特許第6918260号(P6918260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6918260
(24)【登録日】2021年7月26日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】乳固形分含有透明容器詰めコーヒー飲料
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/24 20060101AFI20210729BHJP
【FI】
   A23F5/24
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2021-17616(P2021-17616)
(22)【出願日】2021年2月5日
【審査請求日】2021年2月9日
(31)【優先権主張番号】特願2021-4859(P2021-4859)
(32)【優先日】2021年1月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康友
(72)【発明者】
【氏名】矢野 太朗
(72)【発明者】
【氏名】武藤 麻里
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−104324(JP,A)
【文献】 特開2010−136645(JP,A)
【文献】 特開2011−162700(JP,A)
【文献】 特開2012−191922(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/124615(WO,A1)
【文献】 特開2013−051944(JP,A)
【文献】 特開2015−089367(JP,A)
【文献】 特開2020−103059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳固形分を含有する透明容器詰めコーヒー飲料であって、
(a)乳固形分が2.0〜3.0質量%であり、
(b)ショ糖を2.1〜4.5質量%含み、
(c)無脂乳固形分/乳脂肪分(質量比)が1.4〜3.0である、
上記コーヒー飲料。
【請求項2】
(c)無脂乳固形分/乳脂肪分(質量比)が2.0〜3.0である、請求項1に記載の透明容器詰めコーヒー飲料。
【請求項3】
(d)コーヒー固形分が0.5〜1.2質量%である、請求項1又は2に記載の透明容器詰めコーヒー飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳固形分を含有する透明容器詰めコーヒー飲料に関する。特に本発明は、光照射による香味の劣化が低減された乳固形分含有透明容器詰めコーヒー飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー飲料は嗜好品として広く愛好されており、抽出したてのコーヒーだけでなく、缶や、PETボトル、紙容器等、幅広い飲料形態が展開されている。中でもPETボトルは、再栓可能であることから利便性が高く、近年販売数量も大きく伸びている。しかし、透明なPETボトルは光を透過させるため、コーヒー飲料に光が照射されることになり、他の飲料形態よりも香味の劣化等の品質面の問題を生じることがある。特に、乳成分を含有する飲料においては、光照射による香味の劣化が著しいことが知られている。これは、乳中に含まれるリボフラビンが光照射により励起され、乳成分であるタンパク質や脂質の酸化を促進し、その結果として香味の劣化が生じるためであると言われている。
【0003】
飲料における光照射による香味の劣化を抑制する技術として、乳含有酸性飲料では、アスコルビン酸、コレカルシフェロール及びフラボノールから選ばれた少なくとも2種以上を含有させることにより、リボフラビンの光の照射による励起を抑制して品質の劣化を防止する方法(特許文献1)が開示されており、また、乳飲料について、トコフェロールまたはその誘導体とアスコルビン酸またはその誘導体および/またはカロテノイドとから成る成分、もしくはそれらの成分とトレハロースを合わせた成分を含有させることで、光照射下での劣化を抑制し、保存安定性を向上させる方法(特許文献2)が開示されている。
【0004】
また、乳成分由来の劣化臭に関して、特許文献3には、牛乳を含有するコーヒーや紅茶飲料をホットベンダーのような加温状態で保存した場合に発生する劣化臭の原因について検討したところ、乳脂肪由来の低中級脂肪酸、とくに炭素数10以下の脂肪酸が加温保存中に分解、遊離し、乳特有の劣化臭となることを発見したことが記載されている。また、特許文献4には、脂肪分が多い乳製品では、特にラジカル化された過酸化脂質が多く発生しやすいために、硫化化合物の発生量が多くなり加熱劣化臭が発生しやすいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−272643号公報
【特許文献2】特開2002−78447号公報
【特許文献3】特開平9−37713号公報
【特許文献4】特開2008−295335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、コーヒー飲料において、乳固形分がある一定量以上含まれ、かつショ糖量が一定範囲内である場合に、光照射による香味の劣化が特に強く感じられることを見出した。本発明は、上記のような香味の劣化が強く感じられやすい条件を有し、かつ、透明容器に充填されることで光照射を受けやすい状態にある乳固形分含有コーヒー飲料において、光照射下での香味の劣化を低減し、保存時の香味劣化の少ないコーヒー飲料を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、乳固形分及びショ糖含有量をある一定量に制御した上で、無脂乳固形分/乳脂肪分の質量比を一定範囲内の値とすることで、光による香味の劣化が抑えられ、すっきりと飲みやすい味わいの乳固形分含有透明容器詰めコーヒー飲料が得られることを見出した。通常、特許文献3及び4に記載されるように、乳成分を含有する食品における劣化臭は、乳脂肪分の影響が大きいと言われている。これに対し、本発明者らは、乳固形分及びショ糖含有量をある一定範囲の量に制御したコーヒー飲料については、意外にも、無脂乳固形分/乳脂肪分の質量比を3.0以下とする、すなわち乳脂肪分の無脂乳固形分に対する配合割合を一定程度確保した方が、光照射による乳成分の香味の劣化が低減されることを見出した。
【0008】
本発明は、これに限定されるものではないが、以下の態様を包含する。
[1]乳固形分を含有する透明容器詰めコーヒー飲料であって、
(a)乳固形分が2.0〜3.0質量%であり、
(b)ショ糖を2.1〜4.5質量%含み、
(c)無脂乳固形分/乳脂肪分(質量比)が1.4〜3.0である、
上記コーヒー飲料。
[2](c)無脂乳固形分/乳脂肪分(質量比)が2.0〜3.0である、[1]に記載の透明容器詰めコーヒー飲料。
[3](d)コーヒー固形分が0.5〜1.2質量%である、[1]又は[2]に記載の透明容器詰めコーヒー飲料。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、光照射による香味の劣化が抑えられ、すっきりと飲みやすい味わいの乳固形分含有コーヒー飲料を提供することが可能となる。また、本発明のコーヒー飲料は、光照射による香味の劣化が抑えられていることから、光照射を受けやすい状態であるPETボトルのような透明容器に充填して保管及び販売した場合でも、乳成分由来の不快な劣化香味が感じられにくいという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(コーヒー飲料)
本発明は、乳固形分が2.0〜3.0質量%であり、ショ糖含有量が2.1〜4.5質量%であり、無脂乳固形分/乳脂肪分の質量比が1.4〜3.0である透明容器詰め乳固形分含有コーヒー飲料である。
【0011】
本発明でいう「コーヒー飲料」とは、コーヒー分を原料として使用し、加熱殺菌処理がなされた飲料製品のことをいう。製品の種類は特に限定されないが、1977年に認定された「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約」の定義である「コーヒー」、「コーヒー飲料」、及び「コーヒー入り清涼飲料」が主に挙げられる。また、コーヒー分を原料とした飲料においても、乳固形分が3.0質量%以上のものは「飲用乳の表示に関する公正競争規約」の適用を受け、「乳飲料」として取り扱われるが、これも、本発明におけるコーヒー飲料とする。ここで、コーヒー分とは、コーヒー豆由来の成分を含有するものをいい、例えば、コーヒー抽出液、即ち、焙煎、粉砕されたコーヒー豆を水や温水などを用いて抽出した溶液が挙げられる。また、コーヒー抽出液を濃縮したコーヒーエキス、コーヒー抽出液を乾燥したインスタントコーヒーなど、また、それらを水や温水などで適量に調整した溶液も、コーヒー分として挙げられる。
【0012】
本発明のコーヒー飲料に用いるコーヒー豆の栽培樹種は、特に限定されない。コーヒー豆の一般的な樹種としては、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種などが挙げられる。これらをブレンドして用いてもよい。味わいがよい点から、アラビカ種を単独でまたはブレンドして用いることは好ましい。また、産地名も特に限定されず、例えば、モカ、ブラジル、コロンビア、グアテマラ、ブルーマウンテン、コナ、マンデリン、キリマンジャロなどが挙げられるが、いずれでもよいし、これら以外のものであってもよい。コーヒー豆は1種でもよいし、複数種をブレンドして用いてもよい。コーヒー豆の焙煎方法に関して、焙煎温度や焙煎環境に特に制限はなく、通常の方法を採用できる。さらに、その焙煎コーヒー豆からの抽出方法についても何ら制限はなく、例えば焙煎コーヒー豆を粗挽き、中挽き、細挽き等に粉砕した粉砕物から水や温水(0〜200℃)を用いて抽出する方法が挙げられる。抽出方法は、ドリップ式、サイフォン式、ボイリング式、ジェット式、連続式などを挙げることができ、いずれを用いてもよい。
【0013】
(乳固形分)
本発明でいう「乳固形分」とは、無脂乳固形分と乳脂肪分の総量をいう。本発明の飲料に用いられる乳固形分は、飲料にミルク風味やミルク感を付与するために添加される乳原料由来の成分であり、その種類は特に制限されない。例えば、乳、全脂乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、練乳、脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、バター、バターオイル、バターミルク、バターミルクパウダー、カゼイン、ホエー、チーズなどの乳原料由来の乳固形分が挙げられる。乳固形分の由来となる乳原料は、1種類であってもよく、2種類以上の混合物であってもよい。
【0014】
本発明の乳固形分含有コーヒー飲料は、2.0質量%以上の乳固形分を含有する。乳固形分が少ないと光による香味の劣化という課題が顕在化しにくい。この点から、本発明が対象とするコーヒー飲料の乳固形分は、好ましくは2.1質量%以上であり、より好ましくは2.2質量%以上であり、さらに好ましくは2.3質量%以上である。また、飲料の嗜好性の観点からは、乳固形分は3.0質量%以下であり、好ましくは2.9質量%以下であり、さらに好ましくは2.8質量%以下である。乳固形分は、飲料中の乳成分を一般的な乾燥法(凍結乾燥、蒸発乾固等)を用いて乾燥させて水分を除いた後の乾固物の質量に相当する。
【0015】
(ショ糖)
本発明の乳固形分含有コーヒー飲料は、2.1〜4.5質量%のショ糖を含有する。本発明者らは、乳固形分含有コーヒー飲料において、乳固形分が2.0質量以上であり、ショ糖含有量が2.1〜4.5質量%の範囲である場合に、光照射による香味の劣化の問題が生じやすくなることを見出した。また、この香味の劣化は、後述する無脂乳固形分/乳脂肪分の質量比を3.0以下とすることにより低減できることを見出した。
【0016】
本発明のコーヒー飲料中のショ糖含有量は、上述の通り、2.1〜4.5質量%であるが、嗜好性の観点からは、2.3質量%以上が好ましく、2.5質量%以上がより好ましく、2.7質量%以上がさらに好ましい。ショ糖を配合することにより、乳固形分含有コーヒー飲料に甘味が付与され、味の厚みが増す。ショ糖含有量が4.5質量%以下の場合には、甘味、厚みが少ないことに伴って、乳固形分含有コーヒー飲料の光照射による香味の劣化という課題がより顕著となる。本発明の効果をより顕著に享受できる観点から、ショ糖含有量は4.3質量%以下が好ましく、4.1質量%以下がより好ましく、3.9質量%以下がさらに好ましい。ショ糖の含有量は、例えば後述する実施例に記載するように、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定することが出来る。
(その他の甘味成分)
ブドウ糖は、加温殺菌や高温状態の保存によってpH低下による風味の変化を引き起こすことがあるから、本発明のコーヒー飲料は、嗜好性の観点からブドウ糖の配合量が少ないことが好ましい。具体的には0.50質量%以下が好ましく、0.30質量%以下がより好ましく、0.10質量%以下がさらに好ましく、0.05質量%以下がさらに好ましく、0.02質量%以下がさらに好ましい。また、ブドウ糖を配合しないことが最も好ましい。ブドウ糖の含有量は、例えば後述する実施例に記載するように、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定することが出来る。
コーヒー飲料に甘味を付与する手段として、糖類以外には、アセスルファムKやステビア抽出物などの高甘味度甘味料が挙げられる。これら高甘味度甘味料は、特有の苦みや雑味を有し、配合するとコーヒー飲料の味わいを損ねることがあるため、本発明のコーヒー飲料は、嗜好性の観点から、高甘味度甘味料の配合量が少ないことが好ましい。高甘味度甘味料の配合量は、0.01質量%以下が好ましく、0.008質量%以下がさらに好ましく、0.005質量%以下がさらに好ましい。また、高甘味度甘味料を配合しないことが最も好ましい。例えば、アセスルファムKの配合量は、0.01質量%以下が好ましく、0.008質量%以下がより好ましく、0.005質量%以下がさらに好ましい。また、アセスルファムKを配合しないことが最も好ましい。アセスルファムKの含有量は、例えば高速液体クロマトグラフィーにより測定することが出来る。ステビア抽出物の配合量は、0.001質量%以下が好ましく、0.0008質量%以下がより好ましく、0.0005質量%以下がさらに好ましく、0.0001質量%以下がさらに好ましく、0.00005質量%以下がさらに好ましい。また、ステビア抽出物を配合しないことが最も好ましい。
【0017】
(無脂乳固形分/乳脂肪分)
本発明の乳含有コーヒー飲料の無脂乳固形分/乳脂肪分(質量比)は1.4〜3.0である。本発明者らは、乳固形分含有コーヒー飲料において、乳固形分が2.0質量以上であり、ショ糖含有量が2.1〜4.5質量%の範囲である場合に、光照射による香味の劣化の問題が生じやすくなることを見出し、また、この香味の劣化を、無脂乳固形分/乳脂肪分の質量比を3.0以下とすることにより低減できることを見出した。無脂乳固形分/乳脂肪分の質量比は、香味劣化の抑制の観点からは、2.9以下が好ましく、2.8以下がより好ましく、2.7以下がさらに好ましい。一方、乳脂肪分の割合が大きすぎると脂肪分特有のもたつきが発生し、飲料のすっきりとした味わいが失われるため、嗜好性の観点からは、上記質量比は、1.6以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましく、2.2以上がさらに好ましく、2.4以上がさらに好ましく、2.5以上がさらに好ましい。通常、乳成分を含有する食品における劣化臭は、乳脂肪分の影響が大きいと言われているが、本発明者らは、意外にも、乳固形分及びショ糖含有量をある一定範囲の量に制御したコーヒー飲料については、無脂乳固形分/乳脂肪分の質量比を3.0以下とする、すなわち乳脂肪分の無脂乳固形分に対する配合割合を一定程度確保した方が、光照射による香味の劣化が低減されることを見出した。
【0018】
(透明容器詰め飲料)
本発明の飲料は、透明容器に充填されてなる飲料である(本明細書中、透明容器詰め飲料とも称する)。透明容器詰め飲料は、内容物を目視でき消費者への安心感を与えることができる。ここで、本明細書において「透明容器」とは、容器に充填等された飲料を外部から視認できる容器を意味する。透明容器の概念には、容器の一部分においてその外部から内容物を視認できることも包含される。透明容器としては、例えば可視光700nmにおける透過率が40%以上、好ましくは50%以上となる透明領域を有する容器を挙げることができる。具体的には、透明プラスチックボトルやカップおよび透明ガラス瓶が例示でき、特に透明PETボトルが本発明で好適に用いられる。容器の色は限定されないが、無色のものが好ましい。容量も特に限定されないが、160〜600mLが好ましく、250mL以上が好ましい。
【0019】
また、透明容器は容器の一部または全部がフィルム等で覆われていてもよい。例えば、内容表示用のラベル・印刷部分は不透明あるいは半透明でそれ以外の部分が透明な容器や、意匠性を有する透明部分・不透明部分が複数箇所で異なるように組み合わされている容器、看視窓程度の大きさの透明部分のみを有する不透明容器など、内容物が視認できる透明部分が存在する限りにおいてその透明領域については限定されない。
【0020】
本発明のコーヒー飲料は、加熱殺菌処理を経て得られる閉栓された透明容器詰め飲料である。加熱殺菌の条件は、例えば、食品衛生法に定められた条件と同等の効果が得られる方法を選択することができ、具体的には、60〜150℃で1秒間〜60分間とすることができる。容器として耐熱性容器(ガラス等)を使用する場合には、レトルト殺菌(110〜140℃、1〜数十分間)を行うこともできる。また、容器として非耐熱性容器(PETボトル等)を用いる場合は、例えば、調合液を予めプレート式熱交換器等で高温短時間殺菌(UHT殺菌:110〜150℃、1〜数十秒間)し、一定の温度まで冷却した後、容器に充填することができる。
【0021】
(コーヒー固形分)
本発明のコーヒー飲料におけるコーヒー分の含有量は、「コーヒー固形分」として表される。本発明において「コーヒー固形分」とは、コーヒー分を一般的な乾燥法(凍結乾燥、蒸発乾固など)を用いて乾燥させて水分を除いた後の、乾固物の質量のことをいう。すなわち、コーヒー飲料におけるコーヒー固形分は、コーヒー飲料に含まれ得る可溶性固形分のうち、乳分、甘味成分、pH調整剤、香料等のコーヒー豆に由来しない成分を除いた固形分に相当する。また、コーヒー飲料の原料の1つ(コーヒー分)として用いられ得るコーヒー抽出液中のコーヒー固形分は、コーヒー抽出液のBrix(%)に相当すると考えることができ、当該Brixは、糖度計(糖用屈折計)を用いて測定することができる。
【0022】
本発明のコーヒー飲料におけるコーヒー固形分は0.5〜1.2重量%である。嗜好性の観点から、コーヒー固形分は好ましくは0.6質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上である。コーヒー飲料の光照射による香味劣化は、コーヒー分と乳固形分が相まって発生するが、乳固形分の方がコーヒー分よりも香味劣化に対する寄与度は大きい。そのため、コーヒー固形分が少ない方が、光照射による劣化香味という課題が顕在化しやすい。本発明の効果をより顕著に享受できる観点からは、コーヒー固形分は好ましくは1.1質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.9質量%以下である。
【0023】
(その他の成分)
本発明のコーヒー飲料は、乳化剤を含んでいてもよい。乳化剤の例としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等、公知の乳化剤を挙げることができる。中でもショ糖脂肪酸エステルを好ましく選択することができる。
コーヒー飲料には、乳脂肪の代替としてヤシ油、パーム油、ヒマワリ油などの植物油脂が使用されることがあるが、植物油脂特有の香りがコーヒー飲料に付与されてしまい、味わいを損ねる可能性があるため、本発明のコーヒー飲料は、植物油脂の含有量は少ないほうが望ましい。具体的には2.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましい。また、植物油脂を配合しないことが最も好ましい。
【0024】
本発明のコーヒー飲料は、乳固形分を含んでいるため、pHが酸性領域になると、乳中の主要たんぱく質であるカゼインが凝集、沈殿する。したがって、凝集及び沈殿の抑制のためには、本発明に係る飲料のpH(20℃)は好ましくは5.0〜8.0であり、より好ましくは5.5〜8.0であり、より好ましくは5.8〜7.5である。pHをこの範囲にするために、コーヒー飲料に一般的に用いることができるpH調整剤を配合してもよい。pH調整剤の例としては、これに限定されないが、重曹が挙げられる。また、酸味料は配合しないことが好ましい。ここで、本明細書におけるpHとは、液状飲料100mLを300mLのビーカーに量り取り、20℃に温度調整をしてpHメータにより測定する値をいう。
【0025】
これら成分の他、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、香料、酸化防止剤等を添加することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。また、飲料中のショ糖及びブドウ糖濃度は、以下の方法で測定できる。
(ショ糖及びブドウ糖濃度の測定)
飲料中のショ糖濃度及びブドウ糖濃度は、HPLC糖分析装置(LC-20AD株式会社 島津製作所社製)を以下の条件で操作し、検量線法により定量することで測定することができる。
・カラム:Inertsil NH2,φ3mm×150mm[ジーエルサイエンス株式会社]
・カラム温度:室温
・移動相:アセトニトリル:水=8:2
・流量:0.7ml/min
・注入量:5μL
・検出:示差屈折計 RID-10A[株式会社 島津製作所]
【0027】
実験1:コーヒー飲料の製造と評価
コーヒー濃縮エキス(Brix51%)を使用し、水、ショ糖、生クリーム、脱脂粉乳、及び重曹を添加して表1に示されるショ糖含有量、乳固形分、及び無脂乳固形分/乳脂肪分の質量比を有するコーヒー飲料を調製した。得られたコーヒー飲料を65℃に昇温し、高圧ホモジナイザーにて20MPaの圧力で均質化後、加熱殺菌処理(120〜125℃、5〜15分)し、透明PETボトル容器に充填して、乳固形分を含有する透明容器詰めコーヒー飲料とした(サンプル1−1〜1−4)。また、缶に充填したサンプルも製造し、対照飲料とした。殺菌後の飲料のpH(20℃)は6.7〜7.0であった。また、コーヒー固形分は0.6質量%であった。
【0028】
得られた透明容器詰め飲料を光照射(35,000ルクス、25℃、48時間)し、その香味を評価した。評価は、光照射しなかった缶入り飲料を基準とし、光照射による香味劣化の強弱を、基準と比較した相対評価として3段階評価(〇:光照射していない基準と同等であり香味劣化がない、△:基準に比べるとやや香味劣化があるが許容できる範囲である、×:基準に比べると強い香味劣化があり飲料製品として許容できない)で行った。なお、評価は専門パネル5名が光照射による香味劣化の強弱について各自で評価した後、パネル全員で協議して決定した。
【0029】
結果を表1に示す。無脂乳固形分/乳脂肪分の質量比が3.5であり、乳固形分を2.0質量%以上の濃度で含有するコーヒー飲料は、光照射による強い劣化香味、具体的には、後味に残るチーズ様の香味が知覚された。
【0030】
【表1】
【0031】
実験2:コーヒー飲料の製造と評価
コーヒー濃縮エキス(Brix51%)を使用し、水、ショ糖、生クリーム、脱脂粉乳、重曹を添加して表2に示されるショ糖含有量、乳固形分、及び無脂乳固形分/乳脂肪分の質量比を有するコーヒー飲料を調製した。得られたコーヒー飲料を65℃に昇温し、高圧ホモジナイザーにて20MPaの圧力で均質化後、加熱殺菌処理(120〜125℃、5〜15分)し、透明PETボトル容器に充填して、乳固形分含有透明容器詰めコーヒー飲料とした(サンプル2−1〜2−4)。殺菌後の飲料のpH(20℃)は6.4〜6.5であった。また、コーヒー固形分は0.6質量%であった。
【0032】
得られた透明容器詰め飲料2−1〜2−4を光照射(35,000ルクス、25℃、48時間)した。また、サンプル2−1については透明PETボトルに充填した後に光照射を行わないものも用意した。2−1〜2−4の光照射ありと、2−1の光照射なしを用い、それぞれの香味を専門パネル4名が評価した。先ず、事前にパネルがサンプル2−1の光照射なしとありの2種類のサンプルを飲用し、光照射による劣化香味(後味に残るチーズ様の香味)についてディスカッションをし、共通認識を持つようにした。その後、各サンプルについて、以下の評価基準に基づいて各パネルが評価し、その平均点を採用した。
【0033】
<評価基準>
4:サンプル2−1の光照射なしと同等であり、劣化香味を感じない
3:サンプル2−1の光照射なしに比べるとかすかに劣化香味が感じられるが、劣化香味の程度は弱い
2:サンプル2−1の光照射なしと比べて明らかに劣化香味があるが、サンプル2−1の光照射ありと比べると劣化香味は弱い
1:サンプル2−1の光照射ありと同等かそれ以上の劣化香味を感じる。
【0034】
評価結果を表2に示す。コーヒー飲料に含まれる乳固形分を3.0質量%に固定した場合、無脂乳固形分/乳脂肪分が3.0以下であると、無脂乳固形分/乳脂肪分が3.5である場合に比べて、光照射による劣化香味が抑制された。サンプル2−4については、劣化香味は抑制されていたが、脂肪特有のもたつきを感じ、飲みづらいという評価をしたパネルがいたことから、無脂乳固形分/乳脂肪分の下限値は1.4程度が好ましいことが示唆された。
【0035】
【表2】
【0036】
実験3:コーヒー飲料の製造と評価
実験2と同様の手順、条件で、表3の通りとなるようにコーヒー飲料を調製し、光照射をした透明PET容器詰めサンプル3−1〜3−3を作成した。サンプル3−1については透明PET容器に充填した後に光照射を行わないものも用意した。透明PET容器詰めコーヒー飲料のpH(20℃)は6.4〜6.5、コーヒー固形分は0.6質量%であった。サンプル3−1の光照射なしとありの2種類のサンプルを評価基準として用いた以外は実験2と同様にして光照射による劣化香味の評価を行った。
【0037】
<評価基準>
4:サンプル3−1の光照射なしと同等であり、劣化香味を感じない
3:サンプル3−1の光照射なしに比べるとかすかに劣化香味が感じられるが、劣化香味の程度は弱い
2:サンプル3−1の光照射なしと比べて明らかに劣化香味があるが、サンプル3−1の光照射ありと比べると劣化香味は弱い
1:サンプル3−1の光照射ありと同等かそれ以上の劣化香味を感じる。
【0038】
評価結果を表3に示す。コーヒー飲料に含まれる乳固形分を2.0質量%に固定した場合も、実験2の乳固形分を3.0質量%に固定した場合と同様に、無脂乳固形分/乳脂肪分が3.0以下のときに、無脂乳固形分/乳脂肪分が3.5である場合に比べて、光照射による劣化香味が抑制された。
【0039】
【表3】
【0040】
実験4:コーヒー飲料の製造と評価
実験2と同様の手順、条件で、表4の通りとなるようにコーヒー飲料を調製し、光照射をした透明PET容器詰めサンプル4−1〜4−3を作成した。サンプル4−1については透明PET容器に充填した後に光照射を行わないものも用意した。透明PET容器詰めコーヒー飲料のpH(20℃)は6.4〜6.5、コーヒー固形分は0.6質量%であった。サンプル4−1の光照射なしとありの2種類のサンプルを評価基準として用いた以外は実験2と同様にして光照射による劣化香味の評価を行った。
【0041】
<評価基準>
4:サンプル4−1の光照射なしと同等であり、劣化香味を感じない
3:サンプル4−1の光照射なしに比べるとかすかに劣化香味が感じられるが、劣化香味の程度は弱い
2:サンプル4−1の光照射なしと比べて明らかに劣化香味があるが、サンプル4−1の光照射ありと比べると劣化香味は弱い
1:サンプル4−1の光照射ありと同等かそれ以上の劣化香味を感じる。
【0042】
評価結果を表4に示す。コーヒー飲料に含まれる乳固形分を2.5質量%に固定した場合も、実験2の乳固形分を3.0質量%に固定した場合や実験3の乳固形分を2.0質量%に固定した場合と同様に、無脂乳固形分/乳脂肪分が3.0以下のときに、無脂乳固形分/乳脂肪分が3.5である場合に比べて、光照射による劣化香味が抑制された。
【0043】
【表4】
【0044】
実験5:コーヒー飲料の製造と評価
コーヒー抽出液、水、ショ糖、牛乳を含む乳原料、pH調整剤、及び乳化剤等を用い、表5に記載のショ糖含有量、乳固形分、無脂乳固形分/乳脂肪分の比、及びコーヒー固形分を有する透明PETボトル容器詰め乳固形分含有コーヒー飲料サンプルを製造した。サンプル5−1と5−2について、ブドウ糖の含有量を上記方法で測定したところ、0.02質量%以下であった。サンプル5−1と5−2のそれぞれについて、光照射(35,000ルクス、25℃、48時間)なしとありのサンプルを用意した。専門パネル4名にて、サンプル5−1の光照射なしとありの劣化香味を評価した。同様に、サンプル5−2の光照射なしとありの劣化香味も評価した。サンプル5−1の光照射なしとありの劣化香味の差と、サンプル5−2の光照射なしとありの劣化香味の差を各専門パネルがそれぞれ比べたところ、4名ともサンプル5−2の方が、劣化香味の差が小さいという評価となった。
【0045】
【表5】
【要約】
【課題】光照射による香味の劣化が改善された乳固形分含有透明容器詰めコーヒー飲料を提供することを目的とする。
【解決手段】乳固形分を2.0〜3.0質量%、ショ糖を2.1〜4.5質量%含む透明容器詰めコーヒー飲料において、無脂乳固形分/乳脂肪分の質量比を1.4〜3.0に調整する。
【選択図】なし