【実施例】
【0089】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。本発明は実施例により十分に説明されているが、当業者により種々の変更や修飾が可能であろうことは理解される。したがって、そのような変更や修飾が本発明の範囲を逸脱するものでない限り、それらは本発明に包含される。
実施例で用いた各種試薬は、特に記載の無い限り市販品を使用した。
【0090】
[試験例1]溶解度試験
配合例1及び2、並びに比較例1〜15に示すように、(S)−1−(3−(4−アミノ−3−((3,5−ジメトキシフェニル)エチニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル
)−1−ピロリジニル)−2−プロペン−1−オン(化合物A)と種々の界面活性剤とを組合せた試験液を以下のように調製し、下記のように溶解度試験を行った。
【0091】
<配合例1>
0.05gのラウリル硫酸ナトリウム(SERVA社製、Research grade)を、pH6.8の50mMリン酸緩衝液(50 mL)に溶解後、25mgの化合物Aを懸濁させ、60分間37℃で加温することによって試験液を得た。
【0092】
<配合例2>
0.5gのラウリル硫酸ナトリウムを、pH6.8の50mMリン酸緩衝液(50mL)に溶解後、25mgの化合物Aを懸濁させ、60分間37℃で加温することによって試験液を得た。
【0093】
<比較例1>
pH6.8の日局溶出試験第2液(50mL)に、25mgの化合物Aを懸濁させ、60分間37℃で加温することによって試験液を得た。
【0094】
<比較例2>
0.05gのショ糖脂肪酸モノエステル(DKエステルSS、第一工業製薬株式会社製)を、pH6.8の日局溶出試験第2液(50mL)に溶解後、25mgの化合物Aを懸濁させ、60分間37℃で加温することによって試験液を得た。
【0095】
<比較例3>
0.5gのショ糖脂肪酸モノエステル(DKエステルSS)を、pH6.8の日局溶出試験第2液(50mL)に溶解後、25mgの化合物Aを懸濁させ、60分間37℃で加温することによって試験液を得た。
【0096】
<比較例4>
0.05gのPEG6000(マクロゴール6000、日本油脂株式会社製)を、pH6.8の日局溶出試験第2液(50mL)に溶解後、25mgの化合物Aを懸濁させ、60分間37℃で加温することによって試験液を得た。
【0097】
<比較例5>
0.5gのPEG6000を、pH6.8の日局溶出試験第2液(50mL)に溶解後、25mgの化合物Aを懸濁させ、60分間37℃で加温することによって試験液を得た。
【0098】
<比較例6>
0.05gのポロキサマー(LutrolF68、BASF Corporation製)を、pH6.8の日局溶出試験第2液(50mL)に溶解後、25mgの化合物Aを懸濁させ、60分間37℃で加温することによって試験液を得た。
【0099】
<比較例7>
0.5gのポロキサマー(LutrolF68)を、pH6.8の日局溶出試験第2液(50mL)に溶解後、25mgの化合物Aを懸濁させ、60分間37℃で加温することによって試験液を得た。
【0100】
<比較例8>
0.05gのポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(Tween20、東京化成工業株式会社製)を、pH6.8の日局溶出試験第2液(50mL)に溶解後、25mgの化合物Aを懸濁させ、60分間37℃で加温することによって試験液を得た。
【0101】
<比較例9>
0.5gのポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(Tween20)を、pH6.8の日局溶出試験第2液(50mL)に溶解後、25mgの化合物Aを懸濁させ、60分間37℃で加温することによって試験液を得た。
【0102】
<比較例10>
0.05gのポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート(Tween60、東京化成工業株式会社製)を、pH6.8の日局溶出試験第2液(50mL)に溶解後、25mgの化合物Aを懸濁させ、60分間37℃で加温することによって試験液を得た。
【0103】
<比較例11>
0.5gのポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート(Tween60)を、pH6.8の日局溶出試験第2液(50mL)に溶解後、25mgの化合物Aを懸濁させ、60分間37℃で加温することによって試験液を得た。
【0104】
<比較例12>
0.05gのポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(Tween80、東京化成工業株式会社製)を、pH6.8の日局溶出試験第2液(50mL)に溶解後、25mgの化合物Aを懸濁させ、60分間37℃で加温することによって試験液を得た。
【0105】
<比較例13>
0.5gのポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(Tween80)を、pH6.8の日局溶出試験第2液(50mL)に溶解後、25mgの化合物Aを懸濁させ、60分間37℃で加温することによって試験液を得た。
【0106】
<比較例14>
0.05gのポリオキシエチレンヒマシ油(CremophorEL、Sigma−Aldrich社製)を、pH6.8の日局溶出試験第2液(50mL)に溶解後、25mgの化合物Aを懸濁させ、60分間37℃で加温することによって試験液を得た。
【0107】
<比較例15>
0.5gのポリオキシエチレンヒマシ油(CremophorEL)を、pH6.8の日局溶出試験第2液(50mL)に溶解後、25mgの化合物Aを懸濁させ、60分間37℃で加温することによって試験液を得た。
【0108】
上記の配合例1、2、及び比較例1〜15について、溶解度を高速液体クロマトグラフィーによって測定した。
装置:LC-2010C(株式会社島津製作所)
測定波長:300nm
データ処理を含む装置の取り扱いは、各装置で指示された方法及び手順に従った。配合例1、2、比較例1〜15の組成と本試験の結果を表1、表2に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
表1、表2に示すように、界面活性剤を使用しない比較例1と比較すると、界面活性剤の添加によって、化合物Aの溶解度があまり変化しない場合もある一方、ラウリル硫酸ナトリウムを含む一部の界面活性剤の添加によって溶解度の改善効果が見られた。その中でもラウリル硫酸ナトリウム及びショ糖脂肪酸モノエステルは高い溶解度改善効果をもたらした。特に、ラウリル硫酸ナトリウムは0.1%溶液(配合例1)でも高い溶解度を示し、1.0%溶液(配合例2)では溶解度が無添加時(比較例1)の約500倍も増加することが分かった。
【0112】
[試験例2]吸収性試験
試験例1で化合物Aに対して良好な溶解度改善効果をもたらしたラウリル硫酸ナトリウム及びショ糖脂肪酸モノエステルを使用して、下記のように吸収性試験を行った。
【0113】
<配合例3>
2.4gのラウリル硫酸ナトリウム(和光株式会社、生化学用)を、水(40mL)に溶解後、0.8gの化合物Aを懸濁させ、化合物Aの懸濁液を得た。
【0114】
<比較例16>
医薬品の吸収性試験において汎用されている0.5%ヒプロメロース水溶液(40mL)に0.8gの化合物Aを懸濁させ、化合物Aの懸濁液を得た。
【0115】
<比較例17>
2.4gのショ糖脂肪酸モノエステル(DKエステルSS)を、水(40mL)に溶解後、0.8gの化合物Aを懸濁させ、化合物Aの懸濁液を得た。
【0116】
上記の配合例3、比較例16及び17について、以下の通り吸収性試験を実施した。
<吸収試験条件>
使用動物:ビーグル犬(北山ラベス、雄3頭)
食事条件:前日より20時間絶食
投与量:100mg/body
投与サンプル:配合例3及び比較例16、17をそれぞれ0.82g
投与方法:水50mLと共にゾンデを使用した経口投与
【0117】
前処置:投与サンプルの投薬30分前に硫酸アトロピン静注液10μg/0.1mL/kg及びペンタガストリン筋注液10μg/0.1mL/kgを筋肉内投与し、その後45分間隔でペンタガストリン筋注液10μg/0.1mL/kgを2回筋肉内投与した。
配合例及び比較例の経口投与後、30分後、1時間後、1.5時間後、2時間後、4時間後及び8時間後に各動物から採血し、化合物Aの血中濃度を(液体クロマトグラフィー質量分析法により)測定して、AUC及びCmax値を算出した。結果を表3に示す。
【0118】
【表3】
【0119】
表3に示す通り、化合物Aと共にショ糖脂肪酸モノエステルを含む比較例17は、化合物Aのみの懸濁液である比較例16と同程度の吸収性を示した。一方で、化合物Aと共にラウリル硫酸ナトリウムを含む配合例3は、同量のショ糖脂肪酸モノエステルを含む比較例17より顕著に高い化合物Aの吸収性を示したことから、ラウリル硫酸ナトリウムは化合物Aの吸収改善に有用であることが明らかとなった。
【0120】
[試験例3]吸収性試験
化合物Aとラウリル硫酸ナトリウムとを含有する顆粒を以下のように調製し、試験例2と同様の吸収性試験を行った。
【0121】
<配合例4>
化合物A 2g、ラウリル硫酸ナトリウム 0.5g、乳糖 9.5g、コーンスターチ 4gをガラス瓶中で1分間混合した。目開き500μmの篩で全量篩過した後、再度ガラス瓶中で1分間混合した。乳棒及び乳鉢を用いて混合しながら、10% 低粘度ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−SL)3400μLを添加し、目開き850μmの篩で全量篩過した後、水分測定器(AND、MX−50)を用いて70℃で乾燥させた。さらに、目開き1000μmの篩で全量篩過し、化合物Aの顆粒を得た。
【0122】
<配合例5>
化合物A 2g、ラウリル硫酸ナトリウム 2g、乳糖 8.4g、コーンスターチ 3.6gをガラス瓶中で1分間混合した。目開き500μmの篩で全量篩過した後、再度ガラス瓶中で1分間混合した。乳棒及び乳鉢を用いて混合しながら、10% 低粘度ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−SL)3200μLを添加し、目開き850μmの篩で全量篩過した後、水分測定器(AND、MX−50)を用いて70℃で乾燥させた。さらに、目開き1000μmの篩で全量篩過し、化合物Aの顆粒を得た。
【0123】
<配合例6>
化合物A 1.4g、ラウリル硫酸ナトリウム 4.2g、乳糖 3.9g、コーンスターチ 1.9gをガラス瓶中で1分間混合した。目開き500μmの篩で全量篩過した後、再度ガラス瓶中で1分間混合した。得られた混合品6.4gを乳棒及び乳鉢を用いて混合しながら、10% 低粘度ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−SL)1330μLを添加し、目開き850μmの篩で全量篩過した後、水分測定器(AND、MX−50)を用いて70℃で乾燥させた。さらに、目開き1000μmの篩で全量篩過し、化合物Aの顆粒を得た。
【0124】
上記の配合例4〜6、及び試験例2で用いた比較例16について、以下の通り吸収性試験を実施した。
<吸収実験条件>
使用動物:ビーグル犬(北山ラベス、雄3頭)
食事条件:前日より20時間絶食
投与量:100mg/body
投与サンプル:配合例4〜6及び比較例16をそれぞれ0.82g
投与方法:水50mLと共に経口投与
【0125】
前処置:投与サンプルの投薬30分前に硫酸アトロピン静注液10μg/0.1mL/kg及びペンタガストリン筋注液10μg/0.1mL/kgを筋肉内投与し、その後45分間隔でペンタガストリン筋注液10μg/0.1mL/kgを2回筋肉内投与した。
試験例2と同様に、配合例及び比較例の経口投与後、30分後、1時間後、1.5時間後、2時間後、4時間後及び8時間後に各動物から採血し、化合物Aの血中濃度を(液体クロマトグラフィー質量分析法により)測定して、AUC及びCmax値を算出した。結果を表4に示す。
【0126】
【表4】
【0127】
表4に示す通り、ラウリル硫酸ナトリウムを化合物Aの0.25倍、等量、3倍添加した顆粒(配合例4、5、6)のいずれも、化合物Aのみを懸濁させた比較例16より高い吸収性を示すことが明らかとなった。配合例6は最も高いCmaxを示したものの、AUCは配合例5と同程度であったことから、ラウリル硫酸ナトリウムの添加量は化合物Aと等量以上であれば、より高い吸収性が得られると考えられた。
【0128】
[試験例4]錠剤の成形性及び崩壊性試験
化合物Aを含有する錠剤の崩壊性を改善することを目的として、崩壊剤選定の検討を行った。5種類の候補添加剤、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(LH−21、信越化学工業製)、クロスポビドン(コリドンCL−SF、BASF Corporation)、カルメロースナトリウム(キッコレート、旭化成株式会社)、カルメロースカルシウム(E.C.G-505、五徳薬品株式会社)、又はカルボキシメチルスターチナトリウム(グリコリス、ROQUETTE社製)を、それぞれ化合物Aを含有する錠剤の総質量に対して3%あるいは10%添加し、万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて以下の表5に示す組成の錠剤を製した。この時、目標硬度(65N)が得られる打錠圧と錠剤の崩壊性を評価することにより、崩壊剤のスクリーニングを実施した。崩壊性は試験液として水を用いて第十六改正日本薬局方の崩壊試験により評価した。
【0129】
<配合例7>
化合物A 120g、ラウリル硫酸ナトリウム 120g、乳糖 516g、コーンスターチ 276gをポリ袋にて1分間混合し、目開き500μmの篩で全量篩過した後、再度ビニル袋にて5分間混合した。得られた混合粉末のうち、340gを流動層造粒機(フロイント産業株式会社)にいれ、7.5%低粘度ヒドロキシプロピルセルロース 161gを噴霧しながら造粒し、造粒物を得た。
得られた造粒物に結晶セルロース、クロスポビドン及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合した。目開き850μmの篩で全量篩過した後、再度ガラス瓶で混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて目標硬度(65N)が得られる打錠圧にて化合物Aの錠剤を製した。
【0130】
<配合例8>
配合例7と同様にして得た造粒物に結晶セルロース、クロスポビドン及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合した。目開き850μmの篩で全量篩過した後、再度ガラス瓶で混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて目標硬度(65N)が得られる打錠圧にて化合物Aの錠剤を製した。
【0131】
<配合例9>
配合例7と同様にして得た造粒物に結晶セルロース、カルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合した。目開き850μmの篩で全量篩過した後、再度ガラス瓶で混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて目標硬度(65N)が得られる打錠圧にて化合物Aの錠剤を製した。
【0132】
<配合例10>
配合例7と同様にして得た造粒物に結晶セルロース、カルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合した。目開き850μmの篩で全量篩過した後、再度ガラス瓶で混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて目標硬度(65N)が得られる打錠圧にて化合物Aの錠剤を製した。
【0133】
<配合例11>
配合例7と同様にして得た造粒物に結晶セルロース、カルメロースカルシウム及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合した。目開き850μmの篩で全量篩過した後、再度ガラス瓶で混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて目標硬度(65N)が得られる打錠圧にて化合物Aの錠剤を製した。
【0134】
<配合例12>
配合例7と同様にして得た造粒物に結晶セルロース、カルメロースカルシウム及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合した。目開き850μmの篩で全量篩過した後、再度ガラス瓶で混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて目標硬度(65N)が得られる打錠圧にて化合物Aの錠剤を製した。
【0135】
<配合例13>
配合例7と同様にして得た造粒物に結晶セルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合した。目開き850μmの篩で全量篩過した後、再度ガラス瓶で混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて目標硬度(65N)が得られる打錠圧にて化合物Aの錠剤を製した。
【0136】
<配合例14>
配合例7と同様にして得た造粒物に結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合した。目開き850μmの篩で全量篩過した後、再度ガラス瓶で混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて目標硬度(65N)が得られる打錠圧にて化合物Aの錠剤を製した。
【0137】
<配合例15>
配合例7と同様にして得た造粒物に結晶セルロース及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合した。目開き850μmの篩で全量篩過した後、再度ガラス瓶で混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて目標硬度(65N)が得られる打錠圧にて化合物Aの錠剤を製した。
崩壊性試験について、配合例7〜15の結果を表5に示す。
【0138】
【表5】
【0139】
表5に示す結果より、いずれの崩壊剤を用いても、杵の耐圧性能範囲である打錠圧13kN以下にて一定の硬度の錠剤を成形でき、崩壊時間は10分以内であった。特に、クロスポビドン、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウムを用いたときは、打錠圧10kN以下にて一定の硬度の錠剤を成形でき、崩壊時間は9分以内であった。また、クロスポビドンは、候補添加剤を含有しない配合例15と比較した場合の崩壊時間の短縮に加え、成形圧が低かったことから成形性改善効果も見られた。一方で、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びカルボキシメチルスターチナトリウムは崩壊時間の短縮は見られず、かつ高い打錠圧が必要であり、成形性は低下する傾向が見られた。この結果より、いずれの崩壊剤を用いても錠剤として許容される有用性が示されるが、特にクロスポビドン、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウムの有用性が非常に高いことが示唆された。
【0140】
[試験例5]錠剤の成形性及び崩壊性試験
試験例4において、化合物A及びラウリル硫酸ナトリウムを含有する錠剤において高い成形性及び崩壊性改善効果が認められたクロスポビドン及びカルメロースナトリウムを用い、これら崩壊剤以外の成分は同じ質量とした組成にて、ロータリー打錠機を用いて目標硬度(60N)が得られる打錠圧で錠剤を以下のように調製して比較した。結果を表6に示す。
【0141】
<配合例16>
化合物A 200g、ラウリル硫酸ナトリウム(NIKKOL SLS,日光ケミカルズ株式会社製)200g、乳糖 860g、コーンスターチ 460gをポリ袋にて1分間混合し、目開き500μmの篩で全量篩過した後、再度ビニル袋にて1分間混合した。得られた混合粉末を流動層造粒機(フロイント産業株式会社)にいれ、7.5%低粘度ヒドロキシプロピルセルロース 800gを噴霧しながら造粒し、造粒物を得た。得られた造粒物を目開き850μmの篩で全量篩過した。
造粒物篩過品222.5gに結晶セルロース25g、クロスポビドン7.5g及びステアリン酸マグネシウム2.5gを加えてポリ袋にて混合し後、打錠機(株式会社菊水製作所)で打錠し、錠剤を得た。
【0142】
<配合例17>
配合例16と同様にして得た造粒物篩過品222.5gに結晶セルロース25g、クロスポビドン25g及びステアリン酸マグネシウム2.5gを加えてポリ袋にて混合し後、打錠機(株式会社菊水製作所)で打錠し、錠剤を得た。
【0143】
<配合例18>
配合例16と同様にして得た造粒物篩過品222.5gに結晶セルロース25g、カルメロースナトリウム7.5g及びステアリン酸マグネシウム2.5gを加えてポリ袋にて混合し後、打錠機(株式会社菊水製作所)で打錠し、錠剤を得た。
【0144】
<配合例19>
配合例16と同様にして得た造粒物篩過品445gに結晶セルロース50g及びステアリン酸マグネシウム5gを加えてポリ袋にて混合し後、打錠機(株式会社菊水製作所)で打錠し、錠剤を得た。
【0145】
【表6】
【0146】
表6に示す結果より、試験例4と同様の傾向が得られ、崩壊時間は、クロスポビドン及びカルメロースナトリウムのいずれも含有しない配合例19が最も長く、次いで配合例18(カルメロースナトリウム6質量部)>配合例16(クロスポビドン6質量部)>配合例17(クロスポビドン20質量部)の順となり、打錠圧は、配合例18>配合例19>配合例16>配合例17の順となった。本検討により、クロスポビドンは同量のカルメロースナトリウムを添加した場合と比較して、崩壊性及び成形性改善のためにより有用であることが示された。
【0147】
[試験例6]吸収性試験
化合物A及びラウリル硫酸ナトリウムを含有し、化合物Aの含有量が異なる以下の配合例20(化合物Aを20mg含む)及び配合例21(化合物Aを4mg含む)のフィルムコーティング錠を製し、試験例2と同様の吸収性試験を行った。
【0148】
<配合例20>
配合例19で得た錠剤180gに、コーティング剤6.8g及び精製水81.2gからなるフィルムコーティング液をコーティング機(フロイント産業株式会社)にてスプレーし、配合例20のフィルムコーティング錠を得た。コーティング剤は、低粘度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、酸化チタン及び着色剤からなる一般的な組成のものを使用した。
【0149】
<配合例21>
化合物A 12g、ラウリル硫酸ナトリウム(NIKKOL SLS,日光ケミカルズ株式会社製)12g、乳糖 354g、コーンスターチ 138gをポリ袋にて1分間混合し、目開き500μmの篩で全量篩過した後、再度ビニル袋にて1分間混合した。得られた混合粉末を流動層造粒機(株式会社パウレック)にいれ、7.5%低粘度ヒドロキシプロピルセルロース 239gを噴霧しながら造粒し、造粒物を得た。得られた造粒物を目開き850μmの篩で全量篩過した。
造粒物篩過品178gに結晶セルロース20g及びステアリン酸マグネシウム2gを加えてポリ袋にて混合し後、打錠機(株式会社菊水製作所)で打錠し、錠剤を得た。得られた錠剤180gに、コーティング剤6.8g及び精製水81.2gからなるフィルムコーティング液をコーティング機(フロイント産業株式会社)にてスプレーし、配合例21のフィルムコーティング錠を得た。
【0150】
これらの配合例について以下の通り吸収性試験を実施した。
<吸収実験条件>
使用動物:ビーグル犬(北山ラベス、雄6頭)
食事条件:前日より20時間絶食
投与量:20mg/body
投与サンプル:配合例20、21
投与方法:水50mLと共に経口投与
【0151】
前処置:投与サンプルの投薬30分前に硫酸アトロピン静注液10μg/0.1mL/kg及びペンタガストリン筋注液10μg/0.1mL/kgを筋肉内投与し、その後45分間隔でペンタガストリン筋注液10μg/0.1mL/kgを2回筋肉内投与した。
配合例20及び21の経口投与後、30分後、1時間後、1.5時間後、2時間後、4時間後及び8時間後に各動物から採血し、化合物Aの血中濃度を(液体クロマトグラフィー質量分析法により)測定して、AUC、Cmax及びTmax値を算出した。結果を表7に示す。
【0152】
【表7】
【0153】
表7の結果より、20mg錠(配合例20)も4mg錠(配合例21)もイヌにおいて問題なく吸収性を示すことがわかった。両者の性質を比較すると、20 mg錠はTmaxの遅い製剤であり、一方4 mg錠はTmaxがばらつくものの、比較的吸収の速い製剤であることが明らかとなった。
【0154】
[試験例7]崩壊性試験
Tmaxのバラツキが少なく、吸収の立ち上がりが速い製剤処方を見出すために、表8に組成を示す配合例22〜32の処方を以下のように調製し、化合物A及びラウリル硫酸ナトリウムを含有する造粒品への後末添加剤の種類及びその量を検討した。崩壊性は試験液として水を用いて崩壊試験により評価した。結果を表8に示す。
【0155】
<配合例22>
化合物A 60g、ラウリル硫酸ナトリウム(NIKKOL SLS,日光ケミカルズ株式会社製)60g、乳糖 258g、コーンスターチ 138gをポリ袋にて1分間混合し、目開き500μmの篩で全量篩過した後、再度ビニル袋にて1分間混合した。得られた混合粉末を流動層造粒機(株式会社パウレック)にいれ、7.5%低粘度ヒドロキシプロピルセルロース 241gを噴霧しながら造粒し、造粒物を得た。得られた造粒物を目開き850μmの篩で全量篩過した。
得られた造粒物に乳糖水和物(Super Tab 11SD、DFE Pharma)、結晶セルロース(CEOLUS pH-102、旭化成株式会社)、クロスポビドン(Kollidon CL、BASF Corporation)及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて500mgの錠剤を製した。
【0156】
<配合例23>
配合例22と同様にして得た造粒物にD−マンニトール(Pearlitol 100SD、Roquette社製)、結晶セルロース(CEOLUS pH−102)、クロスポビドン(Kollidon CL)及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて500mgの錠剤を製した。
【0157】
<配合例24>
配合例22と同様にして得た造粒物に結晶セルロース(CEOLUS pH−102)、クロスポビドン(Kollidon CL)及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて300mgの錠剤を製した。
【0158】
<配合例25>
配合例22と同様にして得た造粒物にD−マンニトール(Pearlitol 100SD)、結晶セルロース(CEOLUS KG−802、旭化成株式会社製)、クロスポビドン(Kollidon CL)及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて500mgの錠剤を製した。
【0159】
<配合例26>
配合例22と同様にして得た造粒物にD−マンニトール(Pearlitol 100SD)、結晶セルロース(CEOLUS KG−802)、クロスポビドン(Kollidon CL−SF)及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて300mgの錠剤を製した。
【0160】
<配合例27>
配合例22と同様にして得た造粒物にD−マンニトール(Pearlitol 100SD)、結晶セルロース(CEOLUS KG−802)、クロスポビドン(Kollidon CL−SF)及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて300mgの錠剤を製した。
【0161】
<配合例28>
配合例22と同様にして得た造粒物にD−マンニトール(Pearlitol 100SD)、結晶セルロース(CEOLUS KG−802)、クロスポビドン(Kollidon CL−SF)及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて400mgの錠剤を製した。
【0162】
<配合例29>
配合例22と同様にして得た造粒物にD−マンニトール(Pearlitol 100SD)、結晶セルロース(CEOLUS KG−802)、クロスポビドン(Kollidon CL−SF)及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて400mgの錠剤を製した。
【0163】
<配合例30>
配合例22と同様にして得た造粒物にD−マンニトール(Pearlitol 100SD)、結晶セルロース(CEOLUS KG−802)、クロスポビドン(Kollidon CL−SF)及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて500mgの錠剤を製した。
【0164】
<配合例31>
配合例22と同様にして得た造粒物にD−マンニトール(Pearlitol 100SD)、結晶セルロース(CEOLUS KG−802)及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて500mgの錠剤を製した。
【0165】
<配合例32>
配合例22と同様にして得た造粒物にマンニトール(Pearlitol 100SD)、結晶セルロース(CEOLUS pH−102)及びステアリン酸マグネシウムを加えてガラス瓶にて混合し、打錠末を得た。万能引張圧縮試験機(株式会社島津製作所)を用いて500mgの錠剤を製した。
【0166】
【表8】
【0167】
まず、乳糖水和物及びD−マンニトール添加の影響を評価した結果、配合例22と23の結果等に示すように、D−マンニトールの添加により水における崩壊性が大きく改善した。
次に、結晶セルロースのグレード及びクロスポビドン添加の影響を評価した結果、結晶セルロースのグレードは、配合例23と25、及び配合例31と32の結果等に示すように、錠剤の崩壊性にほとんど影響しなかったが、クロスポビドンの添加は、配合例25,30と31の結果等から、崩壊性改善に大きく寄与することが示された。
【0168】
最後に、D−マンニトール、結晶セルロース及びクロスポビドンの添加量の影響を総合的に評価した結果、配合例26〜30のいずれも崩壊時間は配合例25より遅かった。配合例27(後末添加量:122mg,クロスポビドン:10%),配合例29(後末添加量:222mg、クロスポビドン:10%)及び配合例30(後末添加量:322mg、クロスポビドン:5%)の崩壊性は配合例25(後末添加量:322mg、クロスポビドン:10%)よりも劣ることから、速やかな崩壊性を有する錠剤を調製するためには、後末添加剤としての総量は造粒品の1.5倍程度必要であり、さらに崩壊剤(クロスポビドン)は錠剤質量の10%程度添加する必要性が示唆された。
【0169】
[試験例8]
後末添加剤量が異なり、化合物Aを20mg含む配合例33及び34、化合物Aを4mg含む配合例35の錠剤を以下のようにして調製し、試験例2と同様にしてin vivo吸収性を評価した。結果を表9に示す。
【0170】
<配合例33>
化合物A 80g、ラウリル硫酸ナトリウム(NIKKOL SLS,日光ケミカルズ株式会社製)80g、乳糖108g、コーンスターチ120gをポリ袋にて1分間混合し、目開き500μmの篩で全量篩過した後、再度ビニル袋にて1分間混合した。得られた混合粉末を流動層造粒機(株式会社パウレック)にいれ、7.5%低粘度ヒドロキシプロピルセルロース 241gを噴霧しながら造粒し、造粒物を得た。得られた造粒物を目開き850μmの篩で全量篩過した。
造粒物篩過品100gにD−マンニトール(Pealitol 100SD)137g、結晶セルロース(CEOLUS KG−802)30g、クロスポビドン(Kollidon CL)30g及びステアリン酸マグネシウム3gを加えてポリ袋にて混合し後、打錠機(株式会社菊水製作所)で打錠し、錠剤を得た。得られた錠剤180gに、コーティング剤7.7g及び精製水92.3gからなるフィルムコーティング液をコーティング機(フロイント産業株式会社)にてスプレーし、配合例33のフィルムコーティング錠を得た。コーティング剤は、低粘度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、酸化チタン及び着色剤からなる一般的な組成のものを使用した。
【0171】
<配合例34>
配合例33と同様にして得た造粒物篩過品125gにD−マンニトール(Pealitol 100SD)72.5g、結晶セルロース(CEOLUS KG−802)25g、クロスポビドン(Kollidon CL)25g及びステアリン酸マグネシウム2.5gを加えてポリ袋にて混合し後、打錠機(株式会社菊水製作所)で打錠し、錠剤を得た。得られた錠剤180gに、コーティング剤7.2g及び精製水86.4gからなるフィルムコーティング液をコーティング機(フロイント産業株式会社)にてスプレーし、配合例34のフィルムコーティング錠を得た。
【0172】
<配合例35>
配合例33と同様にして得た造粒物篩過品60gにD−マンニトール(Pealitol 100SD)129.6g、結晶セルロース(CEOLUS KG-802)24g、クロスポビドン(Kollidon CL)24g及びステアリン酸マグネシウム2.4gを加えてポリ袋にて混合し後、打錠機(株式会社菊水製作所)で打錠し、錠剤を得た。得られた錠剤180gに、コーティング剤7.5g及び精製水90.4gからなるフィルムコーティング液をコーティング機(フロイント産業株式会社)にてスプレーし、配合例35のフィルムコーティング錠を得た。
【0173】
これらの配合例について以下の通り吸収性試験を実施した。
<吸収実験条件>
使用動物:ビーグル犬(北山ラベス、雄6頭)
食事条件:前日より20時間絶食
投与量:20mg/body
投与サンプル:配合例33、34、35
投与方法:水50mLと共に経口投与
【0174】
前処置:投与サンプルの投薬30分前に硫酸アトロピン静注液10μg/0.1mL/kg及びペンタガストリン筋注液10μg/0.1mL/kgを筋肉内投与し、その後45分間隔でペンタガストリン筋注液10μg/0.1mL/kgを2回筋肉内投与した。
配合例33、34及び35の経口投与後、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後及び8時間後に各動物から採血し、化合物Aの血中濃度を(液体クロマトグラフィー質量分析法により)測定して、AUC、Cmax及びTmax値を算出した。結果を表9に示す。
【0175】
【表9】
【0176】
表9の結果より、いずれの製剤もTmaxが短くなる傾向が見られ、製剤間にPKプロファイルの違いは認められなかった。よって、いずれの配合例もTmaxのバラツキが少なく、吸収の立ち上がりが速い製剤処方であることが示された。
【0177】
[試験例9]
アルキル硫酸ナトリウムが含まれていない造粒物を以下のようにして調製し、造粒物の製造過程におけるアルキル硫酸ナトリウムの影響を評価した。結果を表10に示す。
【0178】
<配合例36>
目開き1700μmのスクリーン篩過した化合物A 60g、ラウリル硫酸ナトリウム 60g、乳糖 81g、コーンスターチ 90gを流動層造粒機(フロイント産業株式会社)にいれ、5%低粘度ヒドロキシプロピルセルロース 180gを噴霧しながら造粒し、造粒物を得た。
【0179】
<比較例18>
目開き1700μmのスクリーンで篩過した化合物A 60g、乳糖 141g、コーンスターチ 90gを流動層造粒機(フロイント産業株式会社)にいれ、5%低粘度ヒドロキシプロピルセルロースを噴霧し、造粒工程を実施しようとしたが、粉体が流動しなかったため,造粒できなかった。
【0180】
<比較例19>
目開き1700μmのスクリーン篩過した化合物A 30g、乳糖 70.5g、コーンスターチ 45gを流動層造粒機(フロイント産業株式会社)にいれた。結合液噴霧前に水を噴霧することにより流動化させた後、5%低粘度ヒドロキシプロピルセルロース 90gを噴霧しながら造粒し、造粒物を得た。
【0181】
<粉体物性評価>
配合性36、及び比較例19の造粒前混合末について,パウダテスタ(ホソカワミクロン(株))を用いて粉体物性(安息角、崩潰角、かさ密度、タップ密度及び圧縮度)を評価した。その結果を表10に示す。
【0182】
【表10】
【0183】
なお、粉体物性は、第十七改正日本薬局方「26.粉体の流動性」において国際調和に準じた試験が記載されており、その中で、圧縮度は、かさ密度(ρbulk)、タップ密度(ρtapped)は、以下のように定義されている。
圧縮度 = (ρtapped − ρbulk)/ρtapped × 100
【0184】
また、同局方中、「表1 流動特性と対応する安息角」を参照すると、「安息角が 50°を超えると、製造に適さないことが多い」との記載がある。これをもとに、配合例36と比較例19を比較すると、ラウリル硫酸ナトリウムの存在により、安息角が50°を下回り、流動性が改善されている。そのため、本発明においてラウリル硫酸ナトリウムをはじめとするアルキル硫酸ナトリウムの添加により、流動化剤としての効果があることがわかった。
【0185】
[試験例10]
アルキル硫酸ナトリウムが含まれていない造粒物を打錠して錠剤を以下のようにして調製し、錠剤の製造過程におけるアルキル硫酸ナトリウムの影響を評価した。
【0186】
<配合例37>
配合例36で得られた造粒物を目開き600μmの篩で全量篩過した。造粒物篩過品120gにD−マンニトール(Pearlitol 100SD)261.61g、結晶セルロース(CEOLUS KG−802)48g、クロスポビドン(Kollidon CL)48g及びステアリン酸マグネシウム2.4gを加えてポリ袋にて混合した後、打錠機(株式会社菊水製作所)で打錠し、錠剤を得た。
【0187】
<比較例20>
比較例19で得られた造粒物を用いて、配合例37と同様の方法により、錠剤を得た。
【0188】
<打錠の際の取出圧力評価>
配合性37、及び比較例20の錠剤について、打錠機から錠剤を取り出す圧力を評価した。その結果を
図1に示す。
【0189】
60分間の打錠において、配合例37の取出圧力は一定であったものの、比較例20の取出圧力は打錠開始5分後から取出圧力の上昇が見られ、30分まで経時的に増加し、それ以後も高い状態が継続した。
【0190】
また、打錠開始後30分における臼杵の状態を比較した。どちらの錠剤も杵への粉体の付着は見られず、スティッキングは確認されなかったものの、比較例20では臼への粉体の固着が見られた。そのため、得られた錠剤は側面に多数の縦筋が確認され、ラウリル硫酸ナトリウムを含まない比較例20は打錠障害の1つであるバインディングが発生した。一方で、配合例37ではバインディングは認められなかった。
【0191】
これらの結果により、本発明においてラウリル硫酸ナトリウムをはじめとするアルキル硫酸ナトリウムの添加により、打錠障害の1つであるバインディングの改善効果があることがわかった。
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