(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918123
(24)【登録日】2021年7月26日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】反応染料組成物及びそれを用いる染色法
(51)【国際特許分類】
C09B 67/22 20060101AFI20210729BHJP
C09B 62/51 20060101ALI20210729BHJP
D06P 1/38 20060101ALI20210729BHJP
D06P 3/60 20060101ALI20210729BHJP
D06P 3/66 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
C09B67/22 A
C09B62/51 C
D06P1/38 Z
D06P3/60 A
D06P3/66 B
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-539401(P2019-539401)
(86)(22)【出願日】2018年8月22日
(86)【国際出願番号】JP2018030922
(87)【国際公開番号】WO2019044603
(87)【国際公開日】20190307
【審査請求日】2020年8月25日
(31)【優先権主張番号】特願2017-168308(P2017-168308)
(32)【優先日】2017年9月1日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-170239(P2017-170239)
(32)【優先日】2017年9月5日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷部 重光
(72)【発明者】
【氏名】徳山 博満
【審査官】
武重 竜男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−082279(JP,A)
【文献】
米国特許第06090164(US,A)
【文献】
特開2000−044830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B1/00−69/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(I)〜(IV)のいずれかを染料成分として含有する反応染料組成物。
(I)遊離酸の形が下記式(1)で示される反応染料及び遊離酸の形が下記式(2)で示される反応染料
からなる赤色用反応染料(R)と、遊離酸の形が下記式(8)で示される反応染料を含む黄色用反応染料(Y)との組み合わせ。
(II)前記赤色用反応染料(R)と、遊離酸の形が下記式(4)で示される反応染料、並びに遊離酸の形が下記式(5)で示される反応染料及び遊離酸の形が下記式(6)で示される反応染料から選択される少なくとも1種の反応染料を含む青色用反応染料(B)との組み合わせ。
(III)前記赤色用反応染料(R)と、遊離酸の形が下記式(5)で示される反応染料及び遊離酸の形が下記式(7)で示される反応染料を含む紺色用反応染料(N)との組み合わせ。
(IV)前記赤色用反応染料(R)と、前記黄色用反応染料(Y)と、前記青色用反応染料(B)又は前記紺色用反応染料(N)との組み合わせ。
【化1】
[式中、Y
1はSO
2CH=CH
2又はSO
2CH
2CH
2Zを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す。]
【化2】
[式中、Y
2、Y
3はそれぞれ独立にSO
2CH=CH
2又はSO
2CH
2CH
2Zを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す。]
【化3】
[式中、Y
9はSO
2CH=CH
2又はSO
2CH
2CH
2Zを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す。]
【化4】
[式中、R
1は水素原子、ハロゲン原子、又は(C1〜C4)アルコキシ基を表し、Y
5はSO
2CH=CH
2又はSO
2CH
2CH
2Zを表し、Zはアルカリで脱離する基を表
す。]
【化5】
[式中、Y
6はSO
2CH=CH
2又はSO
2CH
2CH
2Zを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す。]
【化6】
[式中、R
2は水素原子又は(C1〜C4)アルキル基を表し、Y
7はSO
2CH=CH
2又はSO
2CH
2CH
2Zを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す。]
【化7】
[式中、Y
8はSO
2CH=CH
2又はSO
2CH
2CH
2Zを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す。]
【請求項2】
前記赤色用反応染料(R)中の前記式(1)で示される反応染料の含有率が30質量%〜70質量%であり、前記式(2)で示される反応染料の含有率が30質量%〜70質量%である請求項1に記載の反応染料組成物。
【請求項3】
前記赤色用反応染料(R)が更に、遊離酸の形が下記式(3)で示される反応染料を含む請求項1に記載の反応染料組成物。
【化8】
[式中、Y
4はSO
2CH=CH
2又はSO
2CH
2CH
2Zを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す。]
【請求項4】
前記赤色用反応染料(R)中の前記式(1)で示される反応染料の含有率が20質量%〜40質量%であり、前記式(2)で示される反応染料の含有率が30質量%〜50質量%であり、前記式(3)で示される反応染料の含有率が10質量%〜30質量%である請求項3に記載の反応染料組成物。
【請求項5】
前記青色用反応染料(B)中の前記式(4)で示される反応染料の含有率が10質量%〜90質量%であり、前記式(5)で示される反応染料及び前記式(6)で示される反応染料から選択される少なくとも1種の反応染料の合計の含有率が10質量%〜90質量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の反応染料組成物。
【請求項6】
前記青色用反応染料(B)中の前記式(4)で示される反応染料の含有率が10質量%〜30質量%であり、前記式(5)で示される反応染料及び前記式(6)で示される反応染料から選択される少なくとも1種の反応染料の合計の含有率が70質量%〜90質量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の反応染料組成物。
【請求項7】
前記青色用反応染料(B)中の前記式(4)で示される反応染料の含有率が10質量%〜30質量%であり、前記式(5)で示される反応染料の含有率が50質量%〜60質量% であり、前記式(6)で示される反応染料の含有率が20質量%〜30質量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の反応染料組成物。
【請求項8】
前記紺色用反応染料(N)中の前記式(5)で示される反応染料の含有率が5質量%〜95質量%であり、前記式(7)で示される反応染料の含有率が5質量%〜95質量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の反応染料組成物。
【請求項9】
前記紺色用反応染料(N)中の前記式(5)で示される反応染料の含有率が80質量%〜95質量%であり、前記式(7)で示される反応染料の含有率が5質量%〜20質量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の反応染料組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の反応染料組成物を用いてセルロース繊維又はセルロース繊維含有繊維を染色することを含む染色方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維又はセルロース繊維含有繊維の染色に適する反応染料組成物、及びそれを用いる染色法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース繊維の染色においては、黄色の反応染料と、赤色の反応染料と、青色又は紺色の反応染料とを三原色用染料として用い、それらを種々の割合で配合して染色する方法が知られている。
【0003】
三原色用染料としては、各染料のビルドアップ性及び均染性が優れていること、三原色の染着速度がほぼ等しく温度依存性が揃っていること、発色性及び諸堅牢度が優れること等が必要とされている。また、近年の省エネルギー化を背景に、現場では低浴比染色機による染色が主体であり、実験室スケールでの染色浴比と工場スケールでの染色浴比とを同じにすることが困難な状況である。更に、世界的な繊維製品の安全性に係るアミン物質規制に該当しない染料が強く望まれている。
【0004】
しかし、従来の三原色用染料として使用する各染料は、セルロース繊維に対する親和性及び反応性が異なることで染着挙動が異なり、更に染色浴比の変化に伴う色違いの問題も発生し、再現性不良が起こっている。そのため、生産性向上及び環境対応の面からも、再現性に優れる三原色用染料が強く望まれている。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば下記の特許文献1〜9では様々な検討がなされているが、未だ満足な結果は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3168624号公報
【特許文献2】特開2000−44830号公報
【特許文献3】特公平1−24826号公報
【特許文献4】米国特許第6090164号明細書
【特許文献5】特公平1−12787号公報
【特許文献6】欧州特許第0022575号明細書
【特許文献7】特開2004−269863号公報
【特許文献8】特開昭56−118976号公報
【特許文献9】特開昭56−15481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、セルロース繊維又はセルロース繊維含有繊維を再現性よく、均染性もよく、高堅牢度に染色する反応染料組成物、及びそれを用いる染色法の開発を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的のために鋭意研究を重ねた結果、特定の反応染料組成物及びそれを用いる染色法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の1)〜10)に関する。
1)下記(I)〜(IV)のいずれかを染料成分として含有する反応染料組成物。
(I)遊離酸の形が下記式(1)で示される反応染料及び遊離酸の形が下記式(2)で示される反応染料を含む赤色用反応染料(R)と、遊離酸の形が下記式(8)で示される反応染料を含む黄色用反応染料(Y)との組み合わせ。
(II)前記赤色用反応染料(R)と、遊離酸の形が下記式(4)で示される反応染料、並びに遊離酸の形が下記式(5)で示される反応染料及び遊離酸の形が下記式(6)で示される反応染料から選択される少なくとも1種の反応染料を含む青色用反応染料(B)との組み合わせ。
(III)前記赤色用反応染料(R)と、遊離酸の形が下記式(5)で示される反応染料及び遊離酸の形が下記式(7)で示される反応染料を含む紺色用反応染料(N)との組み合わせ。
(IV)前記赤色用反応染料(R)と、前記黄色用反応染料(Y)と、前記青色用反応染料(B)又は前記紺色用反応染料(N)との組み合わせ。
【化1】
[式中、Y
1はSO
2CH=CH
2又はSO
2CH
2CH
2Zを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す。]
【化2】
[式中、Y
2、Y
3はそれぞれ独立にSO
2CH=CH
2又はSO
2CH
2CH
2Zを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す。]
【化3】
[式中、Y
9はSO
2CH=CH
2又はSO
2CH
2CH
2Zを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す。]
【化4】
[式中、R
1は水素原子、ハロゲン原子、又は(C1〜C4)アルコキシ基を表し、Y
5はSO
2CH=CH
2又はSO
2CH
2CH
2Zを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す。]
【化5】
[式中、Y
6はSO
2CH=CH
2又はSO
2CH
2CH
2Zを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す。]
【化6】
[式中、R
2は水素原子又は(C1〜C4)アルキル基を表し、Y
7はSO
2CH=CH
2又はSO
2CH
2CH
2Zを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す。]
【化7】
[式中、Y
8はSO
2CH=CH
2又はSO
2CH
2CH
2Zを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す。]
【0010】
2)前記赤色用反応染料(R)中の前記式(1)で示される反応染料の含有率が30質量%〜70質量%であり、前記式(2)で示される反応染料の含有率が30質量%〜70質量%である前記1)に記載の反応染料組成物。
3)前記赤色用反応染料(R)が更に、遊離酸の形が下記式(3)で示される反応染料を含む前記1)に記載の反応染料組成物。
【化8】
[式中、Y
4はSO
2CH=CH
2又はSO
2CH
2CH
2Zを表し、Zはアルカリで脱離する基を表す。]
【0011】
4)前記赤色用反応染料(R)中の前記式(1)で示される反応染料の含有率が20質量%〜40質量%であり、前記式(2)で示される反応染料の含有率が30質量%〜50質量%であり、前記式(3)で示される反応染料の含有率が10質量%〜30質量%である前記3)に記載の反応染料組成物。
5)前記青色用反応染料(B)中の前記式(4)で示される反応染料の含有率が10質量%〜90質量%であり、前記式(5)で示される反応染料及び前記式(6)で示される反応染料から選択される少なくとも1種の反応染料の合計の含有率が10質量%〜90質量%である前記1)〜4)のいずれか一項に記載の反応染料組成物。
6)前記青色用反応染料(B)中の前記式(4)で示される反応染料の含有率が10質量%〜30質量%であり、前記式(5)で示される反応染料及び前記式(6)で示される反応染料から選択される少なくとも1種の反応染料の合計の含有率が70質量%〜90質量%である前記1)〜4)のいずれか一項に記載の反応染料組成物。
7)前記青色用反応染料(B)中の前記式(4)で示される反応染料の含有率が10質量%〜30質量%であり、前記式(5)で示される反応染料の含有率が50質量%〜60質量%であり、前記式(6)で示される反応染料の含有率が20質量%〜30質量%である前記1)〜4)のいずれか一項に記載の反応染料組成物。
8)前記紺色用反応染料(N)中の前記式(5)で示される反応染料の含有率が5質量%〜95質量%であり、前記式(7)で示される反応染料の含有率が5質量%〜95質量%である前記1)〜4)のいずれか一項に記載の反応染料組成物。
9)前記紺色用反応染料(N)中の前記式(5)で示される反応染料の含有率が80質量%〜95質量%であり、前記式(7)で示される反応染料の含有率が5質量%〜20質量%である前記1)〜4)のいずれか一項に記載の反応染料組成物。
10)前記1)〜9)のいずれか一項に記載の反応染料組成物を用いてセルロース繊維又はセルロース繊維含有繊維を染色することを含む染色方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の反応染料組成物及びそれを用いる染色法により、染色浴比の変化による色相の変化が無く、温度依存性が良好で、染着性が揃っていることでセルロース繊維を再現性よく且つ高堅牢、高発色に染色でき、更に近年の繊維製品の安全性に係るアミン物質規制に非該当の製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の反応染料組成物は、下記(I)〜(IV)のいずれかを染料成分として含有する。
(I)遊離酸の形が上記式(1)で示される反応染料及び遊離酸の形が上記式(2)で示される反応染料を含む赤色用反応染料(R)と、遊離酸の形が上記式(8)で示される反応染料を含む黄色用反応染料(Y)との組み合わせ。
(II)上記赤色用反応染料(R)と、遊離酸の形が上記式(4)で示される反応染料、並びに遊離酸の形が上記式(5)で示される反応染料及び遊離酸の形が上記式(6)で示される反応染料から選択される少なくとも1種の反応染料を含む青色用反応染料(B)との組み合わせ。
(III)上記赤色用反応染料(R)と、遊離酸の形が上記式(5)で示される反応染料及び遊離酸の形が上記式(7)で示される反応染料を含む紺色用反応染料(N)との組み合わせ。
(IV)上記赤色用反応染料(R)と、上記黄色用反応染料(Y)と、上記青色用反応染料(B)又は上記紺色用反応染料(N)との組み合わせ。
【0014】
赤色用反応染料(R)に含まれる上記式(1)で示される反応染料は特許文献6等に、上記式(2)で示される反応染料は特許文献2、4等に記載されており、自体公知の方法で製造することもでき、商業的に入手することもできる。上記式(1)で示される反応染料としては、例えば、C.I.Reactive Red 195、C.I.Reactive Red 241等が挙げられる。
【0015】
赤色用反応染料(R)中における各反応染料の割合は特に制限されないが、赤色用反応染料(R)中、上記式(1)で示される反応染料の含有率が30質量%〜70質量%であり、上記式(2)で示される反応染料の含有率が30質量%〜70質量%であることが好ましい。
【0016】
赤色用反応染料(R)は更に、遊離酸の形が上記式(3)で示される反応染料を含むことが好ましい。上記式(3)で示される反応染料は特許文献8等に記載されており、自体公知の方法で製造することもでき、商業的に入手することもできる。
【0017】
赤色用反応染料(R)が上記式(3)で示される反応染料を含む場合、赤色用反応染料(R)中、上記式(1)で示される反応染料の含有率が20質量%〜40質量%であり、上記式(2)で示される反応染料の含有率が30質量%〜50質量%であり、上記式(3)で示される反応染料の含有率が10質量%〜30質量%であることが好ましい。
【0018】
赤色用反応染料(R)は、上記式(1)〜式(3)で示される反応染料以外に他の反応染料を含んでいてもよい。ただし、他の反応染料の含有率は、赤色用反応染料(R)中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることが更に好ましい。すなわち、赤色用反応染料(R)は、上記式(1)〜式(3)で示される反応染料以外の反応染料を含まないことが好ましい。
【0019】
黄色用反応染料(Y)に含まれる上記式(8)で示される反応染料は特許文献9等に記載されており、自体公知の方法で製造することもでき、商業的に入手することもできる。上記式(8)で示される反応染料としては、例えば、C.I.Reactive Yellow 145等が挙げられる。
【0020】
黄色用反応染料(Y)は、上記式(8)で示される反応染料以外に他の反応染料を含んでいてもよい。ただし、他の反応染料の含有率は、黄色用反応染料(Y)中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることが更に好ましい。すなわち、黄色用反応染料(Y)は、上記式(8)で示される反応染料以外の反応染料を含まないことが好ましい。
【0021】
青色用反応染料(B)に含まれる上記式(4)で示される反応染料は特許文献3等に、上記式(5)で示される反応染料は特許文献5等に、上記式(6)で示される反応染料は特公平3−10669号公報等に記載されており、自体公知の方法で製造することもでき、商業的に入手することもできる。上記式(4)で示される反応染料としては、例えば、C.I.Reactive Blue 220等が挙げられ、上記式(6)で示される反応染料としては、例えば、C.I.Reactive Blue 221等が挙げられる。
【0022】
青色用反応染料(B)中における各反応染料の割合は特に制限されないが、青色用反応染料(B)中、上記式(4)で示される反応染料の含有率が10質量%〜90質量%であり、上記式(5)で示される反応染料及び上記式(6)で示される反応染料から選択される少なくとも1種の反応染料の合計の含有率が10質量%〜90質量%であることが好ましい。より好ましくは、青色用反応染料(B)中、上記式(4)で示される反応染料の含有率が10質量%〜30質量%であり、上記式(5)で示される反応染料及び上記式(6)で示される反応染料から選択される少なくとも1種の反応染料の合計の含有率が70質量%〜90質量%である。更に好ましくは、上記式(4)で示される反応染料の含有率が10質量%〜30質量%であり、上記式(5)で示される反応染料の含有率が50質量%〜60質量%であり、上記式(6)で示される反応染料の含有率が20質量%〜30質量%である。
【0023】
青色用反応染料(B)は、上記式(4)〜式(6)で示される反応染料以外に他の反応染料を含んでいてもよい。ただし、他の反応染料の含有率は、青色用反応染料(B)中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることが更に好ましい。すなわち、青色用反応染料(B)は、上記式(4)〜式(6)で示される反応染料以外の反応染料を含まないことが好ましい。
【0024】
紺色用反応染料(N)に含まれる上記式(5)で示される反応染料は特許文献5等に記載されており、上記式(7)で示される反応染料はC.I.Reactive Black 5として知られる化合物であり、自体公知の方法で製造することもでき、商業的に入手することもできる。
【0025】
紺色用反応染料(N)中における各反応染料の割合は特に制限されないが、紺色用反応染料(N)中、上記式(5)で示される反応染料の含有率が5質量%〜95質量%であり、上記式(7)で示される反応染料の含有率が5質量%〜95質量%であることが好ましい。より好ましくは、紺色用反応染料(N)中、上記式(5)で示される反応染料の含有率が80質量%〜95質量%であり、上記式(7)で示される反応染料の含有率が5質量%〜20質量%である。
【0026】
紺色用反応染料(N)は、上記式(5)、式(7)で示される反応染料以外に他の反応染料を含んでいてもよい。ただし、他の反応染料の含有率は、紺色用反応染料(N)中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることが更に好ましい。すなわち、紺色用反応染料(N)は、上記式(5)、式(7)で示される反応染料以外の反応染料を含まないことが好ましい。
【0027】
上記式(1)〜式(8)で示される反応染料において、Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9はSO
2CH=CH
2又はSO
2CH
2CH
2Zであり、Zはアルカリで脱離する基である。Zがアルカリで脱離するとSO
2CH=CH
2となる。Zとしては脱離基として知られる各種の基が使用可能であるが、例えば、OSO
3H等のスルホン酸基が好ましい。
【0028】
上記式(4)で示される反応染料において、R
1は水素原子、ハロゲン原子、又は(C1〜C4)アルコキシ基を表す。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。(C1〜C4)アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。R
1としては、水素原子が好ましい。
【0029】
上記式(6)で示される反応染料において、R
2は水素原子又は(C1〜C4)アルキル基を表す。(C1〜C4)アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。R
2としては、エチル基が好ましい。
【0030】
Y
1、Y
2、Y
3、Y
4、Y
5、Y
6、Y
7、Y
8、Y
9、R
1の置換位置は、置換可能な位置であれば特に限定されない。
【0031】
上記式(1)〜(8)で示される反応染料は遊離酸の形で示しているが、塩であってもよく、その対カチオンは特に限定されない。中でも、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩、及びリチウム塩がより好ましい。
【0032】
本発明の反応染料組成物において、各反応染料の配合方法は特に限定されない。例えば、それぞれの反応染料を別々に製造し、その後に配合する方法;製造時に生成した各反応染料を含有する反応液を混合し、その後に乾燥して組成物とする方法;染色浴にそれぞれの反応染料を溶解し、染色浴中で各組成物と同じ組成とする方法;等を採ることができる。その際に、各反応染料の混合割合は、所望の色調に応じて適宜行われる。また、必要に応じて、本発明の反応染料組成物中には公知の添加剤、例えば、濃度調整剤、分散剤、均染剤、沈殿防止剤、金属イオン封鎖剤、還元防止剤等を含有させてもよい。
【0033】
染浴、パディング浴、捺染糊に上記の各反応染料及び必要に応じて上記の添加剤等を加え、染浴等を調製して染色する場合に、各染料、添加剤等を溶解する順序は任意の順序でよい。
【0034】
本発明の反応染料組成物を用いたセルロース繊維又はセルロース繊維含有繊維の染色方法も本発明に含まれる。染色に際し、反応染料組成物の使用量は通常、繊維に対して0.0005質量%〜15質量%程度である。
【0035】
本発明の反応染料組成物は、セルロース繊維及びそれを含有する繊維の染色に有用である。対象となる繊維としては、例えば、木綿、麻、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル等のセルロース繊維、又は、これら同士の混合繊維が挙げられる。更には、これらの繊維又は混合繊維と他の繊維、例えば、ポリエステル繊維、アセテート繊維、ポリアクリルニトリル繊維、羊毛、絹、ナイロン等のポリアミド繊維等との混紡、又は交織品等が挙げられる。
【0036】
反応染料組成物を用いる染色は、例えば、下記のような方法に従って行うことができるが、この方法に限定されるものではない。例えば、木綿等のセルロース繊維の染色においては、所望の色相及び濃度に応じた本発明の反応染料組成物を染浴に加え、無機中性塩(無水芒硝、食塩等)と、酸結合剤(炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、苛性ソーダ、第三燐酸ナトリウム等)とをそれぞれ単独に、又は併用する。無機中性塩や酸結合剤の使用量については特に制限はない。無機中性塩や酸結合剤の染浴への投入は一度に行ってもよいし、分割して投入してもよい。染色終了後、水洗及び湯染の後、常法により、市販のソーピング剤を含むソーピング浴にて洗浄を行い、染色を終了する。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
上記式(1)〜(8)の各染料について、対応する以下の化合物(A)〜(H)を反応染料として用いた。
なお、特別な記載がない限り、本文中の「部」は質量部を表す。また、C.I.Reactiveはカラーインデックスジェネリックネームを意味する。
【0038】
【化9】
【0039】
【化10】
【0040】
【化11】
【0041】
【化12】
【0042】
【化13】
【0043】
【化14】
【0044】
【化15】
【0045】
【化16】
【0046】
[実施例1]
本発明配合例1 Grey
配合組成
赤色用反応染料
化合物(A) 0.15部
化合物(B) 0.19部
青色用反応染料
化合物(D) 0.15部
化合物(E) 0.38部
化合物(F) 0.20部
黄色用反応染料
化合物(H) 0.50部
【0047】
[実施例2]
本発明配合例2 Grey
配合組成
赤色用反応染料
化合物(A) 0.12部
化合物(B) 0.18部
化合物(C) 0.06部
青色用反応染料
化合物(D) 0.15部
化合物(E) 0.38部
化合物(F) 0.20部
黄色用反応染料
化合物(H) 0.50部
【0048】
[実施例3]
本発明配合例3 Grey
配合組成
赤色用反応染料
化合物(A) 0.14部
化合物(B) 0.21部
青色用反応染料
化合物(D) 0.18部
化合物(E) 0.50部
黄色用反応染料
化合物(H) 0.47部
【0049】
[実施例4]
本発明配合例4 Grey
配合組成
赤色用反応染料
化合物(A) 0.11部
化合物(B) 0.26部
化合物(C) 0.08部
青色用反応染料
化合物(D) 0.26部
化合物(F) 0.71部
黄色用反応染料
化合物(H) 0.50部
【0050】
[実施例5]
本発明配合例5 Grey
配合組成
赤色用反応染料
化合物(A) 0.11部
化合物(B) 0.20部
紺色用反応染料
化合物(E) 0.93部
化合物(G) 0.11部
黄色用反応染料
化合物(H) 0.45部
【0051】
[実施例6]
本発明配合例6 Grey
配合組成
赤色用反応染料
化合物(A) 0.09部
化合物(B) 0.21部
化合物(C) 0.06部
紺色用反応染料
化合物(E) 0.93部
化合物(G) 0.11部
黄色用反応染料
化合物(H) 0.47部
【0052】
[比較例1]
比較配合例1 Grey
配合組成
赤色用反応染料
C.I.Reactive Red 195 0.35部
青色用反応染料
C.I.Reactive Blue 220 0.90部
黄色用反応染料
C.I.Reactive Yellow 145 0.50部
【0053】
[比較例2]
比較配合例2 Grey
配合組成
赤色用反応染料
C.I.Reactive Red 195 0.30部
青色用反応染料
C.I.Reactive Blue 5 0.65部
黄色用反応染料
C.I.Reactive Yellow 145 0.40部
【0054】
[比較例3]
比較配合例3 Grey
配合組成
赤色用反応染料
化合物(B) 0.25部
青色用反応染料
C.I.Reactive Blue 220 0.90部
黄色用反応染料
C.I.Reactive Yellow 145 0.45部
【0055】
[比較例4]
比較配合例4 Grey
配合組成
赤色用反応染料
化合物(C) 0.40部
青色用反応染料
C.I.Reactive Blue 221 0.90部
黄色用反応染料
C.I.Reactive Yellow 145 0.40部
【0056】
[比較例5]
比較配合例5 Grey
配合組成
赤色用反応染料
化合物(B) 0.28部
青色用反応染料
化合物(E) 0.80部
黄色用反応染料
C.I.Reactive Yellow 145 0.40部
【0057】
[浴比依存性試験]
(1)浴比1:10での染色
各配合例の染料及び無水硫酸ナトリウム10部に水を加えて全量500部の染浴を調製した。この染浴に木綿メリヤス50部を投入し、60℃で15分間処理した後、炭酸ナトリウム10部を投入し、同温度で60分間染色した。次いで、水洗及び湯洗の後、市販のソーピング剤(スコアロールC−1200、北広ケミカル(株)、1g/L)を含む水溶液1000部中で100℃にて15分間のソーピングをし、次いで水洗及び乾燥して染色物を得た。
【0058】
(2)浴比1:30での染色
各配合例の染料及び無水硫酸ナトリウム30部に水を加えて全量1500部の染浴を調製した。この染浴に木綿メリヤス50部を投入し、60℃で15分間処理した後、炭酸ナトリウム30部を投入し、同温度で60分間染色した。次いで、水洗及び湯洗の後、上記のソーピング剤を含む水溶液1000部中で100℃にて15分間のソーピングをし、次いで水洗及び乾燥して染色物を得た。
【0059】
(3)浴比1:60での染色
各配合例の染料及び無水硫酸ナトリウム60部に水を加えて全量3000部の染浴を調製した。この染浴に木綿メリヤス50部を投入し、60℃で15分間処理した後、炭酸ナトリウム60部を投入し、同温度で60分間染色した。次いで、水洗及び湯洗の後、上記のソーピング剤を含む水溶液1000部中で100℃にて15分間のソーピングをし、次いで水洗及び乾燥して染色物を得た。
【0060】
(判定方法)
浴比1:10で得られた染色物を基準に、それぞれの条件で得られた染色物の色相差ΔEa*b*を、測色機カラーアイCE7100(マクベス社製)、D65光源下、C.I.E色差式を使用して求めた。結果を表1に示す。なお、色相差ΔEa*b*の値は0に近いほど優れる。
【0061】
【表1】
【0062】
[染着性(率)試験]
各配合例の染料及び無水硫酸ナトリウム10部に水を加えて全量480部の染浴を調製した。この染浴に木綿メリヤス50部を投入し、60℃で15分間処理した後、炭酸ナトリウム0.5部を投入して同温度で10分間処理し、次いで炭酸ナトリウム3部を投入して同温度で10分間処理し、次いで炭酸ナトリウム6.5部を投入して同温度で10分間処理し、更に40分間染色した。次いで、水洗及び湯洗の後、市販のソーピング剤(スコアロールC−1200、北広ケミカル(株)、1g/L)を含む水溶液1000部中で100℃にて15分間のソーピングをし、次いで水洗及び乾燥して染色物を得た。
【0063】
70分間染色した染色物を基準の染着率100%として、それぞれの処理時間で得られた染色物の染着率を測色機カラーアイCE7100(マクベス社製)、D65光源下で測色し、各成分(黄色、赤色、青色、紺色)の反射率から染着率(%)を算出した。結果を表2及び表3に示す。なお、各処理時間における各成分の染着率が近似しているほど優れる。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
表1〜表3から分かるように、実施例1〜6で得られた染色物の浴比依存性試験及び染着性試験の結果は、いずれの反応染料の組み合わせにおいても浴比が大きく変動した場合でも色相変化が極めて小さく、また、各処理時間における染着率が近似しており、染色再現性が極めて優れていた。