(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の衣服を実施するための形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
【0012】
(実施例1)
まず、実施例1における衣服の構成を
図1から
図4に基づいて説明する。
実施例1の衣服10は、
図1及び
図2に示すように、着用者が上半身に着る上着(ジャンパー)であり、綿や化繊等で織られた布や、不織布等からなる生地によって形成されている。なお、衣服10を形成する生地は、伸縮性や通気性、難燃性等の任意の性質を有していてもよい。この衣服10は、着用者の胴体の前側(胸部及び腹部)を覆う前面部20と、着用者の背中を覆う背面部30と、着用者の腕を覆う一対の袖11,11と、襟12と、を有している。
【0013】
前面部20は、
図1に示すように、身幅方向の中央部から左右に分かれる右前身頃部21及び左前身頃部22と、右前身頃部21と左前身頃部22の間を開閉自在に係止する第1スライドファスナー23と、を備えている。なお、第1スライドファスナー23は、左前身頃部22に設けられたフラップ22aによって覆われている。また、右前身頃部21及び左前身頃部22には、それぞれ胸ポケット24とメインポケット25とが設けられている。さらに、この右前身頃部21及び左前身頃部22には、それぞれフック掛け部26とベルト通し穴27とが形成されている。
【0014】
胸ポケット24は、着用者の胸部に対向する位置に設けられたポケットであり、右前身頃部21及び左前身頃部22の表面にポケット布を縫い付けることで形成されている。また、この胸ポケット24の上側には、開口24aを覆うフラップ24bが設けられている。
【0015】
メインポケット25は、着用者の腹部に対向する位置に設けられたポケットである。このメインポケット25は、右前身頃部21及び左前身頃部22に切込みを形成すると共に、袋状のポケット袋(不図示)の開口縁部を切込みの内側に縫い付けることで形成されている。
【0016】
フック掛け部26は、衣服10の着用者が装着した安全帯(不図示)のランヤードLの先端に取り付けられたフックFが着脱可能に引っ掛けられるものである(
図3(a)参照)。なお、
図3では、左前身頃部22に設けたフック掛け部26のみ示すが、右前身頃部21にも同様のフック掛け部26が設けられている。フック掛け部26は、フックFが掛けられるD環26aと、このD環26aを右前身頃部21に取り付けるベルト部26bと、を有している。ここで、ベルト部26bは、D環26aに挿通された状態で中間部が折り曲げられると共に、上端部26cが右前身頃部21に縫い付け固定されている。また、この実施例1では、ベルト部26bの上端部26cは、胸ポケット24の開口24aとフラップ24bとの間に固定されて垂れ下がり、折り曲げられた中間部及びD環26aが胸ポケット24から出し入れ可能になっている(
図3(b)参照)。なお、ベルト部26bは、胸ポケット24から出したとき、フラップ24bで覆われる領域からD環26aを露出させる長さに設定されている(
図1参照)。
【0017】
ベルト通し穴27は、衣服10の着用者が装着したフルハーネス型の安全帯(不図示)の胸ベルトBを挿通する部分である(
図3(a)参照)。なお、
図3では、左前身頃部22に設けたベルト通し穴27のみ示すが、右前身頃部21にも同様のベルト通し穴27が設けられている。また、「フルハーネス型の安全帯」とは、着用者の両肩にそれぞれ巻回する肩ベルト、腰に巻回する腰ベルト、両腿のそれぞれに巻回する腿ベルトを有し、これらのベルト部を連結することで、墜落阻止時に身体が受ける衝撃荷重を全身に分散することができるものである。このフルハーネス型の安全帯では、肩ベルトが着用者の肩から抜けることを防止するため、一対の肩ベルトのそれぞれに胸ベルトを設け、着用者の胸の前側で胸ベルトを連結することが一般的に行われている。
【0018】
図3(a)に示すベルト通し穴27は、胸ポケット24の身幅方向中央側の側縁に沿って、左前身頃部22に形成された切込みによって形成されている。このベルト通し穴27は、縦方向に延在され、胸ベルトB及び胸ベルトBの先端に設けられたバックル(不図示)を挿通可能な幅(開口長さ)に設定されている。また、このベルト通し穴27の内側には、図示しない見返し布が縫合されており、ベルト通し穴27の周縁が補強されている。
【0019】
第1スライドファスナー23は、一対の前側ファスナーストリンガー23a,23bと、この一対の前側ファスナーストリンガー23a,23bの対向縁に沿って移動するスライダー23cと、を有している。ここで、各前側ファスナーストリンガー23a,23bは、それぞれ右前身頃部21又は左前身頃部22の対向縁部に固定されたファスナーテープ23dと、ファスナーテープ23dの長さ方向に一定間隔で設けられた多数のエレメント23eと、有している。なお、エレメント23eは、ここでは、通常エレメント及び停止エレメントを包含する用語として用いる。
【0020】
そして、この第1スライドファスナー23では、スライダー23cを引き上げると、このスライダー23cに形成されたテープ挿通路(不図示)にファスナーテープ23dが挿通案内され、対向するエレメント23e同士が噛み合って、一対の前側ファスナーストリンガー23a,23bが連結する。また、スライダー23cを引き下げると、エレメント23eの噛み合い状態が解除され、一対の前側ファスナーストリンガー23a,23bが分離する。
【0021】
また、この第1スライドファスナー23は、スライダー23cが可撓性を有するクイックオープン式スライドファスナーである。すなわち、一対の前側ファスナーストリンガー23a,23bに横引き力を加えたとき、エレメント23eがスライダー23cのテープ挿通路を押し開いて拡幅させる。これにより、エレメント23eの噛み合いを解除させ、一方の前側ファスナーストリンガー23aがスライダー23cから分離されて、一対の前側ファスナーストリンガー23a,23bを分離することができる。
【0022】
背面部30は、
図2に示すように、着用者の肩及び首回りを覆うヨーク部31と、縫合部32を介してヨーク部31の下部31aに連結された後身頃部33と、を備えている。なお、ヨーク部31の上端縁には、襟12が縫い付け固定されている。
【0023】
ここで、縫合部32は、身幅方向に延びる縫い目であり、ヨーク部31と後身頃部33との間に見返し布36(
図4(a)及び
図4(b)参照)を挟み込んだ状態で、ヨーク部31の下部31aと後身頃部33の上部33aを縫い合わせている。なお、この実施例1では、後身頃部33の上部33aの上側に、ヨーク部31の下部31aを重ねている。また、縫合部32は、ここではヨーク部31の下端縁に沿った第1縫い目32aと、後身頃部33の上端縁に沿った第2縫い目32bと、を有している。
【0024】
さらに、この縫合部32は、身幅方向の中央部に、ヨーク部31に対して後身頃部33を縫合しない非縫合領域32cが設けられている。この非縫合領域32cにより、ヨーク部31と後身頃部33との間には隙間が生じている。また、ここで、後身頃部33の表側にヨーク部31を重ねているので、非縫合領域32cによって生じた隙間は、ヨーク部31によって覆われている。さらに、この非縫合領域32cの両側には、第1縫い目32aの端部と第2縫い目32bの端部との間をつなぎ、身丈方向に延びて、ヨーク部31を後身頃33に縫合する一対の第3縫い目32dが設けられている。
【0025】
そして、ヨーク部31は、非縫合領域32cに対応する(重なる)位置(ここでは、身幅方向の中央部)に、上端部から下端部まで通じる切れ目31bが形成されている。すなわち、ヨーク部31は、
図4(b)に示すように、この切れ目31bにより、身幅方向の中央部から左右に分かれる右ヨーク部31c及び左ヨーク部31dに分割可能になっている。なお、切れ目31bは、ヨーク部31の上端部に縫い付け固定された襟12にも連続して形成されている。そのため、右ヨーク部31c及び左ヨーク部31dと共に、襟12も左右に分割可能になっている。
【0026】
さらに、このヨーク部31は、切れ目31bを開閉自在に係止する第2スライドファスナー34(係止手段)と、スナップボタン35(係止手段)と、を有している。第2スライドファスナー34は、右ヨーク部31cと左ヨーク部31dの間を開閉自在に係止し、スライダー34cが可撓性を有するクイックオープン式スライドファスナーである。すなわち、この第2スライドファスナー34は、一対の後側ファスナーストリンガー34a,34bと、この一対の後側ファスナーストリンガー34a,34bの対向縁に沿って移動するスライダー34cと、を有している。ここで、各後側ファスナーストリンガー34a,34bは、それぞれ右ヨーク部31c及び左ヨーク部31dの対向縁部に固定されたファスナーテープ34dと、ファスナーテープ34dの長さ方向に一定間隔で設けられた多数のエレメント34eと、有している。なお、エレメント34eは、ここでは、通常エレメント及び停止エレメントを包含する用語として用いる。
【0027】
そして、この第2スライドファスナー34では、スライダー34cを引き上げると、このスライダー34cに形成されたテープ挿通路(不図示)にファスナーテープ34dが挿通案内され、対向するエレメント34e同士が噛み合って、一対の後側ファスナーストリンガー34a,34bが連結する。また、スライダー34cを引き下げると、エレメント34eの噛み合い状態が解除され、一対の後側ファスナーストリンガー34a,34bが分離する。
【0028】
さらに、この第2スライドファスナー34では、一対の後側ファスナーストリンガー34a,34bに横引き力を加えたとき、エレメント34eがスライダー34cのテープ挿通路を押し開いて拡幅させる。これにより、エレメント34eの噛み合いを解除させ、一方の後側ファスナーストリンガー34aがスライダー34cから分離されて、一対の後側ファスナーストリンガー34a,34bを分離する。これにより、連結状態にある一対の後側ファスナーストリンガー34a,34bを、速やかに分離させることができる。
【0029】
一方、スナップボタン35は、襟12に形成された切れ目31bを開閉自在に係止し、雄ボタン35aと雌ボタン35bとを押し合わせて係止し、縦引き力を加えることで解除できる。ここでは、襟12の上端部近傍位置に配置された上側ボタン35cと、襟12の下端部近傍位置に配置された下側ボタン35dと、を有している。
【0030】
また、上側ボタン35cには、リング状の補助脱衣具37が設けられている。この補助脱衣具37は、上側ボタン35cを係止した際、表面側に位置する雄ボタン35aの表面に固定され、少なくとも一部がヨーク部31の縁部(ここではヨーク部31の上端部に縫い付け固定された襟12の端部)から突出している。
【0031】
次に、実施例1の衣服10の作用を説明する。
実施例1の衣服10は、着用者が安全帯を装着した状態で、安全帯の上から着用する。すなわち、この衣服10を着用するときには、まず、着用者は、ランヤードLが連結した状態の安全帯を装着する。一方、衣服10は、第2スライドファスナー34のスライダー34cを引き下げると共に、スナップボタン35の上側ボタン35c及び下側ボタン35dをいずれも外し、
図4(b)に示すように、ヨーク部31と襟12を切れ目31bから左右に開いておく。なお、このとき、前面部20も第1スライドファスナー23によって開いておく。
【0032】
そして、着用者は、ヨーク部31及び襟12を左右に開いたまま、袖11,11に腕を通し、衣服10を着る。衣服10を着たら、まず、右ヨーク部31c及び左ヨーク部31dを合わせる。そして、スライダー34cを引き上げ、第2スライドファスナー34を閉じることで、ヨーク部31に形成された切れ目31bを閉鎖する。続いて、スナップボタン35の上側ボタン35c及び下側ボタン35dを係止して、襟12に形成された切れ目31bを閉鎖する。最後に、第1スライドファスナー23を閉じる。
【0033】
また、実施例1の衣服10を脱ぐときには、着用者は、まず、スナップボタン35の上側ボタン35c及び下側ボタン35dを外す。続いて、第2スライドファスナー34のスライダー34cを引き下げて、第2スライドファスナー34を開き、ヨーク部31と襟12を切れ目31bから左右に開く。さらに、第1スライドファスナー23のスライダー23cを引き下げて前面部20も開く。そして、ヨーク部31及び襟12を左右に開いたまま、袖11,11から腕を引き抜いて衣服10を脱ぐ。
【0034】
このように、ヨーク部31及び襟12を左右に開いていることで、着用者は、ランヤードLが連結された安全帯を装着した状態であっても、ランヤードLやこのランヤードLをベルト部に連結する連結具が背面部30に引っ掛かることなく衣服10の着脱を行うことができる。これにより、衣服10の着脱時に、ランヤードLの付け外しや、背面部30に形成された開口部にランヤードLを挿通したり、開口部から引き抜いたりする作業が不要になり、ランヤードLが連結状態の安全帯を装着したままであっても衣服10を容易に着脱することができる。
【0035】
また、この実施例1では、右ヨーク部31cと左ヨーク部31dの間を開閉自在に係止する第2スライドファスナー34が、一対の後側ファスナーストリンガー34a,34bに横引き力を加えたとき、エレメント34eがスライダー34cのテープ挿通路を押し開いて拡幅させ、一方の後側ファスナーストリンガー34aがスライダー34cから分離させるクイックオープン式スライドファスナーによって構成されている。また、襟12には、開閉可能に係止する係止手段として、縦引き力を加えることで係合が解除されるスナップボタン35が設けられている。
【0036】
そのため、着用者は、ヨーク部31や襟12の一部を掴んで引っ張ることで、第2スライドファスナー34やスナップボタン35を容易に外すことができ、背面部30に形成された切れ目31bを速やかに開くことができる。つまり、着用者は、スライダー34cを引き下げることなく、衣服10をさらに容易に脱ぐことができる。
【0037】
しかも、この実施例1では、前面部20の右前身頃部21と左前身頃部22の間を開閉自在に係止する第1スライドファスナー23も、一対の前側ファスナーストリンガー23a,23bに横引き力を加えることで、一方の前側ファスナーストリンガー23aがスライダー23cから分離させるクイックオープン式スライドファスナーによって構成されている。
そのため、例えば、衣服10に着火したとき等の非常時であっても、ランヤードLやランヤードLをベルト部に連結する連結具が衣服10に引っかかることなく、速やかに衣服10を脱ぐことができる。
【0038】
また、この実施例1では、ヨーク部31が、切れ目31bの近傍の上部位置に、少なくとも一部がヨーク部31の縁部から突出する補助脱衣具37が設けられている。これにより、着用者は補助脱衣具37を掴んで引っ張ることで、第2スライドファスナー34やスナップボタン35に対して適切な力を作用させることができ、これらを容易に外すことができる。
【0039】
また、着用者が衣服10を着たときには、切れ目31bを閉鎖することで、左右に分離した右ヨーク部31c及び左ヨーク部31dと襟12をいずれも一体化し、
図2に示すように一般的な衣服のような外観にすることができる。これにより、着用者は、安全帯を装着していないときであっても、衣服10を違和感なく着用することができる。なお、この実施例1では、第2スライドファスナー34が、右ヨーク部31cに設けたフラップ31eで覆われているので、切れ目31bをさらに目立ちにくくして、衣服10を着たときの外観の違和感を軽減することができる。
【0040】
さらに、着用者が安全帯を装着しているときには、非縫合領域32cによって生じたヨーク部31と後身頃部33との間の隙間から、ランヤードLを背面部30の外部に引き出しておくことができる。ここで、一般的にランヤードLの一端に取り付けられたフックFや、他端に取り付けられてベルト部と連結するための連結具(不図示)は、紐状のランヤードLよりも幅が広くなっている。そのため、フックFや連結具を挿通可能とする開口幅は、ランヤードLの幅寸法よりも大幅に広くする必要がある。つまり、従来の衣服のように、着脱時に背面部30に形成した開口に対してランヤードLを端部から挿通する必要がある場合には、開口幅をフックFや連結具が挿通可能な長さに設定しなければならない。しかしながら、実施例1の衣服では、非縫合領域32cによって生じるヨーク部31と後身頃部33との間の隙間にランヤードLを端部から挿通することがないため、非縫合領域32cの身幅方向の幅を、ランヤードLの幅寸法に対して大幅に広くする必要が低い。これにより、この非縫合領域32cによるヨーク部31と後身頃部33との間の隙間を、フックFや連結具が挿通可能な長さに設定した場合よりも小さくすることが可能になる。そのため、隙間からの空気漏れを抑制することができ、防寒や空調の性能向上を図ることができる。
すなわち、衣服10は、ヨーク部31が切れ目31bによって左右に分割され、この切れ目31bが係止手段(第2スライドファスナー34、スナップボタン35)により開閉自在に係止される。これにより、衣服10の着脱時に切れ目31bからヨーク部31を開いておくことで、ランヤードLやランヤードLをベルト部に連結するための連結具が背面部30に引っ掛かることがない。このため、衣服10を円滑に着脱することができる。一方、衣服10を着用した状態では、係止手段(第2スライドファスナー34、スナップボタン35)によって切れ目31bを閉鎖しておくことで左右に分割したヨーク部31を一体化することができ、一般的な衣服のような外観にすることができる。また、縫合部32に設けた非縫合領域32cにより、ヨーク部31と後身頃部33との間に隙間を生じさせることができるので、切れ目31bを閉鎖しても、この非縫合領域32cによって生じた隙間からランヤードLを外部に引き出しておくことができる。この結果、ランヤードLが連結状態の安全帯を装着したままであっても、衣服10を容易に着脱することができる。さらに、手で切れ目32bを分離したり、安全帯の緊張によって切れ目32bが分離することで衣服10を脱ぐことが可能であり、非常時にも素早く脱ぐことを可能とする。
【0041】
また、この実施例1では、非縫合領域32cの両側に、第1縫い目32aと第2縫い目32bとの間をつなぎ、身丈方向に延びて、ヨーク部31を後身頃33に縫合する一対の第3縫い目32dが設けられている。そのため、第1縫い目32a及び第2縫い目32bの端部が補強され、背面部30の外部に引き出したランヤードLが第1縫い目32a及び第2縫い目32bの端部に接触しても、この端部が破れたりほつれたりすることを防止できる。
【0042】
そして、この実施例1の衣服10では、フックFが着脱可能に引っ掛けられるフック掛け部26を、前面部20に形成した胸ポケット24から出し入れ可能に設けている。そのため、
図3(a)に示すように、フック掛け部26を胸ポケット24から出しているときには、フック掛け部26のD環26aにフックFを掛けることができ、このフックFやランヤードLが着用者の邪魔になることを防止できる。一方、フック掛け部26を使用しないときには、
図3(b)に示すように、このフック掛け部26を胸ポケット24に収納し、外部から見えなくすることができる。これにより、衣服10の外観を一般的な衣服のように見せることができ、安全帯を装着していないときであっても、違和感なく着用することができる。
【0043】
また、実施例1では、衣服10の右前身頃部21及び左前身頃部22に、それぞれベルト通し穴27が形成されている。
そのため、着用者がフルハーネス型の安全帯を装着したときには、この安全帯の胸ベルトBを、このベルト通し穴27を介して衣服10の外部に引き出すことができ、衣服10の外部で胸ベルトBを連結することができる。これにより、衣服10を着用したままであっても、胸ベルトBの連結状態を確認することができ、安全帯の装着状態のチェックを容易に行うことができる。
【0044】
特に、この実施例1では、ベルト通し穴27が、胸ポケット24の身幅方向中央側の側縁に沿って形成されている。そのため、胸ポケット24によってベルト通し穴27を覆うことができ、このベルト通し穴27を目立たなくすることができる。これにより、衣服10をさらに一般的な衣服のような外観にすることができる。
【0045】
次に、効果を説明する。
実施例1の衣服10にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0046】
(1) 着用者の背中を覆う背面部30が、前記着用者の肩及び首回りを覆うヨーク部31と、縫合部32を介して前記ヨーク部31の下部31aに連結された後身頃部33と、を備え、
前記縫合部32は、身幅方向に延在すると共に、前記ヨーク部31と前記後身頃部33とを縫合しない非縫合領域32cを有し、
前記ヨーク部31は、前記非縫合領域32cに対応する位置に上端部から下端部まで通じる切れ目31bが形成されると共に、前記切れ目31bを開閉自在に係止する係止手段(第2スライドファスナー34、スナップボタン35)を有する構成とした。
これにより、ランヤードが連結状態の安全帯を装着したままであっても、容易に着脱することができる。
【0047】
(2) 前記係止手段は、一対の後側ファスナーストリンガー34a,34bと、前記一対の後側ファスナーストリンガー34a,34bの対向縁に沿って移動するスライダー34cと、を有し、前記一対の後側ファスナーストリンガー34a,34bに横引き力を加えたとき、一方の後側ファスナーストリンガー34aが前記スライダー34cから分離されるクイックオープン式スライドファスナーとする構成とした。
これにより、(1)の効果に加え、スライダー34cを引き下げることなく、衣服10をさらに容易に脱ぐことができる。
【0048】
(3) 前記ヨーク部31は、前記切れ目31bの近傍の上部位置に、少なくとも一部が前記ヨーク部31の縁部から突出する補助脱衣具37が設けられている構成とした。
これにより、(1)又は(2)の効果に加え、着用者は補助脱衣具37を掴んで引っ張れば、係止手段である第2スライドファスナー34やスナップボタン35に対して適切な力を作用させて、これらを容易に外すことができ、さらに容易に脱ぐことができる。
【0049】
(4) 前記着用者の胸及び腹を覆う前面部20にポケット(胸ポケット24)を設け、 フックFが着脱可能に引っ掛けられるフック掛け部26が、前記ポケット(胸ポケット24)から出し入れ可能に設けられている構成とした。
これにより、フックFが邪魔になることを防止しつつ、安全帯を装着していないときにはフック掛け部26を収納し、一般的な衣服のような外観にすることができる。
【0050】
そして、着用者の胸部を覆う右前身頃部21、左前身頃部22に形成され、身幅方向に並ぶ一対のベルト通し穴27を備え、ベルト通し穴27は、着用者に装着された安全帯の胸ベルトB及び胸ベルトBに取り付けられたバックルを挿通可能な大きさを有する構成とした。これにより、衣服10を着用したままであっても、胸ベルトBの連結状態を確認することができ、安全帯の装着状態のチェックを容易に行うことができる。
また、ベルト通し穴27は、身丈方向に延在されている。これにより、胸ベルトBを、ベルト通し穴27を介して衣服10の外部に引き出すことができる。
また、右前身頃部21、左前身頃部22には、一対の胸ポケット24が設けられ、ベルト通し穴27は、胸ポケット24の側縁に沿って形成されている。これにより、ベルト通し穴27を目立たなくでき、衣服10をさらに一般的な衣服のような外観にすることができる。
また、ベルト通し穴27は、内側に見返し布が縫合されている。これにより、ベルト通し穴27の周縁を補強できる。
(実施例2)
図5は、実施例2の衣服の背面部を示す平面図であり、
図6は、実施例2の衣服の前面部を開いた状態を示す平面図である。以下、
図5及び
図6に基づいて、実施例2の衣服10Aの構成を説明する。
【0051】
実施例2の衣服10Aは、実施例1と同様に着用者が上半身に着る上着(ジャンパー)である。この衣服10Aの前面部20、一対の袖11,11、襟12は、実施例1と同一の構成としているため、詳細な説明を省略する。一方、背面部40は、着用者の肩及び首回りを覆うヨーク部41と、縫合部42を介してヨーク部41の下部41aに連結された後身頃部43と、を備えている。
【0052】
ここで、縫合部42は、ヨーク部41の下部41aと後身頃部43の上部43aとを、間に何も挟まない状態で直接縫い合わせている。また、この縫合部42は、ヨーク部41の下端縁の一部を後身頃部43に固定する固定縫い目42aと、後身頃部43の上端縁に沿った第2縫い目42bと、を有している。
【0053】
さらに、この縫合部42の第2縫い目42bは、身幅方向の中央部に、ヨーク部41に対して後身頃部43を縫合しない非縫合領域42cが設けられている。この非縫合領域42cにより、ヨーク部41と後身頃部43との間には隙間が生じている。また、固定縫い目42aは、非縫合領域42cを挟んで一つずつ設けられており、非縫合領域42cよりも身幅方向の外側に位置している。
【0054】
そして、ヨーク部41は、非縫合領域42cに対応する位置(ここでは、身幅方向の中央部)に、上端部から下端部まで通じる切れ目41bが形成され、この切れ目41bにより、身幅方向の中央部から左右に分かれる右ヨーク部41c及び左ヨーク部41dに分割可能になっている。なお、切れ目41bは、ヨーク部41の上端部に縫い付け固定された襟12にも連続して形成され、襟12も左右に分割可能になっている。
また、このヨーク部41は、切れ目41bを開閉自在に係止する第2スライドファスナー44(係止手段)と、スナップボタン45(係止手段)と、を有している。
【0055】
一方、後身頃部43の上端縁には、非縫合領域42cに対応する位置(ここでは、身幅方向の中央部)に、裾13側にへこんだ切欠部43bが形成され、非縫合領域42cによるヨーク部41と後身頃部43との間の隙間の開口面積が裾13側に拡大されている。ここでは、切欠部43bの両端が、第2縫い目42bの端部につながっている。
【0056】
また、この切欠部43bの切込寸法H1は、第2縫い目42bからヨーク部41の下端部までの寸法H2よりも短く設定されている。さらに、
図6に示すように、後身頃部43の内側(裏側)には、切欠部43bに沿って見返し布46が縫い付けられている。なお、この見返し布46と後身頃部43との間に、芯材を挟んでもよい。
【0057】
次に、実施例2の衣服10Aの作用について説明する。
この実施例2の衣服10Aでは、ヨーク部41の下端縁が、固定縫い目42aによって一部(ここでは二か所)だけが後身頃部43に固定されている。すなわち、実施例2の衣服10Aでは、実施例1の衣服1と異なり、非縫合領域42cの両側に身丈方向に延びる一対の第3縫い目が設けられていない。
【0058】
そのため、非縫合領域42cによってヨーク部41と後身頃部43との間に生じた隙間からランヤードを引き出した際、ランヤードの動きが第3縫い目で規制されることがなくなり、ランヤードの可動範囲を拡大することができる。これにより、衣服10Aを着用したときの衣服10Aへのランヤードの引っ掛かり感を低減することができ、動きやすくすることができる。
【0059】
また、この実施例2では、後身頃部43の上端縁に裾13側にへこんだ切欠部43bが形成され、非縫合領域42cによるヨーク部41と後身頃部43との間の隙間の開口面積が裾側に拡大されている。これにより、この隙間から引き出したランヤードが第2縫い目42bの端部に接触したときに、第2縫い目42bの端部に力を掛かりにくくして、第2縫い目42bのほつれを防止することができる。
【0060】
しかも、この実施例2では、後身頃部43の内側(裏側)には、切欠部43bに沿って見返し布46が縫い付けられている。そのため、切欠部43bの周囲が補強され、ほつれや破れをさらに防止することができる。
【0061】
なお、この切欠部43bの切込寸法H1が、第2縫い目42bからヨーク部41の下端部までの寸法H2よりも短く設定されているので、
図5に示すように、第2スライドファスナー44を閉めたとき、ヨーク部41の下部41aによって切込部43bを覆うことができる。そのため、非縫合領域42cによるヨーク部41と後身頃部43との間の隙間からの空気の漏れを抑制することができる。
【0062】
すなわち、実施例2の衣服10Aでは、以下の効果を得ることができる。
(5) 前記後身頃部43の上端縁には、前記非縫合領域42cに対応する位置に、裾13側にへこんだ切欠部43bが形成されている構成とした。
これにより、ヨーク部41と後身頃部43とを連結する縫合部42のほつれを防止することができる。
【0063】
以上、本発明の衣服10を実施例1及び実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0064】
実施例1では、縫合部32に形成した非縫合領域32cが、着用者の身幅方向の中央部に位置している例を示した。しかしながらこれに限らず、非縫合領域32cを設ける位置は、身幅方向の中央部から左右にオフセットした位置に設定してもよい。
【0065】
また、背面部30の後身頃部33等に、送風ファン等の温度調節器を取り付ける開口部を形成してもよい。
【0066】
また、実施例1では、ヨーク部31を開閉自在に係止する係止部材として、クイックオープン式スライドファスナーによって構成された第2スライドファスナー34を用いる例を示したが、これに限らない。クイックオープン式スライドファスナーではない一般的なスライドファスナーや、面ファスナー、スナップボタン、ホック、マグネットボタン等であってもよい。
【0067】
そして、実施例1では、補助脱衣具37が、スナップボタン35の上側ボタン35cに設けられたリング部材とする例を示したが、これに限らない。例えば、第2スライドファスナー34のスライダー34cに設けられた紐や、スナップボタン35に設けられた紐等であってもよい。また、ヨーク部31や襟12に対して、直接補助脱衣具37を取り付けてもよい。
【0068】
また、実施例2では、非縫合領域42cの両側に身丈方向に延びる第3縫い目を設けない一方、後身頃部43の上端縁に切欠部43bを形成した例を示したが、これに限らない。例えば、第3縫い目と切欠部との両方を設けてもよい。