特許第6918097号(P6918097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918097
(24)【登録日】2021年7月26日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】中空糸膜モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/02 20060101AFI20210729BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20210729BHJP
   B01D 65/08 20060101ALI20210729BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   B01D63/02
   B01D53/22
   B01D65/08 500
   B01D63/00 500
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-512426(P2019-512426)
(86)(22)【出願日】2018年3月30日
(86)【国際出願番号】JP2018013567
(87)【国際公開番号】WO2018190147
(87)【国際公開日】20181018
【審査請求日】2019年10月8日
(31)【優先権主張番号】特願2017-78304(P2017-78304)
(32)【優先日】2017年4月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 祐介
(72)【発明者】
【氏名】三橋 知貴
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−283292(JP,A)
【文献】 特開2005−034715(JP,A)
【文献】 特開2003−065566(JP,A)
【文献】 特開2008−119615(JP,A)
【文献】 特開2008−041335(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/035201(WO,A1)
【文献】 特開平02−086817(JP,A)
【文献】 特開2004−006100(JP,A)
【文献】 特開2004−202478(JP,A)
【文献】 特開2010−167372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
61/00 − 71/82
H01M 8/04 − 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケースと、
前記ケース内に収容される複数の中空糸膜からなる中空糸膜束と、
前記ケースの一端側と他端側で、各中空糸膜の中空内部を開放させた状態で前記ケースの両端の開口部をそれぞれ封止し、かつ前記中空糸膜束を前記ケースに対して固定する一対の封止固定部と、
を備え、各中空糸膜の中空内部を通る膜内流路と、各中空糸膜の外壁面側を通る膜外流路とが形成され、これら膜内流路と膜外流路のうちの一方に湿潤空気が流され、他方に乾燥空気が流されることにより、各中空糸膜の膜分離作用により湿潤空気側の水分が乾燥空気側に供給される中空糸膜モジュールであって、
前記ケースには、該ケースの一端側に偏った位置に設けられる膜外流路入口と、該ケースの他端側に偏った位置であって、前記中空糸膜束を介して前記膜外流路入口とは反対側に設けられる膜外流路出口とが設けられ、
該ケースの内壁面には、該ケースの内壁面と前記中空糸膜束との間に隙間を確保せしめるように該中空糸膜束の外周面に向かって突出する共に、前記ケースの一端側から他端側に向かって伸び、流体の流れを整える少なくとも一つの整流用突起と、前記膜外流路入口と前記膜外流路出口との間の位置で前記整流用突起と交差するように設けられ、かつ前記ケースの周方向に向かって伸び、流体の流れを乱れさせる少なくとも一つの乱流用突起とが設けられていることを特徴とする中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記ケースは、一対の略平板部と、これら一対の略平板部の両側をそれぞれ繋ぐ一対の曲面部とを備え、該ケースの一端側から他端側に向かう方向に対して垂直な断面形状がオーバル形状の部材により構成されており、
前記一対の略平板部の一方に前記膜外流路入口が設けられ、他方に前記膜外流路出口が設けられると共に、
前記整流用突起及び乱流用突起は、少なくとも前記一対の略平板部のうち前記膜外流路入口が設けられている側の内壁面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿装置や除湿装置に用いることができる中空糸膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型の燃料電池においては、電解質膜を加湿させるために、中空糸膜モジュールを用いた加湿装置が設けられている。図7及び図8を参照して、従来例に係る中空糸膜モジュールについて説明する。図7は従来例に係る中空糸膜モジュールの模式的断面図である。図8は従来例に係る中空糸膜モジュールを構成するケースの模式的断面図である。図8においては、ケースの内壁面の構成を示している。
【0003】
従来例に係る中空糸膜モジュール500は、筒状のケース510を備えている。このケース510の両端にはそれぞれヘッド520,530が装着されている。また、ケース510内には中空糸膜束540が収容されている。更に、ケース510の一端側と他端側で、各中空糸膜の中空内部を開放させた状態でケース510の両端の開口部をそれぞれ封止し、かつ中空糸膜束540をケース510に対して固定する一対の封止固定部550,560が設けられている。
【0004】
以上のように構成される中空糸膜モジュール500によれば、各中空糸膜の中空内部を通る膜内流路と、各中空糸膜の外壁面側を通る膜外流路とが形成される。すなわち、ヘッド530側から中空糸膜束540における各中空糸膜の中空内部を通り、ヘッド520側に流れていく流路(矢印Y参照)が膜内流路である。そして、ケース510に設けられた膜外流路入口511から中空糸膜束540における各中空糸膜の外壁面側を通り、ケース510に設けられた膜外流路出口512へと流れていく流路(矢印X参照)が膜外流路である。
【0005】
そして、中空糸膜の素材として、親水性の材料を用いることによって、中空糸膜モジュール500を加湿装置として利用することが可能となる。例えば、上述した矢印X方向に流れる膜外流路に湿潤空気が流れるようにし、矢印Y方向に流れる膜内流路に乾燥空気が流れるようにする。これにより、中空糸膜による膜分離作用によって、湿潤空気側の水分が乾燥空気側に供給され、乾燥空気を加湿させることが可能となる。なお、湿潤空気側は水分が奪われるため、湿潤空気を乾燥させるための除湿装置として利用することも可能である。
【0006】
以上のような中空糸膜モジュール500において、加湿効率を高めるためには、ケース510内に収容される中空糸膜全体の膜面積に対して、膜分離作用に寄与する膜面積の割合を如何に大きくすることができるかが重要である。ケース510の内壁面全体に中空糸膜束540の外周面が密着していると、膜外流路入口511の付近と膜外流路出口512の付近の流体の流れが集中してしまい易い。そこで、図示の従来例に係る中空糸膜モジュール500においては、ケース510の内壁面に、流体の流れを整える整流用突起513が設けられている。この整流用突起513は、ケース510の内壁面と中空糸膜束540との間に隙間を確保せしめるように中空糸膜束540の外周面に向かって突出する共に、ケース510の一端側から他端側に向かって伸びるように設けられている。このように、整流用突起513が設けられることによって、膜外流路入口511の付近と膜外流路出口512の付近の流体の流れが集中してしまうことが抑制でき、膜分離作用に寄与する膜面積の割合を大きくすることが可能となっている。
【0007】
しかしながら、上記の従来構造においては、ケース510の内壁面と中空糸膜束540との間に隙間Sが設けられているため、膜外流路入口511から入った流体(例えば湿潤空気)は、封止固定部560付近まで流れて行き易い。従って、図中矢印X0に示す流れが主流となってしまい易く、中空糸膜束540の中央付近で束内に流れる流体の流量が少なくなってしまい易い。以上のことから、膜分離作用に寄与する膜面積の割合を大きくするためには、未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−283292号公報
【特許文献2】特開2015−226859号公報
【特許文献3】特開2009−136772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、膜分離作用に寄与する膜面積の割合の向上を図った中空糸膜モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0011】
本発明の中空糸膜モジュールは、
筒状のケースと、
前記ケース内に収容される複数の中空糸膜からなる中空糸膜束と、
前記ケースの一端側と他端側で、各中空糸膜の中空内部を開放させた状態で前記ケースの両端の開口部をそれぞれ封止し、かつ前記中空糸膜束を前記ケースに対して固定する一対の封止固定部と、
を備え、各中空糸膜の中空内部を通る膜内流路と、各中空糸膜の外壁面側を通る膜外流路とが形成され、これら膜内流路と膜外流路のうちの一方に湿潤空気が流され、他方に乾燥空気が流されることにより、各中空糸膜の膜分離作用により湿潤空気側の水分が乾燥空気側に供給される中空糸膜モジュールであって、
前記ケースには、該ケースの一端側に偏った位置に設けられる膜外流路入口と、該ケースの他端側に偏った位置であって、前記中空糸膜束を介して前記膜外流路入口とは反対側に設けられる膜外流路出口とが設けられ、
該ケースの内壁面には、該ケースの内壁面と前記中空糸膜束との間に隙間を確保せしめるように該中空糸膜束の外周面に向かって突出する共に、前記ケースの一端側から他端側に向かって伸び、流体の流れを整える少なくとも一つの整流用突起と、前記膜外流路入口と前記膜外流路出口との間の位置で前記整流用突起と交差するように設けられ、かつ前記ケースの周方向に向かって伸び、流体の流れを乱れさせる少なくとも一つの乱流用突起とが設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、ケースの内壁面に整流用突起が設けられているため、膜外流路入口付近や膜外流路出口付近に流体の流れが集中してしまうことを抑制することができる。また、ケースの内壁面に乱流用突起が設けられているため、ケースの内壁面と中空糸膜束との間の隙間を流れて行く流体の流量を減らすことができる。これにより、膜外流路入口から入り、当該隙間から膜外流路出口側の封止固定部付近まで流れて行き、膜外流路出口から流出する流体の流量を抑制することができる。
【0013】
前記ケースは、一対の略平板部と、これら一対の略平板部の両側をそれぞれ繋ぐ一対の曲面部とを備え、該ケースの一端側から他端側に向かう方向に対して垂直な断面形状がオーバル形状の部材により構成されており、
前記一対の略平板部の一方に前記膜外流路入口が設けられ、他方に前記膜外流路出口が設けられると共に、
前記整流用突起及び乱流用突起は、少なくとも前記一対の略平板部のうち前記膜外流路入口が設けられている側の内壁面に設けられているとよい。
【0014】
これにより、膜外流路入口付近に流体の流れが集中してしまうことを、より確実に抑制することができる。また、膜外流路入口から入った流体が、ケースの内壁面と中空糸膜束との間の隙間を流れて行く途中で、乱流用突起により流体の流れを乱れさせることができる。従って、乱流用突起付近で中空糸膜束の内部に流体を進入させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、膜分離作用に寄与する膜面積の割合の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの平面図である。
図2図2は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの側面図である。
図3図3は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの正面図である。
図4図4は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの模式的断面図である。
図5図5は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの模式的断面図である。
図6図6は本発明の実施例に係るケースの模式的断面図である。
図7図7は従来例に係る中空糸膜モジュールの模式的断面図である。
図8図8は従来例に係るケースの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。本実施例に係る中空糸膜モジュールは、固体高分子型の燃料電池においては、電解質膜を加湿させるための加湿装置として好適に用いることができる。ただし、除湿装置としても利用することができる。
【0018】
(実施例)
図1図6を参照して、本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールについて説明する。図1は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの平面図である。図2は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの側面図である。図3は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの正面図であり、図2中、左側から見た図である。図4は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの模式的断面図であり、図1中のAA断面図である。図5は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの模式的断面図であり、図2中のBB断面図である。図6は本発明の実施例に係るケースの模式的断面図であり、図3中のCC断面図のうち、ケースのみを示した図である。
【0019】
<中空糸膜モジュール>
本実施例に係る中空糸膜モジュール10は、筒状のケース100と、ケース100の両端側にそれぞれ固定される一対のヘッド210,220と、ケース100内に収容される中空糸膜束300及び一対の封止固定部410,420とから構成される。また、中空糸膜モジュール10においては、中空糸膜束300における各中空糸膜の中空内部を通る膜内流路(図4中、矢印Y参照)と、各中空糸膜の外壁面側を通る膜外流路(図4中、矢印X参照)とが形成される。
【0020】
ケース100は、一対の略平板部100P,100Qと、これら一対の略平板部100P,100Qの両側をそれぞれ繋ぐ一対の曲面部100R,100Sとを備えている。そして、ケース100は、その一端側から他端側に向かう方向に対して垂直な断面形状がオーバル形状の部材により構成されている(図5参照)。
【0021】
また、ケース100には、その一端側に偏った位置に膜外流路入口110が設けられている。この膜外流路入口110は、一対の略平板部100P,100Qのうちの一方の略平板部100Pに設けられている。そして、ケース100には、その他端側に偏った位置であって、中空糸膜束300を介して膜外流路入口110とは反対側に、膜外流路出口120が設けられている。この膜外流路出口120は、一対の略平板部100P,100Qのうちの他方の略平板部100Qに設けられている。一対のヘッド210,220は、それぞれケース100の両端に固定される。これら一対のヘッド210,220は、環状の部材により構成されている。そして、ヘッド210の内周面210aの内側と、ヘッド220の内周面220aの内側がそれぞれ流体の通路となる。なお、本実施例においては、ヘッド220の内周面220aの内側が膜内流路の入口となり、ヘッド210の内周面210aの内側が膜内流路の出口となる。
【0022】
中空糸膜束300は、複数(数百本から数万本程度)の中空糸膜が束にされた構成である。中空糸膜の素材としては、親水性の素材が用いられる。例えば、溶解拡散により水分を透過する特性を有するナフィオンや、孔径制御による毛管凝縮機構により水分を透過する特性を有するPPSU(ポリフェニルスルホン)などを好適に用いることができる。これらの材料は、低溶出性であり、かつ強度も高いため、加湿装置や除湿装置に好適に用いることができる。
【0023】
一対の封止固定部410,420は、ケース100の一端側と他端側で、各中空糸膜の中空内部を開放させた状態でケース100の両端の開口部をそれぞれ封止し、かつ中空糸膜束300をケース100に対して固定している。これらの封止固定部410,420は、エポキシ樹脂などのポッティング材料が硬化することにより構成される。
【0024】
<ケース>
ケース100について、より詳細に説明する。ケース100の内壁面には、整流用突起130と乱流用突起140が設けられている。整流用突起130は、ケース100の内壁面と中空糸膜束300との間に隙間を確保せしめるように中空糸膜束300の外周面に向かって突出する共に、ケース100の一端側から他端側に向かって伸び、流体の流れを整えるために設けられている。本実施例においては、整流用突起130は、一対の略平板部100P,100Qの内壁面に、それぞれ2か所ずつ設けられている。乱流用突起140は、ケース100の周方向に向かって伸び、流体の流れを乱れさせるために設けられている。本実施例においては、乱流用突起140は、一対の略平板部100P,100Qの内壁面に、それぞれ1か所ずつ設けられている。また、乱流用突起140は、ケース100における両端の間の中心付近に設けられている。
【0025】
整流用突起130の長手方向の長さ(図4及び図6において左右方向の長さ)は、中空糸膜の有効長(封止固定部410,420の対向面間の距離に相当)に対して、1/4以上3/4以下の範囲で設定するのが望ましい。また、整流用突起130の高さ(突出量)は、ケース100の断面の長さ(一対の略平板部100P,100Qの対向面間の距離に相当)に対して、1/20以上1/4以下の範囲で設定するのが望ましい。そして、乱流用突起140の周方向の長さは、ケース100の内周面の周長に対して、1/8以上1以下の範囲で設定するのが望ましい。また、乱流用突起140の高さ(突出量)は、ケース100の断面の長さ(一対の略平板部100P,100Qの対向面間の距離に相当)に対して、1/20以上1/4以下の範囲で設定するのが望ましい。本実施例においては、中空糸膜束300と略平板部100Pとの間、及び中空糸膜束300と略平板部100Qとの間には、整流用突起130によって、隙間Sが確保されている。これに対して、中空糸膜束300と曲面部100R,100Sとは接しており、隙間は設けられていない。
【0026】
<加湿(除湿)メカニズム>
本実施例に係る中空糸膜モジュール10における加湿(除湿)メカニズムについて説明する。上記の通り、本実施例に係る中空糸膜モジュール10においては、中空糸膜束300における各中空糸膜の中空内部を通る膜内流路と、各中空糸膜の外壁面側を通る膜外流路とが形成されている。膜内流路は、ヘッド220側から中空糸膜束300における各中空糸膜の中空内部を通り、ヘッド210側に流れて行く流路である(図4中の矢印Y参照)。そして、膜外流路は、ケース100に設けられた膜外流路入口110から中空糸膜束300における各中空糸膜の外壁面側を通り、ケース100に設けられた膜外流路出口120へと流れていく流路である(図4中の矢印X参照)。
【0027】
本実施例においては、膜外流路に湿潤空気が流れるようにし、膜内流路に乾燥空気が流れるように、中空糸膜モジュール10は用いられる。これにより、中空糸膜による膜分離作用によって、湿潤空気側の水分が乾燥空気側に供給され、乾燥空気は加湿される。湿潤空気側は水分が奪われるため、湿潤空気は乾燥される。従って、加湿装置または除湿装置として用いることが可能となる。
【0028】
<本実施例に係る中空糸膜モジュールの優れた点>
本実施例に係る中空糸膜モジュール10によれば、ケース100の内壁面に整流用突起130が設けられているため、膜外流路入口110付近や膜外流路出口120付近に流体の流れが集中してしまうことを抑制することができる。また、ケース100の内壁面に乱流用突起140が設けられているため、ケース100の内壁面と中空糸膜束300との間の隙間Sを流れて行く流体の流量を減らすことができる。これにより、膜外流路入口110から入り、隙間Sから膜外流路出口120側の封止固定部420付近まで流れて行き、膜外流路出口120から流出する流体の流量を抑制することができる。
【0029】
特に、本実施例においては、一対の略平板部100P,100Qのうち膜外流路入口110が設けられている略平板部100Pの内壁面に設けられた整流用突起130及び乱流用突起140による効果が大きい。すなわち、膜外流路入口110から入った流体は、略平板部100Pの内壁面と中空糸膜束300との間に形成された隙間Sを流れて行き易い。しかしながら、この隙間Sを流れて行く流体は、乱流用突起140によって流れが乱される。すなわち、図4及び図6中の矢印X1に示すように、流体は、乱流用突起140に衝突して、中空糸膜束300の内部側や周方向に向かうように、流れる方向が変化させられる。従って、乱流用突起140付近で中空糸膜束300の内部に流体を進入させることが可能となる。また、乱流用突起140の付近で、図5中、左右方向にも流体が流れて行くため、曲面部100R,100Sの内周面付近にも流体が供給される。以上のように、本実施例に係る中空糸膜モジュール10によれば、膜分離作用に寄与する膜面積の割合の向上を図ることができる。
【0030】
本実施例に係る中空糸膜モジュール10と従来例に係る中空糸膜モジュール500の比較試験結果について説明する。まず、試験に用いたサンプルについて説明する。本実施例に係る中空糸膜モジュール10のサンプルの場合、ケース100の断面の寸法(図5におけるケース100の内壁面の寸法)は、高さ30mm,横幅70mmとし、曲面部100R,100Sの内周面の曲率半径を15mmとした。また、整流用突起130は、長さを30mm,高さを3mmとして、図6に示すように中空糸膜と平行になるように2本設けた。なお、一対の整流用突起130の間隔は15mmとした。乱流用突起140は、長さを40mm,高さを3mmとして、整流用突起130の長手方向の中心に、整流用突起130と垂直となるように設けた。また、中空糸膜束300は、1000本の中空糸膜を束にしたものを用いた。また、中空糸膜の有効長(封止固定部410,420の対向面間の距離に相当)は75mmとした。これに対して、従来例に係る中空糸膜モジュール500のサンプルについては、乱流用突起140が設けられていない点のみが、本実施例に係る中空糸膜モジュール10のサンプルと異なっている。
【0031】
以上のように構成されたサンプルを用いて、図4,7中、矢印Xに示すように、膜外流路に露点71℃の加湿空気を40L/minで通気しつつ、矢印Yに示すように膜内流路に乾燥空気を40L/minで通気させた。その結果、本実施例に係る中空糸膜モジュール10の場合、ヘッド210側から排出される加湿後の空気は露点換算で64.0℃であった。これに対して、従来例に係る中空糸膜モジュール500の場合、ヘッド520側から排出される加湿後の空気は露点換算で62.5℃であった。このような比較試験の結果から、本実施例に係る中空糸膜モジュール10を採用することで、加湿性能が向上することが分かる。
【0032】
(その他)
上記実施例においては、膜外流路を流れる流体と、膜内流路を流れる流体が逆方向となるように構成する場合を示した。しかしながら、膜外流路を流れる流体と、膜内流路を流れる流体が同方向となるようにすることもできる。例えば、膜内流路に対しては、矢印Yとは反対方向に流体を流すようにすることもできる。ただし、加湿効率及び除湿効率を高めるためには、逆方向にするほうがよい。また、上記実施例においては、膜外流路に加湿空気を流し、膜内流路に乾燥空気を流す場合を説明した。しかしながら、膜外流路に乾燥空気を流し、膜内流路に加湿空気を流すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 中空糸膜モジュール
100 ケース
100P,100Q 略平板部
100R,100S 曲面部
110 膜外流路入口
120 膜外流路出口
130 整流用突起
140 乱流用突起
210,220 ヘッド
210a,220a 内周面
300 中空糸膜束
410,420 封止固定部
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8