ方向MDに沿って供給できる。
【0099】
(3−3)第3流路
第3流路233は、第2バレル22と接続される。第3流路233には、第2バレル22から第2溶融樹脂が供給される。第2バレル22から供給された第2溶融樹脂は、第3流路233を通る。第3流路233は、第1マニホールド234の第3流入口P3に接続される。第3流入口P3については、後で説明する。第3流路233のうちの第3流入口と接続される部分は、流れ方向MDに沿って延びる。これにより、第3流路233を通った第2溶融樹脂を、第1マニホールド234に、流れ方向MDに沿って供給できる。
【0100】
(3−4)第1マニホールド
第1マニホールド234は、第1流路231とダイ24との間に配置される。言い換えると、第1マニホールド234は、第1流路231と吐出口241との間に配置される。吐出口241については、後で説明する。第1マニホールド234は、第1流路231と接続される。第1マニホールド234は、流れ方向MDに延びる。流れ方向MDは、言い換えると、第1流入口P1から吐出口241へ向かう方向である。第1マニホールド234は、幅方向TDにも延びる。第1マニホールド234は、第1マニホールド234に入った第1溶融樹脂を、幅方向TDに広げる。
【0101】
詳しくは、第1マニホールド234は、上流部分234Aと、下流部分234Bと、第1流入口P1と、第2流入口P2と、第3流入口P3とを有する。
【0102】
(3−4−1)上流部分
上流部分234Aは、第1流路231と接続される。上流部分234Aは、流れ方向MDにおいて、下流部分234Bと第1流路231との間に配置される。上流部分234Aは、第1流入口P1から幅方向TDに広がる。
【0103】
詳しくは、上流部分234Aは、幅方向において、内面S11と、内面S12とを有する。内面S11は、第1流入口P1から幅方向TDの一方側に向かって延びる。内面S11は、幅方向TDの一方側に向かうにつれて、流れ方向MDへ湾曲する。内面S12は、幅方向TDにおいて、第1流入口P1に対して、内面S11の反対側に配置される。内面S12は、第1流入口P1から幅方向TDの他方側に向かって延びる。内面S12は、幅方向TDに向かうにつれて、流れ方向MDへ湾曲する。上流部分234Aは、第1流入口P1から第1マニホールド234に入った第1溶融樹脂を、内面S11および内面S12に沿って、幅方向TDに広げる。
【0104】
(3−4−2)下流部分
下流部分234Bは、流れ方向MDにおける上流部分234Aの下流端から、流れ方向MDに延びる。これにより、下流部分234Bは、第1マニホールド234内の第1溶融樹脂および第2溶融樹脂を、流れ方向MDに流す。幅方向TDにおける下流部分234Bの長さは、幅方向TDにおける上流部分234Aの下流端の長さと同じである。幅方向TDにおける下流部分234Bの一端部および他端部は、流れ方向MDに沿って延びる。幅方向TDにおける下流部分234Bの一端部は、幅方向TDにおける第1マニホールド234の一端部であり、幅方向TDにおける下流部分234Bの他端部は、幅方向TDにおける第1マニホールド234の他端部である。つまり、幅方向TDにおける第1マニホールド234の一端部および他端部は、流れ方向MDに沿って延びる。
【0105】
図4Aに示すように、下流部分234Bは、流れ方向MDから見て、幅方向TDに延びる扁平形状である。これにより、第1マニホールド234によって、吐出口241の扁平形状と近似した扁平形状に第1溶融樹脂を広げ、第1マニホールド234によって広げられた第1溶融樹脂の幅方向TDの両端に、第2溶融樹脂を合流させることができる。そのため、第1マニホールド234と吐出口241との間で、第1溶融樹脂の流れと第2溶融樹脂の流れとが乱れることを、より抑制できる。その結果、押出成形した基材Sの端部の厚みが不均一になることを、より抑制できる。より具体的には、下流部分234Bは、幅方向TDに延びる長方形状である。
【0106】
なお、流れ方向MDおよび幅方向TDの両方と直交する厚み方向における下流部分234Bの幅は、第1流入口P1の直径よりも短い。
【0107】
第1マニホールド234の下流部分234Bにおける第1溶融樹脂の流速は、例えば、0.1m/分以上、好ましくは、1m/分以上であり、例えば、10m/分以下、好ましくは、5m/分以下である。
【0108】
(3−4−3)第1流入口
図3に示すように、第1流入口P1は、第1流路231と通じる。第1流入口P1は、流れ方向MDにおいて、第1マニホールド234の上流端に配置される。第1流入口P1は、幅方向TDにおいて、第1マニホールド234の両端部の間に配置される。第1流入口P1は、幅方向TDにおいて、第2流入口P2と第3流入口P3との間に配置される。第1流入口P1は、幅方向TDにおいて、第1マニホールド234の中央に配置される。第1流入口P1は、円形状である。
【0109】
(3−4−4)第2流入口
第2流入口P2は、第2流路232と通じる。第2流入口P2は、流れ方向MDにおいて、第1流入口P1よりも下流に配置される。第2流入口P2は、幅方向TDにおいて、第1マニホールド234の一端部に配置される。これにより、第1マニホールド234の一端部で、第1溶融樹脂に第2溶融樹脂を合流させることができる。そのため、第1マニホールド234で幅方向に広げられた第1溶融樹脂に、第2溶融樹脂を合流させることができる。そのため、第1溶融樹脂の流れと第2溶融樹脂の流れとが乱れることを抑制できる。その結果、押出成形した基材Sの端部の厚みが不均一になることを抑制できる。
【0110】
詳しくは、
図4Aに示すように、第2流入口P2は、幅方向TDにおいて、下流部分234Bの一端部に配置される。これにより、第1マニホールド234の上流部分234Aで第1溶融樹脂を幅方向TDに広げた後、第1マニホールド234の下流部分234Bで、流れ方向MDに流れる第1溶融樹脂の幅方向TDの一端部に、第2溶融樹脂を合流させることができる。そのため、幅方向TDの一端部において、第1溶融樹脂の流れと第2溶融樹脂の流れとが乱れることを、より抑制できる。その結果、押出成形した基材Sの端部の厚みが不均一になることを、より抑制できる。
【0111】
ここで、第2流入口P2を通った第2溶融樹脂は、下流部分234Bの幅方向TDの一端部に入るので、下流部分234B内において、幅方向TDに広げられることがない。そのため、第2溶融樹脂を、下流部分234B内で、所望の形状に成形できない可能性がある。例えば、下流部分234Bの形状が長方形状であるのに対して、第2流入口P2の形状が円形状である場合、端部が円形状になってしまう可能性がある。
【0112】
この点、第2流入口P2は、四角形状である。つまり、第2溶融樹脂は、四角形状の第2流入口P2から、長方形状の下流部分234Bの幅方向TDの一端部に入る。そのため、第2溶融樹脂が第2流入口P2から下流部分234Bに入った段階で、第2溶融樹脂は、下流部分234Bの幅方向TDの一端部の形状に沿う形状を有している。その結果、第2流入口P2から下流部分234B内に入った第2溶融樹脂が下流部分234B内で幅方向TDに広げられることがなくても、下流部分234Bの幅方向TDの一端部の形状に沿った端部を形成できる。
【0113】
なお、第2流入口P2の形状は、下流部分234Bの幅方向TDの一端部の形状に沿う形状であればよく、四角形状に限られない。
【0114】
好ましくは、流れ方向MDから見て、幅方向TDにおける第2流入口P2の一方側の内面S31は、幅方向TDにおける下流部分234Bの一方側の内面S21と面一である。そのため、第2流入口P2から下流部分234Bに入った第2溶融樹脂が幅方向TDに広がることがなくても、第2溶融樹脂を、下流部分234Bの幅方向TDの一端部の形状に沿わせることができる。その結果、下流部分234Bの幅方向TDの一端部の形状に沿った端部を形成できる。
【0115】
なお、内面S31は、内面S21と面一でなくてもよい。内面S31と内面S21との間には、下流部分234Bの幅方向TDの一端部の形状に沿った端部を形成できる程度に、段差があってもよい。
【0116】
流れ方向MDから見て、厚み方向における第2流入口P2の一方側の内面S32は、厚み方向における下流部分234Bの一方側の内面S23と面一である。流れ方向MDから見て、厚み方向における第2流入口P2の他方側の内面S33は、厚み方向における下流部分234Bの他方側の内面S24と面一である。そのため、第2流入口P2から下流部分234Bに入った第2溶融樹脂が、厚み方向に広がることを防止できる。その結果、第2溶融樹脂が第2流入口P2から下流部分234Bに入るときに、第2溶融樹脂の流れが乱れることを、より抑制できる。
【0117】
なお、内面S32は、内面S23と面一でなくてもよく、内面S33は、内面S24と面一でなくてもよい。内面S32と内面S23との間、および、内面S33と内面S24との間には、下流部分234Bの幅方向TDの一端部の形状に沿った端部を形成できる程度に、段差があってもよい。
【0118】
第2流入口P2における第2溶融樹脂の流速は、第1マニホールド234の下流部分234Bにおける第1溶融樹脂の流速の、例えば、0.5倍以上、好ましくは、0.7倍以上であり、例えば、1.5倍以下である。そのため、幅方向TDの一端部において、第1溶融樹脂に第2溶融樹脂を合流させるときに、第2溶融樹脂の流速を第1溶融樹脂の流速に近づけることができる。その結果、第1溶融樹脂の流れと第2溶融樹脂の流れとが乱れることを抑制できる。
【0119】
具体的には、第2流入口P2における第2溶融樹脂の流速は、例えば、0.1m/分以上、好ましくは、1m/分以上であり、例えば、10m/分以下、好ましくは、5m/分以下である。
【0120】
(3−4−5)第3流入口
図3に示すように、第3流入口P3は、第3流路233と通じる。第3流入口P3は、流れ方向MDにおいて、第1流入口P1よりも下流に配置される。第3流入口P3は、幅方向TDにおいて、第1マニホールド234の他端部に配置される。これにより、第1マニホールド234の他端部で、第1溶融樹脂に第2溶融樹脂を合流させることができる。そのため、第1マニホールド234で幅方向TDに広げられた第1溶融樹脂に、第2溶融樹脂を合流させることができる。そのため、第1溶融樹脂の流れと第2溶融樹脂の流れとが乱れることを抑制できる。その結果、押出成形した基材Sの端部の厚みが不均一になることを抑制できる。
【0121】
詳しくは、
図4Aに示すように、第3流入口P3は、幅方向TDにおいて、下流部分234Bの他端部に配置される。これにより、第1マニホールド234の上流部分234Aで第1溶融樹脂を幅方向TDに広げた後、第1マニホールド234の下流部分234Bで、流れ方向MDに流れる第1溶融樹脂の幅方向TDの他端部に、第2溶融樹脂を合流させることができる。そのため、幅方向TDの他端部において、第1溶融樹脂の流れと第2溶融樹脂の流れとが乱れることを、より抑制できる。その結果、押出成形した基材Sの端部の厚みが不均一になることを、より抑制できる。
【0122】
第3流入口P3は、第2流入口P2と同様に、四角形状である。つまり、第2溶融樹脂は、四角形状の第3流入口P3から、長方形状の下流部分234Bの幅方向TDの他端部に入る。そのため、第2溶融樹脂が第3流入口P3から下流部分234Bに入った段階で、第2溶融樹脂は、下流部分234Bの幅方向TDの他端部の形状に沿う形状を有している。その結果、第3流入口P3から下流部分234B内に入った第2溶融樹脂が下流部分234B内で幅方向TDに広げられることがなくても、下流部分234Bの幅方向TDの他端部の形状に沿った端部を形成できる。
【0123】
なお、第3流入口P3の形状は、下流部分234Bの幅方向TDの他端部の形状に沿う形状であればよく、四角形状に限られない。
【0124】
好ましくは、流れ方向MDから見て、幅方向TDにおける第3流入口P3の他方側の内面S41は、幅方向TDにおける下流部分234Bの他方側の内面S22と面一である。そのため、第3流入口P3から下流部分234Bに入った第2溶融樹脂が、幅方向TDに広がることがなくても、第2溶融樹脂を、下流部分234Bの幅方向TDの他端部の形状に沿わせることができる。その結果、下流部分234Bの幅方向TDの他端部の形状に沿った端部を形成できる。
【0125】
なお、内面S41は、内面S22と面一でなくてもよい。内面S41と内面S22との間には、下流部分234Bの幅方向TDの他端部の形状に沿った端部を形成できる程度に、段差があってもよい。
【0126】
流れ方向MDから見て、厚み方向における第3流入口P3の一方側の内面S42は、厚み方向における下流部分234Bの一方側の内面S23と面一である。流れ方向MDから見て、厚み方向における第3流入口P3の他方側の内面S43は、厚み方向における下流部分234Bの他方側の内面S24と面一である。そのため、第3流入口P3から下流部分234Bに入った第2溶融樹脂が、厚み方向に広がることを防止できる。その結果、第2溶融樹脂が第3流入口P3から下流部分234Bに入るときに、第2溶融樹脂の流れが乱れることを、より抑制できる。
【0127】
なお、内面S42は、内面S23と面一でなくてもよく、内面S43は、内面S24と面一でなくてもよい。内面S42と内面S23との間、および、内面S43と内面S24との間には、下流部分234Bの幅方向TDの他端部の形状に沿った端部を形成できる程度に、段差があってもよい。
【0128】
第3流入口P3における第2溶融樹脂の流速は、第1マニホールド234の下流部分234Bにおける第1溶融樹脂の流速の、例えば、0.5倍以上、好ましくは、0.7倍以上であり、例えば、1.5倍以下である。そのため、幅方向TDの他端部において、第1溶融樹脂に第2溶融樹脂を合流させるときに、第2溶融樹脂の流速を第1溶融樹脂の流速に近づけることができる。その結果、第1溶融樹脂の流れと第2溶融樹脂の流れとが乱れることを抑制できる。
【0129】
具体的には、第3流入口P3における第2溶融樹脂の流速は、例えば、0.1m/分以上、好ましくは、1m/分以上であり、例えば、10m/分以下、好ましくは、5m/分以下である。
【0130】
(4)ダイ
図3に示すように、ダイ24は、フィードブロック23と接続される。ダイ24は、吐出口241と、第2マニホールド242とを有する。言い換えると、押出成形装置2は、吐出口241と、第2マニホールド242とを有する。
【0131】
(4−1)吐出口
吐出口241は、第1マニホールド234および第2マニホールド242を通った第1溶融樹脂および第2溶融樹脂を吐出する。
【0132】
図4Bに示すように、吐出口241は、幅方向TDに延びる扁平形状である。より具体的には、吐出口241は、幅方向TDに延びる長方形状である。吐出口241は、幅方向TDにおいて、第1マニホールド234の下流部分234Bよりも長い。厚み方向における吐出口241の幅は、厚み方向における第1マニホールド234の下流部分234Bの幅よりも短い。
【0133】
(4−2)第2マニホールド
図3に示すように、第2マニホールド242は、第1マニホールド234と吐出口241との間に配置される。第2マニホールド242は、第1マニホールド234と通じる。第2マニホールド242は、流れ方向MDに延びる。第2マニホールド242は、幅方向TDにも延びる。第2マニホールド242は、幅方向TDにおいて第1マニホールド234よりも長い。これにより、第1マニホールド234を通った第1溶融樹脂および第2溶融樹脂を、第2マニホールド242で、さらに、幅方向TDに広げることができる。その結果、第1溶融樹脂の流れと第2溶融樹脂の流れとが乱れることを抑制しつつ、幅方向TDに大きな基材Sを成形できる。
【0134】
詳しくは、第2マニホールド242は、上流部分242Aと、下流部分242Bとを有する。
【0135】
(4−2−1)上流部分
上流部分242Aは、第1マニホールド234と通じる。上流部分242Aは、流れ方向MDにおいて、下流部分242Bと第1マニホールド234との間に配置される。上流部分242Aは、第1マニホールド234から幅方向TDに広がる。
【0136】
詳しくは、上流部分242Aは、幅方向TDにおいて、内面S51と、内面S52とを有する。内面S51は、第1マニホールド234から幅方向TDの一方側に向かって延びる。内面S51は、幅方向TDの一方側に向かうにつれて、流れ方向MDへ湾曲する。内面S52は、幅方向TDにおいて、第1マニホールド234に対して、内面S51の反対側に配置される。内面S52は、第1マニホールド234から幅方向TDの他方側に向かって延びる。内面S52は、幅方向TDの他方側に向かうにつれて、流れ方向MDへ湾曲する。これにより、上流部分242Aは、第1マニホールド234から第2マニホールド242に入った第1溶融樹脂および第2溶融樹脂を、内面S51および内面S52に沿って、幅方向TDに広げる。
【0137】
(4−2−2)下流部分
下流部分242Bは、上流部分242Aの下流端から流れ方向MDに延びる。これにより、下流部分242Bは、第2マニホールド242内の第1溶融樹脂および第2溶融樹脂を、流れ方向MDに流す。下流部分242Bは、上流部分242Aの下流端と同じ幅を有する。幅方向TDにおける下流部分242Bの一端部および他端部は、流れ方向MDに沿って延びる。幅方向TDにおける下流部分242Bの一端部は、幅方向TDにおける第2マニホールド242の一端部である。幅方向TDにおける下流部分242Bの他端部は、幅方向TDにおける第2マニホールド242の他端部である。つまり、幅方向TDにおける第2マニホールド242の一端部および他端部は、流れ方向MDに沿って延びる。下流部分234Bは、流れ方向MDから見て、吐出口241と同一の形状である。下流部分234Bは、吐出口241に通じる。
【0138】
3.変形例
(1)押出成形装置2は、フィードブロック23を備えなくてもよい。この場合、第1マニホールド234は、ダイ24に設けられていてもよい。
【0139】
(2)押出成形装置2は、第2マニホールド242を有さなくてもよい。この場合、第1マニホールド234は、吐出口241と通じていてもよい。
【0140】
(3)第1溶融樹脂は、脆性樹脂の溶融樹脂でなくてもよい。第1溶融樹脂は、第2溶融樹脂とは異なる靭性樹脂の溶融樹脂でもよい。
【0141】
(4)フィルムFの製造システム1は、塗工装置3を備えなくてもよい。
【0142】
(5)フィルムFの製造システム1は、第1延伸装置4Aを備えなくてもよい。基材Sは、第2延伸装置4Bによって、流れ方向MDおよび幅方向TDに延伸(二軸同時延伸)されてもよい。
【0143】
(6)フィルムFの製造システム1は、第1延伸装置4Aおよび第2延伸装置4Bを備えなくてもよい。つまり、フィルムFの製造システム1は、フィルムFを延伸しなくてもよい。その場合、フィルムFを巻取らずに定尺に裁断して積載してもよい。
【0144】
(7)フィルムFの製造システム1は、ナーリング加工装置6を備えなくてもよい。フィルムFにマスキングフィルムを貼り合せて巻き取ってもよい。
【実施例】
【0145】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明する。本発明は、下記の実施例によって限定されない。
【0146】
実施例
図3に示すように、フィードブロックのマニホールドの両端で、アクリル樹脂(脆性樹脂)の溶融樹脂に、ポリカーボネート(靭性樹脂)の溶融樹脂を合流させて、基材を押出成形した。成形中に、インラインのトラバース式赤外線膜厚計を使用して、成形された基材の厚みを、幅方向に100回連続して測定した。
【0147】
比較例
特開2006−315275号公報に記載されるように、フィードブロックの脆性樹脂の流路で、アクリル樹脂(脆性樹脂)の溶融樹脂に、ポリカーボネート(靭性樹脂)の溶融樹脂を合流させて、基材を押出成形した。成形された基材の厚みを、実施例と同様に測定した。
【0148】
図5および
図6に示すように、実施例の基材の端部の厚みの変動F1の方が、比較例の基材の端部の厚みの変動F2よりも小さかった。つまり、実施例の方が、比較例よりも、基材の端部の厚みが不均一になることを抑制できていた。
押出成形装置2は、第1溶融樹脂が通る第1流路231と、第2溶融樹脂が通る第2流路232および第3流路233と、第1マニホールド234と、第1マニホールド234を通った第1溶融樹脂および第2溶融樹脂を吐出する吐出口241とを有する。第2流路232は、幅方向TDにおける第1マニホールド234の一端部と接続する。第3流路233は、幅方向TDにおける第1マニホールド234の他端部と接続する。