特許第6918196号(P6918196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6918196
(24)【登録日】2021年7月26日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】ケース及びケースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20210729BHJP
【FI】
   B23K20/12 330
   B23K20/12 364
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-213807(P2020-213807)
(22)【出願日】2020年12月23日
【審査請求日】2020年12月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】山田 奨
(72)【発明者】
【氏名】服部 泰孝
(72)【発明者】
【氏名】佐野 元紀
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−087649(JP,A)
【文献】 特開2020−159350(JP,A)
【文献】 特開2018−051625(JP,A)
【文献】 特開2018−065164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00 − 20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース(10)の開口(32)を閉塞する板状の蓋体(20)が閉ループ状の摩擦撹拌接合部(40)により前記開口(32)の縁部に接合されているケース(10)であって、
前記蓋体(20)のうち前記摩擦撹拌接合部(40)より内側に、ビード加工部(60)を備え
前記ビード加工部(60)は、複数設けられて互いに平行に延び、
前記蓋体(20)は、前記ビード加工部(60)の幅方向よりも長さ方向に長い形状になっているケース(10)。
【請求項2】
ケース(10)の開口(32)を閉塞する板状の蓋体(20)が閉ループ状の摩擦撹拌接合部(40)により前記開口(32)の縁部に接合されているケース(10)であって、
前記蓋体(20)のうち前記摩擦撹拌接合部(40)より内側に、ビード加工部(60)を備え、
前記蓋体(20)のうち前記摩擦撹拌接合部(40)の終端部の内側近傍に、前記摩擦撹拌接合部(40)に沿って延びる前記ビード加工部(60A)を備えるケース(10)。
【請求項3】
ケース(10)の開口(32)を閉塞する板状の蓋体(20)が閉ループ状の摩擦撹拌接合部(40)により前記開口(32)の縁部に接合されているケース(10)であって、
前記蓋体(20)のうち前記摩擦撹拌接合部(40)より内側に、ビード加工部(60)を備え、
前記蓋体(20)のうち前記摩擦撹拌接合部(40)の終端部の近傍の外縁部を折り曲げてなる外縁リブ(58)を備えるケース(10)。
【請求項4】
前記ビード加工部(60)は、前記蓋体(20)の内面側に突出している、請求項1から3の何れか1の請求項に記載のケース(10)。
【請求項5】
ケース(10)の開口(32)を閉塞する板状の蓋体(20)を閉ループ状の摩擦撹拌接合部(40)により前記開口(32)の縁部に接合するケース(10)の製造方法であって、
摩擦撹拌接合を行って前記摩擦撹拌接合部(40)を形成する前に、前記蓋体(20)のうち前記摩擦撹拌接合部(40)の終端部となる位置の内側近傍に、前記摩擦撹拌接合部(40)に沿って延びるようにビード加工部(60)を形成するケース(10)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ケース及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ケースの開口を閉塞する蓋体が、閉ループ状の摩擦撹拌接合部により前記開口の縁部に接合されるケースが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−176207(図16A等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のケースでは、摩擦撹拌接合により蓋体がひずむことが問題になっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、ケース(10)の開口(32)を閉塞する板状の蓋体(20)が閉ループ状の摩擦撹拌接合部(40)により前記開口(32)の縁部に接合されているケース(10)であって、前記蓋体(20)のうち前記摩擦撹拌接合部(40)より内側に、ビード加工部(60)を備え、前記ビード加工部(60)は、複数設けられて互いに平行に延び、前記蓋体(20)は、前記ビード加工部(60)の幅方向よりも長さ方向に長い形状になっているケース(10)である。
【0007】
請求項の発明は、ケース(10)の開口(32)を閉塞する板状の蓋体(20)が閉ループ状の摩擦撹拌接合部(40)により前記開口(32)の縁部に接合されているケース(10)であって、前記蓋体(20)のうち前記摩擦撹拌接合部(40)より内側に、ビード加工部(60)を備え、前記蓋体(20)のうち前記摩擦撹拌接合部(40)の終端部の内側近傍に、前記摩擦撹拌接合部(40)に沿って延びる前記ビード加工部(60A)を備えるケース(10)である。
【0008】
請求項の発明は、ケース(10)の開口(32)を閉塞する板状の蓋体(20)が閉ループ状の摩擦撹拌接合部(40)により前記開口(32)の縁部に接合されているケース(10)であって、前記蓋体(20)のうち前記摩擦撹拌接合部(40)より内側に、ビード加工部(60)を備え、前記蓋体(20)のうち前記摩擦撹拌接合部(40)の終端部の近傍の外縁部を折り曲げてなる外縁リブ(58)を備えるケース(10)である。
【0009】
請求項の発明は、前記ビード加工部(60)は、前記蓋体(20)の内面側に突出している、請求項1からの何れか1の請求項に記載のケース(10)である。
【0010】
請求項の発明は、ケース(10)の開口(32)を閉塞する板状の蓋体(20)を閉ループ状の摩擦撹拌接合部(40)により前記開口(32)の縁部に接合するケース(10)の製造方法であって、摩擦撹拌接合を行って前記摩擦撹拌接合部(40)を形成する前に、前記蓋体(20)のうち前記摩擦撹拌接合部(40)の終端部となる位置の内側近傍に、前記摩擦撹拌接合部(40)に沿って延びるようにビード加工部(60)を形成するケース(10)の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜3,5の発明では、蓋体のうち閉ループ状の摩擦撹拌接合部より内側に、ビード加工部が設けられるので、蓋体のうち摩擦撹拌接合部の内側の部分の強度を上げることが可能となり、蓋体がひずむことを抑制可能となる。
【0012】
請求項の発明では、ビード加工部が複数設けられて互いに平行に延び、蓋体が、ビード加工部の幅方向よりも長さ方向に長い形状になっている。従って、蓋体の長手方向で、蓋体の強度を向上させ易くなり、蓋体が変形することを抑制できる。
【0013】
ここで、閉ループ状に摩擦撹拌接合を行う場合、摩擦撹拌接合を一周行って始端部に戻ってくるところで(即ち、摩擦撹拌接合部の終端部で)、蓋体に摩擦撹拌接合によるひずみが集まり易く、接合不良が生じ易い。これに対し、請求項及び請求項の発明では、蓋体のうち摩擦撹拌接合部の終端部の内側近傍に、摩擦撹拌接合に沿って延びるビード加工部が設けられる。これにより、蓋体のうち摩擦撹拌接合部の終端部において、摩擦撹拌接合部に沿った方向の強度が高められ、摩擦撹拌接合部の終端部で蓋体に摩擦撹拌接合によるひずみが発生することを抑制可能となる。
【0014】
請求項の発明では、蓋体のうち摩擦撹拌接合部の終端部の近傍の外縁部を折り曲げてなる外縁リブが備えられている。これにより、蓋体のうち摩擦撹拌接合部の終端部において、摩擦撹拌接合部に沿った方向の強度が高められ、摩擦撹拌接合部の終端部で蓋体に摩擦撹拌接合によるひずみが発生することを抑制可能となる。
【0015】
ビード加工部は、蓋体の内面側に突出していてもよいし(請求項の発明)、蓋体の外面側に突出してもよい。前者の構成によれば、蓋体を強化しつつケースのコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の第1実施形態に係るケースの斜視図
図2】ケースの分解斜視図
図3】ケースの平面図
図4】蓋体の短手方向に切断したケースの断面図
図5】蓋体の長手方向に切断したケースの断面図
図6】(A)接合用ツールの側面図、(B)第1金属部材及び第2金属部材へ圧入された接合用ツールの側面図
図7】摩擦攪拌接合のルートを示す蓋体の平面図
図8】(A)摩擦撹拌接合を終端寄り位置まで行ったときの蓋体の拡大平面図、(B)摩擦撹拌接合を終端寄り位置まで行ったときの蓋体の断面図
図9】第2実施形態に係るケースの斜視図
図10】第2実施形態に係るケースの分解斜視図
図11】第2実施形態に係るケースの平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には、本開示の一本実施形態に係るケース10が示されている。図1及び図2に示すように、ケース10は、板状の蓋体20が、ケース10の開口32を閉塞し、その開口32の縁部に摩擦撹拌接合された構成となっている。本実施形態の例では、開口32は、直方体状のケース本体30の上面に矩形状に形成され、蓋体20も、開口32の長手方向に長くなった矩形状をなしている。
【0018】
なお、本実施形態では、蓋体20は、アルミ板であり、ケース本体30は、アルミのダイカスト成形品であるが、これに限定されるものではない。蓋体20とケース本体30は、互いに摩擦撹拌接合により接合されるものであればよく、同じ金属で構成されていてもよいし、互いに異なる金属で構成されてもよい。例えば、蓋体20とケース本体30は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金等の摩擦攪拌可能な金属からそれぞれ適宜選択することができる。
【0019】
図3に示すように、ケース10には、蓋体20とケース本体30とを接合する摩擦撹拌接合部として、閉ループ状をなした環状接合部40が設けられている。具体的には、環状接合部40は、ケース本体30の開口32(図2参照)を取り巻く矩形状に形成され、蓋体20の外縁に沿って配置される。
【0020】
環状接合部40は、摩擦撹拌接合が、所定の始点Sから一周して(図3の例では右回りして)再び始端部まで戻ってくるように行われることで形成される。本実施形態の例では、始点Sは、環状接合部40のうち一長辺部の途中に設けられている。なお、環状接合部40の終点Fは、環状接合部40の始端部に到達すればよく、始点Sと一致していなくてもよい。
【0021】
ここで、本実施形態では、蓋体20うち環状接合部40よりも内側の部分には、ビード加工部60が形成されている。本実施形態の例では、ビード加工部60は、直線状をなし、複数設けられて互いに平行に延びている。ビード加工部60の長手方向は、蓋体20の長手方向になっている(即ち、蓋体20は、ビード加工部60の幅方向よりも長手方向に長い形状になっている)。
【0022】
図4及び図5に示すように、ビード加工部60は、蓋体20の内面側に(ケース10の内側に)突出している。具体的には、ビード加工部60は、蓋体20の内面側から見ると凸条になっていて、ビード加工部60の長手方向から見た断面形状は円弧状になっている。また、ビード加工部60は、蓋体20の外面には、丸溝状の凹部を形成している。
【0023】
ここで、本実施形態では、複数のビード加工部60のうち環状接合部40の始点S側の一長辺部に設けられた第1ビード加工部60Aは、蓋体のうち環状接合部40の終端部の内側近傍に配置され、環状接合部40に沿って延びている。なお、例えば、第1ビード加工部60Aと環状接合部40との間隔L(それらの間の部分の幅(図4参照))は、環状接合部40の幅の2.0倍以下が好ましく、1.5倍以下がさらに好ましい。
【0024】
本実施形態では、ケース10は、以下のようにして形成される。まず、図2に示すように、蓋体20とケース本体30が用意される。蓋体20には、予めビード加工部60を形成しておく。ここで、第1ビード加工部60Aは、蓋体20のうち環状接合部40の終端部となる位置の内側近傍に、環状接合部40に沿って延びるように形成しておく。ビード加工部60は、例えばプレス機等により蓋体20が打ち抜かれるときに同時に形成される。そして、蓋体20がケース本体30の開口32を塞ぐように開口32の縁部に重ねられる。蓋体20は、ケース本体30に対してずれないように仮固定される。
【0025】
次いで、図6に示す摩擦撹拌接合用ツール50(以下、接合用ツール50という。)を用いて、図7に示す様に、閉ループ状のルートR1を右回りに移動するように摩擦撹拌接合が行われ、蓋体20が、ケース本体30の開口32の縁部に接合される。なお、図7に示すルートR1を左右反転して、摩擦撹拌接合を左回りに行ってもよい。
【0026】
詳細には、接合用ツール50は、図6(A)に示すように、ショルダー51とプローブ52を有する。ショルダー51は、略円柱体である。プローブ52は、ショルダー51よりも小さな径を有する略円柱体である。プローブ52は、ショルダー51の先端面51Kからショルダー51の中心軸C上に突出している。接合用ツール50は、摩擦攪拌接合装置(図示略)に装備されて使用される。
【0027】
そして、図6(B)に示すように、プローブ52を、回転させながら蓋体20の上からケース本体30に到達するまで圧入する。これにより、プローブ52との接触部に発生する摩擦熱によって、蓋体20及びケース本体30の一部が軟化し、摩擦撹拌されることで蓋体20とケース本体30が接合される。そして、接合用ツール50をルートR1の始点S(即ち、環状接合部40の始点S)から終点F(即ち始点S)まで移動させることで、図1に示すように環状接合部40が形成される。以上により、蓋体20によってケース本体30の開口32が閉塞されてケース10(図1参照)が形成される。
【0028】
ここで、図8(A)に示すように、接合用ツール50が、ルートR1を一周してルートR1の始端部に戻ってくるところ(例えば図7に示すルートR1の終端寄り位置P)では、板状の蓋体20に摩擦撹拌接合によるひずみが集まり易い(なお、図8(A)及び図8(B)では、閉ループ状になる前の開ループ状の摩擦撹拌接合部40Aが示されている)。そのため、従来のケースでは、蓋体20とケース本体30の接合不良が生じ易くなるという問題が生じ得る。具体的には、例えば、図8(B)に示すように、蓋体20に、ケース本体30から浮き上がるような変形が起きる場合があり(同図では変形が誇張して描かれている)、この場合、環状接合部40の終端部で蓋体20とケース本体30との接合不良が生じ易い。
【0029】
このような接合不良を抑制すべく、本実施形態では、蓋体20のうち環状接合部40の終端部の内側近傍に、環状接合部40に沿って延びる上述の第1ビード加工部60Aが設けられる。これにより、蓋体のうち摩擦撹拌接合部の終端部において、摩擦撹拌接合部に沿った方向の強度が高められ、摩擦撹拌接合部の終端部で蓋体に摩擦撹拌接合によるひずみが発生することを抑制可能となる。なお、蓋体20のうち環状接合部40の始点S側の一長辺部において、環状接合部40の終端寄り部分から始点Sまで摩擦撹拌接合するにあたっては、第1ビード加工部60Aの外側近傍を接合用ツール50が通過するようにすればよい。この際、例えば、蓋体20のうち接合用ツール50と第1ビード加工部60Aとの間の部分の幅が、接合用ツール50の直径(詳細にはショルダー51の直径)の2.0倍以下となることが好ましく、1.5倍以下となることがさらに好ましい。このようにすることで、上記ひずみの発生を一層抑制可能となる。
【0030】
また、従来のケースでは、摩擦撹拌接合により蓋体20がひずみ易いという問題があった。例えば、摩擦撹拌接合により熱膨張した蓋体20が、ケース本体30の開口縁部に接合されてから冷却されて縮むことで、蓋体20がひずむことがある。これは、蓋体20の上から摩擦撹拌接合が行われるため、蓋体20の方がケース本体30よりも温度が高くなり易いので生じ易い。
【0031】
これに対し、本実施形態では、蓋体20のうち環状接合部40より内側に、ビード加工部60が設けられるので、蓋体20のうち環状接合部40の内側の部分の強度を上げることが可能となり、蓋体20がひずむことを抑制可能となる。
【0032】
また、ビード加工部60が複数設けられて互いに平行に延び、蓋体20が、ビード加工部60の幅方向よりも長さ方向に長い形状になっている。従って、蓋体20の長手方向で、蓋体20の強度を向上させ易くなり、蓋体20が変形することを抑制できる。
【0033】
また、ビード加工部60が、蓋体20の内面側に突出しているので、蓋体20を強化しつつケースのコンパクト化を図ることができる。
【0034】
[第2実施形態]
図9図11には、第2実施形態のケース10が示されている。本実施形態では、上記第1実施形態に対して、蓋体20の形状のみが異なっている。具体的には、図9及び図10に示すように、本実施形態のケース10には、蓋体20のうち環状接合部40の終端部の近傍の外縁部を折り曲げてなる外縁リブ58が備えられている。これにより、蓋体20のうち環状接合部40の終端部において、環状接合部40に沿った方向の強度がさらに高められ、環状接合部40の終端部で蓋体20に摩擦撹拌接合によるひずみが発生することを一層抑制可能となる。例えば、蓋体20のうち環状接合部40の終端部と外縁リブ58との間の部分の幅は、環状接合部40の幅の2.0倍以下が好ましく、1.5倍以下がさらに好ましい。なお、外縁リブ58は、例えばプレス機等により蓋体20が打ち抜かれるときに同時に形成することができ、環状接合部40の終端部となる位置の外側近傍に形成しておけばよい。また、蓋体20のうち環状接合部40の始点S側の一長辺部において、環状接合部40の終端寄り部分から始点Sまで摩擦撹拌接合するにあたっては、外縁リブ58の内側近傍を接合用ツール50が通過するようにすればよい。この際、例えば、蓋体20のうち接合用ツール50と外縁リブ58との間の部分の幅が、接合用ツール50の直径(詳細にはショルダー51の直径)の2.0倍以下となることが好ましく、1.5倍以下となることがさらに好ましい。このようにすることで、上記ひずみの発生を一層抑制可能となる。
【0035】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、ビード加工部60が、蓋体20の長手方向に延びていたが、蓋体20の短手方向に延びていてもよい。この場合、ビード加工部60が、複数平行に設けられてもよい。これらの場合、環状接合部40の終点F(始点S)は、蓋体20の短辺部に設けられることが好ましく、蓋体20のうち環状接合部40の終端部の内側近傍に、ビード加工部60が設けられることが好ましい。また、このように環状接合部40の終端部が蓋体20の短辺部に設けられる場合には、上記第2実施形態の外縁リブ58も、その短辺部に設けられることが好ましい。なお、環状接合部40は、四角形状に限定されるものではなく、例えば、円形状であってもよいし、四角形状以外の多角形状であってもよい。また、ケース本体30の開口32の形状は、四角形状に限定されるものではなく、例えば、円形状であってもよいし、四角形状以外の多角形状であってもよい。これらの場合においても、環状接合部40を開口32の縁部又は縁部の外側に配置すればよい。
【0036】
(2)上記実施形態では、環状接合部40の終端部の内側近傍に第1ビード加工部60Aが設けられていたが、環状接合部40の終端部の内側近傍にビード加工部60が設けられていなくてもよく、例えば、ビード加工部60が、環状接合部40よりも内側で環状接合部40の終端部から離れた位置に配置されていてもよい。また、上記実施形態において、ビード加工部60として第1ビード加工部60Aのみが設けられていてもよい。
【0037】
(3)上記実施形態では、ビード加工部60が、直線状をなしていたが、曲線状をなしていてもよいし、屈曲していてもよい。また、線状のビード加工部60同士が交差していてもよい。
【0038】
(4)上記実施形態では、ビード加工部60が、蓋体20の内面側に突出していたが、蓋体20の外面側(ケース10の外面側)に突出していてもよい。
【0039】
(5)例えば、ビード加工部を、蓋体20のうち環状接合部40の終端部の外側近傍に形成することもできる。
【0040】
(6)上記第2実施形態において、蓋体20が、ビード加工部60を有さずに、外縁リブ58を有した構成であってもよい。
【0041】
(7)蓋体20とケース本体30との摩擦撹拌接合部が、環状接合部40の終点Fから環状接合部40の外側又は内側に延長されてなる延長接合部を有していてもよい。また、蓋体20とケース本体30との摩擦撹拌接合部が、環状接合部40の内側又は外側となる位置から始点Sまで延びる開始接合部を有していてもよい。この場合、摩擦撹拌接合により、この開始接合部を形成してから、環状接合部40を形成すればよい。
【符号の説明】
【0042】
10 ケース
20 蓋体
30 ケース本体
32 開口
40 環状接合部
58 外縁リブ
60 ビード加工部
60A 第1ビード加工部
【要約】      (修正有)
【課題】ケースの蓋体の摩擦撹拌接合によるひずみを抑制する方法を提供する。
【解決手段】ケース10には、蓋体20とケース本体30とを接合する摩擦撹拌接合部として、閉ループ状をなした環状接合部40が設けられている。ケース本体30の開口を閉塞する板状の蓋体20が閉ループ状の環状接合部40により開口の縁部に接合するときに発生するひずみを抑制するために、前記蓋体20に前記環状接合部40より内側に、ビード加工部60を備える。前記ビード加工部60は、直線状をなし、複数設けられて互いに平行に延びている。前記ビード加工部60の長手方向は、蓋体20の長手方向になっている即ち、蓋体20は、ビード加工部60の幅方向よりも長手方向に長い形状になっている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11