(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ウレタンプレポリマーは、ポリエーテルポリオールと、ポリイソシアネート化合物とを反応させて得られた、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリエーテル系ウレタンプレポリマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法は、水処理用微生物固定化担体用の軟質ポリウレタンフォームの製造方法である。前記製造方法は、ウレタンプレポリマー及びポリイソシアネート化合物(a)を含むA液と、硬化剤及び発泡剤を含むB液とを混合して発泡させる工程を有しており、A液とB液との混合直前のA液の温度T
Aが、25〜38℃であり、かつ、混合直前のB液の温度T
Bよりも高いことを特徴としている。
前記軟質ポリウレタンフォームは、水膨潤時の膨潤密度が25〜70kg/m
3であり、水膨潤時の平均気孔数が9〜30個/25mmであり、絶乾状態の体積に対する水膨潤時の体積の比で表される体積膨潤率が110〜1000%である。
上記のように温度制御されたA液及びB液の2液の原料液を混合して発泡させることにより、水処理用微生物固定化担体に適した親水性、水膨潤性及び所定のセル構造を有する軟質ポリウレタンフォームを、安定的かつ効率的に製造することができる。
【0012】
[A液]
前記軟質ポリウレタンフォームの原料液の1つであるA液は、ウレタンプレポリマー及びポリイソシアネート化合物(a)を含み、さらに、無機フィラーを含んでいてもよい。
【0013】
(ウレタンプレポリマー)
ウレタンプレポリマーは、ポリオール化合物と、該ポリオール化合物の水酸基に対して、イソシアネート基のモル当量比が過剰となる量のポリイソシアネート化合物(b)とを反応させて得られるポリマーであり、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有している。前記ウレタンプレポリマーは、1種単独であっても、2種以上を併用してもよい。
このようなプレポリマーを原料化合物として用いることにより、軟質ポリウレタンフォームの生成反応が進行しやすくなり、密度やセル構造のバラつきが小さく、均質性に優れた軟質ポリウレタンフォームが得られやすい。
【0014】
前記ウレタンプレポリマーとしては、ポリエーテルポリオールとポリイソシアネート化合物(b)とを反応させて得られた、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリエーテル系ウレタンプレポリマーが好ましい。
【0015】
ポリエーテルポリオールも、ポリエステルポリオールも、いずれも親水性を付与し得るが、ポリエステルポリオールに比べて、ポリエーテルポリオールの方が耐加水分解性に優れている。製造される軟質ポリウレタンフォームは、水処理用微生物固定化担体として水中で用いられるものであるため、該軟質ポリウレタンフォームの耐久性の観点から、ポリエーテルポリオールが、ポリエステルポリオールよりも好ましい。
【0016】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。これらは、それぞれ、環状エーテル化合物である、酸化エチレン(EO)、酸化プロピレン(PO)、テトラヒドロフランの開環重合により得られる。前記ポリエーテルポリオールは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、前記環状エーテル化合物の共重合体であってもよく、製造される軟質ポリウレタンフォームの柔軟性や親水性等の観点から、特に、EO−PO共重合体が好ましい。
EO−PO共重合体におけるEOとPOとのモノマー組成比は、質量比で70/30〜30/70であることが好ましく、より好ましくは65/35〜40/60、さらに好ましくは60/40〜50/50である。
【0017】
前記ポリエーテルポリオールは、取り扱いやすさ等の観点から粘度が高すぎないことが好ましく、数平均分子量が1000〜8000であることが好ましく、より好ましくは2000〜7000、さらに好ましくは2500〜5000である。
【0018】
A液は、調製時及びA液とB液との混合時の取り扱いやすさ等の観点から粘度が高すぎないことが好ましい。B液と混合する際のA液の粘度は、スピンドル型粘度計での測定値が、300〜9000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは300〜7500mPa・s、さらに好ましくは300〜6000mPa・sである。
このため、前記ウレタンプレポリマーの粘度は、スピンドル型粘度計での25℃における測定値が、300〜9500mPa・sであることが好ましく、より好ましくは300〜9000mPa・s、さらに好ましくは300〜8500mPa・sである。
【0019】
前記ポリエーテルポリオールと反応させるポリイソシアネート化合物(b)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、特に限定されるものではない。前記ポリイソシアネート化合物(b)としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物(b)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0020】
ポリイソシアネート化合物(b)は、異性体がある化合物である場合には、各異性体の1種のみでもよく、2種以上の異性体の混合物であってもよい。例えば、TDIは、トルエン−2,4−ジイソシアネート(2,4−TDI)とトルエン−2,6−ジイソシアネート(2,6−TDI)の2種の異性体があり、2,4−TDI及び2,6−TDIのいずれか一方のみを用いても、2種の混合物を用いてもよい。
【0021】
(ポリイソシアネート化合物(a))
A液に含まれるポリイソシアネート化合物(a)は、特に限定されるものではなく、具体例としては、前記ウレタンプレポリマーの合成に用いられるポリイソシアネート化合物(b)について例示したものと同様のものが挙げられる。ポリイソシアネート化合物(a)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、ポリイソシアネート化合物(a)は、前記ウレタンプレポリマーの合成に用いられるポリイソシアネート化合物(b)と同じであっても、異なっていてもよい。
【0022】
A液中のポリイソシアネート化合物(a)の含有量は、該A液の粘度や軟質ポリウレタンフォームの親水性等を考慮して設定されるが、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、より好ましくは1〜25質量部、さらに好ましくは2〜20質量部である。
【0023】
(無機フィラー)
A液は、必要に応じて、無機フィラーを含んでいてもよい。前記無機フィラーを用いることにより、製造される軟質ポリウレタンフォームの比重を調整することができ、該軟質ポリウレタンフォームを用いて作製した水処理用微生物固定化担体を水に投入した際に速やかに水中に沈降させることができる。
前記無機フィラーとしては、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ、活性炭、ゼオライト等が挙げられる。前記無機フィラーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、A液中での分散性や製造される軟質ポリウレタンフォームの比重等の観点から、硫酸バリウムが好ましい。
【0024】
前記無機フィラーは、製造される軟質ポリウレタンフォーム中での均一な分散性等の観点から、平均粒径が0.1〜100μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜70μm、さらに好ましくは1〜50μmである。
なお、本明細書で言う「平均粒径」とは、レーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(D
50)を指す。具体的には、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置「MT3300」(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定されたD
50値とする。
【0025】
A液が無機フィラーを含む場合、該無機フィラーの含有量は、製造される軟質ポリウレタンフォームの比重等の物性に応じて適宜調整されるが、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、より好ましくは1〜25質量部、さらに好ましくは2〜20質量部である。
【0026】
A液には、ウレタンプレポリマー、ポリイソシアネート化合物(a)及び無機フィラー以外に、必要に応じて、溶剤、触媒、また、着色剤等の添加剤が含まれていてもよい。ただし、軟質ポリウレタンフォームの製造効率の観点から、A液100質量%中、ポリウレタンの合成原料であるウレタンプレポリマー及びポリイソシアネート化合物(a)の合計含有量が、30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは35〜100質量%、さらに好ましくは40〜100質量%である。
【0027】
[B液]
B液は、硬化剤及び発泡剤を含む。B液は、A液の原料化合物を硬化発泡させる役割を有している。
【0028】
(硬化剤)
硬化剤は、ウレタンプレポリマー及びポリイソシアネート化合物(a)を架橋硬化させるために添加されるものであり、架橋剤と呼ばれる場合もある。
前記硬化剤としては、例えば、水;グリセリン、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール等の多価アルコール;エタノールアミン類、ポリエチレンポリアミン類等のアミン化合物等が挙げられる。また、前記多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を開環重合させたポリオール類、前記アミン化合物に少量のプロピレンオキサイドを付加したもの等も挙げられる。これらの硬化剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。前記硬化剤の中でも、反応性、取り扱い容易性やコスト等の観点から、水が好ましい。
B液中の硬化剤の含有量は、軟質ポリウレタンフォームの柔軟性や弾力性、強度等を考慮して、適宜設定することができる。
【0029】
(発泡剤)
発泡剤は、軟質ポリウレタンフォームのフォーム形成のために添加される。前記発泡剤は、ポリウレタンの生成反応時に、イソシアネート基との反応により二酸化炭素ガスを発生したり、発泡剤自体が発熱によって気化することによって、ポリウレタンを発泡させる。
前記発泡剤としては、例えば、水、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)、炭酸ガス、シクロペンタン等の炭化水素等が挙げられる。これらの発泡剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。前記発泡剤の中でも、取り扱い容易性やコスト、環境保全等の観点から、水単独での使用が好ましい。
B液中の発泡剤の含有量は、軟質ポリウレタンフォームの発泡速度(フォーム生成速度)、A液及びB液の混合状態等を考慮して、適宜設定することができる。
【0030】
上記のように、水は、硬化剤として、また、発泡剤としての両方の働きをするものであり、B液の原料化合物として好適である。この場合、硬化剤かつ発泡剤として用いられる水のB液中の含有量は、ポリウレタンの合成原料であるA液中のウレタンプレポリマー及びポリイソシアネート化合物(a)の合計100質量部に対して、好ましくは60〜90質量部、より好ましくは65〜85質量部、さらに好ましくは70〜80質量部である。
【0031】
B液には、硬化剤及び発泡剤以外に、必要に応じて、溶剤、触媒、整泡剤や着色剤等の添加剤が含まれていてもよい。ただし、軟質ポリウレタンフォームの製造効率の観点から、B液100質量%中、硬化剤及び発泡剤の合計含有量が、85〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは90〜99質量%、さらに好ましくは95〜98質量%である。
【0032】
前記整泡剤は、フォームの状態を調整するために添加される。前記整泡剤としては、例えば、界面活性剤、シリコーンオイル等が挙げられる。これらの整泡剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。前記整泡剤の中でも、分子末端に水酸基を有し、イソシアネートと化学的な結合が可能であり、泡立ちが少ない、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
B液が前記整泡剤を含む場合、軟質ポリウレタンフォーム中に余剰の整泡剤が残存し、該軟質ポリウレタンフォームを用いて作製した水処理用微生物固定化担体を水に投入した際に泡立ちが生じることを抑制する観点から、B液100質量%中の整泡剤の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0033】
[混合発泡工程]
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法においては、上述したA液及びB液を混合して発泡させる混合発泡工程を経る。
前記混合発泡工程では、A液の粘性や、A液とB液との良好な混合性等の観点から、A液とB液との混合直前のA液の温度T
Aを、25〜38℃とする。温度T
Aは、好ましくは26〜37℃、より好ましくは27〜36℃である。
温度T
Aが25℃未満の場合、A液の粘度が10000mPa・s以上と高くなりすぎ、B液と均質に混合しにくくなり、軟質ポリウレタンフォームの製造効率及び均質性が低下することとなる。
一方、温度T
Aが38℃超の場合、ポリウレタンの生成反応及び発泡の速度が大きく、製造される軟質ポリウレタンフォームの絶乾密度及び水膨潤時の膨潤密度が小さくなりやい。このような絶乾密度及び膨潤密度が小さい軟質ポリウレタンフォームは、樹脂量が少ないため、強度が低く、変形しやすく、これを用いて製造した水処理用微生物固定化担体は、処理槽のスクリーンの目詰まりや、変形して処理槽から漏出する等の不都合を生じるおそれがある。また、樹脂量が少ないと、物理摩耗に対して弱く、体積減少(消耗)が早くなる。
【0034】
また、温度T
Aは、混合直前のB液の温度T
Bよりも高い温度とする。温度T
Aと温度T
Bの差T
A−T
Bは、3〜30℃であることが好ましく、より好ましくは5〜28℃、さらに好ましくは7〜25℃である。
A液は、ウレタンプレポリマーを含むため、B液よりも粘度が高いが、B液との混合直前の温度T
Aを、温度T
Bよりも高く設定することにより、ポリウレタンの生成反応及び発泡が適度な速度で進行し、クラック等の欠陥を生じることなく、親水性及び水膨潤性に優れた軟質ポリウレタンフォームの製造を効率的に行うことができる。
温度T
Aが25〜38℃であっても、温度T
Bと同じ又はより低い場合、ポリウレタンの生成反応及び発泡の速度が大きく、製造される軟質ポリウレタンフォームの絶乾密度及び水膨潤時の膨潤密度が小さくなりやすい。このような絶乾密度及び膨潤密度が小さい軟質ポリウレタンフォームは、樹脂量が少ないため、強度が低く、変形しやすく、これを用いて製造した水処理用微生物固定化担体は、処理槽のスクリーンの目詰まりや、変形して処理槽から漏出する等の不都合を生じるおそれがある。また、樹脂量が少ないと、物理摩耗に対して弱く、体積減少(消耗)が早くなる。
【0035】
混合直前のB液の温度T
Bは、10〜30℃であることが好ましく、より好ましくは12〜25℃、さらに好ましくは14〜20℃である。
温度T
Bを、このような温度範囲とすることによって、A液とB液との混合液の温度が調整され、適度な反応速度となり、粘度に差があるA液とB液とを均質に混合しやすくなり、所望のセル構造の均質な軟質ポリウレタンフォームの製造を効率的に行うことができる。
【0036】
前記混合発泡工程におけるA液とB液との混合比は、所望のセル構造の均質な軟質ポリウレタンフォームを得る観点から、質量比で55/45〜65/35であることが好ましく、より好ましくは57/43〜63/37、さらに好ましくは58/42〜62/38、特に好ましくは60/40である。
【0037】
前記混合発泡工程は、具体的には、原料を撹拌混合してそれぞれ調製したA液及びB液を、ミキシングヘッドを用いて混合して注型発泡成形する方法等により行うことができる。
この場合、ミキシングヘッドで混合される直前のA液及びB液について、上述したような温度制御を行うことにより、所望のセル構造の均質な軟質ポリウレタンフォームを製造することができる。
なお、A液の温度T
A及びB液の温度T
Bの温度制御は、A液及びB液のそれぞれを調製するタンク等の容器に備えられた加熱冷却装置にて行い、所定の温度に保温されることが好ましい。
【0038】
注型したA液及びB液の原料混合液の樹脂化反応、すなわち、ポリウレタンの生成反応の進行は、原料混合液がゲル化し始めた時間を目安として確認することができる。ミキシングヘッドを用いてA液及びB液の原料混合液を注型する場合、ミキシングヘッドからの前記原料混合液の吐出開始時点から、注型した該原料混合液のゲル化が開始するまでの時間を表すゲルタイムが、ポリウレタンの生成反応の速度の目安となる。
上記のようにして注型発泡成形を行う場合のゲルタイムは、所望のセル構造の均質な軟質ポリウレタンフォームを効率的に得る観点から、好ましくは90〜150秒、より好ましくは95〜130秒、さらに好ましくは100〜120秒である。
【0039】
また、注型された前記原料混合液の発泡反応の進行は、注型した型内の該原料混合液の反応により生じたフォームの膨張に伴う高さの変動を目安として、目視観察にて確認することができる。ミキシングヘッドを用いてA液及びB液の原料混合液を注型する場合、ミキシングヘッドからの前記原料混合液の吐出開始時点から、前記型内のフォームの高さの変動が停止するまでの時間を表すライズタイムが、ポリウレタンの発泡反応の速度の目安となる。
上記のようにして注型発泡成形を行う場合のライズタイムは、所望のセル構造の均質な軟質ポリウレタンフォームを効率的に得る観点から、好ましくは135〜195秒、より好ましくは140〜190秒、さらに好ましくは145〜185秒である。
【0040】
[軟質ポリウレタンフォーム]
本発明の製造方法で製造される軟質ポリウレタンフォームは、水処理用微生物固定化担体に適用されるものとして、水膨潤時の膨潤密度が、25〜70kg/m
3であり、好ましくは28〜60kg/m
3、より好ましくは28.5〜50kg/m
3である。
前記膨潤密度が25kg/m
3未満の軟質ポリウレタンフォームは、樹脂量が少なすぎて、強度が低く、変形しやすく、これを用いて製造した水処理用微生物固定化担体は、処理槽のスクリーンの目詰まりや、変形してスクリーンを通過し処理槽から漏出する等の不都合を生じるおそれがある。また、樹脂量が少ないと、物理摩耗に対して弱く、体積減少(消耗)が早くなる。
一方、前記膨潤密度が70kg/m
3超では、原料コストが過大となるため好ましくない。
【0041】
ここで、本発明で言う「水膨潤時」とは、軟質ポリウレタンフォームを25℃の純水に1時間浸漬させた状態を指す。また、「膨潤密度」とは、絶乾状態の質量を水膨潤時の体積で除した値として求められる値を指す。前記膨潤密度は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
また、前記「絶乾状態」とは、軟質ポリウレタンフォームを100℃で乾燥させて、質量の減少が見られなくなった状態を指す。絶対乾燥状態と言う場合もある。
また、前記「水膨潤時の体積」は、軟質ポリウレタンフォームの気孔及びこれに吸収された水も含むものとし、該軟質ポリウレタンフォームが膨潤した状態の外形の寸法に基づいて求められる体積とする。例えば、軟質ポリウレタンフォームが直方体状である場合は、直方体の縦、横及び高さの3辺の長さの積として算出される値を、該軟質ポリウレタンフォームの体積とする。
【0042】
前記軟質ポリウレタンフォームのセル構造は、水中で微生物、酸素、及び微生物の栄養源となる基質等を十分に内部に侵入させて、担体に微生物を固定化させる観点から、連通気孔構造であることが好ましい。前記セル構造は、水膨潤時の平均気孔数が9〜30個/25mmであり、好ましくは10〜25個/25mm、より好ましくは11〜20個/25mmである。
【0043】
前記「水膨潤時の平均気孔数」は、水膨潤時の軟質ポリウレタンフォームの任意の3本の長さ25mmの直線上に存在する気孔数の平均値を指す。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0044】
前記軟質ポリウレタンフォームは、良好な親水性等の観点から、水膨潤による体積膨潤率が、110〜1000%であり、好ましくは120〜800%、より好ましくは140〜500%、さらに好ましくは150〜300%である。
前記体積膨潤率が110%未満である軟質ポリウレタンフォームは、水とはほとんど馴染まず、親水性に優れているとは言い難いものである。
一方、前記体積膨潤率が1000%超の軟質ポリウレタンフォームは、水処理用微生物固定化担体として必要な耐久性能を維持することが困難となるため好ましくない。
【0045】
前記「体積膨潤率」とは、絶乾状態の体積に対する水膨潤時の体積の比で表される値を指す。また、「絶乾状態の体積」は、軟質ポリウレタンフォームの気孔も含むものとし、該軟質ポリウレタンフォームの絶乾状態の外形の寸法に基づいて求められる体積とする。
絶乾状態における密度を表す絶乾密度は、好ましくは48〜130kg/m
3、より好ましくは49〜110kg/m
3、さらに好ましくは50〜90kg/m
3である。
【0046】
上記以外に、前記軟質ポリウレタンフォームは、水処理用微生物固定化担体に適用される観点から、以下のようなセル構造の特徴を有していることが好ましい。
水膨潤時の平均気孔径が、好ましくは0.20〜2.00mm、より好ましくは0.50〜1.90mm、さらに好ましくは0.70〜1.80mmである。水膨潤時の平均気孔径が上記範囲内であることにより、水中で微生物、酸素、及び微生物の栄養源となる基質等が十分に内部に侵入して、微生物が担体に固定化されやすくなる。
【0047】
また、セル構造を構成する軟質ポリウレタンの骨格部分は、十分な気孔径及び表面積を維持する観点から、隣接する気孔間の骨格のうち、最小部分の幅が、好ましくは0.05〜0.50mm、より好ましくは0.07〜0.40mm、さらに好ましくは0.10〜0.30mmである。
また、水中において多くの微生物を固定化させるのに適したセル構造として、前記骨格部分は、細い棒状の骨格からなる、いわゆるリブ構造であるよりも、隣接する気孔間が部分的に膜状となり、表面積が大きい壁面で区画された、いわゆるウォール構造であることが好ましい。
【0048】
前記軟質ポリウレタンフォームは、例えば、ブロック状体として得られたものを、所望のサイズに切断加工等することにより、水処理用微生物固定化担体として供することができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
下記実施例及び比較例に示す各方法により、軟質ポリウレタンフォームを製造した。
【0050】
[製造原料]
軟質ポリウレタンフォームの製造原料の詳細を以下に示す。
<A液>
・ウレタンプレポリマー(1):TDI変性EO−PO共重合体;EO/PO質量比:55/45、EO−PO共重合体の数平均分子量:2700(理論値)、NCO(イソシアネート基)含有量:4.5質量%、粘度(25℃):8000mPa・s
・ウレタンプレポリマー(2):TDI変性EO−PO共重合体;EO/PO質量比:50/50、EO−PO共重合体の数平均分子量:2500(理論値)、NCO(イソシアネート基)含有量:4.5質量%、粘度(25℃):8000mPa・s
・ウレタンプレポリマー(3):TDI変性EO−PO共重合体;EO/PO質量比:30/70、EO−PO共重合体の数平均分子量:2500(理論値)、NCO(イソシアネート基)含有量:4.5質量%、粘度(25℃):8710mPa・s
・ポリイソシアネート化合物(a):TDI;「コロネート(登録商標) T−80」、東ソー株式会社製、2,4−TDI/2,6−TDI質量比:80/20
・無機フィラー:硫酸バリウム;堺化学工業株式会社製、平均粒径20〜30μm、比重4.3
【0051】
<B液>
・硬化剤・発泡剤:水
・整泡剤:ノニオン性界面活性剤;「ニューポール(登録商標) PE−75」、三洋化成工業株式会社製
・触媒:ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル;「Niax(登録商標) Catalyst A−1」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製
・ポリオール:EO−PO共重合体;EO/PO質量比:10/90
【0052】
(実施例1)
ウレタンプレポリマー(1) 400kg、TDI 53.4kg、及び硫酸バリウム50.0kgを撹拌混合し、28℃のA液(A1)を調製した。
また、水350kg及び整泡剤7kgを撹拌混合し、14℃のB液(B1)を調製した。
調製したA液及びB液をそれぞれのタンクから、配合質量比1.48(A液/B液)でミキシングヘッドにポンプで送液した。前記ミキシングヘッドから、A液及びB液の原料混合液を吐出させ、注型発泡成形して、軟質ポリウレタンフォームを製造した。
【0053】
(実施例2、3及び比較例1〜6)
A液(A1)及びB液(B1)の温度T
A及びT
Bを、それぞれ、下記表1に示す温度設定とし、それ以外は実施例1と同様にして、軟質ポリウレタンフォームを製造した。
【0054】
(実施例4)
ウレタンプレポリマー(1)をウレタンプレポリマー(2)に変更し、それ以外は実施例1と同様にして、A液(A2)を調製し、軟質ポリウレタンフォームを製造した。
【0055】
(実施例5)
ウレタンプレポリマー(1)をウレタンプレポリマー(3)に変更し、それ以外は実施例1と同様にして、A液(A3)を調製した。
また、水350kg、整泡剤29kg及び触媒6.7kgを撹拌混合し、14℃のB液(B2)を調製した。
調製したA液(A3)及びB液(B2)を用いて、実施例1と同様にして、軟質ポリウレタンフォームを製造した。
【0056】
(実施例6)
実施例5と同様にして、A液(A3)を調製した。
また、水350kg、整泡剤29.9kg、触媒6.9kg及びポリオール9.8kgを撹拌混合し、14℃のB液(B3)を調製した。
調製したA液(A2)及びB液(B3)を用いて、実施例1と同様にして、軟質ポリウレタンフォームを製造した。
【0057】
[測定方法]
軟質ポリウレタンフォームの製造過程における各種測定の方法を以下に示す。
<温度(T
A、T
B)>
調製したA液及びB液それぞれが収容されているタンク内の液体中央部分において、温度計で各液の温度T
A及びT
Bを測定した。
<A液の粘度>
粘度は、タンク内のA液200mLを抜き取り、スピンドル型粘度計(「TV20形粘度計」、東機産業株式会社製)にて測定した。測定温度は、下記表1に記載のA液の温度とした。
【0058】
<ゲルタイム>
A液及びB液の原料混合液のミキシングヘッドからの吐出開始時点から、注型した該原料混合液のゲル化が開始するまでの時間をストップウォッチで測定し、ゲルタイムとした。
ゲルタイムは、ポリウレタンの生成反応の速度の目安となり、ゲルタイムが短いほど、生成反応速度が大きいと言える。
【0059】
<ライズタイム>
A液及びB液の原料混合液のミキシングヘッドからの吐出開始時点から、注型した型内のフォームの高さの変動が停止するまでの時間をストップウォッチで測定し、ライズタイムとした。
ライズタイムは、ポリウレタンの発泡反応の速度の目安となり、ライズタイムが短いほど、発泡反応速度が大きいと言える。
【0060】
[物性評価方法]
上記実施例及び比較例で製造した各軟質ポリウレタンフォームについて、試料を切り出して、以下に示す各種物性の評価を行った。これらの評価結果を、下記表1にまとめて示す。
【0061】
(試料の作製)
製造した軟質ポリウレタンフォームのブロック状体の中央部分から水平方向にスライスして、厚さ10mmのシート状体を得た後、100mm×100mmの正方形に打ち抜き、100mm×100mm、厚さ10mmの直方体状に切り出したものを試料とした。
【0062】
<絶乾密度>
試料の質量を電子天秤で測定した後、100℃の乾燥器内で乾燥させ、質量の減少が見られなくなった状態を、絶乾状態とみなした。
この絶乾状態における直方体状の試料の各辺の長さをノギスで測定した。測定した各辺の長さの積として算出した体積を、絶乾状態の体積V
dとみなした。
上記のようにして求めた試料の絶乾状態の質量M
dを、絶乾状態の体積V
dで除した値を絶乾密度とした。
【0063】
<膨潤密度>
試料を25℃の純水に1時間浸漬させ、平置きで純水に浸漬させた状態で、直方体状の試料の各辺の長さをノギスで測定した。測定した各辺の長さの積として算出した体積を、試料の水膨潤時の体積V
wとみなした。
前記絶乾状態の質量M
dを、前記水膨潤時の体積V
wで除した値を膨潤密度とした。
【0064】
<体積膨潤率>
前記絶乾状態の体積V
dに対する水膨潤時の体積V
wの比を体積膨潤率として求めた。
【0065】
<平均気孔数>
上記において水膨潤時の体積を測定した後の試料の面中央部分を赤色インキで着色した。着色部分に直尺を当てて、該着色部分と直尺の目盛とが含まれるように写真撮影した。撮影した写真の拡大画像において、直尺の任意の箇所の目盛の25mmの間隔位置の範囲内で、直尺との任意の平行線上に観察される気孔の個数を数えた。同様の測定を任意の3か所で行い、3回測定した気孔数の平均値を、水膨潤時の25mm当たりの平均気孔数とした。
【0066】
<平均気孔径>
上記において水膨潤時の体積を測定した後の試料の面中央部近傍の任意の箇所をマイクロスコープで観察した。観察画像における1個の気孔について、長径と短径を測定し、該長径と該短径の平均値を直径とする真円とみなした。同様にして、合計50個の気孔について、それぞれ、真円とみなした場合の直径を求めた。これらの直径の平均値を、水膨潤時の平均気孔径とした。
【0067】
【表1】
【0068】
なお、上記実施例及び比較例で製造した各軟質ポリウレタンフォームについて、前記直方体状試料を採取した厚さ10mmのシート状体から、10mm×10mm×10mmの立方体試料片10個を切り出して、純水500mLを入れたビーカーに投入して、撹拌棒で1分間撹拌したところ、該立方体試料片はいずれも、撹拌後、純水に馴染み、水中へ沈降した。このことから、上記実施例及び比較例の軟質ポリウレタンフォームは、いずれも親水性に優れているものと言える。
【0069】
また、実施例1について、軟質ポリウレタンフォームのセル構造を電子顕微鏡で観察したところ、連通気孔構造であり、ウォール構造であることが確認された。
【0070】
以上から、本発明の製造方法によれば、所定の絶乾密度、膨潤密度及び体積膨潤率を有し、親水性及び水膨潤性に優れた軟質ポリウレタンフォームを安定的かつ効率的に製造できることが認められる。
また、本発明の製造方法で製造された軟質ポリウレタンフォームは、水中において微生物、酸素、及び微生物の栄養源となる基質等を内部にまで侵入させて、微生物を固定化させるのに適したセル構造を有していると言えるものであり、水処理用微生物固定化担体に好適に用いることができる。
親水性及び水膨潤性に優れ、所定のセル構造を有しており、水処理用微生物固定化担体に好適に用いられる軟質ポリウレタンフォームを、安定的かつ効率的に製造する方法を提供する。本発明の水処理用微生物固定化担体用の軟質ポリウレタンフォームの製造方法は、ウレタンプレポリマー及びポリイソシアネート化合物を含むA液と、硬化剤及び発泡剤を含むB液とを混合して発泡させる工程を有し、前記A液と前記B液との混合直前の前記A液の温度T