(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918188
(24)【登録日】2021年7月26日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】ホエイプロテインを含む高プロテイン飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/66 20060101AFI20210729BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20210729BHJP
A23L 33/19 20160101ALI20210729BHJP
【FI】
A23L2/00 J
A23L2/38 P
A23L33/19
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-118887(P2020-118887)
(22)【出願日】2020年7月10日
(62)【分割の表示】特願2018-131181(P2018-131181)の分割
【原出願日】2011年7月18日
(65)【公開番号】特開2020-168025(P2020-168025A)
(43)【公開日】2020年10月15日
【審査請求日】2020年8月3日
(31)【優先権主張番号】61/365,350
(32)【優先日】2010年7月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520277357
【氏名又は名称】グランビア ニュートリショナルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ワード ローレン
(72)【発明者】
【氏名】キャハレーン グレース
【審査官】
安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−124062(JP,A)
【文献】
特開2007−215474(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0099753(US,A1)
【文献】
特表2006−501803(JP,A)
【文献】
特表2009−529332(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0083844(US,A1)
【文献】
特表2008−515440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00− 2/84
A23L33/19
A23J 1/00− 7/00
A23C 1/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インタクトホエイプロテイン、ペプチド、水、および、
水中でのインタクトホエイプロテイン/ペプチド混合物の溶解度を増加させるために有効な量のリンゴ酸、クエン酸、およびリン酸の混合物、
を含む、少なくとも20%ホエイプロテインを含む飲料。
【請求項2】
前記少なくとも20%ホエイプロテインが、少なくとも0.5パーセントインタクトホエイプロテインを含む、請求項1記載の飲料。
【請求項3】
前記ホエイプロテインが、ホエイプロテインアイソレート、ホエイプロテイン濃縮物、ホエイプロテイン加水分解物、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、法律によって認められる場合、その内容が参照により本明細書に組み入れられる、2010年7月18日に提出された米国特許仮出願第61/365,350号の優先権の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、プロテイン飲料を含む組成物およびそのような飲料を調合する方法に関する。より具体的に、本発明は、ホエイプロテインを含む飲料およびそれらを調合する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
プロテインは、食物の必要な一部である。プロテインは、筋肉を作るため、ホルモンおよび酵素を形成するため、ならびに細胞内および細胞間の足場を提供するために有用である。プロテインはまた、エネルギー源を提供するのみならず、全般的な細胞の増殖および修復にとって有用なアミノ酸を提供する。精力的な活動、体重減少、または損傷(たとえば、熱傷などの)を通して筋肉量を失うリスクがある人、成長を助けるためにプロテインを必要とする小児、および加齢プロセスの際に筋肉量を失う可能性がある高齢者などの人々は、食物におけるプロテインの必要性がより大きい。
【0004】
ある種の供給源は、特に必須アミノ酸(イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジン、チロシン)の量に関して、より品質の高いプロテインを提供する。必須アミノ酸の中で、分岐鎖アミノ酸(イソロイシン、ロイシン、バリン)は、筋肉量を増加させる、グルコース制御を改善させる、および認知機能を改善させるという多様な目的にとって特に重要であることが示されている。
【0005】
飲料は、容易に投与される形状で多様な栄養を提供しうることから、その栄養価を増加させるために様々な種類のプロテインを飲料に添加する試みがなされている。たとえば、米国特許第3,843,802号(Puski、1974年10月22日)(特許文献1)は、炭酸および非炭酸ソフトドリンクなどの飲料に組み入れるための酸可溶性産物を生成するために、大豆プロテイン、カゼインナトリウム、コムギグルテン、魚プロテイン濃縮物、または微生物プロテインを処理するプロセスを記述している。Magnino et al.(米国特許第3,645,745号、1972年2月29日(特許文献2))は、プロテイン分子を強い酸性または塩基性状態に供することによってプロテイン分子の物理的構造を変化させることによる、液体調合に組み入れるための油性シードプロテインを調製する方法を記述している。Pour-el and Swenson(米国特許第3,713,843号、1973年1月30日(特許文献3))は、分散させた不溶性の植物性プロテインを酸活性酵素によって静止酸性条件下で消化させて、不溶性のコロイド状プロテインを完全に溶解させて、炭酸または非炭酸酸性飲料に組み入れるためのフリーズドライした可溶性のプロテイン様粉末を生成する方法を記述している。
【0006】
ホエイプロテインは、その多くの有益な成分および効果により食品および飲料に組み入れるための理想的なプロテインである。たとえば、ホエイプロテインは、全ての必須アミノ酸を含み、分岐鎖アミノ酸、特にロイシンの優れた供給源である。ホエイプロテインを食事から摂取すると、グルタチオンレベルを増加させ、骨の健康を改善させ、認知作業を改善させ、および癌の予防/治療、心疾患の予防、およびウイルス誘発疾患の予防/治療などの領域において他の有益な効果を有することが示されている。
【0007】
米国乳製品輸出協議会によれば、「ホエイプロテインの飲料用ドライミックス調合への適用は一般的であるが、レディ・トゥ・ドリンク飲料を作製するには、さらに多くの技術を必要とする」(Rittmanic, S., "U.S. Whey Proteins in Ready-to-Drink Beverages," U.S. Dairy Export Council Applications Monograph, USDEC, Arlington, Virginia, 2006, p. 1(非特許文献1))。たとえば、1つの問題は、ホエイプロテインは広いpH範囲に対して可溶性でありうるが、ホエイプロテインはまた、製品の温度および濃度に応じてかなり容易にゲル化する点である。ホエイプロテインの溶解度は、ホエイプロテインの等電点であるpH 約4.5から5.5で特に低い。それゆえ、酸性飲料では、pH 6または7(ホエイプロテインの通常のpH)から等電点を通過して酸性環境のより低いpHまでpHが移行することから、混合時に沈殿が起こりうる。低温殺菌のためのプロテインドリンクの高温処理も同様に、ホエイプロテインの溶解度に負の影響を及ぼして、ゲル化問題を引き起こしうる。
【0008】
ホエイプロテインを液体調合として提供する方法はしばしば、酸性水溶液環境中で懸濁液としてプロテインを安定化させる安定化剤を用いることを含む。ペクチンは、コラーゲンと同様に、懸濁液中でプロテインを安定化させるために用いられている。多くの組成物に関する成分一覧は、それらが高レベルのプロテインを有すること、およびそれらがホエイプロテインおよび/またはホエイプロテインアイソレートを組み入れていることを示しているが、実のところコラーゲン、ペクチン、および/またはアルブミンなどの安定化剤の形で有意なレベルのプロテインを含んでいる。表1は、いくつかの市販のプロテインドリンクのプロテイン含有量およびそのプロテイン供給源の一覧である。
【0009】
【表1】
【0010】
しかし、ホエイプロテインによって提供される恩恵を考慮すると、約7%未満の現在の「高い」レベルより高いレベルでホエイプロテインを含む液体製品を提供することができれば有益であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3,843,802号
【特許文献2】米国特許第3,645,745号
【特許文献3】米国特許第3,713,843号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Rittmanic, S., "U.S. Whey Proteins in Ready-to-Drink Beverages," U.S. Dairy Export Council Applications Monograph, USDEC, Arlington, Virginia, 2006, p. 1
【発明の概要】
【0013】
本発明は、水溶液中に少なくとも約7.5%ホエイプロテインを含む組成物に関する。本発明の様々な局面はまた、水溶液中に少なくとも約10%のホエイプロテインを含む組成物にも関する。そのような組成物中のホエイプロテインの少なくとも約0.1パーセントは、インタクトプロテインでありうる。
【0014】
本発明はまた、様々な局面において、インタクトプロテインを、水溶液中の総プロテイン組み入れ量を増加させるために有効な量のペプチドと混合する段階を含む、水溶液に組み入れられうるプロテインの量を増加させる方法にも関する。方法の様々な局面において、インタクトプロテインをペプチドと混合する段階は、溶液中のプロテインの量を少なくとも約10%に、少なくとも約20%に、少なくとも約30%に、少なくとも約40%等に増加させるために有効でありうる。本方法は、中性pHを含む様々なpHレベルで高プロテイン水溶液を生成するために有効でありうる。
【0015】
本発明はまた、インタクトホエイプロテインをペプチドと配合して、ホエイプロテイン/ペプチド配合物を形成する段階、プロテイン/ペプチド配合物と水とを混合してプロテイン/ペプチド/水混合物を形成する段階、および水中でのプロテイン/ペプチドの溶解度を増加させるために有効な量の酸を混合物に添加して、プロテイン/ペプチドの水溶液を生成する段階を含む、水溶液中に少なくとも約7.5%ホエイプロテインを含む組成物を調合する方法にも関する。様々な局面において、水溶液は、pH 2.0からpH 4.0でありえて、リン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、酢酸、安息香酸、フマル酸、コハク酸、硫酸、グルコン酸、炭酸、およびその組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数の酸を含みうる。
[本発明1001]
少なくとも約7.5パーセントホエイプロテインを含む、水溶液。
[本発明1002]
前記少なくとも約7.5パーセントホエイプロテインが、少なくとも約0.1パーセントインタクトホエイプロテインを含む、本発明1001の水溶液。
[本発明1003]
前記ホエイプロテインが少なくとも約10パーセントを構成する、本発明1001の水溶液。
[本発明1004]
前記ホエイプロテインの少なくとも約0.1パーセントがインタクトプロテインである、本発明1003の水溶液。
[本発明1005]
前記ホエイプロテインが少なくとも約20%を構成する、本発明1001の水溶液。
[本発明1006]
前記ホエイプロテインがインタクトプロテインである、本発明1001の水溶液。
[本発明1007]
前記ホエイプロテインがホエイペプチドを含む、本発明1001の水溶液。
[本発明1008]
前記ホエイプロテインが、ホエイプロテインアイソレート、ホエイプロテイン濃縮物、ホエイプロテイン加水分解物、およびその組み合わせからなる群より選択される、本発明1001の水溶液。
[本発明1009]
a.インタクトホエイプロテインをペプチドと配合して、ホエイプロテイン/ペプチド混合物を形成する段階;
b.該プロテイン/ペプチド混合物を水と混合して、プロテイン/ペプチド/水混合物を形成する段階;および
c.水中での該プロテイン/ペプチド混合物の溶解度を増加させるために有効な量の酸を該プロテイン/ペプチド/水混合物に添加して、プロテイン/ペプチド水溶液を生成する段階
を含む、少なくとも約7.5%ホエイプロテインを含む水溶液を調合する方法。
[本発明1010]
前記少なくとも約7.5%ホエイプロテインが、少なくとも約0.5パーセントインタクトホエイプロテインを含む、本発明1009の方法。
[本発明1011]
前記ホエイプロテインが、ホエイプロテインアイソレート、ホエイプロテイン濃縮物、ホエイプロテイン加水分解物、およびその組み合わせからなる群より選択される、本発明1009の方法。
[本発明1012]
前記酸がリンゴ酸、クエン酸、およびリン酸の混加物である、本発明1009の方法。
[本発明1013]
水溶液に組み入れられる総プロテイン量を少なくとも約7.5パーセントまで増加させるために有効な量のホエイペプチドと、インタクトホエイプロテインとを混合する段階を含む、水溶液中のホエイプロテインの溶解度を増加させる方法。
[本発明1014]
d.水、リンゴ酸、およびクエン酸を混合する段階;
e.リン酸を添加して、リンゴ酸、クエン酸、およびリン酸を含む水溶液を形成する段階;ならびに
f.リンゴ酸、クエン酸、およびリン酸を含む水溶液を、ホエイプロテイン水溶液と混合する段階
をさらに含む、本発明1013の方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1aおよび1bは、表記のpH範囲におけるリン酸(
図1a)および本発明の酸ブレンド(
図1b)の粘度を説明するグラフである。この調合に関して30パーセントプロテインは、もっぱらペプチドとして提供された。粘度(センチポアズ、cps)をy-軸に示し、pHをx-軸に示す。
【
図2】プロテインを酸ブレンド(斜線で印した棒グラフ)またはリン酸(水平線で印した棒グラフ)と混合した場合の、表記のpHでの粘度の差を説明する棒グラフである。
【
図3】
図3aおよび3bは、プロテインの割合が増加した場合の粘度に及ぼす効果(3a)、およびプロテインがインタクトプロテインとペプチドとの混合物として提供される場合の組成物の粘度に及ぼす効果(3b)を説明するグラフである。プロテイン組成物を3bにおいてx軸に示し、1は比率1(12%インタクトプロテイン、88%ペプチド)を示し、2は比率2(24%インタクトプロテイン、76%ペプチド)を示し、および3は、比率3(36%インタクトプロテイン、64%ペプチド)を示す。
【
図4】粘度対水性プロテイン調合に組み入れられたペプチドの割合および調合のpHの三次元表面プロットである。室温で14日間保存した結果を示す。プロットは、30%プロテイン飲料において低い粘度を得るための最適なpHおよび水性プロテイン調合に組み入れられるペプチドの割合を説明する。
【
図5】インタクトプロテインとして存在するプロテインの割合を増加させることが様々な固体を有する飲料の粘度に及ぼす効果を説明するグラフである。
【
図6】華氏185°での熱処理がpH 3.0で32%プロテイン飲料(100%ペプチド)の粘度に及ぼす効果を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
本発明者らは、水溶液中で可溶化されうるホエイプロテインの量を増加させる方法を発見し、およびその方法を用いて高プロテイン液体飲料およびゲル組成物を生成した。本発明は、様々な局面において、インタクトプロテインを、水溶液中に組み入れられる総プロテイン量を増加させるために有効な量のペプチドと混合する段階を含む、水溶液中に組み入れられうるプロテインの量を増加させる方法に関する。方法の様々な局面において、インタクトプロテインをペプチドと混合する段階は、溶液中のホエイプロテインの量を少なくとも約10%に、少なくとも約20%に、少なくとも約30%に、少なくとも約40%等に増加させるために有効でありうる。本開示において本発明者らによって提供された情報を考慮すると、組み入れられる総プロテイン量を増加させるために有効なペプチドの量を決定することは当業者の範囲内である。
【0018】
または、方法は、インタクトホエイプロテインをペプチドと混合して、プロテイン/ペプチドミクスを生成する段階、プロテイン/ペプチドミクスを水と混合して、プロテイン/ペプチド/水混合物を提供する段階、およびプロテイン/ペプチドミクスを水中で可溶化するために有効な量の酸を混合物に添加して、プロテイン/ペプチド水溶液を形成する段階を含みうる。本発明者らはまた、ホエイプロテイン/ペプチドミクスが約0から約36パーセントインタクトホエイプロテインを含む、酸性または中性水溶液中で少なくとも約7.5パーセントホエイプロテインを含む、本発明の方法によって調製された組成物を開発している。本発明者らは、本発明の方法を用いて組成物を生成することによって、プロテイン飲料が、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%等のプロテインをペプチドまたはインタクトプロテイン/ペプチドミクスの形で含むように製造されうることを証明している。本明細書において用いられる「水性」には、液体およびゲルが含まれるがこれらに限定されるわけではない。本開示において、「ホエイプロテイン」は、インタクトプロテイン、インタクトプロテインのセグメント(すなわち、ペプチド)、または両方の組み合わせを含む組成物を記述するために用いられる。
【0019】
プロテインは、一般的にその等電点ではあまり溶解性ではない。ホエイプロテインは、多様なプロテインを含み、そのいくつかは、液体ドリンク調合にとって望ましい可能性があるpH範囲付近で等電点を有する。等電点では、正味の電荷がないために、プロテインと水分子とのあいだよりむしろ、プロテイン分子間の相互作用が促進され、プロテインの凝集および沈殿の発生を増加させる。それゆえこれまでは、ホエイプロテインの有意な量を液体調合、特に液体ドリンク調合に組み入れることは難しく、約7%レベルのホエイプロテインで「高い」と考えられていた。より多くのホエイプロテインを提供するように思われる組成物は実際に有意な量のプロテインを提供するものの、そのプロテインは、ホエイからのプロテインのごく一部の分画を含むに過ぎないミクスであることは非常にしばしば起こっている。本発明は、組成物中のプロテインの本質的に100パーセントがホエイプロテインを含みうる組成物を提供するが、他のタイプのプロテインの有意でない量を含む組成物も本発明の範囲内であると企図される。ホエイプロテインは、ホエイ(たとえば、ラクトフェリンなどの生物活性プロテインを含む)に由来するインタクトプロテインおよびそのようなインタクトホエイプロテインに由来するペプチドとして定義される。本発明の方法に従って作製される組成物は、コラーゲンなどの栄養価がより低いマトリクスプロテインを用いることを必要としない。ホエイプロテインは、ミルクプロテインに由来しえて、ホエイプロテインアイソレート、ホエイプロテイン濃縮物、加水分解ホエイプロテイン、または当業者に公知のその他の供給源および/または産物として提供されうる。インタクトホエイプロテインに由来するペプチドは、ホエイプロテインの加水分解などの当業者に公知の多様な方法によって誘導されうる。ホエイプロテイン加水分解物は、たとえばホエイプロテインの酵素的または酸加水分解を含む、当業者に公知の方法によって生成されうる。
【0020】
ホエイプロテインを加水分解するための様々な方法は、何らかの残留インタクトプロテインのみならずいくつかの遊離のアミノ酸が残っている産物を生じる可能性がある。それゆえ「ホエイペプチド」は、インタクトプロテインおよびインタクトプロテインの断片(すなわち、ペプチド)、ならびに限定量の遊離のアミノ酸の配合物を含みうるが、ホエイペプチド組成物の組成は、それを作製するために用いられるプロセスおよび達成される加水分解の程度に依存する。それゆえ、本明細書において用いられるホエイペプチドは、プロテインとペプチドとの混合物を含む組成物のみならず、全ての検出可能なプロテイン含有量がプロテイン断片またはペプチドの形で存在する組成物を含みうる。しかし、飲料組成物中のプロテインの全体的な割合が増加すると、インタクトプロテインとして組成物に組み入れられうるプロテインの割合は減少することに注意すべきである(
図4を参照されたい)。
【0021】
本明細書において用いられるように、プロテインの割合は、百分率として表記される水溶液100 mlあたりのプロテインのグラム数として定義される。当業者にとって、「インタクトプロテイン」とは通常、加水分解されていないプロテインを意味すると理解される。「ペプチド」は本明細書において、インタクトプロテインの全アミノ酸配列より短いアミノ酸配列を有するインタクトプロテインの断片として定義される。合成ペプチドを用いてもよいが、プロテインを加水分解することによって生成されるペプチドは一般的に、より費用効果が高い選択肢である。ホエイプロテインは望ましいアミノ酸のよりよい供給源であり、任意の公知のプロテイン供給源の分岐鎖アミノ酸の最高レベルを提供する容易に消化されるプロテインであることから、ホエイプロテインのペプチドは、本発明の組成物および方法にとって好ましい。本明細書において用いられる「ペプチド」は、一般的に多数のペプチドの混合物を指すために用いられる。それゆえ、「ペプチド(peptide)」および「ペプチド(peptides)」は互換的に用いられうる。
【0022】
組成物または方法が、組成物のある段階または要素を「含む」または「含む」と考えられる場合、そのような組成物または方法はまた、それらの要素または段階「からなりうる」または「本質的にそれらからなりうる」と理解されるべきである。
【0023】
酸はしばしば、飲料にフレーバーを与えるために、それらの飲料に添加される。たとえば、リン酸は多くのコーラドリンクの主成分である。クエン酸は、「フルーティ」フレーバーを有する多くの飲料に添加される。リンゴにおいて見いだされるリンゴ酸は、異なるタイプのフルーティフレーバーが望ましい場合に添加されうる。Glanbia Nutritionals社の科学者はまた、プロテインを乾燥させる前に1つまたは複数の食品等級の酸をホエイプロテインに添加すると(すなわち、プロテインを酸と同時乾燥させる)、より味のよいホエイプロテインが得られることを見いだしている。ホエイプロテインは、リン酸、クエン酸、およびリンゴ酸などの様々な酸を含むドリンクに組み入れられているが、ホエイプロテインアイソレートとして通常提供される高レベルのホエイプロテインを提供することは難しく、その理由は約7%より高い濃度で添加する場合、溶解度およびゲル化の問題を生じることなく組み入れることが難しいためである。これらのレベルであっても、ホエイプロテインより品質が劣ると一般的に考えられているプロテインであるコラーゲンおよび/またはアルブミンなどの安定化剤を組み入れることがしばしば必要である。しかし、本発明者らは、ある酸を適当な比率で混合すると、酸ブレンドは、プロテインドリンクなどの液体調合に組み入れられうるプロテインの量をさらに増加させることができることを発見した。このことは、安定化剤を用いることなく行うことができ、それにより液体調合に組み入れられるプロテインは、100%ホエイに由来するプロテイン、ペプチド、および/またはアミノ酸である。プロテインのゲル化は、酸性ドリンク調合において一般的に用いられる酸であるリン酸の存在下のある状況下で増加しうる。リン酸のリン酸基がプロテインのある残基(すなわち、リジン、ヒスチジン、アルギニン)と結合を形成して、同様にある条件下で、アミノ酸の利用可能なカルボキシル基とも結合する可能性があると考えられる。理論に拘束されたくはないが、本発明者らは、ホエイペプチドをインタクトホエイプロテインと混合することが、プロテインのゲル化の増加を引き起こす相互作用のいくつかを克服するために役立つと同時に、インタクトプロテインが由来する供給源と同じ優れたプロテイン供給源からの生物学的に利用可能なアミノ酸の追加の量をペプチドの形で最終産物に組み入れるという長所を提供すると考えている。さらに、たとえばリン酸を、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、塩酸、アスコルビン酸、酢酸、安息香酸、フマル酸、コハク酸、硫酸、グルコン酸、炭酸などの1つまたは1つより多くの他の酸のミクスと混合する段階を追加することは、水溶液に組み入れられうるインタクトプロテインの量をさらに増加させる。
【0024】
現在販売されているプロテインドリンクは、約7%未満(すなわち、591 mlボトル中プロテイン40グラム)のレベルのホエイプロテインアイソレートで高プロテインとして宣伝されているが、本発明の組成物は、そのプロテインの約100%を、好ましくはたとえば、ホエイプロテイン濃縮物、ホエイプロテインアイソレート等、およびホエイ由来ペプチド(合成してもよいが、より経済的に、加水分解してホエイペプチドを生成するホエイプロテインから得られうる)として提供される、ホエイ由来で含む飲料である。それゆえ、本発明の組成物は、たとえば水溶液中に少なくとも約7.5プロテイン(ペプチドおよび/またはインタクトプロテインとして)からを提供しえ、そのプロテインの約0から約36パーセントがインタクトプロテインとして提供され、この範囲は、たとえば約0.1パーセントから約36パーセント(すなわち、少なくとも約0.1パーセント)、約0.5パーセントから約36パーセント(すなわち、少なくとも約0.5パーセント)等などのその小範囲を含む。
【0025】
総プロテイン含有量が増加すると、総プロテイン含有量の一部を形成するインタクトプロテインの割合は一般的に減少するであろう。たとえば、40%プロテイン飲料において、そのプロテインの0〜23%がインタクトプロテインでありえて、残りはペプチドである;30%プロテイン飲料では、そのプロテインの0〜35%がインタクトでありえて、残りがペプチドである;20%プロテイン飲料では、36%より多くをインタクトプロテインとして組み入れることができる。さらに、リン酸のみの代わりに酸ブレンドを用いることによってもまた、より多くのインタクトプロテインを酸性pHで組み入れることができる。ペプチド型で提供されるアミノ酸、およびさらにより好ましくはインタクトプロテイン型で提供されるアミノ酸は、その遊離型で提供されるアミノ酸より大きい栄養上の恩恵を提供しうることが研究により証明されている(Trocki, O. et al., "Intact Protein Versus Free Amino Acids in the Nutritional Support of Thermally Injured Animals," Journal of Parenteral and Enteral Nutrition (1986), Vol. 10, No. 2, 139-145)。それゆえ、本発明は、遊離のアミノ酸の調合より、またはコラーゲンなどのより栄養価の低いマトリクスプロテインと組み合わせたインタクトプロテインの調合より有意に大きい栄養上の恩恵を提供しうる組成物およびそれらの組成物を生成する方法を提供する。
【0026】
本発明の方法において用いるための酸ブレンドは、たとえば水を60℃まで加熱する段階、撹拌しながらリンゴ酸およびクエン酸を添加する段階、ならびに酸が溶解するまで混合物を60℃で維持する段階によって生成されうる。次に、酸溶液を室温まで冷却して、液体リン酸(75%)をリンゴ酸/クエン酸溶液と十分に混合する。
【0027】
例として、本発明の高プロテイン飲料(すなわち、少なくとも約7.5パーセントホエイプロテイン)を作製するために、室温の水の重量を測定して容器に入れる。インタクトホエイプロテインおよびホエイ由来ペプチド(「ホエイペプチド」)の配合物として提供されるプロテインを、撹拌/添加の際に泡立たないように注意して撹拌しながら添加する。保存剤が望ましい場合、全てのプロテインが水和した後に保存剤を添加してもよい。本発明の組成物を保存剤によって処理してもよいが、それらをまた熱処理してもよい。熱処理は、粘度を低減させることによって製品の貯蔵期限を延長させうることに注意すべきである(
図6を参照されたい)。次に、プロテイン溶液を、酸によって所望のpHへと滴定する。このように生成された液体調合を、ボトルまたは他の容器に詰めて、室温で保存してもよい。
【0028】
本発明の局面はまた、ホエイプロテイン/ペプチドミクスを水と混合して、プロテイン/ペプチド/水混合物を形成する段階、およびたとえばリン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、酢酸、安息香酸、フマル酸、コハク酸、硫酸、グルコン酸、炭酸、およびその混合物からなる群より選択される1つまたは複数の酸を含む酸組成物を、プロテイン/ペプチド/水混合物に添加する段階を含む、より大量のプロテインを液体調合に可溶化する方法にも関する。
【0029】
本発明の組成物は、炭酸ドリンク、果汁フレーバーのドリンク、様々なフレーバーを含むプロテイン水、および様々な他のタイプの飲料を含みうる。組成物は、調合者が、液体調合に所望の量のプロテインを混合できるように、プロテインを含む液体調合として、またはこれらの調合の複合部分(すなわち、プロテインと酸のブレンド)として提供されうる。組成物はまた、香味料、ビタミン、ミネラル、および/または消費者にとって望ましい他の添加剤を含んでもよい。製品の粘度およびテクスチャも同様に、親水コロイド(たとえば、デンプン、ペクチン、カラゲニン)および/または他の濃化剤/テクスチャリング成分を添加することによって変化させてもよい。たとえば、本発明者らは、濃化剤としてカラゲニン(Lactarin MV406)を用いて、ならびにフレーバーおよび砂糖を添加して中性pHゲルを調合している。
【0030】
本発明の組成物は、精力的な活動の前、あいだ、および後に摂取するために高プロテイン飲料を欲するアスリートが用いるために適している。本発明の組成物はまた、追加のカロリーがなく必要な栄養を提供することから減量療法の一部としても望ましく、または疾患、損傷、もしくは加齢による筋肉の喪失と戦うために追加のプロテインを必要とする人に提供されうる。本発明の組成物はまた、特殊な栄養の必要性を有する人の集団の必要性を満たすために特殊な成分が組み入れられた医療用食品を含みうる。
【0031】
本発明はさらに、以下の非制限的な実施例によって説明されうる。
【実施例】
【0032】
酸ブレンド
水(150 g)を60℃に加熱した。リンゴ酸(175 g;Bartek Ingredients, Inc.)およびクエン酸175 g(Tate & Lyle無水クエン酸)を撹拌しながら水に添加した。酸が溶解するまで加熱および撹拌を60℃で継続した。酸溶液を室温まで冷却させた。次に、リン酸水溶液(500 ml;Hydrite Chemical Company 75%リン酸FCC)をリンゴ酸/クエン酸に添加して、十分に混合した。
【0033】
100%ペプチドを有する40%プロテイン飲料
水468 g(室温)の重量を量ってビーカーに入れた。撹拌プレート(Thermo Scientific Cimarec(登録商標)撹拌プレート)上に載せたビーカーに撹拌子を入れて、低速(たとえば、設定#4)で撹拌するように設定した。ホエイ由来ペプチド(400 g)を、泡立たないように注意しながら渦の中に添加した。全てのプロテインが水和した後、安息香酸ナトリウム(Genovique)1 gおよびソルビン酸カリウム(Haarmann and Reimer Corp.)1 gをプロテイン溶液に添加した。プロテイン溶液を、酸ブレンド130 gによってpH 3.0となるように滴定した後、ボトルに詰めて室温で保存した。
【0034】
36%インタクトプロテインおよび64%ペプチドを有する20%プロテイン飲料
水(728 g、室温)の重量を測定してビーカーに入れた。ホエイ由来ペプチド128 gおよびインタクトプロテイン72 gから乾燥ブレンドを作製した。ゆっくり撹拌しながら、プロテイン/ペプチド混合物を、混合しながら泡立たないよう注意しながら水の中に(渦の中に)添加した。全てのプロテインが水和した後、安息香酸ナトリウム1 gおよびソルビン酸カリウム1 gをプロテイン溶液に添加した。プロテイン溶液を、上記のように調合した酸ブレンド70 gによってpH 3.0となるように滴定した後、飲料をボトルに詰めて、室温で保存した。
【0035】
中性pHの飲料
水780 g(室温)の重量を測定してビーカーに入れた。ビーカーに撹拌子を入れて、低速で撹拌するように設定した。ホエイ由来ペプチド(320 g)を、泡立たないように注意しながら渦の中に添加した。全てのプロテインが水和した後、飲料をMicrothermicsチューブおよびシェル型熱交換器(エレクトリックモデル25HVハイブリッド)を通して処理した。製品を290°FにUHT処理して、Microthermicsクリーンフィルフード内で滅菌ボトルに充填した。
【0036】
中性pHゲル
水686 g(室温)の重量を測定してビーカーに入れた。撹拌子をビーカーに入れて、低速で撹拌するように設定した。ホエイ由来ペプチド(224 g)を、泡立たないように注意しながら渦の中に添加した。Lactarin MV406 10 gをKey Essentials WFFチョコレートパウダー7.5 gおよび砂糖40 gと共にドライブレンドした。ドライブレンドを渦の中に徐々に添加した。全ての成分が水和した後、飲料をMicrothermicsチューブおよびシェル型熱交換器(エレクトリックモデル25HVハイブリッド)を通して処理した。製品を290°FにUHT処理して、Microthermicsクリーンフィルフード内で滅菌ボトルに充填した。