(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、眼が紫外線に暴露することによる悪影響が問題視されている。さらに、近年、自然光、オフィス機器の液晶ディスプレイや、スマートフォンまたは携帯電話等の携帯機器のディスプレイ等からの発光に含まれる青色光により、眼の疲れや痛みを感じるなど、眼への影響が問題となってきている。そのため、眼が紫外線から420nm程度の比較的短波長の青色光に暴露する量を低減させることが望まれてきている。
【0003】
さらに、紫外線により角膜炎や白内障を誘発する可能性が示唆されており、紫外線から目を保護する為に、紫外線吸収能を賦与したレンズの開発が望まれている。波長420nm程度の短波長青色光の眼への影響については、非特許文献1に記載されている。
【0004】
非特許文献1では、411nmと470nmのピーク波長の異なる青色LED光を網膜神経細胞(ラットの培養網膜神経R28細胞)に照射し、青色LED光の網膜神経細胞へのダメージを検証している。その結果、411nmにピーク波長を有する青色光を照射(4.5w/m
2)した場合、24時間以内に網膜神経細胞の細胞死を引き起こすのに対し、470nmにピーク波長を有する青色光では、同じ量の照射でも細胞に変化は起こらないことが示されている。つまり、400〜420nmの波長の光による暴露を抑えることが目の障害防止に重要であることが示されている。
また、長い間、眼に青色光の照射を浴びることは、眼精疲労やストレスを受けることが懸念されており、加齢黄斑変性を引き起こす要因と考えられている。
【0005】
また、ポリカーボネート樹脂は高屈折率であり、透明性や耐衝撃性に優れた特性を有していることから、最近はレンズの素材、なかでも眼鏡レンズの素材として注目を集めている。ポリカーボネート樹脂製の眼鏡レンズは、従来のガラスレンズや注型重合によるプラスチックレンズ(以下注型レンズという場合がある)に比べて衝撃強度が高いため、薄くすることにより軽量化が可能であり、かつ安全性に優れており、さらに機能性が高い。そのため、ポリカーボネート樹脂製の眼鏡レンズは、視力補正用レンズ、サングラスおよび保護眼鏡等に用いられるようになってきた。
さらにポリカーボネート樹脂は射出成型が可能なため、上記の注型レンズと比較して生産性が高い。
【0006】
最近では、眼鏡レンズに紫外線吸収能を付与し、有害な紫外線から目を保護する要望が強くなってきている。例えば、注型レンズやガラスレンズでは、レンズ表面に紫外線吸収能を有するコート層を付与して、これらの要望に応えている。しかしながら、かかるコート方法では高価になり、かつレンズ自身が微黄色化することがあった。また注型レンズでは重合させる際に、紫外線吸収剤を添加することも行われている。しかしながら、かかる方法では、紫外線吸収剤が重合性に影響を与えたり、レンズ自体が黄色に変色する場合があった。
【0007】
これに対し、ポリカーボネート樹脂製眼鏡レンズでは、ポリカーボネート樹脂自体が紫外線吸収能を有しており、さらに熱可塑性樹脂であるため重合硬化性樹脂等に比べて紫外線吸収剤の添加による影響が軽微であり、溶融成形する際に紫外線吸収剤を配合することができる。そのため、ポリカーボネート樹脂とは異なる領域に紫外線吸収能を有する任意の紫外線吸収剤を容易に含有させることができ、例えば、長波長側の紫外線吸収剤を配合することができる。しかしながら、従来のポリカーボネート樹脂では、波長375nm迄の紫外線を吸収するのが限度であり、これ以上の長波長の光線を吸収しようとすると、紫外線吸収剤の含有量を通常の2〜10倍量添加しなければならない。一般に紫外線吸収剤は昇華性であるため、紫外線吸収剤を多量添加すると、ポリカーボネート樹脂の射出成形時に、紫外線吸収剤が昇華して鏡面金型を汚染するため、得られるレンズの外観に悪影響を及ぼす。
【0008】
特許文献1には波長300〜345nmに吸収極大を有する紫外線吸収剤と、波長346〜400nmに吸収極大を有する紫外線吸収剤を併用して波長400nm以下の紫外線をカットする方法が開示されている。しかしながら波長400nmの紫外線の分光透過率は10%以下であって、紫外線から眼を保護するためには必ずしも充分ではなかった。
【0009】
また、特許文献2には特定の構造を有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を特定量配合してなるポリカーボネート樹脂組成物から形成された眼鏡レンズが開示されている。しかしながら、波長400nmの分光透過率に関する開示のみで、波長420nmにおける光透過率に関する記載はない。
【0010】
さらに、特許文献3には芳香族ポリカーボネート樹脂、飽和脂肪族炭化水素、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤および特定構造の亜リン酸エステル系安定剤からなるメガネレンズ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。しかしながら、波長400nmの分光透過率に関する開示のみで、波長420nmにおける光透過率に関する記載はない。
【0011】
特許文献4には、ポリカーボネート樹脂、飽和脂肪族炭化水素、25℃における蒸気圧が1×10
−8Pa以下のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、および亜リン酸エステル系安定剤を含有するメガネレンズ用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。当該文献には、蒸気圧が高い紫外線吸収剤を使用した場合、レンズ成形品の不良率が高くなることが開示されている。しかしながら特許文献4に開示されている組成物は紫外線カット波長が384nmと420nmまでは到達していない。
【0012】
特許文献5には、特定の融点を有するインドール系紫外線吸収剤を含有した保護眼鏡用遮光レンズが開示されており、その詳細な説明において合成樹脂の例示としてポリカーボネート樹脂が記載されている。しかしながら、特許文献5は遮光レンズに関するものであり、実際にポリカーボネート樹脂に配合した例示はなく、またポリカーボネート樹脂の分子量に関する記載もない。
【0013】
遮光レンズとしては安全のために信号機の色を識別できる程度に防眩性に調整する必要があり、75%以上の全光線透過率で波長420nm以下を抑制することが好ましい。このような遮光レンズとしては、例えばCR39と通称されるジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂を主成分とし、有機酸コバルトを配合した樹脂製眼鏡レンズが挙げられ、かつ偏光膜を樹脂中に埋め込むようにキャスティング重合し、防眩効果と偏光特性を併有させた医療用レンズが知られている(特許文献6)。しかしながら、この遮光レンズは耐衝撃性が低く、脆性破壊を示す。
したがって、420nm以下の紫外・可視光線を抑制した全光線透過率の高い、さらには耐衝撃性の高いレンズが求められている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施の形態により説明する。
本実施形態のレンズは、重量平均分子量40,000〜60,000のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、所定のインドール系化合物を0.01〜0.8質量部含む。
【0020】
[ポリカーボネート樹脂]
ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体を反応させて得られる芳香族ポリカーボネート樹脂である。
二価フェノールの具体例としては、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類等を挙げることができる。これら二価フェノールは単独で用いても、二種以上併用してもよい。
【0021】
前記二価フェノールのうち、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)を主たる二価フェノール成分とするのが好ましく、特に全二価フェノール成分中、70モル%以上、特に80モル%以上がビスフェノールAであるものが好ましい。最も好ましいのは、二価フェノール成分が実質的にビスフェノールAである芳香族ポリカーボネート樹脂である。
本実施形態において、本発明の効果の観点から、ポリカーボネート樹脂はビスフェノールA型ポリカーボネートであることが好ましい。
【0022】
ポリカーボネート樹脂を製造する基本的な手段を簡単に説明する。
カーボネート前駆体としてホスゲンを用いる溶液法では、通常酸結合剤および有機溶媒の存在下に二価フェノール成分とホスゲンとの反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノールやp−tert−ブチルフェノールのようなアルキル置換フェノール等の末端停止剤を用いることが望ましい。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間、反応中のpHは10以上に保つのが好ましい。
【0023】
カーボネート前駆体として炭酸ジエステルを用いるエステル交換法(溶融法)は、不活性ガスの存在下に所定割合の二価フェノール成分と炭酸ジエステルとを加熱しながら撹拌し、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法である。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応させる。また反応を促進するために通常のエステル交換反応触媒を用いることができる。このエステル交換反応に用いる炭酸ジエステルとしては例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等があげられ、特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0024】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、標準ポリスチレン換算でゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量として40,000〜60,000が好ましく、40,000〜50,000がより好ましく、40,000〜45,000が特に好ましい。
眼鏡レンズは精密成形であり、金型の鏡面を正確に転写して規定の曲率、度数を付与することが重要であり、溶融流動性のよい低粘度の樹脂が望ましいが、あまりに低粘度過ぎるとポリカーボネート樹脂の特徴である衝撃強度が保持できない。一方、粘度が高いとハンドリング性が低下し、レンズの生産性が低下する。したがって、ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量が上記範囲であると、金型の転写性に優れるとともに、耐衝撃性にも優れ、さらにレンズの生産性にも優れる。
【0025】
[インドール系化合物]
本実施形態において使用されるインドール系化合物は、下記一般式(1)で表される紫外線吸収剤である。
【0027】
一般式(1)中、R
1は分岐していてもよいアルキル基もしくはアラルキル基、R
2は−CNもしくは−COOR
3、R
3は置換基を有してもよいアルキル基もしくはアラルキル基を示す。
【0028】
上記一般式(1)において、R
1としては例えば分岐鎖を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基若しくはアラルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、(イソ)ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0029】
R
2は、ニトリル(−CN)基若しくはエステル(−COOR
3)基である。
R
3としては、例えば置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基若しくはアラルキル基が挙げられる。R
3の具体例としては、例えば上記R
1で例示したもの及びβ−シアノエチル基、β−クロロエチル基、エトキシプロピル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルコキシアルキル基が挙げられる。
本実施形態においては、一般式(1)で表されるインドール系化合物は昇華性ではなく、ポリカーボネート樹脂の射出成形時において鏡面金型の汚染が抑制されるとともに、当該化合物を多量添加した場合でも鏡面金型の汚染が抑制される。さらに、当該インドール系化合物を含むレンズは、経時後においても表面状態に変化がなく保存安定性にも優れる。
【0030】
インドール系化合物(1)は、下記一般式(2)で表わされる化合物に、下記一般式(3)で表わされる化合物を縮合反応させることにより得られる。
【0032】
一般式(2)中、R
1は一般式(1)のR
1と同義である。
【0033】
NC−CH
2−R
2 (3)
一般式(3)中、R
2は一般式(1)のR
2と同義である。
【0034】
上記化合物(3)としては、例えばマロノニトリル(NC−CH
2−CN)及びα−シアノ酢酸エステル(NC−CH
2−COOR
3;R
3は式(1)におけるR
3と同義である。)が挙げられる。α−シアノ酢酸エステルの具体例としては、シアノ酢酸メチルエステル、シアノ酢酸エチルエステル(シアノ酢酸エチル)、シアノ酢酸イソプロピルエステル、シアノ酢酸ブチルエステル、シアノ酢酸ターシャリブチルエステル、シアノ酢酸アミルエステル、シアノ酢酸オクチルエステル、シアノ酢酸と高級アルコール(例えば、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、C13〜C20の脂肪族アルコール)からのエステル、シアノ酢酸ベンジルエステル等が挙げられる。
【0035】
上記縮合反応において、化合物(3)の使用量は、化合物(2)に対し0.9〜1.2当量が好ましい。縮合反応は、溶媒中10℃〜溶媒の沸点、0.5時間〜20時間で行うことができる。溶媒としては、アルコール類(例えばメタノール、エタノール等)、無水酢酸等を使用できる。アルコール類を溶媒とするときは触媒としては塩基類(例えばピリジン、トリエチルアミン等)を使用できる。
【0036】
反応終了後、分離及び必要とあれば精製を行って化合物(1)を得る。分離精製法は特に限定されず、例えば反応生成混合物を水等に排出し、化合物(1)を沈澱物として析出させ、次いでこれを分離する。一般にはアルコール溶剤等に洗浄して精製できるが、必要とあれば再結晶等を行って精製してもよい。
【0037】
尚、原料の化合物(2)は公知の方法で容易に合成し得る。例えば、下記一般式(4)で表わされる化合物のジメチルホルムアミド溶液に、オキシ塩化リンを加えてホルミル化(Vilsmeier反応)することにより、容易に合成することができる。
【0039】
一般式(4)中、R
1は一般式(1)のR
1と同義である。
【0040】
その他の化合物(1)の他の合成法としては、例えば下記式(5)で表わされる化合物と化合物(3)とを縮合反応させて、下記一般式(6)で表わされる化合物とし、次いでアルキル化剤若しくはアラルキル化剤と反応させてN−アルキル化若しくはアラルキル化することによっても、化合物(1)を得ることができる。また、R
3が水素のときは、アルキル化剤で処理して誘導体を得ることができる。
【0043】
一般式(6)中、R
2は一般式(1)のR
2と同義である。
【0044】
化合物(5)と化合物(3)の縮合反応は、前述の縮合反応の場合と同様の条件で行うことができる。また、N−アルキル化若しくはアラルキル化は通常の方法で行ってよい。アルキル化剤若しくはアラルキル化剤としては、ハロゲン化アルキル若しくはハロゲン化アラルキル(例えばヨウ化メチル、ヨウ化ベンジル)、ジアルキル硫酸若しくはジアラルキル硫酸(例えば、ジメチル硫酸、ジベンジル硫酸)、芳香族スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0045】
上記のようにして合成されるインドール系化合物(1)は、一般に380〜400nmに極大吸収を有する。従ってこの範囲の波長の紫外線を、効果的に遮光する事ができる。
【0046】
インドール系化合物(1)の配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.01〜0.8質量部であることが好ましく、0.01〜0.3質量部であることがより好ましく、0.02〜0.3質量部であることがさらに好ましく、0.02〜0.1質量部であることが特に好ましい。
【0047】
上記の配合量が0.01質量部以上の場合、420nm以下の紫外・可視光線を遮光する能力が明確に発現されるため好ましく、0.8質量部以下の場合、ポリカーボネート樹脂の黄色度(YI値)が低下するため好ましい。また0.8質量部以下の場合、良好な衝撃強度を保持でき、さらに金型汚染がより抑制されるために好ましい。
すなわち、インドール系化合物(1)を上記の量で含むことにより、420nm以下の紫外・可視光線を効果的に遮光することができるとともに、色相および耐衝撃性に優れ、耐金型汚染性に特に優れる。
【0048】
本実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂と一般式(1)で表されるインドール系化合物とを混合して得ることができる。混合方法は特に限定されるものではないが、溶融押し出し機(短軸もしくは2軸)により溶融混練することにより混合することができる。
【0049】
また、必要に応じて一般式(1)で表されるインドール系化合物をポリカーボネート樹脂に高濃度に混合した後、これをマスターバッチとしてポリカーボネート樹脂に混合する方法により混合することも可能である。
【0050】
本実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物は、異物含有量が極力少ないことが望まれ、ポリカーボネート樹脂組成物のポリマーフィルターによる濾過が好適に実施される。ポリマーフィルターのメッシュは、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下である。また、樹脂ペレットを採取する工程は、当然低ダスト環境であることが好ましく、クラス1000以下のクリーン度であることがより好ましい。
【0051】
本実施形態に係るレンズは、本実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物を成型して得ることができる。
本実施形態のレンズの製造方法は、本実施形態の樹脂組成物を射出成型により成型する工程を含む。当該工程は、射出成形法および射出圧縮成形法等の射出成型方法により行うことができる。射出成型工程は従来公知の条件で行うことができる。
【0052】
本実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物は、成形性に優れ、金型表面の汚染を抑制することができるため、射出成型工程を含む製造方法により、所望のレンズを歩留まりよく得ることができ、さらに耐熱性および耐衝撃性に優れたレンズを得ることができる。
【0053】
また、本実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で各種特性を付与するために、各種添加剤を使用することができる。添加剤としては、酸化防止剤、加工熱安定剤、離型剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、熱線遮蔽剤、蛍光染料(蛍光増白剤含む)、顔料、光散乱剤、強化充填剤、界面活性剤、抗菌剤、可塑剤、相溶化剤等を挙げることができる。
【0054】
酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートおよび3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂組成物中の酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.001〜0.3質量部であることが好ましい。
【0055】
加工熱安定剤としては、例えば、リン系加工熱安定剤、硫黄系加工熱安定剤等が挙げられる。
リン系加工熱安定剤としては、例えば、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリn−デシルホスファイト、トリn−オクチルホスファイト、トリn−オクタデシルホスファイト、ジn−デシルモノフェニルホスファイト、ジn−オクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノn−ブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノn−オクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(n−ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリn−ブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジn−ブチルホスフェート、ジn−オクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,3'−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−3,3'−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂組成物中のリン系加工熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.001〜0.2質量部が好ましい。
【0056】
硫黄系加工熱安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3'−チオジプロピオネート等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂組成物中の硫黄系加工熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.001〜0.2質量部が好ましい。
【0057】
離型剤としては、その90質量%以上がアルコールと脂肪酸とのエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸とのエステルや、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。上記一価アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、炭素原子数1〜20の一価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、上記多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとしては、炭素原子数1〜25の多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。
【0058】
一価アルコールと飽和脂肪酸とのエステルとしては、例えば、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、n−ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられる。多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、カプリン酸モノグリセリド、ラウリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。
【0059】
これら離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.005〜2.0質量部の範囲が好ましく、0.01〜0.6質量部の範囲がより好ましく、0.02〜0.5質量部の範囲がさらに好ましい。
【0060】
紫外線吸収剤としては、一般式(1)で表されるインドール系化合物以外に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤を含むことができる。以下に挙げる紫外線吸収剤は、いずれかを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2'−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2'−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2'−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ル等が挙げられる。
【0062】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2'−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0063】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(n−ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(n−オクチル)オキシ]−フェノール等が挙げられる。
【0064】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2'−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2'−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2'−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2'−(4,4'−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2'−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2'−(1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2'−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2'−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2'−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)等が挙げられる。
【0065】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、1,3−ビス−[(2'−シアノ−3',3'−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3−ビス−[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼン等が挙げられる。
【0066】
インドール系化合物(1)以外の紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜1.0質量部であり、より好ましくは0.02〜0.8質量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.8質量部である。かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、ポリカーボネート樹脂組成物に十分な耐候性を付与することが可能である。
【0067】
ブルーイング剤としては、例えば、バイエル社のマクロレックスバイオレットBおよびマクロレックスブルーRR並びにクラリアント社のポリシンスレンブルーRLS、紀和化学のK.P.Plast Violet 2R等が挙げられる。
【0068】
ブルーイング剤は、ポリカーボネート樹脂組成物の黄色味を消すために有効である。特に耐候性を付与したポリカーボネート樹脂組成物の場合は一定量の紫外線吸収剤が配合されるため、「紫外線吸収剤の作用や色」によってポリカーボネート樹脂成型品が黄色味を帯びやすい傾向があり、特にシートやレンズに自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の配合は有効である。
ブルーイング剤の配合量は、例えば、ポリカーボネート樹脂に対して、好ましくは0.05〜20ppmであり、より好ましくは0.1〜15ppmである。
【0069】
本実施形態のレンズを用いて、紫外・可視光線吸収眼鏡レンズを得ることができる。なお、必要に応じて、片面又は両面にコーティング層を施して用いてもよい。
【0070】
コーティング層として、具体的には、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、防曇コート層、防汚染層、撥水層等が挙げられる。これらのコーティング層はそれぞれ単独で用いることも複数のコーティング層を多層化して使用することもできる。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
【0071】
これらのコーティング層はそれぞれ、一般式(1)で表されるインドール系化合物以外の公知の紫外線吸収剤、赤外線から目を守る目的で赤外線吸収剤、レンズの耐候性を向上する目的で光安定剤や酸化防止剤、レンズのファッション性を高める目的で染料や顔料、さらにフォトクロミック染料やフォトクロミック顔料、帯電防止剤、その他、レンズの性能を高めるための公知の添加剤を併用してもよい。塗布によるコーティングを行う層に関しては塗布性の改善を目的とした各種レベリング剤を使用してもよい。
【0072】
プライマー層は通常、後述するハードコート層とレンズとの間に形成される。プライマー層は、その上に形成するハードコート層とレンズとの密着性を向上させることを目的とするコーティング層であり、場合により耐衝撃性を向上させることも可能である。プライマー層には得られたレンズに対する密着性の高いものであればいかなる素材でも使用できるが、通常、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、ポリビニルアセタールを主成分とするプライマー組成物などが使用される。プライマー組成物は組成物の粘度を調整する目的でレンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよい。無論、無溶剤で使用してもよい。
【0073】
プライマー層は塗布法、乾式法のいずれの方法によっても形成することができる。塗布法を用いる場合、プライマー組成物を、スピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法でレンズに塗布した後、固化することによりプライマー層が形成される。乾式法で行う場合は、CVD法や真空蒸着法などの公知の乾式法で形成される。プライマー層を形成するに際し、密着性の向上を目的として、必要に応じてレンズの表面は、アルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの前処理を行っておいてもよい。
ハードコート層は、レンズ表面に耐擦傷性、耐摩耗性、耐湿性、耐温水性、耐熱性、耐候性等機能を与えることを目的としたコーティング層である。
【0074】
ハードコート層は、一般的には硬化性を有する有機ケイ素化合物とSi,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In及びTiの元素群から選ばれる元素の酸化物微粒子の1種以上および/またはこれら元素群から選ばれる2種以上の元素の複合酸化物から構成される微粒子の1種以上を含むハードコート組成物が使用される。
【0075】
ハードコート組成物には上記成分以外にアミン類、アミノ酸類、金属アセチルアセトネート錯体、有機酸金属塩、過塩素酸類、過塩素酸類の塩、酸類、金属塩化物および多官能性エポキシ化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。ハードコート組成物にはレンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよいし、無溶剤で用いてもよい。
【0076】
ハードコート層は、通常、ハードコート組成物をスピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法で塗布した後、硬化して形成される。硬化方法としては、熱硬化、紫外線や可視光線などのエネルギー線照射による硬化方法等が挙げられる。干渉縞の発生を抑制するため、ハードコート層の屈折率は、レンズとの屈折率の差が±0.1の範囲にあるのが好ましい。
【0077】
反射防止層は、通常、必要に応じて前記ハードコート層の上に形成される。反射防止層には無機系および有機系があり、無機系の場合、SiO
2、TiO
2等の無機酸化物を用い、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビ−ムアシスト法、CVD法などの乾式法により形成される。有機系の場合、有機ケイ素化合物と、内部空洞を有するシリカ系微粒子とを含む組成物を用い、湿式により形成される。
【0078】
反射防止層は単層および多層があり、単層で用いる場合はハードコート層の屈折率よりも屈折率が少なくとも0.1以上低くなることが好ましい。効果的に反射防止機能を発現するには多層膜反射防止膜とすることが好ましく、その場合、低屈折率膜と高屈折率膜とを交互に積層する。この場合も低屈折率膜と高屈折率膜との屈折率差は0.1以上であることが好ましい。高屈折率膜としては、ZnO、TiO
2、CeO
2、Sb
2O
5、SnO
2、ZrO
2、Ta
2O
5等の膜があり、低屈折率膜としては、SiO
2膜等が挙げられる。
【0079】
反射防止層の上には、必要に応じて防曇層、防汚染層、撥水層を形成させてもよい。防曇層、防汚染層、撥水層を形成する方法としては、反射防止機能に悪影響をもたらすものでなければ、その処理方法、処理材料等については特に限定されずに、公知の防曇処理方法、防汚染処理方法、撥水処理方法、材料を使用することができる。例えば、防曇処理方法、防汚染処理方法では、表面を界面活性剤で覆う方法、表面に親水性の膜を付加して吸水性にする方法、表面を微細な凹凸で覆い吸水性を高める方法、光触媒活性を利用して吸水性にする方法、超撥水性処理を施して水滴の付着を防ぐ方法などが挙げられる。また、撥水処理方法では、フッ素含有シラン化合物等を蒸着やスパッタによって撥水処理層を形成する方法や、フッ素含有シラン化合物を溶媒に溶解したあと、コーティングして撥水処理層を形成する方法等が挙げられる。
【0080】
本実施形態のレンズは、厚さ2mmにおいて、420nm以下の紫外・可視光線の分光透過率が好ましくは0〜20%であり、より好ましくは0〜15%であり、さらに好ましくは0〜10%である。紫外・可視光線の分光透過率が20%以下であると、眼の障害防止に有効であり好ましい。
【0081】
また、本実施形態のレンズは、厚さ2mmにおいて、450nm、550nmおよび650nmの分光透過率が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
【0082】
レンズとしての機能性付与の観点から、上記450nm、550nmおよび650nmの分光透過率はすべてにおいて50%以上である必要はなく、求める機能に応じて、それぞれ、450nmの分光透過率のみが50%以上、または550nmの分光透過率のみが50%以上、650nmの分光透過率のみが50%以上であってもよく、それらから選ばれる2種以上の波長の分光透過率が50%以上であってもよい。好ましくは、一種以上の波長における分光透過率が50%以上であり、より好ましくは、二種以上の波長における分光透過率が50%以上であり、さらに好ましくは、三原色の波長における分光透過率が50%以上である。
【0083】
また、本実施形態のレンズは、好ましくは、全光線透過率が75%以上であり、より好ましくは、全光線透過率が80%以上であり、さらに好ましくは、全光線透過率が85%以上である。
【0084】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
本実施形態のポリカーボネート樹脂組成物を用い、溶融押し出し成型法によりフィルムまたはシートを製造することもできる。溶融押し出し成型法は、押し出し機で溶融した樹脂をダイからフィルムまたはシート状に押し出し、次いで冷却ロールに密着させ冷却固化させて製造される。溶融押し出し成型法は従来公知の条件で行うことができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 重量平均分子量40,000〜60,000のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、下記一般式(1)で表されるインドール系化合物を0.01〜0.8質量部含むレンズ。
【化9】
(式中、R1は分岐していてもよいアルキル基もしくはアラルキル基、R2は−CNもしくは−COOR3を示し、R3は置換基を有してもよいアルキル基もしくはアラルキル基を示す。)
2. 厚さ2mmにおいて、波長420nm以下の分光透過率が0〜20%である、1.に記載のレンズ。
3. 厚さ2mmにおいて、波長420nm以下の分光透過率が0〜20%であり、波長450nmの分光透過率が50%以上である、1.または2.に記載のレンズ。
4. さらにブルーイング剤を含む、1.〜3.のいずれかに記載のレンズ。
5. さらに一般式(1)で表される前記インドール系化合物以外の紫外線吸収剤を含む、1.〜4.のいずれかに記載のレンズ。
6. さらに酸化防止剤および/または加工熱安定剤を含む、1.〜5.のいずれかに記載のレンズ。
7. 重量平均分子量40,000〜60,000のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、下記一般式(1)で表されるインドール系化合物を0.01〜0.8質量部含む樹脂組成物。
【化10】
(式中、R1は分岐していてもよいアルキル基もしくはアラルキル基、R2は−CNもしくは−COOR3、R3は置換基を有してもよいアルキル基もしくはアラルキル基を示す。)
8. 重量平均分子量40,000〜60,000のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、下記一般式(1)で表されるインドール系化合物を0.01〜0.8質量部含む樹脂組成物を射出成型により成型する工程を含む、レンズの製造方法。
【化11】
(式中、R1は分岐していてもよいアルキル基もしくはアラルキル基、R2は−CNもしくは−COOR3を示し、R3は置換基を有してもよいアルキル基もしくはアラルキル基を示す。)
【実施例】
【0085】
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において用いた材料・評価方法は以下の通りである。
【0086】
〔1〕ポリカーボネート樹脂−1:帝人株式会社製、パンライト L−1225、重量平均分子量43,000のビスフェノールA型ポリカーボネート
〔2〕ポリカーボネート樹脂−2:住化ポリカーボネート株式会社製 SD−2173M 重量平均分子量45,000のビスフェノールA型ポリカーボネート
〔3〕ポリカーボネート樹脂−3:重量平均分子量35,000のビスフェノールA型ポリカーボネート
〔4〕紫外線吸収剤−A(以下、UVA−Aと略記する場合がある):エチル−2−シアノ−3−(1N−メチル−2−フェニル−1H−インドール−3−イル)アクリレート
〔5〕紫外線吸収剤−B(以下、UVA−Bと略記する場合がある):2−〔(1N−ブチル−2−フェニル−1H−インドール−3−イル)メチレン〕マロノニトリル
〔6〕紫外線吸収剤−C(以下、UVA−Cと略記する場合がある):エチル−2−シアノ−3−(1N−ベンジル−2−フェニル−1H−インドール−3−イル)アクリレート
〔7〕紫外線吸収剤−D(以下、UVA−Dと略記する場合がある):ベンジル−2−シアノ−3−(1N−メチル−2−フェニル−1H−インドール−3−イル)アクリレート
〔8〕紫外線吸収剤−E(以下、UVA−Eと略記する場合がある):2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
〔9〕紫外線吸収剤−F(以下、UVA−Fと略記する場合がある):2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕
〔10〕加工熱安定剤A:テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト:〔Hostanox P−EPQ〕
〔11〕ブルーイング剤A:1−ヒドロキシ−4−(p−トリルアミノ)アントラセン−9,10−ジオン〔マクロレックスバイオレットB〕
【0087】
〔分光透過率の測定〕
測定機器として、(株)島津製作所社製、分光光度計 Multispecを使用し、2mm厚のプラノーレンズを用いて紫外・可視光スペクトルを測定した。
〔Y.I.値の測定〕
2mm厚のプラノーレンズを用いてスガ試験機株式会社製色彩色差計Cute−iにて測定した。
〔全光線透過率・Haze〕
2mm厚のプラノーレンズを用いて日本電色株式会社製NDH2000にてJIS K 7136に準拠して測定した。
【0088】
〔分子量測定〕
Waters社製GPCシステム〔ポンプ:1515、示差屈折率計:2414、カラム:Shodex K−806L〕を使用して溶出液クロロホルムにより標準ポリスチレン換算の値として、ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量を測定した。
〔レンズ成型品の耐衝撃試験〕
2mm厚のプラノーレンズを用いてJIS K 7211−2に準拠し、パンクチャー衝撃試験を行い延性破壊のサンプルを○、脆性破壊のサンプルを×として評価した。
【0089】
[実施例1]
ポリカーボネート樹脂−1を100質量部およびUVA−A 0.035質量部を定量フィーダーによりベント付き2軸押し出し機〔(株)日本製鋼所製TEX30α、シリンダー設定温度260℃〕に供給し、フィルターを通して異物をろ過した後、ダイからストランド状に排出し、水冷、固化させた後回転式カッターでペレット化しポリカーボネート樹脂組成物を得た。その後、該ポリカーボネート樹脂組成物をクリーンオーブンにて120℃で5時間乾燥させた。
該ポリカーボネート樹脂組成物を射出成型機〔住友重工業株式会社製 SE−180DU〕にて樹脂温度280℃、金型温度90℃で射出成型し、直径75mm、厚さ2mmのレンズを成型した。射出成型機の金型には汚染物質等の付着は認められなかった。得られたレンズの400nmおよび420nmの分光透過率、全光線透過率、Haze、YI値を測定し、表1にまとめた。このレンズは室温にて3か月保管した後も表面に物質の析出等が認められず、表面の状態に変化は認められなかった。
【0090】
[実施例2]
実施例1において、UVA−Aを0.035質量部使用する代わりに、UVA−Aを0.021質量部使用した以外は、実施例1に記載の操作に従いポリカーボネート樹脂組成物を製造し、その後クリーンオーブンにより乾燥したポリカーボネート樹脂を射出成型し、レンズを得た。射出成型機の金型には汚染物質等の付着は認められなかった。得られたレンズの光学特性を測定し、表1にまとめた。このレンズは室温にて3か月保管した後も表面に物質の析出等が認められず、表面の状態に変化は認められなかった。
【0091】
[実施例3]
実施例1において、UVA−Aを0.035質量部使用する代わりに、UVA−Bを0.021質量部使用した以外は、実施例1に記載の操作に従いポリカーボネート樹脂組成物を製造し、その後クリーンオーブンにより乾燥したポリカーボネート樹脂を射出成型し、レンズを得た。射出成型機の金型には汚染物質等の付着は認められなかった。得られたレンズの光学特性を測定し、表1にまとめた。このレンズは室温にて3か月保管した後も表面に物質の析出等が認められず、表面の状態に変化は認められなかった。
【0092】
[実施例4]
実施例1において、UVA−Aを0.035質量部使用する代わりに、UVA−Cを0.020質量部使用した以外は、実施例1に記載の操作に従いポリカーボネート樹脂組成物を製造し、その後クリーンオーブンにより乾燥したポリカーボネート樹脂を射出成型し、レンズを得た。射出成型機の金型には汚染物質等の付着は認められなかった。得られたレンズの光学特性を測定し、表1にまとめた。このレンズは室温にて3か月保管した後も表面に物質の析出等が認められず、表面の状態に変化は認められなかった。
【0093】
[実施例5]
実施例1において、UVA−Aを0.035質量部使用する代わりに、UVA−Dを0.020質量部使用した以外は、実施例1に記載の操作に従いポリカーボネート樹脂組成物を製造し、その後クリーンオーブンにより乾燥したポリカーボネート樹脂を射出成型し、レンズを得た。射出成型機の金型には汚染物質等の付着は認められなかった。得られたレンズの光学特性を測定し、表1にまとめた。このレンズは室温にて3か月保管した後も表面に物質の析出等が認められず、表面の状態に変化は認められなかった。
【0094】
[実施例6]
実施例1において、UVA−Aを0.035質量部使用する代わりに、UVA−Aを0.75質量部使用した以外は、実施例1に記載の操作に従いポリカーボネート樹脂組成物を製造し、その後クリーンオーブンにより乾燥したポリカーボネート樹脂を射出成型し、レンズを得た。射出成型機の金型には汚染物質等の付着は認められなかった。得られたレンズの光学特性を測定し、表1にまとめた。このレンズは室温にて3か月保管した後も表面に物質の析出等が認められず、表面の状態に変化は認められなかった。
【0095】
[実施例7]
実施例1において、UVA−Aを0.035質量部使用する代わりに、UVA−Aを0.3質量部使用した以外は、実施例1に記載の操作に従いポリカーボネート樹脂組成物を製造し、その後クリーンオーブンにより乾燥したポリカーボネート樹脂を射出成型し、レンズを得た。射出成型機の金型には汚染物質等の付着は認められなかった。得られたレンズの光学特性を測定し、表1にまとめた。このレンズは室温にて3か月保管した後も表面に物質の析出等が認められず、表面の状態に変化は認められなかった。
【0096】
[実施例8]
実施例1において、ポリカーボネート樹脂−1を100質量部使用する代わりにポリカーボネート樹脂−2を100質量部使用した以外は、実施例1に記載の操作に従いポリカーボネート樹脂組成物を製造し、その後クリーンオーブンにより乾燥したポリカーボネート樹脂を射出成型し、レンズを得た。射出成型機の金型には汚染物質等の付着は認められなかった。得られたレンズの光学特性を測定し、表1にまとめた。このレンズは室温にて3か月保管した後も表面に物質の析出等が認められず、表面の状態に変化は認められなかった。
【0097】
[実施例9]
実施例1において、ポリカーボネート樹脂−1を100質量部およびUVA−Aを0.035質量部使用する代わりにポリカーボネート樹脂−2を100質量部およびUVA−Aを0.020質量部使用した以外は、実施例1に記載の操作に従いポリカーボネート樹脂組成物を製造し、その後クリーンオーブンにより乾燥したポリカーボネート樹脂を射出成型し、レンズを得た。射出成型機の金型には汚染物質等の付着は認められなかった。得られたレンズの光学特性を測定し、表1にまとめた。このレンズは室温にて3か月保管した後も表面に物質の析出等が認められず、表面の状態に変化は認められなかった。
【0098】
[比較例1]
ポリカーボネート樹脂−1を100質量部、UVA−E 0.6質量部および加工熱安定剤A 0.02質量部を定量フィーダーによりベント付き2軸押し出し機〔(株)日本製鋼所製TEX30α、シリンダー設定温度260℃〕に供給し、フィルターを通して異物をろ過した後、ダイからストランド状に排出し、水冷、固化させた後回転式カッターでペレット化しポリカーボネート樹脂組成物を得た。その後、該ポリカーボネート樹脂組成物をクリーンオーブンにて120℃で5時間乾燥させた。
該ポリカーボネート樹脂組成物を射出成型機〔住友重工業株式会社製 SE−180DU〕にて樹脂温度280℃、金型温度90℃で射出成型し、直径75mm、厚さ2mmのレンズを成型した。射出成型機の金型に微粉状の汚染物質の付着が認められた。得られたレンズの400nmおよび420nmの分光透過率、全光線透過率、Haze、YI値を測定し、表1にまとめた。このレンズは3か月保管後表面に粉状の物質が析出しており、外観不良が観察された。
【0099】
[比較例2]
ポリカーボネート樹脂−3を100質量部およびUVA−A 0.020質量部を定量フィーダーによりベント付き2軸押し出し機〔(株)日本製鋼所製TEX30α、シリンダー設定温度260℃〕に供給し、フィルターを通して異物をろ過した後、ダイからストランド状に排出し、水冷、固化させた後回転式カッターでペレット化しポリカーボネート樹脂組成物を得た。その後、該ポリカーボネート樹脂組成物をクリーンオーブンにて120℃で5時間乾燥させた。
該ポリカーボネート樹脂組成物を射出成型機〔住友重工業株式会社製 SE−180DU〕にて樹脂温度280℃、金型温度90℃で射出成型し、直径75mm、厚さ2mmのレンズを成型した。射出成型機の金型には汚染物質等の付着は認められなかった。
得られたレンズの400nmおよび420nmの分光透過率、全光線透過率、Haze、YI値を測定し、表1にまとめた。このレンズは室温にて3か月保管した後も表面に物質の析出等が認められず、表面の状態に変化は認められなかった。
【0100】
[比較例3]
ポリカーボネート樹脂−1を100質量部およびUVA−F 7.5質量部を定量フィーダーによりベント付き2軸押し出し機〔(株)日本製鋼所製TEX30α、シリンダー設定温度260℃〕に供給し、フィルターを通して異物をろ過した後、ダイからストランド状に排出し、水冷、固化させた後回転式カッターでペレット化しポリカーボネート樹脂組成物を得た。その後、該ポリカーボネート樹脂組成物をクリーンオーブンにて120℃で5時間乾燥させた。
該ポリカーボネート樹脂組成物を射出成型機〔住友重工業株式会社製 SE−180DU〕にて樹脂温度280℃、金型温度90℃で射出成型し、直径75mm、厚さ2mmのレンズを成型した。射出成型機の金型に微粉状の汚染物質の付着が認められた。
得られたレンズの400nmおよび420nmの分光透過率、全光線透過率、Haze、YI値を測定し、表1にまとめた。このレンズは3か月保管後表面に粉状の物質が析出しており、外観不良が観察された。
【0101】
[比較例4]
ジエチレングリコールビスアリルカーボネートに重合開始剤IPP(ジイソプロピルパーオキシジカーボネート)3%を添加したもの100質量部に対してUVA−A 1.5質量部を配合し、これらを混合撹拌した後、真空脱気して液状の成型材料を調製した。この液状成型材料を凸面および凹面のガラスモールドにガスケットをセットして厚さが2mmとなるようにしたレンズ成型キャビティ内に注入した。成形材料は40℃で3時間、40〜50℃の昇温を7時間、50℃〜80℃の昇温を9時間さらに80℃で1時間加熱し、冷却してから取り出し、100℃で2時間アニーリングし、レンズを得た。得られたレンズの400nmおよび420nmの分光透過率、全光線透過率、Haze、YI値を測定し、表1にまとめた。このレンズは3か月保管後表面に粉状の物質が析出しており、外観不良が観察された。
【0102】
[実施例10]
ポリカーボネート樹脂−1を100質量部、UVA−A 0.035質量部、加工熱安定剤A 0.02質量部およびブルーイング剤A 10ppmを定量フィーダーによりベント付き2軸押し出し機〔(株)日本製鋼所製TEX30α、シリンダー設定温度260℃〕に供給し、フィルターを通して異物をろ過した後、ダイからストランド状に排出し、水冷、固化させた後回転式カッターでペレット化しポリカーボネート樹脂組成物を得た。その後、該ポリカーボネート樹脂組成物をクリーンオーブンにて120℃で5時間乾燥させた。
該ポリカーボネート樹脂組成物を射出成型機〔住友重工業株式製 SE−180DU〕にて樹脂温度280℃、金型温度90℃で射出成型し、直径75mm、厚さ2mmのレンズを成型した。射出成型機の金型には汚染物質等の付着は認められなかった。
得られたレンズの光学特性を測定し、表1にまとめた。このレンズは室温にて3か月保管した後も表面に物質の析出等が認められず、表面の状態に変化は認められなかった。
【0103】
[実施例11]
ポリカーボネート樹脂−1を100質量部、UVA−A 0.025質量部、加工熱安定剤A 0.02質量部、UVA−F 0.4質量部およびブルーイング剤10ppmを定量フィーダーによりベント付き2軸押し出し機〔(株)日本製鋼所製TEX30α、シリンダー設定温度260℃〕に供給し、フィルターを通して異物をろ過した後、ダイからストランド状に排出し、水冷、固化させた後回転式カッターでペレット化しポリカーボネート樹脂組成物を得た。その後、該ポリカーボネート樹脂組成物をクリーンオーブンにて120℃で5時間乾燥させた。
該ポリカーボネート樹脂組成物を射出成型機〔住友重工業株式会社製 SE−180DU〕にて樹脂温度280℃、金型温度90℃で射出成型し、直径75mm、厚さ2mmのレンズを成型した。射出成型機の金型には汚染物質等の付着は認められなかった。
得られたレンズの光学特性を測定し、表1にまとめた。このレンズは室温にて3か月保管した後も表面に物質の析出等が認められず、表面の状態に変化は認められなかった。
【0104】
【表1】
【0105】
表1に記載の結果から、本発明に係るレンズは波長400nmおよび波長420nmの紫外・可視光線を充分遮光する一方で全光線透過率が高く、透明性および色相にも優れ、なおかつ耐衝撃性も高いことが確認された。さらに金型汚染が抑制されていることが確認された。また、本発明のレンズは経時後の表面状態に変化がなく保存安定性にも優れていた。
【0106】
この出願は、2017年5月19日に出願された日本出願特願2017−099723号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。