(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6917599
(24)【登録日】2021年7月26日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】水車発電負荷遮断試験装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/34 20200101AFI20210729BHJP
【FI】
G01R31/34 F
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-151369(P2019-151369)
(22)【出願日】2019年8月21日
(65)【公開番号】特開2021-32638(P2021-32638A)
(43)【公開日】2021年3月1日
【審査請求日】2021年4月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594110354
【氏名又は名称】東北中川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八巻 満亀男
(72)【発明者】
【氏名】庄子 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】田崎 拓也
【審査官】
島田 保
(56)【参考文献】
【文献】
特開平8−248085(JP,A)
【文献】
特開平2−10279(JP,A)
【文献】
特開2000−295896(JP,A)
【文献】
特開平9−138183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
G01R 31/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水車発電負荷遮断試験装置において、
水圧管の水圧取出口に隣接配置して管内水圧を測定し、当該測定データを示す電流信号を出力する鉄管水圧測定ユニットと、
調速機制御部に隣接配置して水車の回転数を測定し、当該測定データを示す電流信号を出力する水車回転数測定ユニットと、
ガイドベーン駆動部・制圧機駆動部に隣接配置してガイドベーン・制圧機の開度を測定し、当該測定データを示す電流信号を出力するガイドベーン・制圧機開度測定ユニットと、
調速機駆動部に隣接配置してランナベーンの開度を測定し、当該測定データを示す電流信号を出力するランナベーン開度測定ユニットと、
配電盤に隣接配置して発電機の電流・電圧及び周波数を測定し、当該測定データを示す電流信号を出力する電流・電圧測定ユニットと、
前記各測定ユニットに電気的に接続され、前記各測定ユニットの測定データを示す電流信号を入力して電圧信号に変換する信号変換装置と、
前記信号変換装置に電気的に接続されて当該信号変換装置から出力された前記各測定ユニットの測定データを示す電圧信号を波形出力可能に記録する汎用の波形記録装置とを備え、
前記各測定ユニットは、夫々、筐体に収容されていて個別に持ち運び移動自在とされていることを特徴とする水車発電負荷遮断試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水車発電機が電力系統等の事故により負荷を遮断したとき、各制御装置が正常に動作し、鉄管水圧・回転速度、及び発電機が異常なく安全に無負荷運転に移行できることを確認する水車発電負荷遮断試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水車発電機の負荷遮断試験は、負荷を遮断した際の発電機の電流・電圧、水車の回転数、水圧管内の水圧、及びガイドベーン開度等を測定し、当該測定データに基づいて各部の動作状態の良否を判定する試験である。
【0003】
従来、このような試験を行う装置として、水車発電機の各測定箇所の夫々に所定の検出を行うセンサを設け、各センサから出力された検出信号を1台の演算装置に取り込み、演算装置の演算により得られた試験結果を表示装置に総合的に表示するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−10279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の装置では、水車発電機の各測定箇所にセンサのみが設けられ、センサからの信号を遠隔に設置した信号変換装置でしか確認することができなかった。このため、何れか一つの測定箇所から得られる測定データを当該測定箇所の近傍で即座に確認することができず、一箇所の測定データを確認する場合であっても、試験作業者は、センサの設置位置から遠く離れた演算装置及び表示装置の設置位置まで移動する必要がある。
【0006】
また、各センサから演算装置及び表示装置までの距離が比較的長くなると、センサが出力する検出信号の減衰が大きくなり、正確な試験結果を得ることができない不都合がある。
【0007】
上記の点に鑑み、本発明は、各測定箇所の近傍で当該測定箇所から得られる測定データを確認することが可能となるだけでなく、測定データの伝送に際して信号の減衰を抑えることができる水車発電負荷遮断試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、水車発電負荷遮断試験装置において、水圧管の水圧取出口に隣接配置して管内水圧を測定し、当該測定データを示す電流信号を出力する鉄管水圧測定ユニットと、調速機制御部に隣接配置して水車の回転数を測定し、当該測定データを示す電流信号を出力する水車回転数測定ユニットと、ガイドベーン駆動部・制圧機駆動部に隣接配置してガイドベーン・制圧機の開度を測定し、当該測定データを示す電流信号を出力するガイドベーン・制圧機開度測定ユニットと、調速機駆動部に隣接配置してランナベーンの開度を測定し、当該測定データを示す電流信号を出力するランナベーン開度測定ユニットと、配電盤に隣接配置して発電機の電流・電圧及び周波数を測定し、当該測定データを示す電流信号を出力する電流・電圧測定ユニットと、前記各測定ユニットに電気的に接続され、前記各測定ユニットの測定データを示す電流信号を入力して電圧信号に変換する信号変換装置と、前記信号変換装置に電気的に接続されて当該信号変換装置から出力された前記各測定ユニットの測定データを示す電圧信号を波形出力可能に記録する汎用の波形記録装置とを備え、前記各測定ユニットは、夫々、筐体に収容されていて個別に持ち運び移動自在とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各測定ユニットが、夫々筐体に収容されて持ち運び自在となっているので、各測定ユニットを各測定箇所の近傍に容易に設置することができる。そして、例えば、各測定ユニットに測定結果を数値表示する表示部を設けておく等により、各測定箇所の近傍で測定データが確認可能となる。
【0010】
また、各測定ユニットは測定データを電圧信号でなく電流信号で伝送し、信号変換装置にて電流信号を電圧信号に変換するので、各測定ユニットと信号変換装置との間の距離が比較的長くても信号変換装置に入力する信号の減衰を抑えることができる。
【0011】
更に、各測定ユニットの測定データを示す電圧信号を、波形記録装置が記録するので、専用の演算装置を用いることなく試験結果を波形出力して確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】負荷遮断試験装置の構成を模式的に示すブロック図。
【
図2】負荷遮断試験装置の各測定ユニットの設置状態を示す説明図。
【
図3】電流・電圧測定ユニットを示す説明的斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の負荷遮断試験装置は、
図1に模式的に示すように、
鉄管水圧測定ユニット1と、水車回転数測定ユニット2と、ガイドベーン・制圧機開度測定ユニット3と、ランナベーン開度測定ユニット4と、電流・電圧測定ユニット5とを備えている。
【0014】
各測定ユニット1,2,3,4,5から出力される測定データは、ケーブルを介して信号変換装置6に入力される。信号変換装置6には、汎用の波形記録装置7が接続されている。波形記録装置7は、信号変換装置6に入力された各測定データに基づく解析結果を記録しており、波形出力が可能となる。
【0015】
図2は、水車発電機の設備フロアを示している。
図2に示すように、鉄管水圧測定ユニット1は、水圧検出用の圧力センサ8を備えている。圧力センサ8は、水圧鉄管9(水圧管)の水圧取出口に設けられて、水圧鉄管9を流下した水の圧力を検出する。鉄管水圧測定ユニット1は、圧力センサ8が設置された水圧鉄管9の水圧取出口に隣接配置される。鉄管水圧測定ユニット1は、圧力センサ8からの水圧検出信号に基づき圧力(MPa)を示す測定データを生成し、更に、当該測定データを電流信号に変換して出力する。
【0016】
これにより、鉄管水圧測定ユニット1と信号変換装置6との距離が離れていて、両者を繋ぐ信号ケーブルが比較的長くても、電流信号に変換された測定データはその減衰が抑えられ、鉄管水圧測定ユニット1の測定データを確実に信号変換装置6へ送ることができる。
【0017】
水車回転数測定ユニット2は、調速機制御部10に隣接配置され、調速機制御部10のSSG(同期信号発生器)からの水車の回転数信号が入力される。水車回転数測定ユニット2は、水圧鉄管9の下流のケーシング11に収容された図示しない水車の回転数(min
-1)を示す測定データを生成し、更に、当該測定データを電流信号に変換して出力する。
【0018】
これにより、水車回転数測定ユニット2と信号変換装置6との距離が離れていて、両者を繋ぐ信号ケーブルが比較的長くても、電流信号に変換された測定データはその減衰が抑えられ、水車回転数測定ユニット2の測定データを確実に信号変換装置6へ送ることができる。
【0019】
ガイドベーン・制圧機開度測定ユニット3は、ガイドベーンを駆動するためのサーボモータ(ガイドベーン駆動部)、制圧機サーボモータ(制圧機駆動部)12に隣接配置される。ガイドベーン・制圧機開度測定ユニット3は、ガイドベーン・制圧機サーボモータ12により移動される図示しない移動測定対象部材の変位を検出する変位センサ13を備えている。ガイドベーン・制圧機開度測定ユニット3は、変位センサ13の検出信号に基づきガイドベーン(制圧機)の開度(mm)を示す測定データを生成し、更に、当該測定データを電流信号に変換して出力する。
【0020】
これにより、ガイドベーン・制圧機開度測定ユニット3と信号変換装置6との距離が離れていて、両者を繋ぐ信号ケーブルが比較的長くても、電流信号に変換された測定データはその減衰が抑えられ、ガイドベーン・制圧機開度測定ユニット3の測定データを確実に信号変換装置6へ送ることができる。
【0021】
ランナベーン開度測定ユニット4は、ランナベーンを駆動するためのサーボモータ(ランナベーン駆動部)14に隣接配置される。ランナベーン開度測定ユニット4は、ランナベーンサーボモータ14により移動される図示しない移動測定対象部材の変位を検出する変位センサ15を備えている。ランナベーン開度測定ユニット4は、変位センサ15の検出信号に基づきランナベーンの開度(%)を示す測定データを生成し、更に、当該測定データを電流信号に変換して出力する。
【0022】
これにより、ランナベーン開度測定ユニット4と信号変換装置6との距離が離れていて、両者を繋ぐ信号ケーブルが比較的長くても、電流信号に変換された測定データはその減衰が抑えられ、ランナベーン開度測定ユニット4の測定データを確実に信号変換装置6へ送ることができる。
【0023】
電流・電圧測定ユニット5は、発電機16から得られる電力が表示される配電盤17が収納された配電盤室18に設置される。配電盤室18には図示しない負荷遮断用のスイッチが設けられている。電流・電圧測定ユニット5には、発電機電流信号がCTクランプを介して入力され、発電機電圧信号がVTを介して入力される。そして、電流・電圧測定ユニット5は、配電盤17から採取した発電機電流(A)を示す測定データと電圧(V)及び周波数(Hz)を示す測定データとを個別に生成し、各測定データを電流信号に変換して夫々出力する。
【0024】
これにより、電流・電圧測定ユニット5と信号変換装置6との距離が離れていて、両者を繋ぐ信号ケーブルが比較的長くても、電流信号に変換された測定データはその減衰が抑えられ、電流・電圧測定ユニット5の測定データを確実に信号変換装置6へ送ることができる。
【0025】
信号変換装置6は、各測定ユニット1,2,3,4,5の電流信号を電圧信号に変換して波形記録装置7へ送る。波形記録装置7は信号変換装置6の近傍に設置することにより信号の減衰は殆どない。
【0026】
以上のように、各測定ユニット1,2,3,4,5は、各測定箇所の近傍に設置されるが、各測定ユニット1,2,3,4,5は、夫々の筐体に収容されており、夫々が単独で持ち運び移動することが可能となっている。具体的に、電流・電圧測定ユニット5について説明すると、
図3に示すように、電流・電圧測定ユニット5は、上面に把持部20を備える筐体21に収容され、筐体21の前面パネルに入力コネクタ類22と、測定データの数値を表示する表示部23とが設けられている。これによれば、試験作業者は、波形記録装置7の位置まで移動しなくても、電流・電圧測定ユニット5の設置位置(測定箇所)において表示部23により電流・電圧測定ユニット5の測定データを確認することができる。
図3においては、電流・電圧測定ユニット5のみを示したが、他の測定ユニット1,2,3,4も同様の構成による筐体に収容され、電流・電圧測定ユニット5と同等の取り扱い容易性を有している。
【符号の説明】
【0027】
1 鉄管水圧測定ユニット
2 水車回転数測定ユニット
3 ガイドベーン・制圧機開度測定ユニット
4 ランナベーン開度測定ユニット
5 電流・電圧測定ユニット
6 信号変換装置
7 波形記録装置
8 圧力センサ
9 水圧鉄管(水圧管)
10 調速機制御部
11 ケーシング
12 ガイドベーンサーボモータ(ガイドベーン駆動部)・制圧機サーボモータ(制圧機駆動部)
13 変位センサ
14 サーボモータ(ランナベーン駆動部)
15 変位センサ
16 発電機
17 配電盤
18 配電盤室
20 把持部
21 筐体
22 入力コネクタ類
23 表示部