特許第6918263号(P6918263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6918263
(24)【登録日】2021年7月26日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】洗浄液、インクセット、及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20210729BHJP
【FI】
   B41J2/165 401
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2021-48159(P2021-48159)
(22)【出願日】2021年3月23日
【審査請求日】2021年4月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 寛仁
(72)【発明者】
【氏名】森安 員揮
(72)【発明者】
【氏名】植田 恵理
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孝明
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−083919(JP,A)
【文献】 特開2019−043030(JP,A)
【文献】 特開2015−071771(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0315942(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料とアルカリ可溶性樹脂を含む水性インクジェットインクを吐出するインクジェットプリンターにおいて、吐出される前記水性インクジェットインクが付着する部位を洗浄するための洗浄液であり、
界面活性剤と、防腐剤と、水を含み、
前記界面活性剤は、ポリオキシアルキレン骨格を有し、かつHLBが9〜20である化合物であり、
前記防腐剤は、ヒダントイン骨格を有する化合物を含み、
前記ヒダントイン骨格を有する化合物の割合は、洗浄液中、0.05〜0.3質量%であることを特徴とする洗浄液。
【請求項2】
ポリアルキレングリコール、アルキレングリコール、及びグリセリンからなる群より選ばれる1種以上である保湿剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の洗浄液。
【請求項3】
pH調整剤を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄液。
【請求項4】
前記ヒダントイン骨格を有する化合物が、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチル)−5,5−ジメチル−2,4−イミダゾリジンジオンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄液。
【請求項5】
前記防腐剤として、さらに、前記ヒダントイン骨格を有する化合物以外の防腐剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の洗浄液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の洗浄液、及び顔料とアルカリ可溶性樹脂を含む水性インクジェットインクを有することを特徴とするインクセット。
【請求項7】
顔料とアルカリ可溶性樹脂を含む水性インクジェットインクを吐出するインクジェットプリンターにおいて、吐出される前記水性インクジェットインクが付着する部位に、請求項1〜5のいずれかに記載の洗浄液を供給することを特徴とする洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄液、インクセット、及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料とアルカリ可溶性樹脂を含む水性インクジェットインクを吐出するインクジェットプリンターにおいて、吐出される前記水性インクジェットインクが付着する部位を洗浄するための洗浄液が知られている(特許文献1−6)。当該洗浄液には、カビ等の繁殖を防止するために、防腐剤を含むもの(特許文献1−2)や、洗浄液の乾燥を防止するために、ソルビルトールや、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチル)−5,5−ジメチル−2,4−イミダゾリジンジオン等の潮解剤を含むものが知られている(特許文献3−6)。また、上記のような水性インクジェットインクを吐出する部位には、通常、インクを吐出する複数の吐出口を有するノズルプレートが備えられている(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/042883号
【特許文献2】国際公開第2018/003235号
【特許文献3】特開2018−87290号公報
【特許文献4】特開2018−100341号公報
【特許文献5】特開2019−38212号公報
【特許文献6】特開2020−82577号公報
【特許文献7】特開2011−111527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなインクジェットプリンターにおけるノズルプレートは、インクによる侵食を防止するため、通常、ノズルプレート表面は、金属酸化物や窒化物を有している。しかしながら、シリコン表面のノズルプレートを用いた場合、上記の1,3−ビス(2−ヒドロキシエチル)−5,5−ジメチル−2,4−イミダゾリジンジオン等の潮解剤を多く含む洗浄液は、洗浄液によって当該プレートの撥水性を低下させたり、洗浄液の保存安定性を低下させる問題があった。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、シリコン製ノズルプレートを侵さず、かつ良好な保存安定性、防腐効果、及び水性インクジェットインクに対する洗浄性を有する洗浄液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、顔料とアルカリ可溶性樹脂を含む水性インクジェットインクを吐出するインクジェットプリンターにおいて、吐出される前記水性インクジェットインクが付着する部位を洗浄するための洗浄液であり、界面活性剤と、防腐剤と、水を含み、前記界面活性剤は、ポリオキシアルキレン骨格を有し、かつHLBが9〜20である化合物であり、前記防腐剤は、ヒダントイン骨格を有する化合物を含み、前記ヒダントイン骨格を有する化合物の割合は、洗浄液中、0.05〜0.3質量%である洗浄液に関する。
【0007】
また、本発明は、前記洗浄液、及び顔料とアルカリ可溶性樹脂を含む水性インクジェットインクを有するインクセットに関する。
【0008】
また、本発明は、顔料とアルカリ可溶性樹脂を含む水性インクジェットインクを吐出するインクジェットプリンターにおいて、吐出される前記水性インクジェットインクが付着する部位に、前記洗浄液を供給する洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗浄液における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されない。
【0010】
本発明の洗浄液は、界面活性剤と、防腐剤と、水を含み、前記界面活性剤は、ポリオキシアルキレン骨格を有し、かつHLBが9〜20である化合物であり、前記防腐剤は、ヒダントイン骨格を有する化合物を含み、前記ヒダントイン骨格を有する化合物の割合は、洗浄液中、0.05〜0.3質量%である。上記のポリオキシアルキレン骨格を有し、かつHLBが9〜20である化合物は、水への溶解性に優れるため、本発明の洗浄液は、保存安定性が良好となる。また、特定量のヒダントイン骨格を有する化合物は、従来から防腐剤として使用されているベンゾイソチアゾリン系化合物と異なり、シリコン系素材に対する親和性が低いため、本発明の洗浄液は、シリコン製ノズルプレートを侵さず、かつ良好な防腐効果、及び水性インクジェットインクに対する洗浄性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の洗浄液は、顔料とアルカリ可溶性樹脂を含む水性インクジェットインクを吐出するインクジェットプリンターにおいて、吐出される前記水性インクジェットインクが付着する部位を洗浄するための洗浄液であり、界面活性剤と、防腐剤と、水を含み、前記界面活性剤は、ポリオキシアルキレン骨格を有し、かつHLBが9〜20である化合物を含み、前記防腐剤は、ヒダントイン骨格を有する化合物を含み、前記ヒダントイン骨格を有する化合物の割合は、洗浄液中、0.05〜0.3質量%である。
【0012】
<界面活性剤>
前記界面活性剤は、ポリオキシアルキレン骨格を有し、かつHLBが9〜20である化合物である。ここで、HLB値とは、グリフィン法によって算出される界面活性剤の親水性と親油性の程度を表す指標であり、HLB値が小さいほど親油性が高く、HLB値が大きいほど親水性が高いことを示す。前記界面活性剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
前記ポリオキシアルキレン骨格を有し、かつHLBが9〜20である化合物は、当該骨格を有し、上記の各HLB値を満たせば、公知の界面活性剤が特に制限なく使用でき、例えば、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ベタイン界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤の具体例としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレン骨格を有する化合物が好ましく、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤がより好ましい。
【0014】
前記界面活性剤の割合は、洗浄液中、様々な組成のインキに対しての洗浄性を確保するする観点から、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、そして、洗浄液の経時安定性を確保する観点から、1質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましい。
【0015】
<防腐剤>
前記防腐剤は、ヒダントイン骨格を有する化合物を含む。前記ヒダントイン骨格を有する化合物は、防腐性能があれば特に制限なく使用でき、洗浄液に溶解する観点から、水溶性であることが好ましい。前記ヒダントイン骨格を有する化合物としては、例えば、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチル)−5,5−ジメチル−2,4−イミダゾリジンジオン、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、ブロモクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン等が挙げられる。前記防腐剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、上記の「水溶性」とは、25℃の水100質量部に対して5質量部以上溶解できる化合物である。
【0016】
前記ヒダントイン骨格を有する化合物の割合は、洗浄液中、0.05〜0.3質量%である。前記ヒダントイン骨格を有する化合物の割合は、洗浄液中、良好な洗浄性を確保する観点から、0.08質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、そして、洗浄液の経時安定性を確保する観点から、0.25質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましい。
【0017】
前記防腐剤は、防腐効果を高める観点から、さらに、前記ヒダントイン骨格を有する化合物以外の防腐剤を含んでいてもよい。このような防腐剤としては、例えば、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル等のカルバメート類;1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾリン類;ナトリウムピリチオン等のピリチオン類;チアベンダゾール等のベンズイミダゾール類等が挙げられる。
【0018】
前記水溶性防腐剤の割合は、洗浄液中、良好な洗浄性を確保する観点から、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、そして、洗浄液の経時安定性を確保する観点から、0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましい。
【0019】
前記防腐剤(ヒダントイン骨格を有する化合物と当該化合物以外の防腐剤の合計)の割合は、洗浄液中、良好な洗浄性を確保する観点から、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、そして、洗浄液の経時安定性を確保する観点から、0.3質量%以下であることが好ましく、0.25質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることがさらに好ましい。
【0020】
<水>
前記水としては、例えば、イオン交換水、純水、蒸留水、工業用水等が挙げられる。前記水は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
前記水の割合は、洗浄液中、洗浄液を低粘度とする観点から、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、そして、洗浄性成分などを適切に含有する観点から、99.9質量%以下であることが好ましく、99.5質量%以下であることがより好ましい。
【0022】
前記洗浄液は、洗浄液の水分蒸発を抑制する観点から、保湿剤を含んでいてもよい。前記保湿剤としては、例えば、ポリアルキレングリコール、アルキレングリコール、及びグリセリンからなる群より選ばれる1種以上である媒体が挙げられる。前記保湿剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
前記ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。前記アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。これらの中でも、前記保湿剤は、水分蒸発の抑制に優れるという効果を奏する点から、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンが好ましい。
【0024】
前記保湿剤を使用する場合、前記保湿剤の割合は、洗浄液中、保湿性を確保する観点から、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、そして、洗浄液の経時安定性を確保する観点から、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
前記洗浄液は、pH調整剤を含んでいてもよい。前記pH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール等のアルコールアミン類;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物等のアンモニウム水酸化物;ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩等が挙げられる。
【0026】
前記洗浄液は、プリンター部材の錆を防止する観点から、pHが5以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、そして、プリンターの付着部位の腐食を防止する観点から、pHが12以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましい。
【0027】
また、前記洗浄液は、必要に応じて、有機溶剤、消泡剤等を含んでいてもよい。ただし、水性インクジェットプリンターの構成部品を侵す可能性のある有機溶剤は、当該部材を侵さないよう配合量が制限されることが好ましく、配合されないことがより好ましい。
【0028】
前記洗浄液の調製方法は、特に制限されず、上記の各成分を全て混合することにより一剤化してもよく、後述するように、洗浄液が水性インクジェットインクの付着する部位に別々に供給されるよう、二剤化してもよい。
【0029】
前記洗浄液は、25℃での粘度が5cps以下であればよく、好ましくは1〜3cpsの範囲である。粘度は、例えば、E型粘度計(商品名「RE100L型粘度計」、東機産業社製)により測定できる。
【0030】
<インクセット>
本発明のインクセットは、前記洗浄液、及び顔料とアルカリ可溶性樹脂を含む水性インクジェットインクを有する。
【0031】
<顔料>
前記顔料は、水性インクジェットインクに使用される有機顔料や無機顔料を特に制限なく使用することができる。前記有機顔料としては、例えば、染料レーキ顔料、アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジコ系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、イソインドリノン系顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、ラバンスロン系顔料、キノフタロン系顔料、ピランスロン系顔料、インダンスロン系顔料等が挙げられる。また、前記無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、黒鉛、鉄黒、酸化クロムグリーン、水酸化アルミニウム等が挙げられる。前記顔料は、公知の表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。前記顔料は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
<アルカリ可溶性樹脂>
前記アルカリ可溶性樹脂は、通常のインクや塗料の顔料分散用やバインダーとして利用できるアルカリ可溶性樹脂であって、塩基性化合物の存在下で水性媒体中に溶解できるものであれば特に制限はないが、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基(−P(=O)(OH))等のアニオン性基の1種又は2種以上を含有する樹脂が好ましい。
【0033】
前記アルカリ可溶性樹脂は、さらに、主に顔料との吸着性を向上させるための疎水性部分を分子中に有することが好ましい。分子内に導入する疎水性部分としては、例えば、長鎖アルキル基、脂環族、芳香族の環状炭化水素基等の疎水性基が挙げられる。
【0034】
前記アルカリ可溶性樹脂の酸価は、水性媒体への溶解性を高める観点から、40mgKOH/g以上であることが好ましく、70mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、前記アルカリ可溶性樹脂の酸価は、印刷物の耐水性を向上させる観点から、300mgKOH/g以下であることが好ましく、250mgKOH/g以下であることがより好ましい。なお、前記酸価は、アルカリ可溶性樹脂を合成するために用いる単量体の組成に基づいて、アルカリ可溶性樹脂1gを中和するのに理論上要する水酸化カリウムのmg数を算術的に求めた理論酸価である。
【0035】
前記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度は、印刷物の耐ブロッキング性を向上させる観点から、0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度は、印刷物の耐折り曲げ性を向上させる観点から、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。
【0036】
前記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度は、アルカリ可溶性樹脂がアクリル系共重合体樹脂の場合、下記のwoodの式により求めた理論ガラス転移温度である。
Woodの式:1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・・+Wx/Tgx
[式中、Tg1〜Tgxはアルカリ可溶性樹脂を構成する単量体1、2、3・・・xのそれぞれの単独重合体のガラス転移温度、W1〜Wxは単量体1、2、3・・・xのそれぞれの重合分率、Tgは理論ガラス転移温度を表す。ただし、woodの式におけるガラス転移温度は絶対温度である。]
【0037】
前記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度は、アルカリ可溶性樹脂がアクリル系共重合体樹脂以外の場合、熱分析により求めた理論ガラス転移温度である。熱分析の方法としては、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準じ、一例として、パーキンエルマー社製Pyris1 DSCを用いて、昇温速度20℃/分、窒素ガス流速20ミリリットル/分の条件下でガラス転移温度を測定することができる。
【0038】
前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、印刷物の耐水性を向上させる観点から、5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、水性媒体への溶解性を高める観点から、100,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましい。
【0039】
前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてWater2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてPLgel、5μ、MIXED−D(Polymer Laboratories社製)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度25℃、流速1ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度10ミリグラム/ミリリットル、注入量100マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
【0040】
前記アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、縮重合反応によって得られるポリエステル樹脂、及びポリウレタン樹脂等が挙げられる。この様なアルカリ可溶性樹脂を合成するための材料については、例えば、特開2000−94825号公報に開示されており、該公報に記載されている材料を使用して得られるアクリル系共重合樹脂、マレイン酸系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が利用可能である。さらには、これら以外のその他の材料を用いて得られた樹脂も利用可能である。前記アルカリ可溶性樹脂は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
前記アクリル系共重合樹脂としては、例えば、アニオン性基含有単量体と共重合可能な他の単量体の混合物を通常のラジカル発生剤(例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ターシャリブチルパーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等)の存在下、溶媒中で重合して得られるものが使用できる。
【0042】
前記アニオン性基含有単量体としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン性基を有する単量体が挙げられ、これらの中でも、カルボキシル基を有する単量体が特に好ましい。
【0043】
前記カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、無水フマール酸、マレイン酸ハーフエステル等が挙げられる。また、前記スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、スルホエチルメタクリレート等が挙げられる。また、前記ホスホン酸基を有する単量体としては、例えば、ホスホノエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0044】
前記アニオン基含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、顔料との吸着性を向上させる観点から、疎水性基含有単量体を含むことが好ましい。
【0045】
前記疎水性基含有単量体としては、例えば、長鎖アルキル基を有する単量体として、(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸の炭素数が8以上のアルキルエステル類(例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシステアリル(メタ)アクリレート等)、炭素数が8以上のアルキルビニルエーテル類(例えば、ドデシルビニルエーテル等)、炭素数が8以上の脂肪酸のビニルエステル類(例えば、ビニル2−エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、ビニルステアレート等);脂環族炭化水素基を有する単量体として、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等;芳香族炭化水素基を有する単量体として、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体等が挙げられる。前記疎水性基含有単量は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
前記アニオン性基含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、水性媒体中でアルカリ可溶性樹脂の凝集を抑制する観点から、親水性基含有単量体を含むことができる。
【0047】
前記親水性基含有単量体としては、例えば、(ポリ)オキシアルキレン鎖を有する単量体として、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール、プロポキシポリエチレングリコール、プロポキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸とのエステル化物や、(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸へのエチレンオキシド付加物及び/又はプロピレンオキシド付加物等;塩基性基含有単量体として、例えば、1−ビニル−2−ピロリドン、1−ビニル−3−ピロリドン等のビニルピロリドン類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン等のビニルピリジン類、1−ビニルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾール等のビニルイミダゾール類、3−ビニルピペリジン、N−メチル−3−ビニルピペリジン等のビニルビペリジン類、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸第3ブチルアミノエチル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシ(メタ)アクリルアミド、N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、N−ジメチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド等の(メタ)アクリル酸の含窒素誘導体類等;水酸基を有する単量体として、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類等;エポキシ基を有する単量体として、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記親水性基含有単量体は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
前記疎水性基含有単量体、及び親水性基含有単量体以外の共重合可能な他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等の(メタ)アクリル酸の炭素数が8未満のアルキルエステル類等が挙げられる。前記疎水性基含有単量体、及び親水性基含有単量体以外の共重合可能な他の単量体は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
<界面活性剤>
前記水性インクジェットインクは、界面活性剤を使用することができる。前記界面活性剤は、水性インクジェットインクに使用される公知の界面活性剤を使用でき、例えば、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ベタイン界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤の具体例としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤等が挙げられる。前記界面活性剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
<水溶性溶剤>
前記水性インクジェットインクは、水溶性溶剤を使用することができる。前記水溶性溶剤は、水性インクジェットインクに使用される公知の水溶性溶剤を使用でき、例えば、エタノール、プロパノール等の低級アルコール類;グリセリン等の多価アルコール類;(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール等の(ポリ)アルキレングリコールとそのアルキルエーテル類等が挙げられる。前記水溶性溶剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
以下、前記水性インクジェットインク中の各成分の割合について説明する。
【0052】
本発明の水性インクジェットインク中の前記顔料の割合は、印刷物の印画濃度を向上させる観点から、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、そして、吐出安定性を向上させる観点から、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。ただし、前記顔料が白色顔料である場合、本発明の水性インクジェットインク中の前記白色顔料の割合は、4質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、そして、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0053】
前記アルカリ可溶性樹脂の含有量は、前記顔料100質量部に対して、顔料の分散性を高める観点から、5質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂の含有量は、前記顔料100質量部に対して、水性インクジェット用組成物の粘度を低下させる観点から、100質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることがさらに好ましい。
【0054】
前記水性インクジェットインクに前記界面活性剤を使用する場合、前記水性インクジェットインク中の前記界面活性剤の割合は、ドット拡張性、印刷物のベタ均一性を向上させる観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、そして、保存安定性を向上させる観点から、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0055】
前記水性インクジェットインクに前記水溶性溶剤を使用する場合、前記水性インクジェットインク中の前記水溶性溶剤の割合は、吐出安定性を向上させる観点から、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、そして、塗膜乾燥性を向上させる観点から、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。
【0056】
前記水性インクジェットインク中の水の割合は、塗膜乾燥性を向上させる観点から、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、そして、吐出安定性を向上させる観点から、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
<塩基性化合物>
前記水性インクジェットインクには、アルカリ可溶性樹脂を溶解させる観点から、塩基性化合物を含むことが好ましい。前記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基性化合物;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、モノエタノールアミン、N、N−ジメチルエタノールアミン、N、N−ジエチルエタノールアミン、N、N−ジブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等の有機塩基性化合物等が挙げられる。前記塩基性化合物は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
前記水性インクジェットインク中の前記塩基性化合物の割合は、前記アルカリ可溶性樹脂を媒体中に溶解させる量であればよいが、通常、アルカリ可溶性樹脂の分散安定性を高める観点から、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、そして、印刷物の耐水性を高める観点から、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0059】
前記水性インクジェットインクには、さらに、目的に応じて公知の樹脂、樹脂エマルジョン、ワックスエマルション、顔料分散剤、防黴剤、防錆剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保存性向上剤、消泡剤、pH調整剤等の添加剤を添加することができる。
【0060】
<水性インクジェットインクの調製方法>
前記水性インクジェットインクを調製(製造)する方法としては、特に限定されず、上記の成分を順番に、あるいは同時に添加して、混合すればよいが、例えば、(1)前記塩基性化合物の存在下にアルカリ可溶性樹脂を水に溶解した水性樹脂ワニス、顔料、必要に応じて顔料分散剤等を混合した後、各種分散機、例えばボールミル、アトライター、ロールミル、サンドミル、アジテーターミル等を利用して顔料分散液(インクベース)を調製し、さらに残りの材料を添加して、水性インクジェットインクを調製する方法や、(2)上記の方法で顔料を分散した後、酸析法や再公表特許WO2005/116147号公報に記載のイオン交換手段等により、顔料表面にアルカリ可溶性樹脂を析出させた樹脂被覆顔料を得、次いで得られた樹脂被覆顔料を塩基性化合物で中和し、各種分散機(高速攪拌装置等)を用いて水に再分散し、さらに残りの材料を添加して、水性インクジェットインクを調製する方法等が挙げられる。
【0061】
前記水性インクジェットインクは、製造後の初期粘度が、25℃で、2.0〜15.0mPa・s、好ましくは3.0〜12.0mPa・sの範囲である。粘度は、例えば、E型粘度計(商品名「RE100L型粘度計」、東機産業社製)により測定できる。
【0062】
<洗浄方法>
本発明の洗浄方法は、顔料とアルカリ可溶性樹脂を含む水性インクジェットインクを吐出するインクジェットプリンターにおいて、吐出される前記水性インクジェットインクが付着する部位に、前記洗浄液を供給する方法である。水性インクジェットインクが付着する部位への洗浄液の供給は、付着部位に別々に供給されてもよく、予め混合された状態で付着部位に供給されてもよい。
【0063】
また、前記インクジェットプリンターにおける性インクジェットインクが吐出する部位には、通常、インクを吐出する複数の吐出口を有するノズルプレートが備えられているが、本発明の洗浄液は、シリコン製ノズルプレートを侵さないため、このようなシリコン製ノズルプレート有するインクジェットプリンターに適している。
【実施例】
【0064】
以下に本発明を実施例等によって説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。
【0065】
<製造例1>
<顔料分散液(ブラックインクベース)の製造>
アルカリ可溶性樹脂(アクリル酸/n−ブチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体)、重量平均分子量30,000、酸価185mgKOH/g、ガラス転移温度40℃)20質量部を、水酸化カリウム2.5質量部と水77.5質量部との混合溶液に溶解させて、アルカリ可溶性樹脂の固形分が20質量%の水性樹脂ワニスを得た。次に、上記水性樹脂ワニス23.7質量部に水64.3質量部を加え混合し、顔料分散用樹脂ワニスを調製した。この顔料分散用樹脂ワニスに、更に顔料としてカーボンブラック(商品名「プリンテックス90」、デグサ社製)12質量部を加え、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、ブラック顔料分散液(ブラックインクベース)を製造した。
【0066】
<水性インクジェットインクの調製>
上記ブラック顔料分散液34質量部に、水30質量部、プロピレングリコール35質量部、及びアセチレン系界面活性剤(商品名「サーフィノール465」)を1質量部加え撹拌混合し、水性インクジェットインクを調製した。
【0067】
<実施例1〜13、比較例1〜11>
<洗浄液の調製>
各実施例及び各比較例において、表1及び2に示される配合に従い、各原料をビーカーに仕込み、攪拌装置で攪拌混合して、各実施例及び各比較例の洗浄液を調製した。実施例の洗浄液のpHは、6.5〜8.5であり、25℃での粘度が1.0〜1.8cps程度であった。
【0068】
上記で得られた水性インクジェットインク及び洗浄液を用い、以下の方法により評価した。結果を表1及び2に示す。
【0069】
<保存安定性>
上記で得られた洗浄液をそれぞれガラス瓶にとり、25℃の粘度(mPa・s)を、粘度計(東機産業社製、「RE100L型」)を用いて測定した。その後、密栓し60℃、1ヵ月保存し、保存後の粘度(25℃)を粘度計により測定した。保存安定性は、粘度変化率(60℃、(1ヵ月後の粘度−保存前の粘度)/保存前の粘度)で評価した。
[評価基準]
○:粘度変化率が5%未満である。
△:粘度変化率が5%以上、10%未満である。
×:添加剤が分離し不均一になっている。
【0070】
<防腐効果>
細菌評価:普通寒天培地を使用して培養した細菌培養液を0.6g接種して、上記で得られた洗浄液30gとシャーレ内で混合し、30℃で7日間培養した。
カビ・酵母評価:ポテトデキストロース寒天培地を使用して培養したカビ・酵母懸濁液を0.6g接種して、上記で得られた洗浄液30gとシャーレ内で混合し、28℃で7日間培養した。
その後、各シャーレ内の微生物の残存状態を評価した。
[評価基準]
〇:いずれのシャーレ内でも微生物の増殖がみられない。
△:いずれのシャーレ内でもコロニー数が10個未満である。
×:少なくとも1シャーレ内のコロニー数が10個以上である。
【0071】
<水性インクジェットインクに対する洗浄性>
インクジェットプリンタPX−105(セイコーエプソン社製)に、上記水性インクジェットインクを充填し、A4サイズの紙に10枚連続でベタ印字を行ってインクが充填されていることを確認した後、インクが記録ヘッドに充填された状態で50℃のオーブンに3ヶ月間放置した。放置後、ノズルチェック印字を行うと、インクの吐出不良が起こるノズルが複数確認された(ピン抜け)。この記録ヘッドに初期充填モードで、上記で得られた洗浄液を充填し、水性インクジェットインクに対する洗浄性について評価した。
[評価基準]
〇:初期充填シーケンスのみで全ノズルが回復し、吐出不良が改善する。
△:クリーニング操作1〜3回で全ノズルが回復し、吐出不良が改善する。
×:クリーニング操作を3回以上行ってもピン抜けが起こり、吐出不良が改善されない。
【0072】
<シリコン製ノズルプレートに対する侵食性>
上記で得られた洗浄液に2cm×2cmのシリコン製ノズルプレートを浸漬、60℃、1ヵ月間保存し、保存後のノズルプレートの撥液性を水の接触角にて評価した。
[評価基準]
〇:水の接触角が90°以上である。
△:水の接触角が80°以上、90°未満である。
×:水の接触角が80°未満である。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
表1及び2中、エマルゲン1150S−60は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王製、HLB19);
レオドールTW−L120は、:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(花王製、HLB17);
ナイミーンS−220は、ポリオキシエチレンステアリルアミン(日油製、HLB15);
サーフィノール465は、ポリオキシエチレンアセチレニック・グリコールエーテル(EVONIK製、HLB13);
KF−355Aは、ポリエーテル変性シリコン(信越化学工業製、HLB12);
DOWSI FZ−2104 Fluidは、ポリエーテル変性シリコン(DOW製、HLB9);
サーフィノール440は、ポリオキシエチレンアセチレニック・グリコールエーテル、(EVONIK製、HLB8);
ユニセーフ10P−8は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(日油製、HLB8);
KF−352Aは、ポリエーテル変性シリコン(信越化学工業製、HLB7);
DMDMHは、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチル)−5,5−ジメチル−2,4−イミダゾリジンジオン;
PROXEL GXLは、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンを20質量%含む組成物(Lonza社製);を示す。
【要約】
【課題】シリコン製ノズルプレートを侵さず、かつ良好な保存安定性、防腐効果、及び水性インクジェットインクに対する洗浄性を有する洗浄液を提供すること。
【解決手段】顔料とアルカリ可溶性樹脂を含む水性インクジェットインクを吐出するインクジェットプリンターにおいて、吐出される前記水性インクジェットインクが付着する部位を洗浄するための洗浄液であり、界面活性剤と、防腐剤と、水を含み、前記界面活性剤は、ポリオキシアルキレン骨格を有し、かつHLBが9〜20である化合物であり、前記防腐剤は、ヒダントイン骨格を有する化合物を含み、前記ヒダントイン骨格を有する化合物の割合は、洗浄液中、0.05〜0.3質量%である洗浄液。
【選択図】なし