特許第6917812号(P6917812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6917812ポリウレタンフォーム用発泡性組成物及びそれを用いたポリウレタンフォームの製造法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6917812
(24)【登録日】2021年7月26日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム用発泡性組成物及びそれを用いたポリウレタンフォームの製造法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/40 20060101AFI20210729BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20210729BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20210729BHJP
   C08G 18/18 20060101ALI20210729BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20210729BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20210729BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20210729BHJP
【FI】
   C08G18/40 018
   C08G18/00 H
   C08G18/50 021
   C08G18/18
   C08G18/48 004
   C08G18/42 008
   C08G101:00
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-134671(P2017-134671)
(22)【出願日】2017年7月10日
(65)【公開番号】特開2019-14840(P2019-14840A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】関 浩之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆康
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−141719(JP,A)
【文献】 特開平07−025975(JP,A)
【文献】 特開2018−053121(JP,A)
【文献】 特開2014−193995(JP,A)
【文献】 特開2004−175973(JP,A)
【文献】 特開2016−188330(JP,A)
【文献】 特開2016−188329(JP,A)
【文献】 特表2001−524995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00−18/87
C08G101/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールを主体とするポリオール組成物と、ポリイソシアネートとから構成され、かかるポリオールとポリイソシアネートとの反応と共に、発泡剤による発泡にて、ポリウレタンフォームを与える発泡性組成物にして、
前記ポリオール組成物中のポリオールとして、ポリエステルポリオール(A)とポリエーテルポリオール(B)とが質量比においてA:B=65:35〜40:60の割合で用いられており、且つ該ポリエーテルポリオールの80質量%以上が、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールにて構成されていると共に、前記発泡剤として、少なくともハロゲン化ハイドロオレフィンを用いてなることを特徴とするポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項2】
前記発泡剤として、ハロゲン化ハイドロオレフィンと水とが併用されることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項3】
前記ハロゲン化ハイドロオレフィンと前記水とが、質量比において80:20〜95:5の割合で用いられることを特徴とする請求項2に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項4】
前記ポリオール組成物中に、触媒として、第四アンモニウム塩を、ポリオールの100質量部に対して0.1〜5質量部の割合で含有せしめてなることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項5】
前記ハロゲン化ハイドロオレフィンが、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンからなる群より選ばれてなることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項6】
前記ハロゲン化ハイドロオレフィンが、HCFO−1233zdであることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項7】
前記エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールが、水酸基価:400mgKOH/g以上600mgKOH/g未満のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールと、水酸基価:600mgKOH/g以上1000mgKOH/g以下のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールを含有してなることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項8】
前記水酸基価:400mgKOH/g以上600mgKOH/g未満のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールと、前記水酸基価:600mgKOH/g以上1000mgKOH/g以下のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールとが、質量比において10:90〜30:70の割合で用いられることを特徴とする請求項7に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項9】
前記ポリエーテルポリオールが、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールと、マンニッヒ系ポリエーテルポリオールとからなることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項10】
前記ポリエステルポリオールが、フタル酸系ポリエステルポリオールを含有してなることを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項11】
前記ポリオール組成物中に、アミン系触媒を、ポリオールの100質量部に対して0.1〜7質量部の割合で含有してなることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物を用いて、かかる発泡性組成物を、所定の構造体の表面に吹き付けて、発泡・硬化せしめることを特徴とするポリウレタンフォームの製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォーム用発泡性組成物及びそれを用いたポリウレタンフォームの製造法に係り、特に、施工作業性に優れたポリウレタンフォーム用発泡性組成物と、それを用いて、寸法安定性に優れたポリウレタンフォームを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリウレタンフォームは、その優れた断熱性や接着性を利用して、主に断熱部材として、建築用内外壁材やパネル等の断熱を始め、金属サイディングや電気冷蔵庫等の断熱、ビル・マンション・冷凍倉庫等の躯体壁面、天井、屋根等の断熱及び結露防止、また輸液パイプ等の断熱に、実用化されてきている。そして、かかるポリウレタンフォームは、一般に、ポリオール化合物を主体とし、これに、発泡剤、更に必要に応じて触媒や整泡剤、難燃剤等の各種助剤を配合したポリオール配合液(プレミックス液)からなるポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを、混合装置により連続的に又は断続的に混合して、フォーム形成箇所に適用し、反応せしめて、発泡・硬化させることにより、製造されているのである。
【0003】
ところで、かかるポリウレタンフォームの製造のために、現在使用されている発泡剤としては、地球温暖化係数において比較的優位とされるHFC−134a、HFC−245fa、HFC−365mfc等のハイドロフルオロカーボン(HFC)系発泡剤が知られている。このハイドロフルオロカーボン系発泡剤は、オゾン層破壊の少ない又は生じない代替フロンとして認識されているものではあるが、近い将来、環境破壊の問題に対する強い要請により、そのような代替フロンの使用も制限されるとの推測から、それに代わり、化学的に不安定であるために、地球温暖化係数が低くなるハイドロフルオロオレフィン(HFO)やハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)と呼ばれるハロゲン化ハイドロオレフィン系発泡剤が、開発されてきている。
【0004】
例えば、特表2013−500386号公報(特許文献1)においては、ハロゲン化ハイドロオレフィン系発泡剤の1つであるHCFO−1233zdを用い、それと、少なくとも1つのポリエステルポリオール及び少なくとも1つのポリエーテルポリオールとを含む組成物を形成して、この組成物とポリイソシアネートとを反応、発泡・硬化させることにより、ポリウレタンフォームを形成せしめる技術が、提案されている。そして、そこで用いられるハロゲン化ハイドロオレフィン系発泡剤は、上記したHFC系発泡剤と比較して、ポリオールとの相溶性が良好であり、系内から発泡剤が脱離し難い性質を有しているものではあるが、そこで提案されているポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとを、ポリオール成分として、単に併用するだけでは、形成されるフォームの難燃性が低く、また施工性や寸法安定性等において良好な特性を発揮する硬質のポリウレタンフォームを得ることは、困難なことであった。
【0005】
一方、特開平7−25975号公報(特許文献2)においては、ポリオール成分の1つとして、水酸基価(mgKOH/g)が500〜1000のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールを用いて、硬質のポリウレタンフォームを製造する方法が提案され、そのような方法の採用によって、吹付け施工時の横走現象及びそれに伴う被施工面からの硬質ポリウレタンフォームの剥離を防止し、断熱性、密着性に優れ、且つフライアビティが小さく、スコーチを生じることのない、硬質ポリウレタンフォームの断熱層を形成することが出来ることが、明らかにされている。
【0006】
しかしながら、かかる特許文献2にて規定されているような割合において、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールを用いた場合には、ポリオール組成物とポリイソシアネートとからなる混合物を対象物に吹き付け、目的とする硬質のポリウレタンフォームの層を形成する吹付け施工時に、スプレーガンの先端においてフォームの形成が進行して、その硬化反応が惹起されてしまい、スプレーガンの先端が詰まるというガン詰り現象が発生し、施工が出来なくなるという問題がある。また、発泡剤として、そこで提案されているハイドロフルオロカーボン(HFC)系やハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)系の発泡剤を用いたりすると、その沸点が低く、ポリオールとの相溶性が劣っているために、発泡剤組成物からのガスの脱離が起こり易く、また生成したフォームが急激な発泡挙動を示してしまう恐れがあるところから、吹付け施工時の横走現象を十分に阻止することが出来ず、生成したフォームの強度が不充分となるために、寸法安定性が悪くなるといった問題も内在しており、更にエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールの配合量を増加せしめた場合には、難燃性が低下してしまうという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2013−500386号公報
【特許文献2】特開平7−25975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、良好な吹付け施工作業性を有するポリウレタンフォーム用発泡性組成物を提供することにあり、また、優れた寸法安定性を有するポリウレタンフォームとそれを与える発泡性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合せにて、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載やそこに開示の発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0010】
(1) ポリオールを主体とするポリオール組成物と、ポリイソシアネートとから構成さ れ、かかるポリオールとポリイソシアネートとの反応と共に、発泡剤による発泡に て、ポリウレタンフォームを与える発泡性組成物にして、
前記ポリオール組成物中のポリオールとして、ポリエステルポリオール(A)と ポリエーテルポリオール(B)とが質量比においてA:B=70:30〜40:6 0の割合で用いられており、且つ該ポリエーテルポリオールの70質量%以上が、 エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールにて構成されていると共に、前記発泡 剤として、少なくともハロゲン化ハイドロオレフィンを用いてなることを特徴とす るポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
(2) 前記発泡剤として、ハロゲン化ハイドロオレフィンと水とが併用されることを特 徴とする前記態様(1)に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
(3) 前記ハロゲン化ハイドロオレフィンと前記水とが、質量比において80:20〜 95:5の割合で用いられることを特徴とする前記態様(2)に記載のポリウレタ ンフォーム用発泡性組成物。
(4) 前記ポリオール組成物中に、触媒として、第四アンモニウム塩を、ポリオールの 100質量部に対して0.1〜5質量部の割合で含有せしめてなることを特徴とす る前記態様(1)乃至前記態様(3)の何れか1つに記載のポリウレタンフォーム 用発泡性組成物。
(5) 前記ハロゲン化ハイドロオレフィンが、ハイドロフルオロオレフィン及びハイド ロクロロフルオロオレフィンからなる群より選ばれてなることを特徴とする前記態 様(1)乃至前記態様(4)の何れか1つに記載のポリウレタンフォーム用発泡性 組成物。
(6) 前記ハロゲン化ハイドロオレフィンが、HCFO−1233zdであることを特 徴とする前記態様(1)乃至前記態様(5)の何れか1つに記載のポリウレタンフ ォーム用発泡性組成物。
(7) 前記エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールが、水酸基価:400mgKO H/g以上600mgKOH/g未満のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオー ルと、水酸基価:600mgKOH/g以上1000mgKOH/g以下のエチレ ンジアミン系ポリエーテルポリオールを含有してなることを特徴とする前記態様(
1)乃至前記態様(6)の何れか1つに記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成 物。
(8) 前記水酸基価:400mgKOH/g以上600mgKOH/g未満のエチレン ジアミン系ポリエーテルポリオールと、前記水酸基価:600mgKOH/g以上 1000mgKOH/g以下のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールとが、 質量比において10:90〜30:70の割合で用いられることを特徴とする前記 態様(7)に記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
(9) 前記ポリエーテルポリオールが、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールと 、マンニッヒ系ポリエーテルポリオールとからなることを特徴とする前記態様(1 )乃至前記態様(8)の何れか1つに記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物 。
(10) 前記ポリエステルポリオールが、フタル酸系ポリエステルポリオールを含有し てなることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(9)の何れか1つに記載の ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
(11) 前記ポリオール組成物中に、アミン系触媒を、ポリオールの100質量部に対 して0.1〜7質量部の割合で含有してなることを特徴とする前記態様(1)乃至 前記態様(10)の何れか1つに記載のポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
(12) 前記態様(1)乃至前記態様(11)の何れか1つに記載のポリウレタンフォ ーム用発泡性組成物を用いて、かかる発泡性組成物を、所定の構造体の表面に吹き 付けて、発泡・硬化せしめることを特徴とするポリウレタンフォームの製造法。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物にあっては、発泡剤として、少なくともハロゲン化ハイドロオレフィンを用いると共に、ポリオール組成物の主体となるポリオールを、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールの所定の割合にて構成し、更にかかるポリエーテルポリオールの大部分を、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールにて構成したものであるところから、施工性、特に現場での吹付け発泡の作業性が、効果的に向上され、得られる硬質ポリウレタンフォームの良好な寸法安定性を有利に実現することが出来ることとなる。
【0012】
また、本発明の好ましい態様に従って、2種類のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールを組み合わせることによって、硬化速度の調整が可能となり、得られる硬質ポリウレタンフォームのフォーム強度を有利に向上させることが出来る利点を享受することが出来、更にはポリエーテルポリオールとして、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールとマンニッヒ系ポリエーテルポリオールとを併用して用いることにより、難燃性や反応活性を向上させることが出来る特徴がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物と、それを用いたポリウレタンフォームの製造法の構成について、詳細に説明することとする。
【0014】
先ず、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物は、ポリオールを主体とするポリオール組成物と、ポリイソシアネートとから構成され、かかるポリオールとポリイソシアネートとの反応と共に、発泡剤による発泡にて、ポリウレタンフォームを与える発泡性組成物であるが、そこで用いられるポリオール組成物を構成する主たる成分であるポリオールは、ポリエステルポリオール(A)とポリエーテルポリオール(B)にて構成されるものであるが、それら必須の構成成分の他にも、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、ポリイソシアネートと反応してポリウレタンを生じる、公知の各種のポリオール化合物(例えば、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ポリマーポリオール等)が、単独で又は適宜に組み合わされて、用いられ得るものである。なお、そのようなポリオール組成物におけるポリオールの割合は、合計で、50〜80質量%程度、好ましくは60〜70質量%程度とされることとなる。
【0015】
そして、そのようなポリオール組成物中のポリオールを構成する、上記したポリエステルポリオール(A)とポリエーテルポリオール(B)のうち、ポリエステルポリオール(A)としては、多価アルコール−多価カルボン酸縮合系のポリオールや、環状エステル開環重合体系のポリオール等の公知のものを挙げることが出来る。そこにおいて、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を用いることが出来、中でも、2価アルコールが好ましく用いられることとなる。また、多価カルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、及びこれらの無水物等が挙げられる。更に、環状エステルとしては、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
【0016】
中でも、ポリエステルポリオールとしては、難燃性、相溶性の観点から、芳香族系のポリエステルポリオールを用いることが好ましく、具体的には、フタル酸系ポリエステルポリオールを用いることが好ましく、更にそのようなポリエステルポリオールの2種類以上を組み合わせることも有効である。なお、フタル酸系ポリエステルポリオールには、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びこれらの無水物等と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の二価アルコールとの縮合物からなるフタル酸系ポリエステルポリオールが、好ましく用いられることとなる。このようなフタル酸系ポリエステルポリオールを使用すると、低温(−10〜5℃程度)下において、現場発泡を実施した場合でも、建築躯体等からの剥離が惹起され難く、更に現場発泡後のフォーム端部の処理が比較的容易な程度の柔軟性を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることが出来る利点がある。特に、ハイドロフルオロオレフィン系発泡剤又はハイドロクロロフルオロオレフィン系発泡剤を含有せしめた際に、組成物としての保存安定性に優れたものを与える特徴がある。
【0017】
また、フタル酸系ポリエステルポリオールを組み合わせて用いる場合にあっては、無水フタル酸系ポリエステルポリオールとテレフタル酸系ポリエステルポリオールの2種を組み合わせるのが好ましい。けだし、無水フタル酸は安価に入手することが出来、それから得られるポリエステルポリオールは、安価に製造することが可能であり、コスト的に有利である特徴を有している。また、芳香環を有しているところから、難燃性に優れており、発泡剤として用いられるハロゲン化ハイドロオレフィンとの相溶性にも優れている特徴を有している。更に、テレフタル酸系ポリエステルポリオールは、無水フタル酸系ポリエステルポリオールよりも更に難燃性に優れたものであり、また剛直な構造を有していることから、寸法安定性の向上に寄与する特徴を有している。このようなことから、無水フタル酸系とテレフタル酸系の2つのポリエステルポリオールを組み合わせることにより、発泡剤であるハロゲン化ハイドロオレフィンを程良く相溶させ、難燃性にも優れる硬質ポリウレタンフォームを有利に製造することが可能となるのである。
【0018】
一方、本発明に用いられるポリオール組成物中のポリオールの他の1つの必須の構成成分たるポリエーテルポリオール(B)は、その70質量%以上、好ましくは80質量%以上が、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールにて構成されている必要がある。かかるポリエーテルポリオール中のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールの割合が70質量%未満となると、硬化速度が低下し、施工時に液だれや横走現象等が惹起され易くなり、吹付け作業時のフォーム端部において剥離を生じる等という問題が惹起されるようになるからである。そこにおいて、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールとしては、主な反応開始剤として、エチレンジアミンを使用し、これに、アルキレンオキシドを付加してなるポリオールであって、その水酸基価が400〜1000mgKOH/gとなるように調整されたものが、好適に用いられることとなる。そこで、エチレンジアミンとしては、二塩化エチレンとアンモニアとの反応により生成する通常のものを使用することが出来、またアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等を、単独で又は2種以上組み合わせて用いることが出来るが、原料の価格や硬質フォームの物性上からして、プロピレンオキシドが有利に用いられることとなる。なお、かかるエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールの水酸基価が400mgKOH/g未満となると、フォーム強度の発現が不充分となり、吹付け施工時において横走現象が生じて、形成される硬質フォームが施工面から剥離する恐れがある。また、1000mgKOH/gを越えるようになると、フライアビリティが大きくなると共に、スコーチが発生する等の問題を生じ易くなる。
【0019】
特に、本発明にあっては、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールとして、水酸基価が400mgKOH/g以上、600mgKOH/g未満のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールと、水酸基価が600mgKOH/g以上、1000mgKOH/g以下のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールとを、併用して用いることが推奨され、これによって、硬化速度を向上させながら、未反応の水酸基の残存を効果的に抑制することが可能であり、寸法安定性が向上する利点を享受することが出来る。なお、そのような水酸基価:400mgKOH/g以上、600mgKOH/g未満のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールと、水酸基価:600mgKOH/g以上、1000mgKOH/g以下のエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールとは、質量比で10:90〜30:70、好ましくは15:85〜25:75となる割合において、配合せしめられることが望ましい。
【0020】
また、本発明では、ポリオール組成物中のポリオールの必須の構成成分の1つであるポリエーテルポリオールは、上述の如きエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールにて構成される場合の他、そのようなエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールの70質量%以上と、このエチレンジアミン系ポリエーテルポリオール以外の、他のポリエーテルポリオールとを併用して、構成することも可能である。そして、そこにおいて用いられる、他のポリエーテルポリオールとしては、マンニッヒ系ポリエーテルポリオール、グリセリン系ポリエーテルポリオール、芳香族ポリエーテルポリオール、シュクロース系ポリエーテルポリオール、ソルビトール系ポリエーテルポリオール、トルエンジアミン系ポリエーテルポリオール、トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール等を挙げることが出来る。
【0021】
中でも、本発明にあっては、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールと共に用いられる他のポリエーテルポリオール成分として、マンニッヒ系ポリエーテルポリオールの併用が推奨されるところである。マンニッヒ系ポリエーテルポリオールは、反応活性に優れているところから、その使用によって樹脂化反応の促進に有効に寄与することとなるため、吹付けを行った際に、硬化反応(樹脂化)及び泡化反応で生じた反応熱が、低温環境下にさらされた被着体へ移行して、被着体に奪われるようなことが有利に防止され、その結果、生じた反応熱は、更なる硬化反応及び泡化反応に効果的に利用され得て、初期の発泡性を効果的に改善せしめることが可能となるのである。
【0022】
なお、上記したマンニッヒ系ポリエーテルポリオールは、マンニッヒ反応を利用して得られるものであって、分子中に2個以上の水酸基を有するマンニッヒ縮合物、またはそのようなマンニッヒ縮合物に、アルキレンオキサイドを付加させたマンニッヒ系ポリエーテルポリオール又はそれらの混合物である。また、それらの中でも、フェノール類、アルデヒド類及び第2級アミンを反応させたマンニッヒ縮合物、またはそのようなマンニッヒ縮合物にアルキレンオキサイドを付加させたマンニッヒ系ポリエーテルポリオール等の、フェノール類をベースとしたマンニッヒ系ポリエーテルポリオールが、好ましく用いられることとなる。
【0023】
ところで、本発明において用いられるポリオール組成物中のポリオールを構成する、上述の如きポリエステルポリオール(A)と、ポリエーテルポリオール(B)とは、質量比においてA:B=70:30〜40:60、好ましくは65:35〜45:55で割合において用いられることとなるが、そこにおいて、ポリエステルポリオール(A)の割合が70質量%よりも多くなった[ポリエーテルポリオール(B)の割合が30質量%よりも少なくなった]場合には、硬化速度が低下し、吹付け施工時に、液だれや横走現象等が惹起され、吹付け作業時のフォーム端部において剥離を生じる等という問題が惹起される恐れがある。また、ポリエーテルポリオール(B)の割合が60質量%よりも多くなった[ポリエステルポリオール(A)の割合が40質量%よりも少なくなった]場合には、硬化速度が上昇し過ぎ、吹付け施工時にスプレーガンの先端でフォームが硬化して、円形のスプレーパターンにおいて噴霧が出来なくなるというガン詰り現象を惹起し、吹付け施工の継続が困難となる問題を惹起する恐れがある。
【0024】
そして、本発明にあっては、前記したポリエステルポリオール(A)と、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールの70質量%以上からなるポリエーテルポリオール(B)とを、所定割合で用いて、ポリオール組成物が調製されることとなるが、そのようなポリオール組成物には、従来から、ポリウレタンフォームの製造に際して用いられる各種の添加剤、例えば、発泡剤(及び/又はその発生源)、触媒、難燃剤、整泡剤等が、適宜に配合されて含有せしめられるものであるところ、本発明にあっては、特に、発泡剤として、HFOやHCFOの如きハロゲン化ハイドロオレフィンの1種又は2種以上の有機の発泡剤が、少なくとも用いられることとなる。
【0025】
ここにおいて、上記のハロゲン化ハイドロオレフィンの1つであるハイドロフルオロオレフィン(HFO)としては、例えば、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO1225ye)等のペンタフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ye)等のテトラフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO1243zf)等のトリフルオロプロペン、テトラフルオロブテン(HFO1345)類、ペンタフルオロブテン異性体(HFO1354)類、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO1336mzz)等のヘキサフルオロブテン異性体(HFO1336)類、ヘプタフルオロブテン異性体(HFO1327)類、ヘプタフルオロペンテン異性体(HFO1447)類、オクタフルオロペンテン異性体(HFO1438)類、ノナフルオロペンテン異性体(HFO1429)類等を挙げることが出来る。また、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)としては、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、ジクロロトリフルオロプロペン(HCFO1223)等を挙げることが出来る。
【0026】
特に、かかるハイドロフルオロオレフィン(HFO)やハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)は、化学的に不安定であるために、地球温暖化係数が低く、そのために、環境に優しい発泡剤として、注目を受けているのであるが、また、触媒として用いられるアミン化合物によって分解される恐れも内在している。しかしながら、本発明にあっては、アミン系触媒の使用量が可及的に低減され得ることとなるところから、そのような発泡剤(中でも、HCFO−1233zd)の分解の恐れなく、その発泡機能を有利に発揮させることが出来る利点を有している。
【0027】
さらに、本発明にあっては、発泡剤としての水が、上記したハロゲン化ハイドロオレフィンと共に、有利に用いられることとなる。このように、水がポリオール組成物中に存在することによって、ポリオール組成物とポリイソシアネートとが混合せしめられて、反応させられるときに、かかる水とポリイソシアネートとが反応して、二酸化炭素を生じる際に、反応熱が発生することとなるため、その熱によって、ウレタン化反応やイソシアヌレート化反応が、効果的に進行せしめられ得て、得られるポリウレタンフォームの圧縮強度が、更に高められ得るようになるのである。そして、そのようなポリオール組成物中の水の存在によって、ポリオール組成物とポリイソシアネートとが混合せしめられて、反応させられると、かかる水とポリイソシアネートとの反応によって二酸化炭素が発生し、この二酸化炭素も、ポリウレタンの発泡に寄与することとなるのである。しかも、かかるハロゲン化ハイドロオレフィンと水との併用によって、ハロゲン化ハイドロオレフィンが揮発する際に、吸熱反応が生じることとなるが、水とポリイソシアネートとが反応して二酸化炭素を生じる際に反応熱が発生することにより、そのような反応熱で、ハロゲン化ハイドロオレフィンが揮発し易くなる利点があり、それによって、ハロゲン化ハイドロオレフィンの使用量を少なくして、そのコストを低減せしめ得る利点も生じることとなる。
【0028】
なお、上記したハロゲン化ハイドロオレフィンの使用量は、ポリオール組成物中のポリオール全体の100質量部に対して15〜50質量部が好ましく、更には25〜40質量部であることが好ましい。かかるハロゲン化ハイドロオレフィンの使用量が50質量部を超えるようになると、フォームのコア密度が低くなり、それによってフォームの強度の低下、ひいては寸法安定性の悪化が惹起される恐れがある。また、コストの面でも不利となる問題もある。一方、ハロゲン化ハイドロオレフィンの使用量が15質量部よりも少なくなると、発泡剤としての特性を充分に発揮することが出来ず、得られたフォームの密度が高くなってしまうことがあり、またポリオール組成物の粘度が高くなってしまい、イソシアネートとの混合性が悪化して、良好なスプレーパターンを得ることが出来なくなる問題を惹起するようになる。
【0029】
また、発泡剤としての水の使用量に関して、ポリオール組成物中のポリオール全体の100質量部に対して、0.5〜8質量部、好ましくは1〜5質量部の割合となるように、水が含有せしめられる。この水の使用量が、ポリオールの全体の100質量部に対して、8質量部よりも多くなると、かえって強度の低下を招くようになる。それは、水とポリイソシアネートとの反応によって生じる尿素結合が樹脂中に多くなること、またイソシアヌレート化反応に用いられるポリイソシアネートが水との反応で消費されてしまい、反応系のポリイソシアネートが少なくなるためである。また、かかる水の使用量が0.5質量部よりも少なくなると、水を含有したことによる発泡剤としての効果が、充分に得られなくなる問題がある。
【0030】
そして、上述の如く、ハロゲン化ハイドロオレフィンと水とを併用する場合において、ハロゲン化ハイドロオレフィンと水とは、質量比で80:20〜99:1、好ましくは85:15〜95:5となる割合において、使用することが望ましい。この範囲を外れて、水の割合が20を超えるようになると、反応の進行につれて脆性が発現し、躯体面との接着性が低下し、剥離等の問題を惹起する恐れがある。また、イソシアネートとの反応によって発生する二酸化炭素が熱伝導率を低下させ、充分でない熱伝導率の発泡層を形成する恐れがある。
【0031】
ところで、本発明にあっては、ポリオール組成物とポリイソシアネートとが混合され、触媒の存在下において反応せしめられて、発泡剤により発泡させて、硬化せしめられることにより、硬質のポリウレタンフォームが形成されることとなるのであるが、そこで用いられる触媒としては、その一つとして、ポリオールとポリイソシアネートとの反応を促進させるために、樹脂化触媒が有利に用いられることとなる。この樹脂化触媒は、フォームの種類に応じて適宜に選択されて、用いられるものであり、例えば、ウレタン化触媒やイソシアヌレート化触媒が、単独で用いられたり、或いはこれらが併用されたりされる。ここで、ウレタン化触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸ビスマス(2−エチルヘキシル酸ビスマス)、ネオデカン酸ビスマス、ネオドデカン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等の脂肪酸ビスマス塩、ナフテン酸鉛等を挙げることが出来る。一方、イソシアヌレート化触媒としては、第四アンモニウム塩、オクチル酸カリウム、酢酸ナトリウム等の脂肪酸アルカリ金属塩、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン等を挙げることが出来る。これらのうち、第四アンモニウム塩を用いることが、特に好ましい。
【0032】
ここで有利に用いられる第四アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、プロピルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、ヘプチルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、ノニルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ウンデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、トリデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム等の脂肪族アンモニウム化合物、(2−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、トリメチルアミノエトキシエタノール等のヒドロキシアンモニウム化合物、1−メチル−1−アザニア−4−アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、1,1−ジメチル−4−メチルピペリジニウム、1−メチルモルホリニウム、1−メチルピペリジニウム等の脂環式アンモニウム化合物等が、挙げられる。これらの中でも、触媒活性に優れ、工業的に入手可能なところから、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、(2−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、1−メチル−1−アザニア−4−アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、及び1,1−ジメチル−4−メチルピペリジニウムが、好ましく用いられることとなる。
【0033】
また、かくの如き第四アンモニウム塩を構成する有機酸基又は無機酸基としては、例えば、ギ酸基、酢酸基、オクチル酸基、蓚酸基、マロン酸基、コハク酸基、グルタル酸基、アジピン酸基、安息香酸基、トルイル酸基、エチル安息香酸基、メチル炭酸基、フェノール基、アルキルベンゼンスルホン酸基、トルエンスルホン酸基、ベンゼンスルホン酸基、リン酸エステル基等の有機酸基や、ハロゲン基、水酸基、炭酸水素基、炭酸基等の無機酸基が挙げられる。これらの中でも、触媒活性に優れ且つ工業的に入手可能なことから、ギ酸基、酢酸基、オクチル酸基、メチル炭酸基、ハロゲン基、水酸基、炭酸水素基、炭酸基が好ましい。
【0034】
さらに、このような第四アンモニウム塩からなる触媒としては、各種のものが市販されており、例えば、U−CAT 18X、U−CAT 2313(サンアプロ社製)、カオーライザーNo.410、カオーライザーNo.420(花王株式会社製)等を挙げることが出来る。
【0035】
そして、かかる触媒の一つとして用いられる樹脂化触媒の使用量としては、その触媒としての機能を有効に発揮させつつ、ポリオール組成物中のポリオール全体の100質量部に対して、0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜3質量部の範囲内において、選択されることとなる。なお、この樹脂化触媒の使用量が0.1質量部よりも少なくなると、得られるフォームがべたつき、ゴミ等が付着して、外観が悪くなる問題があり、またスプレー発泡操作においては、床等に付着した飛沫がべたつくことになるために、施工性が悪くなる等の問題があり、一方5質量部よりも多くなると、樹脂化反応時に発熱が高くなり、フォームの黄変等、外観に異常をきたし、発泡中に発生する飛沫に含まれる第4級アンモニウム塩触媒により、吹付け施工を行っている作業現場の作業環境を悪化せしめる恐れがある。
【0036】
また、上述の如き樹脂化触媒に加えて、更に必要に応じて、従来からポリウレタンフォームの製造に際して用いられている公知の触媒が、適宜に選択されて、ポリオール組成物に含有せしめられることとなる。例えば、アミン系触媒は、ポリウレタンの初期発泡性を有利に向上せしめ得るものであり、またスキン層とコア層との密度差を変えることなく、フォームの密度を全体的に下げる作用があり、更にフォームのべたつきを改善して、ゴミ等の付着による外観の悪化を有利に阻止し得ると共に、スプレー発泡法においては、床等に付着した飛沫のべたつきによる作業性の悪化等を改善する特徴を発揮するものである。そして、そのようなアミン系触媒としては、化学構造内にOH基やNH基を有する反応性アミン化合物や、環状構造を有する環式アミン化合物を用いることが推奨され、中でも、反応性アミン化合物を触媒として用いることによって、より一層臭気の低減を図ることが出来る。
【0037】
なお、そのようなアミン系触媒として用いられる反応性アミン化合物や環式アミン化合物は、公知のウレタン化触媒の中から適宜に選択され得るところであって、例えば、反応性アミン化合物としては、2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、テトラメチルグアニジン、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、エトキシ化ヒドロキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノ−2−プロパノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、1,4−ビス(2−ヒドロキシプロピル)、2−メチルピペラジン、1−(2−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、3,3−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン、N−メチル−N’−ヒドロキシエチルピペラジン等を挙げることが出来る。また、環式アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン、メチレンビス(ジメチルシクロヘキシル)アミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、モルフォリン、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン、N−(2−ジメチルアミノエチル)モルフォリン、4,4’−オキシジエチレンジモルフォリン、N,N’−ジエチルピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−ジメチルアミノエチルピペラジン、1,8−ジアゾビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7等を挙げることが出来る。
【0038】
そして、かかる触媒の一つとして用いられるアミン系触媒の使用量としては、その触媒としての機能を有効に発揮させつつ、臭気や作業環境の悪化等の問題を低減して、有効なフォーム特性を得るべく、ポリオール組成物中のポリオール全体の100質量部に対して、0.1〜7質量部、好ましくは0.2〜3質量部、より好ましくは0.3〜1質量部の範囲内において、選択されることとなる。なお、このアミン系触媒の使用量が0.1質量部よりも少なくなると、触媒としての機能を充分に発揮せしめ難くなると共に、得られるフォームがべたつき、ゴミ等が付着して、外観が悪くなる等の問題があり、またスプレー発泡操作においては、床等に付着した飛沫がべたつくことになるために、施工性が悪くなる等の問題を惹起する。また、かかるアミン系触媒の使用量が7質量部よりも多くなると、得られるポリウレタンフォームの臭気が顕著となり、また発泡中に揮発するアミン系触媒により、吹付け作業環境が悪化する問題を惹起するようになる。このため、臭気の点から、かかるアミン系触媒は、その添加量が少ないことが好ましいのである。
【0039】
一方、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物を、上記したポリオール組成物と共に、構成するポリイソシアネートは、かかるポリオール組成物に対して配合せしめられて、ポリオール組成物中のポリオールと反応して、ポリウレタン(樹脂)を生成するものであって、分子中に2つ以上のイソシアネート基(NCO基)を有する有機イソシアネート化合物であり、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリトリレントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートの他、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等を挙げることが出来る。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。一般的には、反応性や経済性、取り扱い性等の観点から、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI)が、好適に用いられることとなる。
【0040】
なお、かかるポリイソシアネートと前記したポリオール組成物との配合割合は、形成されるフォームの種類(例えば、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート)によって、適宜に決定されることとなるが、一般に、ポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)とポリオール組成物中のポリオールの水酸基(OH)との比率を示すNCO/OHインデックス(当量比)が、0.9〜2.5程度の範囲となるように、適宜に決定されることとなる。
【0041】
ところで、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物を構成するポリオール組成物やポリイソシアネートには、上記した配合成分乃至は含有成分に加えて、更に必要に応じて、公知の難燃剤や整泡剤等の従来から知られている各種の助剤を適宜に選択して、配合せしめることも可能である。
【0042】
ここで用いられる整泡剤は、ポリウレタンフォームのセル構造を均一に整えるために用いられるものであって、ここでは、シリコーン系のものや非イオン系界面活性剤が、好適に採用される。具体例として、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ラウリル脂肪酸エチレンオキシド付加物等を挙げることが出来、これらのうちの、1種が単独で、或いは2種以上が組み合わされて、用いられる。なお、この整泡剤の配合量は、所期のフォーム特性や、使用する整泡剤の種類等に応じて適宜に決定されるところであるが、ポリオール組成物中のポリオール全体の100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは1〜8質量部の範囲で選択されることとなる。
【0043】
また、難燃剤としては、環境への負荷が少なく、発泡性組成物の減粘剤としても機能する、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリエチルフォスフェート等のリン酸エステルが、有利に用いられる。このリン酸エステルを配合する場合、その配合量は、所期のフォーム特性や難燃剤の種類等に応じて適宜に決定され得るところであるが、ポリオール組成物中のポリオール全体の100質量部に対して、一般に5〜60質量部、好ましくは10〜40質量部の範囲で選択される。また、上記リン酸エステル以外にも、難燃剤として、水酸化アルミニウム等が好適に使用され得る。なお、前記した難燃剤としては、環境への負荷が少なく、発泡性組成物の減粘剤としても機能する、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリエチルフォスフェート等のリン酸エステルが、有利に用いられる。このリン酸エステルを配合する場合、その配合量は、所期のフォーム特性や難燃剤の種類等に応じて適宜決定され得るが、ポリオール組成物中のポリオール全体の100質量部に対して、一般に5〜60質量部、好ましくは10〜40質量部の範囲で選択される。
【0044】
さらに、本発明に従うポリウレタンフォーム用発泡性組成物には、更に必要に応じて、例えば、尿素、メラミン等のホルムアルデヒド捕捉剤や、気泡微細化剤、可塑剤、補強基材等の、従来から知られている各種添加剤を、適宜に選択して配合することも出来る。
【0045】
そして、上述の如くして得られたポリオール組成物とポリイソシアネートとを用いて、触媒の存在下で反応させて、発泡・硬化せしめるに際しては、公知の各種のポリウレタンフォームの製造手法が採用され得るところであって、例えば、それらポリオール組成物とポリイソシアネートとの混合物を面材上に塗布して、板状に発泡・硬化を行うラミネート連続発泡法、電気冷蔵庫等の断熱性の要求される空間部内や軽量・高強度ボードのハニカム構造内に注入、充填して、発泡・硬化を行う注入発泡法、または現場発泡機のスプレーガンヘッドから所定の被着体(構造体)へ吹き付けて発泡・硬化させるスプレー発泡法によって、本発明に従う発泡性組成物は発泡・硬化せしめられ、目的とするポリウレタンフォームが形成されることとなるのであるが、特に、本発明にあっては、環境温度(周囲温度)下において、現場発泡せしめられるスプレー発泡法が、好適に採用される。このような現場吹付け発泡法への適用によって、本発明の特徴が更に有利に発揮され、また寸法安定性等の特性に優れたポリウレタンフォームが、有利に得られることとなるのである。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、比較例と対比することにより、本発明の特徴を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。なお、以下に示す百分率(%)及び部は、特に断りのない限り、何れも、質量基準にて示されるものである。
【0047】
また、以下の実施例や比較例において得られたポリウレタンフォームの密度や発泡特性(硬化速度)、施工性及び寸法変化率については、それぞれ、以下の如くして評価乃至は測定した。
【0048】
(1)密度の測定
それぞれの実施例や比較例で得られた硬質ポリウレタンフォームについて、それぞれの密度を、JIS−K−7222に準拠して、測定した。即ち、発泡後、72時間以上経過した発泡体であり、且つ測定前に23℃±2℃で16時間以上静置したポリウレタンフォームから、5cm角の立方体形状である試験片を、5個以上切り出した。次いで、各試験片について、ノギスを使用して、縦、横、高さの各寸法を3回以上測定して、その平均値を求め、各試験片の体積を算出した。その後、各試験片の質量を測定し、試験片の密度(ρ)を、以下の式から算出した。そして、かかる密度は高過ぎると、ポリウレタンフォームが硬くなって、安定性が悪くなるところから、30kg/cm3 以下を合格とした。
ρ(kg/m3 )=[m(g)/V(mm3 )]×106
ここで、ρ:密度、m:試験片の質量、V:試験片の体積である。
【0049】
(2)発泡特性(硬化速度)の測定
ポリオール組成物と、ポリイソシアネートとしてのクルードMDI(ミリオネートMR−100:東ソー株式会社製)とを、それらポリオール組成物とポリイソシアネートとの体積比が、ポリオール組成物/ポリイソシアネート=100/100となるように、紙コップ(容量:500ml)内に秤量した後、ホモディスパー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、1秒間、高速撹拌混合することにより、硬質ポリウレタンフォーム用発泡性混合液を調製した。その後、かかる紙コップ内で調製された発泡性混合液を、そのまま、常温で発泡硬化せしめることにより、硬質ポリウレタンフォームを得た。
【0050】
そして、かかる発泡硬化の際に、発泡性混合液の反応性を判断するために、クリームタイム(CT)及びライズタイム(RT)を測定した。なお、ここで、CTとは、ポリオール組成物とポリイソシアネートとの混合開始から、発泡が始まるまでの時間であり、RTとは、前記成分の混合開始から発泡が終了するまでの時間を示している。なお、かかるCTは、早過ぎても遅過ぎてもよくなく、2〜5秒が合格とされ、またRTは早い方がよいとされている。
【0051】
(3)施工性の評価
それぞれの実施例や比較例におけるポリオール組成物とクルードMDIとを、現場スプレー発泡機(商品名:A−25、グラコ社製)を用いて、撹拌混合して、発泡性混合液を形成すると共に、かかる発泡性混合液を、雰囲気温度:15℃の条件下において、躯体である所定大きさのコンクリート板表面に吹き付けて、硬質ポリウレタンフォームからなる発泡層を形成せしめた。そして、かかる発泡層の形成に際しての「施工性」について、「初期の発泡性」及び「スプレーパターンの形状」から、以下の評価基準に従って、判断した。
×:液だれが発生し、スプレーパターンが円形でないため、表面が平滑でない
△:液だれが僅かに発生し、パターン形状が若干変化して、表面が一部平滑でない
○:液だれが発生せず、パターン形状が変化せず、表面が平滑である
【0052】
(4)寸法変化率の測定
寸法変化率の測定を、ASTM−D−2126に準じて、以下の方法に従って行った。先ず、試験片として、それぞれの実施例や比較例で形成された発泡層から、中間スキン層を一層含むように、長さ:100±1mm、幅:100±1mm、厚み:25±0.5mmの寸法で、切り出した。次いで、その切り出された試験片を、23℃、50RH%の条件下に、20時間静置した後、70℃、95RH%の条件下に曝露し、そして48時間後に試験片を取り出した。その後、かかる試験片の寸法を、厚み:5点、幅・長さ:3点において測定し、それぞれ平均値を求めて、それぞれの変化率を、以下の式に従って算出した。
長さの変化率=100×(lt −l0 )/l0
幅の変化率 =100×(bt −b0 )/b0
厚みの変化率=100×(δt −δ0 )/δ0
[l0 、b0 及びδ0 :最初の寸法の平均値、lt 、bt 及びδt :48時間経過後の 最終寸法の平均値]
【0053】
そして、上記式で計算された3つの変化率が、一点でも、10%以上の場合には、良好な寸法安定性を保持出来ていないため「×」とし、一点でも5%以上10%未満があるものを「△」とし、全て5%未満であるものを、「○」として、評価した。
【0054】
−ポリオール組成物の調製−
ポリオールとして、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールである750ED(旭硝子株式会社製)、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオールである500ED(旭硝子株式会社製)、フタル酸系ポリエステルポリオールであるRDK133(川崎化成工業株式会社製)、フタル酸系ポリエステルポリオールであるRFK505(川崎化成工業株式会社製)及びマンニッヒ系ポリエーテルポリオールであるDKポリオール3776(第一工業製薬株式会社製)をそれぞれ準備し、また触媒として、第四アンモニウム塩であるU−CAT 18X(サンアプロ株式会社製)及び3級アミンのN−メチルジシクロヘキシルアミンであるポリキャット12(エボニック・ジャパン株式会社製)を、それぞれ準備した。また、難燃剤として、トリス(1−クロロ−2−プロピル)ホスフェート(TCPP:ワンシャン社製)を準備し、整泡剤として、シリコーン系整泡剤であるテゴスターブB8450(エボニック・ジャパン株式会社製)を準備した。更に、発泡剤として、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd:Honeywell社製)、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO−1336mzz:Chemours社製)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC245fa:セントラル硝子株式会社製)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC365mfc:SOLVAY社製)、及び水を、それぞれ準備した。
【0055】
そして、それら各種のポリオール、触媒、難燃剤、整泡剤及び発泡剤を、下記表1及び表2に示される各種の組合せ及び配合割合において、均一に混合せしめて、実施例1〜8及び比較例1〜6に係る各種のポリオール組成物を調製した。
【0056】
−ポリイソシアネートの調製−
ポリイソシアネートとして、クルードMDI(ミリオネートMR−100:東ソー株式会社製)を準備した。
【0057】
−ポリウレタンフォームの製造−
上記で得られた各種のポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを、体積比1:1で用い、現場スプレー発泡機(商品名:A−25、グラコ社製)により撹拌混合せしめて、発泡原液とし、これを、雰囲気温度:15℃の条件下において、被着体である無機フレキシブルボードの表面に、複数回吹き付けて、発泡・硬化させることにより、実施例1〜8及び比較例1〜6に係る各種の硬質ポリウレタンフォームを、それぞれ、作製した。
【0058】
そして、かくして得られた各種のポリウレタンフォームを用いて、その密度、施工性及び寸法安定性の測定を、それぞれ実施し、また、かかるポリウレタンフォームの形成に際しての反応時間(CT,RT)を、それぞれ測定して、それら得られた結果を、それぞれ、下記表1、表2に示した。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
かかる表1の結果から明らかなように、本発明に従う実施例1〜8において採用されたポリオール組成物とポリイソシアネートとの組合せからなる発泡剤組成物にあっては、その反応に際して、適切なクリームタイム(CT)を有しており、目的とする反応特性が有利に実現され得ていると共に、液だれを惹起することなく、平滑な表面を有するパターン形状が変化することのない発泡層を形成するものであり、また寸法変化率から求められる寸法安定性においても、何れも、寸法変化率が5%以下となるものであって、優れた寸法安定性を有するポリウレタンフォームを得ることが出来ることが認められる。
【0062】
これに対して、表2の結果に示される如く、ポリオール成分の1つとして、ポリエステルポリオールを使用しない比較例1やその使用量が少ない比較例2においては、反応時間(CT)が短過ぎて、施工性や寸法安定性に問題があり、またポリオール成分の1つとしてのエチレンジアミン系ポリエーテルポリオールの使用量が少ない比較例3やそれを使用しない比較例4においては、反応時間が長くなり過ぎ、寸法安定性、或いは施工性において問題があり、更に発泡剤として、ハロゲン化ハイドロオレフィンを用いない比較例5においては、施工性や寸法安定性に欠け、加えて、発泡剤として水のみを用いた比較例6の場合にあっては、得られたフォームの密度が高くなり過ぎ、且つ施工性及び寸法安定性にも、著しく欠けるものとなることが確認された。