(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918206
(24)【登録日】2021年7月26日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】引出し用ガイド
(51)【国際特許分類】
A47B 88/443 20170101AFI20210729BHJP
【FI】
A47B88/443
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-508544(P2020-508544)
(86)(22)【出願日】2018年7月6日
(65)【公表番号】特表2020-530370(P2020-530370A)
(43)【公表日】2020年10月22日
(86)【国際出願番号】AT2018060138
(87)【国際公開番号】WO2019033135
(87)【国際公開日】20190221
【審査請求日】2020年2月14日
(31)【優先権主張番号】A50685/2017
(32)【優先日】2017年8月17日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーク モイスブアガー
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス コールハウプト
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ライアラー
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第03058847(EP,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第03056116(EP,A1)
【文献】
独国実用新案第202004007227(DE,U1)
【文献】
独国特許出願公開第102005017417(DE,A1)
【文献】
特開2004−089710(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0091770(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/443
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引出し用ガイド(4)であって、
- 互いに相対的に移動可能に支持されている少なくとも2つのガイドレール(9,10,11)と、
- 荷重伝達する転動体(36)を備えた少なくとも1つのキャリッジ(15)であって、前記キャリッジ(15)は、前記少なくとも2つのガイドレール(9,10,11)の間において走行可能に支持されており、前記ガイドレール(9,10,11)は、前記ガイドレール(9,10,11)相互の引出方向における位置ずれであるエラー位置が存在しない場合に、前記少なくとも1つのキャリッジ(15)の運動時に予め設定された相互の相対位置をとる、キャリッジ(15)と、
- 前記ガイドレール(9,10,11)相互の、前記予め設定された相対位置とは異なるエラー位置を補償して前記予め設定された相対位置に移動させるための補償装置(22)であって、前記補償装置(22)は、前記ガイドレール(9,10,11)のうちの1つのガイドレールを操作可能な操作装置(17)を有していて、該操作装置(17)は操作時に前記エラー位置を補償する、補償装置(22)と、
を含む引出し用ガイド(4)において、
前記補償装置(22)の前記操作装置(17)を、前記ガイドレール(9,10,11)相互の前記予め設定された相対位置の存在時に、前記ガイドレール(9,10,11)と係合外に切り換える、切換え装置(27)が設けられている
ことを特徴とする、引出し用ガイド(4)。
【請求項2】
前記補償装置(22)の前記操作装置(17)は、1つのガイドレール(10)に可動に支持された操作要素(17a)を有しており、該操作要素(17a)は、前記エラー位置を補償するために、1つの他のガイドレール(11)に配置された、または形成されたストッパ(19)によって操作可能であり、かつ前記操作要素(17a)は、前記予め設定された相対位置が生じている時に前記ストッパ(19)とは係合外にある、
請求項1記載の引出し用ガイド。
【請求項3】
前記ストッパ(19)は、前記1つの他のガイドレール(11)の前端領域から横方向に突出している、
請求項2記載の引出し用ガイド。
【請求項4】
前記切換え装置(27)は、可動に支持された切換え要素(27a)を有していて、該切換え要素(27a)は、前記補償装置(22)の前記操作要素(17a)と運動可能に連結されている、
請求項2又は3記載の引出し用ガイド。
【請求項5】
前記切換え要素(27a)は、少なくとも1つのジョイント軸(25)を介して前記操作要素(17a)に旋回可能に連結されている、
請求項4記載の引出し用ガイド。
【請求項6】
前記切換え要素(27a)は、1つの第1の切換え位置と少なくとも1つの第2の切換え位置とを有しており、前記操作要素(17a)は、前記切換え要素(27a)の前記第1の切換え位置において、−前記ガイドレール(9,10,11)相互の前記エラー位置が生じている場合に−、第1の位置にあり、該第1の位置において前記操作要素(17a)は、前記ストッパ(19)に解離可能に連結可能であり、かつ前記操作要素(17a)は、前記切換え要素(27a)の前記第2の切換え位置において、−前記ガイドレール(9,10,11)相互の予め設定された相対位置が生じている時に−、第2の位置にあり、該第2の位置において前記操作要素(17a)は、前記ストッパ(19)とは係合しない、
請求項4または5記載の引出し用ガイド。
【請求項7】
前記ガイドレール(9,10,11)のうちの1つのガイドレールが、ロック手段(23)を有していて、該ロック手段(23)は、−前記ガイドレール(9,10,11)相互のエラー位置が生じている場合に−、前記第1の切換え位置を起点とした前記第2の切換え位置への前記切換え要素(27a)の運動を阻止する、
請求項6記載の引出し用ガイド。
【請求項8】
前記ロック手段(23)は、前記ガイドレール(9,10,11)のうちの1つのガイドレールの壁部分によって形成されている、
請求項7記載の引出し用ガイド。
【請求項9】
前記ロック手段(23)は、前記ガイドレール(9,10,11)のうちの1つのガイドレールの端部領域に配置されている、
請求項8記載の引出し用ガイド。
【請求項10】
前記ロック手段(23)は、前記ガイドレール(9,10,11)のうちの1つのガイドレールの前端領域に配置されている、
請求項9記載の引出し用ガイド。
【請求項11】
前記補償装置(22)の前記操作要素(17a)と前記切換え装置(27)の前記切換え要素(27a)とには、蓄力器(26)によって互いに相対的に予荷重が加えられている、
請求項4から10までのいずれか1項記載の引出し用ガイド。
【請求項12】
当該引出し用ガイド(4)は、引出し(3)に固定することができる第3のガイドレール(11)を有していて、該第3のガイドレール(11)は、第1のガイドレール(9)および第2のガイドレール(10)に対して相対的に走行可能に支持されている、
請求項1から11までのいずれか1項記載の引出し用ガイド。
【請求項13】
前記第2のガイドレール(10)および前記第3のガイドレール(11)は、前記エラー位置の補償時に、前記第1のガイドレール(9)に対して相対的に等しい速度で可動である、
請求項12記載の引出し用ガイド。
【請求項14】
前記第2のガイドレール(10)と前記第3のガイドレール(11)との間に、荷重伝達する転動体(37)を備えた少なくとも1つの第2のキャリッジ(28)が、移動可能に支持されている、
請求項12または13記載の引出し用ガイド。
【請求項15】
当該引出し用ガイド(4)は、前記少なくとも1つのキャリッジ(15)として2つのキャリッジ(15),(28)の同期運動を制御するための同期化装置(13)を有している、
請求項14記載の引出し用ガイド。
【請求項16】
前記同期化装置(13)は、少なくとも1つの回転可能に支持された歯車(14)を有していて、該歯車(14)は、一方では前記第1のキャリッジ(15)と、かつ他方では前記第2のキャリッジ(28)と共働する、
請求項15記載の引出し用ガイド。
【請求項17】
前記同期化装置(13)は、前記第2のガイドレール(10)に、少なくとも1つの前記歯車(14)を有する、
請求項16記載の引出し用ガイド。
【請求項18】
前記エラー位置の補償が、当該引出し用ガイド(4)の開放運動時に行われる、
請求項1から17までのいずれか1項記載の引出し用ガイド。
【請求項19】
1つの家具本体(2)に対して相対的に引出し(3)を移動させるための、請求項1から18までのいずれか1項記載の少なくとも1つの引出し用ガイド(4)を備えた、引出し(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引出し用ガイドであって、
- 互いに相対的に移動可能に支持されている少なくとも2つのガイドレールと、
- 荷重伝達する転動体を備えた少なくとも1つのキャリッジであって、このときキャリッジは、少なくとも2つのガイドレールの間において走行可能に支持されており、このときガイドレールは、ガイドレール相互のエラー位置が存在しない場合に、少なくとも1つのキャリッジの運動時に予め設定された相互の相対位置をとる、キャリッジと、
- ガイドレール相互の、予め設定された相対位置とは異なるエラー位置を補償するための補償装置であって、このとき補償装置は、ガイドレールのうちの1つのガイドレールを操作可能な操作装置を有していて、該操作装置は操作時にエラー位置を補償する、補償装置と、
を含む引出し用ガイドに関する。
【0002】
さらに本発明は、以下に記載の形式の少なくとも1つの引出し用ガイドを備えた引出しに関する。
【0003】
通常の使用時において引出しの開放位置を生ぜしめることがある、レールエラー位置とキャリッジエラー位置とが、引出し用ガイドにおけるエラー位置と呼ばれる。レールエラー位置は、例えば、引出しレールが移動可能なセンタレールに対して相対的に同期走行とは異なっていて、これによってレール相互の相対位置が正しくない場合に発生する。これに対してキャリッジのエラー位置が、キャリッジエラーと呼ばれ、キャリッジのエラー位置は、開放運動と閉鎖運動とによって生ぜしめられ、かつ正しい出発位置に対して生ぜしめられた差異によって確定されている。キャリッジエラーは、特にスリップによって、または運動経過中における転動系もしくは走行系における弾性に基づいて生じる。運動の確定された数を上回ると、キャリッジは、最終的にその目標位置から大きく離れることがあり、このときキャリッジは、引出しが総じて家具本体の完全な終端位置に達する前に、レール系におけるエンドストッパに衝突するようになってしまう。さらに引出し用ガイドは、しばしば引込み装置およびダンパを備えており、ダンパは、引出しの引込み経路を、最後の閉鎖領域にわたって、完全な閉鎖位置に至るまで緩衝する。しかしながらこのダンパは、引出しの閉鎖ダイナミズムを低減し、運動エネルギの不足によって、引出しの運動中に発生したエラー位置をもはや補償することができないようになる。引出しが完全に開放されない、それぞれの追加的な運動時に、引出しはエラー位置に基づいて開放位置に留まり、このことは、視覚的に不都合に作用し、かつそれに加えて人または物と衝突するというおそれをももたらす。
【0004】
欧州特許出願公開第1374734号明細書には、ガイドレールの同期走行エラーを補償するための補償装置を備えた引出し用ガイドが開示されている。この引出し用ガイドでは、センタレールに、2つのレバーアームを備えた補償レバーが支持されており、このとき閉鎖運動の終わりに、第1のレバーアームが引出しレールと、かつ第2のレバーアームが本体レールと共働する。このとき補償装置は、連続的な同期化装置として形成されているのではなく、いわゆる疑似同期化装置(Pseudosynchronisation)として、または引出し前板の背側と家具本体の端面との間において生じる奥行き間隙の自己回復装置(Selbstheilung)として形成されている。このとき補償装置は、上に述べた奥行き間隙が引出しの閉鎖運動時に特定の値に修正されるように形成されている。このことには次のような欠点がある。すなわちこの場合補償レバーは、それぞれの閉鎖運動時に、引出しレールおよび本体レールと共働し、このとき不快な騒音のみならず、摩擦もまた高められ、かつ引出しは、高められた力消費によって、完全な終端位置に運動されねばならない。また発生する摩擦によって、引出しを閉鎖された終端位置に確実に引き込むことができるようにするためには、引込み装置のばね力を比較的高く設定することが必要である。
【0005】
ゆえに本発明の課題は、上において議論された欠点を回避することができる、冒頭に述べた形式の引出し用ガイドを提供することである。
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴によって解決される。本発明のさらに好適な構成は、従属請求項に記載されている。
【0007】
つまり本発明によれば、補償装置の操作装置を、ガイドレール相互の予め設定された相対位置の存在時に、ガイドレールと係合外に切り換える、切換え装置が設けられている。
【0008】
言い換えれば、補償装置の操作装置は、実際にガイドレールのエラー位置が生じている場合にだけ、1つのガイドレールの運動によって操作可能である。これに対してエラー位置が生じていない場合には、ガイドレールは、補償装置による妨げなしに、互いに相対的に走行可能である。
【0009】
このとき、補償装置の操作装置は、1つのガイドレールに可動に支持された操作要素を有しており、該操作要素は、エラー位置を補償するために、1つの他のガイドレールに配置された、または形成されたストッパによって操作可能であり、かつこのとき操作要素は、予め設定された相対位置が生じている時にストッパとは係合外にあることを提案することができる。
【0010】
このとき操作要素を操作するためのストッパは、1つのガイドレールの前端領域に配置されていてよい。このときストッパは、ガイドレールから横方向に突出しており、かつ好ましくは、取付け位置において1つのガイドレールから下方に向かって突出していることを提案することができる。
【0011】
切換え装置は、可動に支持された切換え要素を有していてよく、該切換え要素は、補償装置の操作要素と、例えば少なくとも1つのジョイント軸を介して、運動可能に連結されている。切換え要素は、1つの第1の切換え位置と少なくとも1つの第2の切換え位置とを有していてよく、このとき操作要素は、切換え要素の第1の切換え位置において、−ガイドレール相互のエラー位置が生じている場合に−、第1の位置にあり、該第1の位置において操作要素は、ストッパに解離可能に連結可能であり、かつこのとき操作要素は、切換え要素の第2の切換え位置において、−ガイドレール相互の予め設定された相対位置が生じている時に−、第2の位置にあり、該第2の位置において操作要素は、ストッパとは係合しないようになっている。
【0012】
切換え要素の運動を制御するために、ロック手段が設けられてよく、該ロック手段は、ガイドレールのうちの1つのガイドレールに配置されているか、または形成されており、かつロック手段は、−ガイドレール相互のエラー位置が生じている場合に−、第1の切換え位置を起点とした第2の切換え位置への切換え要素の運動を阻止する。このとき切換え要素は、第1の切換え位置において、−ガイドレール相互のエラー位置が生じている場合に−、ロック手段に接触しており、このとき補償装置の操作装置は、1つのガイドレールによって操作可能であることを提案することができる。切換え要素の第2の切換え位置において、−ガイドレール相互の予め設定された相対位置が生じている時に−、切換え要素は、自由位置にあってよく、これによって補償装置の操作装置は、ガイドレールとは係合外にあり、かつその結果ガイドレールによって操作され得ない。
【0013】
1つの実施例によれば、エラー位置の補償が、引出し用ガイドの開放運動時に行われることを提案することができる。このことには、1つのガイドレールの開放運動時にいずれにせよ手によって引出しに力が加えられねばならないという利点、およびエラー位置の場合によっては必要な修正を、使用者が事実上に気づかないという利点がある。
【0014】
本発明のさらなる詳細および利点は、以下の図面の説明に基づき明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】家具本体と、この家具本体に対して相対的に走行可能に支持された引出しとを備えた家具を示す斜視図である。
【
図3b】
図3aの一部を拡大して示す詳細図である。
【
図3c】引出し用ガイドを
図3aとは異なった方向から見た図である。
【
図3d】
図3cの一部を拡大して示す詳細図である。
【
図4b】予め設定された正しい相互の相対位置を備えたガイドレールの引出し運動を拡大して示す図である。
【
図4c】予め設定された正しい相互の相対位置を備えたガイドレールの引出し運動を拡大して示す図である。
【
図5b】
図5aの一部を拡大して示す詳細図である。
【
図5d】
図5cの一部を拡大して示す詳細図である。
【
図6a】ガイドレールのエラー位置の修正の時間的な経過を拡大して示す詳細図である。
【
図6b】ガイドレールのエラー位置の修正の時間的な経過を拡大して示す詳細図である。
【
図6c】ガイドレールのエラー位置の修正の時間的な経過を拡大して示す詳細図である。
【
図6d】ガイドレールのエラー位置の修正の時間的な経過を拡大して示す詳細図である。
【0016】
図1には、棚状の家具本体2を備えた家具1が示されており、このとき引出し3は、引出し用ガイド4を介して家具本体2に対して相対的に走行可能に支持されている。引出し3はそれぞれ、1つの前板5と、1つの引出し底板6と、複数の側壁7と、1つの背壁8とを有している。図示の実施例では引出し用ガイド4はそれぞれ、固定区分12a,12bを介して家具本体2に固定することができる1つの第1のガイドレール9と、第1のガイドレール9に対して相対的に移動可能に支持されていて、引出し3に固定することができる第3のガイドレール11と、引出し3の完全な引出しを実現するために、第1のガイドレール9と第3のガイドレール11との間において走行可能に支持されている第2のガイドレール10とを含んでいる。しかしながらまた、引出し用ガイド4が、単に2つの互いに相対的に移動可能なガイドレール9,10を有する実施例も可能である。
【0017】
図2には、家具本体2に固定することができる第1のガイドレール9と、引出し3に固定することができる第3のガイドレール11とを備えた引出し用ガイド4が斜視図で示されており、第1のガイドレール9と第3のガイドレール11との間には、第2のガイドレール10が移動可能に支持されている。同期化装置13によって、ガイドレール9,10,11の間に移動可能に支持されているキャリッジ15の運動が制御可能である。図示の実施例では、同期化装置13は、第2のガイドレール10に回転可能に支持された歯車14を有しており、この歯車14は、一方では、第1のガイドレール9と第2のガイドレール10との間に走行可能に支持されている第1のキャリッジ15と、かつ他方では、第2のガイドレール10と第3のガイドレール11との間に走行可能に支持されている(ここでは見えない)第2のキャリッジ28(
図4a)と、第1および第2のキャリッジ15,28の歯列15a,28aを介して共働する。第3のガイドレール11の前端部には、エンドストッパ20を備えた機能ユニット18が設けられており、エンドストッパ20は、引出し用ガイド4の閉鎖位置において、第3のガイドレール11の押込み運動を制限するために、第1のガイドレール9の対応ストッパ21に当接する。
【0018】
さらに補償装置22が設けられており、この補償装置22によって、ガイドレール9,10,11相互の、予め設定された相対位置とは異なるエラー位置が補償可能である。補償装置22は、図示の実施例では、第3のガイドレール11から横方向に下方に向かって突出しているストッパ19と、第2のガイドレール10に配置されていて、ガイドレール9,10,11のエラー位置においてストッパ19によって操作可能な操作装置17とを含んでいる。
【0019】
図3aには、第1のガイドレール9、第2のガイドレール10、および第3のガイドレール11を備えた引出し用ガイド4が、閉鎖位置において斜視図で示されている。
【0020】
図3bには、
図3aにおいて丸く囲まれた領域が拡大されて示されている。第2のガイドレール10の前端部には、操作装置17を備えた支持部分16が配置されており、操作装置17は、ガイドレール9,10,11のエラー位置が存在する場合に、第3のガイドレール11に配置されたストッパ19によって操作可能である。
【0021】
図3cには、引出し用ガイド4が側面図で示されており、
図3dには、
図3cにおいて枠で囲まれた前側の領域が拡大されて示されている。操作装置17は、可動に、好ましくは旋回可能に支持された操作要素17aを有しており、この操作要素17aは、エラー位置において、ストッパ19と解離可能に連結可能である。操作要素17aは、例えば円弧形状の周面を有していてよく、この周面に沿ってストッパ19は、少なくとも部分的に可動である。切換え装置27によって、操作装置17は、ガイドレール9,10,11相互が予め設定された(正しい)相対位置にある場合には、第3のガイドレール11、好ましくはストッパ19との係合外に切換え可能である。切換え装置27は、可動の、好ましくは軸24を中心にして旋回可能に支持された切換え要素27aを有しており、この切換え要素27aは、操作要素17aに、運動連結されて結合されている。図示の実施形態では、切換え要素27aと操作要素17aとは、少なくとも1つの移動するジョイント軸25を介して旋回可能に互いに結合されている。蓄力器26によって操作要素17aと切換え要素27aとには、互いに相対的に予荷重が加えられていて、操作要素17aと切換え要素27aとが蓄力器26の力によってジョイント軸25を中心にして互いに離反方向に押圧されるようになっている。切換え要素27aは、軸24を中心にして旋回可能に支持されていて、かつ突出部27bを有しており、この突出部27bは、第2のガイドレール10の閉鎖位置において第1のガイドレール9のロック手段23に、好ましくはウェブに接触している。ロック手段23によって、ガイドレール9,10,11相互のエラー位置が存在している場合には、第1の切換え位置を起点とした第2の切換え位置への切換え要素27aの運動が阻止される。
図3a〜
図3dにおいてガイドレール9,10,11は、予め設定された正しい相対位置を互いにとっている。
【0022】
図4aには、引出し用ガイド4が横断面図で示されている。第1のガイドレール9と第2のガイドレール10との間には、第1の転動体36(
図7a)を備えた第1のキャリッジ15が支持されており、これに対して第2のガイドレール10と第3のガイドレール11との間には、第2の転動体37を備えた第2のキャリッジ28が移動可能に配置されている。同期化装置13によって、両キャリッジ15,28相互の運動行程が制御可能である。同期化装置13は、第2のガイドレール10に回転可能に支持された歯車14を含んでおり、この歯車14は、(下側の)第1のキャリッジ15の第1の歯列15aと、かつ(上側の)第2のキャリッジ28の第2の歯列28aとに噛み合っている。
図4aにおいて第3のガイドレール11は、僅かに開放された開放位置にある。
【0023】
図4bには、引出し用ガイド4の、
図4aにおいて枠で囲まれた前側の領域が、拡大されて示されており、この図から補償装置22はより詳しく明らかになる。図示された
図4a〜
図4cにおいて、ガイドレール9,10,11は、予め設定された正しい相互の相対位置にある。いまや第3のガイドレール11が、
図3dに示された閉鎖位置を起点として引出し方向29に運動させられると、切換え要素27aは自由位置30に達し、この結果切換え要素27aは操作要素17aと一緒に、軸24を中心にして時計回り方向に傾倒させられ、これによって、第3のガイドレール11に配置されたストッパ19は、操作装置17による妨げなしに開放位置の方向に運動することができる。自由位置30は、切欠きとして第1のガイドレール9に形成されていても、または図に示されているように、取付け位置において第1のガイドレール9の前に位置している自由空間によって形成されていてもよく、これによって切換え要素27aの突出部27bは、妨げられることなく、いわば空間内へ移動する。引出し方向29とは逆向きの第3のガイドレール11の運動時に、第3のガイドレール11は、操作装置17によって妨げられることなしに再び閉鎖位置へ移動することができ、このとき操作要素17aを、ストッパ19が場合によっては蓄力器26の力に抗して、通過走行可能である。
【0024】
図5aには、引出し用ガイド4が斜視図で示されており、このときガイドレール9,10,11は、例えばキャリッジ15,28とガイドレール9,10,11との間において生じるスリップによって、予め設定された相対位置とは異なるエラー位置を相互にとっている。これによって例えば、第2のガイドレール10が第1のガイドレール9に対して相対的に大きく後方に位置決めされていることが、つまり第1および第2のガイドレール9,10が接触位置31(
図5b)を介して互いに接触していて、ひいては修正すべきエラー位置をとっていることが生じ得る。
【0025】
図5bには、
図5aにおいて枠で囲まれた領域が拡大されて示されている。
図5cには引出し用ガイド4が側面図で示されており、これに対して
図5dには、引出し用ガイド4の、
図5cにおいて枠で囲まれた前側の領域が、拡大されて示されている。完全な閉鎖位置において、切換え要素27aの突出部27bは、第1のガイドレール9のロック手段23に接触している。第1のガイドレール9のウェブの最前位の領域は、前方に向かって斜めに下方に向かって延びていてよく、これによって摩擦が低減され、かつ切換え要素27aの傾倒特性が改善される。
【0026】
図6a〜
図6dには、引出し方向29における第3のガイドレール11の開放運動の時間的な経過が示されている。第1のガイドレール9に対して相対的に第2のガイドレール10のエラー位置が存在している
図5dを起点として、操作装置17の操作要素17aは、第3のガイドレール11のストッパ19によって接触される(
図6a)。このとき切換え要素27aの突出部27bは、第1のガイドレール9のロック手段23に接触しており、このときロック手段23は、切換え要素27aの第2の不作動の切換え位置への切換え要素27aの運動を阻止し、つまりこのとき切換え要素27aは、軸24を中心にして傾倒することができない。つまり第3のガイドレール11は、ストッパ19を介してかつ操作要素17aを介して、第2のガイドレール10に連結される。第3のガイドレール11は同期化装置13(
図2)によって、第2のガイドレール10よりも高い速度で、好ましくはほぼ2倍の速度で運動するので、第2のガイドレール10は、短時間、第3のガイドレール11の比較的高い速度に連結される。つまり第2のガイドレール10および第3のガイドレール11は、エラー位置の補償時に同じ速度で、第1のガイドレール9に対して相対的に可動であり、このとき第2のガイドレール10は、第1のキャリッジ15の転動体36を越えて引き摺られる(
図6b、
図6c)。切換え要素27aの突出部27bは、エラー位置の修正が行われた後で、再び第1のガイドレール9の前端部を越えて走行することができ、これによって切換え要素27aは軸24を中心にして傾倒させられ、かつこれによって操作要素17aと第3のガイドレール11のストッパ19との間の連結が解離される。つまり第2のガイドレール10は、
図6dにおいて、再び第1のガイドレール9に対して相対的なその目標位置に達している。
【0027】
図7aには、引出し用ガイド4が分解図で示されている。第1のガイドレール9は家具本体2に、かつ第3のガイドレール11は引出し3に固定されており、このとき第2のガイドレール10は、第1のガイドレール9と第3のガイドレール11との間において移動可能に支持されている。第1のガイドレール9と第2のガイドレール10との間には、長手方向において互いに間隔をおいて位置している複数の転動体36を備えた第1のキャリッジ15と、この第1のキャリッジ15とは別個の、転動体38aを備えた別のキャリッジ38とが、移動可能に支持されている。第2のガイドレール10と第3のガイドレール11との間には、長手方向において互いに間隔をおいて位置している複数の転動体37を備えた第2のキャリッジ28が、移動可能に支持されている。第2のガイドレール10に回転可能に支持されていて、第1および第2のキャリッジ15,28の歯列15a,28aと噛み合っている歯車14によって、キャリッジ15,28相互の運動が制御可能である。第2のガイドレール10の前端領域には、操作装置17および切換え装置27を備えた支持部分16を固定することができる。第3のガイドレール11の前端領域には、エンドストッパ20およびストッパ19を備えた機能ユニット18が配置されている。ばね装置32によって予荷重が加えられている走行可能な連行体34によって、第3のガイドレール11は、閉鎖運動の終端に向かって閉鎖された終端位置内へと引込み可能である。好ましくはピストンシリンダユニットを備えたダンパ装置33によって、閉鎖された終端位置へのばねアシストされたこの引込み運動は、制動可能である。ばね装置32およびダンパ装置33は、ホルダ35を介して第3のガイドレール11に固定されている。
【0028】
図7bには、支持部分16に配置された操作装置17および切換え装置27が分解図で示されている。操作要素17aと切換え要素27aとは、ジョイント軸25を介して互いに結合可能である。例えば脚付ばねとして形成された蓄力器26によって、操作要素17aと切換え要素27aとには互いに相対的に予荷重が加えられている。このようにして切換え要素27aは、蓄力器26の力によってロック手段23に向かって押圧可能であり、これによって2つの切換え位置の間における切換え要素27aの確定された切換え特性が生ぜしめられる。他方において操作要素17aは、蓄力器26の力に抗した第3のガイドレール11の押込み運動時に、通過走行され、これによって第3のガイドレール11は、大きな妨げなしに閉鎖位置に可動である。
【0029】
操作装置17は、図面に示されているのとは異なり、第2のガイドレール10にだけではなく、他のガイドレール9,11にも、かつこれらのガイドレール9,11の長手方向に沿った他の位置に配置されてもよい。このように構成されていると、例えば、操作装置17を、第2のガイドレール10に対して相対的な第3のガイドレール11のエラー位置の修正のために第3のガイドレール11に、かつストッパ19を、操作装置17を操作するために第2のガイドレール10に配置することが可能である。