(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
「一実施形態」
「光学シート成形装置の概要について」
本実施形態に係る光学シート成形装置は、導光板を成形可能に構成されている。導光板は、例えば、携帯電話やスマートフォンなどの携帯端末のバックライトユニットの構成として用いられている。導光板は、高屈折率を有する透明の樹脂で成形することができる。透明樹脂としては、例えば、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、シクロオレフィン系樹脂(COP)などの樹脂を適用することができる。
【0015】
図7に示すように、光学用途の薄物導光板1は、入光部2と、面発光部3と、を備えている。入光部2は、面発光部3よりも厚肉化されている。ここで、面発光部3は、バックライトユニットの薄型化に伴って薄く成形することが要求される。これに対して、後述する光源7(例えば、LED)は、面発光部3と同程度に薄型化させることが技術的に困難である。よって、面発光部3を更に薄肉化させつつ、光源7からの光を漏れなく取り込むためには、入光部2の厚さを少なくとも光源7と同程度に厚肉化せざるを得ない。
【0016】
入光部2の上面2a、及び、面発光部3の上面3aは、平滑な平坦面として構成されている。双方の上面2a,3aは、互いに平行に配置されている。一方、導光板1の下面1sは、入光部2から面発光部3に亘って連続して構成されている。導光板1の下面1sは、平滑な平坦面として構成されている。導光板1の下面1sは、双方の上面2a,3aと平行に対向して構成されている。
【0017】
入光部2において、双方の上面2a,3aの相互間には、平滑な傾斜面4が構成されている。傾斜面4と、入光部2の上面2aとの境界部分5は、角張っている。換言すると、傾斜面4と、入光部2の上面2aとの境界部分5は、丸身を帯びていない。要するに、境界部分5において、入光部2の上面2aから傾斜面4に向けて急峻に角度が変化する。
【0018】
導光板1は、入光部2から面発光部3に亘って一体成形されている。入光部2には、入光面2bが構成されている。入光面2bは、上記した双方の上面2a,3aと直交する方向に沿って広がっている。入光面2bは、例えば、矩形状を有している。入光面2bは、入光部2から面発光部3に向かって真っ直ぐに対峙するように構成されている。面発光部3の上面3aには、例えば、拡散シート、プリズムシートなどの光拡散部品6が搭載されている。
【0019】
ここで、光拡散部品6を搭載した導光板1を携帯端末に設置する。入光面2bに対向して光源7(例えば、LED)を配置する。これにより、携帯端末にバックライトユニットが構成される。かかる構成において、光源7から発せられた光は、入光面2bから入光部2に導光される。入光部2に導かれた光は、傾斜面4に沿って案内されて面発光部3に漏れなく伝搬する。面発光部3に伝搬した光は、光拡散部品6によって面状に拡散する。この結果、面発光部3から面状に均一な光を発生させることができる。
【0020】
図1〜
図3に示すように、光学シート成形装置8は、押出ユニット9と、成形ロールユニット10と、厚肉部成形機構11と、位置調整機構12と、を有している。
押出ユニット9は、シート状の溶融樹脂13aを吐出可能に構成されている。
成形ロールユニット10において、吐出されたシート状の溶融樹脂13aは、表面のみが固化した溶融樹脂13bの状態にされる。例えば、非結晶性の樹脂では、ガラス転移点よりも低い温度まで温度調節される。この後、その全体が可撓性を有する固化状態の光学シート13cが、矢印Fp方向に搬送される。
厚肉部成形機構11は、溶融樹脂13a,13bに対して、他の部分よりも厚肉化させた厚肉部14bを押出方向Fpに沿って連続的に成形可能に構成されている。
位置調整機構12は、成形ロールユニット10に対する押出ユニット9の位置を調整可能に構成されている。
【0021】
ここで、押出方向Fpとは、例えば、押出ユニット9から成形ロールユニット10に亘って連続した一連の押出経路に沿った方向を指す。一連の押出経路とは、押出ユニット9から重力(垂直)方向に沿って吐出された溶融樹脂13aが成形ロールユニット10を通って送り出される一連のプロセス通路を指す。
「成形ロールユニット10」
成形ロールユニット10は、主ロール(第2ロール)15と、押圧ロール(第1ロール)16と、送出ロール(第3ロール)17と、を備えている。3つのロール15,16,17は、温度調節が可能なロールとして構成されている。3つのロール15,16,17は、予め設定された一定の温度に保たれている。なお、設定温度は、溶融樹脂13a,13bを溶融させない温度で、かつ、固化しつつ柔軟性を維持可能な温度を指す。例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)であれば、100℃〜140℃の温度に設定される。
【0022】
主ロール(第2ロール)15は、円筒形状の転写面15sを有している。転写面15sは、鏡面仕上げとなっている。転写面15sは、後述する吐出用スリット18から吐出されたシート状の溶融樹脂13aを押出方向Fpに沿って案内可能に構成されている。
押圧ロール(第1ロール)16は、円筒形状の転写面16sを有している。転写面16sは、鏡面仕上げとなっている。転写面16sは、溶融樹脂13aを主ロール15の転写面15sに向けて押圧可能に構成されている。
送出ロール(第3ロール)17は、円筒形状の送出面17sを有している。送出面17sは、必ずしも鏡面仕上げとなっていなくてもよい。送出面17sは、光学シート13cを、押出方向Fpに沿って送り出し可能に構成されている。
【0023】
3つのロール15,16,17は、それぞれ、1本の回転軸15r,16r,17rを中心に回転可能に構成されている。3つの回転軸15r,16r,17rは、水平方向に沿って互いに平行に配置されている。換言すると、3つの回転軸15r,16r,17rは、重力(垂直)方向を横断(直交)する方向(水平方向)に沿って並んでいる。主ロール15の回転方向は、他の2つのロール16,17の回転方向とは逆方向に設定されている。
【0024】
かかる構成において、押出ユニット9から重力(垂直)方向に沿って吐出されたシート状の溶融樹脂13aは、主ロール15と押圧ロール16との間(接地点)を通過する。接地点を通過した溶融樹脂13aは、主ロール15の転写面15sに沿って搬送される間に、その表面のみが固化した溶融樹脂13bとなる。かかる溶融樹脂13bは、主ロール15と送出ロール17との間(接地点)を通った後、その全体が可撓性を有する固化状態の光学シート13cとなる。かくして、光学シート13cは、矢印Fp方向に搬送される。このとき、光学シート13cは、薄物導光板1に至る半製品として、その厚さが設定される。
【0025】
なお、図面にはベストモードの一例として、3つのロール15,16,17を水平方向に沿って横並びさせた仕様が示されている。これに代えて、比較的好ましいモードとして、例えば、主ロール15を中心にその両側のロール(押圧ロール16、送出ロール17)を傾斜させてもよい。ただし、3つのロール15,16,17を重力(垂直)方向に沿って縦並びさせる仕様は、ベストモードとは言えない。
【0026】
縦並び仕様では、押出ユニット9から主ロール15と押圧ロール16との間(接地点)に向けて樹脂を吐出することになる。このとき、吐出された樹脂は、主ロール15と押圧ロール16との間(接地点)に到達する前に、重力作用によって下方に引き寄せられて垂れ下がる。これにより、当該樹脂は、下方側のロール(例えば、押圧ロール16)に先に接地し、比較的早期に固化が始まる。この結果、主ロール15と押圧ロール16との間での転写(成形)精度を一定に維持できなくなってしまう虞がある。
【0027】
「厚肉部成形機構11」
厚肉部成形機構11は、主ロール15及び押圧ロール16の一方、或いは、双方に構成することができる。この場合、主ロール15に厚肉部成形機構11を構成することが好ましい。このため、図面には一例として、主ロール15に構成された厚肉部成形機構11が示されている。厚肉部成形機構11は、主ロール15の周方向に円環状の厚肉部成形溝19を有している。厚肉部成形溝19は、主ロール15の転写面15sに設けられている。
【0028】
転写面15sにおいて、厚肉部成形溝19は、他の面よりも周方向に沿って連続的に窪ませて構成されている。厚肉部成形溝19は、一定の厚さ(基準厚さ)の半製品(例えば、光学シート13c)に対して、他の部分よりも厚肉化させた部分(厚肉部14b)を押出方向Fpに沿って連続的に成形する仕様に適用される。
【0029】
本実施形態では、1個の半製品(薄物導光板1)を成形する仕様を想定している。この場合、主ロール15の幅方向片側に厚肉部成形溝19(厚肉部成形機構11)を1つ構成すればよい。これにより、主ロール15と押圧ロール16との間を通過した溶融樹脂13a,13bに対して、他の部分よりも厚肉化させた厚肉部14bを、押出方向Fpに沿って連続的に成形させることができる。
【0030】
「押出ユニット9」
押出ユニット9は、押出機20と、Tダイ21と、を備えている。押出機20とTダイ21とは、連結管22を通して互いに連結されている。押出機20、連結管22、Tダイ21は、予め設定された温度に加熱され、その設定温度に保たれている。設定温度は、上記した3つのロール15,16,17の設定温度よりも高い温度になっている。例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)であれば、約260℃の温度に設定される。
【0031】
押出機20は、図示しないシリンダ及びホッパを備えている。シリンダは、1又は複数のスクリュ(図示しない)が回転可能に挿通されている。ここで、1つのスクリュがシリンダに挿通される仕様では、単軸押出機20が構成される。複数(例えば、2つ)のスクリュがシリンダに挿通される仕様では、二軸押出機20が構成される。
【0032】
なお、ホッパは、シリンダに樹脂原料を投入可能に構成されている。ここで、例えば、ペレット状の樹脂原料をホッパから投入する。投入された樹脂原料は、シリンダ内において、回転するスクリュによって溶融されて混練される。溶融・混練された樹脂原料は、溶融状態でシリンダの先端に搬送される。シリンダの先端には、上記した連結管22が設けられている。
【0033】
シリンダの先端まで搬送された溶融樹脂は、連結管22を通ってTダイ21に供給される。換言すると、押出機20において、溶融樹脂が生成される。生成された溶融樹脂は、連結管22を通ってTダイ21に供給される。Tダイ21には、Tダイ加熱保温用ヒータ23(
図3参照)が設けられている。かかるヒータ23によって、Tダイ21は、予め設定された一定の温度に保たれている。このため、Tダイ21に供給された溶融樹脂は、固化することは無く、一定の溶融状態に維持される。なお、Tダイ21を一定の温度に保つための温度は、溶融樹脂の種類や用途に応じて設定されるため、ここでは特に数値限定はしない。
【0034】
Tダイ21は、供給された溶融樹脂をシート状に広げて吐出可能に構成されている。Tダイ21は、例えば、連結管22に連通したマニホールド25aと、マニホールド25aから延出した隙間通路25b(
図3参照)と、を備えて構成されている。マニホールド25aは、上記した押出方向Fpを横断する方向(即ち、後述するスリット18の幅方向)に沿って延出している。隙間通路25bは、マニホールド25aの幅方向に沿って平面状に広がっている。隙間通路25bの一端は、マニホールド25aに接続されている。隙間通路25bの他端は、スリット18に接続されている。
【0035】
Tダイ21は、Tダイ本体21aと、固定リップ21bと、可動リップ21cと、を備えている。固定リップ21b及び可動リップ21cは、締結ボルト24によって、Tダイ本体21aに対して着脱自在に組み付けることができる。Tダイ本体21aに固定リップ21b及び可動リップ21cを組み付けた状態において、Tダイ21には、上記したマニホールド25a及び隙間通路25bが構成される。
【0036】
「吐出用スリット18」
Tダイ21は、吐出用スリット18(以下、スリットと言う)を備えている。スリット18は、シート状の溶融樹脂13aを吐出可能に構成されている。スリット18は、互いに平行に対向する2つのスリット面(第1スリット面18a、第2スリット面18b)を有している。2つのスリット面(第1スリット面18a、第2スリット面18b)は、凹凸の無い平坦な平面として構成されている。
【0037】
ここで、スリット18は、第1スリット面18aと、第2スリット面18bとの間の隙間(リップ隙間Hとも言う)として規定されている。スリット18は、上記した押出方向Fpに沿った第1及び第2スリット面18a,18bの全長(流路長L(
図3参照))に亘る範囲に規定されている。更に、スリット18には、その先端に、吐出口18cが設けられている。
【0038】
具体的に説明すると、吐出口18cは、Tダイ21の先端に設けられている。Tダイ21の先端とは、重力方向に沿って最も下方に相当する最下部を指す。吐出口18cは、かかる最下部の端面(第1及び第2スリット面18a,18bの下端面)に構成されている。更に、Tダイ21の先端には、2つのリップ(第1リップ26a、第2リップ26b)が設けられている。第1リップ26aと第2リップ26bとは、互いに間隔を存して対向配置されている。第1リップ26aは、上記した可動リップ21cに設けられている。第2リップ26bは、上記した固定リップ21bに設けられている。
【0039】
上記した第1及び第2スリット面18a,18bは、第1及び第2リップ26a,26bの対向面に1つずつ設けられている。即ち、第1スリット面18aは、第1リップ26aの対向面に設けられている。第2スリット面18bは、第2リップ26bの対向面に設けられている。かくして、第1スリット面18aと、第2スリット面18bとの間の隙間領域(リップ隙間H)に亘って、上記したスリット18が構成されている。
【0040】
このような構成において、上記した吐出口18cは、第1及び第2スリット面18a,18bの下端面に沿って、上記した押出方向Fpを横断する方向(即ち、スリット18の幅方向)に延出した細長い矩形状の開口として規定することができる。この場合、Tダイ21(スリット18、吐出口18c)から吐出された溶融樹脂13aは、その全体が細長い矩形状を有して落下する。このとき、後述するように、ネックイン(neck-in)現象によって、溶融樹脂13aの両縁部(両側部)には、押出方向Fpに沿って、ネックイン部13pが連続的に構成される。
【0041】
Tダイ21は、2つのリップ26a,26b(第1及び第2スリット面18a,18b)の相互の間隔(リップ隙間H)を調整可能なリップ隙間調整機構27を備えている。リップ隙間調整機構27は、複数のリップ調整ボルト28を有している。複数のリップ調整ボルト28は、互いに平行かつ等間隔に配置されている。リップ調整ボルト28は、Tダイ21に回転可能に支持されている。リップ調整ボルト28の基端には、調整部28aが設けられている。リップ調整ボルト28の先端には、押圧部28bが設けられている。押圧部28bは、2つのリップ26a,26bのいずれか一方に接触可能に構成されている。
【0042】
図面には一例として、押圧部28bを第1リップ26aに接触させたリップ調整ボルト28が示されている。ここで、調整部28aを回転させる。押圧部28bを前進させる。押圧部28bから第1リップ26aに押圧力を作用させる。第1リップ26aを弾性変形させる。これにより、第1リップ26aを第2リップ26bに接近させる。この結果、リップ隙間Hを狭めることができる。
【0043】
逆に、調整部28aを逆方向に回転させる。押圧部28bを後退させる。第1リップ26aに対する押圧部28bからの押圧力を解除させる。第1リップ26aの弾性力により元の形状に復元させる。これにより、第1リップ26aを第2リップ26bから離間させる。この結果、リップ隙間Hを拡げることができる。
【0044】
「位置調整機構12」
図1〜
図2、
図4に示すように、位置調整機構12は、押出ユニット9及び成形ロールユニット10を、回転軸15r,16r,17rに沿って相対的に移動可能に構成されている。これにより、成形ロールユニット10に対するスリット18の位置を調整することができる。この場合、位置調整機構12の仕様としては、下記3つのバリエーションを想定することができる。
【0045】
第1バリエーションの仕様は、押出ユニット9を回転軸15r,16r,17rに沿って移動させる。第2バリエーションの仕様は、成形ロールユニット10を回転軸15r,16r,17rに沿って移動させる。第3バリエーションの仕様は、押出ユニット9及び成形ロールユニット10の双方を回転軸15r,16r,17rに沿って同時に移動させる。
【0046】
図面には一例として、第1バリエーションに係る位置調整機構12の仕様が示されている。かかる仕様において、位置調整機構12は、移動装置と、支持ユニットと、を有している。
【0047】
移動装置は、回転軸15r,16r,17rに沿って押出ユニット9を移動可能に構成されている。移動装置は、移動本体と、移動機構と、を備えている。移動本体としては、例えば、押出ユニット9に設けられた押出機20を適用することができる。移動機構は、押出機(移動本体)20を、予め設定された方向S1,S2に移動可能に構成されている。更に、移動機構は、例えば、2本のガイドレール29と、複数のローラ30と、制御部(図示しない)と、を備えている。
【0048】
2本のガイドレール29は、回転軸15r,16r,17rに沿って互いに平行に配置されている。複数のローラ30は、押出機(移動本体)20に回転可能に設けられている。ローラ30は、ガイドレール29に沿って転動可能に構成されている。制御部は、ローラ30の回転状態(例えば、回転方向、回転速度、回転数)を制御可能に構成されている。制御部には、ローラ30を回転させるためのサーボモータ(図示しない)が搭載されている。
【0049】
かかる移動装置によれば、制御部によってローラ30を駆動制御する。これにより、ローラ30をガイドレール29に沿って転動させることができる。この結果、ローラ30の回転移動に追従して、押出機(移動本体)20を矢印S1,S2方向に前進及び後退させることができる。即ち、矢印S1方向に前進させることで、押出機(移動本体)20を、回転軸15r,16r,17rに沿って成形ロールユニット10に接近させることができる。逆に、矢印S2方向に後退させることで、押出機(移動本体)20を、回転軸15r,16r,17rに沿って成形ロールユニット10から離間させることができる。
【0050】
支持ユニットは、支持本体と、連結機構と、を備えている。連結機構は、支持本体を押出機(移動本体)20に連結可能に構成されている。連結機構としては、例えば、押出ユニット9に設けられた連結管22を適用することができる。
【0051】
支持本体は、スリット18を支持可能に構成されている。支持本体としては、例えば、押出ユニット9に設けられたTダイ21を適用することができる。Tダイ21には、スリット18が設けられている。換言すると、スリット18は、Tダイ21に支持された状態となっている。ここで、Tダイ(支持本体)21の向き及び位置を、予め設定された方向に調整する。
【0052】
Tダイ(支持本体)21の向き調整では、例えば、細長い矩形状の吐出口18cの向きを、回転軸15r,16r,17rに沿って平行に整列させる。これにより、スリット18が、回転軸15r,16r,17rに沿って平行に支持される。この結果、シート状の溶融樹脂13aを、スリット18から回転軸15r,16r,17rに沿って平行に吐出可能となる。
【0053】
Tダイ(支持本体)21の位置調整では、吐出口18c(スリット18)の位置を、主ロール15と押圧ロール16との間に一致させる。換言すると、吐出口18c(スリット18)を、主ロール15と押圧ロール16との間の真上に位置決めする。これにより、吐出口18c(スリット18)は、回転軸15r,16r,17rに平行に、かつ、押出方向Fpを横断する方向に一定の大きさの隙間(リップ隙間H)を有して構成される。かくして、溶融樹脂13aを、互いに回転する主ロール15と押圧ロール16との間に供給させることができる。
【0054】
かかる構成において、スリット18を支持するTダイ(支持本体)21は、連結管(連結機構)22を介して、押出機(移動本体)20に連結されている。ここで、例えば、制御部(サーボモータ)によって、ローラ30をガイドレール29に沿って転動させる。押出機(移動本体)20を矢印S1,S2方向に前進及び後退させる。このとき、前進及び後退の運動は、連結管(連結機構)22を介して、Tダイ(支持本体)21に伝達される。これにより、押出機(移動本体)20の移動(前進、後退)に追従させて、Tダイ(支持本体)21を移動させることができる。この結果、主ロール15と押圧ロール16との間の真上において、スリット18を、回転軸15r,16r,17rに沿って平行に移動させることができる。
【0055】
なお、成形ロールユニット10を回転軸15r,16r,17rに沿って移動させる第2バリエーション及び第3バリエーションに係る位置調整機構(図示せず)は、成形ロールユニット10を回転軸15r,16r,17rに沿って移動させる移動機構(図示せず)を有している。この移動機構は、第1バリエーションに係る位置調整機構12の移動機構と同様に、例えば、成形ロールユニット10に設けられたローラをガイドレールに沿って転動させることにより、成形ロールユニット10を回転軸15r,16r,17rに沿って移動させることができる。
【0056】
「ネックイン部13pの位置調整」
Tダイ21(スリット18、吐出口18c)から吐出されたシート状の溶融樹脂13aには、押出方向Fpに沿って、ネックイン部13pが連続的に構成される。ネックイン部13pは、ネックイン(neck-in)現象によって、溶融樹脂13aの両縁部(両側部)に構成される。
【0057】
ネックイン現象とは、押出方向Fpを横断する方向(即ち、スリット18の幅方向)において、言い換えれば、Tダイ21から吐出されたシート状の溶融樹脂13aの幅方向において、シート状の溶融樹脂13aが収縮し、その幅が狭くなる現象である。このときのシート状の溶融樹脂13aの収縮は、幅方向の両端部で著しく大きく生じ、内側になるに従って減少し、特定の位置より内側では生じない。従って、シート状の溶融樹脂13aの幅方向の両端部は、その厚さが厚くなり、両端部からそれぞれの端部に対応する特定の位置までの間でその厚さが減少し、特定の位置より内側では、一定の厚さ(基準厚さ)となる。
【0058】
このネックイン現象は、Tダイ21から吐出されたシート状の溶融樹脂13aの表面張力、溶融弾性特性およびシート状の溶融樹脂13aの押出方向Fpへの引張張力の合成力が作用して発生するものと考えられており、樹脂の種類により収縮の程度は異なるが、必ず発生する現象である。
【0059】
ネックイン部13pは、幅方向の両端部からそれぞれの端部に対応する特定の位置までの両縁部(両側部)を指し、特定の位置の内側のシート状の溶融樹脂13aの一定の厚さ(基準厚さ)よりも、厚さが厚くなる部分を指す。言い換えれば、ネックイン部13pは、シート状の溶融樹脂13aのうち、押出方向Fpを横断する方向の両縁部(両側部)に構成されている。ネックイン部13pの厚さW1は、両縁部(両側部)を除いた他の部分(中央部、中間部)の厚さW2よりも厚くなっている(
図4参照)。
【0060】
なお、従来、ネックイン部13pは、基準厚さ(一定の厚さ)よりも、厚さが厚くなるため、半製品、製品として使用されていない。ネックイン部13pは、切断された後、廃棄またはリサイクルされている。
【0061】
ここで、上記した位置調整機構12は、スリット18(吐出口18c)の位置を調整することで、ネックイン部13pを、上記した厚肉部成形溝19に対向させて位置決め可能に構成されている。厚肉部成形溝19は、主ロール15(転写面15s)の片側に沿って周方向に連続して構成されている。
【0062】
厚肉部成形溝19は、溝底面19aと、2つの傾斜面(第1傾斜面19b、第2傾斜面19c)と、を備えている。溝底面19aは、例えば、水平方向E(回転軸15r方向)に沿って平行に構成されている。第1及び第2傾斜面19b,19cは、溝底面19aの両側から転写面15sに向けて傾斜している。第1及び第2傾斜面19b,19cは、末広がり状の勾配(傾斜角θ1,θ2)を有している。
【0063】
この場合、第1傾斜面19bによって成形される部分は、上記した薄物導光板1(
図7参照)の傾斜面4に相当する。かかる傾斜面4は、光源7から発せられた光を、漏れなく面発光部3に伝搬させるのに最適な角度に設定する必要がある。このため、第1傾斜面19bの傾斜角θ1は、0°<θ1<30°なる範囲に設定されている。
【0064】
更に、ネックイン部13pと、厚肉部成形溝19との位置合わせに際し、ネックイン部13pの立ち上がり部13dを、厚肉部成形溝19の第1傾斜面19bに対向させることが好ましい。なお、立ち上がり部13dは、ネックイン部13pが構成された両縁部(両側部)と、他の部分(中央部、中間部)との境界領域の近傍に位置付けられる。
【0065】
これに対して、第2傾斜面19cは、溶融樹脂13aを厚肉部成形溝19に押し留めるストッパ壁としての機能を有している。このため、第2傾斜面19cの傾斜角θ2は、特に数値限定されていない。厚肉部成形溝19から溶融樹脂13aが流れ出ないような傾斜角θ2であればよい。
【0066】
なお、同じ樹脂であっても、分子量の高いグレードは高粘度となり、ネックイン現象によるシート状の溶融樹脂13aの収縮の程度が小さくなる。この場合、厚肉部成形溝19に対して、ネックイン部13pの立ち上がり部13dの溶融樹脂量が不足することが考えられる。この対処として、吐出用スリット18の第1スリット面18aまたは第2スリット面18bの立ち上がり部13dに対応する位置に、例えば、深さ0.1mm程度の溝部を設けて、その範囲だけ吐出用スリット18から吐出される溶融樹脂量を増加させてもよい。
【0067】
「光学シート成形方法」
図1〜
図2、
図4に示すように、押出機20から溶融樹脂を押し出す。このときの押出圧力によって、溶融樹脂が、連結管22からTダイ21に供給される。Tダイ21に供給された溶融樹脂は、スリット18を通過する。このとき、スリット18からシート状の溶融樹脂13aが吐出される。吐出された溶融樹脂13aには、その両縁部(両側部)に、ネックイン部13pが構成されている。位置調整機構12によって、ネックイン部13pを、厚肉部成形溝19に対向させて位置決めする。かかる位置決めでは、熱膨張による連結管22の伸び量を考慮しつつ、同時に、ネックイン部13pを、厚肉部成形溝19に対向させて位置決めすることができる。かくして、初期設定が完了する。なお、当該プロセスでは、試験的に溶融樹脂13aを吐出させる必要がある。
【0068】
ここで、上記した初期設定プロセスに代えて、他のプロセスを適用してもよい。他のプロセスにおいて、例えば、ネックイン部13pの構成位置、及び、熱膨張による連結管22の伸び量を予想する。かかる予想値に基づいて、位置調整機構12によって、ネックイン部13pを、厚肉部成形溝19に対向させて位置決めする。かくして、初期設定が完了する。当該他のプロセスでは、試験的に溶融樹脂13aを吐出させる必要はない。
【0069】
初期設定の完了後、スリット18からシート状の溶融樹脂13aを吐出させる。吐出された溶融樹脂13aは、主ロール15と押圧ロール16との間(接地点)を挟圧されつつ通過する。このとき、溶融樹脂13aには、厚肉部成形溝19の形状輪郭に一致した厚肉部14bが成形される。厚肉部14bは、他の部分よりも厚肉化しており、押出方向Fpに沿って連続的に成形される。続いて、切断プロセスにおいて(
図6参照)、厚肉部14bを、予め設定された切断ライン31に沿って切断する。これにより、薄物導光板1に至る半製品が1つ構成される。
【0070】
次に、当該半製品において、厚肉部14bの反対側に対向して成形された余剰部分32を、予め設定された切断ライン33に沿って切断する。そして、押出方向Fpに所定の間隔で裁断する。これにより、入光部2から面発光部3に亘って一体成形された薄物導光板1(
図7参照)が構成される。
【0071】
続いて、かかる薄物導光板1において、面発光部3となるべき薄肉部14aに対して各種の表面処理が施される。これにより、最終製品としての薄物導光板1が完成する。この後、面発光部3の上面3aに光拡散部品6(例えば、拡散シート、プリズムシートなど)を搭載する。かくして、携帯端末のバックライトユニット(
図7参照)が完成する。
【0072】
「実施形態の効果について」
本実施形態によれば、押出機(移動本体)20を矢印S1,S2方向(回転軸15r,16r,17rに平行な方向)に前進及び後退させる。このとき、前進及び後退の運動は、連結管(連結機構)22を介して伝達され、Tダイ(支持本体)21を移動させる。かくして、Tダイ21(スリット18、吐出口18c)から吐出されたシート状の溶融樹脂13aにおいて、そのネックイン部13pが厚肉部成形溝19に対向させて位置決めされる。これにより、半製品の厚肉部14b(導光板1の入光部2)の形状輪郭が精度よく成形される。この結果、半製品(薄物導光板1)に用いられる光学シートを、予め設定された形状輪郭に沿って精度よく押出成形することができる。
【0073】
ところで、Tダイ(支持本体)21の移動方向と、当該Tダイ(支持本体)21に対する連結管(連結機構)22の連結方向とが異なる場合、熱膨張による連結管(連結機構)22の伸び量を考慮したTダイ(支持本体)21の移動と、ネックイン部13pを厚肉部成形溝19に対向させるためのTダイ(支持本体)21の移動と、を別々に行わなければならない。
【0074】
そこで、本実施形態によれば、Tダイ(支持本体)21の移動方向と、当該Tダイ(支持本体)21に対する連結管(連結機構)22の連結方向とを同一方向(例えば、回転軸15r,16r,17rに平行な方向)に設定する。これにより、Tダイ(支持本体)21を一方向に移動させるだけで、熱膨張による連結管22の伸び量を考慮しつつ、同時に、ネックイン部13pを厚肉部成形溝19に対向させて位置決めすることができる。
【0075】
本実施形態によれば、押出方向Fpを横断する方向(即ち、スリット18の幅方向)において、言い換えれば、Tダイ21から吐出されたシート状の溶融樹脂13aの幅方向において、薄物導光板1に至る半製品が1つ構成する仕様である。これにより、Tダイ(支持本体)21の小型化を図ることができる。この結果、位置調整機構12の構成を簡略化することが可能となり、装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0076】
本実施形態によれば、半製品(薄物導光板1)の形状輪郭において、入光部2の上面2aを、凹凸の無い平坦面状に成形することができる。これにより、光源7(例えば、LED)から発せられた光を、入光面2bから漏れなく取り込んで、入光部2に円滑に導光させことができる。この結果、導光効率に優れた半製品(薄物導光板1)を実現することができる。
【0077】
本実施形態によれば、半製品(薄物導光板1)の形状輪郭において、傾斜面4と、入光部2の上面2aとの境界部分5を角張らせることができる。換言すると、傾斜面4と、入光部2の上面2aとの境界部分5を、丸身を帯びないように構成することができる。要するに、境界部分5において、入光部2の上面2aから傾斜面4に向けて急峻に角度を変化させることができる。これにより、入光部2に導光した光を、傾斜面4に沿って漏れなく面発光部3に伝搬させることができる。この結果、面発光部3から面状に均一な光を発生させることができる。
【0078】
「実施形態の効果の実証試験」
ネックイン部13pを厚肉部成形溝19に対向させて位置決した発明仕様と、そうでない従来仕様とを準備する。そして、双方に共通の試験用装置(即ち、光学シート成形装置8)を用意する。
【0079】
試験用装置のスペックは、以下の通りである。
押出機 :同方向回転2軸混練押出機 スクリュ呼径28mm
Tダイ :幅330mm リップ隙間0.8mm
3つのロール :直径180mm 面長400mm
主ロール :片側に深さ0.15mmの溝
溶融樹脂の押出量(流量) :20kg/h ポリカーボネート原料
最終製品(導光板)の厚さ :厚肉部(入光部)の厚さ0.35mm
薄肉部(面発光部)の厚さ0.2mm
図9には、試験結果が示されている。即ち、発明仕様で得られる半製品の断面写真(本発明サンプル)と、従来仕様で得られる半製品の断面写真(従来サンプル)と、が示されている。双方の断面写真の間には、最適な製品輪郭が示されている。かかる試験結果によれば、製品輪郭の製品化領域において、従来仕様の半製品では「ひけ」が発生しているのに対して、発明仕様の半製品には「ひけ」が発生していないことが分かる。この結果、上記した効果を得られることが実証された。
【0080】
「変形例」
上記した実施形態において、成形ロールユニット10の押圧ロール(第1ロール)16は、その外周が弾性変形しない仕様を想定しているが、これに代えて、弾性変形可能な外周を有する押圧ロール16を適用してもよい。
図8に示すように、本変形例の押圧ロール16は、外筒34と、内筒35と、温度調節媒体36と、を備えている。外筒34は、内筒35の外側に配置されている。温度調節媒体36は、外筒34と内筒35との間に隙間なく充填又は循環されている。外筒34と内筒35は、押圧ロール16の回転軸16rに対して同心円状に設けられている。
【0081】
内筒35は、剛性を有している。内筒35は、弾性変形し難く構成されている。内筒35は、金属材料で構成されている。一方、外筒34は、弾性を有している。外筒34は、弾性変形可能に構成されている。外筒34は、金属材料で構成されている。この場合、外筒34は、内筒35よりも薄肉化されている。外筒34を薄肉化させることで、弾性変形し易くなる。
【0082】
かかる構成によれば、Tダイ21のスリット18から吐出したシート状の溶融樹脂13aを、主ロール(第2ロール)15の転写面15sに向けて押圧する際、外筒34は、転写面15sに沿って弾性変形する。これにより、溶融樹脂13aを主ロール15の厚肉部成形溝19に沿って隙間なく密着させることができる。この結果、溶融樹脂13aを主ロール15の転写面15sの幅方向全体に亘って均一に押し付けることができる。
【0083】
この場合、外筒34のうち、溶融樹脂13aに接触する部分は、鏡面仕上げにすることが好ましい。これにより、半製品(薄物導光板1)の下面1sを平滑な平坦面として構成することができる。半製品(薄物導光板1)の下面1sを入光部2の上面2a、及び、面発光部3の上面3aと平行に対向させることができる。この結果、半製品としての薄物導光板1の光学特定を一定に維持することができる。なお、これ以外の構成及び効果は、上記した実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0084】
「変形例」
上記した実施形態において、上記した初期設定を行う際に、加えて、当該初期設定後におけるネックイン部13pの位置調整を行う際に、例えば、
図5に示すように、ディッケル(dickel)37によってTダイ21のスリット18(吐出口18c)を制限するようにしてもよい。ディッケル37は、スリット18(吐出口18c)を一部覆うようにセットすることが可能である。そうすると、使用目的や用途に応じ、溶融樹脂13aの吐出範囲を狭めたり広げたりして、調整することができる。これにより、例えば、ネックイン部13pと厚肉部成形溝19との位置合わせを高精度に行うことができる。この結果、品質精度の高い光学シートを成形することが可能となる。なお、これ以外の構成及び効果は、上記した実施形態と同様であるため、その説明は省略する。