(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、更なる高耐圧化を図るため、接合終端拡張領域にガードリング領域を設けた終端構造(以下、「JTE+GR構造」と呼ぶ。)も考えられる。
図7は、JTE+GR構造を備える半導体装置500の例である。
図7は、JTE+GR構造を備える半導体装置500の断面図である。JTE+GR構造は、n型の半導体基板510aに形成されたn型のドリフト層510bに、p型不純物(例えば、アルミニウム(Al))をイオン注入して形成される。具体的には、まず、ドリフト層510bの表面に電極が形成される接合領域515をドリフト層510bの表面からの平面視において囲む所定の領域に、低濃度のp型不純物をイオン注入して、接合終端拡張領域513を形成する。接合終端拡張領域513では、イオン注入後、不純物濃度がドリフト層510bの表面から所定の深さまで略一定となる、ボックス状の濃度分布になるように、イオン注入を行う。次いで、接合終端拡張領域513内に、接合領域515をドリフト層510bの表面からの平面視において囲む複数のリング状の領域に、高濃度のp型不純物をイオン注入して、ガードリング領域514を形成する。これにより、JTE+GR構造が形成される。
【0006】
このようなJTE+GR構造を備える半導体装置の耐圧は不純物のドーズ量で決まるため、ドーズ量の制御による比較的容易な設計や製造方法で、所望の耐圧を有する半導体装置を得ることができる。
【0007】
上記のJTE+GR構造の形成方法を含む半導体装置の製造方法では、イオン注入後に行われる、活性化アニール工程や熱酸化工程を経ると、接合終端拡張領域の表面のp型不純物が、接合終端拡張領域の外方に拡散することがある(以下、「外方拡散」と称する。)。
【0008】
外方拡散が生じると、実際のp型不純物数は、設計したドーズ量よりも減ってしまう。その結果、実際に製造された半導体装置で、設計どおりの耐圧が得られないという問題が生じる。この問題は、特に、活性化アニール工程や熱酸化工程が、1600℃以上で行われる場合に顕著である。
【0009】
更に、
図8に示すように、外方拡散によって、接合終端拡張領域513の表面が、n型化してしまう。
図8における符号518は、
図7に示した半導体装置500において、外方拡散によって、接合終端拡張領域513の表面がn型化した領域を示す。
【0010】
このため、半導体装置500に電圧を印加した時には、ガードリング領域514に挟まれた表面領域(n型化した領域518)に、キャリアが滞留する。その結果、半導体装置の耐圧が不安定化するという問題が生じる。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、設計どおりの所望の耐圧を安定して得ることができる半導体装置を提供するための、半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る半導体装置は、炭化珪素からなる第一導電型のドリフト層と、前記ドリフト層の一の主面に形成された接合領域と、前記ドリフト層の、前記一の主面を平面視したとき前記接合領域の外側に形成された、前記第一導電型とは反対の第二導電型の不純物を含む接合終端拡張領域と、前記ドリフト層の、前記一の主面を平面視したとき前記接合終端拡張領域と重なる位置に形成された、前記接合終端拡張領域よりも高濃度の前記第二導電型の不純物を含むガードリング領域と、を備える半導体装置であって、前記接合終端拡張領域において、前記第二導電型の不純物の前記一の主面からの深さ方向の濃度は、前記一の主面から第一の深さに達するまで上昇し、前記一の主面における前記第二導電型の不純物の濃度は、前記第一の深さにおける前記第二導電型の不純物の濃度の10分の1以下であり、かつ、前記ドリフト層の前記第一導電型の不純物の濃度よりも高く、前記第二導電型の不純物の前記一の主面からの深さ方向の濃度分布が、2つのピークを有する。
【0013】
また、本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法は、炭化珪素からなる第一導電型のドリフト層を備える半導体基体を準備する、半導体基体準備工程と、前記ドリフト層の一の主面に接合領域を形成する、接合領域形成工程と、前記ドリフト層に、前記一の主面の側から、前記第一導電型とは反対の第二導電型の不純物を導入して、前記一の主面を平面視したとき前記接合領域の外側に接合終端拡張領域を形成する、接合終端拡張領域形成工程と、前記ドリフト層に、前記一の主面の側から、前記接合終端拡張領域よりも高濃度の前記第二導電型の不純物を導入して、前記一の主面を平面視したとき前記接合終端拡張領域の一部と重なる位置にガードリング領域を形成する、ガードリング領域形成工程と、を含む半導体装置の製造方法であって、前記接合終端拡張領域形成工程において、前記第二導電型の不純物の前記一の主面からの深さ方向の濃度が、前記一の主面から第一の深さに達するまで上昇し、前記一の主面における前記第二導電型の不純物の濃度が、前記第一の深さにおける前記第二導電型の不純物の濃度の10分の1以下であり、かつ、前記ドリフト層の前記第一導電型の不純物の濃度よりも高くなり、前記第二導電型の不純物の前記一の主面からの深さ方向の濃度分布が、2つのピークを有するように、前記接合終端拡張領域を形成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の半導体装置及び半導体装置の製造方法によれば、接合終端拡張領域のp型不純物の濃度が、ボックス状の分布ではなく、表面からある深さに達するまで上昇し、表面のp型不純物の濃度がその深さでの濃度の10分の1以下である。このため、外方拡散によるp型不純物数の減少を抑制できる。その結果、実際に製造された半導体装置で、設計どおりの所望の耐圧を得ることができる。
【0015】
また、本発明の半導体装置及び半導体装置の製造方法によれば、表面のp型不純物の濃度がドリフト層のn型不純物の濃度よりも高い。このため、外方拡散によって表面がn型化することに起因する、電圧印加時のキャリア滞留を抑制できる。その結果、所望の耐圧を、安定して得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第一の実施形態]
以下、
図1から
図6を参照して、本発明の第一の実施形態について説明する。
【0018】
なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0019】
(半導体装置の構成)
以下、
図1,2を参照して、本実施形態に係る半導体装置の構成について説明する。
図1は、
図2におけるA−A断面を示す。本実施形態に係る半導体装置は、ショットキーダイオードである。
【0020】
図2に示すように、本実施形態に係る半導体装置は、半導体基板上に縦横に互いに隣接して配置されるように複数形成された後、半導体基板を縦横方向に切断ラインLで切断することにより得られる。
【0021】
図1に示すように、半導体装置1は、半導体基体10と、第一絶縁膜11と、p型領域12と、接合終端拡張領域13と、ガードリング領域14と、第一電極(接合領域)15と、第二絶縁膜16と、第二電極17と、を含む。半導体基体10は、半導体基板10aと、ドリフト層10bと、からなる。
【0022】
半導体基板10aは、炭化珪素(SiC)からなり、n型(第一導電型)の不純物が導入されている。半導体基板10aは、n
+型の炭化珪素単結晶基板である。半導体基板10aは、例えば、(0001)面のn型4H−SiC基板である。
【0023】
ドリフト層10bは、炭化珪素からなり、半導体基板10aの一方の主面に形成されている。ドリフト層10bには、半導体基板10aよりも低濃度にn型不純物が導入されている。
【0024】
第二電極17は、半導体基板10aの他方の主面に形成されている。ドリフト層10bと第二電極17とは、半導体基板10aを介して、オーミックに接続されている。第二電極17は、例えば、窒化チタンで形成されてよい。
【0025】
p型領域12は、炭化珪素からなり、ドリフト層10bの半導体基板10aとは反対側の、一の主面F1に形成されている。p型領域12は、ドリフト層10b一の主面F1側から見た平面視(以下、単に「平面視」ということがある。)において、環状の領域である。p型領域12は、平面視において、後述する第一電極(接合領域)15の縁部と重なるように形成されている。p型領域12には、p型(第二導電型)の不純物が導入されている。
【0026】
接合終端拡張領域13は、炭化珪素からなり、ドリフト層10bの一の主面F1に形成されている。接合終端拡張領域13は、平面視において、p型領域12に隣接して外側に形成される、環状の領域である。接合終端拡張領域13には、p型領域12よりも低濃度のp型の不純物が導入されている。
【0027】
ガードリング領域14は、炭化珪素からなり、ドリフト層10bの一の主面F1に形成されている。ガードリング領域14は、平面視において、接合終端拡張領域13の内側において、略同心円状に形成される複数の環状の領域である。すなわち、ガードリング領域14は、平面視において、接合終端拡張領域13と重なる位置に形成されている。ガードリング領域14は、例えば接合終端拡張領域13と重なる位置に加え、接合終端拡張領域13の径方向において接合終端拡張領域13の外側の位置(接合終端拡張領域13と重ならない位置)にも形成されてよい。ガードリング領域14には、接合終端拡張領域13よりも高濃度のp型の不純物が導入されている。
【0028】
第一絶縁膜11は、絶縁体からなり、ドリフト層10bの一の主面F1に形成されている。第一絶縁膜11は、接合終端拡張領域13とガードリング領域14とを覆う。第一絶縁膜11は、開口部を有する。開口部は、平面視において、p型領域12で囲まれたドリフト層10bのn型の領域が露出するように形成されている。
【0029】
第一電極(接合領域)15は、第一絶縁膜11の開口部において露出するドリフト層10bのn型の領域に接触するように形成されている。第一電極15は、その縁部が、第一絶縁膜11の縁を覆うように形成されている。第一電極15の縁部は、平面視において、p型領域12に重なるように形成されている。第一電極15は、例えば、チタンで形成されてよい。
【0030】
第二絶縁膜16は、絶縁体からなる。第二絶縁膜16は、第一電極15の中央部が露出するように、第一絶縁膜11及び第一電極15の縁部に積層されて形成されている。第二絶縁膜16は、平面視において、p型領域12と、ガードリング領域14を包含する接合終端拡張領域13と、を覆うように形成されている。
【0031】
接合終端拡張領域13における、p型不純物の濃度(以下、単に「不純物濃度」ということがある。)は、一の主面F1からの深さ方向zにおいて、次に述べるような分布を示す。不純物濃度は、一の主面F1から第一の深さ13bに達するまで上昇する。第一の深さ13bを越えてより深くなると、不純物濃度は一旦減少した後、第一の深さ13bよりも深い第二の深さ13aに達するまで増加する。第二の深さ13aを越えてより深くなると、不純物濃度は減少する。このように、一の主面F1からの深さ方向zにおける不純物濃度の分布は、第一の深さ13b及び第二の深さ13aにおいて、2つのピークを有している。第一の深さ13b及び第二の深さ13aにおける不純物濃度の差は、小さいことが好ましい。この場合、接合終端拡張領域13における不純物濃度の分布を、ボックス状の不純物濃度分布に近づけることができる。
【0032】
一の主面F1における不純物濃度は、第一の深さ13bにおける不純物濃度の10分の1以下である。一の主面F1における不純物濃度は、ドリフト層10bのn型不純物の濃度よりも高い。
2つのピークを有する不純物濃度分布を形成することにより、ボックス状の不純物濃度分布を形成する場合よりもイオン注入の回数が減少するため、半導体装置の製造コストを削減できる。
【0033】
炭化珪素は、比較的硬性の高い半導体である。このため、炭化珪素で形成された半導体基体10、とりわけドリフト層10bの内部(バルクの領域)においては、p型不純物は拡散しづらい。このため、p型不純物がドリフト層10bに導入された後、ドリフト層10bを加熱したとしても、不純物濃度はほぼ減少せず、概ね維持されると考えられる。
【0034】
他方、ドリフト層10bの表面では、内部(バルクの領域)に比べると、ドリフト層10bを構成する原子の隣接原子数が少なくなる。このため、ドリフト層10bの表面付近は、内部(バルクの領域)に比べると、硬性が低くなっていると考えられる。このため、表面付近に導入されたp型不純物は、内部(バルクの領域)よりも拡散しやすいと考えられる。したがって、p型不純物導入時に、不純物濃度が、ドリフト層10bの表面から所定の深さまで略一定となる、ボックス状の分布をとるようにすると、その後の工程でドリフト層10bが加熱されたとき、表面付近では内部(バルクの領域)に比べてより多くの割合の不純物が拡散し、接合終端拡張領域13から外側に移動してしまう(すなわち、外方拡散が起きる)ものと考えられる。
【0035】
本実施形態に係る半導体装置では、接合終端拡張領域13において、一の主面F1から第一の深さ13bに至るまで、一の主面F1から深くなるにしたがって、不純物濃度が高くなる。このため、不純物導入後、ドリフト層10bが加熱される間、一の主面F1(表面)付近では内部(バルクの領域)に比べてより多くの割合の不純物が拡散したとしても、加熱前に一の主面F1(表面)付近に導入されたp型不純物の量は、より深い位置である第一の深さ13bに導入されたp型不純物の量に比べて低いため、外方拡散によるp型不純物数の減少を抑制できる。
【0036】
特に、本実施形態に係る半導体装置において、発明者らは、一の主面F1における不純物濃度を、第一の深さ13bにおける不純物濃度の10分の1以下とすることで、製造時の外方拡散によるp型不純物数の減少を、有意に抑制できることを見出した。これにより、実際に製造された半導体装置で、設計どおりの所望の耐圧を得ることができる。
【0037】
また、本実施形態に係る半導体装置では、接合終端拡張領域13において、一の主面F1における不純物濃度が、ドリフト層10bにおける不純物濃度よりも高い。このため、外方拡散によってドリフト層10bの表面領域がn型化することに起因する、電圧印加時のキャリア滞留を抑制できる。その結果、所望の耐圧を、安定して得ることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る半導体装置では、一の主面F1からの深さ方向の不純物濃度の分布が、第一の深さ13b及び第二の深さ13aにおいて、2つのピークを有する。このため、第一の深さ13b及び第二の深さ13aにおける不純物濃度の差を小さくすることで、接合終端拡張領域13における不純物濃度の分布を、ボックス状の不純物濃度分布に近づけることができる。その結果、上述のように外方拡散によるp型不純物数の減少を抑制しつつ、従来と同様、ドーズ量を制御変数とする耐圧の設計を行うことができる。
【0039】
(半導体装置の製造方法)
以下、
図3から
図6を参照して、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
【0040】
図3に示すように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、半導体基体準備工程S1と、不純物イオン注入工程S2と、第一絶縁膜形成工程S3と、第二電極形成工程S4と、接合領域形成工程S5と、第二絶縁膜形成工程S6と、を含む。不純物イオン注入工程S2は、接合終端拡張領域形成工程S21と、ガードリング領域形成工程S22と、を含む。
【0041】
以下、
図4から
図6を用いて、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を説明する。なお、本実施形態に係る製造方法では、複数の半導体装置が互いに隣接して配置されているが、
図4から
図6では、これら半導体装置のうち1つのみを示している。
【0042】
(S1:半導体基体準備工程)
まず、
図4(a)に示す半導体基体準備工程S1を行う。半導体基体準備工程S1では、n
+型炭化珪素単結晶基板の上面に、n
−型炭化珪素エピタキシャル層を、化学的気相成長法(CVD)により形成する。これにより、炭化珪素からなるn型の半導体基板10aの一方の主面に、n
−型炭化珪素エピタキシャル層からなるn型のドリフト層10bが形成された、半導体基体10が形成される。
【0043】
(S2:不純物イオン注入工程)
次に、不純物イオン注入工程S2を行う。不純物イオン注入工程S2では、
図4(b)に示す接合終端拡張領域形成工程S21と、
図4(c)に示すガードリング領域形成工程S22を、順次行う。
【0044】
(S21:接合終端拡張領域形成工程)
接合終端拡張領域形成工程S21では、まず、ドリフト層10bの一の主面F1を清浄化する。次いで、ドリフト層10bの一の主面F1に、二酸化珪素(SiO
2)からなる酸化膜(不図示)を形成する。次いで、p型不純物イオンを導入する箇所の酸化膜を反応性イオンエッチング(RIE)によりエッチングして、接合終端拡張領域13に対応する部分に開口を有するマスク(不図示)を形成する。
【0045】
この状態において、
図4(b)に示すように、ドリフト層10bに、比較的低濃度のp型不純物イオン(例えば、アルミニウムイオン)を、イオン注入を用いて導入する。イオン注入は、2回に分けて行う。第1回目のイオン注入は、比較的高エネルギーでイオン注入を行う。これにより、第二の深さ13aにピークを有する不純物濃度の分布が形成される。第2回目のイオン注入は、第1回目よりも低エネルギーでイオン注入を行う。これにより、第一の深さ13bにピークを有する不純物濃度の分布が形成される。
【0046】
第2回目のイオン注入では、不純物濃度が、一の主面F1から一の主面F1から第一の深さ13bに達するまで上昇するように形成する。また、第2回目のイオン注入では、一の主面F1における不純物濃度が、第一の深さ13bにおける不純物濃度の10分の1以下であり、かつ、ドリフト層10bのn型不純物の濃度よりも高くなるようにする。
【0047】
p型不純物導入後、マスクを除去する。これにより、ドリフト層10bの表面に露出する、p型の接合終端拡張領域13が形成される。
【0048】
(S22:ガードリング領域形成工程)
ガードリング領域形成工程S22では、まず、ドリフト層10bの表面に、二酸化珪素からなる酸化膜(不図示)を形成する。次いで、p型不純物イオンを導入する箇所の酸化膜を反応性イオンエッチング(RIE)によりエッチングして、複数のガードリング領域14及びp型領域12に対応する部分に開口を有するマスク(不図示)を各々形成する。
【0049】
この状態において、
図4(c)に示すように、ドリフト層10bに、比較的高濃度のp型不純物イオンを、イオン注入を用いて導入する。これにより、複数のガードリング領域14及びp型領域12が形成される。
【0050】
接合終端拡張領域形成工程S21やガードリング領域形成工程S22において、イオン注入による不純物を導入した後には、活性化アニールを行う。温度は1600℃以上とするのが望ましい。
【0051】
接合終端拡張領域形成工程S21において、2回のイオン注入の順序は逆でもよい。また、ガードリング領域形成工程S22において、複数のガードリング領域14とp型領域12とは、例えば別個に形成されてよい。
【0052】
(S3:第一絶縁膜形成工程)
次に、
図5に示す第一絶縁膜形成工程S3を行う。第一絶縁膜形成工程S3では、まず、
図5(a)に示すように、ドリフト層10bの一の主面F1全体に、熱酸化により、酸化膜110を形成する。次いで、
図5(b)に示すように、p型領域で囲まれたドリフト層10bのn型の領域が露出するように、酸化膜110に開口部を形成することで、第一絶縁膜11を形成する。
【0053】
(S4:第二電極形成工程)
次に、第二電極形成工程S4を行う。第二電極形成工程S4では、
図6(a)に示すように、半導体基板10aの表面(前述した他方の主面)F2全面に、スパッタリング等を用いて、第二電極17を形成する。
【0054】
(S5:接合領域形成工程)
次に、
図6(a)に示すように、接合領域形成工程S5を行う。接合領域形成工程S5では、第一絶縁膜11に、第一電極15に対応する部分に開口を有するマスク(不図示)を形成した後、スパッタリング等を用いて、第一電極15を形成する。その後、マスクを除去する。
【0055】
(S6:第二絶縁膜形成工程)
最後に、
図6(b)に示すように、第二絶縁膜形成工程S6を行う。第二絶縁膜形成工程S6では、例えばプラズマCVDを用いて、二酸化珪素からなる第二絶縁膜16を、第一絶縁膜11及び第一電極15の上に積層して形成する。
【0056】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、接合終端拡張領域形成工程S21において、不純物濃度の一の主面F1からの深さ方向の分布が、一の主面F1から第一の深さ13bに達するまで上昇するように、接合終端拡張領域13を形成する。これにより、不純物導入後、ドリフト層10bが加熱される間、一の主面F1(表面)付近では内部(バルクの領域)に比べてより多くの割合の不純物が拡散したとしても、加熱前に一の主面F1(表面)付近に導入されたp型不純物の量は、より深い位置である第一の深さ13bに導入されたp型不純物の量に比べて低いため、外方拡散によるp型不純物数の減少を抑制できる。
【0057】
特に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、発明者らは、一の主面F1における不純物濃度を、第一の深さ13bにおける不純物濃度の10分の1以下とすることで、製造時の外方拡散によるp型不純物数の減少を、有意に抑制できることを見出した。これにより、実際に製造された半導体装置で、設計どおりの所望の耐圧を得ることができる。
【0058】
また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、一の主面F1における不純物濃度が、ドリフト層10bのn型の不純物の濃度よりも高くなるように、接合終端拡張領域13を形成する。これにより、外方拡散によって表面がn型化することに起因する、電圧印加時のキャリア滞留を抑制できる。その結果、所望の耐圧を、安定して得ることができる。
【0059】
[第二の実施形態]
以下、本発明の第二の実施形態について説明する。第一の実施形態と共通する部分は、説明を省略する。
【0060】
(半導体装置の構成)
本実施形態の半導体装置は、MOSFETである。本実施形態の半導体装置は、p型領域内にn型のソース領域が形成され、接合領域にソース電極が形成される点、p型領域で平面視において囲まれる領域に、絶縁膜を介してゲート電極が形成される点を除き、第一の実施形態と同様に構成される。本実施形態の半導体装置は、第一の実施形態と同様の効果を奏する。
【0061】
(半導体装置の製造方法)
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第一の実施形態と同様の半導体基体準備工程S1と、不純物イオン注入工程S2と、第一絶縁膜形成工程S3と、第二電極形成工程S4と、接合領域形成工程S5と、第二絶縁膜形成工程S6と、を含む。不純物イオン注入工程S2は、接合終端拡張領域形成工程S21と、ガードリング領域形成工程S22と、を含む。
ただし、本実施形態では、接合領域形成工程S5で上記ソース電極、ゲート電極を形成する点が、第一実施形態と異なる。
【0062】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第一の実施形態と同様の効果を奏する。
【0063】
[第三の実施形態]
以下、本発明の第三の実施形態について説明する。第一,第二の実施形態と共通する部分は、説明を省略する。
【0064】
(半導体装置の構成)
本実施形態の半導体装置は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)である。本実施形態の半導体装置は、半導体基板が、p
+型(第二の導電型)であることを除き、第二の実施形態と同様に構成される。本実施形態の半導体装置は、第一,第二の実施形態と同様の効果を奏する。
【0065】
(半導体装置の製造方法)
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第一の実施形態と同様の半導体基体準備工程S1と、不純物イオン注入工程S2と、第一絶縁膜形成工程S3と、第二電極形成工程S4と、接合領域形成工程S5と、第二絶縁膜形成工程S6と、を含む。不純物イオン注入工程S2は、接合終端拡張領域形成工程S21と、ガードリング領域形成工程S22と、を含む。
ただし、本実施形態では、半導体基体準備工程S1で準備する半導体基板が、p
+型(第二の導電型)である点が、第二実施形態と異なる。
【0066】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第一,第二の実施形態と同様の効果を奏する。
【0067】
[実施例]
以下、
図9〜12を用いて、本発明の実施例について、従来の半導体装置と比較して説明する。
【0068】
図9は、従来の半導体装置(
図7,8参照)において、ドリフト層510bの表面(一の主面F1)からの深さに対する不純物濃度を模式的に示したグラフである。
図9において不純物濃度は対数で表示している。実線は、活性化アニール工程や熱酸化工程を行う前の不純物濃度である。破線は、活性化アニール工程や熱酸化工程を行った後の不純物濃度である。活性化アニール工程や熱酸化工程を行った後、ドリフト層510bの表面付近において、不純物濃度が著しく減少している。すなわち、従来の半導体装置においては、活性化アニール工程や熱酸化工程の後に、外方拡散が生じる。
【0069】
図10は、本発明に係る半導体装置(
図1参照)において、ドリフト層10bの表面(一の主面F1)からの深さに対する不純物濃度を示したグラフである。
図10において不純物濃度は対数で表示している。本発明によれば、一の主面F1における不純物濃度を、第一の深さ13bにおける不純物濃度の10分の1以下とすることで、製造時の外方拡散によるp型不純物数の減少を抑制できている。
【0070】
図11は、従来の半導体装置(
図7,8参照)において、接合終端拡張領域513におけるp型不純物のドーズ量と、半導体装置の耐圧との関係を示したグラフである。シミュレーションにより設計した耐圧曲線は、実際に製造されたデバイスの耐圧曲線に対して大きくずれている。このため、従来の半導体装置では、設計どおりの耐圧が得られない。
【0071】
図12は、本発明に係る半導体装置(
図1参照)において、接合終端拡張領域13におけるp型不純物のドーズ量と、半導体装置の耐圧との関係を示したグラフである。シミュレーションにより設計した耐圧曲線と、実際に製造されたデバイスの耐圧曲線とのずれが、従来と比較して小さくなっている。このため、本発明によれば、実際に製造された半導体装置において、設計どおりの所望の耐圧を得ることができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は他の形態で実施することもできる。特許請求の範囲に記載された事項の範囲で、種々の設計変更を施すことが可能である。