特許第6917801号(P6917801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6917801
(24)【登録日】2021年7月26日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
   F21V 33/00 20060101AFI20210729BHJP
   F21V 3/02 20060101ALI20210729BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20210729BHJP
   E04F 11/18 20060101ALI20210729BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20210729BHJP
【FI】
   F21V33/00 200
   F21V3/02 400
   E04B1/00 502Z
   E04F11/18
   F21Y115:10
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-124277(P2017-124277)
(22)【出願日】2017年6月26日
(65)【公開番号】特開2019-9014(P2019-9014A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】丸子 勇人
(72)【発明者】
【氏名】阪本 泰智
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 寛徳
【審査官】 田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−166416(JP,A)
【文献】 特開2013−221297(JP,A)
【文献】 特開2016−217070(JP,A)
【文献】 特開2005−213862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 33/00
E04B 1/00
E04F 11/18
F21V 3/02
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外廊下又はバルコニーの屋外側に設けられた支柱と、
前記支柱の屋外側の面に固定された部材に接合された縦格子と、
前記支柱の屋内側の側面に取付けられた縦長照明と、
前記縦長照明の屋内側を開放し両側面を縦方向に沿って覆うカバーと、
を有し、
前記カバーの屋内側への張出し幅は、前記縦格子の縦桟の間から前記支柱の屋内側の角部を見たときの視線を遮らない幅とされている建物。
【請求項2】
前記縦格子は手摺子であり、前記手摺子の上部に笠木が固定されている、請求項1に記載の建物。
【請求項3】
外廊下又はバルコニーの屋外側に設けられた支柱と、
前記支柱に取付けられた縦格子と、
前記支柱の屋内側の側面に取付けられた縦長照明と、
前記縦長照明の屋内側を開放し両側面を縦方向に沿って覆うカバーと、
を有し、
前記カバーの屋内側への張出し幅は、前記縦格子の縦桟の間から前記支柱の屋内側の角部を見たときの視線を遮らない幅とされている建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、建物の共用廊下を照らす照明器具が天井に取り付けられた照明システムが示されている。この照明システムにおいては、照明器具の屋外側に遮光板を取り付け、照明器具から共用廊下の外側領域へ向かう直射光を遮っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−69357号公報(図14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の照明システムでは、照明器具の側面側から共用廊下の外側領域へ向かう直射光を遮ることは難しく、建物の外部から照明器具の光が見える。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して、照明器具の直射光を建物の外部から視認し難くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の建物は、外廊下又はバルコニーの屋外側に設けられた支柱と、前記支柱の屋外側の面に固定された部材に接合された縦格子と、前記支柱の屋内側の側面に取付けられた縦長照明と、前記縦長照明の屋内側を開放し両側面を縦方向に沿って覆うカバーと、を有し、前記カバーの屋内側への張出し幅は、前記縦格子の縦桟の間から前記支柱の屋内側の角部を見たときの視線を遮らない幅とされている
【0007】
請求項1の建物によると、支柱の屋内側の側面に取付けられた縦長照明は、屋内側を除いて支柱とカバーで覆われている。このため、日中の縦長照明の存在感を消すことができる。
【0008】
また、夜間は建物の外部から縦長照明の直射光が見えず、縦長の光が外廊下又はバルコニーを照らす間接光によって、影を帯びた縦格子がすっきりと洗練された雰囲気をかもしだす。さらに外廊下又はバルコニーを歩く歩行者には、側方から縦長照明の直射光が見えないため、眩しさを感じにくい。
【0009】
一態様の建物は、前記カバーの屋内側への張出し幅は、前記縦格子の縦桟の間から前記支柱の屋内側の角部を見たときの視線を遮らない幅とされている。
【0010】
一態様の建物によると、建物の外部から縦桟の間を通して外廊下又はバルコニーを見たとき、視線がカバーによって遮られない。このためカバーの張出し幅が最小幅となり、カバーを目立たなくすることができる。
【0011】
一態様の建物は、前記縦格子における縦桟の幅をa、奥行きをb、互いに隣接する前記縦桟間の隙間の幅をcとした場合、a+b≦cである。
【0012】
一態様の建物によると、縦桟の幅aと奥行きbの合計に対して、縦桟間の隙間の幅cが大きい。このため外廊下又はバルコニーの開放性を高めることができる。すなわち、縦桟で縦長照明及びカバーを目立たなくして建物の外観をシンプルにしつつ、外廊下又はバルコニーへ自然採光を取り入れることができる。
【0013】
請求項2の建物は、前記縦格子は手摺子であり、前記手摺子の上部に笠木が固定されている。
【0014】
請求項2の建物によると、縦格子が手摺子であるため、手摺子の上部に固定された笠木の上方が開放されている。このため、外廊下又はバルコニーの開放性を高めることができる。また、支柱には縦長照明が取り付けられているため、天井照明をつける必要がない。これにより、建物の外観をシンプルにできる。
請求項3の建物は、外廊下又はバルコニーの屋外側に設けられた支柱と、前記支柱に取付けられた縦格子と、前記支柱の屋内側の側面に取付けられた縦長照明と、前記縦長照明の屋内側を開放し両側面を縦方向に沿って覆うカバーと、を有し、前記カバーの屋内側への張出し幅は、前記縦格子の縦桟の間から前記支柱の屋内側の角部を見たときの視線を遮らない幅とされている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る建物によると、照明器具の光を建物の外部から視認し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る建物を示す平面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る建物の外廊下に設けた手摺を示す立断面図である。
図3図2における3−3線断面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る照明器具の構成を示す分解図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る建物の外部から照明器具を見た際の視線を示す平面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る建物の外部から照明器具を見た際の視線を示す平面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る縦桟の奥行きを変えた例を示す平面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る建物の手摺において、振れ止めに代えて笠木を設置した変形例を示す立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
(建物)
本発明の第1実施形態に係る建物10は、図1に示すように、並列配置された複数の住戸12の玄関先に共用の外廊下14を備えた集合住宅であり、外廊下14の屋外側に手摺20が設けられている。なお、「屋外側」とは、図1等において矢印OUTで示した方向であり、「屋内側」とは、矢印INで示した方向である。
【0018】
(手摺)
手摺20は、図2に示すように、外廊下14におけるスラブ14Sの先端(屋外側の端部)に下端部が埋め込まれた支柱22と、支柱22の屋外側の面の上端部寄り及び下端部寄りの部分に溶接されたアングル状の固定部材24と、固定部材24に接合された連結部材26と、連結部材26の屋外側の面に接合された手摺子としての縦格子30と、縦格子30を形成する縦桟32の上端部を屋内側から連結する振れ止め材27と、を備えている。
【0019】
図3に示すように、連結部材26は、隣り合う支柱22にそれぞれ溶接された固定部材24間に架け渡され、固定部材24にボルト固定されている。この連結部材26に、複数の縦桟32から成る縦格子30が接合されている。
【0020】
縦格子30においては、縦桟32の幅aと奥行きbとの和は、互いに隣接する縦桟32間の隙間の幅c以下(a+b≦c)とされている。
【0021】
(照明器具)
支柱22には、照明器具40が固定されている。照明器具40は、支柱22に沿う縦長形状(図2参照)の縦長照明42と、縦長照明42が格納され、支柱22に固定されたカバー44と、を備えている。
【0022】
図4に示すように、縦長照明42は、LED素子42Eが縦方向(図4における紙面前後方向)に複数配列された基盤42Bを、透明又は乳白色の樹脂カバー42Cで被覆して構成され、ゴム製のスペーサー46を介してカバー44に格納されている。
【0023】
カバー44は、曲げ加工により断面(図3に示された断面)形状が「コの字」型(チャンネル状)に成形されたアルミ板を、支柱22と同色に塗装して形成されている。カバー44の底板44Bは支柱22に固定されている。また、底板44Bの両端からそれぞれ屋内方向へ突出した側板44Fは、縦長照明42がカバー44に格納された状態で、縦長照明42の両側面を覆うように長さlが定められている。なお、縦長照明42の屋内側の面は開放されている。
【0024】
本発明における「支柱の屋内側の側面に取付けられた縦長照明」とは、縦長照明42のようにカバー44に格納された状態で支柱22の屋内側の側面に取付けられたもののほか、支柱22に直接取付けられたものを含む。この場合、カバー44に代えて、縦長照明42の両側面を覆う2枚の平板等をカバーとして用いることができる。
【0025】
(作用・効果)
図5には、建物10の外部から縦桟32(32a〜32g…)の間を通して照明器具40を視認しようとした際の視線T(T1〜T7…)が示されている。
【0026】
支柱22に近い位置(縦桟32aと縦桟32aの間、縦桟32aと縦桟32bの間)から照明器具40を視認しようとした場合、視線T1、T2は支柱22によって遮られ、照明器具40を視認できない。
【0027】
視線T2においては、縦桟32aと縦桟32bの間から、支柱22の屋内側の角部(点P)が見える。しかし、カバー44の屋内側への張出し幅(長さl)は、視線T2を遮らない長さに設定されているため、カバー44を視認できない。
【0028】
支柱22から遠い位置(縦桟32eと縦桟32fの間、縦桟32fと縦桟32gの間)から照明器具40を視認しようとした場合、視線T6、T7は縦桟32e、32fによって遮られ、照明器具40を視認できない。
【0029】
なお、縦桟32gよりさらに遠い位置にある縦桟(不図示)の間からも、同様に照明器具40を視認できない。
【0030】
これに対して、縦桟32bと縦桟32cの間、縦桟32cと縦桟32dの間、縦桟32dと縦桟32eの間の視線T3、T4、T5は、支柱22又は縦桟32の何れによっても遮られないため、照明器具40を視認できる。
【0031】
しかし照明器具40においては、縦長照明42の側面がカバー44に覆われている。このため縦長照明42は建物10の外部から見えない。これにより日中の縦長照明42の存在感を消すことができる。
【0032】
また、夜間は建物の外部から縦長照明42の直射光が見えず、縦長の光が外廊下14を照らす間接光によって、影を帯びた縦格子がすっきりと洗練された雰囲気をかもしだす。さらに外廊下14を歩く歩行者には、側方から縦長照明42の直射光が見えないため、眩しさを感じにくい。
【0033】
また、図3に示すように、縦格子30においては、縦桟32間の隙間の幅cが、縦桟32の幅aと奥行きbの合計以上とされている。このため外廊下14の開放性を高めることができる。これにより、縦桟32及びカバー44で縦長照明42を目立たなくして建物10の外観をシンプルにしつつ、外廊下14へ自然採光を取り入れることができる。
【0034】
また、第1実施形態の建物10では、外廊下14を照らすために手摺20の支柱22に照明器具40を取付けている。このため外廊下14には天井照明をつける必要がない。あるいは数を減らせる。これにより、建物10の外観をシンプルにできる。
【0035】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る建物11では、図6に示すように、照明器具60におけるカバー64の奥行き方向の長さmが、第1実施形態のカバー44の長さlより短い(m<l)。また、縦格子50を構成する縦桟52(52a〜52g…)の奥行きdは、第1実施形態の縦桟32の奥行きbより大きい(d>b)。
【0036】
縦桟52(52a〜52g…)の奥行きdが大きいと、例えば縦桟52dと縦桟52eの間から外廊下14の支柱22側の部分を見通せる視野角θ2(θ2=tan−1(c/d))は、第1実施形態における縦桟32dと縦桟32eの間から外廊下14の支柱22側の部分を見通せる視野角θ1(θ1=tan−1(c/b)、図5参照)より狭い(θ2<θ1)。したがって、第2実施形態においては、第1実施形態の建物10と比較して、建物11の外側から外廊下14を見通しにくい。
【0037】
さらに、照明器具60におけるカバー64の奥行き方向の長さmが短いため、カバー64は建物11の外部から見えない。
【0038】
具体的には、支柱22に近い位置(縦桟52aと縦桟52aの間、縦桟52aと縦桟52bの間、縦桟52bと縦桟52cの間)から照明器具60を視認しようとした場合、視線S1、S2、S3は支柱22によって遮られ、照明器具60を視認できない。
【0039】
視線S2、S3においては、それぞれ縦桟52aと縦桟52bの間、縦桟52bと縦桟52cの間から、支柱22の屋内側の角部(点P)が見える。しかし、カバー64の屋内側への張出し幅(長さm)は、第1実施形態のカバー44の長さlより短いため、視線S2、S3を遮らない。
【0040】
また、支柱22から遠い位置(縦桟52cと縦桟52dの間、縦桟52dと縦桟52eの間、縦桟52eと縦桟52fの間、縦桟52fと縦桟52gの間)から照明器具60を視認しようとした場合、視線S4、S5、S6、S7は縦桟52c、52d、52e、52fによって遮られ、照明器具60を視認できない。
なお、縦桟52gよりさらに遠い位置にある縦桟52(不図示)の間からも、同様に照明器具60を視認できない。
【0041】
このように、第2実施形態に係る建物11では、建物11の外部から、縦長照明42だけでなく、カバー64も見えない。すなわち、照明器具60が見えない。これによりカバー64の張出し幅を最小幅として日中の照明器具60の存在感を消すことができる。
【0042】
第2実施形態に係る建物11のその他の構成については、第1実施形態に係る建物10と同様であり説明は省略する。
【0043】
なお、第1実施形態における縦格子30は、上端部が振れ止め材27で連結されて手摺20を形成しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば図8に示すように、振れ止め材27に代えて又は加えて笠木28を設置してもよい。笠木28を設置することで、手摺20を掴みやすくできる。
【0044】
また、笠木28を設置せず、例えば縦格子30は上下のスラブ間に亘って配置してもよい(所謂ルーバー)。このようにすれば、外廊下14に対する建物10の外部からの視線を遮りプライバシー性を高めつつ、採光を得ることができる。また、建物10の外観の意匠性を向上できる。第2実施形態における縦格子50についても同様である。
【0045】
また、第1実施形態における手摺20及び照明器具40は、外廊下14に設けられているが本発明の実施形態はこれに限らない。例えば建物10のバルコニー(ルーフテラス等を含む)に設けてもよい。バルコニーに手摺20及び照明器具40を設けることで、バルコニーの床面のほか、掃き出し窓を通して室内を照らすこともできる。第2実施形態における手摺及び縦格子50についても同様である。
【0046】
また、第1実施形態における縦桟32の奥行きbは全て一定としたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば図7に示す縦桟34a、34bのように、奥行きを変えることもできる。縦桟34a、34bのように奥行きを変えても、縦長照明42は、建物10の外部から見えない。このように縦桟の奥行きを変えることで、建物10の外観に表情を与えることができる。第2実施形態における縦桟52についても同様である。
【0047】
また、第1実施形態における縦桟32の幅aと奥行きbとの和が、互いに隣接する縦桟32間の隙間の幅c以下(a+b≦c)とされているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば外廊下14の採光性よりプライバシーを重視する場合は、互いに隣接する縦桟32間の隙間の幅cを小さくして(a+b>c)、建物10の外部から外廊下14を見通し難くしてもよい。
【0048】
また、第1実施形態における手摺20は、支柱22より屋外側に縦格子30が配置されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば支柱22の両側に縦格子30を配置してもよい。このように手摺20を構成すれば、手摺20全体をコンパクトに形成することができる。
【0049】
また、第1実施形態における縦長照明42は、点光源であるLED素子42Eを用いて線状に光らせるライン照明としているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば線光源である蛍光灯を用いてもよいし、面光源である有機ELを短冊状に成形して用いてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10、11 建物
14 外廊下
20 手摺
22 支柱
30、50 縦格子(手摺子)
32、52 縦桟
42 縦長照明
44、64 カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8