特許第6918207号(P6918207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918207
(24)【登録日】2021年7月26日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】水中エアレータ
(51)【国際特許分類】
   F04D 7/02 20060101AFI20210729BHJP
   F04D 31/00 20060101ALI20210729BHJP
   F04D 29/70 20060101ALI20210729BHJP
   C02F 3/20 20060101ALI20210729BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   F04D7/02 B
   F04D31/00
   F04D29/70 D
   C02F3/20 B
   B01F3/04 C
   B01F3/04 D
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-508728(P2020-508728)
(86)(22)【出願日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2018013350
(87)【国際公開番号】WO2019186926
(87)【国際公開日】20191003
【審査請求日】2020年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞島 薫
(72)【発明者】
【氏名】渡部 剛久
【審査官】 嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−094498(JP,A)
【文献】 特開昭52−035301(JP,A)
【文献】 特開2009−095756(JP,A)
【文献】 特開2005−256731(JP,A)
【文献】 特開2011−001884(JP,A)
【文献】 実開平03−092595(JP,U)
【文献】 実開平03−092596(JP,U)
【文献】 実開昭59−170700(JP,U)
【文献】 実開平05−019589(JP,U)
【文献】 実公昭58−023036(JP,Y2)
【文献】 米国特許第05582777(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00−13/16
F04D 17/00−19/02
F04D 21/00−25/16
F04D 29/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシング内へ気体を流入させる吸気口と、
水中に開口しかつ、前記ケーシング内へ液体を流入させる吸液口と、
前記ケーシング内に収容され、気体と液体との混合液を前記水中に吐き出す羽根車と、
前記羽根車の軸の方向に向かい合う第1盤と第2盤とを有しかつ、前記第1盤と前記第2盤との間において周方向に広がる前記吸液口を形成するストレーナ部材と、を備え、
前記ストレーナ部材は、前記第1盤から前記第2盤に向かって突出する複数の突起と、前記第2盤から前記第1盤に向かって突出する複数の突起とを有し
前記第1盤から突出する複数の突起と、前記第2盤から突出する複数の突起とは、前記羽根車の軸の方向に重なる位置まで伸びている水中エアレータ。
【請求項2】
ケーシングと、
前記ケーシング内へ気体を流入させる吸気口と、
水中に開口しかつ、前記ケーシング内へ液体を流入させる吸液口と、
前記ケーシング内に収容され、気体と液体との混合液を前記水中に吐き出す羽根車と、
前記羽根車の軸の方向に向かい合う第1盤と第2盤とを有しかつ、前記第1盤と前記第2盤との間において周方向に広がる前記吸液口を形成するストレーナ部材と、を備え、
前記ストレーナ部材は、前記第1盤から前記第2盤に向かって突出する複数の突起と、前記第2盤から前記第1盤に向かって突出する複数の突起とを有し、
前記第1盤から突出する複数の突起と、前記第2盤から突出する複数の突起とはそれぞれ、異物が前記吸液口を通過することが抑制されるように、前記第1盤と前記第2盤との中間位置付近まで伸びている水中エアレータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水中エアレータにおいて、
前記羽根車を回転させる電動モータを収容する第2ケーシングを備え、
前記ストレーナ部材は、前記ケーシングと前記第2ケーシングとの間に配置されている水中エアレータ。
【請求項4】
請求項に記載の水中エアレータにおいて、
前記羽根車の軸は、上下方向に伸びており、
前記吸液口は、水平方向に開口しており、
前記ストレーナ部材は、前記第1盤から下向きに突出する複数の突起と、前記第2盤から上向きに突出する複数の突起とを有している水中エアレータ。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の水中エアレータにおいて、
前記第1盤から突出する複数の突起は、周方向に間隔を空けて配置され、
前記第2盤から突出する複数の突起は、周方向に間隔を空けて配置されていると共に、前記第1盤から突出する複数の突起に対して、周方向に位置がずれている水中エアレータ。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の水中エアレータにおいて、
前記第1盤から突出する複数の突起と、前記第2盤から突出する複数の突起とは、周方向に重なる位置まで広がっている水中エアレータ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の水中エアレータにおいて、
前記第1盤から突出する複数の突起、及び、前記第2盤から突出する複数の突起はそれぞれ、先細りに形成されている水中エアレータ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の水中エアレータにおいて、
前記ストレーナ部材は、前記第1盤と前記第2盤とをつなぐ、少なくとも一つの脚を有し、
前記脚は、前記第1盤から前記第2盤に向かって、又は、前記第2盤から前記第1盤に向かって細くなるように形成されている水中エアレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、水中エアレータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水中曝気装置が記載されている。水中曝気装置は、曝気槽内に設置される。特許文献1の水中曝気装置は、羽根車が回転することによって発生する負圧によって、水面上に開口する通気導管を経由して空気をケーシング内に吸い込む。水中曝気装置はまた、羽根車が回転することにより、ケーシングの下壁に設けた吸液口からケーシング内に水を吸い込む。ケーシング内に吸い込まれた空気と水とは混合し、その混合液が、曝気槽内に吐き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−95756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されている水中曝気装置では、ケーシングの下面における吸液口の周囲に、下向きに突出するストレーナ突起を凸設させることにより、異物が吸液口に吸引されないようにしている。
【0005】
具体的に、このストレーナ突起は、水中曝気装置の接地面に接触しないように、水中曝気装置のスタンドの高さよりも短く形成されている。これにより、ストレーナ突起の下端と設置面との間には隙間が形成されている。ストレーナ突起の下端と設置面との間に隙間が形成されているため、隙間よりも薄い平板状の異物や、隙間よりも薄い長尺の異物であれば、比較的大きな異物であっても隙間を通ってしまい、吸液口からケーシング内に異物が進入してしまう。
【0006】
ここに開示する技術は、水中エアレータにおいて、吸液口を異物が通過することを抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的にここに開示する技術は、水中エアレータに関する。この水中エアレータは、ケーシングと、前記ケーシング内へ気体を流入させる吸気口と、前記水中に開口しかつ、前記ケーシング内へ液体を流入させる吸液口と、前記ケーシング内に収容され、気体と液体との混合液を前記水中に吐き出す羽根車と、前記羽根車の軸の方向に向かい合う第1盤と第2盤とを有しかつ、前記第1盤と前記第2盤との間において周方向に広がる前記吸液口を形成するストレーナ部材と、を備える。
【0008】
そして、前記ストレーナ部材は、前記第1盤から前記第2盤に向かって突出する複数の突起と、前記第2盤から前記第1盤に向かって突出する複数の突起とを有し、前記第1盤から突出する複数の突起と、前記第2盤から突出する複数の突起とは、前記羽根車の軸の方向に重なる位置まで伸びている。
【0009】
この構成によると、吸液口を形成するストレーナ部材は、第1盤から第2盤に向かって突出する複数の突起と、第2盤から第1盤に向かって突出する複数の突起とを有している。向かい合う第1盤及び第2盤のそれぞれから、突起が突出しているため、異物は、突起と干渉する。周方向に広がる吸液口において、液の通過を阻害せずに、異物が通過することを効果的に抑制することができる。第1盤から突出する複数の突起と、第2盤から突出する複数の突起との間に設けられる隙間は、周方向に伸びる波形になる。隙間が波形であると、隙間が周方向に真っ直ぐに伸びる形状であるときよりも、特に平板状の異物や長尺の異物が突起と干渉しやすくなる。従って、前記の構成は、液の通過性を阻害することなく、異物が吸液口を通過することを効果的に抑制することができる。
【0010】
ここに開示する水中エアレータはまた、ケーシングと、前記ケーシング内へ気体を流入させる吸気口と、水中に開口しかつ、前記ケーシング内へ液体を流入させる吸液口と、前記ケーシング内に収容され、気体と液体との混合液を前記水中に吐き出す羽根車と、前記羽根車の軸の方向に向かい合う第1盤と第2盤とを有しかつ、前記第1盤と前記第2盤との間において周方向に広がる前記吸液口を形成するストレーナ部材と、を備え、前記ストレーナ部材は、前記第1盤から前記第2盤に向かって突出する複数の突起と、前記第2盤から前記第1盤に向かって突出する複数の突起とを有し、前記第1盤から突出する複数の突起と、前記第2盤から突出する複数の突起とはそれぞれ、異物が前記吸液口を通過することが抑制されるように、前記第1盤と前記第2盤との中間位置付近まで伸びている。
【0011】
この水中エアレータも、周方向に広がる吸液口において、液の通過を阻害せずに、異物が通過することを効果的に抑制することができる。
【0012】
前記水中エアレータは、前記羽根車を回転させる電動モータを収容する第2ケーシングを備え、前記ストレーナ部材は、前記ケーシングと前記第2ケーシングとの間に配置されている、としてもよい。
【0013】
羽根車を収容するケーシングと、電動モータを収容する第2ケーシングとの間で、周方向に広がる吸液口に、第1盤及び第2盤のそれぞれから、向かい合う第2盤及び第1盤に向かって突出する複数の突起を設けることにより、吸液口において液の通過を阻害せずに、異物が吸液口を通過することを、効果的に抑制することができる。
【0014】
水中エアレータの一態様として、前記羽根車の軸は、上下方向に伸びており、前記吸液口は、水平方向に開口しており、前記ストレーナ部材は、前記第1盤から下向きに突出する複数の突起と、前記第2盤から上向きに突出する複数の突起とを有している、としてもよい。
【0015】
前記第1盤から突出する複数の突起は、周方向に間隔を空けて配置され、前記第2盤から突出する複数の突起は、周方向に間隔を空けて配置されていると共に、前記第1盤から突出する複数の突起に対して、周方向に位置がずれている、としてもよい。
【0016】
こうすることで、第1盤から突出する複数の突起と、第2盤から突出する複数の突起とは、周方向に互い違いに配置されるため、周方向に広がる吸液口において、突起は、異物が通過することを効果的に抑制することができる。
【0017】
前記第1盤から突出する複数の突起と、前記第2盤から突出する複数の突起とは、周方向に重なる位置まで広がっている、としてもよい。
【0018】
この構成でも、液の通過性を阻害することなく、異物が吸液口を通過することを効果的に抑制することができる。
【0019】
前記第1盤から突出する複数の突起、及び、前記第2盤から突出する複数の突起はそれぞれ、先細りに形成されている、としてもよい。
【0020】
第1盤、第2盤、及び、複数の突起を有するストレーナ部材は、鋳造により一体に成形することができる。一体成形をすると、製造コストの低減に有利になる。第1盤及び第2番に設けた各突起の先細り形状は、ストレーナ部材を鋳造によって製造するときに用いる中子を作成するための成形型の抜き勾配に相当する。従って、前記の構成は、中子の作成を容易にするから、ストレーナ部材を鋳造により一体成形する上で、有利になる。
【0021】
前記ストレーナ部材は、前記第1盤と前記第2盤とをつなぐ、少なくとも一つの脚を有し、前記脚は、前記第1盤から前記第2盤に向かって、又は、前記第2盤から前記第1盤に向かって細くなるように形成されている、としてもよい。
【0022】
第1盤から前記第2盤に向かって、又は、前記第2盤から前記第1盤に向かって細くなる脚の形状もまた、中子の作成に用いる成形型の抜き勾配に相当する。そのため、前記と同様に、この構成は、ストレーナ部材を鋳造により一体成形する上で、有利な構成である。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、前記の水中エアレータは、異物が吸液口を通過することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、水中エアレータの全体構成を例示する断面図である。
図2図2は、水中エアレータのポンプ部の構成を拡大して示す断面図である。
図3図3は、羽根車の構成を例示する斜視図である。
図4図4は、羽根車の構成を例示する底面図である。
図5図5は、図4のV−V断面図である。
図6図6は、ストレーナ部材の構成を例示する側面図である。
図7図7は、図6のVII−VII断面図である。
図8図8は、ストレーナ部材を鋳造する際に用いる中子を作成するための成形型を例示する分解説明図である。
図9図9は、図6とは異なるストレーナ部材の構成を例示する側面図である。
図10図10は、図6及び図9とは異なるストレーナ部材の構成を例示する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、水中エアレータの構成について、図面を参照しながら説明する。尚、以下の説明は、例示である。図1は、水中エアレータ1の全体構成を例示する断面図であり、図2は、水中エアレータ1のポンプ部(つまり、羽根車の箇所)の構成を拡大して示す断面図である。水中エアレータ1は、図示を省略する水槽内に浸漬して配置され、気体と液体とが混合した混合液を水槽内に吐き出す。水中エアレータ1は、後で説明をするが、ブロアー等によって空気を送り込まずに、羽根車の回転により発生する負圧によって、空気を吸い込む自吸式に構成されている。
【0026】
水中エアレータ1は、羽根車6を有するポンプ部21と、羽根車6を回転させる電動モータ3を有するモータ部22と、を備えている。水中エアレータ1は、ポンプ部21が下側に、モータ部22がポンプ部21の上側になるように、上下方向に並んで配置されている。
【0027】
モータ部22は、ステータ31及びロータ32からなる電動モータ3と、電動モータ3を収容するモータケーシング33と、を備えている。モータケーシング33は、略円筒状を有している。モータケーシング33の上端は閉じている。モータケーシング33の下端は、開口している。ステータ31は、モータケーシング33の内周面に支持されている。ロータ32に一体化された電動モータ3のシャフト35は、上下方向に伸びて配設されている。シャフト35は、モータケーシング33の下端よりも下方まで伸びている。
【0028】
モータケーシング33の下端には、ハウジング4が取り付けられている。ハウジング4は、モータケーシング33の下端を閉じている。ハウジング4には、シャフト35が通る貫通孔41が形成されている。ハウジング4は、シャフト35を軸封するメカニカルシール43が配設される油室42を区画している。メカニカルシール43の構成は、ここでは詳細には説明しないが、公知の様々構成を採用することができる。
【0029】
ポンプ部21は、羽根車6と、羽根車6を収容する羽根車ケーシング5と、を備えている。羽根車6は、電動モータ3のシャフト35の下端に取り付けられている。
【0030】
羽根車ケーシング5は、羽根車6を収容する収容室51と、空気を含む混合液を水槽内に吐き出す複数の吐出管52と、後述するように、収容室51内に導入する空気が流れる空気室53とが一体に形成されている。
【0031】
収容室51は、略円形状に広がる底壁511と、羽根車6の外周囲を囲むように底壁511から立設した縦壁512を有している。底壁511の中央部には、空気室53に連通する吸気口513が設けられている。尚、符号514は、収容室51内に配設されかつ、縦壁512と羽根車6との間に介在する、例えばゴム製のチャンネルリングである。チャンネルリングには、図示は省略するが、各吐出管52に連通する連通孔が、径方向に貫通して形成されている。
【0032】
吐出管52は、詳細な図示は省略するが、底壁511の上面において、周方向に間隔を空けて複数、設けられている。各吐出管52は、その基端が縦壁512を貫通して収容室51につながっていると共に、そこから、径方向の外方に向かって伸びている。尚、各吐出管52の伸びる方向は、径方向に対して所定の角度で傾いている。各吐出管52の先端は、径方向の外方に向かって開口する吐出口521を構成している。
【0033】
空気室53は、底壁511の下面に設けられている。空気室53は、底壁511から下方に伸びる複数の側壁531と、複数の側壁531の先端を互いにつなぐことによって底を塞ぐ閉塞壁532と、底壁511とによって形成されている。空気室53は、吸気口513が形成されている底壁511の中央部から径方向の外方に伸びている。底壁511の外周縁部には、底壁511を上下に貫通する貫通部515が形成されている。貫通部515の上端には、導入管54が接続されている。導入管54の上端は、水槽の水面100よりも上で、大気中に開口している。空気は、導入管54、貫通部515、及び空気室53を通って、吸気口513に到達する。
【0034】
羽根車ケーシング5とハウジング4との間には、ストレーナ部材7が介設している。ストレーナ部材7は、ポンプ部21の収容室51内へ水を流入させる吸液口76を形成している。収容室51内へは、上側から水が流入し、下側から空気が流入する。ストレーナ部材7の構成の詳細は、後述する。
【0035】
図3〜5は、羽根車6の構成を例示している。羽根車6は、収容室51内に流入した空気と水との混合液を、吐出管52を通じて水槽内に吐出する。
【0036】
羽根車6は、電動モータ3のシャフト35が固定されるボス61と、複数の羽根62と、羽根62と羽根62との間に設けられた隔壁63と、を有している。図例に示す羽根車6は、5枚の羽根62を有している。羽根62の枚数は、任意の数にすることができる。各羽根62は、所定の形状に湾曲した板状である。各羽根62は、ボス61から径方向の外方に向かって伸びている。羽根車6は、遠心式に構成されている。
【0037】
隔壁63は、各羽根62の上下方向の略中央部において、一方の羽根62の圧力面と他方の羽根62の負圧面とをつなぐように水平方向に広がっている。隔壁63は、収容室51内において、空気が流入する上側の空間と、水が流入する下側の空間とを隔てている。
【0038】
隔壁63の下側には、各羽根62に沿うように下壁64が設けられている。下壁64の縁部は、羽根62につながっている。下壁64は、羽根車6を底面から見たときに、略三角形状を有している。下壁64は、隔壁63に平行に配設されている。隔壁63と下壁64とによって、空気が流れる空気通路65が形成されている。空気通路65は、径方向の外方と、内方とのそれぞれに向かって開口している。
【0039】
下壁64には、下方に突出する導入部66が取り付けられている。導入部66は、円筒状を成している。導入部66は、図2に示すように、羽根車ケーシング5の吸気口513に内挿される。導入部66の下端は下方に開口している。空気は、導入部66の下端開口から、羽根車6内へと導入される。導入部66と空気通路65とは、つながっている。図4に白抜きの矢印で示すように、空気は、径方向の中央の導入部66から、空気通路65を通って、径方向の外方へと流れる。
【0040】
図6及び図7は、ストレーナ部材7を例示している。ストレーナ部材7は、略円盤状の第1盤71と、略円盤状の第2盤72と、第1盤71と第2盤72とをつなぐ脚73とを有している。尚、図7の一点鎖線は、第2盤72の外形状を示している。第1盤71は、図2に示すように、ハウジング4の下端に取り付けられ、ハウジング4の下端開口を塞ぐ。第2盤72は、羽根車ケーシング5の上端に取り付けられる。
【0041】
第1盤71には、中央部に、電動モータ3のシャフト35が通る通孔711が形成されている。
【0042】
第2盤72には、中央部に、羽根車ケーシング5の収容室51へ水を流入させるための導水口721が形成されている。羽根車6のボス61は、導水口721を通って、ストレーナ部材7の内部に位置している。
【0043】
脚73は、この構成例では、周方向に等間隔を空けて四つ設けられている。脚73は、平行に配置された第1盤71と第2盤72とを、所定の間隔となるように保持している。第1盤71と第2盤72とによって、水平方向に開口しかつ、周方向に広がる吸液口76が形成される。この水中エアレータ1において、吸液口76は、羽根車ケーシング5(つまり、ケーシングに相当)と、モータケーシング33(つまり、第2ケーシングに相当)との間に位置している。脚73は、第1盤71から第2盤72に向かって細くなるように設けられている。具体的に、脚73は、第1盤71から第2盤72に向かって、径方向の幅が次第に細くなっている。
【0044】
第1盤71には、第2盤72に向かって突出する複数の突起74が設けられている。複数の突起74は、径方向の所定位置に設けられている。複数の突起74は、周方向に間隔を空けて、設けられている。また、各突起74の先端(つまり、下端)と、第2盤72の上面との間には、所定の隙間が設けられている。各突起74はまた、第2盤72に向かうに従い先細りに形成されている。より詳細に、各突起74は、図6からわかるように、上端から下端に向かって周方向の幅が狭くなるように形成されている。
【0045】
第2盤72にも、第1盤71と同様に、第1盤71に向かって突出する複数の突起75が設けられている。複数の突起75は、第1盤71の突起74と略同じ径方向の位置に、設けられている。複数の突起75は、周方向に間隔を空けて、設けられている。また、複数の突起75は、第1盤71の複数の突起74に対して、周方向に位置がずれている。各突起75の先端(つまり、上端)と、第1盤71の下面との間には、所定の隙間が設けられている。各突起75はまた、第1盤71に向かうに従い先細りに形成されている。より詳細に、各突起75は、下端から上端に向かって周方向の幅が狭くなるように形成されている。
【0046】
第1盤71の突起74と第2盤72の突起75とは、上下方向に重なる位置まで伸びている(図6のOL参照)。第1盤71の突起74は、第1盤71と第2盤72との中間位置よりも第2盤72に近い位置まで伸びている。第2盤72の突起75は、第1盤71と第2盤72との中間位置よりも第1盤71に近い位置まで伸びている。第1盤71及び第2盤72のそれぞれにおいて互い違いに突起74、75を設けることにより、吸液口76において突起74、75の間に形成される隙間は、周方向に伸びる波形になる。
【0047】
次に、水中エアレータ1の運転について説明をする。電動モータ3が起動をして羽根車6が回転をすると、吸液口76から水が吸い込まれ、導水口721から羽根車ケーシング5の収容室51内に、水が流入する(図2の黒矢印参照)。また、羽根車6が回転をすると、収容室51内において発生する負圧により、導入管54、貫通部515、空気室53、及び、吸気口513を通って、羽根車ケーシング5及び羽根車6内に空気が流入する(図2の白矢印参照)。
【0048】
水は、羽根車6の隔壁63よりも上側において、羽根62により径方向の外方に送り出され、空気は、隔壁63よりも下側において、羽根62により径方向の外方に送り出される。そして、収容室51内における羽根車6よりも外側の領域において、空気と水とが混合し、その混合液が吐出管52から吐出口521を通じて、水槽内に吐出される(図2の破線の矢印参照)。
【0049】
前記構成の水中エアレータ1において、全周に亘って広がる吸液口76には、ストレーナ部材7の第1盤71及び第2盤72のそれぞれに設けた突起74、75が配置されている。突起74、75の間に形成される隙間が波形になるから、水の通過を妨げることなく、異物が吸液口76を通過することを抑制することができる。特に、第1盤71の突起74と第2盤72の突起75とは上下方向に重なる位置まで伸びているため、厚みが薄い平板状の異物や、長尺状の異物は、突起74、75と干渉するようになる。これらの異物が吸液口76を通過することを、効果的に抑制することができる。
【0050】
また、ストレーナ部材7は、第1盤71と第2盤72と脚73と突起74、75とを、鋳造によって、一体成形することができる。ストレーナ部材7を一体成形品とすることにより、製造コストを下げることができる。また、前記の構成のストレーナ部材7は、鋳造により製造する上で、適した形状を有している。
【0051】
具体的に、ストレーナ部材7を鋳造する際に用いる中子は、砂型により構成することができる。図8は、中子を製造する成形型8を例示している。成形型8は、図8における紙面の上下方向に重ね合わされる第1型81と第2型82とを含んでいる。第1型81は、第1盤71に設けた突起74、並びに、脚73に相当する形状(つまり、突起84、脚83)を有している。第2型82は、第2盤72に設けた突起75に相当する形状(つまり、突起85)を有している。尚、図8の天地は、図6の天地とは逆である。
【0052】
前述したように、第1盤71及び第2盤72に設けた突起74、75は、先細りの形状を有している。そのため、第1型81及び第2型82に設けている突起84、85も、先細りの形状を有している。さらに、第1型81の脚83も、第2型に向かうに従い細くなっている。これらの突起84、85や脚83の形状は、第1型81及び第2型82の抜け勾配となる。従って、前記の構成のストレーナ部材7は、中子の製造を容易にする。
【0053】
ストレーナ部材7を鋳造により製造するときの金型は、図示は省略するが、例えば図6のVII−VII断面位置において、割れるようにしてもよい。第1盤71に設けた突起74は、第2盤72に対して所定の隙間を設けており、第2盤72に設けた突起75は、第1盤71に対して所定の隙間を設けている。そのため、前述した中子を用いて鋳造をしたストレーナ部材7において、各突起74、75の箇所にはバリが発生しない。尚、バリが発生する箇所は、脚73の箇所のみとなる。前記の構成のストレーナ部材7は、ストレーナ部材7の製造の工数を少なくすることができる。
【0054】
つまり、ストレーナ部材7の突起74、75や、脚73を、前述した形状とすることによって鋳造による一体成形に有利になる。
【0055】
図9は、ストレーナ部材の変形例を示している。図9のストレーナ部材70は、突起704、705の形状が、図6のストレーナ部材7とは相違する。具体的に、図9のストレーナ部材70では、第1盤71から突出する突起704と、第2盤72から突出する突起705とは、周方向に位置がずれている。また、第1盤71の突起704と、第2盤72の突起705とは、周方向に重なる位置まで、周方向に幅が広がっている(図9のOL参照)。第1盤71の突起704及び第2盤72の突起705はそれぞれ、先細り形状を有している。
【0056】
このような構成のストレーナ部材70も、水の通過を妨げることなく、異物が吸液口76を通過することを効果的に抑制することができる。また、ストレーナ部材70を鋳造により一体成形する上で有利になる。
【0057】
図10は、ストレーナ部材の、さらに別の変形例を示している。図10のストレーナ部材700は、突起7004、7005の形状が、図6及び図9のストレーナ部材7、70とは相違する。具体的に、図10のストレーナ部材700では、第1盤71の突起7004と、第2盤72の突起7005とは、上下方向に重なる位置まで伸びていない。第1盤71の突起7004は、第1盤71と第2盤72との中間位置付近まで伸びている。第2盤72の突起7005も、第1盤71と第2盤72との中間位置付近まで伸びている。このような構成のストレーナ部材700も、水の通過を妨げることなく、異物が吸液口76を通過することを効果的に抑制することができる。また、ストレーナ部材700を鋳造により一体成形する上で有利になる。
【0058】
尚、図示は省略するが、第1盤71から突出する突起74、704、7004と、第2盤72から突出する突起75、705、7005とは、周方向に同じ位置、又は、略同じ位置に配置してもよい。
【0059】
また、図示は省略するが、第1盤71から突出する突起74、704、7004と、第2盤72から突出する突起75、705、7005とは、径方向に異なる位置に配置してもよい。さらに、第1盤71から突出する突起74、704、7004は、複数の突起の間で径方向に位置がずれていてもよい。同様に、第2盤72から突出する突起75、705、7005は、複数の突起の間で径方向に位置がずれていてもよい。
【0060】
尚、前記の水中エアレータ1は、自吸式に構成しているが、ここに開示する技術は、例えばブロアーによって空気を送り込むよう構成したエアレータに適用することも可能である。
【0061】
また、前記の水中エアレータ1は、羽根車ケーシング5に対して水を上側から供給し、空気を下側から供給するよう構成されているため、モータケーシング33と羽根車ケーシング5との間にストレーナ部材を配置している。これとは異なり、羽根車ケーシングに対して水を下側から供給し、空気を上側から供給するよう構成された水中エアレータにおいては、吸液口が羽根車ケーシングの下側に設けられるため、ストレーナ部材を、羽根車ケーシングの下側に配設してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 水中エアレータ
33 モータケーシング(第2ケーシング)
5 羽根車ケーシング(ケーシング)
513 吸気口
6 羽根車
7、70、700 ストレーナ部材
71 第1盤
72 第2盤
74、704、7004 突起
75、705、7005 突起
76 吸液口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10